特許第5669355号(P5669355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669355
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】自動車用ウェザーストリップ
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/06 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
   B60R13/06
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2009-7321(P2009-7321)
(22)【出願日】2009年1月16日
(65)【公開番号】特開2010-163067(P2010-163067A)
(43)【公開日】2010年7月29日
【審査請求日】2011年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(72)【発明者】
【氏名】馬場 英一
(72)【発明者】
【氏名】来須 修司
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−132858(JP,A)
【文献】 米国特許第05866232(US,A)
【文献】 特開2008−279787(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0113482(US,A1)
【文献】 特開2006−298204(JP,A)
【文献】 特開2008−044572(JP,A)
【文献】 特開2010−126098(JP,A)
【文献】 特開2008−132864(JP,A)
【文献】 実開平06−069013(JP,U)
【文献】 発明協会公開技報公技番号2002−3049
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02−13/06
B60J 10/00−10/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディパネル(2)のドア開口縁に沿って形成されたフランジ部(3)に組付く断面略U字状で,微発泡ソリッド材(S)である取付基部(20)と,該取付基部に一体成形され,ドアに弾接する中空シール部(30)と,前記取付基部の底壁(21)から突設され,内装トリム(4)に当接する微発泡ソリッド材であるリップ部(10)を備え,前記取付基部の底壁と前記リップ部の外面(11)に,熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製であり,前記取付基部およびリップ部より比重の大きい被覆層(C)を前記取付基部(20)および前記リップ部(10)と共押出しして設けた自動車のウェザーストリップにおいて
前記取付基部(20)およびリップ部(10)の比重と前記被覆層(C)の比重の差が0.2以上あり、
記リップ部の内面(12)の基端部であり、取付基部(20)の室内側壁(22)に連続する湾曲面(13)を含む一部にも前記被覆層(C)を設け、該被覆層(C)を前記内面(12)の全体に設けることなく、加硫発泡によって、リップ部(10)とその外面(11)の被覆層(C)との比重差に起因して前記リップ部が変形するのを防止したことを特徴とする自動車用ウェザーストリップ。
【請求項2】
微発泡ソリッド材(S)である取付基部(20)およびリップ部(10)の比重が0.6〜1.1であり、熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製である被覆層(C)の比重が0.9〜1.3であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ウェザーストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のボディパネルに取付けられ、外面に被覆層(所望色の熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製のカラーソリッド材)Cを設けた湾曲状のリップ部を備えるオープニングシールなどのウェザーストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディパネル2のドア開口縁には、図1および図2に示すように、ドアパネルに弾接してシール性を確保するためにオープニングシール(ウェザーストリップ)40が取付けられている。このオープニングシール40は、取付フランジに組付く断面略U字状の取付基部20と、それに一体成形されドアに弾接する中空シール部30と、取付基部20から突設され、内装トリム4に当接するリップ部10を備える。
【0003】
また、こうした形態のオープニングシール40には、図2に示すように、取付基部20の底壁21とそれに連続するリップ部10の外面11に、意匠性などを目的としてカラーソリッド材よりなる被覆層C(所望色の熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製のソリッド材)を設けたものが多く使用されている。
【0004】
このカラーソリッド材よりなる被覆層Cは比重が0.9〜1.3である。また、取付基部20とリップ部10は微発泡ソリッド材で形成され、その比重は0.9〜1.1である。また、中空シール部30はスポンジ材Pで形成され、その比重は通常0.4〜0.6である。
【0005】
なお、リップ部10の外面11にソリッド材を設ける技術は、例えば、特許文献1および2に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、オープニングシールの軽量化を図るために、取付基部20及びリップ部10を微発泡ソリッド材S(比重0.9〜1.1)又はこれよりも軽い、軽量化微発泡ソリッド材S(比重0.6〜0.95)で形成することを目的に研究を重ねてきた。しかし、特に取付基部20及びリップ部10を軽量微発泡ソリッド材とし、外面(意匠面)に被膜層Cであるカラーソリッド材を共押出しして形成すると、加硫工程の熱によってリップ部10が、図2の想像線で示すように下方へ反り返ってしまうという問題が発生する。
【0007】
これは、取付基部20及びリップ部10の比重を0.9〜1.1の範囲(微発泡ソリッド材S),又は更に0.6〜0.95(軽量化微発泡ソリッド材S)まで小さくしたことにより、リップ部10の外面11に設けられた被膜層C(比重0.9〜1.3)との比重差が、より大きい場合(比重0.2以上)に起因するものである。
【0008】
すなわち、加硫工程において、微発泡ソリッド材であるリップ部10は発泡して膨張するが、その外面11の被覆層Cは発泡しない又は発泡しても微量であるために、それに隣接するリップ部10の微発泡ソリッド材の発泡を妨げてしまう。これにより、発泡した部分が膨らみ、被覆層Cの部分は膨らまない又は発泡しても微量であるので、リップ部10が図2の下方へ反り返るように変形する。前記した被覆層Cとリップ部10の比重差が大きくなったことによって、こうした傾向が顕著に現れる。
【0009】
本発明は、こうした問題に鑑み創案されたもので、リップ部の外面11に被覆層を設けたオープニングシールなどにおいて、そのリップ部と被覆層との比重差によって、リップ部が変形することのない自動車用のウェザーストリップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
図1および図3を参照して説明する。請求項1に記載の自動車用ウェザーストリップ1は、微発泡ソリッド材S特に軽量化微発泡ソリッド材Sであり、内装トリム4に当接するリップ部10の外面11に、例えば所望色の熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製ソリッド材であり、前記リップ部10より比重の大きい被覆層Cを設けたものにおいて、前記リップ部10の外面11とは逆側の面である内面12にも、前記被覆層Cを部分的に設け、加硫発泡によって前記リップ部10が変形するのを防止したことを特徴とするものである。
【0011】
詳述すると、請求項1に記載の自動車用ウェザーストリップ1は、ボディパネル2のドア開口縁に沿って形成されたフランジ部3に組付く断面略U字状で、微発泡ソリッド材S特に軽量化微発泡ソリッド材Sである取付基部20と、その取付基部20に一体成形され、ドアに弾接する中空シール部30と、前記取付基部20の底壁21から突設され、内装トリム4に当接する発泡状物材Sであるリップ部10を備え、前記取付基部20の底壁21と前記リップ部10の外面11に、例えば所望色の熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製ソリッド材であり、前記取付基部20およびリップ部10より比重の大きい被覆層Cを前記取付基部20および前記リップ部10と共押出しして設けたものにおいて、前記取付基部20およびリップ部10の比重と前記被覆層Cの比重の差が0.2以上あり、前記リップ部10の内面12の基端部であり、取付基部20の室内側壁22に連続する湾曲面13を含む一部にも前記被覆層Cを設け、該被覆層Cを前記内面12の全体に設けることなく、加硫発泡によって、リップ部10とその外面11の被覆層Cとの比重差に起因して前記リップ部10が変形するのを防止したことを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載の自動車用ウェザーストリップ1は、請求項1に記載の発明において、微発泡ソリッド材Sである取付基部20およびリップ部10の比重が0.6〜1.1であり、熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製ソリッド材である被覆層Cの比重が0.9〜1.3であることを特徴とするものである。
【0013】
上記請求項1および2に記載の自動車用ウェザーストリップ1は、前記したように、被覆層Cを、リップ部10の内面12の基端部であり、取付基部20の室内側壁22に連続する湾曲面13に設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の自動車用ウェザーストリップ1は、微発泡ソリッド材Sであるリップ部10の外面11に、所望色の熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製ソリッド材であり、前記リップ部10より比重が0.2以上大きい被覆層Cを共押出しで設けたものにおいて、リップ部10の外面11とは逆側の面である内面12にも、被覆層Cを部分的に設けたので、加硫発泡後においても、リップ部10は一方向に反り返ることが防止される。
【0015】
すなわち、被覆層Cをリップ部10の内面12の全体に設けるのではなく、リップ部10の内面12の基端部であり、取付基部20の室内側壁22に連続する湾曲面13を含む一部に被覆層Cを設けているので、リップ部10の内面12の基端部の湾曲面13の膨らみ(発泡)が抑制される。従って、リップ部10は、その内部発泡し軽量化が図れる一方で前記抑制によってリップ部10の変形が防止される。
【0016】
請求項2に記載の自動車用ウェザーストリップ1は、請求項1に記載の発明と同様の効果を発揮する。
【0017】
請求項1および2に記載の自動車用ウェザーストリップ1は、被覆層Cを、リップ部10の内面12の基端部であり、取付基部20の室内側壁22に連続する湾曲面13に設けたので、被覆層Cを内面12の全体に設けることなく、効果的にリップ部10の反り返りを防止することができる。
【0018】
すなわち、リップ部10の湾曲面13は、リップ部10が下方へ反り返る際に最も大きな応力を受けて変形する部分であり、よって、この湾曲面13の変形を抑制することによってリップ部10の全体の変形を効果的に防止することができる。これにより、被覆層,特に着色されたカラーソリッド材C(高価)の使用量を削減して、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ウェザーストリップを備えた自動車を示す側面図である。
図2】従来例に係るウェザーストリップを示すもので、図1のX−X線断面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係るウェザーストリップを示すもので、図1のX−X線断面図である。
図4】本発明の第二実施形態に係るウェザーストリップを示すもので、図1のX−X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る自動車用ウェザーストリップ1の実施形態を、図1および図3に示す。このウェザーストリップ1は、ボディパネル2のドア開口縁に沿って形成されたフランジ部3に組付く断面略U字状で、取付リップ23を有し、芯材24を埋設した取付基部20と、該取付基部20に一体成形され、ドアに弾接する中空シール部30と、前記取付基部20の底壁21から突設され、内装トリム4に当接するリップ部10を備えるオープニングシールである。
【0021】
このオープニングシール1の取付基部20の底壁21とリップ部10の外面11には、連続的に、所望色の熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製ソリッド材である被覆層Cを取付基部20およびリップ部10と共押出しして設けている。この取付基部20およびリップ部10は、比重0.6〜1.1の微発泡ソリッド材Sで形成している。また、被覆層Cの比重は前記微発泡ソリッド材Sよりも比重が0.2程度大きい1.1〜1.3である。なお、中空シール部30は、スポンジゴム(比重0.4〜0.8)で形成している。そして、被覆層Cを、リップ部10の内面12の基端部であり、取付基部20の室内側壁22に連続する湾曲面13にも設けている。
【0022】
このウェザーストリップ1は、リップ部10の内面12の湾曲面13にも被覆層Cを設けているので、リップ部10(微発泡ソリッド材S)の、外面11と内面12の被覆層Cに当接している部分は、その膨らみが同じように抑制される。従って、リップ部10の内部は発泡するものの、下方へ反り返るように変形するといった事態が防止される。
【0023】
また、被覆層Cを湾曲面13に設けているので、内面12の全体に設けることなく、効果的にリップ部10の反り返りを防止することができる。リップ部10の湾曲面13は、リップ部10が車外側へ反り返る際に最も大きな応力を受けて変形する部分であるが、この湾曲面13の変形を抑制することによってリップ部10の全体の変形を効果的に防止している。これにより、被覆層Cの使用量を減らして、生産性を高めることができる。
【0024】
参考形態を図4に示す。このウェザーストリップ1の特徴は、被覆層Cを、リップ部10の内面12の全体に設けたことである。すなわち、取付基部20の底壁21からリップ部10の湾曲面13に至る全域に連続的に被覆層Cを設けて、リップ部10の反り返りを防止している。
【符号の説明】
【0025】
1 ウェザーストリップ
2 ボディパネル
3 フランジ部
4 内装トリム
10 リップ部
11 外面
12 内面
13 湾曲面
20 取付基部
21 底壁
22 室内側壁
23 取付リップ
24 芯材
30 中空シール部
40 ウェザーストリップ
C 被覆層
S 微発泡ソリッド材
P スポンジ材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開2008−132858号公報
【特許文献2】特開2008−132859号公報
図1
図2
図3
図4