【実施例1】
【0019】
図面に基づき、この発明の実施態様を説明する。
【0020】
1.測定装置の構成
【0021】
測定装置は、以下のような、子機10と親機20とから構成する。
【0022】
(1)子機10の構成
【0023】
横にした円柱のような形状の基体1は、円柱の軸方向に水平な車軸4を有し、車軸4の両端に車輪5、5を設ける。基体1は、上面に平面部2を有し、平面部2にプリズム7を取り付ける取付孔3を形成する。また、基体1に、基体1の移動を操作する操作棒11を斜め上方に向けて固定する。
プリズム7は、いわゆる360°プリズムで、任意方向からプリズム7に入射したレーザー光をプリズム7の中心8に導き、入射方向にレーザー光を反射する機能を有する。また、下端に下方に向けた取付用の突起部9を有する。基体1の取付孔3にプリズム7の突起部9を挿入して、基体1に着脱自在にプリズム7を取り付けして、この発明の子機10とする。この場合、プリズム7の中心8は、車軸4の直上に位置するように、プリズム7及び車軸4の位置を設定する(
図1(a))。
また、地面31(車輪5の接地点)からプリズム7の中心8までの距離をH
0とする(
図1(a))。
【0024】
(2)親機20の構成
【0025】
親機20は、本体柱部21上に、水平面内回転自在で、かつ垂直面内に回転自在(角度変更自在)にレーザー光を受信発信するレンズ部23を有する本体部22が取り付けてある。また、本体部22には、子機10のプリズム7を感知して、子機10を追尾して常にレンズ部23をプリズム7に正対する機能を有する(
図2)。図中24、24は、親機20の各種設定を行う操作パネルであり、鉛直軸に対して対角位置(直径対象)に2つ設けてある。
親機20は、子機10の位置を測定して、子機の位置情報を座標Q
n(X
n,Y
n,Z
n)として、データを蓄積できる機能を有する。データは各種記録媒体を介して、取り出し自在となり、またデータは通信機能により、所定のPCなどに転送可能となっている。
親機20として、例えば、「Leica社」の「TPS1200+ シリーズ」を使用して、同機のアクセサリー商品である360°プリズムを子機のプリズム7に採用する。この装置の場合、到達距離が500〜800m程度可能であるため、遮蔽物が無い道路であれば、少なくとも親機20を設置した基準点Pの両側500mずつ、合計1000m程度測定可能であり、例えば、測定線Sを50m間隔で設定した場合には約200本の道路断面を測量できる。なお、親機20は、上記機種に限らず同様の機能を発揮できる他機種又は他社の製品を使用することができることは当然である。
【0026】
2.測定方法(1)−測定計画
【0027】
(1) 例えば、道路32の表面の凹凸を測定することに、道路32の摩耗具合を判定して、摩耗量が大きい場合には、アスファルト補修をすることになる。例えば、わだち(車のタイヤによる道路の摩耗)の有無の情報が必要な場合には、測定点Sの間隔Tは、例えば、10cm程度に設定する。
【0028】
(2) 地図上で、予め測定すべき道路32を横断して、測定する位置を測定線Sとして、間隔L毎に設定する。例えば、L=50m で設定する。
複数の測定線Sを管轄する基準点P
1を設定する。基準点P
1には、親機20を設置して、管轄する各測定線Sを走行する子機10にレーザーを発信して受信する。親機20を移動すると、各種設定を再度設定する必要があるため、親機20の移動を少なくすることが望ましい。また、親機20のレーザーを受信発信するレンズ部23と、子機10(測定線Sに沿って移動)のプリズム7との間に、高さのある中央分離帯、樹木などの障害物38が入り死角となる位置を避け、親機20のレーザーの性能上で到達距離の範囲内で任意に設定する。なお、親機20と子機10との間に遮断する障害物が多少あったとしても、子機10は一定速度で移動するので、親機20は子機10の動きを予想して追尾することができるので、測定点に障害物がなければ測定することができる。
【0029】
(3) また、親機20で、座標測定間隔Tを設定する。例えば、測定線S
1上で、T=10cm 毎のデータを求める場合には、子機10の移動スピードを人の平均歩行速度(4km/時)よりもゆっくりとした「2km/時」(約55.6cm/秒)とすると、これを考慮して、親機20の測定間隔(レーザーの発信間隔)を約0.2秒に設定すればよい。また、親機20には、測定ピッチであるTの値を「10m」と直接に入力して設定することもできるようになっている。
【0030】
2.測定方法(2)−測定線1本の測定
【0031】
(1) 測定現場の道路32では、測定計画に基づき、断面(高さ)を測定する必要がある断面線を測定線Sとして、間隔L毎に設定する。各測定線Sで測定を行うために(親機20からのレーザー光を受けられるように)親機20の位置を決めて、基準点Pとして、基準点P
1、P
2、・・・P
nが決められる。
従って、各基準点P毎に管轄する測定線S
1、S
2、・・・、S
nが設定され、各測定線Sで測定開始位置Q
0と測定終了位置Q
nを決める。
【0032】
(2) 次に測定現場では、現場では、道路上に基準点P
1、P
2、・・・P
nの位置に印を付けて、親機20を設置する。また、各測定線S毎に、測定開始位置Q
0と測定終了位置Q
nに印を付ける。測定開始位置Q
0と測定終了位置Q
nの印は、その後の道路補修工事をする際に、測量結果と対応させることができる。
【0033】
(3) 基準点P
1に親機20を設置して、第1測定線S
1の測定開始位置Q
0に子機10を置く。
親機20のスイッチを入れ、子機10の追尾を開始する。親機20から子機10のプリズム7にレーザーを当てて、反射光を親機20で受信して、基準点P
1の第1測定線S
1の初期位置Q
0の座標情報、
座標Q
1−0(X
1−0,Y
1−0,Z
1−0)
を得るので、親機20は、これを設定して保存する。
続いて、測定者は、子機10の操作棒11を持って、設定した速度(約2km/時)で、設定した第1測定線S
1の測定終了点Q
nに向けて歩きながら、子機10を移動させる。この際、第1測定線S
1の中間位置(Q
0とQ
nの間)に目標を定めて、歩行すれば、第1測定線に沿った測定ができる。また、この間、子機10の位置は、親機20から追尾されている。
【0034】
(4) 続いて、子機10の第1移動位置、即ちQ
0から約0.2秒後に親機20からレーザーを発信して受信光を得て、第1移動位置での座標情報、
座標Q
1−1(X
1−1,Y
1−1,Z
1−1)
を得るので、親機20は、これを設定して保存する。同様にして、
座標Q
1−2(X
1−2,Y
1−2,Z
1−2)
座標Q
1−3(X
1−3,Y
1−3,Z
1−3)
座標Q
1−4(X
1−4,Y
1−4,Z
1−4)
・・・・・・・・・・
座標Q
1−n(X
1−n,Y
1−n,Z
1−n)
このように、Q
nでのデータまで得て、親機20は、これを総て設定して保存する(
図4(b))。
【0035】
(5) この場合、予め設定した速度(この場合、2km/時)に近い一定の速度(予め定める)で走行して、かつ、作業者が親機と子機との間に入らないように注意する。ただし、速度が多少前後しても、その子機の平面位置に対応した高さ位置の座標情報が入手できるので、その測定線の断面の測定には支障がない。
また、子機10を操作者が移動を操作する際に、子機10は車輪5、5が2つあるので、上下方向(接地面31と高さ方向)はぶれることはなく、また、車軸4の軸方向についても同じである。従って、進行方向(測定線S方向。車軸4に直角の方向)でプリズム7が傾かないように注意すれば良い。ただし、例えば、プリズム7の傾きが仮に5°ずれた場合、プリズム7の中心8の接地面31までの高さ(=H
0)が30cmであれば、水平方向のずれは約2.61cm、上下方向のずれは約0.11 cm程度に過ぎないので、また通常道路にも舗装の勾配が
あり、この測定上で大きな影響は無い。
また、例えば、4車線の道路の場合(幅10m)であれば、子機の移動速度が時速2kmであっても18秒程度で横断できるので、交通量の多い道路であっても、交通規制をすることなく、測量できる。また、歩行速度(測定線に沿った子機10の移動速度)を早くすることもでき、道路の横断時間をより短くできる。
【0036】
(6) また、前記のように、歩行速度(2km/時)、測定間隔をT(=10cm)時間で設定した場合には、10cmとした測定間隔Tを5cm毎としたい場合には、親機20の設定を変えることなく、子機10の移動速度(歩行速度)を2分の1とすることもできる。また、道路の断面変化が少なく測定間隔を50cmにしたい場合には、移動速度(歩行速度)を5倍程度早くすれば良く、任意に設定できる。特に測定中に、異常箇所を発見して、細かい断面の測定を希望する場合に、子機10の移動速度を遅めにするだけで対応できるので、有効である。
【0037】
4.測定方法(3)−道路全体の測量
【0038】
(1) 第1測定線S
1を終了したならば、同様に第2測定線S
2の測定開始位置Q
0に子機10を移動する。この場合、子機10は、親機20から追尾されているので、直ぐに、第2測定線S2での測定を開始できる。以下同様にして、第2測定線S
2に沿って、子機10を移動して、測定する(
図4(a))。
座標Q
2−0(X
2−0,Y
2−0,Z
2−0)
座標Q
2−1(X
2−1,Y
2−1,Z
2−1)
座標Q
2−2(X
2−2,Y
2−2,Z
2−2)
・・・・・・・・・・
座標Q
2−n(X
2−n,Y
2−n,Z
2−n)
【0039】
(2) 前記第の測定線の開始位置は、第1の測定線の測定終了位置側、すなわち、Q
2−n側をQ
2−0として、始めることもできる(
図4(a))。この場合には道路を横断する回数を削減させることができる。
【0040】
(3) 同様にして、1つの基準点P
1で、測定するn本総ての測定線S
1、S
2、・・・、S
nのデータを取得する。
座標Q
n−0(X
n−0,Y
n−0,Z
n−0)
座標Q
n−1(X
n−1,Y
n−1,Z
n−1)
座標Q
n−2(X
n−2,Y
n−2,Z
n−2)
・・・・・・・・・・
座標Q
n−n(X
n−n,Y
n−n,Z
n−n)
【0041】
(4) 次に、第2基準点P
2、第3基準点P
3、・・・第n基準点P
nに親機20を移動して、同様にして、各基準点P毎に測定線Sに沿って、子機10を移動させて、同様にデータを取得する。基準点Pを移動させた場合には、第1基準点P
1との平面位置及び高さ位置を入手して、各測定線Sでの座標情報を補正する。
【0042】
(5) 以上のように入手した各データは、3値の座標データの集合であるので、汎用の処理ソフトで処理可能であり、断面図の作成など容易にでき、かつ極めてデータ量が少ないので、処理時間を短くして容易に処理することができる。従って、1つの測定線での測定点を増やし、あるいは測定線を増やすことが容易であり、より細かい道路の凹凸情報を極めて簡易に取得できる。
例えば、基準点P
1でのS
1が
図3のような道路の場合、高さ数mmのなだらかな凹部である「わだち33」の存在を容易に把握できる。また、街渠35のライン35a、集水桝36、マンホール37等の位置も子機10からの情報で把握できる(
図3)。
【0043】
(6) また、親機を操作するリモコンを持った作業者が子機を操作すれば、作業者一人でも測定作業をすることもできる。また、測定線に沿って、紐などを張って、紐などに沿って子機を移動させれば、測定線からの平面位置のずれを防止することができる。
【0044】
(7) また、前記において、補修工事などを考慮すると、測定線S
1、S
2、・・・S
nは並列して道路を横断するように配置することが望ましいが、任意であり、斜めに道路を横断するような設定や、道路の長さ方向に設定をすることもできる(図示していない)。また、測定線Sは直線に限らず、円弧状、波状などの曲線でも可能であり、ジグザグ型とすることもできる。
また、特に分岐、合流や交差点等では、測定線Sは種々の設定が可能であり、任意である。いずれの測定線を設定しても、道路の凹凸面を正確にかつ容易に測量できる。
【0045】
5.他の実施例
【0046】
(1) 前記実施例において、子機10の車輪5は2つ設けたが、3つ又は4つ以上とすることもできる(図示していない)。2輪では、進行方向のプリズム7の傾斜を多少注意することが必要であるが、3輪以上では、プリズム7の傾斜を考慮する必要は無いが、プリズム7の中心8の平面位置はと車輪5の接地位置に多少のずれが生じるので、急激な高さの変化がある場合に、プリズム7の中心8の平面位置に若干の誤差が生じるおそれもある。したがって、誤差を無くすためには、一方の車軸の上方にプリズムを設置する等の工夫が必要である。
【0047】
(2) また、前記実施例において、子機10の車輪5を3つ又は4つ以上とした場合、子機10に動力装置(エンジンやモータ)を取り付けて自動走行するように構成することも可能である(図示していない)。
【0048】
(3) また、前記実施例において、子機10の基体1は、円柱を横設した構造としたが、2つ以上の車輪5、5とプリズム7をと取付可能であれば、基体1の構造は任意である(図示していない)。