(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近時、建物の室内及び通路の壁面、間仕切、などの表面の装飾及び表示を、容易に変更
する為に着脱(取替え)可能なシート状磁石が用いられている。
シート状磁石の応用は、当初はスチール製の間仕切、机、ロッカー、などの表面を直接磁石の被着体として利用していたが、その用途が拡大するにつれて、非磁性体(木合板、石膏ボードなど)の壁面、間仕切、などの表面に強磁性体板(鉄板など)を貼り付けて磁石の被着体としたい要望が出てきた。そして次に考えられることは、その被着体を取り替えることにより表面の装飾の変更、部屋の模様替えを容易にすることである。
【0007】
本発明の課題は、ドア、間仕切、壁などを磁石の被着体の基体として使用する場合、被着体の表面材となる強磁性体板(鋼板など)には、装飾等の利便性をもたせると共に、皺が生じない状態で容易に着脱できる被着体構造の開発、を主体とする。
併せて、外力による表面凹みを生じない、更に使用時の貼着音を低減(磁石表示片などの貼着時のパチン、コツンなどの音)した被着体構造の開発も配慮する。
【0008】
強磁性体板(鋼板など)を容易に着脱できる被着体の開発の必要性を述べると、大きな面積で用いる場合の大きな問題として、被着体と吸着体の双方に可撓性が無いか乏しい場合、例えば壁面にシート状磁石を積層した被着体に可撓性が無い厚い鋼板を磁気吸着させる場合に、取り外し時は磁気吸着面全体の吸着力に抗して力を加える必要があり、又、目的の位置に磁気吸着するための位置合わせに於いても同様である。
例えば、被着体と吸着体の双方に可撓性が無い場合、汎用磁石の最低厚みは0.4mmであり、吸着力が低いもので15g/cm
2程度である。当然の事ながら小サイズである5×10cmでは0.75kgであるが、大サイズである80×200cmでは240kgと一人の人手で取り扱い難い力である。
【0009】
その対策として、従来の方法のように可撓性を有する厚みの薄い鋼板を用いてシート状磁石を部分的に短冊状などで不連続に用いると、鋼板の浪打や着脱作業時にシート状磁石を用いない部分に曲げ応力の集中による曲がり癖や永久皺が入り易い不都合がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、着脱作業性、耐応力性(耐外力による表面凹み)、静音性(表示片などの磁石貼着時の音の軽減)、など、種々研究の結果、着脱作業性としては特定サイズで強磁性体板部材(鋼板)との磁気吸着力が特定範囲である少なくとも一方向(着脱方向になる)に連続する帯状のシート状磁石を用いて部分的に使用すること、及び特定厚みの強磁性体板(鋼板など)を用いることにより解決できることを見出した。
【0011】
そうして耐応力性についてはスペーサーシートを用い、静音性については制振性能を有するシートをスペーサーとして用いることで解決できることを見出し、更に接着剤として発泡体を基材とする両面テープを用いることでシート状磁石の厚みバラツキ、スペーサーの厚みバラツキ、基体のソリなどによる間隙形成による吸着力乃至制振効果の低減を防止すことによって本発明を完成するに至った。
【0012】
更に詳しく課題を解決するための手段を述べると、
1、磁石の被着体の基体として、ドア、間仕切、壁などを用いて、その表面に厚み0.3〜1.0mm、幅10〜120mmで強磁性体板部材(鋼板)との磁気吸着力が15〜75g/cm
2である帯状のシート状磁石を、少なくとも一方向に連続的に用いて四周、格子状、平行線状などに、接着剤を用いて積層又は磁気吸着力で貼着し、さらに、帯状のシート状磁石の上面には、0.2〜0.5mmの強磁性体板部材(鋼板など)を磁気吸着にて貼着してなる磁石の被着体構造であって、強磁性体板部材(鋼板など)の少なくとも片面には表装又は黒板、白板の加工が施されていて、両面に表装又は黒板、白板の加工が施されている場合は、裏返して用いる両面使いも可能とした構成でなる磁石の被着体構造とした。
【0013】
2、この場合において、シート状磁石を四周、格子状、平行線状など部分的に積層又は磁気貼着によって生じる磁石の被着体の基体表面と、磁石の被着体となる強磁性体板部材との間に形成される空間部に、使用環境から受ける圧力よる凹変形を防止するためのスペーサーシートを、磁石の被着体の基体表面に接着剤を用いて積層又は、磁気吸着力によって貼着し、背面を強磁性体板部材に密着又は磁気吸着するように構成してもよい。
【0014】
3、なお、スペーサーシートは、制振性能を有するシートとしてもよい。
【0015】
4、また、磁石の被着体の基体表面が、非磁性体であり、その表面に帯状のシート状磁石を接着剤を用いて積層し、シート状磁石の厚みと接着剤層の厚みを加算した厚みに対して、スペーサーシートの厚みと接着剤層の厚みを加算した厚みの方が0〜8%の範囲内で厚く成るようにスペーサーシートを磁石の被着体の基体表面に積層し、背面を強磁性体板に密着させて成る構成とすることができる。
【0016】
5、あるいは、磁石の被着体の基体表面が強磁性体(鋼板など)であり、その表面に帯状のシート状磁石を磁気吸着力で貼着、又は接着剤によって積層し、シート状磁石の厚み又は、シート状磁石の厚みと接着剤層の厚みを加算した厚みに対して、スペーサーシートの厚み、又はスペーサーシートの厚みと接着剤層の厚みを加算した厚みの方が0〜8%の範囲内で厚く成るようにスペーサーシートを磁石の被着体の基体表面に積層、又は貼着し、背面を強磁性体板に密着させて成る構成とすることも可能である。
【0017】
6、なお、制振性能を有するスペーサーシートが有機高分子系粘弾性体、又は有機高分子系粘弾性体磁性ゴムであり、磁石の被着体の基体を制振材の拘束層として用いる構成としてもよい。
【0018】
7、さらに、帯状のシート状磁石又は及びスペーサーシートと磁石の被着体の基体との接着剤として、発泡体を基体とする両面粘着テープを用いることで、帯状のシート状磁石及びスペーサーシートの厚みバラツキ、及び磁石の被着体の基体の平坦度バラツキによる間隙生成を防止して磁気吸着力、制振性能の低下を防止する構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0019】
1、大きい面積による大きな総磁気吸着力でも着脱作業が容易にできる。
大きい面積における大きな総磁気吸着力でも着脱作業を容易にするために、特定サイズで強磁性体板部材(鋼板)との磁気吸着力が特定範囲である少なくとも一方向(着脱方向になる)に連続する帯状のシート状磁石を用いて部分的に使用すること、及び特定厚みの強磁性体板(鋼板など)とすることで、適度の磁気吸着力、及び適度の強磁性体板(鋼板など)の着脱作業時の撓みによって、着脱作業時の作業者に掛かる磁気吸着力が低減され着脱作業が容易にできる。
【0020】
それによって従来の方法のように、全面にシート状磁石を用いることでの過大な総磁気吸着力による着脱作業の難作業、又は、シート状磁石を部分的に短冊状などで不連続に部分的に用いることによる適度の磁気吸着力を得る方法によることでの被着体である鋼板の浪打や着脱作業時にシート状磁石を用いない部分に曲げ応力の集中による曲がり癖を生じたりしなくなる。
【0021】
又、本発明のものは、強磁性体板部材(鋼板など)の表装を両面に施すことで二面使い(裏返して使用)が可能で表装の変更に有利である。
【0022】
2、強磁性体板部材(鋼板など)の使用時の凹変形を防止及び表示磁石片などの磁気吸着時の騒音の低減
磁石の被着体の基体表面と強磁性体板部材(鋼板など)の間に形成される空間部に、使用環境から受ける圧力よる凹変形を防止するためのスペーサーシートを充填し、該スペーサーシートを、制振性能を有するシートとすることで使用時の表示磁石片などの磁気吸着時の騒音が低減できる。
【0023】
3、シート状磁石の厚み、制振材の厚み及び被着体基材の平坦性バラツキによる性能低下を防止する。
シート状磁石及び制振材の被着体基材への接着剤として、発泡体を基材とする両面粘着剤を用いることで、シート状磁石及び制振材の厚みバラツキ、磁石の基体表面の平坦性(反り)による間隙生成が防止され、磁気吸着力及び制振性能の低下を防止する。即ち、発泡体の基材の厚み方向の伸縮により部材の厚み方向バラツキなどを吸収することで磁気吸着力及び制振性能の低下を防止する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を
図1〜
図9に基づいて説明する。
(1)、
図1は本発明の基体をドアにした磁石の被着体の1例を表わしたものであり、
図1(a)は正面図(模式図)、
図1(b)はA1−A1’断面図(模式図)、
図1(c)はB1−B1’断面図(模式図)を示している。
なお、1Aは本発明の1例であるドアを基体とした磁石の被着体を示す。2は基体であるドアであり木製のフラッシュドア、又は、スチール製のドアである。
【0026】
3は、連続する帯状のシート状磁石であり、該シート状磁石は永久磁石材料である硬質磁性材料粉末とバインダーである少量のプラスチック又は、ゴム・エラストマーから主体に構成される組成物を加熱混練後、圧延又は押出成形によって厚み0.3〜1.0mmのシート状に成型後、磁界を印加して着磁したものを幅10〜120mmにスリットして用いる。そして着磁面にブロッキング(温度、荷重、時間によって接着剤を用いでも接着する自着現象)防止の表面処理を施したものが好ましい。又、後述する基体が強磁性体(鋼板など)であり、両面に磁極が形成された異方性シートの状磁石を用いて磁気吸着力で貼着する場合は、両面にブロッキング防止の表面処理を施したものが好ましい。
【0027】
前記組成物中の硬質磁性材料粉末は、経済的、性能的にフエライト系磁石材料粉(ストロンチュウムフエライト、バリュウムフエライトなど)が好適である。フエライト系磁石材料粉の充填量は、55〜60容積量%程度で用いられる。そして、フエライト系磁石には等方性(どちらの方向から磁化しても等しい磁力が得られるタイプ)と、異方性(特定の方向から磁化すると優れた磁力が得られるタイプ)が有り、異方性の場合は磁化容易軸を揃える配向処理が必要で、シート成形時に機械配向又は磁場配向を行う。異方性シート状磁石は等方性の約2倍の吸着力が得られる。
【0028】
異方性シート状磁石の厚みに適した多極着磁の極間のものは、片面より多極着磁を施して両面に磁極が形成される。そして基体(強磁性体)と強磁性体板部材間に異方性シート状磁石が存在することで、磁気閉回路を形成し強い磁気吸着力が得られる。この時の磁気吸着力は着磁面に対して非着磁面は略80%であるので、基体(強磁性体)に対して着磁面とし、強磁性体板部材に対して非着磁面とすることで、強磁性体板部材の着脱時に基体とシート状磁石の磁気吸着が維持される。例えば実施例8〜10、12、比較例2がそれである。
【0029】
磁石の着磁面と被着対面(強磁性体)の間に非磁性体が存在すると磁石のエアーギャップとなり磁気抵抗となるので、鋼板の表装、粘着テープの使用は磁気吸着力の低下を招く。
又、磁気閉回路を形成の効果を期待できないので実施例11、13、14では基体とシート状磁石の接着に両面粘着テープを用いている。そして実施例11では鋼板の表装による磁気吸着力の低下の補償としてシート状磁石の厚みを0.5mmとしている。
【0030】
得られる磁気吸着力は、磁石の磁気特性、サイズ(厚み、面積)によって決まるが、用いるシート状磁石の吸着力は15〜75(g/cm
2)の範囲内で用途により選ぶのが良い。
15g/cm
2以下では大きい面積使いに成り、又スペーサーを挿入する空間が少なく成るなど好ましくなく、75g/cm
2以上では後述するシート状磁石の幅の最低限において吸着力過多となる可能性があり経済的にも好ましくない。
【0031】
汎用シート状磁石の最低厚みは0.4mm程度であり、0.3mmより薄くなると吸着力が低下するが加工性が悪くなるなどで価格が割高となるので好ましくない。又、1.0mmより厚くなると用途的に吸着力過多になる場合が生じるし、また不経済でもある。
幅は、10〜120mmが望ましく、10mmより狭いと強磁性体板部材の厚みによっては強磁性体板部材が外部応力による変形、又はシート状磁石に外部応力による変形を生じる可能性があり、120mmを超えると総磁気吸着力過多となり着脱作業に適した仕様が得られなくなる可能性がある。又、スペーサーを挿入する空間が少なく成るなど好ましくない。
【0032】
強磁性体板部材の中継ぎ部、例えば
図8の壁に於いてシート状磁石の幅を、縦端部と横各部が40mmとすると、中継ぎ部は40mmものが2本接するのではなく80mm1本使いにする方が施工及び継ぎ目が強磁性体板部材のみとなり仕上がりが良くなる。
【0033】
連続する帯状のシート状磁石の配置は、ドアに対する配置例である
図5(a)〜(f)のように各パターンが挙げられるが、基体がドアだけでなく間仕切り、壁などについても同様であり、用途に応じて選択すればよい。
なお、帯状のシート状磁石は、1辺を必ずしも1部材で形成する必要はなく、連続するようにしてあれば複数部材で形成してもよい。
また、形状的に帯状のシート状磁石同士が交差する場合は、重なることを避け、片方を切り取る様な形態で実施する。その際、配置形状上の隙間が生じても何ら支障はない。
【0034】
配置例を順に説明すると、
図5(a)は4周と複数の水平筋でなる内部とで構成したものであり、具体的には、長辺用シート状磁石3a,3aと、短辺用シート状磁石3b、3bとで4周を形成し、内部には短辺用シート状磁石と同形状でなる水平筋用シート状磁石3c、3c、3cを略等間隔で配置している。
【0035】
図5(b)は4周と格子筋でなる内部とで構成したものであり、具体的には、長辺用シート状磁石3aを3本と、短いシート状磁石3dを6本で構成している。
このように、4片における短辺を、必ずしも
図5(a)の3bのような1部材で形成する必要はなく、他の片の扱いについても柔軟に対応すればよいのであって、このような対応は、本配置例に限ることなく実施してよい。
【0036】
図5(c)は両側と内部とを複数の平行筋で構成したものであり、具体的には、長辺用シート状磁石3aを4本にて平行に配置した単純な構成となっている。
【0037】
図5(d)は4周のみで構成したものであり、長辺用シート状磁石3a,3aと、短辺用シート状磁石3b、3bとで構成されている。
【0038】
図5(e)は4周と上下Y字状の筋でなる内部とで構成したものであって、具体的には、長辺用シート状磁石3a,3aと、短辺用シート状磁石3b、3b、及び、内部構造用シート状磁石3e、3f、3g、3h、3iとで構成されている。
なお、内部構造用シート状磁石のうち、3e、3f、3g、3hについては、図示されているように端部を他部材の形状に沿って綺麗にカットする、ことに限らず、長手方向と直角にカットして使用してもよい。
【0039】
図5(f)は4周とX字状の筋でなる内部とで構成したものであって、具体的には、長辺用シート状磁石3a,3aと、短辺用シート状磁石3b、3b、及び、対角線用シート状磁石3j、対角線用分割シート状磁石3k、3mとで構成されている。
なお、この場合も、対角線用シート状磁石3j、対角線用分割シート状磁石3k、3mについては、図示されているように端部を他部材の形状に沿って綺麗にカットする、ことに限らず、長手方向と直角にカットして使用してもよい。
【0040】
4は、強磁性体板部材であり、厚み0.2〜0.5mmの鋼板(亜鉛メッキ鋼板、塗装亜鉛メッキ鋼板、表装を施した亜鉛メッキ鋼板、磁性ステンレス鋼板、鉄合金板)などである。汎用的には表装を施した亜鉛メッキ鋼板、特に防錆を考慮する場合は磁性ステンレス鋼板(フエライト系ステンレス鋼板)が経済的、性能的に好ましい。又、鋼板製の黒板や書き消し可能な白板部材も用いることが出来る。
【0041】
図9は、磁石の被着体40と、それに磁気吸着した磁気吸着体41、42を取り除く場合に必要な力を示す側面図(模式図)であり、
図9(a)のように磁石の被着体40と、それに磁気吸着した磁気吸着体41の両者に可撓性が無い場合は、L1で示す全面の総磁気吸着力に抗しての力を要するが、
図9(b)のように磁気吸着体42がある程度の可撓性を有する場合は、L2で示す面の総磁気吸着力に抗しての力ですむ。そして、この場合は更に持ち上げるとL2が左方向に移動して行き略最初の力で全面を取り除くことが出きる。
【0042】
強磁性体板部材の可撓性は、主として厚みに比例するので用途、全面積の大小、スペーサーの有無により選ぶことに成るが、厚み0.2〜0.5mmの範囲が好ましく0.2mmより薄いと外力により凹みを生じる可能性があり、0.5mmより厚いと可撓性が不足となり、取り除くに要する力が大きく成り好ましくない。より好ましい範囲は0.30〜0.40mmである。
【0043】
5は、表装材であり、塗装印刷層、ビニル壁紙(粘着剤処理)などである。又、4と5からなる塗装印刷鋼板、プラスチックラミネート鋼板であっても良い。
そして、図示していないが表装材を強磁性体板部材の両面に施しても良く、そうする事で両面使いの被着体部材となる。
8は、被着体部材4を剥ぎ取る場合に挿入する冶具のためのシート状磁石に施した切欠けである。上端部左右及び下端部左右に其々2箇所設けるのが望ましい。
【0044】
図2は、本発明の基体をドアにした磁石の被着体の他の1例を表わしたものであり、
図2(a)は正面図(模式図)、
図2(b)はA2−A2’断面図(模式図)、
図2(c)はB2−B2’断面図(模式図)を示している。
なお、1Bは本発明の他の1例であるドアを基体とした磁石の被着体を示す。6は、スペーサーである。スペーサー6を施した以外は1Aと同様である。
【0045】
外力による凹み防止をするためのスペーサーでとしては、木製合板、繊維板、厚紙、含浸厚紙、ダンボール、無機質板、無機質粉充填エラストマー板、プラスチック板、ゴム板などが上げられる。そして他の機能を持つスペーサーとしては制振材、遮音材、吸音材などが挙げられる。
【0046】
スペーサーに用いる制振材としては、ゴム発泡体(発泡ブチルゴム、発泡アクリロノトリルブタジエンゴム、発泡天然ゴム、発泡ポリウレタン、発泡ネオプレンゴム、発泡SBRなど)、高分子系粘弾性材料、鱗片状の無機物又は及び磁性材料粉末を充填した樹脂系複合材料(振動による分散材の相互摩擦により振動エネルギーを吸収させるもの、又、フエライトなど磁性材料粉末を使用して、前記摩擦効果に磁気摩擦作用を組み合わせたもの)、圧電粒子と導電粒子を充填した樹脂系複合材料(高分子マトリックスに表面にアンチモンをドーブした二酸化錫からなる導電体層を設けた針状に酸化チタン微細粒子からなるもの)、磁性ゴム(片面に多極着磁を施したブチルゴム磁石、両面に多極着磁を施したブチルゴム磁石など)が挙げられる。
【0047】
上記制振材の中でも、本発明に用いる制振部材としては、充填するスペースの厚みが薄いので、有機高分子系粘弾性体シート又は、有機高分子系粘弾性磁性ゴム制振材を用いた拘束型制振構造にするのが望ましい。
【0048】
前記、拘束型制振構造とするために、シート状磁石の厚みと接着剤層の厚みを加算した厚み、又はシート状磁石の厚み(被着体の基体に磁気吸着させる場合)に対して、スペーサーシートの厚みと接着剤層の厚みを加算した厚み、又はスペーサーシートの厚み(磁性粘弾性体を磁気吸着させる場合)の方が0〜8%の範囲内で厚く成るようにスペーサーシートを磁石の被着体の基体表面に積層、又は貼着して背面を強磁性体板に密着させる必要がある。0%より小さいと背面が強磁性体板に密着しなくなり、8%を超えると強磁性体板を保持する磁気吸着力の低下を無視できなくなる可能性を生じる。そうして接着剤に発泡体を基材とする両面粘着テープを用いた場合は、厚み方向の伸縮によって厚み差を吸収するので、この許容範囲が緩和される。
【0049】
図3は、基体をドアにした磁石の被着体における比較例の1例を表わしたものであり、(a)は正面図(模式図)、(b)はA3−A3’断面図(模式図)、(c)はB2−B3’断面図(模式図)を示す。
なお、この比較例は、後述する比較例1に相当する構成を示しており、シート状磁石9を被着体全面に設けた、磁石の被着体100となっている。
但し、この構成は、総磁気吸着力が過大であり着脱作業性が劣り、又、静音性の付与するための制振材を施すスペースも無いので好ましくない。
【0050】
図6は、比較例のシート状磁石の配置を示したものである。
そして、
図6(a)は比較例1を表したものであり、シート状磁石9は、被着体全面に取り付ける1枚ものの形態となっている。
また、
図6(b)は比較例2を表したものであり、シート状磁石は、長辺用シート状磁石3wa,3waと、短辺用シート状磁石3wb、3wbとで4周を形成し、内部には垂直シート状磁石3wcからなる帯状のシート状磁石を使用するが、各帯状のシート状磁石の幅は、本発明の幅から逸脱した幅広の形態となっている。
【0051】
図4は、本発明の基体をドアにした磁石の被着体に額縁を施した1例を表わしたものであり、
図4(a)は正面図(模式図)、
図4(b)はA4−A4’断面図(模式図)、
図4(c)は
図4(b)の部分拡大図を示している。
尚、この基体をドアとした磁石の被着体1Cは、基体であるドア2の表面における4周に沿って、強磁性体板部材4の表装材5の4周をわずかに覆う突出片7aを形成した額縁7を設けた構成となっている。
【0052】
(2)、
図7は、本発明の基体を間仕切とした磁石の被着体の1例を表わしたものであり、
図7(a)は正面図(模式図)、
図7(b)はB4−B4’断面図(模式図)を示している。
具体的には、基体である間仕切21に対し、基体を間仕切とした磁石の被着体20を取り付けた構成となっている。
なお、掲示板的配置であるが、縦長、幅広になど用途に応じて展開すればよい。
【0053】
(3)、
図8は、本発明の基体を石膏ボード壁とした磁石の被着体の1例を表わしたものであり、
図8(a)は正面図(模式図)、
図8(b)はA5−A5’断面図(模式図)を示している。
具体的には、基体である壁31に対し、基体を石膏ボード壁とした磁石の被着体30を取り付けた構成となっている。
なお、横長、幅広など用途に応じて展開すればよい。
また、図面は、実施例の性能評価において本発明に用いる磁石の被着体の各基体による性能発現の比較も出きるように構成を同様にしている。
【0054】
以下実施例を用いて、本発明を説明する。
・実施例1〜7及び比較例1の構成と性能について表1にまとめ、実施例8〜14及び比較例2の構成と性能について表2にまとめている。
【実施例1】
【0055】
1、磁石の被着体1Aの基体2
・磁石の被着体1Aの基体2として、フラッシュドア(トステム社製)サイズ82cm×202cmを用いる。
2、シート状磁石3の作成
(配合)(配合No1)
・塩素化ポリエチレンエラストマー(エラスレン301A/昭和電工社製)〔粘結剤〕
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100重量部
・エポキシ化大豆油(W100EL)(大日本インキ化学社製)
〔可塑剤〕・5重量部
・ステアリン酸カルシュウム(SC100)堺化学社製〔滑剤〕・・・・・・2重量部
・ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(ヨシノックスDLTP)吉富製薬社製〔酸化防止剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2重量部
・異方性ストロンチュウムフエライ(OP−56)DOWAエフテック社製〔硬質磁性材料粉=磁石材料粉〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・799重量部
(硬質磁性材料粉の充填量:88.00重量%、61.48容量%、)
【0056】
(ペレットの作成)
・上記配合に従って加圧ニーダー(40L)にて120℃×15分混練後、冷却した後ハンマー型粉砕機で粉砕ペレットを作成する。
【0057】
(シート状磁石原反の作成)
・上記ペレットをφ18インチ2本ロール圧延機(表面温度75℃)にてペレット圧延を行い0.4mm厚×110mm幅のシート状磁石原反を作成する。
【0058】
(着磁)
・上記シート状磁石原反の片面より、公知の永久磁石型着磁ロール(極間2.5mmピッチ多極)に接触させて連続多極着磁を施す。これによってシート状磁石を得る。
(スリット)
・上記のシート状磁石を、スリッターを用いて40mm幅にスリットすることによって帯状のシート状磁石3を得る。
【0059】
3、シート状磁石3の基体2への張り付け
・上記の40mm幅シート状磁石を両面粘着テープ・ダイタック8800CH(基材:不織布、粘着剤:アクリル系、厚み:0.145mm)(大日本インキ化学社製))を用いて、基体である上記のフラッシュドアに
図1のように四周及び横方向に4分割線上に積層する。この仕様による強磁性体板部材4に対するシート状磁石の使用面積率は19%となる。
【0060】
4、強磁性体板部材を磁気貼着
・磁石の被着体の強磁性体板部材4としての、表面に表装(塗装)5を施した溶融亜鉛メッキ冷間圧延鋼板0.4mm厚×80cm幅×200cm長を大巻状態から1端をドアの所定位置から磁気貼着して順次広げて行く。
【実施例2】
【0061】
1、磁石の被着体1Bの基体2を、実施例1と同様にする。
2、シート状磁石3の作成を、実施例1と同様にする。
3、シート状磁石3の基体2への張り付けを、実施例1と同様にする。
4、スペーサーシート・酸化鉄高充填シートの作成。
(配合)(配合No2)
・前記シート状磁石配合の硬質磁性材料粉(異方性フエライト粉)を酸化鉄粉スケールA(竹内工業社製)に置換して、充填量を88.14重量%、60.12容量%とし、厚みを0.41mmとする以外はシート状磁石の作成と同様にする。(但しスリットと着磁工程は不要)、そして積層する空間部の寸法45×72cmに対して44×71cmに裁断する。
【0062】
5、スペーサーシート6の基体2への張り付け
・
図2に示す、磁石の被着体1Bの基体表面2と強磁性体板部材4の間に形成される空間部に、使用環境から受ける圧力による凹変形などを防止するためのスペーサーシート6の片面に、両面粘着テープ・ダイタック8800CH(基材:不織布、粘着剤:アクリル系、厚み:0.145mm)(大日本インキ化学社製))を用いて、磁石の被着体の基体2の表面に積層する。
【0063】
6、強磁性体板部材を磁気貼着
・強磁性体板部材4としての、表面に表装(塗装)5を施した溶融亜鉛メッキ冷間圧延鋼板0.4mm厚×80cm幅×200cm長を大巻状態から1端をドアの所定位置から磁気貼着して順次広げて行く。
【実施例3】
【0064】
・スペーサーシート6を、制振性能を有するシートを用いる他は、実施例2と同様にする。(但し強磁性体板部材4の厚みを0.27mmとする)
1、スペーサーシート・有機高分子粘弾性体/フィラー複合シートの作成)
(配合)(配合No3)
・ブチルゴム(268/日本ブチル社製)ムーニー粘度51/ML1+8(125°C)
〔粘結剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100重量部
・ポリブテン(10N/日油ポリブテン社製)〔ゴム改質剤〕・・・・・・20重量部
・重質炭酸カルシュウム(SL−300、平均粒子径5μm/竹原化学工業社製)〔フィラー〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42重量部
・カーボン(#35/旭カーボン社製)〔フィラー〕・・・・・・・・・・12重量部
鱗片状黒鉛(SC−601/中越黒鉛社製)〔フィラー〕・・・・・・・・18重量部
・ステアリン酸カルシュウム(CS100/堺化学社製)〔滑剤〕・・・・・4重量部
(フィラーの充填量:36.73重量%、18.67容量%、)
【0065】
(ペレットの作成)
・上記配合に従ってブレンダーにて攪拌混合したものを、16インチ混練りロールで混練(ロール表面温度80°C)後板揚げする。冷却後、角ペレタイザーにて角ペレットを作成する。
(有機高分子粘弾性体/フィラー複合シートの作成)
・上記ペレットを用いてφ65mm単軸押出機(L/D18)にフィッシュテール型ダイスを付けて、80〜120°Cで0.5mm厚×500mmのシートを押出し、その直後に12インチ2本ロール圧延機(ロール表面温度40〜60°C)にて0.41mm厚の有機高分子系粘弾性体/フィラー複合シートを作成する。
【0066】
2、拘束型制振構造の形成
・スペーサーシート6の表面と強磁性体板部材4の裏面が密着する。此れによりスペーサーシート6の片面は磁石の被着体の基体表面2に積層され、他の片面は強磁性体板部材4の背面と密着するので、一種の拘束型制振構造が形成される。
【実施例4】
【0067】
・シート状磁石3を、等方性シート状磁石の厚みを0.8mmとし、強磁性体板部材4を0.4mmとし、スペーサーシート6を0.41mm厚×2枚重ねで使用する他は実施例3と同様にする。
1、シート状磁石3(等方性)の作成
(配合)(配合No4)
・硬質磁性材料粉=磁石材料粉を、等方性ストロンチュウムフエライ(HM403)フィージャーマグネックス社製とし、充填量:87.00重量%、59.28容量%とする以外は実施例1と同様にする。
【実施例5】
【0068】
・シート状磁石3の厚みを0.5mmとし、強磁性体板部材4を両面に表装(塗布厚50μm)を施したものとし、スペーサーシート6の厚み0.46mm、基体2に積層するために用いる接着剤を、発泡体を基材とする粘着テープ(アクリフオーム7840厚さ0.2mm/寺岡製作所)にする他は、実施例3と同様にする。
体する。
【実施例6】
【0069】
・シート状磁石3の、磁石の被着体1Bの基体2に積層するために用いる接着剤を、発泡体を基材とする粘着テープ(アクリフオーム7840厚さ0.2mm/寺岡製作所)とし、スペーサーシート6の厚み0.42mmにする他は、実施例5と同様にする。
【実施例7】
【0070】
・磁石の被着体1Bの基体2を、石膏ボードの壁とする以外は実施例6と同様にする。
【0071】
(比較例1)
・シート状磁石3を、等方性(配合処方は実施例4と同様)厚み0.4mm×幅を800mmとする以外は実施例1と同様にする。
【実施例8】
【0072】
・磁石の被着体1Bの基体2として、スチール製ドア(サイズ82cm×202cm)(コマニー社製)を用い、シート状磁石3がスチール製ドア表面と強磁性体板部材4間に介在することで磁気閉回路を形成し強い磁気吸着力で磁石の被着体1Bの基体2に貼着できるので、シート状磁石3のサイズを0.40×25mmとする以外は実施例1と同様にする。
【実施例9】
【0073】
1、磁石の被着体1Bの基体2を実施例8と同様にする。
2、シート状磁石3を実施例8と同様にする。
3、シート状磁石3の基体2への張り付けを、実施例8と同様にする。
4、スペーサーシート6(酸化鉄高充填シート)の積層
・スペーサーシート6(酸化鉄高充填シート)の厚みを0.36とし、積層に用いる接着剤を粘着テープ・8080NR、アクリル系0.05mm厚(大日本インキ化学社製)を用いる以外は実施例2と同様にする。
【実施例10】
【0074】
・制振性能を有するスペーサーシート6を、実施例3と同様にする(但し厚みを0.36mmとする)以外は実施例9と同様にする。
【実施例11】
【0075】
1、磁石の被着体1Bの基体2を実施例8と同様にする。
2、シート状磁石3を異方性0.50厚×40mm幅とする。
3、シート状磁石3の基体2への張り付けの接着を両面粘着テープ・ダイタック8800CH(基材:不織布、粘着剤:アクリル系、厚み:0.145mm)(大日本インキ化学社製)を用いる。
【0076】
4、強磁性体板部材4を、両面に表装(塗膜の厚み50μm)を施したものを用いる。
5、スペーサーシート6を、実施例10と同様とし(但し厚みを0.50mmとする)、積層に用いる接着剤として発泡体を基材とする粘着テープ(アクリフオーム7840厚さ0.2mm/寺岡製作所)にする。
6、強磁性体板部材4の磁気貼着は実施例9と同様にする。
・シート状磁石3を0.5mm厚×40mm幅とする理由は、磁石の被着体1Bの基体2との接着剤として両面粘着テープを用いること、及び強磁性体板部材4を両面に表装を施したものを用いることで、エアーギャップ(磁石の着磁面から被着体・強磁性体までの距離)を生じる事による磁力の低下を補償するためである。
【実施例12】
【0077】
・制振性能を有するスペーサーシート6を、有機高分子系粘弾性磁性ゴムとし基体2への張り合せを磁気吸着力による貼着である以外は実施例10と同様とする。
【0078】
1、制振性能を有する有機高分子系粘弾性磁性ゴム(磁性ゴムシート)の作成
(配合)(配合No5)
ブチルゴム(268/日本ブチル社製)ムーニー粘度33/ML1+8(125°C)
〔粘結剤〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100重量部
パラフィン系プロセスオイル(PW90)/出光興産〔軟化剤〕・・・・・25重量部
ステアリン酸カルシュウム(CS100/堺化学社製)〔滑剤〕・・・・・・3重量部
等方性ストロンチュウムフエライ(HM403)フィージャーマグネックス社製〔硬質磁性材料粉=磁石材料粉〕・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・715重量部
(硬質磁性材料粉の充填量:84.82重量%、50.00容量%)
【0079】
(ペレットの作成)
・上記配合に従ってブレンダーにて攪拌混合したものを、16インチ混練りロールで混練(ロール表面温度85°C)後板揚げする。冷却後、角ペレタイザーにて角ペレットを作成する。
(磁性ゴムシート原反の作成)
・上記ペレットを用いてφ65mm単軸押出機(L/D18)にフィッシュテール型ダイスを付けて、80〜115°Cで0.5mm厚×500mm幅のシートを押出し、その直後に12インチ2本ロール圧延機(ロール表面温度40〜60°C)にて0.41mm厚の磁性ゴムシート原反を作成する。
【0080】
(着磁)
・上記シート状磁石原反の片面より、公知の永久磁石型着磁ロール(極間2.5mmピッチ多極)に接触させて連続多極着磁を施す。これによって磁性ゴムシート(粘弾性磁性ゴム制振材)を得る。(磁性ゴムシートの非着磁面と強磁性体部材との磁気吸着力は1.0g/cm
2である)
【実施例13】
【0081】
・シート状磁石3を、異方性0.4mm厚×40mm幅とし、基体2への積層に用いる接着剤を、発泡体を基材とする両面粘着テープ(アクリフオーム7840厚さ0.2mm/寺岡製作所)とし、磁性ゴムシートの厚みを0.63mmにする以外は実施例12と同様にする。(磁性ゴムシートの非着磁面と強磁性体部材との磁気吸着力は1.1g/cm
2である)
【実施例14】
【0082】
・基体2を、スチール製間仕切りと以外は実施例13と同様にする。
【0083】
(比較例2)
・シート状磁石3を、異方性0.4mm厚×150mm幅とする以外は実施例と同様にする。
【0084】
次に、性能評価試験方法などについて説明する。
(性能評価方法)
1、磁気吸着力
(1)シート状磁石と強磁性板部材との磁気吸着力測定方法
・一辺が40mmの正方形の強磁性板(鋼板)の裏面を、テーブルに固定した平滑なプラスチック板の表面に両面テープを用いて積層する。一方、一辺が30mmの正方形のシート状磁石の非着磁面を、背面の中央に引っ掛けを設けた一辺が40mmの正方形のプラスチック板の表面に両面テープを用いて積層する。そうして強磁性板とシート状磁石を磁気吸着させて、垂直方向に引き離すに要する力を引っ掛けにバネ秤を引っ掛けて測定し、g/cm
2を算出する。
【0085】
(2)着磁面に鋼板を磁気貼着したシート状磁石の裏面と強磁性板部材との磁気吸着力測定方法
・一辺が40mmの正方形の鋼板をテーブルに固定した平滑なプラスチック板の表面に両面テープを用いて積層し、その面にシート状磁石の着磁面を磁気吸着させる。一方、一辺が30mmの正方形の強磁性体板を、背面の中央に引っ掛けを設けた一辺が40mmの正方形のプラスチック板の表面に両面テープを用いて積層する。そうして強磁性体板とシート状磁石の背面を磁気吸着させて、垂直方向に引き離すに要する力を引っ掛けにバネ秤を引っ掛けて測定し、g/cm
2を算出する。
【0086】
(3)端部引き揚げ力
(強磁性体板部材を端部から剥離を生じ始めるに要する力の測定法)(800mm幅の場合)
・予め、強磁性体板部材の長さ方向の一端3mm内側で、幅方向(800mm)に一端より50、150、250、350、450、550、650、750の各点にφ1mmの穴をあけたものを、基体より外側に4mmずらして貼着する。一方コートハンガー形冶具の長辺に、前記各穴に対応してφ1mmの穴をあけ、針金で結びつけてコートハンガー形冶具の中央に設けた引っ掛けに、バネ秤をつけて端部から剥離を生じ始めるに要する力を測定する。
【0087】
2、着脱作業性の評価
・成人男性が着脱作業を行い、着脱作業の難易度を4段階(◎、○、△、× )に、評価した。
3、静音性の評価
・前記、ドア又はドア仕様に作られた磁石の被着体に於いて、帯状のシート状磁石で縦方向に4等分された上から3番目の区画の中央に、異方性シート状磁石(1mm厚×30mm×60mm)の長さ方向の片端をドア表面に当て他の端をドアより25mm離れた位置で指先から離して磁気吸着する時の音を、成人男性3人の聴覚により音の強さを、4段階(◎、○、△、× )に、評価した平均で求めた。
【0088】
(次に試験結果などについて説明する)
・実施例1〜7及び比較例1の構成と性能について表1にまとめ、実施例8〜14及び比較例2の構成と性能について表2にまとめている。
【0089】
【表1】
【0090】
(表1の注記)
・Fドア:フラッシュドア(木製)(82×202cm)
・壁:基体が石膏ボード(12.5mm厚)の壁
・異方性:異方性ストロンチュウムフエライト極間2.5mm片面多極着磁品
・等方性:等方性ストロンチュウムフエライト極間2.5mm片面多極着磁品
・吸着力:強磁性体部材との磁気吸着力
・粘着剤:両面粘着フィルムで積層
・発泡基材粘着剤:発泡体を基材とする両面粘着フィルムで積層
・両面表装鋼板:両面に塗装(塗膜50μm厚)を施した鋼板(0.4mm厚)
・張合せ面積率(%):使用したシート状磁石の面積÷強磁性体板の面積×100
・無機高充:酸化鉄粉を高充填(多量練込)したシート
・粘弾性体:有機高分子系粘弾性体
・総吸着力kg:磁気吸着力(g/cm
2)×使用面積cm
2
【0091】
【表2】
【0092】
(表2の注記)
・Sドア:スチール製ドア(80×200cm) ・S間仕切:スチール製間仕切
・シート状磁石:異方性ストロンチュウムフエライト 極間2.5mm片面多極着磁品
・吸着力g/cm
2:強磁性体板部材との磁気吸着力
・粘着剤:両面粘着フィルムで積層
・吸着力:磁気吸着力で貼着
・発泡基材粘着剤:発泡体を基材とする両面粘着フィルムで積層
・張合せ面積率(%):使用したシート状磁石の面積÷強磁性体板の面積×100。
・無機高充:酸化鉄粉を高充填(多量練込)したシート
・粘弾性体:有機高分子系粘弾性体
・磁性ゴム:有機高分子系粘弾性体磁性ゴム
・総吸着力kg:磁気吸着力(g/cm
2)×使用面積cm
2
(実施例12〜14は磁性ゴムの背面と強磁性体板部材との磁気吸着力も加算)
【0093】
1、試験結果
(1)基体が非磁性体の場合(実施例1〜7、比較例1)
1)着脱作業、位置修正作業性
・実施例1〜7全て良好であり、本発明の範囲を逸脱した比較例1は磁気吸着力が過剰で作業性が劣る。
【0094】
2)静音性
・実施例1は、スペーサーが無いが、一般的用途には充分使用できる。実施例2は、外力による凹み防止としてスペーサーを用いているので実施例1と比べて僅かの差で良い。
・実施例3〜4は、厚みが薄い粘弾性体を用いて、拘束型制振構造とした効果が認められる。
・実施例5では、更にスペーサーの基体への接着に発泡体を基材とする両面粘着テープを用いているので厚みバラツキなどを吸収しスペーサーと強磁性体板部材との密着が良いので良い結果が出ている。実施例6〜7は、更にシート状磁石の接着にも発泡体を基材とする両面粘着材を用いているので更に良い結果が出ている。
【0095】
(2)基体が強磁性体の場合(実施例8〜14、比較例2)
1)着脱作業、位置修正作業性
・実施例8〜14全て良好であり、本発明の範囲を逸脱した比較例2は磁気吸着力が過剰で作業性が劣る。
【0096】
2)静音性
・実施例8は、スペーサーが無いが、一般的用途には充分使用できる。実施例9は、外力による凹み防止としてスペーサーを用いているので実施例8と比べて僅かの差で良い。
・実施例10は、厚みが薄い粘弾性体を用いて拘束型制振構造とした効果が認められる。
・実施例11では、スペーサーの基体への接着に発泡体を基材とする両面粘着材を用いているので厚みバラツキなどを吸収しスペーサーと強磁性体板部材との密着が良いので良い結果が出ている。実施例12〜14は、厚みが薄い粘弾性体磁性ゴムを用いて拘束型制振構造として粘弾性体+磁力の効果を用いたもので、その効果が認められ、実施例13,14は、発泡体を基材とする両面粘着材を用いた効果も認められる。