(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対象者の横方向をX方向、前後方向をY方向、上下方向をZ方向とした、対象者の脳の各部位の状態を示す三次元脳状態画像において、脳表によって囲まれた脳領域の中心点を原点として決定する原点決定手段と、
前記三次元脳状態画像において、最も状態値の高い部位を決定し、当該部位を含むXY平面画像、YZ平面画像またはXZ平面画像を切り出す画像切出手段と、
下記i)ii)iii)に示す回転手段を有する三次元脳状態画像回転手段と、
i)前記XY平面画像において、第一のX水平軸または第一のY水平軸と脳表の2つの交点における交点間の距離が最も大きくなるように、または脳表の形状がY軸に関して左右対称に近づくように、前記三次元脳状態画像をZ軸周りに回転するXY平面回転手段と、
ii)前記YZ平面画像において、第二のY水平軸と脳表の2つの交点における交点間の距離が最も大きくなるように、前記三次元脳状態画像をX軸周りに回転するYZ平面回転手段と、
iii)前記XZ平面画像において、第二のX水平軸と脳表の2つの交点における交点間の距離が最も大きくなるように、前記三次元脳状態画像をY軸周りに回転するXZ平面回転手段と、
前記三次元脳状態画像回転手段によって回転された三次元脳状態画像において、対象ROIに含まれる各部位の評価値を算出する評価値算出手段と、
三次元脳状態画像回転手段による前回の回転後の前記評価値に対する、今回の回転後の前記評価値の変化が所定基準よりも小さいかどうかを判断し、小さくなければ、三次元脳状態画像回転手段による次回の回転を行い、小さければ、今回の回転後の三次元脳状態画像を修正三次元脳状態画像として決定する決定手段と、
決定された修正三次元脳状態画像に基づいて解析を行う解析手段と、
を備えた三次元脳状態画像解析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術における三次元脳状態画像に基づく解析においては、線条体を関心領域(線条体ROI)として設定し、その領域におけるカウント値を計測して診断や解析を行っていた。しかし、かかる診断や解析で利用されるカウント値は撮像の条件や画像表示するソフトウエアによって変動する値であるため、判断の客観性、統一性を担保することが難しかった。
【0006】
一方、背景となる領域(参照ROI)のカウント値と、線条体ROIのカウント値との比に基づいて、コンピュータによって判断する手法であれば、客観性、統一性を得ることができる。しかし、コンピュータによって判断するためには、異なる患者の三次元脳状態画像間において、ROI領域や背景領域を適切に同一に保つことが前提であり、これが実現できなければ、判断結果の信頼性に問題が生じることになる。
【0007】
この発明は、上記の問題点に鑑みて、線条体ROIや参照ROIを適切に適用して解析を行うことのできる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)(2)この発明に係る三次元脳状態画像解析装置は、対象者の横方向をX方向、前後方向をY方向、上下方向をZ方向とした、対象者の脳の各部位の状態を示す三次元脳状態画像において、脳表によって囲まれた脳領域の中心点を原点として決定する原点決定手段と、前記三次元脳状態画像において、最も状態値の高い部位を決定し、当該部位を含むXY平面画像、YZ平面画像またはXZ平面画像を切り出す画像切出手段と、下記i)ii)iii)に示す回転手段を有する三次元脳状態画像回転手段と、i)前記XY平面画像において、第一のX水平軸または第一のY水平軸と脳表の2つの交点における交点間の距離が最も大きくなるように、または脳表の形状がY軸に関して左右対称に近づくように、前記三次元脳状態画像をZ軸周りに回転するXY平面回転手段と、ii)前記YZ平面画像において、第二のY水平軸と脳表の2つの交点における交点間の距離が最も大きくなるように、前記三次元脳状態画像をX軸周りに回転するYZ平面回転手段と、iii)前記XZ平面画像において、第二のX水平軸と脳表の2つの交点における交点間の距離が最も大きくなるように、前記三次元脳状態画像をY軸周りに回転するXZ平面回転手段と、前記三次元脳状態画像回転手段によって回転された三次元脳状態画像において、対象ROIに含まれるカウント値から評価値を算出する評価値算出手段と、三次元脳状態画像回転手段による前回の回転後の前記評価値に対する、今回の回転後の前記評価値の変化が所定基準よりも小さいかどうかを判断し、小さくなければ、三次元脳状態画像回転手段による次回の回転を行い、小さければ、今回の回転後の三次元脳状態画像を修正三次元脳状態画像として決定する決定手段と、決定された修正三次元脳状態画像に基づいて解析を行う解析手段とを備えている。
【0009】
したがって、簡易な処理でありながら、正確に三次元脳状態画像の向きを修正し、適切な解析を行うことができる。
【0010】
(3)この発明に係る三次元脳状態画像解析装置は、原点決定手段が、前記XY平面画像における脳表によって囲まれる領域の中心点をX軸、Y軸、Z軸の原点とすることを特徴としている。
【0011】
したがって、容易に原点を定めることができる。
【0012】
(4)この発明に係る三次元脳状態画像解析装置は、解析手段が、修正三次元脳状態画像の1以上のXY平面画像において、線条体を囲むように設定された線条体ROI(あるいはVOI)および参照ROI(あるいはVOI)を設定するテンプレートを適用し、参照ROIのカウント値の合計値と線条体ROIのカウント値の合計値に基づいて、解析を行うことを特徴としている。
【0013】
したがって、画像撮像装置や対象者の違いにかかわらず、正確な解析を行うことができる。
【0014】
(5)この発明に係る三次元脳状態画像解析装置は、評価値算出手段が評価値を算出する対象ROIは、線条体ROIであることを特徴としている。
【0015】
したがって、線条体におけるドパミントランスポーターの分布の解析を行うことができる。
【0016】
(6)この発明に係る三次元脳状態画像解析装置においては、YZ平面回転手段およびXZ平面回転手段は、三次元脳状態画像を回転させることによって、前記最も状態値の高い部位がXY平面から外れた場合には、YZ面画像をZ方向またはY方向に水平移動させ、または、XZ面画像をZ方向またはX方向に水平移動させることによって、前記最も状態値の高い部位がXY平面上にくるように補正することを特徴としている。
【0017】
したがって、回転によるずれを容易に修正することができる。
【0018】
(7)この発明に係る三次元脳状態画像解析方法は、コンピュータが下記ステップを実行することによって三次元脳状態画像の解析を行う方法であって、
対象者の横方向をX方向、前後方向をY方向、上下方向をZ方向とした、対象者の脳の各部位の状態を示す三次元脳状態画像において、脳表によって囲まれた脳領域の中心点を原点として決定する原点決定ステップと、前記三次元脳状態画像において、最も状態値の高い部位を決定し、当該部位を含むXY平面画像、YZ平面画像またはXZ平面画像を切り出す
画像切出ステップと、下記i)ii)iii)に示すステップを有する三次元脳状態画像回転ステップと、i)前記XY平面画像において、第一のX水平軸または第一のY水平軸と脳表の2つの交点における交点間の距離が最も大きくなるように、または脳表の形状がY軸に関して左右対称に近づくように、前記三次元脳状態画像をZ軸周りに回転するステップと、ii)前記YZ平面画像において、第二のY水平軸と脳表の2つの交点における交点間の距離が最も大きくなるように、前記三次元脳状態画像をX軸周りに回転するステップと、iii)前記XZ平面画像において、第二のX水平軸と脳表の2つの交点における交点間の距離が最も大きくなるように、前記三次元脳状態画像をY軸周りに回転するステップと、前記三次元脳状態画像回転ステップによって回転された三次元脳状態画像において、対象ROIに含まれるカウント値から評価値を算出する評価値算出ステップと、三次元脳状態画像回転ステップによる今回の回転後の前記評価値と、三次元脳状態画像回転手段による前回の回転後の前記評価値に対する、今回の回転後の前記評価値の変化が所定基準よりも小さいかどうかを判断し、小さくなければ、三次元脳状態画像回転手段による次回の回転を行い、小さければ、今回の回転後の三次元脳状態画像を修正三次元脳状態画像として決定する決定ステップと、決定された修正三次元脳状態画像に基づいて解析を行う解析ステップとを備えている。
【0019】
したがって、簡易な処理でありながら、正確に三次元脳状態画像の向きを修正し、適切な解析を行うことができる。
【0020】
「原点決定手段」は、実施形態においては、ステップS5がこれに対応する。
【0021】
「XY平面回転手段」は、実施形態においては、ステップS7がこれに対応する。
【0022】
「YZ平面回転手段」は、実施形態においては、ステップS9がこれに対応する。
【0023】
「XZ平面回転手段」は、実施形態においては、ステップS12がこれに対応する。
【0024】
「評価値算出手段」は、実施形態においては、ステップS15がこれに対応する。
【0025】
「決定手段」は、実施形態においては、ステップS16〜S18がこれに対応する。
【0026】
「解析手段」は、実施形態においては、ステップS19がこれに対応する。
【0027】
「XY平面画像」とは、X軸、Y軸によって形成される平面による断面画像または当該平面に平行な平面による断面画像をいう。
【0028】
「YZ平面画像」とは、Y軸、Z軸によって形成される平面による断面画像または当該平面に平行な平面による断面画像をいう。
【0029】
「XZ平面画像」とは、X軸、Z軸によって形成される平面による断面画像または当該平面に平行な平面による断面画像をいう。
【0030】
「X水平軸」とは、X軸またはX軸に平行な軸をいう。
【0031】
「Y水平軸」とは、Y軸またはY軸に平行な軸をいう。
【0032】
「Z水平軸」とは、Z軸またはZ軸に平行な軸をいう。
【0033】
「中心点」とは、当該領域の中心に位置する点をいい、当該領域の重心、当該領域を円や矩形で近似した場合の中心などを含む概念である。
【0034】
「プログラム」とは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソース形式のプログラム、圧縮処理がされたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む概念である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
1.機能ブロック図
図1に、この発明の一実施形態による三次元脳状態画像解析装置の機能ブロック図を示す。画像切出手段2は、SPECT装置などによって撮像された三次元脳状態画像を受け取り、最も状態値の高い(ドパミントランスポーター量の大きい)ボクセルを最大ボクセル56として特定する。さらに、画像切出手段2は、当該最大ボクセル56を含むXY平面画像を切り出す。
図3に、切り出されたXY平面画像(水平面画像)を示す。
【0037】
原点決定手段22は、切り出されたXY平面画像において脳表50によって囲まれた領域、つまり脳領域を特定する。さらに、この脳領域の重心点52を算出し、原点とする。次に、当該原点52をとおり、人体の横方向に延びるX軸54を設定する。続いて、X軸54に垂直なY軸68を設定する。さらに、X軸54、Y軸68に垂直なZ軸(紙面に垂直な軸)を設定する。
【0038】
三次元脳状態画像回転手段4のXY平面回転手段6は、XY平面画像における脳領域について、脳表の形状がY軸に関して左右対称に近づくように、三次元脳状態画像を、Z軸周りに回転させる。
【0039】
画像切出手段2は、XY平面回転手段6によって回転した三次元脳状態画像において、最大ボクセル56を含み、矢状面(原点を通るYZ平面)に平行なYZ平面における断面画像(YZ平面画像)を切り出す。
図4に、切り出されたYZ平面画像を示す。図において、Z軸に水平な軸(Z水平軸)75、Y軸に水平な軸(Y水平軸)69が現れている。
【0040】
YZ平面回転手段8は、YZ平面画像においてY水平軸69と脳表50との2つの交点70、72間の距離が最も長くなるように、三次元脳状態画像を、X軸周りに回転させる。
【0041】
画像切出手段2は、YZ平面回転手段8によって回転した三次元脳状態画像において、最大ボクセル56を含み、冠状面(原点を通るXZ平面)に平行な面(XZ平面)における断面画像(XZ平面画像)を切り出す。
図5に、切り出されたXZ平面画像を示す。図において、Z軸に水平な軸(Z水平軸)77、X軸に水平な軸(X水平軸)55が現れている。
【0042】
XZ平面回転手段10は、XZ平面画像においてX水平軸55と脳表50との2つの交点74、76間の距離が最も長くなるように、三次元脳状態画像を、Y軸周りに回転させる。
【0043】
評価値算出手段12は、冠状平行面画像回転手段10によって回転させた三次元脳状態画像から切り出した一以上のXY平面画像を取得し、これら一以上のXY平面画像から構成された画像セットを作成する。続いて、記録部18に記録されているテンプレート20を読み出して、画像セットをテンプレート20にあてはめ、テンプレート20に設定された線条体を含むROI(線条体ROI)内のカウント値の合計に基づいて評価値を算出する。
図6にテンプレート20の例を示す。
図6において、符号80、82で示されているのが、画像セットから構成される線条体ROIの総和が含まれる線条体領域である。符号84は、参照ROIからなる参照領域であり、
図6では参照ROIとして画像セットから構成される後頭葉部位のROIの総和からなる。実施形態によっては、脳領域全体を囲むように設定されたROIを参照ROIとしてもよい。
【0044】
決定手段14は、算出した評価値に基づいて、三次元脳状態画像回転手段4によってさらに回転修正が必要かどうかを判断する。
【0045】
三次元脳状態画像回転手段による前回の回転後の前記評価値に対する、今回の回転後の前記評価値の変化が所定基準よりも小さいかどうかを判断する。変化が所定基準よりも小さくなければ、さらなる回転修正が必要であると判断する。この場合、上述のXY平面回転手段6、YZ平面回転手段8、XZ平面回転手段10による回転修正がさらに実行される。変化が所定基準よりも小さくなるまで、回転修正が繰り返される。
【0046】
決定手段14は、変化が所定基準よりも小さくなると、その時の三次元脳状態画像を修正三次元脳状態画像として決定する。
【0047】
解析手段16は、修正三次元脳状態画像のXY平面画像に、テンプレート20を適用し、背景領域84と、線条体領域80、82との比較に基づいて解析を行う。
【0048】
2.ハードウエア構成
図2に、この発明の一実施形態による三次元脳状態画像解析装置のハードウエア構成を示す。
【0049】
CPU30には、ハードディスク32、DVD−ROMドライブ34、ディスプレイ36、メモリ38、キーボード/マウス40、SPECT装置42が接続されている。ハードディスク32には、オペレーティングシステム(たとえばWINDOWS(商標))46、三次元脳状態画像解析プログラム48、テンプレート50が記録されている。三次元脳状態画像解析プログラム48は、オペレーティングシステム46と協働してその機能を発揮するものである。これらプログラムは、DVD−ROM44に記録されていたものを、DVD−ROMドライブ34を介して、ハードディスク32にインストールしたものである。
【0050】
SPECT装置42は、LANやインターネットなどを介して接続されている。あるいは、入出力インターフェイスを介して、ローカルで接続するようにしてもよい。
【0051】
3.三次元脳状態画像解析処理
図7a〜
図7dに、ハードディスク32に記録された三次元脳状態画像解析プログラム48のフローチャートを示す。CPU30は、SPECT装置42によって生成された対象者の三次元脳状態画像を取り込む(ステップS1)。三次元脳状態画像は、三次元座標を持ったカウント値の集合データであるが、以下では、説明のために断面画像の集合として示すことにする。
図8に、取り込んだ三次元脳状態画像の断面画像であるXY平面画像の一例を示す。この実施形態では、42枚のXY平面画像からなる画像セットによって、三次元脳状態画像が構成されている。各XY平面画像の左上に示されている数字は、上部から順に付した連続番号である。
【0052】
なお、この三次元脳状態画像は、以下のようにしてSPECT装置によって生成されたものである。放射性ヨウ素にて標識した化合物を被験者に静脈投与する。この化合物としてドパミントランスポーターと結合する物質を選択しておくことにより(たとえば、日本メジフィジックス社製のDaTSCAN(商標)に用いられているFP−CIT)、放射性ヨウ素標識化合物がドパミントランスポーターに結合することとなる。この状態で、脳の各部位における消滅放射線としてのγ線量カウント値を計測して、ドパミントランスポーターの量を知る。計測は、被験者の体軸を中心として360度にわたって行われ、得られたデータをもとに
図8に示すような複数の断面画像に再構成される。つまり、三次元脳状態画像が生成される。断面画像では、γ線から計測されるカウント値(PETやSPECT等によって計測された機能状態を反映したボクセルの状態値)の大きい領域から小さい領域に向けて、例えば赤、黄、緑、青と色分けされて示される。各ボクセルの状態値は、投与する放射性標識化合物の投与量や装置などの撮像条件にもよるが、0〜100の値となる。この実施形態では、画像としての色分けにおいては、これら状態値を100段階に分けて表示するようにしている。
【0053】
次に、CPU30は、三次元脳状態画像において状態値が最も高いボクセルを特定する(ステップS2)。
図8の例であれば、22枚目のXY平面画像中の、ボクセル56が最も高い状態値を持っている。したがって、これを最大ボクセルとして特定する。
【0054】
CPU30は、最大ボクセル56を含むXY平面画像を切り出す(ステップS3)。切り出したXY平面画像を、
図3に示す。
【0055】
次に、CPU30は、脳表を特定する(ステップS4)。前述のように、放射性ヨウ素にて標識した化合物は、ドパミントランスポーターに結合するが、その一部は、ドパミントランスポーターが存在しない脳内の部位にも局在するので、脳の内部は外部と比べるとカウント値が高い状態となる。したがって、CPU30は、所定のしきい値にて2値化することにより、脳表によって囲まれた脳領域を特定することができる。
【0056】
次に、CPU30は、この脳領域の重心(脳領域が均質な質量で構成されているとした場合の重心)を算出し、これを原点52とする(ステップS5)。さらに、CPU30は、この原点52を通って、対象者の横方向にX軸54、前後方向にY軸68、上下方向にZ軸を設定する。これら、X軸54、Y軸68、Z軸は、互いに垂直である。X軸54は、たとえば、左側の線条体の極大ボクセル56と、右側の線条体の極大ボクセル58とを結ぶ直線と並行であり、原点52をとおる直線として決定することができる。
【0057】
次に、CPU30は、XY平面画像における脳領域について、脳表の形状がY軸に関して左右対称に近づくように、三次元脳状態画像を、Z軸周りに回転させる。この実施形態では、以下のようにして、この処理を実行している。
【0058】
CPU30は、
図3に示すように、X軸54eに平行な線54a〜54d、54f〜54iを描く。そして、それぞれの線54a〜54iと脳表50との左右の交点64a〜64i、66a〜66iおよびY軸との交点65a〜65iを決定する。直線54a上の線分64a−66a(点64aと点66aを端部とする直線)において、線分64a−65aと線分65a−66aの差分Δaを決定する。この処理をX軸54eに平行な全ての線54b〜54iに適用し、差分Δa、Δb・・・Δiを決定する。CPU30は、差分Δa、Δb・・・Δiの二乗和(絶対値の和でもよい)を計算し、その値が最も小さくなるように、Z軸周りに三次元脳状態画像を回転する(ステップS7)。X軸に平行に描かれた線54a〜54iの、それぞれのY軸交点から左右の脳表までの距離の差が最も小さい位置が、対象者が真正面を向いた位置に対応すると考えられるからである。
【0059】
CPU30は、回転した三次元脳状態画像において、最大ボクセル56を含むYZ平面90における断面画像(YZ平面画像)を切り出す(ステップS8)。
図9aに、YZ平面90を示す。原点を通るYZ平面(矢状面)に平行にYZ平面90が設定されることになる。
【0060】
切り出したYZ平面画像を、
図4に示す。最大ボクセル56は、原点52を通るXY平面(水平面)上にあるので、
図4において、最大ボクセル56はY軸68に水平な軸(Y水平軸)69の上に位置することになる。なお、
図4において、軸75は、X軸54に水平な軸(X水平軸)である。
【0061】
CPU30は、Y水平軸69と脳表50との2つの交点70、72間の距離が最大になるように、X軸周りに三次元脳状態画像を回転する(ステップS9)。前後方向の幅が最も広くなる位置が、対象者が真正面を向いた位置に対応すると考えられるからである。
【0062】
上記回転の結果、最大ボクセル56の位置がY水平軸69から外れる。したがって、CPU30は、最大ボクセル56の位置がY水平軸69上に来るように、三次元脳状態画像をZ軸方向(またはY軸方向)に水平移動する(ステップS10)。
【0063】
続いて、CPU30は、回転して水平移動した三次元脳状態画像において、最大ボクセル56を含むXZ平面92における断面画像(XZ平面画像)を切り出す(ステップS11)。
図9bに、XZ平面92を示す。原点を通るXZ平面(冠状面)に平行にXZ平面92が設定されることになる。
【0064】
切り出したXZ平面画像を、
図5に示す。最大ボクセル56は、原点52を通るXY平面(水平面)上にあるので、
図5において、最大ボクセル56はX軸54に水平な軸(X水平軸)55の上に位置することになる。なお、
図5において、軸77は、Y軸68に水平な軸(Y水平軸)である。
【0065】
CPU30は、X水平軸55と脳表50との2つの交点74、76間の距離が最大になるように、Y軸周りに三次元脳状態画像を回転する(ステップS11)。
【0066】
左右方向の幅が最も広くなる位置が、対象者が真正面を向いた位置に対応すると考えられるからである。
【0067】
上記回転の結果、最大ボクセル56の位置がX水平軸55から外れる。したがって、CPU30は、最大ボクセル56の位置がX水平軸55上に来るように、三次元脳状態画像をZ軸方向(またはX軸方向)に水平移動する(ステップS13)。
【0068】
次に、CPU30は、上記のようにして回転修正された三次元脳状態画像について、さらなる回転修正が必要であるかどうかを判断する(ステップS14〜S17)。まず、CPU30は、テンプレート20にあてはめる画像セットを作成するため一以上のXY平面画像を切り出す(ステップS14)。この画像セットを構成する一以上のXY平面画像は、後述の解析の際に用いるものであり、三次元脳状態画像のXY平面画像において、線条体が存在すると考えられる領域(線条体ROI)を示すものである。
【0069】
図6に、テンプレートの例を示す。領域80、領域82が線条体ROIである。この実施形態では、19番目から25番目までのXY平面画像から構成される画像セットに対してテンプレートが設定されている。
【0070】
次に、CPU30は、上記複数のXY平面画像において線条体ROI80、82に含まれるボクセルのカウント値を総合計し、これを評価値とする(ステップS15)。次に、前回の評価値と今回の評価値の差の絶対値を算出する(ステップS16)。
【0071】
CPU30は、差の絶対値が今回の評価値(あるいは前回の評価値)の所定割合(たとえば5%)よりより小さいかどうかを判断する(ステップS17)。回転修正によって三次元脳状態画像が正しい向きに回転修正されると、回転修正の量も少なくなり、誤差の絶対値が小さくなると考えられるからである。
【0072】
前回の評価値がない場合(最初の回転修正)や差の絶対値が上記基準よりも大きい場合には、CPU30は、まだ回転修正が必要であると判断し、ステップS65(
図7b)に進む。ステップS65においては、既に回転修正された三次元脳状態画像について、最大ボクセル56を含むXY平面画像を切り出す。以下、CPU30は、ステップS7〜S13を実行し、回転修正を行う。ステップS14、S15において今回の評価値を算出する。今回の評価値と前回の評価値の差の絶対値を算出して(ステップS16)、これが今回の評価値(あるいは前回の評価値)の所定割合(たとえば5%)よりより小さいかどうかを判断する(ステップS17)。CPU30は、差の絶対値が上記基準より小さくなるまで、上記の処理を繰り返す。
【0073】
差の絶対値が所定割合より小さくなると、CPU30は、最新の回転修正した三次元脳状態画像を、修正三次元脳状態画像として決定する(ステップS18)。次に、CPU30は、テンプレートを用いて、修正三次元脳状態画像のXY平面画像を解析する(ステップS19)。
【0074】
図6のテンプレートにおいて、線条体ROI80、82の後方に、比較参照のための後頭葉ROI84が設けられている。後頭葉ROI84には、前記化合物の結合が少ないこと、領域としての広さがあること、疾患例と健常例との間で分布量に差が生じにくいことなどから、参照領域として適している。線条体ROI80や線条体ROI82に含まれるボクセルのカウント値を、この参照領域である後頭葉ROI84に含まれるボクセルのカウント値を基準として判断することで、SPECT装置の違いや対象者の違いを正規化して、正確な解析を行うことができる。
【0075】
具体的には、以下に示すSBR(Specific Binding Ratio)を算出して、ドパミントランスポーターの量を解析することができる。
【0076】
SBR=((ST−KM×SN)/SV)/KM
ここで、STは線条体ROIに含まれるボクセルのカウント値の合計、KMは後頭葉ROIに含まれるボクセルのカウント値の平均、SNは線条体ROIのボクセル数、SVは線条体の体積(mL)である。
【0077】
以上のようにして、三次元脳状態画像の解析を行うことができる。
【0078】
4.その他の実施形態
(1)上記実施形態では、最大ボクセル56を含むXY平面上に原点を設定しているが、他のXY平面上に原点を設定するようにしてもよい。また、YZ平面上やXZ平面上に原点を設定するようにしてもよい。
【0079】
(2)上記実施形態では、XY平面画像に基づく回転、YZ平面画像に基づく回転、XZ平面画像に基づく回転の順に処理を行っている。しかし、これらの処理順序は任意に変更することができる。
【0080】
(3)上記実施形態では、XY平面画像に基づく回転、YZ平面画像に基づく回転、XZ平面画像に基づく回転を1セットの処理として、1セットの処理が終了する毎に評価値を算出し、回転補正を継続するかどうかを判断している。しかし、2セット以上の処理を1単位の処理とし、1単位の処理が終了する毎にカウント値を算出して、回転補正を継続するかどうかを判断するようにしてもよい。
【0081】
(4)上記実施形態では、SBRを用いて解析を行うようにしている。しかし、後頭葉ROI84に含まれるボクセルのカウント値の平均KMを算出し、線条体ROI80、82の各ボクセルのカウント値からこのKMを減じて補正状態値を算出し、各線条体ROI80、82に含まれる各ボクセルの補正状態値を合計することによって解析を行うようにしてもよい。
【0082】
(5)また、次のようなSBRを用いて解析を行うようにしてもよい。
【0083】
SBR=((ST/KM)−SRV)/SV
ここで、STは線条体ROIに含まれるボクセルのカウント値の合計、KMは後頭葉ROIに含まれるボクセルのカウント値の平均、SRVは線条体ROIの体積(mL)、SVは線条体の体積(mL)である。
【0084】
このSBRによる解析は、線条体ROI80、線条体ROI82、後頭葉ROI84として矩形を用いた場合に有効である。
【0085】
(6)上記実施形態では、1つのコンピュータによって処理を完結しているが、三次元脳状態画像解析装置をサーバ装置として構築するようにしてもよい。この場合、解析を依頼するユーザが、端末装置からサーバ装置に対して三次元脳状態画像を送信する。これに応じて、サーバ装置が修正三次元脳状態画像および解析結果を端末装置に返信する。
【0086】
(7)上記実施形態では、後頭葉ROIを参照ROIとしたが、脳領域全体を参照ROIとしてもよい。
【0087】
(8)上記実施形態では、今回の評価値と前回の評価値の差の絶対値が、前回の評価値の所定割合より小さいかどうかによって、回転修正を継続するかどうかを判断している。しかし、その他の基準によって差の絶対値が小さくなったかどうかを判断するようにしてもよい。たとえば、前記差の絶対値が所定のしきい値より小さくなったかどうかによって判断するようにしてもよい。
【0088】
(9)上記実施形態では、SPECT装置とは別にコンピュータを設けているが、SPECT装置を構成するコンピュータに、三次元脳状態画像解析プログラムを組み込むようにしてもよい。
【0089】
(10)上記実施形態では、脳領域の重心点52を原点としている。しかし、脳領域に内接(または外接)する円(または矩形)を描き、その中心を原点としてもよい。また、脳領域のその他の中心点を原点として用いるようにしてもよい。
【0090】
(11)上記実施形態では、修正三次元脳状態画像を生成して解析する三次元脳状態画像解析として説明を行った。しかし、元となる三次元脳状態画像から修正三次元脳状態画像を生成する三次元画像修正装置として構築するようにしてもよい。
【0091】
(14)上記実施形態では、ステップS7において、脳表の形状がY軸に関して左右対称に近づくように、三次元脳状態画像を、Z軸周りに回転させている。しかし、ステップS9と同様に、X軸54と脳表50との2つの交点間の距離が最大になるように、三次元脳状態画像をZ軸まわりに回転するようにしてもよい。
【手段】 XY平面回転手段6は、XY平面画像において、脳表の形状がY軸に関して左右対称に近づくように、三次元脳状態画像を、Z軸周りに回転させる。YZ平面回転手段8は、YZ平面画像において、Y水平軸と脳表の2つの交点における項点間の距離が最も大きくなるように、三次元脳状態画像を、Z軸周りに回転させる。XZ平面回転手段10は、XZ平面画像について上記と同様の処理を行う。決定手段14は、三次元脳状態画像回転手段による前回の回転後の前記評価値に対する、今回の回転後の前記評価値の変化が所定基準よりも小さくなるまで、回転修正を繰り返し、修正三次元脳状態画像を得る。