(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
<2段式加熱炉の構成>
図1は、本発明の実施形態における2段式加熱炉10の概略の正面図である。
図2は、2段式加熱炉10の1段目を構成する第1のワーク支持部3の平面図である。
図3は、2段式加熱炉10の2段目を構成する第2のワーク支持部4の平面図である。
【0011】
図1に示すように、2段式加熱炉10は、基台1上に配置された下部ヒーター2、
下部ヒーター2上に配置された第1のワーク支持部3、第1のワーク支持部3上に配置された第2のワーク支持部4、及び第2のワーク支持部4上に配置され、上壁5に取り付けられた上部ヒーター6を含んで構成される。
【0012】
1段目の第1のワーク支持部3上にワークW1が配置され、2段目の第2のワーク支持部4上にワークW2が配置される。ワークW1,W2は、下部ヒーター2と上部ヒーター6との間に挟まれた状態で加熱されるようになっている。下部ヒーター2と上部ヒーター6は、遠赤外線ヒーターによって構成されることが好ましい。ワークW1,W2は例えば車両用部品であり所定形状の鋼板によって形成されている。
【0013】
図2に示すように、第1のワーク支持部3は、下部ヒーター2上に配置され、水平方向(Y方向)に延びた複数(例えば、6本)の第1のワーク支持棒3aを含んで構成される。この例では、下部ヒーター2は、3つのブロックに分割され、各ブロック上に2本の第1のワーク支持棒3aが配置されているが、ブロック分割するかどうか、ブロック分割の数は任意である。
【0014】
図3に示すように、第2のワーク支持部4は、水平方向(X方向)に直線状に延びて配置され、水平方向(X方向)に伸縮自在に保持された一対のワーク支持パイプ4a,4aと、一対のワーク支持パイプ4a,4aの間に所定の間隔をもって掛け渡された複数(例えば、6本)の第2のワーク支持棒4bを含んで構成される。
【0015】
一対のワーク支持パイプ4a,4aの内側に突出するように台座4cが取り付けられており、第2のワーク支持棒4bの両端は台座4cに載せられている。一対のワーク支持パイプ4a,4aと、6本の第2のワーク支持棒4bは、いわば簀の子を形成しているので、簀の子の隙間から、下部ヒーター2と上部ヒーター6の輻射熱が相互に通されることで均一な温度に加熱することができる。なお、この例では、上部ヒーター6は、下部ヒーター2に対応して、3つのブロックに分割され、各ブロック上に2本の第2のワーク支持棒4aが配置されているが、ブロック分割するかどうか、ブロック分割の数は任意である。
【0016】
また、一対のワーク支持パイプ4a,4aの端は、2段式加熱炉10の側壁11に形成された孔12を通して外部に突出している。つまり、一対のワーク支持パイプ4a,4aは、加熱による熱膨張でX方向に自由に伸縮できるようになっているので、変形することがない。
【0017】
しかしながら、このままではワーク支持パイプ4aは長手方向を軸として回転するおそれがある。そこで、ワーク支持パイプ4aの一方の端部に回転を防止するための回転止め具7を取り付けることが好ましい。
【0018】
図4(a)は回転止め具7の正面図、
図4(b)は
図4(a)の左側面図である。
図示のように、ワーク支持パイプ4aの一端は、2段式加熱炉10の側壁11に形成された孔12を通して外部に突出している。側壁11の外面にはリング状のガイド部材7aが取り付けられ、ワーク支持パイプ4aはこのガイド部材7aに通されている。
【0019】
固定板7bは、突出したワーク支持パイプ4aの端部に固定されている。固定板7bの上部は切り欠かれて凹部7cが形成されている。そして、側壁11の外面には、一端が取り付けられ、他方の端が固定板7bの凹部7cに挿入された固定棒7dが取り付けられている。これにより、ワーク支持パイプ4aが回転しようとすると、固定板7bの凹部7cの側壁がワーク支持パイプ4aに当たることで、ワーク支持パイプ4aの回転が防止されている。
【0020】
また、
図3及び
図4に示すように、一対のワーク支持パイプ4a,4aは、中空構造になっており、一方の端の注入孔8から冷却水が注入され、他方の端の排出孔9から冷却水が排出されるように構成されている。これにより、一対のワーク支持パイプ4a,4aは冷却され、その熱変形が防止される。
【0021】
この場合、ワーク支持パイプ4aは、2段式加熱炉10の側壁11に形成された孔12とガイド部材7aのリング部を通されているが、水平方向(X方向)には摺動できるようになっているので、熱膨張による変形が防止される。
【0022】
なお、第1のワーク支持部3の第1のワーク支持棒3a、第2のワーク支持部4の第2のワーク支持棒4bの本数や間隔は、投入されるワークW1,W2の個数や、寸法に応じて適宜変更することができる。
【0023】
<加熱炉用ワーク搬送機の構成>
次に、加熱炉用ワーク搬送機20を
図5乃至
図9に基づいて説明する。
図5は、加熱炉用ワーク搬送機20の平面図である。
図6(a)は
図5のX−X線における断面図、図(b)は
図5のY−Y線における断面図、
図6(c)は
図5におけるZ−Z線における断面図である。
【0024】
加熱炉用ワーク搬送機20は、基台21上に垂直方向(Z方向)及び水平方向(X方向)に移動可能に取り付けられたフレーム22を有しており、このフレーム22に
取り付けられたラックアンドピニオン機構を用いて、第1のワークチャック板36a,36bと第2のワークチャック板36c,36dを開閉させるようになっている。
ラックアンドピニオン機構は、ラックの直線運動をピニオン(歯車)の回転運動に変換する。
【0025】
加熱炉用ワーク搬送機20は、シリンダー機構を用いたものとは異なり、耐熱性に優れており、オーステナイト化温度以上という高温に加熱される加熱炉内においても、ワークW1,W2のチャック動作、アンチャック動作を行うことができる。
【0026】
以下、加熱炉用ワーク搬送機20の詳しい構成を説明する。X方向に長いアーム23は、フレーム22に取り付けられたモータ24よりX方向に直線運動するように駆動される。アーム支持棒25は、アーム23を下から支持するためにアーム23に交差するようにフレーム22のY方向に掛け渡されている。また、アーム支持棒25にはガイド部材26が取り付けられており、アーム23をX方向にガイドしている。
【0027】
アーム23の内側には、第1のラック27と第2のラック28がX方向に所定の間隔を持って取り付けられている。第1のラック27及び第2のラック28は平板の一面に、同形の歯を同じピッチで刻んだものである。
【0028】
第1のラック27には第1の歯車29がかみ合わされ、第2のラック28には第2の歯車30がかみ合わされている。
【0029】
第1の回転軸31は、一端が第1の歯車29の回転中心に結合され、他端がフレーム22に回転可能に接続される。これにより、アーム23がX方向に移動すると、第1の回転軸31は第1の歯車29と共に正回転するようになっている。
【0030】
第2の回転軸32は、一端が第2の歯車30の回転中心に結合され、他端がフレーム22に回転可能に接続される。これにより、アーム23がX方向に移動すると、第2の回転軸32は第2の歯車30と共に正回転するようになっている。
【0031】
第2の回転軸32には第2の歯車30にY方向に隣接して第3の歯車33が取り付けられている。第3の歯車33は、第2の回転軸32の回転と共に正回転するようになっている。
【0032】
第4の歯車34は、第3の歯車33とかみ合う。第3の回転軸35は、一端が第4の歯車34の回転中心に結合され、他端がフレーム22に回転可能に接続される。これにより、第3の回転軸35は逆回転するようになっている。この場合、第1乃至第4の歯車29,30,33,34は、同形の歯を同じピッチで同個数刻んだものである。
【0033】
第1のワークチャック板36a,36bは第1の回転軸31にワークWのサイズに合わせて所定の間隔で取り付けられ、第2のワークチャック板36c,36dは第3の回転軸35にワークWのサイズに合わせて所定の間隔で取り付けられている。また、
図7に示すように、第1及び第2のワークチャック板36a〜36dは、その先端に板状のワークWを引っかける爪部37を有している。
【0034】
そして、アーム23がX方向(左方向)に移動すると、第1の回転軸31は正回転(反時計回り)し、第1のワークチャック板36a,36bも正回転する。この時、第3の回転軸35は逆回転(時計回り)し、第2のワークチャック板36c,36dも逆回転する。これにより、
図7(a)に示すように、第1及び第2のワークチャック板36〜36dは閉じる形になり、ワークWはチャック(保持)される。
【0035】
アーム23がX方向(右方向)に移動すると、第1の回転軸31は逆回転し、第1のワークチャック板36a,36bも逆回転する。この時、第3の回転軸35は正回転し、第2のワークチャック板36c,36dも正回転する。これにより、
図7(b)に示すように、第1及び第2のワークチャック板36〜36dは開く形になり、ワークWは開放される。
【0036】
また、
図8に示すように、フレーム22の進行方向の前面には加熱炉内に置かれたワークを押し出すためのワーク押し出し具38が取り付けられている。ワーク押し出し具38は、水平方向(X方向)に突出し、ワークの側面に当接する突出部を有している。
【0037】
このワーク押し出し具38の働きを2段式加熱炉10へのワークの投入を例として説明する。この場合、2段式加熱炉10の第1のワーク支持部3上には、2個のワークが投入できるもとする。
【0038】
先ず、
図9(a)に示すように、第1のワーク支持部3上に、2個のワークW1,W2が投入され、加熱されている。先に投入されたワークW1の加熱が完了すると、
図9(b)に示すように、ワークW1は、2段式加熱炉10の排出口に配置された加熱炉用ワーク搬送機20の水平移動、垂直移動、及びチャック動作により2段式加熱炉10の排出口から排出される。
【0039】
次に、
図9(c)に示すように、加熱炉用ワーク搬送機20は、事前に垂直移動によりその垂直位置が調整された後、次に投入するワークW3をチャック(保持)した状態で、2段式加熱炉10の投入口から炉内に水平移動してくる。この時、ワーク押し出し具38がワークW2の側面に当接することにより、ワークW2は第1のワーク支持部3上を所定の加熱位置(すでに排出されたワークW1があった位置)まで押し出される。
【0040】
次に、
図9(d)に示すように、加熱炉用ワーク搬送機20は搬送してきたワークW3を開放し、第1のワーク支持部3上に移す。その後、
図9(e)に示すように
ワークW3を開放した加熱炉用ワーク搬送機20は垂直方向に上昇し、投入口から元の位置まで水平移動する。このようにして、ワーク押し出し具38を取り付けるだけで、1台の加熱炉用ワーク搬送機20で、新たなワークの投入と、先に炉内に投入されたワークの移動を同時に行うことができる。2段式加熱炉10の第2のワーク支持部4にワークを投入する場合も同様である。
【0041】
また、加熱炉用ワーク搬送機20は、2段式加熱炉10に限らず、1段式加熱炉、多段式加熱炉のワークの投入、排出に適用することができる。