特許第5669334号(P5669334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5669334適応ノイズ閾値処理を用いた熱交換器のための非破壊検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669334
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】適応ノイズ閾値処理を用いた熱交換器のための非破壊検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/90 20060101AFI20150122BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   G01N27/90
   G01R33/02 B
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-531559(P2013-531559)
(86)(22)【出願日】2010年10月5日
(65)【公表番号】特表2013-540268(P2013-540268A)
(43)【公表日】2013年10月31日
(86)【国際出願番号】US2010051382
(87)【国際公開番号】WO2012044330
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2013年9月6日
(31)【優先権主張番号】12/895,942
(32)【優先日】2010年10月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ル、キ、ヴィ
(72)【発明者】
【氏名】バウザー、クレイグ、ジー
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−292747(JP,A)
【文献】 特開昭63−079058(JP,A)
【文献】 特開2004−053406(JP,A)
【文献】 特開平06−102254(JP,A)
【文献】 特表2009−531672(JP,A)
【文献】 特開平05−060730(JP,A)
【文献】 特開2006−177770(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0185576(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72−27/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細管の欠陥をチェックする渦電流試験の方法であって、
前記細管に渦電流プローブを通し、前記細管に沿った第1の数の位置の渦電流データを取得することと、
前記渦電流データを分析して、前記細管に沿った第2の数の位置の背景ノイズ・データを発生させることとを含み、前記背景ノイズ・データは、各々が前記第2の数の位置の夫々に関連する複数の背景ノイズ・データ値から成り、
前記方法はさらに、
前記渦電流データを分析して、前記細管に沿った第3の数の位置の抽出データを発生させることと、
1つ以上のルールのセットを前記抽出データの少なくとも一部に適用することによって、前記細管に特定のカテゴリの欠陥が存在するか否かを判定することとを含み、
前記ルールの少なくとも1つが、前記抽出データのうちの特定の部分と、前記細管に沿った位置に関連する前記背景ノイズ・データ値のうちの特定のデータ値の関数として変化する閾値を用いるものである
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記渦電流データを分析して抽出データを発生させることが、前記渦電流データ及び前記背景ノイズ・データを用いて前記抽出データを発生させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記背景ノイズ・データを用いて、前記渦電流データから前記抽出データを発生させるための1つ以上の抽出閾値を生成する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記渦電流データから前記抽出データを発生させることが、前記渦電流データの各片を前記抽出閾値の1つと比較して、前記渦電流データ片が前記抽出データであると見做されるべきか否かを判定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抽出データのうちの前記特定の部分及び前記背景ノイズ・データ値のうちの前記特定の各データ値が、各々電圧である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抽出データのうちの前記特定の部分及び前記背景ノイズ・データ値のうちの前記特定の各データ値が、各々位相角である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記背景ノイズ・データ値のうちの前記特定のデータ値の少なくとも1つが、前記細管の所定の局所的部分に関連する局所的ノイズ値である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記背景ノイズ・データ値のうちの前記特定のデータ値の少なくとも1つが、前記細管の特定の領域に関連する領域的ノイズ値である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
細管の欠陥をチェックする渦電流試験のためのシステムであって、
前記細管に沿った多数の位置の渦電流データを取得するように構成された渦電流プローブ機構と、
プロセッサ及びメモリ・デバイスを含む処理ユニットを有するコンピュータ・システムとを含み、
前記メモリ・デバイスが、前記プロセッサにより実行可能な1つ以上のルーチンを記憶し、前記1つ以上のルーチンが、
前記渦電流データを分析して、前記細管に沿った第1の数の位置の背景ノイズ・データを発生させ、
前記渦電流データを分析して、前記細管に沿った第2の数の位置の抽出データを発生させ、前記背景ノイズ・データは、各々が前記第2の数の位置の夫々に関連する複数の背景ノイズ・データ値から成るものであり、前記ルーチンはさらに、
1つ以上のルールのセットを前記抽出データの少なくとも一部に適用することによって、前記細管に特定のカテゴリの欠陥が存在するか否かを判定するための命令を含み、
前記ルールの少なくとも1つが、前記抽出データのうちの特定の部分と、前記細管に沿った位置に関連する前記背景ノイズ・データ値のうちの特定のデータ値の関数として変化する閾値を用いるものである
ことを特徴とするシステム。
【請求項10】
前記渦電流データを分析して抽出データを発生させるための前記命令が、前記渦電流データ及び前記背景ノイズ・データを用いて前記抽出データを発生させるための命令を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記背景ノイズ・データを用いて、前記渦電流データから前記抽出データを発生させるための1つ以上の抽出閾値を生成する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記渦電流データから前記抽出データを発生させることが、前記渦電流データの各片を前記抽出閾値の1つと比較して、前記渦電流データ片が前記抽出データであると見做されるべきか否かを判定するための命令を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記抽出データのうちの前記特定の部分及び前記背景ノイズ・データ値のうちの前記特定の各データ値が、各々電圧である、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記抽出データのうちの前記特定の部分及び前記背景ノイズ・データ値のうちの前記特定の各データ値が、各々位相角である、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記背景ノイズ・データ値のうちの前記特定のデータ値の少なくとも1つが、前記細管の所定の局所的部分に関連する局所的ノイズ値である、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記背景ノイズ・データ値のうちの前記特定のデータ値の少なくとも1つが、前記細管の特定の領域に関連する領域的ノイズ値である、請求項9に記載のシステム。
【請求項17】
前記渦電流プローブ機構が、前記渦電流プローブにより発生した信号をデジタル化する試験計器(43)に結合された1対の差動コイル(33、35)を有する渦電流プローブ(31)を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項18】
細管の欠陥をチェックする渦電流試験の方法であって、
前記細管に渦電流プローブを通し、前記細管に沿った第1の数の位置の渦電流データを取得することと、
前記渦電流データを分析して、前記細管に沿った第2の数の位置の抽出データを発生させることと、
1つ以上のルールのセットを前記抽出データの少なくとも一部に適用することによって、前記細管に特定のカテゴリの欠陥が存在するか否かを判定することとを含み、
前記ルールの少なくとも1つが変化する閾値を用い、前記閾値の値が前記細管に沿った位置に基づく反復パターンに従って調整される、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の細管を含む熱交換器を検査する方法に関し、具体的には、ノイズの適応閾値処理を用いて熱交換器管を検査する非破壊方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば加圧水型原子力発電システムにおいて用いられる蒸気発生器等の熱交換器は、一般に、概ね円筒形の圧力容器内に配置された数千のU字形熱交換器細管を含む。熱交換器細管の端部は管板と呼ばれる横方向の板内で固定されており、この板が蒸気発生器を一次側及び二次側に分離する。原子炉からの加熱された一次流体は細管を通過して二次作動流体との間で熱伝達を行い、この二次作動流体が、発電に用いられるターボ機械類を駆動する。一次流体は放射性である場合がある。従って、発生器の二次側に原子炉冷却材が漏れて蒸気を汚染するのを防ぐため、伝熱細管は、亀裂、孔食、へこみ、及び細管壁の減肉等の欠陥及び劣化について定期的に検査しなければならない。劣化した細管が発見された場合、通常は両端で施栓される。蒸気発生器に数千の細管があることを考慮すると、少数の細管を施栓しても熱伝達の効率に容易に認められる影響を与えることはない。
【0003】
渦電流の試験は周知であり、蒸気発生器細管の非破壊試験に広く用いられる方法である。一般に、蒸気発生器細管に対して渦電流試験を実行する際には、細管の中をセンサ又はプローブを前進させて信号を発生させ記録して、後で分析に使用する。例えば、米国特許第3,302,105号(様々なタイプの細管の欠陥の渦電流シグネチャーを例示し記載している)、また、米国特許第3,693,075号、第4,194,149号、第4,207,520号、及び第4,631,688号を参照のこと。1986年6月24日に出願され本発明の譲受人に発行された米国特許第4,763,274号は、蒸気発生器の伝熱細管の欠陥を自動的に検出するための、原子力蒸気発生器細管の渦電流検査プロセス及び渦電流データのコンピュータ分析を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,302,105号
【特許文献2】米国特許第3,693,075号
【特許文献3】米国特許第4,194,149号
【特許文献4】米国特許第4,207,520号
【特許文献5】米国特許第4,631,688号
【特許文献6】米国特許第4,763,274号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動分析システムは、欠陥カテゴリ化(flaw categorization)として一般に知られるものを採用する。これは、収集した渦電流データを分析し、細管の欠陥を特定して、論理ベースのルール・セットに基づいてカテゴリ化するプロセスである。論理ベースのルールは典型的には分析者によって規定される最小閾値のセットを用いる。閾値が低く固定されると、ノイズの多い細管について多数の誤った陽性の報告が作成される可能性があり、閾値が高く固定されると、ある特定の欠陥信号が見落とされるか、又は適切にカテゴリ化されない恐れがある。
【0006】
このため、上述した最小閾値に関連する問題に対処する、熱交換器細管を検査する改良された非破壊方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、細管の欠陥をチェックする渦電流試験の方法が提供される。この方法は、細管に渦電流プローブを通し、細管に沿った多数の位置の渦電流データを取得することと、渦電流データを分析して、細管に沿った多数の位置の背景ノイズ・データを発生させることと、渦電流データを分析して、細管に沿った多数の位置の抽出データを発生させることと、抽出データの少なくとも一部に適用される1つ以上のルールのセットに基づいて細管に特定のカテゴリの欠陥が存在するか否かを判定することとを含み、ルールの少なくとも1つが、抽出データの特定の部分を利用し、抽出データの特定の部分に関連する背景ノイズ・データの特定の部分の関数である閾値を用いる。
【0008】
別の実施形態において、提供されるシステムは、細管に沿った多数の位置の渦電流データを取得するように構成された渦電流プローブ機構と、プロセッサ及びメモリ・デバイスを含む処理ユニットを有するコンピュータ・システムとを含み、メモリ・デバイスが、プロセッサにより実行可能な1つ以上のルーチンを記憶し、その1つ以上のルーチンが、上述の方法を実施するための命令を含む。
【0009】
更に別の実施形態において、細管の欠陥をチェックする渦電流試験の方法は、細管に渦電流プローブを通し、細管に沿った多数の位置の渦電流データを取得することと、渦電流データを分析して、細管に沿った多数の位置の抽出データを発生させることと、抽出データの少なくとも一部に適用される1つ以上のルールのセットに基づいて細管に特定のカテゴリの欠陥が存在するか否かを判定することとを含み。ルールの少なくとも1つが閾値を用い、閾値の値が細管に沿った位置に基づく反復パターンに従って調整される。
【0010】
本発明のこれら及び他の目的、特性、及び特徴、並びに関連構成要素及び部分の組み合わせの動作方法及び機能並びに製造の経済性は、添付図面を参照して以下の説明及び添付の特許請求の範囲を考慮することで更に明らかとなろう。図面は全て本明細書の一部を形成し、同様の参照番号は様々な図面において対応する部分を表す。しかしながら、図面は例示及び記述目的のためだけのものであり、本発明の範囲を限定するものとしては意図されていないことが明瞭に理解されよう。本明細書及び特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「a」、「an」、「the」は、文脈によって明らかにそうではないと述べられていない限り、複数も含むものとする。
【0011】
以下の好適な実施形態の説明を添付図面と関連付けて読むことから、本発明の更なる理解が得られよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】加圧水型原子炉発電所において原子力蒸気供給システムの一部を形成する典型的な蒸気発生器の概略図である。
図2図1に示す蒸気発生器の細管から渦電流データを取得するために用いるプローブ、試験計器、及びコンピュータ・システムの概略図である。
図3】本発明の例示的な実施形態に従った、熱交換器細管を検査し、その欠陥をカテゴリ化する方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
例えば、上、下、左、右、上方、下方、前、後、及びそれらの派生語であるが、これらに限定されない、本明細書において用いる方向についての用語は、図面に示す要素の配向に関するものであり、明示的に言及しない限り特許請求の範囲を限定でするものではない。
【0014】
本明細書において用いる場合、2つ以上の部品又は構成要素が共に「結合されている」という記述は、それらの部品が直接に又は1つ以上の中間部品又は構成要素を介してつながれている又は共に動作することを意味するものである。
【0015】
本明細書において用いる場合、2つ以上の部品又は構成要素が相互に「係合する」という記述は、それらの部品が直接に又は1つ以上の中間部品又は構成要素を介して相互に力を作用させることを意味するものである。
【0016】
本明細書において用いる場合、「多数」という言葉は、1又は1よりも大きい整数(即ち複数)を意味する。
【0017】
本発明を、図1に示す加圧水型原子炉発電所において原子力蒸気供給システムの一部を形成する典型的な蒸気発生器である、蒸気発生器の検査から発生した渦電流データの分析に適用するものとして説明する。蒸気発生器1は円筒形の本体部3を含み、その下端に半球形シェル5が設けられている。円筒形本体部3の下端にある管板7は、蒸気発生器1を、管板7よりも下方の一次側9と、管板7よりも上方の二次側11と、に分割する。チャネル・ヘッドとも称される一次側9は、垂直方向の分割板13によって、入口部15及び出口部17に二分割されている。二次側11には数千のU字形細管19(明確さのために2本の一部のみ図示する)が搭載され、その一端は管板7を貫通してチャネル・ヘッド9の入口部15内に延び、他端は出口部17内に延びる。細管19は、連結棒23によって支えられた一連の金属支持板21及び防振バー25によって、発生器の二次側11で支持されている。細管19に対するアクセスは人道27を介することによって得られる。一次側の水は、入口ノズル29を経て蒸気発生器1に入り、細管19を通り、出口側17に至る。
【0018】
蒸気発生器1の細管19の検査を行う際には、図2に概略的に示すように、1対の差動巻コイル33及び35の形態のプローブ31を、電磁的に不活性な長い可撓性の棒37の端部に装着する。この棒37は検査対象の各細管19に順次挿入される。
【0019】
図1に示すように、プローブ31を担持する棒37は、駆動機構39によって、選択した細管19に入れたり細管19から出したりする。棒37を細管19から引き出す際に、コイル33及び35は順次、典型的には400KHz、200KHz、100KHz、及び10KHzである多数の周波数で多重化される。差動信号については、同時に測定される逆巻のコイル33及び35から測定値を取得する。絶対信号については、コイルの一方のみから測定値を取得し、この信号を、外部の基準コイル(図示せず)で発生したものと比較する。データは1秒当たり多数回(例えば毎秒400回)取得する。即ち、一定ミリ秒毎に(例えば2.5ミリ秒毎に)、4個の差動信号及び4個の絶対信号を取得するシーケンスが反復される。更に、プローブ31は一定公称速度で細管19から引き出される。例えば、プローブ31が毎秒1フィートの公称速度で引き出されると、データ・ポイントを約0.03インチ離間させることができる。
【0020】
渦電流試験の分野では周知のように、へこみ及び例えば壁の孔食、亀裂、減肉のような欠陥等の細管19の多様な特徴、並びに支持板21、管板7、及び防振バー25等の隣接構造の存在が、プローブ・コイル33及び35の実効インピーダンスに影響を及ぼす。システムを較正するため、プローブが試験対象の細管ばかりでなくこの試験部も必ず通過するように、細管の試験部4が選択した細管19の端部に接続される。試験部41は、指定された直径の、20%、40%、60%、及び100%貫通した壁穴の形態の標準的な欠陥、並びに、細管を取り囲み支持板21のものと同様の指標を発生させる標準的なリングが設けられている。これらの試験フィーチャ(feature)によって発生した信号も記録される。
【0021】
プローブ31が細管19に沿って移動する際プローブ31が発生する信号は、試験計器43(図2)に供給される。試験計器43は、プローブ31が発生した信号をデジタル化して、多数のデータ・チャネルを生成する。ここで、各データ・チャネルは、採用している多数の周波数の何れについても、電圧(信号の振幅)又は位相(基準に対する信号の角度)情報を与えることができる。プローブ31はコンピュータ・システム45に作動的に結合されており、これが試験計器43からデジタル・データを受信する。コンピュータ・システム41は、マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラでよいプロセッサ47を有する処理ユニット、及びメモリ・デバイス49を含む。また、コンピュータ45は、例示的な実施形態ではコンピュータ画面であるディスプレイ51も含む。例示的なメモリ・デバイス49は、本明細書に記載するデータを記録するためのデータベース管理ソフトウェアを含む。また、例示的なメモリ・デバイス49は、本明細書に記載し図3に示す方法のステップを実行するために、プロセッサ47によって実行可能な1つ以上のソフトウェア・ルーチンを記憶する。
【0022】
図3は、本発明の例示的な実施形態による、熱交換器細管を試験し欠陥をカテゴリ化する方法を示すフローチャートである。本発明を説明するために本明細書において用いる1つの例示的な、限定的ではない実施形態において、図3の方法は、図2に示すプローブ31、試験計器43、及びコンピュータ・システム45を用い、図1に示す蒸気発生器1において実施することができる。しかしながら、この方法は、本発明の範囲から逸脱することなく、他のハードウェア構成を用いる他の熱交換器環境において実施可能であることは理解されよう。
【0023】
図3を参照すると、この方法は細管19にプローブ31を通して、本明細書の別の箇所に記載したように渦電流信号発生させるステップ50で開始する。これらの信号は試験計器43に供給され、そこで渦電流信号がデジタル化され、これに基づいて、プローブ31のサンプリング・レート、試験計器43のA/D変換器のサンプリング・レート、及びプローブ31の移動速度に応じて、細管に沿った多数の位置の各々で多数の対象チャネルのデジタル・データが発生する。例えば、データ・ポイントは0.03インチ離間したものとすることができる。本明細書の別の箇所に記載したように、それらのチャネルの各々は、多数の異なる周波数の電圧又は位相データを含む。次いでチャネル・データは、コンピュータ・システム45に供給される。
【0024】
次に、ステップ52において、コンピュータ・システム45は収集したチャネルを分析して、細管19に沿った多数の位置で多数の対象チャネルの各々について背景ノイズ・データを発生させる。例えば背景ノイズ・データは、細管の長さに沿って0.5インチ毎に測定/発生させることができる。1つの具体的な、限定的ではない例示的な実施形態では、細管19を多数の異なる対象領域に分割するが、対象領域毎に背景ノイズ・データを測定/発生させる頻度が異なる。この実施形態では、対象領域は、支持板領域、(支持板の間である)自由スパン領域、U字形曲げ領域、管板領域、及び防振バー領域である。自由スパン領域において、背景ノイズ・データは、0.3インチ刻みで移動させる細管19の0.5インチ・ウィンドウについて測定/発生させるが、これらの値は調整することができる。U字形曲げ領域、管板領域、支持板領域、及び防振バー領域は支持構造領域と称され、それらの領域における背景ノイズは、その支持構造の中心部、縁部、又は全長に対して測定することができる。それぞれの場合で測定/発生したノイズ・データは、当該のチャネルにふさわしいもの(即ち適宜、測定した電圧又は位相)である。背景ノイズ・データは、それが多数の対象チャネルで収集したデータからどのように測定/発生したものであれ、コンピュータ・システム45のメモリ・デバイス49に記憶される。
【0025】
次にステップ54において、コンピュータ・システム45は、背景ノイズ・データを多数の抽出閾値の基礎として用いることにより、抽出閾値を超えるデータのみが抽出されて後で使用されるように、多数の対象チャネルの各々における収集データから対象データを抽出する。抽出閾値は、ノイズ成分の性質/発生源及び全ノイズに対するその寄与に基づいて決定することができる。例示的な実施形態では、コンピュータ・システム45は、多数の対象チャネルにおける各データ片を調べ、これを抽出閾値と比較することによって抽出を行う。この場合、抽出閾値は、調査対象のデータ片に対応する背景ノイズ・データより或る所定値だけ高い値である(例えば背景ノイズ・データに数%を加算した値)。調査対象のデータ片に対応する背景ノイズ・データは、局所的ノイズ値とすることができる(対象信号の周囲の小さい、例えば5インチのウィンドウ内のノイズ)。あるいは、調査対象のデータ片に対応する背景ノイズ・データは、その細管についての領域的ノイズ値(特定の対象領域のノイズ)とすることができる。これらの領域的ノイズ値は、自由スパン領域内の数百インチから、又はいくつかの構造縁部もしくは構造中心部から、取得することができる。通常、背景ノイズは細管製造ノイズ及び計器ノイズから成る。計器ノイズは首尾一貫しており、ある特定の値と予想されるが、細管製造ノイズはそうではない。ある細管のノイズ・レベルは別の細管に比べて数倍ということがあり得るからである。ノイズ分析の一部は、適正な抽出を行うための適用をするべくノイズ発生源とその特徴を突き止めることである。また、適正な抽出が行えるように、全ノイズ値から分離させなければならない、サービス条件(スケール、堆積物等)に因るノイズ寄与分を理解することも重要である。システムは、製造ノイズがデータベースに記憶されていない場合、製造時の生の渦電流データからこれを決定することができる。調査対象のデータ片が、その細管の背景ノイズから計算した抽出閾値を超える場合、これを対象抽出データと見做して後述するように更に考察する。
【0026】
ステップ56において、データを条件付けて更なる処理を行うために、多数の対象チャネルの各々において対象抽出データに1つ以上の信号処理技法を適用する。例えば、当技術分野において既知のように、支持板21に関連する信号を排除し、劣化に関連する信号を増強するようなやり方で、ある特定の信号を混合する(抑制する)ことができる。フィルタ等の他の信号処理も使用可能である。
【0027】
後述するようにノイズ・ベースの適応閾値を採用するルール・ベースの論理を用いて細管19の欠陥をカテゴリ化するため、ステップ58において、多数の対象チャネルの各々における対象抽出データをコンピュータ45によって分析する。更に具体的には、コンピュータ・システム45は、自動分析及び欠陥カテゴリ化システム(ソフトウェア・ルーチンはメモリ・デバイス49に記憶されプロセッサ47によって実行される)を実施するが、ここで、様々な所定の欠陥カテゴリが多数予め確立されており、例えば欠陥カテゴリは、摩耗、孔食、亀裂、又は一般にNQI(non-quantified indication:非定量化指標)と称されるものを指定することができる。各欠陥カテゴリはルール論理セットによって規定される。ルール論理は独自の数の個別ルールを有し、欠陥の存在を結論付けるためにはその各々が満たされなければならない。また、セット内の各ルールは、データ・タイプ(特定のチャネルからの電圧又は位相)、及び最小閾値(例えば0.15V又は30度)、及び最大閾値(例えば1000.0V又は150度)を指定し、ルールを満たすためにはデータはその範囲でなければならない。通常、セット内のルールが1つでも満たされない場合、このセットはフェイル(failed)と見なされ、欠陥は存在しないことがわかる。従って、細管に沿った様々な位置においてこの分析及び欠陥カテゴリ化、特にルール論理を用いて多数の対象チャネルの各々における対象抽出データを調べることによって、欠陥が特定され報告されるか否かを判定することができる。
【0028】
本発明によれば、個別ルールの1つ以上において、最小閾値は、そのチャネル、そして細管19のその位置で測定し、発生させた背景ノイズの関数であるので、静的ではなく変化する。そのルールで任意の特定時点において用いられる背景ノイズ・データは、局所的ノイズ値(例えば5インチである、対象信号の周囲の小さいウィンドウ内のノイズ)とすることができる。あるいは、背景ノイズ・データは、その細管についての領域的ノイズ値(特定の対象領域でのノイズ)とすることができる。これらの領域的ノイズ値は、自由スパン領域における数百インチから、又はいくつかの構造縁部もしくは構造中心部から、取得することができる。適当であれば、隣接する細管のサンプリング・ノイズ値を用いて、評価の際のノイズ入力処理を強化することができる。例えば、ルールの最小閾値は0.15Vから(背景ノイズの2倍)の範囲として指定することができるので、背景ノイズが0.01Vであった場合、最小閾値は0.02Vとなる(データにノイズが多く、(背景ノイズの2倍が)0.15Vより高い場合、0.15Vをルールに用いる。0.15Vの小さい欠陥が高い背景ノイズのために見落とされることがないように、ルールの境界を0.15Vとする)。同様に、ルールの最小閾値を30度とすることができるが、背景ノイズが5度であった場合、この5度の位相ノイズを、評価/カテゴリ化のプロセスにおける信号変換及び測定に用いることができる。あるいは、位相角を、欠陥カテゴリ化の際の適応閾値処理時に単純に加算又は減算してもよい。

【0029】
1つの例示的な実施形態において、欠陥カテゴリ化のためのルールは、特定のチャネル上で電圧又は位相が追従すべき特定の反復パターンを指定してもよい(このパターンはメモリ・デバイス49に記憶される)。このパターンを用いることによって、適応閾値技法を使用可能であるか否かを判定する。適応閾値のレベルは、ある特定のノイズ・パターンに信号が従うか否か、及びその信号のうちどの程度従うかに応じて異なる。例えば、ピルガー圧延を施した細管(pilgered tube)の場合、ピルガー信号パターンが生成され、これは規則的な間隔(約2乃至3インチ毎)で反復する。また、これは細管全体での電圧及び位相ノイズの規則的な反復パターンを示し、この場合周期的なノイズのみが存在する。例えば、細管に沿って数百インチにわたって2乃至3インチ毎に反復する0.5乃至2.0V及び170度のノイズが存在する場合がある。このため、ルール・ベースの論理では、閾値をそのノイズについて周期的に、即ち周期的なノイズが存在する場合にのみ調整する必要があり、周期的なノイズが存在しない場合には必要性はなくなるか低くなる。
【0030】
ステップ58の後、対象抽出データが全て分析され、全ての欠陥がカテゴリ化されると、ステップ60に示すように欠陥が報告される。
【0031】
本発明の具体的な実施形態を詳細に説明したが、本開示の全体的な教示に鑑み、詳細において様々な変更及び変形を実施可能であることは当業者には認められよう。従って、開示した特定の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその均等物のいずれか及び全てが与えられる本発明の範囲に関して限定でなく例示のみとして意図される。
図1
図2
図3