特許第5669350号(P5669350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669350
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】屋根の構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/343 20060101AFI20150122BHJP
   E04B 7/02 20060101ALI20150122BHJP
   E04B 7/00 20060101ALI20150122BHJP
   E04H 6/02 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   E04B1/343 V
   E04B7/02 511E
   E04B7/00 Z
   E04H6/02 A
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2008-266914(P2008-266914)
(22)【出願日】2008年10月15日
(65)【公開番号】特開2010-95893(P2010-95893A)
(43)【公開日】2010年4月30日
【審査請求日】2011年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】野沢 泰幸
(72)【発明者】
【氏名】吉田 理恵
【審査官】 湊 和也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−279822(JP,A)
【文献】 特開2000−120229(JP,A)
【文献】 特開2008−274648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/343
E04B 7/00
E04B 7/02
E04H 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁に固定される母屋にパネルが固定される構成とする屋根の構造であって、
前記梁が直線状に構成されるとともに、
前記パネルの前記母屋の各固定箇所における、前記パネルの梁からの高さが、前記母屋の高さ寸法によって規定され、
前記母屋の高さ寸法によって、前記パネルの曲面形状が規定される構成とし、
前記屋根は、前記梁の長手方向に離間して各取り付け位置において前記梁の上面の延長線上よりも上となる位置に配置される前枠及び後枠を有し、
前記前枠及び前記後枠に対し、前記パネルの前端部及び前記パネルの後端部が、それぞれ固定され、
前記パネルの前記前枠及び前記後枠の各固定箇所における、前記パネルの梁からの高さが、前記前枠及び前記後枠の高さ寸法によってそれぞれ規定され、
前記梁の後端部側には、前記後枠を載置するために下方に窪ませた部位を有する連結ブラケットが設けられ、
前記前枠、前記後枠の高さ寸法、及び前記連結ブラケットによって、前記パネルの曲面形状が規定される構成とし、
前記屋根は、前記前枠の一端と前記後枠の一端を結ぶ側枠と、前記前枠の他端と前記後枠の他端を結ぶ側枠を有し、
前記各側枠は、前記母屋に架設されるものであって、可撓性を有することで前記母屋の高さに沿って変形した状態で固定されるものとし、
前記各側枠に対し、前記パネルの側縁部が固定される構成とし、
前記各側枠は、下側部材と上側カバー部材とから構成され、前記下側部材と前記上側カバー部材の間に前記パネルが挟持され、
前記上側カバー部材における前記母屋の先端側の端部には、上下方向に板状の見付面構成部が形成され、
前記前枠及び前記後枠の高さ寸法は、前記母屋の高さ寸法よりも小さく構成されることで前記パネルの曲面形状がアール形状となる、
屋根の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物エクステリア製品であるカーポートやテラス屋根などの屋根の構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物エクステリア製品であるカーポートなどの屋根の構造において、ポリカーボネートパネルやアクリルパネルなどの可撓性のあるパネルを屋根葺き材として採用し、屋根表面になだらかなアール形状を持たせたアールタイプのものが知られており、この構成について開示する文献も存在する(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このアールタイプの曲面形状を有する屋根は、伸びやかな意匠(外観)を構成するデザイン性に優れたものとして知られている。そして、図7に示すごとく、従来のアールタイプの屋根90においては、柱91に固定される梁92をアール形状とすることで、屋根葺き材であるパネル93を梁92のアール形状に沿わせて固定することにより、パネル93についてもアール形状を形成させることとしている。この屋根90においては、前枠94、後枠96、及び、側枠97(手前側の側枠は省略している)により枠体を形成し、この枠体にてパネル93の周囲が固定されるようになっている。また、特許文献1においても、梁をアール形状とすることで、アールタイプの屋根(カーポート)を構成することとしている。
【特許文献1】特許第3113615号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7に示すように、従来では、梁92をアール形状とすることでアールタイプの屋根90が構成されるが、梁92をアール形状とするためには、梁92に曲げ加工を施す必要がある。即ち、例えば、梁92がアルミ押し出し成形材である場合には、直線状の梁材を成形した後に、曲げ加工を施す必要があるのである。
【0005】
しかし、この曲げ加工が存在することにより、次のような課題がある。
まず、曲げ加工による梁材の破断を防止するため、肉厚を余分に確保する必要があり、材料費が嵩んでしまうということがある(材料歩留まりの課題)。
また、工場での曲げ加工において、数メートルの長尺の梁材について設計どおりのアール形状を厳密に実現することは困難であり、製品の実寸法にバラツキが生じてしまうことになる(曲げ加工装置の精度の課題)。
また、曲げ加工装置を操作するオペレータの違いによっても製品の実寸法にバラツキが生じてしまうことも考えられる(加工スキルの課題)。
また、曲げ加工装置の導入や、メンテナンスなどのためにコストが生じてしまう(設備投資の必要性)。
【0006】
また、梁がアール形状であると、梁が直線状であるものと比較して幅方向に広い収容スペースを必要とするため、資材搬送時における積載効率が悪いという課題がある。
また、梁がアール形状であると、梁が直線状であるものと比較して形状が複雑となるため、施工現場での加工性が悪いという課題がある。
また、屋根のアール形状は、梁のアール形状によって規定されることになるため、メーカー側では、屋根のアール形状のバリエーション毎に曲げ加工をした梁をストックしておく必要がある。この場合、或るアール形状の屋根のための梁は、他のアール形状の屋根には使用できない、つまり、梁の汎用性が乏しいため、無駄な梁のストックを抱えてしまうことになる(在庫管理の観点からの課題)。
【0007】
また、道路斜陽などの関係から変形敷地にカーポートなどが設置される場合には、その敷地の形状に屋根の形状を対応させて施工する必要が生じ、現場においてパネルを切断するなどして屋根の形状を変形させる必要が生じることになる。しかし、梁や側枠がアール形状である場合には、この梁や側枠のアール形状によって屋根のアール形状が実現されるため、パネルを切断して敷地の形状に対応させようとした場合には、梁や側枠の曲率が変わってしまい、パネルの収まりが悪くなってしまう。つまり、梁や側枠がアール形状である場合には、変形敷地などの敷地の形状に合わせるための設計の自由度が低いものとなってしまう(変形敷地への対応の課題)。
【0008】
また、図7に示すように、従来では梁92のアール形状によってパネル93(屋根90)のアール形状を規定する構成となっているため、パネル93を下から支えて固定するための、前枠94、母屋95・95、後枠96においては、同一の高さ寸法Hを有する固定部を有する必要があった。このため、前枠94や後枠96においては、少なくとも高さ寸法Hを有する部位を形成する必要があり、その高さ寸法を削減することができないものであった。ここで、前枠94や後枠96の高さ寸法が大きい場合、屋根90の全体が太い枠材で囲まれるようになって、重苦しい印象を与える意匠を構成してしまうことになる。
【0009】
また、図7に示すごとく、パネル93の側辺部を押さえるための側枠97についても、パネル93(屋根90)のアール形状に対応させるために、工場においてアール加工を施す必要があった。
【0010】
そこで、本発明は、以上の課題に鑑み、曲げ加工をされた梁を用いずに、デザイン性に優れたアールタイプなどの曲面形状を自由に設定可能とする新規な屋根の構造について提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、請求項1に記載のごとく、 梁に固定される母屋にパネルが固定される構成とする屋根の構造であって、
前記梁が直線状に構成されるとともに、
前記パネルの前記母屋の各固定箇所における、前記パネルの梁からの高さが、前記母屋の高さ寸法によって規定され、
前記母屋の高さ寸法によって、前記パネルの曲面形状が規定される構成とし、
前記屋根は、前記梁の長手方向に離間して各取り付け位置において前記梁の上面の延長線上よりも上となる位置に配置される前枠及び後枠を有し、
前記前枠及び前記後枠に対し、前記パネルの前端部及び前記パネルの後端部が、それぞれ固定され、
前記パネルの前記前枠及び前記後枠の各固定箇所における、前記パネルの梁からの高さが、前記前枠及び前記後枠の高さ寸法によってそれぞれ規定され、
前記梁の後端部側には、前記後枠を載置するために下方に窪ませた部位を有する連結ブラケットが設けられ、
前記前枠、前記後枠の高さ寸法、及び前記連結ブラケットによって、前記パネルの曲面形状が規定される構成とし、
前記屋根は、前記前枠の一端と前記後枠の一端を結ぶ側枠と、前記前枠の他端と前記後枠の他端を結ぶ側枠を有し、
前記各側枠は、前記母屋に架設されるものであって、可撓性を有することで前記母屋の高さに沿って変形した状態で固定されるものとし、
前記各側枠に対し、前記パネルの側縁部が固定される構成とし、
前記各側枠は、下側部材と上側カバー部材とから構成され、前記下側部材と前記上側カバー部材の間に前記パネルが挟持され、
前記上側カバー部材における前記母屋の先端側の端部には、上下方向に板状の見付面構成部が形成され、
前記前枠及び前記後枠の高さ寸法は、前記母屋の高さ寸法よりも小さく構成されることで前記パネルの曲面形状がアール形状となる、
屋根の構造とする。

【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
即ち、請求項1に記載の発明においては、線状の梁を用いずに、アール形状の曲面形状を有する屋根を実現することができ、梁に曲げ加工を行う場合に生じる、材料歩留まりの課題、曲げ加工装置の精度の課題、加工スキルの課題、設備投資の課題、積載効率の課題、施工現場での加工性の課題、梁の汎用性の課題、といった様々な課題を解決することができる。また、前枠、後枠が薄く構成され、屋根が薄い枠にて縁取られるようになって、屋根全体として重苦しい印象を与えずに、スリムでシャープな印象を与える意匠を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、図面を用いて、発明の実施の形態を説明する。
なお、以下の図面を用いた説明においては、便宜上、紙面上側を上、紙面下側を下、紙面左側を左、紙面右側を右として説明することとする。また、図2における柱2の側を後側とし、この柱2と反対側となる梁4の先端側を前側とする。
【0020】
図1は、本発明の屋根の構造を、カーポート1に適用した実施形態である。
このカーポート1は、柱2・3を立ち上げ、この柱2・3の上部にてそれぞれ梁4・5の端部が固定されている。そして、この梁4・5の前側には、梁4・5と交差する方向に前枠6が架設され、この梁4・5の後側には、梁4・5と交差する方向に後枠7が架設される。また、この前枠6と後枠7の間において、梁4・5と交差する方向に母屋11・12・13が架設される。
【0021】
そして、図1に示すごとく、これら前枠6、後枠7、母屋11・12・13に対し、パネル9a・9b・・・が固定される。また、図において手前側に配置されるパネル9aの側縁部9m、及び、図において奥側に配置されるパネル9dの側縁部9nは、側枠14・15に固定される。また、各パネル9a・9b・・・の継目部は、アーチ部材8・8を介して母屋11・12・13に固定される。また、各9a・9b・・・は、例えば、ポリカーボネートなどの透光性、及び、可撓性を有する板材にて構成されるものであり、その可撓性によって、母屋11・12・13などの高さ位置に沿うように自由に撓むことができるようになっている。
【0022】
以上の構成により、図1に示すごとく、複数並設されるパネル9a・9b・・・にて屋根9が構成され、この屋根9の下に、自動車17を駐車するためのカーポート1が構成されるようになっている。また、この屋根9の上面は、図において手前側の側枠14から臨んだときに、前枠6と後枠7の間において、なだらかな円弧(上側に膨らむ円弧)を描くアール形状を有しており、アールタイプの屋根が構成されることとなっている。
【0023】
以下詳細について説明すると、図2に示すごとく、梁4は連結ブラケット16を介して柱2に連結固定され、いわゆる片持ちタイプのカーポート1が構成されることとしている。そして、梁4は、直線状の長尺部材に構成されるものであって、例えば、アルミ押し出し成形にて生産される場合においては、直線状に押し出された後に所定の長さ寸法に切断されたものであり、曲げ加工をしないで使用されるものである。
【0024】
また、図2及び図3に示すごとく、連結ブラケット16には、後枠7が固定されている。この後枠7は、梁4と交差する方向に長い長尺部材であって、この後枠7にパネル9bの後端部が固定されるようになっている。また、後枠7においては、連結ブラケット16に載置される下部板面7aの後端部において、後側壁部7dを立ち上げ、この後側壁部7dと下部板面7aとで略L字断面の溝部7eを形成し、この溝部7eによって雨樋が形成されるようになっている。また、この溝部7eの上方に開口される部位の前後幅Wが広く構成される(例えば、10cmなど、一般的な人の拳の幅よりも広く構成される)ことにより、溝部7e内の掃除などのメンテナンスを容易に行えるようになっている。
【0025】
また、図2及び図3に示すごとく、連結ブラケット16と反対側となる梁4の先端側には、前枠6が支持固定されている。この前枠6は、梁4と交差する方向に長い長尺部材であって、この前枠6にパネル9bの前端部が固定されるようになっている。
【0026】
また、図2及び図3に示すごとく、梁4の長手方向(前後方向)における前枠6と後枠7の間には、母屋11・12・13が間隔を開けて支持固定されている。この母屋11・12・13は、後枠7に近い母屋11の高さ寸法H1を小さくする一方、前枠6に近い母屋12・13の高さ寸法H2が大きく構成される。本実施形態では、母屋11の高さ寸法H1は、母屋12・13の高さ寸法H2の約2/3の大きさとなるように設定されている。また、各母屋11・12(母屋13も同様)は、連結具21・22を介して梁4に固定される。
【0027】
また、図2及び図3に示すごとく、前枠6、母屋11・12・13、後枠7と交差する方向であって、これら前枠6、母屋11・12・13、後枠7に架設されるように、長尺のアーチ部材8が設けられる。このアーチ部材8は、前枠6、母屋11・12・13、後枠7に対し、それぞれ固定される下側アーチ部材81と、この下側アーチ部材81の上方から下側アーチ部材81に固定され、下側アーチ部材81との間にパネル9bを挟持するためのアーチカバー部材82とから構成されている。
【0028】
また、アーチ部材8の取付構造について説明すると、図4に示すごとく、母屋12に設けた凹部12aに下側アーチ部材81が収容され、固着具83によって、下側アーチ部材81が母屋12に対して固定されるようになっている。また、下側アーチ部材81の幅方向両端部には、シール部材81a・81bが上方に向けて設けられており、このシール部材81a・81bにパネル9b・9cの端部が載置されるようになっている。
【0029】
また、図4に示すごとく、下側アーチ部材81の長手方向の複数箇所において、幅方向中央部には、筒状の固定部81cが形成されており、この固定部81cに上方からアーチカバー部材82の固着具84が固定されるようになっている。このアーチカバー部材82の幅方向両端部には、シール部材82a・82bが下方に向けて設けられており、固着具84によってアーチカバー部材82を下側アーチ部材81に固定すると、シール部材81a・81b・82a・82bによって、各パネル9b・9cが両側から挟まれる。このようにして、アーチ部材8(下側アーチ部材81、アーチカバー部材82)を介して、パネル9b・9cが母屋12に固定されるようになっている。なお、他の母屋についても同様に、アーチ部材8を介してパネル9b・9cが固定されるものとしている。
【0030】
また、図3に示すごとく、アーチ部材8を構成する下側アーチ部材81、アーチカバー部材82は、薄板状の部材に構成されて可撓性を有することとしており、アーチ部材8が、前枠6、母屋11・12、後枠7の高さに沿って自由に変形できるようになっている。そして、これにより、アーチ部材8にてパネル9b・9cが固定された際には、前枠6、母屋11・12、後枠7の高さに沿ってパネル9b・9cが変形され、屋根9について後述するアール形状が実現されるようになっている。なお、アーチ部材8は、アルミやステンレスなどの金属部材とするほか、樹脂にて構成されることとしてもよい。
【0031】
また、図3に示すごとく、母屋11・12への固定箇所におけるパネル9bの梁4(上面4a)からの高さは、それぞれ、高さ寸法H1・H2によって規定されるようになっている。
【0032】
また、図3に示すごとく、後枠7においては、連結ブラケット16に載置される下部板面7aから縦壁部7bを立ち上げ、この縦壁部7bから後方に向けて保持板片7cが形設される構成としている。そして、この保持板片7cに、下側アーチ部材81の後端部が載置固定され、この下側アーチ部材81に対し、パネル9bを介してアーチカバー部材82が固定される。これにより、パネル9bがアーチ部材8を介して後枠7に固定されるようになっている。
【0033】
また、図3に示すごとく、後枠7への固定箇所におけるパネル9bの連結ブラケット16(上面16a)からの高さは、保持板片7cの高さ寸法H3によって規定されるようになっている。この高さ寸法H3は、母屋11の高さ寸法H1よりも低く設定されている。なお、図2に示すごとく、連結ブラケット16の上面16aは、梁4の上面4aの略同一延長線上に配置されることになっている。
【0034】
また、図3に示すごとく、前枠6においては、梁4に載置される下部板面6aから縦壁部6bを立ち上げ、この縦壁部6bから前方に向けて保持板片6cが形設される構成としている。そして、この保持板片6cに、下側アーチ部材81の前端部が載置固定され、この下側アーチ部材81に対し、パネル9bを介してアーチカバー部材82が固定される。これにより、パネル9bがアーチ部材8を介して前枠6に固定されるようになっている。
【0035】
また、図3に示すごとく、前枠6への固定箇所におけるパネル9bの梁4(上面4a)からの高さは、保持板片6cの高さ寸法H4によって規定されるようになっている。この高さ寸法H4は、母屋11の高さ寸法H1よりも低く設定されている。
【0036】
そして、図2及び図3に示すごとく、以上の構成では、梁4が直線状に構成されるとともに、梁4の前後方向におけるパネル9bの前枠6、母屋11・12・13、及び、後枠7の各固定箇所における、パネル9bの梁4からの高さは、前記前枠6、母屋11・12・13、及び、後枠7の高さ寸法によってそれぞれ規定され、前枠6、母屋11・12・13、及び、後枠7の高さ寸法の設定により、パネル9bの曲面形状が規定されるようになっている。
【0037】
本実施例では、図2に示すごとく、一部の母屋12・13を他の母屋11、前枠6、及び、後枠7よりも高く構成することで、パネル9bの曲面形状が、なだらかな円弧(上側に膨らむ円弧)を描くアール形状となって、アールタイプの屋根9が構成されるようになっている。なお、パネル9bの曲面形状とは、パネル9bの上面の形状であって、パネル9bを母屋11・12・13と直交する平面で切断したときに現れる断面の輪郭線にて規定されるものである。
【0038】
また、図1に示すごとく、図において手前側に配置されるパネル9aの側縁部9m、及び、図において奥側に配置されるパネル9dの側縁部9nは、それぞれ側枠14・15に固定される。この側枠14・15は同一の構成とするものであって、図4に示す側枠14のように、下側部材41と上側カバー部材42とから構成される。また、母屋12の端部に設けた凹部12bに下側部材41が収容され、固着具43によって、下側部材41が母屋12に対して固定されるようになっている。また、下側部材41の内側端部(母屋12の側端12sと反対側の端部)には、シール部材41aが上方に向けて設けられており、このシール部材41aにパネル9aの側縁部9mが載置されるようになっている。
【0039】
また、図4に示すごとく、下側部材41の長手方向の複数箇所において、母屋12の側端12s側の端部には、筒状の固定部41cが形成されており、この固定部41cに上方から上側カバー部材42の固着具44が固定されるようになっている。この上側カバー部材42の内側端部(母屋12の側端12sと反対側の端部)には、シール部材42aが下方に向けて設けられており、これにより、固着具44によって上側カバー部材42を下側部材41に固定すると、シール部材41a・42aによって、パネル9aの側縁部9mが両側から挟まれる。このようにして、側枠14(下側部材41、上側カバー部材42)を介して、パネル9aが母屋12に固定されるようになっている。なお、側枠15(図1参照)においても同様の構成としている。また、図2に示す前枠6、後枠7、及び、他の母屋11・13に対しても同様の形態で、側枠14・15が固定されるものとする。
【0040】
また、図4に示すごとく、側枠14を構成する下側部材41、上側カバー部材42は、薄板状の部材で構成されて可撓性を有することとしており、側枠14が、前枠6、母屋11・12・13の高さに沿って自由に変形できるようになっている。そして、これにより、側枠14にてパネル9aが固定された際には、前枠6、母屋11・12・13の高さに沿ってパネル9aが変形され、屋根9について前述のアール形状が実現されるようになっている。また、側枠14は、アルミやステンレスなどの金属部材とするほか、樹脂にて構成されることとしてもよい。
【0041】
また、図4に示すごとく、上側カバー部材42における母屋12の先端側の端部には、上下方向に板状の見付面構成部42cが形成され、この見付面構成部42cによって、屋根9の外周の一部が形成されることとしているが、この見付面構成部42cの高さ寸法H5については、上側カバー部材42の可撓性を確保できる範囲に設計され、自由な変形ができることとする。なお、見付面構成部42cは、上側カバー部材42に設ける他、下側部材41から立ち上げるように設けることとしてもよい。
【0042】
以上のようにして、本実施形態による屋根の構造が実現される。
即ち、図2及び図3に示すごとく、梁4に固定される母屋11・12・13にパネル9bが固定される構成とする屋根9の構造であって、前記梁4が直線状に構成されるとともに、前記パネル9bの前記母屋11・12・13の各固定箇所における、前記パネル9bの梁4からの高さが、前記母屋11・12・13の高さ寸法H1・H2によって規定され、前記母屋11・12・13の高さ寸法H1・H2によって、前記パネル9bの曲面形状が規定される構成としている。
【0043】
これにより、線状の梁4を用いずに、アール形状の曲面形状を有する屋根9を実現することができ、梁4に曲げ加工を行う場合に生じる、材料歩留まりの課題、曲げ加工装置の精度の課題、加工スキルの課題、設備投資の課題、積載効率の課題、施工現場での加工性の課題、梁の汎用性の課題、といった様々な課題を解決することができる。
【0044】
また、図5に示すごとく、前後方向中央部を大きく上方に膨らませた形状の大アール形状の屋根9A、前後方向中央部にかけてなだらかに膨らませた形状のアール形状の屋根9B、前側を上方に膨らませた形状の前アール形状の屋根9C、後ろ側を上方に膨らませた形状の後アール形状の屋根9D、といった各種のバリエーションを、高さ寸法の異なる母屋31A・32A・・・を適宜配置することで構成することができる。もちろん、高さ寸法の一致する母屋31E・31Eを配置することによれば、フラットな屋根面を構成する屋根9Eも構成することができる。また、各種のバリエーションは、共通の梁4を用いて実現することができるため、梁4について汎用性をもたせることができる。
【0045】
また、変形敷地への対応の課題については、図6に示すごとく、梁4には曲げ加工がなされておらず、その上面4a(図2参照)が直線状に構成されるため、各変形敷地51・52・53の形状に合わせるようにパネル9aを切断し、それに伴って梁4・5を切断して梁4・5の長さを変更しても、梁4・5の曲率が変わらないため、パネル9aを収まりよく固定することが可能となる。これにより、施工現場において、適宜パネル9aや梁4・5などを切断することで、変形敷地51・52・53の形状に対応した屋根9F・9G・9Hを実現することができる。また、必要に応じて梁4・5を切断することになるが、この切断作業も梁4・5が直線状であるため、曲げ加工がなされたアール形状の梁のものと比較すると、長手方向の寸法調整を容易に行うことができ、優れた施工性が実現されることになる。また、屋根9Iのように、梁4・5を母屋12に対し直交ではなく、斜めに配置される構成とすることや、屋根9Jのように、柱2・3がパネル9b・9dに覆われない位置に配置される構成とすることや、屋根9Kのように、梁5が母屋12に対し斜めに配置されるとともに柱2がパネル9bに覆われない配置される構成についても、本発明によって対応が可能である。
【0046】
また、図1に示すごとく、側枠14・15についても曲げ加工がされておらず、その可撓性により、施工現場で母屋の高さに合わせて曲げて収めることが可能であり、側枠14・15の曲率が変わってもパネル9aを収まりよく固定することができる。よって、図6に示す各屋根9F・9G・9H・9I・9J・9Kへの対応については、側枠14・15の長ささえ確定すれば、現場で曲げて収めることが可能である。
【0047】
また、図2及び図3に示すごとく、前記屋根9は、前記梁4の長手方向に離間して配置される前枠6及び後枠7を有し、前記前枠6、及び/又は、前記後枠7に対し、前記パネル9bの前端部、及び/又は、前記パネル9bの後端部が、それぞれ固定され、前記パネル9bの前記前枠6、及び/又は、前記後枠7の各固定箇所における、前記パネル9bの梁4からの高さが、前記前枠6、及び/又は、前記後枠7の高さ寸法H3・H4によってそれぞれ規定され、前記前枠6、及び/又は、前記後枠7の高さ寸法H3・H4によって、前記パネル9bの曲面形状が規定される構成としている。
【0048】
これにより、前記前枠6、及び/又は、前記後枠7の高さ寸法H3・H4によっても、パネル9bの曲面形状を規定することができる。換言すれば、前記前枠6、及び/又は、前記後枠7の高さ寸法H3・H4を自由に設計することにより、パネル9bの曲面形状を規定することができる。そして、例えば、高さ寸法H3・H4を小さく構成することによれば、前枠6、後枠7が薄く構成され、屋根9が薄い枠にて縁取られるようになって、屋根9全体として重苦しい印象を与えずに、スリムでシャープな印象を与える意匠を実現することができる。
【0049】
また、図1及び図4に示すごとく、前記屋根9は、前記前枠6の一端と前記後枠7の一端を結ぶ側枠14と、前記前枠6の他端と前記後枠7の他端を結ぶ側枠15を有し、前記各側枠14・15は、前記母屋11・12・13に架設されるものであって、可撓性を有することで前記母屋11・12・13の高さに沿って変形した状態で固定されるものとし、前記各側枠14・15に対し、前記パネル9aの側縁部9mが固定される構成としている。
【0050】
これにより、図1に示すごとく、側枠14・15をパネル9b(屋根9)の曲面形状に沿わせて配置させることができ、パネル9b(屋根9)の曲面形状を保ったままに、屋根9を縁取ることができる。そして、例えば、前枠6、及び、後枠7と同様に、見付面構成部42c(図4参照)の高さ寸法H5を小さく構成して、側枠14を薄く構成することによれば、図1に示すごとく、屋根9の周囲が薄い枠にて縁取られるようになって、屋根9全体として重苦しい印象を与えずに、スリムでシャープな印象を与える意匠を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の屋根の構造は、建物エクステリア製品であるカーポート、テラス屋根などについて、幅広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の一実施形態に係る屋根の構造の全体的な構成を示した図。
図2】直線状の梁を有する屋根の構造について説明する図。
図3】前枠、母屋、後枠に対するパネルの固定構造などについて説明する図。
図4】母屋に対するアーチ部材、及び、側枠の固定構造などについて説明する図。
図5】屋根(パネル)の曲面形状のバリエーションについて説明する図。
図6】変形敷地に対応させた屋根のバリエーションについて説明する図。
図7】従来の曲げ加工がされた梁を備える屋根の構造について示す図。
【符号の説明】
【0053】
1 カーポート
2 柱
3 柱
4 梁
4a 上面
5 梁
6 前枠
7 後枠
8 アーチ部材
9 屋根
9a パネル
9b パネル
9c パネル
9d パネル
11 母屋
12 母屋
13 母屋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7