特許第5669275号(P5669275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669275
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】鍋
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20150122BHJP
   A47J 36/36 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   A47J27/00 101E
   A47J36/36
   A47J27/00 101B
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-245019(P2012-245019)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-91011(P2014-91011A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2014年8月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508236387
【氏名又は名称】株式会社 鋳物屋
(74)【代理人】
【識別番号】100127306
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 剛
(72)【発明者】
【氏名】金子 常夫
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭35−31546(JP,Y1)
【文献】 特公昭40−10312(JP,B2)
【文献】 特開2011−178715(JP,A)
【文献】 米国特許第5564589(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
A47J 36/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋本体と、
前記鍋本体の側面の下部の一部を含む領域を覆う第1覆い部と、
前記第1覆い部を、前記鍋本体の側面とで挟み、前記第1覆い部や前記側面の下部の一部を含む領域を覆う第2覆い部とを備え、
前記鍋本体の側面の下部の残りは、前記第1覆い部や前記第2覆い部によって覆われない領域を有し、
前記第1覆い部と前記鍋本体の側面との間には、燃焼器の上に前記鍋本体を載置した時に、前記燃焼器からの熱気を上方に誘導する第1空間が形成され、
前記第2覆い部と前記第1覆い部との間には、外気が通る第2空間が形成されることを特徴とする鍋。
【請求項2】
前記鍋本体の底部の周縁部には、下方向に突出する筒部が設けられ、
前記筒部の側面であって、前記第1覆い部と対向する部分には、孔が設けられ、
前記燃焼器の上に前記鍋本体を載置した時に、前記燃焼器からの熱気は、前記孔を介して前記第1空間に流れることを特徴とする請求項1に記載の鍋。
【請求項3】
前記鍋本体の側面に取り付けられる接続具を2以上備え、
前記第1覆い部、前記第2覆い部は、前記2以上の接続具の間に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の鍋。
【請求項4】
前記鍋本体と、前記第1覆い部は、一体的に形成されることを特徴とする請求項1に記載の鍋。
【請求項5】
前記鍋本体に取り付けられる接続具を2以上備え、
前記第2覆い部は、前記2以上の接続具の間に取り付けられることを特徴とする請求項4に記載の鍋。
【請求項6】
側部の下部の一部を含む領域に、上下方向に貫通する第1空間が形成される鍋本体と、
前記側部の下部の一部を含む領域であって、前記第1空間が設けられた部分を覆う覆い部とを備え、
前記側部の下部の残りは、前記覆い部によって覆われない領域を有し、
前記覆い部と、前記側部との間には、外気が通る第2空間が形成されることを特徴とする鍋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率良く温めることが可能な鍋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、食材を加熱し調理するために使用される加熱用調理容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−89634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、燃焼器の熱気が当たる底面でのみ鍋の加熱が行われており、側部の加熱が十分でなかった。
【0005】
したがって本発明の目的は、効率良く加熱することが可能な鍋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鍋は、鍋本体と、鍋本体の側面の下部の一部を含む領域を覆う第1覆い部と、第1覆い部を、鍋本体の側面とで挟み、第1覆い部や側面の下部の一部を含む領域を覆う第2覆い部とを備え、鍋本体の側面の下部の残りは、第1覆い部や第2覆い部によって覆われない領域を有し、第1覆い部と鍋本体の側面との間には、燃焼器の上に鍋本体を載置した時に、燃焼器からの熱気を上方に誘導する第1空間が形成され、第2覆い部と第1覆い部との間には、外気が通る第2空間が形成される。
【0007】
第2覆い部と第1覆い部との間(第2空間)には、下方から上方に向けて外気が流れるため、第1覆い部や鍋本体の側面からの熱が外部に広がるのを防いで、鍋本体を温めやすくし、且つ第2覆い部の外側面の温度上昇を抑えることが可能になる。
【0008】
第1覆い部や第2覆い部は、鍋本体の側面の周囲全体を覆うのではなく、一部を残した状態で覆う。このため、第1覆い部や第2覆い部は、筒状の部材ではなく、板状の部材で構成出来るため、業務用の寸胴鍋のように外径が大きい鍋でも容易に着脱が出来る。また、排出口のように、鍋本体の側面から突出した部分があっても、かかる部分を避けて第1覆い部や第2覆い部を取り付けることが可能になる。
【0009】
また、一部を残した状態で、第1覆い部や第2覆い部で鍋本体の側面を覆うので、鍋本体の側面のうち、第1覆い部で覆われた部分は温められやすくなり、第1覆い部で覆われていない部分は外部に放熱して温められにくくなり、温度差が生じる。かかる温度差により、鍋本体の内側にためられた温水に、第1覆い部で覆われた側で上昇し、第1覆い部で覆われていない側で下降する大きな対流を発生させることが可能になる。
【0010】
好ましくは、鍋本体の底部の周縁部には、下方向に突出する筒部が設けられ、筒部の側面であって、第1覆い部と対向する部分には、孔が設けられ、燃焼器の上に鍋本体を載置した時に、燃焼器からの熱気は、孔を介して第1空間に流れる。
【0011】
孔により燃焼器からの熱気の流速が遅くなり、第1覆い部により燃焼器からの熱気が上方向に誘導され、鍋本体の側部に熱気が当たり温められやすくなり、第1覆い部が無い場合にくらべて、鍋本体を温めやすくなる(効率良く加熱出来る)。
【0012】
また、好ましくは、鍋本体の側面に取り付けられる接続具を2以上備え、第1覆い部、第2覆い部は、2以上の接続具の間に取り付けられる。
【0013】
接続具で挟み込んだり、接続具に取り付けたりすることで、簡単に第1覆い部や第2覆い部の取り付けが出来る。
【0014】
また、好ましくは、鍋本体と、第1覆い部は、一体的に形成される。
【0015】
鍋本体と第1覆い部とが一体に形成されているので、第1覆い部から鍋本体への熱伝達が効率よく行われ、鍋本体をさらに温めやすくなる。
【0016】
さらに好ましくは、鍋本体に取り付けられる接続具を2以上備え、第2覆い部は、2以上の接続具の間に取り付けられる。
【0017】
本発明に係る鍋は、側部の下部の一部を含む領域に、上下方向に貫通する第1空間が形成される鍋本体と、側部の下部の一部を含む領域であって、第1空間が設けられた部分を覆う覆い部とを備え、側部の下部の残りは、覆い部によって覆われない領域を有し、覆い部と、側部との間には、外気が通る第2空間が形成される。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、効率良く加熱することが可能な鍋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態における鍋が、燃焼器の上に載置された状態を示す斜視図である。
図2】鍋本体に接続具を取り付ける前の状態を示す斜視図である。
図3】鍋本体に接続具が取り付けられ、第1覆い部が取り付けられる前の状態をしめす斜視図である。
図4】鍋本体に接続具が取り付けられ、第1覆い部が接続具に取り付けられ、第2覆い部が取り付けられる前の状態をしめす斜視図である。
図5】本実施形態における鍋(鍋本体に接続具が取り付けられ、第1覆い部や第2覆い部が接続具に取り付けられた状態)の斜視図である。
図6】鍋本体を下から見た斜視図である。
図7】本実施形態における鍋を燃焼器の上に載置した時の断面構成図である。
図8】第1覆い部や第2覆い部が設けられない鍋を燃焼器の上に載置した時の断面構成図である。
図9】本実施形態における鍋を燃焼器の上に載置した時のものであって、鍋本体の下部に筒部が設けられない場合の断面構成図である。
図10】第1覆い部と鍋本体とが一体に構成された場合の、第2覆い部が取り付けられる前の状態を示す斜視図である。
図11】第1覆い部と鍋本体とが一体に構成された場合の鍋を燃焼器の上に載置した時の断面構成図である。
図12】第1覆い部と鍋本体とが一体に構成された場合の鍋本体を下から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態について、図を用いて説明する。本実施形態における鍋1は、鍋本体(調理対象物を入れる容器)11、接続具15、第1覆い部(熱誘導壁)17、第2覆い部(遮熱壁)19を備える(図1〜7参照)。
【0021】
鍋1は、鍋本体11に耐圧蓋が取り付けられる圧力鍋であってもよいし、かかる密閉構造を有しない通常の鍋であってもよい。鍋本体11は、寸胴鍋など上部から下部にかけて外径がほとんど変化しない鍋を例とするが、雪平鍋など他の形状の鍋であってもよい。
【0022】
鍋本体11の底部の周縁部には、下方向に突出する筒部11aが設けられる。筒部11aの側面であって、第1覆い部17と対向する部分には、孔11bが設けられる。燃焼器40の上に鍋1を載置した時に、燃焼器40からの熱気は、孔11bを介して排出される。
【0023】
鍋本体11の側面には、鍋本体11の内部の液体を抽出するため、排水のための少なくとも一方に使用される排出口11cが設けられても良い。孔11bや排出口11cを設けたことによる強度低下を補うために、鍋本体11の側面の下部(筒部11aを含む)は中部に比べて肉厚にするのが望ましい。
【0024】
接続具15は、鍋本体11の側面部に少なくとも2つ取り付けられ、2つの接続具15の間に、第1覆い部17や第2覆い部19を取り付けるために使用される。
【0025】
接続具15は、略直方体形状を有し、鍋本体11と接触する面(正面)は、鍋本体11の側面の形状に沿った形状を有し、上面と下面と鍋本体11と略直交する面(側面)には、第1覆い部17を取り付けるための第1溝15aと第2覆い部19を取り付けるための第2溝15bが設けられる。
【0026】
第1覆い部17は、孔11bと対向する位置から上方に延び鍋本体11の側面と対向する板状部材で、2つの接続具15の間に取り付けられ、少なくとも鍋本体11の側面の一部(側面の下部の一部を含む領域)を覆う。
【0027】
第1覆い部17は、鍋本体11の側面の一部を覆い、鍋本体11の側面の広い領域に熱気を接触させる目的で、高さ方向の長さを長くしておくのが望ましい。
【0028】
第2覆い部19は、第1覆い部17の外側で、孔11bと対向する位置から上方に延び鍋本体11の側面と対向する板状部材で、2つの接続具15の間に取り付けられ、少なくとも鍋本体11の側面の一部や第1覆い部17を覆う。具体的には、第2覆い部19は、第1覆い部17を、鍋本体11の側面とで挟み、第1覆い部17や鍋本体11の側面の下部の一部を含む領域を覆う。
【0029】
第2覆い部19は、鍋本体11の側面の一部や第1覆い部17を覆い、鍋本体11や第1覆い部17から発せられる熱を遮蔽する目的で、高さ方向の長さを長くしておくのが望ましく、特に、第1覆い部17よりも長くしておくのが望ましい。
【0030】
鍋本体11の側面の下部の残りは、第1覆い部17や第2覆い部19によって覆われない領域を有する。
【0031】
第1覆い部17と鍋本体11の側面との間には、燃焼器40の上に鍋本体11を載置した時に、燃焼器40からの熱気(図7の点線矢印参照)を上方に誘導する第1空間(熱気導入路)が形成され、第2覆い部19と第1覆い部17との間には、外気(図7の破線矢印参照)が通る第2空間(外気導入路)が形成される。
【0032】
接続具15の鍋本体11への取り付けは、ネジ止めなどで行われる。第1覆い部17や第2覆い部19の接続具15への取り付けは、接続具15の溝(第1溝15a、第2溝15b)を使った挟み込みやネジ止めなどで行われる。
【0033】
鍋本体11と接続具15は、アルミニウムの鋳造などで構成され、第1覆い部17や第2覆い部19は鉄板などで構成される。
【0034】
孔11bにより燃焼器40からの熱気の流速が遅くなり、第1覆い部17により燃焼器40からの熱気が上方向に誘導され、鍋本体11の側部に熱気が当たり温められやすくなり、第1覆い部17が無い場合にくらべて、鍋本体11を温めやすくなる(効率良く加熱出来る)。
【0035】
また、第2覆い部19と第1覆い部17との間(第2空間)には、下方から上方に向けて外気が流れるため、第1覆い部17や鍋本体11の側面からの熱が外部に広がるのを防いで、鍋本体11を更に温めやすくし、且つ第2覆い部19の外側面の温度上昇を抑えることが可能になる。
【0036】
例えば、図8のように第1覆い部17や第2覆い部19が無い形態に比べて、鍋本体11に入れた水を沸騰させる時間を約17%短く出来る)。
【0037】
第1覆い部17や第2覆い部19は、鍋本体11の側面の周囲全体を覆うのではなく、一部を残した状態で覆う(図6の実線矢印参照)。このため、第1覆い部17や第2覆い部19は、筒状の部材ではなく、板状の部材で構成出来るため、業務用の寸胴鍋のように外径が大きい鍋でも容易に着脱が出来る。また、排出口11cのように、鍋本体11の側面から突出した部分があっても、かかる部分を避けて第1覆い部17や第2覆い部19を取り付けることが可能になる。
【0038】
また、一部を残した状態で、第1覆い部17や第2覆い部19で鍋本体11の側面を覆うので、鍋本体11の側面のうち、第1覆い部17で覆われた部分は温められやすくなり、第1覆い部17で覆われていない部分は外部に放熱して温められにくくなり、温度差が生じる。かかる温度差により、鍋本体11の内側にためられた温水に、第1覆い部17で覆われた側で上昇し、第1覆い部17で覆われていない側で下降する大きな対流を発生させることが可能になる(図7図9図11の実線矢印参照)。
【0039】
鍋本体11の側面部の周囲全体を覆う場合や、側面部の周囲全体を全く覆わない場合には、側面部と他の側面部との間で温度差が殆ど生じないため、中央部で上昇し、側面部で下降する小さな対流が発生する(図8の実線矢印参照)。大きな対流の方が、茹でる対象物(麺など)を大きく動かすことが可能になり、かかる対象物を美味しく茹でることが出来るメリットがある。
【0040】
また、接続具15で挟み込んだり、接続具15に取り付けたりすることで、簡単に第1覆い部17や第2覆い部19の取り付けが出来る。
【0041】
なお、筒部11aや孔11bを省略した形態であってもよい(図9参照)。この場合は、孔11bで熱気の流速を抑えるメリットは得られないが、熱気が第1覆い部17によって鍋本体11の側面を温める効果は得られる。
【0042】
また、鍋本体11と第1覆い部17を、アルミニウムの鋳造と切削加工などで一体的に形成する形態であってもよい(図10図12参照)。この場合、第1覆い部17を含む外径を有する鍋形状を鋳造で形成し、切削加工などで、筒部11aや第1覆い部17や鍋本体11の側面に相当する部分、第1覆い部17に相当する部分と鍋本体11の側面に相当する部分との間に上下方向に貫通する孔11b、及び下部に燃焼器40からの熱気を当該孔11bに誘導する空間を形成する。図10図12の形態では、第1覆い部17の一部が、筒部11aに相当する形状を有する。
【0043】
鍋本体11は、側部の下部の一部を含む領域に、上下方向に貫通する孔11b(第1空間)が形成されることになり、第2覆い部19に相当する覆い部が、当該側部の下部の一部を含む領域であって、第1空間が設けられた部分を覆う。側部の下部の残りは、覆い部によって覆われない領域を有する。当該覆い部と、側部との間には、外気が通る第2空間が形成される。第1空間を形成する孔11bが上方に延び、孔11bを熱気が通ることにより、第1覆い部17や鍋本体11の側面を温める。鍋本体11と第1覆い部17とが一体に形成されているので、第1覆い部17から鍋本体11への熱伝達が効率よく行われ、鍋本体11をさらに温めやすくなる。
【符号の説明】
【0044】
1 鍋
11 鍋本体
11a 筒部
11b 孔
11c 排出口
15 接続具
15a、15b 第1溝、第2溝
17 第1覆い部
19 第2覆い部
40 燃焼器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12