(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669259
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】真空冷却装置
(51)【国際特許分類】
F28F 17/00 20060101AFI20150122BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20150122BHJP
F25D 17/02 20060101ALI20150122BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
F28F17/00 501Z
B01D53/26 A
F25D17/02 303
A23L3/36 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-253345(P2010-253345)
(22)【出願日】2010年11月12日
(65)【公開番号】特開2012-102956(P2012-102956A)
(43)【公開日】2012年5月31日
【審査請求日】2013年9月6日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】明尾 伸基
(72)【発明者】
【氏名】安藤 則俊
【審査官】
関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−284162(JP,A)
【文献】
特開平06−189727(JP,A)
【文献】
実開平02−137916(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 17/00
A23L 3/36
B01D 53/26
F25D 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を収容する処理槽、処理槽と真空配管によって接続しており処理槽内の空気を吸引する真空発生装置、真空発生装置が処理槽から吸引している空気を途中で冷却する第一熱交換器、第一熱交換器で空気を冷却することによって発生したドレンをためるドレンタンクを持ち、処理槽内を真空化することで被冷却物の冷却を行う真空冷却装置において、前記のドレンタンクは前記第一熱交換器の下方に設置するとともに、ドレンタンクよりも上方にドレンタンクで発生した蒸気を冷却する第二熱交換器を設け、第二熱交換器は下部で第一熱交換器の下流側と接続し、上部で真空発生装置の上流側と接続したことを特徴とする真空冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は処理槽内を真空化することで処理槽内の被冷却物を冷却する真空冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
処理槽内に加熱調理した食品などの被冷却物を収容しておき、処理槽内を真空化することで被冷却物を冷却する真空冷却装置がある。被冷却物を収容している処理槽内を減圧し、沸点を被冷却物の温度よりも低下させると、被冷却物中の水分が蒸発し、その際に被冷却物から気化熱を奪うため、被冷却物を短時間で冷却することができる。真空冷却装置に使用する真空発生装置としては、水又は蒸気によるエジェクタや水封式又はドライ式の真空ポンプによるものが知られている。真空発生装置にて処理槽内の空気を吸引する場合、空気と同時に被冷却物から発生した蒸気も吸引することになる。しかし、水は液体から気体に変わると体積が大幅に増大するため、処理槽内の空気を排出することで処理槽内の圧力を低下させても、蒸気が発生することで処理槽内に気体が発生し、真空発生装置で排出しなければならない気体量が多くなることで真空化の能力は小さくなる。
【0003】
そのため、特許4015121号に記載があるように、処理槽内の空気を真空発生装置へ送る真空配管の途中に、真空発生装置が吸引している空気を冷却する熱交換器を設け、真空配管の途中で空気を冷却することが行われている。熱交換器によって空気の冷却を行うと、空気の体積が縮小し、特に蒸気を冷却して液体に戻すと体積は大幅に小さくなるため、真空発生装置が吸引する空気の体積が小さくなり、真空冷却の効率を高めることができる。
【0004】
真空発生装置にドライ式の真空ポンプを用いている真空冷却装置の場合、熱交換器で蒸気を凝縮することで発生した凝縮液(ドレン)は、真空ポンプに吸引させて排出することはできない。そのため、真空配管にドレンタンク(ドレンポット)を設置し、ドレンは空気流から分離してドレンタンクにためておき、真空冷却運転が終了した後にドレンを排出するようにしている。
【0005】
ところで真空冷却運転を行うと、処理槽内だけでなく真空配管内の圧力も下がり、圧力が下がると圧力によって定まる沸点は低下していく。真空冷却運転初期の真空度が低い状態ではドレンが再蒸発することはなくても、真空配管での圧力低下によって沸点が低下し、ドレンタンクにためているドレンの温度よりも沸点の方が低くなると、ドレンは再び蒸発することになってしまう。ドレンタンクから蒸気が発生すると、真空発生装置では排出しなければならない気体の量が多くなるため、真空化の効率が低下することになっていた。
【0006】
特許4015121号の場合には、ドレンタンクと熱交換器の上流側を結ぶリターン配管を設置している。これは、ドレンタンク内の凝縮液が再蒸発して発生した蒸気は、熱交換器の上流側に戻し、熱交換器で再び凝縮させることで蒸気の体積を縮小し、真空装置で吸引する蒸気量を削減しようとするものである。ただし、ここに記載されている構成とした場合、真空配管では熱交換器入口よりも熱交換器出口の圧力が低いため、ドレンからの蒸気は熱交換器出口側により多く流れ、熱交換器に入って凝縮する蒸気の量は少ないために真空発生装置での排気量削減の効果は少ないものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4015121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、真空冷却装置において、真空配管の蒸気を凝縮させてドレンタンクにためておいたドレンが再蒸発し、真空発生装置が排出する空気の体積が大きくなることで真空冷却の効率が低下してしまうことを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、被冷却物を収容する処理槽、処理槽と真空配管によって接続しており処理槽内の空気を吸引する真空発生装置、真空発生装置が処理槽から吸引している空気を途中で冷却する第一熱交換器、第一熱交換器で空気を冷却することによって発生したドレンをためるドレンタンクを持ち、処理槽内を真空化することで被冷却物の冷却を行う真空冷却装置において、前記のドレンタンクは前記第一熱交換器の下方に設置するとともに、ドレンタンクよりも上方にドレンタンクで発生した蒸気を冷却する第二熱交換器を設け、第二熱交換器は下部で第一熱交換器の下流側と接続し、上部で真空発生装置の上流側と接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
ドレンタンクと真空配管の間には第二熱交換器を設置しており、発生した蒸気は第二熱交換器を通らないと真空発生装置に達することはできないため、真空配管の真空度が高まることによってドレンタンクにためておいたドレンが再蒸発しても、蒸気は第二熱交換器で凝縮させることができ、真空発生装置が排出しなければならない空気量は少なくすることができるため、効率のよい真空冷却を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一の実施例における真空冷却装置のフロー図
【
図2】本発明の第二の実施例における真空冷却装置のフロー図
【
図3】本発明の実施例における第一熱交換器の断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
図1は本発明の第一の実施例における真空冷却装置のフロー図、
図2は第二の実施例における真空冷却装置のフロー図である。真空冷却装置は、処理槽2の内部を真空化することで、処理槽2に収容した被冷却物(高温の食品)を冷却する。真空冷却装置は、処理槽2、真空発生装置1、第一熱交換器4、第二熱交換器5、冷水ユニット3、ドレンタンク6などからなっている。処理槽2と真空発生装置1の間は、真空配管9によって接続しておき、真空発生装置1を作動することによって処理槽2内の空気を吸引する。真空配管9には第一熱交換器4と第二熱交換器5からなる二つの熱交換器を接続しておき、熱交換器は真空発生装置1が吸引している空気や空気中に含まれている蒸気を冷却することによって空気の体積を縮小するようにしている。
【0016】
第一熱交換器4は真空配管9を通じて処理槽2と接続しており、第二熱交換器5は第一熱交換器4の下流側に設置する。第二熱交換器5はドレンタンク6と真空発生装置1の間に設置しており、ドレンタンク6で発生した蒸気は第二熱交換器5を通らないと真空発生装置1へ達することができないようにしている。また、第一熱交換器4及び第二熱交換器5は、冷却用水配管7を通じて冷水ユニット3と接続しており、冷却用水配管7に設けた循環ポンプ8を作動することで第一熱交換器4及び第二熱交換器5と冷水ユニット3の間で冷却用水が循環するようにしている。
【0017】
図1に記載している第一の実施例では、第一熱交換器4と第二熱交換器5は左右に並べて設置しており、第一熱交換器4及び第二熱交換器5の下部、つまり第一熱交換器の下流端と第二熱交換器5の上流端を接続している。処理槽2から吸引した空気は、第一熱交換器4を通過した後で第二熱交換器5に入り、第二熱交換器5を通った後に真空発生装置1へ達するようになっている。ドレンタンク6は第一熱交換器4及び第二熱交換器5の下方に設置しており、第一熱交換器4で発生した凝縮水と第二熱交換器5で発生した凝縮水は、それぞれ下方へ落下することでドレンタンク6内に入るようになっている。
【0018】
図2に記載している第二の実施例では、一つの熱交換器を上部の第一熱交換器4と下部の第二熱交換器5に区分している。熱交換器の設置数は一個であるが、熱交換器の途中に真空発生装置1の接続部を設けており、真空発生装置1の接続部より上方と下方では別の用途を担うことになる。第一熱交換器4は真空発生装置1の接続部よりも上方部分、第二熱交換器5は真空発生装置1の接続部よりも下方部分であり、第一熱交換器4は処理槽2で発生した蒸気を冷却し、第二熱交換器5はドレンタンク6で発生した蒸気を冷却する。
処理槽2から吸引した空気は、第一熱交換器4を通過した後に真空発生装置1へ達し、真空発生装置1を通して排出されるようになっている。ドレンタンク6は第二熱交換器5の下方に設置しており、第一熱交換器4で発生した凝縮水は下方の第二熱交換器5へ落下し、第二熱交換器5で発生した凝縮水とともに第二熱交換器5の下方へ落下することでドレンタンク6内に入るようになっている。
【0019】
第一の実施例での真空冷却運転動作を説明する。まず準備として、処理槽2内に被冷却物を収容し、処理槽2を密閉しておく。真空発生装置1、冷水ユニット3、循環ポンプ8の作動を行うことで真空冷却運転を開始すると、処理槽2内の空気が真空配管9を通して真空発生装置1から取り出され、処理槽2内の圧力が低下していく。処理槽内の圧力が低下すると、処理槽2内に収容している被冷却物から水分が蒸発し、水分が蒸発する際には周囲から気化熱を奪うため、被冷却物の温度は急激に低下していく。
【0020】
また、循環ポンプ8と冷水ユニット3を作動することで、第一熱交換器4及び第二熱交換器5には冷却用水の供給を行っており、処理槽2から取り出された空気は第一熱交換器4及び第二熱交換器5内で冷却される。第一熱交換器4及び第二熱交換器5によって空気を冷却すると、空気の体積は縮小し、空気中に含まれている蒸気は結露して液体となる。第一熱交換器4で発生した結露水は、第一熱交換器4内を落下して第一熱交換器4の下方に設けているドレンタンク6内へ入り、第二熱交換器5で発生した結露水も、第二熱交換器5内を落下して第二熱交換器5の下方に設けているドレンタンク6内へ入る。第一熱交換器4及び第二熱交換器5によって空気の冷却を行い、空気の体積を縮小させることによって真空発生装置1で排出しなければならない空気の体積は大幅に減少する。
【0021】
真空冷却運転初期の場合、真空度は低いが被冷却物の温度は高いため、被冷却物から蒸気が大量に発生し、被冷却物の温度は急激に低下していく。真空冷却運転初期で発生する蒸気は、比較的温度が高いものであり、真空度は低く沸点も高いために、第一熱交換器4で冷却するとすぐに凝縮水となり、凝縮水は第一熱交換器4内を落下することでドレンタンク6にドレンとしてたまることになる。
【0022】
なお
図3に記載しているように、円筒形である第一熱交換器4の接線方向に真空配管9を接続し、蒸気を含んだ空気が真空配管9から第一熱交換器4に入ってきた場合には、第一熱交換器4の周壁に沿って流れるようにしておくと、重量の重い水分を空気から遠心分離することができる。真空冷却開始後数分間は処理槽2内の圧力が急激に低下するため、圧力低下中に生じる突沸により蒸気中に水分が含まれることがあるが、水分を遠心分離するようにしておくと、ドレンをドレンタンクへ流入させる効率を高めることができる。
【0023】
真空冷却運転を行うことで処理槽2内の真空度は上昇し、真空配管9や第一熱交換器4内の真空度も高くなっていく。真空度の上昇によって沸点がさらに低下し、ドレンタンク6にたまっているドレン温度よりも圧力低下によって下がってきた沸点の方が低くなると、ドレンタンク6にためておいたドレンから蒸気が発生することになる。しかし、ドレンタンク6と真空発生装置1の間には第二熱交換器5を設けており、ドレンタンク6で発生した蒸気は第二熱交換器5を通らなければ真空発生装置1へ達することはできない。ドレンタンク6で発生した蒸気を第二熱交換器5によって冷却することで、蒸気は第二熱交換器5で再び凝縮し、第二熱交換器5から下方へ落下することでドレンタンク6内に戻る。そのため、真空発生装置1で排出する空気量が蒸気によって増加することはなく、真空発生装置1は処理槽2の圧力を効率よく低下させることができる。
【0024】
次に第二の実施例での真空冷却運転動作を説明する。第二の実施例でも真空発生装置1、冷水ユニット3、循環ポンプ8の作動を行うことで真空冷却運転を開始すると、処理槽2内の空気が真空配管9を通して真空発生装置1から取り出され、処理槽2内の圧力が低下する。処理槽内の圧力が低下すると、処理槽2内に収容している被冷却物から水分が蒸発し、水分が蒸発する際には周囲から気化熱を奪うため、被冷却物の温度は急激に低下していく。
【0025】
そして、循環ポンプ8と冷水ユニット3を作動することで、第一熱交換器4及び第二熱交換器5には冷却用水の供給を行っており、処理槽2から取り出された空気は第一熱交換器4内で冷却される。空気を冷却すると空気の体積は縮小し、空気中に含まれている蒸気が結露して液体になると、空気の体積は大幅に減少する。結露水は第一熱交換器4内を落下して第二熱交換器5に入り、第二熱交換器5内でも落下してさらに下方のドレンタンク6内へ入る。第一熱交換器4で冷却した空気は、真空発生装置1を通して外部へ排出される。
【0026】
この場合でも真空度の上昇によって沸点が低下し、ドレンタンク6にたまっているドレン温度よりも沸点の方が低くなると、ドレンタンク6から蒸気が発生することになる。しかし、ドレンタンク6と真空発生装置1の間には第二熱交換器5を設けており、発生した蒸気は第二熱交換器5によって冷却が行われる。そのため、ドレンタンク6で発生した蒸気は第二熱交換器5で再び凝縮し、第二熱交換器5から下方へ落下することでドレンタンク6内に戻る。そのため、真空発生装置1で排出する空気量が蒸気によって増加することはなく、真空発生装置1は処理槽2の空気を効率よく排出することができる。
【0027】
真空冷却の工程が進み、真空配管9内の圧力が低下することでドレンタンク6にためておいたドレンが再蒸発しても、ドレンタンク6と真空発生装置1の間に第二熱交換器5を設けており、第二熱交換器5によって蒸気の冷却を行うことで空気の体積を縮小することができる。そのため、真空発生装置1が排出しなければならない空気量は少なくなり、能力の大きな真空発生装置1を使用しなくても処理槽内を効率よく真空化することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 真空発生装置
2 処理槽
3 冷水ユニット
4 第一熱交換器
5 第二熱交換器
6 ドレンタンク
7 冷却用水配管
8 循環ポンプ
9 真空配管