(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1]抗菌消臭剤
本発明に係る抗菌消臭剤は、抗菌消臭成分とシリカ系複合酸化物粒子とからなる抗菌消臭剤であって、抗菌消臭成分として銀イオンをAg
2Oとして0.1〜25重量%含み、シリカ系複合酸化物粒子がアルカリ金属イオンを含むことを特徴としている。
【0016】
本発明の抗菌消臭剤を構成するシリカ系複合酸化物粒子は、シリカとシリカ以外の酸化物としてAl
2O
3、B
2O
3、ZrO
2、TiO
2、MgO、CaO、CeO
2、SnO
2、Sb
2O
5、ZnO、Fe
2O
3、P
2O
5からから選ばれる1種または2種以上の酸化物を含んでいる。
なかでもAl
2O
3は、安定で均一な粒子径分布のコロイド粒子を得ることができ、また、抗菌消臭成分である銀イオンのイオン交換容量が高く、且つ安定な抗菌消臭剤を得ることができるので好ましい。
また、ZrO
2、TiO
2、ZnOが含まれているとこれらが紫外線を吸収するので銀成分の変色を防止する効果が得られる。
【0017】
シリカ系複合酸化物粒子のシリカ以外の酸化物(MOx)含有量は、SiO
2・MOx中に10〜50重量%、さらには20〜40重量%の範囲にあることが好ましい。
SiO
2・MOx中のMOxの含有量が10重量%未満の場合は、抗菌消臭成分である銀イオンの交換量が不充分となり、銀イオンの含有量が不充分となり、充分な抗菌消臭効果が得られない場合がある。
SiO
2・MOx中のMOxの含有量が50重量%を越えると、シリカ以外の酸化物の種類によっても異なるが、銀イオンの交換量が不充分となり充分な抗菌消臭効果が得られない場合があり、また、シリカ以外の酸化物の種類によっては、抗菌消臭成分である銀イオンが不安定となり、遊離したり変色等が生じる場合がある。
【0018】
上記シリカ系複合酸化物粒子は、さらにアルカリ金属イオンを含んでいる。
アルカリ金属イオンとしては、通常Naイオン、Kイオンであるが、使用する原料の点からNaイオンが多く用いられる。
【0019】
シリカ系複合酸化物粒子中のアルカリ金属イオンの含有量はM
2O(M:アルカリ金属を表す)として1〜20重量%、さらには2〜15重量%、特に5〜15重量%の範囲にあることが好ましい。
シリカ系複合酸化物粒子中のアルカリ金属イオンの含有量がM
2Oとして1重量%未満の場合は、抗菌消臭成分である銀イオンの交換量が不充分となり、銀イオンの含有量が不充分となり、充分な抗菌消臭効果が得られない場合がある。また、アルカリ金属イオンの含有量がM
2Oとして1重量%未満の場合に、後述するイオン交換法(本願方法)以外の方法で銀イオンを多く付着させても、銀イオンが不安定となり、遊離したり、変色等が生じやすく、特に水道水などの塩素含有水に接した場合に変色したり、性能が大きく低下する場合がある。
【0020】
シリカ系複合酸化物粒子中のアルカリ金属イオンの含有量がM
2Oとして20重量%を越えてもさらに銀イオンの交換量が増加することもなく、抗菌消臭効果が向上することもない。
また、銀イオンの交換量が少ない場合にはアルカリ金属イオンが多く残存することになり、用途、用法によっては、具体的には染料を含むことの多い繊維に使用すると退色したり、風合いが低下する場合があり、塗料に用いると得られる塗膜の強度が低下したり、剥離しやすいといったアルカリ金属イオンの悪影響が出ることがあるので好ましくない。
【0021】
このようなシリカ系複合酸化物粒子と抗菌消臭成分である銀イオンとからなる抗菌消臭剤中の銀イオンの含有量はAg
2Oとして0.1〜25重量%、さらには0.5〜10重量%、特に1〜8重量%の範囲にあることが好ましい。
抗菌消臭剤中の銀イオンの含有量がAg
2Oとして0.1重量%未満の場合は充分な抗菌消臭効果が得られない場合がある。
抗菌消臭剤中の銀イオンの含有量がAg
2Oとして25重量%を越えてもさらに抗菌消臭効果が向上することもなく、場合によっては銀イオンが不安定となり、遊離したり、変色等が生じやすくなる。
【0022】
本発明の抗菌消臭剤には、銀以外の抗菌消臭成分として銅、亜鉛、錫から選ばれる1種または2種以上の金属イオンを含んでいてもよい。
銀以外の抗菌消臭成分の含有量は、金属イオンの種類によっても異なるが、酸化物として0.1〜20重量%の範囲にあり、且つ、Ag
2Oとの合計が0.1〜25重量%の範囲にあることが好ましい。
銀以外の抗菌消臭成分を含有していると、銀のみを含有する場合に比して消臭性能が向上する傾向がある。
なお、前記銀、銅、亜鉛、錫は全てがイオンである必要はなく、金属あるいは酸化物、水酸化物等であってもよい。
【0023】
このような抗菌消臭剤は平均粒子径が2〜300nm、さらには5〜200nmの範囲にあることが好ましい。
抗菌消臭剤の平均粒子径が2nm未満のものは、シリカ系複合酸化物粒子自体の分散安定性が低く、凝集しやすいために分散安定性に優れた抗菌消臭剤を得ることが困難であり、得られたとしても、用途によって凝集するため用途に制限がある。
抗菌消臭剤の平均粒子径が300nmを越えると、透明性が低下し、抗菌消臭剤を用いる基材の意匠性を損なう場合がある。また、抗菌消臭効果が不充分となる場合がある。
本発明の抗菌消臭剤の平均粒子径は、レーザー散乱粒子径測定装置(NIKKISO社製)を使用して測定することができる。
【0024】
本発明の抗菌消臭剤中のアルカリ金属イオンの含有量(残存量)はM
2O(M:アルカリ金属を表す)として1〜15重量%、さらには1〜10重量%、特に2〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
抗菌消臭剤中のアルカリ金属イオンの含有量(残存量)がM
2O(M:アルカリ金属を表す)として1重量%未満の場合は、銀イオンの安定性が低下するためか、塩素を含む水道水等に接触した場合沈殿を生じ、変色するとともに、抗菌性能、消臭性能が低下し、長期にわたって抗菌消臭性能を維持できない場合がある。
【0025】
抗菌消臭剤中のアルカリ金属イオンの含有量が15重量%を越えると、本発明では、抗菌消臭剤中抗菌消臭性金属成分の含有量とアルカリ金属イオンの含有量は、シリカ系複合酸化物粒子中のアルカリ金属イオンと抗菌消臭性金属イオンとがイオン交換するため、逆相関の関係にあり、このことから抗菌消臭性金属成分の含有量が少ないことを意味し、抗菌消臭効果が高くないことに加え、用途、用法によっては、具体的には染料を含むことの多い繊維に使用すると退色したり、風合いが低下する場合があり、塗料に用いると得られる塗膜の強度が低下したり、剥離しやすいといったアルカリ金属イオンの悪影響がでることがあるので好ましくない。
【0026】
[2]抗菌消臭剤の製造方法
本発明に係る抗菌消臭剤の製造方法は、下記の工程(a)〜(c)からなることを特徴としている。
(a)珪酸アルカリ水溶液と珪素以外の元素の化合物水溶液とを、pHを9〜13に維持しながら、得られるシリカ系複合酸化物粒子中のシリカ以外の元素の酸化物(MOx)含有量が、SiO
2・MOx中に10〜50重量%の範囲となるように混合する工程
(b)工程(a)で得られたシリカ系複合酸化物粒子分散液を洗浄する工程
(c)前記シリカ系複合酸化物粒子分散液に銀化合物を添加して銀イオン交換する工程
【0027】
工程(a)
珪酸アルカリ水溶液と珪素以外の元素の化合物水溶液とを、pHを9〜13に維持しながら、得られるシリカ系複合酸化物粒子中のシリカ以外の元素の酸化物(MOx)含有量が、SiO
2・MOx中に10〜50重量%の範囲となるように混合する。
珪酸アルカリ水溶液としては、珪酸ナトリウム水溶液、珪酸カリウム水溶液等が用いられる。この時の珪酸アルカリ水溶液の濃度はSiO
2として0.1〜10重量%、さらには0.5〜5.0重量%の範囲にあることが好ましい。
【0028】
珪素以外の元素の化合物水溶液としては、Al、B、Zr、Ti、Mg、Ca、Ce、Sn、Sb、Zn、Fe、Pからから選ばれる1種または2種以上の元素の化合物の水溶液が用いられる。例えば、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム等のアルミニウム化合物水溶液、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、塩化ジルコニウム、硫酸チタニル、塩化錫、塩化アンチモン、塩化鉄等が挙げられる。
珪素以外の元素の化合物水溶液の濃度はMOxとして0.1〜5.0重量%、さらには0.2〜2.0重量%の範囲にあることが好ましい。
【0029】
珪酸アルカリ水溶液と珪素以外の元素の化合物水溶液とを、pHを9〜13に維持しながら混合するが、この時、必要に応じてpH調整剤として苛性ソーダ水溶液、苛性カリ水溶液、アンモニア水、テトラアンモニウムハイドロオキサイド等の有機塩基を用いることができる。
前記pHが9未満の場合は、得られるシリカ系複合酸化物粒子の抗菌性消臭成分である銀イオン交換容量が不充分となったり、分散安定性が不充分となる場合がある。
前記pHが13を越えてもさらに、イオン交換容量、分散安定性が向上することもなく、珪素以外の元素の化合物の種類によっては低下する場合がある。
【0030】
珪酸アルカリ水溶液と珪素以外の元素の化合物水溶液との混合比率は、得られるシリカ系複合酸化物粒子中のシリカ以外の元素の酸化物(MOx)含有量が、SiO
2・MOx中に10〜50重量%、さらには20〜40重量%の範囲となるように混合する。
SiO
2・MOx中のMOxの含有量が10重量%未満の場合は、抗菌消臭成分である銀イオンの交換容量が不充分となり、銀イオンの含有量が不充分となり、充分な抗菌消臭効果が得られない場合がある。
SiO
2・MOx中のMOxの含有量が50重量%を越えると、シリカ以外の酸化物の種類によっても異なるが、銀イオンの交換容量が不充分となり充分な抗菌消臭効果が得られない場合があり、また、シリカ以外の酸化物の種類によっては、抗菌消臭成分である銀イオンが不安定となり、遊離したり変色等が生じる場合がある。
【0031】
珪酸アルカリ水溶液と珪素以外の元素の化合物水溶液との混合濃度は、SiO
2・MOxとして0.2〜15重量%、さらには0.5〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
珪酸アルカリ水溶液と珪素以外の元素の化合物水溶液との混合濃度がSiO
2・MOxとして0.2重量%未満の場合は、収率、生産効率が低く、経済性が低下する。
珪酸アルカリ水溶液と珪素以外の元素の化合物水溶液との混合濃度がSiO
2・MOxとして15重量%を越えると、凝集したシリカ系複合酸化物粒子が生成する場合がある。
【0032】
前記工程(a)において、平均粒子径1〜50nmの金属酸化物粒子(シード)分散液に珪酸アルカリ水溶液と珪素以外の元素の化合物水溶液とを、pHを9〜13に維持しながら、添加することが好ましい。
前記金属酸化物粒子としては、SiO
2、Al
2O
3、ZrO
2、TiO
2等の金属酸化物粒子を用いることができる。
金属酸化物粒子の平均粒子径は、得ようとする抗菌消臭剤の粒子径によっても異なるが、1〜50nm、さらには2〜30nmの範囲にあることが好ましい。金属酸化物粒子の平均粒子径が前記範囲にあれば均一な平均粒子径を有し、単分散(非凝集)のシリカ系複合酸化物粒子が得られる。
【0033】
珪酸アルカリ水溶液と珪素以外の元素の化合物水溶液の添加、混合時間は、原料各水溶液の濃度、温度等によって異なるが、所望の平均粒子径が得られるまで添加する。
この時の温度は、概ね30〜95℃、好ましくは50〜90℃の範囲である。
添加時の温度が30℃未満では、粒子成長が遅く、生産性が低下する。添加時の温度が95℃を越えると、凝集したシリカ系複合酸化物粒子が得られる場合がある。
【0034】
なお、添加終了後は、必要に応じて熟成することができる。熟成温度は、添加時の温度より高くてもよく、低くてもよい。熟成することによってより均一な粒子径分布を有するシリカ系複合酸化物粒子が得られる。
【0035】
工程(b)
次いで、工程(a)で得られたシリカ系複合酸化物粒子分散液を洗浄する。
本発明に用いる洗浄する方法としては、限外濾過膜法が好ましい。洗浄することによって、原料に由来する陰イオン、あるいはシリカ系複合酸化物粒子にイオン的に結合してないアルカリ金属イオン(フリーのアルカリ金属イオン)を除去することができる。フリーのアルカリ金属イオンが多く残存すると前記銀イオンの利用効率が低下する他、所望量の銀イオン交換が困難になる場合がある。なお、工程(b)では、洗浄と同時に濃度調整をすることもできる。
【0036】
工程(c)
次いで、前記シリカ系複合酸化物粒子分散液に銀化合物を添加して銀イオン交換する。
銀化合物としては、硝酸銀が好適に用いられる。なお、銀化合物として、本願出願人の出願による特開平6−80527号公報等に開示した銀アミン錯体も使用することができるが、抗菌消臭成分の安定性の点から硝酸銀が好ましい。
銀化合物の添加量は、得られる抗菌消臭剤中の銀イオンの含有量がAg
2Oとして0.1〜25重量%となるように添加する。
【0037】
本発明では、銀化合物と同時に銅、亜鉛、錫から選ばれる1種または2種以上の金属の化合物を添加してイオン交換することもできる。
銅、亜鉛、錫の化合物としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩および銅、亜鉛、錫の錯イオン等があげられるが、抗菌消臭成分の安定性の点から塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩が好ましい。
これら銀化合物以外の化合物の添加量は、得られる抗菌消臭剤中の酸化物としての含有量がAg
2Oとの合計で0.1〜25重量%の範囲にあることが好ましい。
【0038】
シリカ系複合酸化物粒子分散液の濃度は銀イオン交換できれば特に制限はないが、通常固形分として0.1〜10重量%である。
銀イオン交換時の分散液のpHは6〜13、さらには8〜10の範囲にあることが好ましい。
分散液のpHが6未満の場合は、シリカ系複合酸化物粒子が不安定となり、凝集した抗菌消臭剤が得られる場合がある。
分散液のpHが13を越えると、シリカ系複合酸化物粒子のシリカ成分、シリカ以外の酸化物成分のいずれかの溶解が起こるとともに、銀イオン交換が不十分となる場合がある。
【0039】
銀イオン交換時の温度は特に制限はないが、通常30〜95℃の範囲であり、イオン交換時間は1時間以内で充分である。
銀イオン交換終了後、前記と同様に限外濾過膜法で洗浄することができる。さらに、必要に応じて、銀の含有量を高めるために、繰り返し銀イオン交換してもよい。また、銅、亜鉛、錫から選ばれる1種または2種以上の金属の化合物を添加してイオン交換することもできる。
【0040】
このようにして得られる抗菌消臭剤は、銀イオンの含有量が0.1〜25重量%の範囲にあり、前記銀以外の抗菌消臭成分の含有量は酸化物として0.1〜20重量%の範囲にあり、且つ、Ag
2Oとの合計が0.1〜25重量%の範囲にあることが好ましい。
また、アルカリ金属イオンの含有量(残存量)は、M
2O(M:アルカリ金属を表す)として1〜15重量%、さらには2〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
抗菌消臭剤中のアルカリ金属イオンの含有量が酸化物として1重量%未満の場合は、銀イオンの安定性が低下するためか、塩素を含む水道水等に接触した場合沈殿を生じ、変色するとともに、抗菌性能、消臭性能が低下し、長期にわたって抗菌消臭性能を維持できない場合がある。
【0041】
抗菌消臭剤中のアルカリ金属イオンの含有量が15重量%を越えると、本発明では、抗菌消臭剤中抗菌消臭性金属成分の含有量とアルカリ金属イオンの含有量は、シリカ系複合酸化物粒子中のアルカリ金属イオンと抗菌消臭性金属イオンとがイオン交換するため、逆相関の関係にあり、このことから抗菌消臭性金属成分の含有量が少ないことを意味し、抗菌消臭効果が高くないことに加え、用途、用法によっては、具体的には染料を含むことの多い繊維に使用すると退色したり、風合いが低下する場合があり、塗料に用いると得られる塗膜の強度が低下したり、剥離しやすいといったアルカリ金属イオンの悪影響がでることがあるので好ましくない。
【0042】
本発明では、抗菌消臭剤中のアルカリ金属イオンの含有量(残存量)を15重量%以下、好ましくは10重量%以下とするために、予めシリカ系複合酸化物粒子のアルカリ金属イオンの含有量を一部除去して使用することができる。
除去する方法としては、H型あるいはNH
4型イオン交換樹脂等を用いて一部をイオン交換除去する方法、限外濾過膜法にて、NH
4イオンを含む薬液を用いて一部をイオン交換除去する方法等が挙げられる。
得られた抗菌消臭剤は水分散液として用いてもよく、有機溶媒に置換して用いてもよく、さらに乾燥して粉体として用いてもよい。
【0043】
[3]抗菌消臭剤の使用方法
本発明の抗菌消臭剤の使用方法は、従来公知の抗菌剤、消臭剤、抗菌消臭剤等と同様に使用することができる。
例えば、抗菌消臭剤粉体を直接塗布する方法、抗菌消臭剤分散液を直接塗布する方法、抗菌消臭剤塗料を塗布して塗膜を形成する方法、抗菌消臭剤をマスターバッチ樹脂に含有させた樹脂基材として使用する方法、抗菌消臭剤分散液を繊維、不織布、フィルター等に付着あるいは担持して使用する方法等が挙げられるがこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0044】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】
[実施例1]
抗菌消臭剤(1)分散液の調製
SiO
2濃度20重量%のコロイド溶液(コロイド粒子平均粒子径:5nm)20gと純水380gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.7であり、同母液にSiO
2として濃度1.5重量%の珪酸ソーダ水溶液1500gとAl
2O
3として濃度0.5重量%のアルミン酸ソーダ水溶液1500gとを同時に添加し、添加終了後、90℃で1時間熟成した。この時の分散液のpHは12.3であった。
ついで、限外濾過膜で洗浄し、濃縮して固形分濃度22.2重量%、pH10.6のシリカ・アルミナ複合酸化物粒子(1)分散液を調製した。
シリカ・アルミナ複合酸化物粒子(1)の平均粒子径は15nm、組成はSiO
2:60.2重量%、Al
2O
3:25.5重量%、Na
2O:14.3重量%であった。
【0046】
室温にて、陽イオン交換樹脂(三菱化学社製ダイヤイオン、SK1BH)をpHが7.0になるまで添加
した後、陽イオン交換樹脂を分離した。その後、5%アンモニアにて、pH9.0まで添加、ついで、濃度1.0重量%の硝酸銀水溶液207.4gを添加し、90℃で1時間撹拌してイオン交換を行った。この時、pHは8.8であった。
ついで、限外濾過膜で洗浄し、濃縮して固形分濃度1.5重量%の抗菌消臭剤(1)分散液を調製した。
得られた抗菌消臭剤(1)の平均粒子径は15nm、組成はSiO
2:64.8重量%、Al
2O
3:22.5重量%、Na
2O:8.7重量%、Ag
2O:4.0重量%であった。
【0047】
安定性テスト (水道水添加:沈殿)
抗菌消臭剤(1)分散液を水道水(塩素濃度:2ppm)に加えて10分の1に稀釈し、目視にて変色状態、沈殿生成の有無を次の評価基準で観察した。
変色も沈殿も無し :◎
変色したが沈殿無し :○
変色は無いが沈殿あり:△
変色し、沈殿も生成 :×
【0048】
耐光性テスト
抗菌消臭剤(1)分散液に等量のメタノールを添加して、UVランプにて5時間照射し、目視にて変色の有無を次の評価基準で観察した。
変色有り :○
変色無し :×
【0049】
抗菌性能テスト
(1)大腸菌試験
100mlのリン酸緩衝液に大腸菌(Escherichia coli IFO 3972)を懸濁させ、安定性テストを実施した抗菌消臭剤(1)分散液0.1gを添加し、室温で1時間、330rpmで攪拌した後、生菌数(B)を測定した。
別途、上記において抗菌消臭剤(1)分散液を添加しない空試験として、大腸菌添加1時間後の生菌数(A)を測定したところ、A=3x10
6であった。抗菌性能を増減値差(LogA−LogB)として評価し、結果を表1に示した。
なお、前記リン酸緩衝液とは、リン酸2水素カリウム34gを1000mlの精製水に溶解し、水酸化ナトリウムでpHを7.2に調製した液を濃度0.85重量%の塩化ナトリウム水溶液で800倍に希釈した溶液である。
【0050】
(2)黄色ぶどう球菌試験
大腸菌に代えて黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureuse IFO 12732)を用いた以外は前記(1)大腸菌試験と同様にして評価し、結果を表1に示した。なお、空試験における黄色ぶどう球菌添加1時間後の生菌数(A)は、2x10
6であった。
【0051】
消臭性能テスト
臭気成分としてアセトアルデヒド、アンモニアおよび硫化水素を用いた。
(1)アセトアルデヒド
安定性テストを実施した抗菌消臭剤(1)分散液を105℃で2時間乾燥した後、20℃、相対湿度65%で24時間湿度調整した。ついで、湿度調整した抗菌消臭剤(1)分散液粉末1gを5Lのテトラバッグに入れ、濃度14ppmのアセトアルデヒド臭気ガス3Lを封入し、2時間後に検知管(ガステック社製:92L)にてアセトアルデヒド濃度を測定し、アセトアルデヒドの減少率を消臭率として表1に示した。
【0052】
(2)アンモニア
安定性テストを実施した抗菌消臭剤(1)分散液を105℃で2時間乾燥した後、20℃、相対湿度65%で24時間湿度調整した。ついで、湿度調整した抗菌消臭剤(1)分散液粉末1gを5Lのテトラバッグに入れ、濃度100ppmのアンモニア臭気ガス3Lを封入し、2時間後に検知管(ガステック社製:3LA)にてアンモニア濃度を測定し、アンモニアの減少率を消臭率として表1に示した。
【0053】
(3)硫化水素
安定性テストを実施した抗菌消臭剤(1)分散液を105℃で2時間乾燥した後、20℃、相対湿度65%で24時間湿度調整した。ついで、湿度調整した抗菌消臭剤(1)分散液粉末1gを5Lのテトラバッグに入れ、濃度4ppmの硫化水素臭気ガス3Lを封入し、2時間後に検知管(ガステック社製:4LT)にて硫化水素濃度を測定し、硫化水素の減少率を消臭率として表1に示した。
【0054】
[実施例2]
抗菌消臭剤(2)分散液の調製
実施例1と同様にしてシリカ・アルミナ複合酸化物粒子(1)分散液を調製した。
ついで、濃度1.0重量%の硝酸銀水溶液103.7gを添加し、90℃で1時間撹拌してイオン交換を行った。この時、pHは9.5であった。
ついで、限外濾過膜で洗浄し、濃縮して固形分濃度1.5重量%の抗菌消臭剤(2)分散液を調製した。
得られた抗菌消臭剤(2)の平均粒子径は15nm、組成はSiO
2:61.3重量%、Al
2O
3:22.7重量%、Na
2O:14.0重量%、Ag
2O:2.0重量%であった。
ついで、抗菌消臭剤(2)について、安定性、耐光性、抗菌性能および消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0055】
[実施例3]
抗菌消臭剤(3)分散液の調製
実施例1と同様にしてシリカ・アルミナ複合酸化物粒子(1)分散液を調製した。
ついで、室温にて、陽イオン交換樹脂(三菱化学社製ダイヤイオン、SK1BH)をpHが5.0になるまで添加
した後、陽イオン交換樹脂を分離した。その後、5%アンモニアにて、pH9.0まで添加、ついで、濃度1.0重量%の硝酸銀水溶液315gを添加し、90℃で1時間撹拌してイオン交換を行った。この時、pHは8.8であった。
ついで、限外濾過膜で洗浄し、濃縮して固形分濃度1.5重量%の抗菌消臭剤(3)分散液を調製した。
得られた抗菌消臭剤(3)の平均粒子径は15nm、組成はSiO
2:67.2重量%、Al
2O
3:21.6重量%、Na
2O:5.2重量%、Ag
2O:6.0重量%であった。
ついで、抗菌消臭剤(3)について、安定性、耐光性、抗菌性能および消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0056】
[実施例4]
抗菌消臭剤(4)分散液の調製
実施例1において、濃度1.0重量%の硝酸銀水溶液103.7gおよび濃度1.0重量%の硝酸亜鉛水溶液496gを添加した以外は同様にして、固形分濃度1.5重量%の抗菌消臭剤(4)分散液を調製した。
得られた抗菌消臭剤(4)の平均粒子径は15nm、組成はSiO
2:65.3重量%、Al
2O
3:21.2重量%、Na
2O:7.5重量%、Ag
2O:2.0重量%、ZnO:4.0重量%であった。
ついで、抗菌消臭剤(4)について、安定性、耐光性、抗菌性能および消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0057】
[実施例5]
抗菌消臭剤(5)分散液の調製
実施例1において、濃度1.0重量%の硝酸銀水溶液103.7gおよび濃度1.0重量%の硝酸銅水溶液414gを添加した以外は同様にして、固形分濃度1.5重量%の抗菌消臭剤(5)分散液を調製した。
得られた抗菌消臭剤(5)の平均粒子径は15nm、組成はSiO
2:64.6重量%、Al
2O
3:21.8重量%、Na
2O:7.6重量%、Ag
2O:2.0重量%、CuO:4.0重量%であった。
ついで、抗菌消臭剤(5)について、安定性、耐光性、抗菌性能および消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0058】
[実施例6]
抗菌消臭剤(6)分散液の調製
SiO
2濃度20重量%のコロイド溶液(コロイド粒子平均粒子径:5nm)20gと純水380gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.7であり、同母液にSiO
2として濃度1.3重量%の珪酸ソーダ水溶液1500gとAl
2O
3として濃度0.7重量%のアルミン酸ソーダ水溶液1500gとを同時に添加し、添加終了後、90℃で1時間熟成した。この時の分散液のpHは12.1であった。
ついで、限外濾過膜で洗浄し、濃縮して固形分濃度22.2重量%、pH10.5のシリカ・アルミナ複合酸化物粒子(2)分散液を調製した。
シリカ・アルミナ複合酸化物粒子(2)の平均粒子径は15nm、組成はSiO
2:52.3重量%、Al
2O
3:35.7重量%、Na
2O:12.0重量%であった。
【0059】
室温にて、陽イオン交換樹脂(三菱化学社製ダイヤイオン、SK1BH)をpHが7.0になるまで添加
した後、陽イオン交換樹脂を分離した。その後、5%アンモニアにて、pH9.0まで添加、ついで、濃度1.0重量%の硝酸銀水溶液207.4gを添加し、90℃で1時間撹拌してイオン交換を行った。この時、pHは8.7であった。
ついで、限外濾過膜で洗浄し、濃縮して固形分濃度1.5重量%の抗菌消臭剤(6)分散液を調製した。
得られた抗菌消臭剤(6)の平均粒子径は15nm、組成はSiO
2:52.0重量%、Al
2O
3:35.5重量%、Na
2O:8.5重量%、Ag
2O:4.0重量%であった。
ついで、抗菌消臭剤(6)について、安定性、耐光性、抗菌性能および消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0060】
[実施例7]
抗菌消臭剤(7)分散液の調製
SiO
2濃度20重量%のコロイド溶液(コロイド粒子平均粒子径:5nm)20gと純水380gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.7であり、同母液にSiO
2として濃度1.5重量%の珪酸ソーダ水溶液1500gとAl
2O
3として濃度0.25重量%のアルミン酸ソーダ水溶液1500gと、ZrO
2として濃度0.25重量%の炭酸ジルコニウム水溶液1500gとを同時に添加し、添加終了後、90℃で1時間熟成した。この時の分散液のpHは12.1であった。
ついで、限外濾過膜で洗浄し、濃縮して固形分濃度22.2重量%、pH10.5のシリカ・アルミナ・ジルコニア複合酸化物粒子(3)分散液を調製した。
シリカ・アルミナ・ジルコニア複合酸化物粒子(3)の平均粒子径は16nm、組成はSiO
2:60.5重量%、Al
2O
3:23.1重量%、ZrO
2:6.4重量%、Na
2O:10.0重量%であった。
【0061】
室温にて、陽イオン交換樹脂(三菱化学社製ダイヤイオン、SK1BH)をpHが7.0になるまで添加
した後、陽イオン交換樹脂を分離した。その後、5%アンモニアにて、pH9.0まで添加、ついで、濃度1.0重量%の硝酸銀水溶液207.4gを添加し、90℃で1時間撹拌してイオン交換を行った。この時、pHは8.8であった。
ついで、限外濾過膜で洗浄し、濃縮して固形分濃度1.5重量%の抗菌消臭剤(7)分散液を調製した。
得られた抗菌消臭剤(7)の平均粒子径は16nm、組成はSiO
2:60.0重量%、Al
2O
3:22.1重量%、ZrO
2:6.4重量%、Na
2O:7.5重量%、Ag
2O:4.0重量%であった。
【0062】
[比較例1]
抗菌消臭剤(R1)分散液の調製
実施例1と同様にして固形分濃度22.2重量%、pH10.6のシリカ・アルミナ複合酸化物粒子(1)分散液を調製した。
ついで、室温にて、陽イオン交換樹脂(三菱化学社製ダイヤイオン、SK1BH)をpHが4.5になるまで添加
した後、陽イオン交換樹脂を分離した。その後、5%アンモニアにて、pH9.0まで添加した。
別途、酸化銀(試薬特級)0.86gを約84.87gの水に懸濁し、次いで15重量%のアンモニア水を酸化銀が溶解するまで加えて、銀アンミン錯塩水溶液を調製した。
この銀アンミン錯塩水溶液をシリカ・アルミナ複合酸化物粒子(1)に添加して十分に撹拌した後、限外濾過膜で洗浄し、濃縮して、固形分濃度1.5重量%の抗菌消臭剤(R1)分散液を調製した。
得られた抗菌消臭剤(R1)の平均粒子径は15nm、組成はSiO
2:70.7重量%、Al
2O
3:24.7重量%、Na
2O:0.6重量%、Ag
2O:4.0重量%であった。
【0063】
[比較例2]
抗菌消臭剤(R2)分散液の調製
比較例1において、陽イオン交換樹脂(三菱化学社製ダイヤイオン、SK1BH)をpHが4.0になるまで添加
した後、陽イオン交換樹脂を分離した。次いで15%アンモニアでpHを9.0に調整後、濃度1.0重量%の硝酸銀水溶液207.4gを添加し、90℃で1時間撹拌してイオン交換を行った。この時、pHは8.5であった。次いで、このコロイド溶液を限外濾過膜で洗浄し、濃縮して、固形分濃度1.5重量%の抗菌消臭剤(R2)分散液を調製した。
得られた抗菌消臭剤(R2)の平均粒子径は15nm、組成はSiO
2:70.5重量%、Al
2O
3:25.3重量%、Na
2O:0.1重量%、Ag
2O:4.0重量%であった。
【0064】
[比較例3]
抗菌消臭剤(R3)分散液の調製
比較例1において、シリカ・アルミナ複合酸化物粒子(1)の陽イオン樹脂をpHが4.5になるまで添加
した後、陽イオン交換樹脂を分離した。次いで15%アンモニアでpHを9.0に調整後、濃度1.0重量%の硝酸銀水溶液103.7gを添加し、90℃で1時間撹拌してイオン交換を行った。この時、pHは8.7であった。次いで、このコロイド溶液を限外濾過膜で洗浄し、濃縮して、1.5重量%の抗菌消臭剤(R3)分散液を調製した。
得られた抗菌消臭剤(R3)の平均粒子径は15nm、組成はSiO
2:71.7重量%、Al
2O
3:25.6重量%、Na
2O:0.7重量%、Ag
2O:2.0重量%であった。
【0065】
【表1】