(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669308
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】ポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 8/12 20060101AFI20150122BHJP
C08F 26/02 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
C08F8/12
C08F26/02
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-11488(P2011-11488)
(22)【出願日】2011年1月24日
(65)【公開番号】特開2012-153747(P2012-153747A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2014年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】若月 将吾
(72)【発明者】
【氏名】武尾 一與
【審査官】
上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−329718(JP,A)
【文献】
特開2012−131926(JP,A)
【文献】
特開平05−255565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
C08F 301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化重合法により得られたN−ビニルカルボン酸アミド重合物水溶液の油中分散液を酸又は塩基の存在下加水分解する方法において、HLB8.0〜14.0の範囲のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの共存下で加水分解を行うことを特徴とする、ポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法。
【請求項2】
塩基の存在下加水分解することを特徴とする、請求項1に記載のポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法。
【請求項3】
前記N−ビニルカルボン酸アミド重合物水溶液の油中分散液を前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの共存下、前記塩基で加水分解を行った後、酸を添加することを特徴とする、請求項2に記載のポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法。
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルをN−ビニルカルボン酸アミドの重合後、加水分解工程の前に添加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法。
【請求項5】
1mol/L濃度のNaCl水溶液中での25℃におけるポリビニルアミンの固有粘度が、0.5〜10.0(dL/g)の範囲であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法。
【請求項6】
前記油中水型エマルジョンの1質量%水溶液のpHが6.0〜14.0の範囲であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法に関するものであり、詳しくはN−ビニルカルボン酸アミドの油中水型エマルジョンを加水分解して得られるポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアミンは、構造が最も単純な一級アミノ基含有ビニルポリマーであり、N−ビニルカルボン酸アミドの重合物を酸または塩基にて加水分解する方法、N−ビニル−O−t−ブチルカルバメートの重合物を加水分解する方法、あるいはポリアクリルアミドを次亜ハロゲン酸およびアルカリ金属水酸化物の存在下ホフマン反応を行う方法が知られている。
【0003】
N−ビニルカルボン酸アミド単量体の重合物を酸または塩基にて加水分解する方法は、原料となる単量体の合成が容易であり、N−ビニルカルボン酸アミドのラジカル重合反応物の加水分解で比較的容易に高分子量の重合物が得られ、安全性も高いことから工業的製造法として有用である。
【0004】
一方で、分子量の高いポリビニルアミン水溶液は粘度が高く取り扱いが困難であり、高濃度のポリビニルアミンを利用するためには油中水型エマルジョンの形態が好ましい。
【0005】
ポリビニルアミンの油中水型エマルジョンとしては、ポリビニルアミンの水溶液を乳化剤存在下において機械的に乳化し、製造する方法が開示されている。高分子量のポリビニルアミン水溶液は粘度が高いため、この方法においては、ポリビニルアミン水溶液を乳化しうる濃度まで下げざるを得ず、高濃度のポリビニルアミンの利用する目的には合致しない(特許文献1)。
【0006】
一方で、N−ビニルカルボン酸アミド重合物の油中水型エマルジョンを製造しこのものを酸または塩基で加水分解する方法は、ポリビニルアミンの油中水型エマルジョンを製造する方法として有用である。
【0007】
特許文献2は、N−ビニルカルボン酸アミド重合物の油中水型エマルジョンの製造法に関して開示している。しかしながらこの製造方法中には、当該油中水型エマルジョンを加水分解して得られる、ポリビニルアミンの油中水型エマルジョンについての記載はない。
【0008】
特許文献3は、N−ビニルカルボン酸アミド重合物の油中水型エマルジョンを酸または塩基で加水分解しポリビニルアミンを製造する方法について開示している。しかしながらこの製造法において得られるポリビニルアミンは水溶液であり、安定な油中水型エマルジョンを得ることは不可能である。
【0009】
特許文献4は、N−ビニルホルムアミド・アクリロニトリル共重合物の油中水型エマルジョンを酸により加水分解する方法を開示している。この方法はモノマーとしてアクリロニトリルが必須であり、さらには酸による加水分解が必須である。また、酸加水分解の際使用している乳化剤のエステル結合は酸で容易に切断されるため、塩基により中和することのできないこの方法ではエマルジョンの安定性に欠ける。
【0010】
N−ビニルカルボン酸アミドを特定の乳化剤混合物の存在下酸または塩基で加水分解したポリマーの安定な油中水型エマルジョンの製造方法は、特許文献5に開示されている。この製造方法においても、乳化剤としてエステル結合を有するものが用いられており、酸または塩基で容易に切断されるためエマルジョンの安定性に欠ける。
【0011】
このように従来の技術において、N−ビニルカルボン酸アミド重合物の油中水型エマルジョンを酸または塩基で加水分解し得られる、ポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法は存在しなかった。
【特許文献1】特開2004−59747号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開0231901号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開0231901号公報
【特許文献4】特開平05−209208号公報
【特許文献5】特表平10−500714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、N−ビニルカルボン酸アミド重合物の油中水型エマルジョンを酸または塩基で加水分解し得られる、ポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は鋭意検討することにより、N−ビニルカルボン酸アミド重合物水溶液の油中分散液を酸又は塩基の存在下加水分解する方法において、特定の界面活性剤の共存下で加水分解を行うことで、前記課題を解決できることを発見し本発明に至った。
【0014】
すなわち請求項1の発明は、
乳化重合法により得られたN−ビニルカルボン酸アミド重合物水溶液の油中分散液を酸又は塩基の存在下加水分解する方法において、
HLB8.0〜14.0の範囲のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの共存下で加水分解を行うことを特徴とする、ポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法である。
【0015】
請求項2の発明は、 塩基の存在下加水分解することを特徴とする、請求項1に記載のポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法である。
【0016】
請求項3の発明は、前記N−ビニルカルボン酸アミド重合物水溶液の油中分散液を前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの共存下、塩基で加水分解を行った後、酸を添加することを特徴とする、請求項2に記載のポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法である。
【0017】
請求項4の発明は、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルをN−ビニルカルボン酸アミドの重合後、加水分解工程の前に添加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法である。
【0019】
請求項
5の発明は、1mol/L濃度のNaCl水溶液中での25℃におけるポリビニルアミンの固有粘度が、0.5〜10.0(dL/g)の範囲であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法である。
【0020】
請求項
6の発明は、
前記油中水型エマルジョンの1重量%水溶液のpHが6.0〜14.0の範囲であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンの製造方法は、高濃度かつ液状のポリビニルアミンとその塩を提供することが可能であり、輸送コストの削減、運送時の二酸化炭素排出量の削減、また様々な工業分野で利用される際の溶解作業工程の簡略化、作業環境の改善効果が期待できる。
【0022】
さらには塩基での加水分解が可能であるため、対イオンの無い第一級アミノ基を有し、かつ加水分解時に発生する腐食性物質であるギ酸の存在しないビニルポリマーの提供できるため、産業上の利用分野の拡大、製造装置および貯蔵設備の簡略化といった効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のN−ビニルカルボン酸アミド重合物の油中水型エマルジョンは、N−ビニルカルボン酸アミド単量体を水、水と非混和性の炭化水素からなる油状物質、油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する界面活性剤を混合し、強攪拌し油中水型エマルジョンを形成させた後、重合することにより合成する方法である。
【0024】
N−ビニルカルボン酸アミド単量体の例としては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミドが挙げられるが、N−ビニルホルムアミドを使用することが好ましい。
【0025】
水と非混和性の炭化水素からなる油状物質の例としては、パラフィン類あるいは灯油、軽油、中油等の鉱油、あるいはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度等の特性を有する炭化水素系合成油、あるいはこれらの混合物が挙げられる。含有量としては、油中水型エマルジョン全量に対して20〜50質量%であり、好ましくは20〜35質量%である。
【0026】
油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する界面活性剤の例としては、非イオン性界面活性剤のポリオキシエチレンアルキルエ−テル系、ポリオキシエチレンアルコールエ−テル系、ポリオキシエチレンアルキルエステル系、あるいは分子量が1000以上のブロックおよび/またはグラフト型の高分子界面活性剤等である。具体的には、2〜10好ましくは3〜7のHLB値を有する分子量1000未満の界面活性剤、例えばグリセロールモノ−、ジ−、およびトリ−、オレエート、ステアレートあるいはパルミテートといったグリセロール脂肪酸エステル、ソルビタンモノ−、ジ−、およびポリ−、オレエート、ステアレートあるいはパルミテートといったソルビタン脂肪酸エステル、さらにこれらのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドの付加物が例示できる。分子量1000以上のブロックおよび/またはグラフト型の高分子界面活性剤としては、12−ヒドロキシステアリン酸とポリ(エチレンオキサイド)の反応物であるポリエステル・ブロック−ポリ(エチレンオキシド)・ブロック−ポリエステル・ブロックコポリマーが例示できる。またこれらの中から二つ以上の界面活性剤を併用することも可能である。とくに分子量1000未満の界面活性剤と分子量1000以上のブロックおよび/またはグラフト型の高分子界面活性剤を併用することが好ましく、添加量としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5〜10重量%であり、好ましくは1〜5重量%の範囲である。
【0027】
重合はラジカル重合開始剤を使用し行う。これら開始剤は油溶性あるいは水溶性のどちらでも良く、アゾ系、過酸化物系、レドックス系何れでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、1、1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2、2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2、2’−アゾビス−2−メチルプロピオネート、4、4’−アゾビス−(4−メトキシ−2、4−ジメチル)バレロニトリル等が挙げられる。
【0028】
水溶性アゾ開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス[2−(5−メチル−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等が挙げられる。またレドックス系の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等との組み合わせが挙げられる。更に過酸化物の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム或いはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート等を挙げることができる。
【0029】
重合温度は、使用する重合開始剤によって適宜決めていき、通常0〜100℃の範囲で行ない、特に10〜60℃の範囲が好ましい。
【0030】
また分子量の調整のため連鎖移動性を持つ化合物を併用することができ、例えば、2−メルカプトエタノール、2−プロパノール、亜硫酸水素ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等が使用できる。
【0031】
N−ビニルカルボン酸アミドの濃度は適宜設定するが、通常は油中水型エマルジョン全量に対して10〜50重量%の範囲であり、特に15〜40重量%の範囲であることが好ましい。
【0032】
本発明のポリビニルアミンの安定な油中水型エマルジョンは、前記N−ビニルカルボン酸アミド重合物の油中水型エマルジョンを酸または塩基で加水分解し得ることができる。目的に応じて適宜選択することが可能であり、酸の存在下で使用する必要がある場合は、酸により加水分解することが好適である。酸による加水分解では、副生成物としてギ酸が生成し製造槽や貯槽を腐食するため、塩基により加水分解することが好適である。
【0033】
加水分解のために適当な酸としては、加水分解の際にpHを0〜5の範囲とすることができれば制限はなく、ハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸といった無機酸、炭素数1〜5の範囲のモノおよびジカルボン酸、スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸といった有機酸が例示でき、特にハロゲン化水素酸およびハロゲン化水素のガスを用いることが好ましく、ハロゲン化水素酸を用いることが最も好ましい。添加量は、ポリマーのホルミル基に対し0.05〜2、さらに好ましくは0.4〜1.2当量の範囲で加えることが好ましい。
【0034】
加水分解のために適当な塩基としては、加水分解の際にpHを8〜14の範囲とすることができれば制限はなく、周期律表第一および二a族の金属水酸化物、アンモニアおよびアンモニアのアルキル誘導体が例示でき、周期律表第一および二a族の金属水酸化物およびアンモニアを用いることが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアの水溶液を用いることが最も好ましい。添加量は、ポリマーのホルミル基に対し0.05〜2、さらに好ましくは0.4〜1.2当量の範囲で加えることが好ましい。
【0035】
加水分解したポリビニルアミンの油中水型エマルジョンは、前記酸または塩基で中和することが可能で、pHが6.0〜14.0の範囲に調整することが好ましい。
【0036】
加水分解は、HLB8.0〜14.0の範囲のポリオキシエチレンアルキルエーテルの存在下で行う必要がある。このようなポリオキシエチレンアルキルエーテルの例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルが上げられる。これらのポリオキシエチレンアルキルエーテルは、N−ビニルカルボン酸アミドの重合時に添加することも、重合後加水分解の前に添加することも可能であるが、重合後、加水分解工程の前に添加する方法が好ましい。
【0037】
意図しない架橋反応を防止する目的で、塩酸ヒドロキシルアミンの存在下で加水分解反応を行うことができる。この塩酸ヒドロキシルアミンは、N−ビニルカルボン酸アミドの重合時に添加することも、重合後加水分解の前に添加することも可能であるが、重合後加水分解の前に添加する方法が好ましい。
【0038】
加水分解を行う温度は、加水分解率と加水分解を行う時間により適宜選択することが可能であるが、通常40〜100℃、好ましくは60〜90℃の範囲で行う。
【0039】
このようにして得られたビニルアミンの1mol/L濃度のNaCl水溶液中での25℃における固有粘度は、0.5〜10.0(dL/g)の範囲であることが好ましい。10.0(dL/g)以上のビニルアミンの製造は実質困難であり、最も好ましくは、0.5〜8.0(dL/g)の範囲である。
【0040】
加水分解後は、転相剤と呼ばれる親水性界面活性剤を添加して油の膜で被われたエマルジョン粒子が水になじみ易くし、中の水溶性高分子が溶解しやすくする処理を行なうことが好ましい。親水性界面活性剤の例としては、カチオン性界面活性剤やHLB9〜15のノ二オン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル等が例示できる。
【0041】
(実施例) 以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0042】
(N−ビニルカルボン酸アミド重合物油中水型エマルジョンの製造1) 攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mLセパラブルフラスコに沸点190℃ないし230℃のイソパラフィン185.6gにノニオン系活性剤HypermerH1084(クローダ社製)13.0gを仕込み溶解させた。別にN−ビニルホルムアミド(純分99.8重量%)166.4g、ギ酸ナトリウム0.16g、イオン交換水134.9gを各々採取し添加した。油と水溶液を混合し、ホモミキサーにて8000rpmで2分間攪拌乳化した。得られたエマルジョンを攪拌しつつ単量体溶液の温度を20〜25℃の範囲に保ち、窒素置換を30分行なった後、重合開始剤2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬製V−70)0.83g(対単量体0.5重量%)を加え、重合反応を開始させた。20〜25℃の範囲に保ちつつ12時間重合させ反応を完結させた。このものをPNVF−1とする。
【0043】
(N−ビニルカルボン酸アミド重合物油中水型エマルジョンの製造2) ギ酸ナトリウム0.16g、イオン交換水134.9gを次亜リン酸ナトリウム1.66g、イオン交換水133.4gとしたこと以外は(N−ビニルカルボン酸アミド重合物油中水型エマルジョンの製造1)と同様な方法でN−ビニルカルボン酸アミド重合物油中水型エマルジョンを製造した。このものをPNVF−2とする。
【実施例1】
【0044】
攪拌機、還流冷却管、温度計および滴下漏斗を備えた4つ口500mLセパラブルフラスコにPNVF−1を252.6gおよびポリオキシエチレンステアリルエーテル(花王株式会社製エマルゲン306P(HLB9.4))12.6gを採取し50℃で攪拌し十分溶解混合した。溶解を確認後80℃まで加温し、20重量%塩酸ヒドロキシルアミン水溶液12.6gを添加し、滴下漏斗にて水酸化ナトリウム水溶液(純分48重量%)98.7gを1分間かけて滴下し、80℃で8時間加水分解反応を行った。加水分解反応終了後、塩酸水溶液(純分35重量%)123.5gを滴下漏斗にて添加し中和した。中和後、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB13.3)を20g添加し、ポリビニルアミンの油中水型エマルジョンを得た。このものを製造例−1とし、1mol/L濃度のNaCl水溶液中での25℃における固有粘度、1重量%濃度のpH、製造直後および製造後30日後(25℃保管)の性状を表−1に示す。
【実施例2】
【0045】
塩酸水溶液による中和を行わなかったこと以外は実施例1と同様な方法でポリビニルアミンの油中水型エマルジョンを得た。このものを製造例−2とし、1mol/L濃度のNaCl水溶液中での25℃における固有粘度、1重量%濃度のpH、製造直後および製造後30日後(25℃保管)の性状を表−1に示す。
【実施例3】
【0046】
水酸化ナトリウム水溶液(純分48重量%)98.7gを塩酸水溶液(純分35重量%)123.5gとしたこと以外は実施例2と同様な方法でポリビニルアミンの油中水型エマルジョンを得た。このものを製造例−3とし、1mol/L濃度のNaCl水溶液中での25℃における固有粘度、1重量%濃度のpH、製造直後および製造後30日後(25℃保管)の性状を表−1に示す。
【実施例4】
【0047】
ポリオキシエチレンステアリルエーテル(花王株式会社製エマルゲン306P(HLB9.4))をポリオキシエチレンオレイルエーテル(花王株式会社製エマルゲン409PV(HLB12.0))としたこと以外は実施例1と同様な方法でポリビニルアミンの油中水型エマルジョンを得た。このものを製造例−4とし、1mol/L濃度のNaCl水溶液中での25℃における固有粘度、1重量%濃度のpH、製造直後および製造後30日後(25℃保管)の性状を表−1に示す。
【実施例5】
【0048】
PNVF−1をPNVF−2としたこと以外は実施例1と同様な方法でポリビニルアミンの油中水型エマルジョンを得た。このものを製造例−
5とし、1mol/L濃度のNaCl水溶液中での25℃における固有粘度、1重量%濃度のpH、製造直後および製造後30日後(25℃保管)の性状を表−1に示す。
【実施例6】
【0049】
攪拌機、還流冷却管、温度計およびガス吹き込み口を備えた4つ口500mLセパラブルフラスコにPNVF−1を252.6gおよびポリオキシエチレンステアリルエーテル(花王株式会社製エマルゲン306P(HLB9.4)12.6gを採取し50℃で攪拌し十分溶解混合した。溶解を確認後80℃まで加温し、20重量%塩酸ヒドロキシルアミン水溶液12.6gを添加し、ガス吹き込み口からアンモニアガス20.2gを吹き込み吸収させた後、80℃で8時間加水分解反応を行った。加水分解反応終了後、塩酸水溶液(純分35重量%)86.4gを添加し中和した。中和後、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB13.3)を15.4g添加し、ポリビニルアミンの油中水型エマルジョンを得た。このものを製造例−6とし、1mol/L濃度のNaCl水溶液中での25℃における固有粘度、1重量%濃度のpH、製造直後および製造後30日後(25℃保管)の性状を表−1に示す。
【実施例7】
【0050】
アンモニアガス20.2gを塩化水素ガス30.3gとし製造後中和しなかったこと以外は実施例6と同様な方法でポリビニルアミンの油中水型エマルジョンを得た。このものを製造例−7とし、1mol/L濃度のNaCl水溶液中での25℃における固有粘度、1重量%濃度のpH、製造直後および製造後30日後(25℃保管)の性状を表−1に示す。
【0051】
(比較例1)ポリオキシエチレンステアリルエーテル(花王株式会社製エマルゲン306P(HLB9.4))を添加しなかったこと以外は実施例2と同様な方法で反応を行ったが、加水分解反応中に固化し安定なポリビニルアミンの油中水型エマルジョンが得られなかった。このものを比較製造例−1としの製造直後および製造後30日後(25℃保管)の性状を表−1に示す。
【0052】
(比較例2)ポリオキシエチレンステアリルエーテル(花王株式会社製エマルゲン306P(HLB9.4))を添加しなかったこと以外は実施例3と同様な方法でポリビニルアミンの油中水型エマルジョンを得た。このものを比較製造例−2とし、1mol/L濃度のNaCl水溶液中での25℃における固有粘度、1重量%濃度のpH、製造直後および製造後30日後(25℃保管)の性状を表−1に示す。
【0053】
(比較例3)ポリオキシエチレンステアリルエーテル(花王株式会社製エマルゲン306P(HLB9.4))をポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(花王株式会社製レオドールTW−S106V)としたこと以外は実施例3と同様な方法で反応を行ったが、加水分解反応中に固化し安定なポリビニルアミンの油中水型エマルジョンが得られなかった。このものを比較製造例−3としの製造直後および製造後30日後(25℃保管)の性状を表−1に示す。
【0054】
(比較例4)ポリオキシエチレンステアリルエーテル(花王株式会社製エマルゲン306P(HLB9.4))をポリオキシエチレンステアリルエーテル(花王株式会社製エマルゲン350(HLB17.8))としたこと以外は実施例3と同様な方法で反応を行ったが、ポリオキシエチレンステアリルエーテル添加直後に固化し安定なポリビニルアミンの油中水型エマルジョンが得られなかった。このものを比較製造例−4とする。
【0055】
(
表−1)
NaOH(aq):水酸化ナトリウム水溶液、HCl(aq):塩酸水溶液
HN
3(g):アンモニアガス、HCl(g):塩化水素ガス
固有粘度:1mol/L NaCl水溶液中25℃において測定(単位:dL/g)
水溶液pH:1.0重量%水溶液に30分溶解した溶液のpH
【0056】
表−1に示すとおり、製造例−1〜7と比較製造例−1、3および4を比較すると、適当なポリオキシアルキレンアルキルエーテルを添加したものは製造時の安定性が明らかに優れ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルのHLB値が高いものを添加したものや、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを添加しないものは製造時の安定性に劣ることが明白である。
【0057】
製造例−1〜7および比較製造例−2を比較すると、酸による加水分解の場合はポリオキシアルキレンアルキルエーテルを添加しないものでも安定に製造することができるが、25℃で30日保存した場合の保存安定性に劣ることは明白である。
【0058】
また、実施例−1、2および4〜7と実施例3を比較すると、酸による加水分解を行った実施例−3は25℃で30日保存した場合の保存安定性に劣り、1重量%水溶液のpHが6.0〜14.0の範囲に調整することの優位性は明らかである。