特許第5669216号(P5669216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669216
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】PHS通信端末およびその動作方法
(51)【国際特許分類】
   H04M 1/73 20060101AFI20150122BHJP
   H04W 52/02 20090101ALI20150122BHJP
【FI】
   H04M1/73
   H04W52/02 110
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-35030(P2012-35030)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-172302(P2013-172302A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2013年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 学
【審査官】 岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−345330(JP,A)
【文献】 特開2007−134756(JP,A)
【文献】 特開2003−258705(JP,A)
【文献】 特開2002−190761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04M 1/00
1/24−1/82
99/00
H04W 4/00−8/24
8/26−16/32
24/00−28/00
28/02−72/02
72/04−74/06
74/08−84/10
84/12−88/06
88/08−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを介して受信した電波を電気信号に変換する無線部と、
前記無線部との間でのデータの送受信を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記無線部で変換された電気信号の中から所定のビット配列部分を探索する発着呼有無確認動作を第1の周期で実行する処理と、前記ビット配列部分の探索に失敗した回数が規定回数に達した場合には、基地局を探索するオープンサーチ動作を実行する処理と、を繰り返し、
前記オープンサーチ動作の実行状態への移行回数が規定回数に達した場合に、前記発着呼有無確認動作を実行する周期を前記第1の周期よりも長い第2の周期に変更するとともに、端末内部の未使用回路への電源供給を停止させる省電力モードへと移行する、
PHS通信端末。
【請求項2】
オープンサーチカウンタメモリ部を更に備え、
前記制御部は、前記オープンサーチ動作を実行する状態へと移行した回数をカウントして、前記オープンサーチカウンタメモリに保持し、当該保持したオープンサーチ動作の実行状態への移行回数が規定回数に達した場合に、前記発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期を前記第1の周期よりも前記長い第2の周期に変更するとともに前記省電力モードへと移行し、当該省電力モードへと移行した場合おいても、前記オープンサーチ動作の実行状態への移行回数を継続してカウントして前記オープンサーチカウンタメモリに保持し、一定時間のうちで、当該保持したオープンサーチ動作の実行状態への移行回数が規定回数に達しなかった場合には、前記発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期間隔を前記第1の周期に変更するとともに前記省電力モードを解除する、
請求項1に記載のPHS通信端末。
【請求項3】
前記制御部は、
前記所定のビット配列部分の探索に連続して失敗した回数が規定回数に達した場合に、前記オープンサーチ動作の実行状態へ移行する回数をカウントして保持するオープンサーチカウンタ部と、
前記発着呼有無確認動作の周期間隔を設定保持する待ち受け周期タイマと
を更に備える
請求項1または2に記載のPHS通信端末。
【請求項4】
無線部で変換された電気信号の中から所定のビット配列部分を探索する発着呼有無確認動作を第1の周期で実行する探索ステップと、
前記探索ステップで探索に失敗した回数が規定回数に達した場合には、基地局を探索するオープンサーチ動作を実行する状態へと移行するステップと、を繰り返すステップと、
前記オープンサーチ動作を実行する状態へと移行した移行回数が規定回数に達した場合に、発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期を前記第1の周期よりも長い第2の周期に変更するとともに、端末内部の未使用回路への電源供給を停止させる省電力モードへと移行するステップと、
を備えるPHS通信端末の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPHS通信端末およびその動作方法に関し、特に電波状態が粗悪な場合に、電池の消耗を軽減することが可能なPHS通信端末およびその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PHS(Personal Handyphone System)通信端末は、音声通話以外でも、テレメトリングシステムにて遠隔検針にも使用される。この遠隔検針では、検針に使用するPHS通信端末を、電池で駆動する実施例が多く採用されている。
【0003】
このような電池駆動のPHSにおいて、電波状態の粗悪に起因したオープンサーチ回数の増加によって電池の消耗が進み、電池交換のために費用が増大するという問題が知られていた。このため、無駄な電池消費を防ぐ手法がこれまでに必要とされていた。
【0004】
なお、本発明に関連する技術としては、例えば特許文献1乃至6に開示された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−107927号公報
【特許文献2】特開2009−188611号公報
【特許文献3】特開2005−286655号公報
【特許文献4】特開2005−012308号公報
【特許文献5】特開2003−169011号公報
【特許文献6】特開平11−055176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1および図2を用いて本発明の課題をより具体的に説明する。図1および図2は、電波状態が粗悪である場合に、本発明に関連するPHS通信端末における電力増加を示す図である。
【0007】
まず、図1に示すように、本発明に関連するPHS端末では、電波状態が粗悪であってPHS端末の待ち受け状態の維持が困難な場合であっても、一定の周期(1.2s)で、基地局200との間でPHS端末への発着呼有無確認動作(待ち受け状態)を行っていた。同図において、発着呼有無確認動作によって定常電力に対して増加する電力部分を、斜線を用いて示す。
【0008】
そして、図2に示すように電波状態が圏外状態になると、PHS端末は基地局200を探す状態へと移行し、オープンサーチ動作を行う。PHS端末は、基地局200を認識すると、再度、発着呼有無確認動作(待ち受け状態)へと移行する。同図において、オープンサーチ動作によって定常電力に対して増加する電力部分を、斜線を用いて示す。
【0009】
以上の一連の動作は、一定の電力を消費する。電波状態が粗悪な環境では、このオープンサーチ動作の発生回数が著しく増加してしまい、その結果、電池の消耗が早くなるという問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、電波状態が粗悪な場合に、電池の消耗を軽減することが可能なPHS通信端末およびその動作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るPHS通信端末は、アンテナを介して受信した電波を電気信号に変換する無線部と、前記無線部との間でのデータの送受信を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記無線部で変換された電気信号の中から所定のビット配列部分を探索し、当該探索に失敗した回数が規定回数に達した場合には、基地局を探索するオープンサーチ動作を実行する状態へと移行し、当該オープンサーチ動作の実行状態への移行回数が規定回数に達した場合に、発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期間隔がより長くなるように変更するとともに、端末内部の未使用回路への電源供給を停止させる省電力モードへと移行するものである。
【0012】
また、本発明に係る他のPHS通信端末は、アンテナを介して受信した電波を電気信号に変換する無線部と、前記無線部との間でのデータの送受信を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記無線部から送信される電気信号の電圧値を測定し、当該測定値が規定値を下回った場合には、基地局を探索するオープンサーチ動作を実行する状態へと移行し、当該オープンサーチ動作の実行状態への移行回数が規定回数に達した場合に、発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期間隔がより長くなるように変更するとともに、端末内部の未使用回路への電源供給を停止させる省電力モードへと移行するものである。
【0013】
また、本発明に係る他のPHS通信端末は、アンテナを介して受信した電波を電気信号に変換する無線部と、前記無線部との間でのデータの送受信を制御する制御部と、電池の電圧値を計測する電池残量検出回路と、を備え、前記制御部は、前記電池残量検出回路により計測された電圧値が規定値を下回った場合には、基地局を探索するオープンサーチ動作を実行する状態へと移行し、当該オープンサーチ動作の実行状態への移行回数が規定回数に達した場合に、発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期間隔がより長くなるように変更するとともに、端末内部の未使用回路への電源供給を停止させる省電力モードへと移行するものである。
【0014】
本発明に係る他のPHS通信端末の動作方法は、無線部で変換された電気信号の中から所定のビット配列部分を探索するステップと、前記探索ステップで探索に失敗した回数が規定回数に達した場合には、基地局を探索するオープンサーチ動作を実行する状態へと移行するステップと、前記オープンサーチ動作を実行する状態へと移行した移行回数が規定回数に達した場合に、発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期間隔がより長くなるように変更するとともに、端末内部の未使用回路への電源供給を停止させる省電力モードへと移行するステップと、を備えるものである。
【0015】
また、本発明に係る他のPHS通信端末の動作方法は、無線部から送信される電気信号の電圧値を測定するステップと、前記測定ステップでの測定電圧値が規定値を下回った場合には、基地局を探索するオープンサーチ動作を実行する状態へと移行するステップと、前記オープンサーチ動作を実行する状態へと移行した移行回数が規定回数に達した場合に、発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期間隔がより長くなるように変更するとともに、端末内部の未使用回路への電源供給を停止させる省電力モードへと移行するステップと、を備えるものである。
【0016】
また、本発明に係る他のPHS通信端末の動作方法は、電池の電圧値を計測するステップと、前記計測ステップでの計測電圧値が規定値を下回った場合には、基地局を探索するオープンサーチ動作を実行する状態へと移行するステップと、前記オープンサーチ動作を実行する状態へと移行した移行回数が規定回数に達した場合に、発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期間隔がより長くなるように変更するとともに、端末内部の未使用回路への電源供給を停止させる省電力モードへと移行するステップと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電波状態が粗悪な場合に、電池の消耗を軽減することが可能なPHS通信端末およびその動作方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の課題を説明するための図である。
図2】本発明の課題を説明するための図である。
図3】実施の形態1に係るPHS通信端末の構成を示す図である。
図4】実施の形態1に係るPHS通信端末の動作処理を説明するための図である。
図5】実施の形態1に係るPHS通信端末の動作処理を説明するための図である。
図6】実施の形態1に係るPHS通信端末の動作処理を示すフローチャートである。
図7】実施の形態2に係るPHS通信端末の動作処理を説明するための図である。
図8】実施の形態3に係るPHS通信端末の動作処理を説明するための図である。
図9】本発明に係るPHS通信端末の本質的部分を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0020】
<実施の形態1>
(構成)
図3は、本実施の形態に係るPHS通信端末の構成例を示している。PHS通信端末100は、アンテナ10と、無線部20と、制御部30と、メモリ部40と、無線部電力供給部50と、電池部60と、表示部70と、キーボード部80と、を備えている。
【0021】
PHS通信端末100は、アンテナ10を用いて、空中へ電波の送出する、また、空中からの電波の受信を行う。無線部20は、電気信号を電波に変換してアンテナ10に送出する、また、アンテナ10で受信した電波を電気信号へと変換する。
【0022】
制御部30は、送信したいデータを無線部20に渡す、また、無線部20から送られる受信データを処理する。制御部30は、オープンサーチカウンタ31と、待ち受け周期タイマ31と、を備えている。オープンサーチカウンタ31および待ち受け周期タイマ31の詳細については後述する。
【0023】
メモリ部40は、ソフトウェアaを格納する。ソフトウェアaは、主にPHS無線通信の各処理を制御部30に実行させる。また、メモリ部4は、オープンサーチカウンタメモリ部41を備えている。オープンサーチカウンタメモリ部41の詳細については後述する
【0024】
無線部電力供給部50は、無線部20に電力供給する。電池部60は、PHS通信端末100の各部(アンテナ10、無線部20、制御部30、メモリ部40、無線部電力供給部50、表示部70と、キーボード部80)分を駆動させるための電池である。なお、PHS通信端末100が音声処理用のPHS通信端末である場合には、PHS通信端末100は、表示手段としての表示部70や、入力手段の一例であるキーボード部80等を備える。
【0025】
なお、本実施の形態では、制御部30の処理は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などのプロセッサを含むコンピュータシステムにインストールし、1または複数のプログラムを実行させることで、その機能を実現するソフトウェアaとして実現される。
【0026】
これらのプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0027】
(特徴動作)
続いて以下では、まず、本実施の形態に係るPHS通信端末における特徴的な動作を、図1図5を用いて説明する。次いで、全体的な動作を、図6を用いて説明する。
PHS通信端末100は、通信時以外の状態、すなわち待ち受け状態時において以下に説明する動作を行うことを特徴とする。なお、以下で説明する時間また回数などの値は一例であり、適切な値に変更することができる。例えば、待ち受け周期は3.6s以外にも、元となる周期(1.2s)の倍数で設定可能であり、あるいは、選択可能として構成することもできる。
【0028】
PHS通信における待ち受け動作状態を説明する。まず、PHS通信端末100が、アンテナ10によってPHS基地局200から送られた空中の電波を受け取り、その電波を無線部20によって電気信号に変換し、変換した電気信号を制御部30に送る。制御部30は、送られた電気信号の中から、特定のPHS通信用のフレームに含まれる、所定のビット配列の部分を探索する。この所定のビット配列部分はユニークワードと呼ばれ、予め定められる。制御部30は、このユニークワードを発見した場合に、PHS基地局200との同期が確立できたものと判断し、PHS通信端末100が待ち受け状態となる。PHS通信端末100は、これら一連の動作を、通常1.2sの周期で繰り返し行っている(図4参照。)。
【0029】
図4に示した上述の周期的な動作が、発着呼有無確認動作である。この1.2s周期での発着呼確認動作は、メモリ部40に格納されたソフトウェアaが、制御部30および無線部20に命令することで実行される。
【0030】
本発明に関連するPHS通信端末では、図1に示したように、1.2s周期で電波を受信するため、電波の受信時には、一時的にPHS通信端末の消費電流が増加する。そして、このユニークワードを探索できなかった場合には、同期が外れたものと判断して、待ち受け状態からオープンサーチ動作を行う状態へと移行する。図2に示したように、オープンサーチ動作を行う状態では、待ち受け状態と比較してさらにPHS通信端末の消費電流が増加する。このため、オープンサーチ動作の実行回数が少なくなるほど、当然の如く電池の消耗が少なくなる。
【0031】
電波状態が粗悪な場合には、このユニークワードの探索に失敗するということが多発する。これは、PHS以外の妨害波によって、ユニークワードの配列が破壊される、あるいは、電波の強度が弱すぎてPHS通信端末100まで電波が届き難いことに起因する。
【0032】
本実施の形態に係るPHS通信端末100では、制御部30が、制御部30のオープンサーチカウンタ31を用いて、このユニークワードの探索失敗によるオープンサーチ動作を行う状態への移行回数をある一定の時間内でカウントし、そのカウント値をメモリ部40のオープンサーチカウンタメモリ部41に保存する。そして、制御部30は、オープンサーチカウンタメモリ部41のカウント値がある一定値を越えたと判断した場合には、電波が粗悪状態であるものと判断し、自動的に、待ち受け周期タイマ32のタイマ値を、1.2sから3.6sへと変更する。さらに、制御部30は、待ち受け時の発着呼有無確認動作以外の状態を、スリープモード(以下、省電力モードと称する。)に設定する(図5参照)。
【0033】
省電力モードは、制御部30が無線部20を停止することで設定する。発着呼有無確認動作以外の状態では、無線部20を駆動する必要は無い。電波状態が粗悪な環境では、この発着呼有無確認動作についても安定して行うことができない場合が多い。このような状態では、無線部20が無駄に電力を消費することになる。電波状態は、ユニークワードの探索失敗によるオープンサーチ回数の増加に基づいて判断することができる。従って、本実施の形態では、制御部30は、オープンサーチ回数の増加を契機として、無線部電力供給部50の駆動を停止させて、無線部20を停止させる。
【0034】
なお、通信制御部30が行う一連の動作についても、メモリ部40に格納されたソフトウェアaが、制御部30を通して実行する。
【0035】
さらに、本実施の形態に係るPHS通信端末100では、オープンサーチ動作に関するカウントの実行方法を、ユニークワードの探索失敗を発生の契機としてカウントする場合にしている。その理由は、電波状態が粗悪でない通常時においても、オープンサーチ動作は発生するためである。例えば、通信の開始時、終了時、PHS基地局200への定期的な端末登録動作時、ハンドオーバー時などにおいても、オープンサーチ動作が発生する。従って、これらの状態でのオープンサーチ動作までも含めてカウントした場合には、電波状態が粗悪でないにも関わらず、カウント数が増加してしまう。すなわち、オープンサーチ動作の回数だけを単にカウントするものとしては、上記の事象が発生してしまう。そこで、本実施の形態に係るPHS通信端末100では、オープンサーチ動作の発生契機を認識してカウントを行う。
【0036】
また、本実施の形態に係るPHS通信端末100では、ユニークワードの探索失敗に応じてオープンサーチ動作へと状態を移行させる際にも、特徴を持たせる。すなわち、ユニークワードの探索失敗の回数として予め所定の値を決めて、この値に応じてオープンサーチ動作の実行状態へと移行させる。例えば、ユニークワードの探索に4回連続して失敗した場合に、同期外れを認識して、オープンサーチ動作の実行状態へと移行する手段を採用する。その理由は、電波状態が粗悪な場合以外の状態においても、ユニークワードが偶然探索できない場合もあるためである。例えば、移動中の過程で、遮蔽物の存在する箇所に偶然入った場合である。
【0037】
(全体動作)
続いて以下では、PHS通信端末の動作の一例を、図6のフローチャートを用いて具体的に説明する。図6では、ユニークワードの探索を連続4回失敗した場合にオープンサーチ動作を実行する状態へと移行し、この移行回数をカウントして、カウンタが規定値に到達した場合に、待ち受け周期を3.6sに変更し、省電力モードへと移行する場合、を例に説明する。
【0038】
PHS通信端末100は、通常1.2s周期で発着呼有無確認動作を行いながら、待ち受け状態に留まる(S601)。制御部30は、この待ち受け状態では、空中のPHSフレームを常に受信して、そのフレーム中のユニークワードを探索している(S602)。
【0039】
制御部30は、このユニ―クワード探索に4回連続して失敗した場合には、オープンサーチカウンタ31の値を1増加させるとともに、オープンサーチカウンタメモリ部41にその値を保存して、オープンサーチ動作の実行状態へと移行させる(S603〜S606、S607)。そして、この動作を繰り返して、オープンサーチカウンタ31の回数が予め定めた規定値に達するまでの間、ユニークワードの探索を繰り返し行う(S608)。
【0040】
制御部30は、オープンサーチカウンタ31の回数が予め定めた規定値に達した場合には、オープンサーチカウンタ31のカウンタ値をゼロクリアし、待ち受け周期タイマ32のタイマ値を、それまでの1.2s周期から3.6s周期へと変更して間延びさせる(S609)。さらに、制御部30は、PHS通信端末100のモードを、省電力モードへと移行させる(S609)。なお、本実施の形態では、オープンサーチカウンタメモリ部41の値については、ゼロクリアしない。その理由は、オープンサーチ動作の発生回数は、電波状態の解析に利用可能であるためである。
【0041】
制御部30は、3.6s周期待ち受けであり、かつ、省電力モード状態を維持する(S610)。以下、この「3.6s周期待ち受け、かつ、省電力モード状態」を総称して、「省電力待ち受けモード」と定義する。
【0042】
制御部30は、省電力待ち受けモードにあっても、ユニークワードの探索と、4回連続探索失敗した場合のオープンサーチ動作の回数カウントは継続する(S611)。
【0043】
制御部30は、予め定めた一定時間の内で、オープンサーチ動作の回数が、予め定めた規定値より少なかった場合には、電波状態が改善されたものと判断して、1.2s周期の通常の待ち受け状態へと復帰する(S612)。なお、この際に、カウンタ値はゼロクリアする(S613)。
【0044】
制御部30は、予め定めた一定時間の内で、オープンサーチ動作の回数が、予め定めた規定値以上であった場合には、依然として電波状態は粗悪であるものと判断して、発着呼有無確認動作を実行する(S614)。制御部30は、発着呼が無い場合には、カウンタ値をゼロクリアして、省電力待ち受けモード状態を維持する(S615)。制御部30は、発呼または着呼が有った場合には、通信状態に移行し、通信終了もしくは通信中断する(S616、S617)。そして、省電力待ち受けモード状態に再び復帰する(S615)。
【0045】
以上に説明した本実施の形態によれば、電波状態が粗悪な環境において、断続的または継続的に発生する圏外状態時に、携帯電話等のPHS端末が、その圏外状態頻発の特徴を検知して、待ち受け周期を変更する、また、端末内部の未使用回路ブロックへの電源供給を停止する。
上述した実施の形態では、電波状態が粗悪な場合に、PHS通信端末100自身が、自動的に電波状態を検知して、待ち受け周期を1.2sから3.6sへと延ばし、さらに、発着呼有無確認時以外は、端末自身を省電力モードへと移行する。これにより、電池の消耗を軽減する。
【0046】
以下、本実施の形態によって奏する効果を説明する。
まず、第1の効果として、携帯電話等のPHS通信端末100が、電波状態が粗悪なことに起因してオープンサーチ動作が頻繁に発生するという環境下においても、電池の消耗を軽減できる点があげられる。
第2の効果として、PHS通信端末100の移動等によって電波状態が粗悪な状態から回復した時には、それまでの間は第1の効果によって電池の消耗を軽減できていたことから、その後のPHS通信端末100の稼働時間を延ばすことが可能となった点が挙げられる。
第3の効果としては、メモリ部40に格納したオープンサーチ動作発生回数の記録を解析することで、電池消耗の主要因を調査することが可能となった点が挙げられる。
【0047】
<発明の実施の形態2>
本実施の形態では、上述した発明の実施の形態1に係るPHS通信端末100の動作処理の変形例について説明する。なお、本実施の形態にかかるPHS通信端末100の構成例は、図3に示した実施の形態1の構成例と同様とすればよい。
【0048】
上述した実施の形態1では、省電力待ち受けモード状態への移行契機を、ユニークワード探索失敗によるオープンサーチ動作の回数増加としたが、本実施の形態では、電界強度の低下を契機として、省電力待ち受けモード状態へ移行する。
【0049】
図7の上部に示すように、電界強度は、通常、無線部20から制御部30へと送られる電気信号で認識される。電界強度は、その電気信号のプラス側振幅(電圧値)で認識される。この電圧値に対して予め規定値を定め、制御部30が、電圧値を常時、監視する。
【0050】
制御部30は、測定した電圧値が規定値を下回った場合に、電界強度が微弱になった(すなわち、電波状態が粗悪になった)ものと判断して、自動的に、省電力待ち受けモード状態へと移行させる(図7下部のタイミングa)。
【0051】
制御部30は、測定した電圧値が規定値を上回った場合に、電波状態が改善されたもの判断して、省電力待ち受けモードから1.2s周期の通常の待ち受けモードへと復帰する(図7下部のタイミングb)。
【0052】
なお、通信制御部30が行うこの一連の動作についても、メモリ部40に格納されたソフトウェアaが、制御部30を通して実行する。
【0053】
<発明の実施の形態3>
本実施の形態では、上述した発明の実施の形態1に係るPHS通信端末100の動作処理の変形例について説明する。なお、本実施の形態にかかるPHS通信端末100の構成例は、図8に示される。基本的には、図3に示した実施の形態1の構成例と同様であるが、電池残量検出回路90をさらに備えている。
【0054】
上述した実施の形態1では、省電力待ち受けモード状態への移行契機を、ユニークワード探索失敗によるオープンサーチ動作の回数増加としたが、本実施の形態では、電池残量の低下を契機として、省電力待ち受けモード状態へ移行する。
【0055】
電池残量の検出は、例えば、図8に示した電池残量検出回路90を用いて実現することができる。この電池の電圧値に対して予め規定値を定めて、制御部30が、電池の電圧値を計測することで電池残量を検出する。
【0056】
制御部30は、測定した電池残量が規定値を下回った場合に、電池残量が残り少量になったものと判断して、自動的に省電力待ち受けモード状態に移行させる。制御部30は、再充電等によって、測定した電池残量が規定値を再度上回った場合には、省電力待ち受けモードから1.2s周期の通常の待ち受けモードへと復帰させる。
【0057】
本発明に係るPHS通信端末は、利用分野として、例えば、電力、ガス、水道等の使用量の検針等で使用される遠隔監視装置への適用が考えられる。遠隔監視装置が本発明に係るPHS通信端末を用いて構成される場合に、遠隔監視装置の駆動時における電池の消耗を軽減できる。設置箇所の環境により遠隔監視装置はAC電力供給が困難な場合が多い。その様な環境では、遠隔監視装置を電池で駆動させる必要があり、電池の寿命延命が要求されるためである。
【0058】
ここで、図9を参照して、本発明の概要を改めて説明する。図9は、本発明に係るPHS通信端末の本質的部分のみを抽出して記載したブロック図である。PHS通信端末100は、アンテナ10を介して受信した電波を電気信号に変換する無線部20と、無線部20との間でのデータの送受信を制御する制御部30と、を備える。
【0059】
制御部30は、無線部20で変換された電気信号の中から所定のビット配列部分を探索する。制御部30は、この探索に失敗した回数が規定回数に達した場合には、オープンサーチ動作を実行する状態へと移行する。制御部30は、オープンサーチ動作の実行状態への移行回数が規定回数に達した場合には、発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期間隔がより長くなるように変更するとともに、端末内部の未使用回路への電源供給を停止させる省電力モードへと移行する。
【0060】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0061】
上記の複数の実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0062】
(付記1)
アンテナを介して受信した電波を電気信号に変換する無線部と、
前記無線部との間でのデータの送受信を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記無線部で変換された電気信号の中から所定のビット配列部分を探索し、当該探索に失敗した回数が規定回数に達した場合には、基地局を探索するオープンサーチ動作を実行する状態へと移行し、当該オープンサーチ動作の実行状態への移行回数が規定回数に達した場合に、発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期間隔がより長くなるように変更するとともに、端末内部の未使用回路への電源供給を停止させる省電力モードへと移行する、
PHS通信端末。
【0063】
(付記2)
オープンサーチカウンタメモリ部を更に備え、
前記制御部は、前記オープンサーチ動作を実行する状態へと移行した回数をカウントして、前記オープンサーチカウンタメモリに保持し、当該保持したオープンサーチ動作の実行状態への移行回数が規定回数に達した場合に、発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期間隔がより長くなるように変更するとともに前記省電力モードへと移行し、当該省電力モードへと移行した場合おいても、前記オープンサーチ動作の実行状態への移行回数を継続してカウントして前記オープンサーチカウンタメモリに保持し、一定時間のうちで、当該保持したオープンサーチ動作の実行状態への移行回数が規定回数に達しなかった場合には、前記発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期間隔をもとの値に変更するとともに前記省電力モードを解除する、
付記1に記載のPHS通信端末。
【0064】
(付記3)
前記制御部は、
前記所定のビット配列部分の探索に連続して失敗した回数が規定回数に達した場合に、前記オープンサーチ動作の実行状態へ移行する回数をカウントして保持するオープンサーチカウンタ部と、
前記待ち受け状態の周期間隔を設定保持する待ち受け周期タイマと、
と、を更に備える
付記1または2に記載のPHS通信端末。
【0065】
(付記4)
アンテナを介して受信した電波を電気信号に変換する無線部と、
前記無線部との間でのデータの送受信を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記無線部から送信される電気信号の電圧値を測定し、当該測定値が規定値を下回った場合には、基地局を探索するオープンサーチ動作を実行する状態へと移行し、当該オープンサーチ動作の実行状態への移行回数が規定回数に達した場合に、発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期間隔がより長くなるように変更するとともに、端末内部の未使用回路への電源供給を停止させる省電力モードへと移行する、
PHS通信端末。
【0066】
(付記5)
アンテナを介して受信した電波を電気信号に変換する無線部と、
前記無線部との間でのデータの送受信を制御する制御部と、
電池の電圧値を計測する電池残量検出回路と、を備え、
前記制御部は、前記電池残量検出回路により計測された電圧値が規定値を下回った場合には、基地局を探索するオープンサーチ動作を実行する状態へと移行し、当該オープンサーチ動作の実行状態への移行回数が規定回数に達した場合に、発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期間隔がより長くなるように変更するとともに、端末内部の未使用回路への電源供給を停止させる省電力モードへと移行する、
PHS通信端末。
【0067】
(付記6)
無線部で変換された電気信号の中から所定のビット配列部分を探索するステップと、
前記探索ステップで探索に失敗した回数が規定回数に達した場合には、基地局を探索するオープンサーチ動作を実行する状態へと移行するステップと、
前記オープンサーチ動作を実行する状態へと移行した移行回数が規定回数に達した場合に、発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期間隔がより長くなるように変更するとともに、端末内部の未使用回路への電源供給を停止させる省電力モードへと移行するステップと、
を備えるPHS通信端末の動作方法。
【0068】
(付記7)
無線部から送信される電気信号の電圧値を測定するステップと、
前記測定ステップでの測定電圧値が規定値を下回った場合には、基地局を探索するオープンサーチ動作を実行する状態へと移行するステップと、
前記オープンサーチ動作を実行する状態へと移行した移行回数が規定回数に達した場合に、発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期間隔がより長くなるように変更するとともに、端末内部の未使用回路への電源供給を停止させる省電力モードへと移行するステップと、
を備えるPHS通信端末の動作方法。
【0069】
(付記8)
電池の電圧値を計測するステップと、
前記計測ステップでの計測電圧値が規定値を下回った場合には、基地局を探索するオープンサーチ動作を実行する状態へと移行するステップと、
前記オープンサーチ動作を実行する状態へと移行した移行回数が規定回数に達した場合に、発着呼有無確認動作を実行する待ち受け状態の周期間隔がより長くなるように変更するとともに、端末内部の未使用回路への電源供給を停止させる省電力モードへと移行するステップと、
を備えるPHS通信端末の動作方法。
【符号の説明】
【0070】
100 PHS通信端末、
10 アンテナ、
20 無線部、
30 制御部、
40 メモリ部、
50 無線部電力供給部、
60 電池部、
70 表示部、
80 キーボード部、
90 電池残量検出回路、
200 PHS基地局、
図1
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図9