(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669400
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】蓄電池および手持ち式工具装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
B25F5/00 H
B25F5/00 A
B25F5/00 C
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-2031(P2010-2031)
(22)【出願日】2010年1月7日
(65)【公開番号】特開2010-158768(P2010-158768A)
(43)【公開日】2010年7月22日
【審査請求日】2012年12月21日
(31)【優先権主張番号】10 2009 000 102.6
(32)【優先日】2009年1月9日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ブランドナー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ローラント シュヴァープ
(72)【発明者】
【氏名】ベルント ツィーグラー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ハウザー
【審査官】
足立 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−203387(JP,A)
【文献】
特開2008−178278(JP,A)
【文献】
特表2007−536098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 1/00−5/02
B23B 45/00
B24B 23/00
B25D 1/00−17/32
B25B 21/00−21/02,23/00−23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ち式工具装置(1)と通信し、該手持ち式工具装置に給電するためのインターフェイス(12,13)を備える蓄電池(10)の制御方法において、
前記手持ち式工具装置の、前記蓄電池の臨界電圧および/または前記蓄電池の個別セルの臨界電圧を下回ってもよい最大許容継続時間に関する特徴情報を、前記インターフェイスを介して受信し、
前記蓄電池の深放電防止装置(15)が前記最大許容継続時間よりも長く前記臨界電圧を下回ったことを検出した場合、前記インターフェイス(13)を介して警報を発信し、かつ/または前記インターフェイス(12)を介する給電を中断する制御方法であって、
受信した前記最大許容継続時間としての継続時間が前記蓄電池の所定最大値を超過する場合に、前記継続時間を前記所定最大値に対応して制限し、
制限された継続時間よりも長く前記臨界電圧を下回った場合に、前記インターフェイスを介して警報を発信し、かつ/または前記インターフェイスを介する給電を中断する制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の制御方法において、
手持ち式工具装置のモータがスイッチオンされている時間であるアクティブ位相の間の消費電力、及び/又は前記アクティブ位相の間に生じるピーク負荷、に関する特性データを、更に受信する制御方法。
【請求項3】
蓄電池と通信し、前記蓄電池から給電するためのインターフェイスを備える手持ち式工具装置の制御方法において、
手持ち式工具装置の、前記蓄電池の臨界電圧および/または前記蓄電池の個別セルの臨界電圧を下回ってもよい最大許容継続時間に関する特徴情報を、前記インターフェイスを介して発信し、
前記最大許容継続時間よりも長く前記臨界電圧を下回ったという前記蓄電池の深放電防止装置の警報を前記インターフェイスを介して受信した場合、前記手持ち式工具装置のモータをスイッチオフする制御方法であって、
発信した前記最大許容継続時間としての継続時間が前記蓄電池の所定最大値を超過する場合、前記継続時間は、前記蓄電池によって、前記所定最大値に対応して制限され、
制限された継続時間よりも長く前記臨界電圧を下回ったという前記深放電防止装置(15)の警報(17)を、前記インターフェイスを介して受信した場合、前記手持ち式工具装置(1)の前記モータ(4)をスイッチオフする制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の制御方法において、
特徴情報を前記手持ち式工具装置(1)の永久メモリ(20)から読み出す制御方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の制御方法において、
前記手持ち式工具装置(1)のシステムスイッチ(2)が所定時間(T1)よりも長く操作されていない場合に特徴情報を発信する制御方法。
【請求項6】
請求項3から5までのいずれか一項に記載の制御方法において、
特徴情報の伝達時に前記手持ち式工具装置(1)の前記モータ(4)を作動停止する制御方法。
【請求項7】
請求項3から6までのいずれか一項に記載の制御方法において、
特徴情報が臨界電圧のための基準を含む制御方法。
【請求項8】
請求項3から7までのいずれか一項に記載の制御方法において、
前記手持ち式工具装置(1)の記録手段(21)が、手持ち式工具装置(1)の作動を記録し、記録されたデータを前記蓄電池(10)に記憶させるために該蓄電池(10)に伝達する制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の制御方法において、
システムスイッチ(2)が所定時間(T1)よりも長く操作されていない場合に、前記記録されたデータを伝達する制御方法。
【請求項10】
手持ち式工具装置と蓄電池とからなるシステムの制御方法において、
前記手持ち式工具装置を、電流インターフェイスを介して手持ち式工具装置に給電するための前記蓄電池に接続可能にし、前記蓄電池と通信するためのデータインターフェイスを前記手持ち式工具装置に設け、
前記手持ち式工具装置の、前記蓄電池の臨界電圧および/または前記蓄電池の個別セルの臨界電圧を下回ってもよい最大許容継続時間に関する特徴情報を、前記蓄電池に伝達し、
前記蓄電池が前記特徴情報を受信し、
伝達された前記最大許容継続時間よりも長く前記臨界電圧を下回ったことを検出した場合、前記蓄電池は、前記データインターフェイスを介して前記手持ち式工具装置に警報を発信し、かつ/または前記手持ち式工具装置への前記電流インターフェイスを介する給電を中断する制御方法であって、
前記蓄電池が受信した前記最大許容継続時間としての継続時間が前記蓄電池の所定最大値を超過する場合に、前記継続時間を前記所定最大値に対応して制限し、
制限された継続時間よりも長く前記臨界電圧を下回った場合に、前記蓄電池は、前記データインターフェイスを介して前記手持ち式工具装置に警報を発信し、かつ/または前記手持ち式工具装置への前記電流インターフェイスを介する給電を中断する制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の制御方法において、
請求項1又は2に記載の制御方法を前記蓄電池(10)により実施し、請求項3から9までのいずれか一項に記載の制御方法を前記手持ち式工具装置(1)により実施する制御方法。
【請求項12】
手持ち式工具装置(1)と通信し、該手持ち式工具装置に給電するためのインターフェイスを備える、手持ち式工具装置のための蓄電池において、
前記手持ち式工具装置(1)から伝達された、手持ち式工具装置(1)の、前記蓄電池の臨界電圧および/または前記蓄電池の個別セルの臨界電圧を下回ってもよい最大許容継続時間に関する特徴情報に応答して、深放電を監視するための深放電防止装置(15)を備え、
前記深放電防止装置が前記最大許容継続時間よりも長く前記臨界電圧を下回ったことを検出した場合、前記手持ち式工具装置に警報を発信し、かつ/または前記手持ち式工具装置への給電を中断する蓄電池であって、
前記手持ち式工具装置から受信した前記最大許容継続時間としての継続時間が蓄電池の所定最大値を超過する場合に、前記深放電防止装置は、前記継続時間を前記所定最大値に対応して制限し、
制限された継続時間よりも長く前記臨界電圧を下回った場合に、前記手持ち式工具装置に警報を発信し、かつ/または前記手持ち式工具装置への給電を中断する蓄電池。
【請求項13】
手持ち式工具装置と蓄電池とからなるシステムであって、該蓄電池が、手持ち式工具装置(1)と通信し、蓄電池(10)によって前記手持ち式工具装置に給電するためのインターフェイスを備えるシステムにおいて、
請求項10又は11に記載の制御方法を実施するために設定されていることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池および手持ち式工具装置の制御方法ならびに蓄電池と手持ち式工具装置とからなるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
手持ち式工具装置の給電は、蓄電池、例えばリチウムイオン蓄電池により行うことが多くなっている。例えば深放電による蓄電池の損傷を防止するために蓄電池からの消費出力を制御する必要がある。従来技術により公知の充電型の手持ち式工具装置は、本願出願人のウェブサイト:http://www.hilti.co.jp/において閲覧可能である。
【0003】
様々な手持ち式工具装置により蓄電池に課せられる要求および負荷特性は極めて大きく異なっている。さらに用途によっても要求は異なる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】http://www.hilti.co.jp/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、様々な手持ち式工具装置のために使用することのできる蓄電池の最適な稼働率を可能とする、手持ち式工具装置と蓄電池とからなるシステムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明による制御方法、および手持ち式工具装置と蓄電池とからなるシステムにより解決される。
【0007】
手持ち式工具装置と通信し、手持ち式工具装置に給電するためのインターフェイスを有する本発明による蓄電池の制御方法では、蓄電池は、手持ち式工具装置を特徴づける特徴情
報をインターフェイスを介して受信する。
【0008】
蓄電池と通信し、蓄電池から給電するためのインターフェイスを備える本発明による手持ち式工具装置の制御方法では、手持ち式工具装置の特徴情
報をインターフェイスを介して発信する。
【0009】
手持ち式工具装置と蓄電池とからなるシステムのための本発明による制御方法では、手持ち式工具装置は手持ち式工具装置に給電する蓄電池に電流インターフェイスを介して接続可能であり、手持ち式工具装置は蓄電池と通信するためのデータインターフェイスを備え、手持ち式工具装置の特徴情
報は蓄電池に伝達される。
【0010】
手持ち式工具装置は、典型的な使用特性を蓄電池に伝達する。これにより蓄電池はスイッチオフを最適化することができる。蓄電池の全ての可能な使用分野を網羅する厳しいスイッチオフ基準を無効にするか、または用途もしくは手持ち式工具装置に適合させることができる。
【0011】
特徴情報は、手持ち式工具装置の負荷特性、例えば蓄電池の臨界電圧および/または蓄電池の臨界電圧を超過してもよい最大許容継続時間を含む。特徴情報は、手持ち式工具装置の永久メモリから読み取ることができる。
【0012】
本発明による一構成では、臨界電圧および/または蓄電池の臨界電圧を超過してもよい最大許容継続時間に関する特徴情報は、インターフェイスを介して送受信される。蓄電池の深放電防止装置が、最大許容継続時間よりも長く臨界電圧を下回ったことを検出した場合、インターフェイスを介して手持ち式工具装置に警報が発信され、かつ/またはインターフェイスを介した給電は蓄電池側で中断される。深放電防止装置の警報が、最大許容継続時間よりも長く臨界電圧を下回ったことを手持ち式工具装置がインターフェイスを介して受信した場合、手持ち式工具装置はモータをスイッチオフする。
【0013】
手持ち式工具装置の記録手段は、手持ち式工具装置の作動を記録し、記録したデータを蓄電池に記憶するために蓄電池に伝達することができる。記録データは、例えばシステムスイッチが所定時間よりも長く操作されていない場合に伝達される。
【0014】
蓄電池、手持ち式工具装置、および蓄電池と手持ち式工具装置とからなるシステムは、本発明による方法を実施するために設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、様々な手持ち式工具装置のために使用することのできる蓄電池の最適な稼働率を可能とする手持ち式工具装置と蓄電池とからなるシステムが得られるという効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】蓄電池を備える手持ち式工具装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明を例示的な実施の形態および図面に基づき説明する。
【0018】
図1は、手持ち式工具装置のための実施例として、バッテリにより駆動される標準スクリュードライバ1を示している。使用者はシステムスイッチ2を操作することができ、これにより、システム制御部3が作動される。システム制御部3はモータ4をスイッチオンし、モータ4は、動力伝達系6、および、例えばナットまたはビットのための工具収容部7を回動させる。システム制御部3は、使用者がシステムスイッチ2を解除した場合にモータ4を停止する。以下ではモータ4がスイッチオンされている時間をスクリュードライバ1のアクティブ位相と呼ぶ。アクティブ位相は、標準スクリュードライバ1の使用分野に関係している。典型的な用途では、アクティブ位相は、例えば2〜6秒である。
【0019】
手持ち式工具装置1の給電は充電可能な蓄電池10により行う。手持ち式工具装置1および蓄電池10には、相互に対応した電流インターフェイス8,12が設けられている。蓄電池10は、例えば、多数のセル11を備えるリチウムイオン蓄電池であってよい。
【0020】
蓄電池10は、所定の電気容量および充電状態を有している。アクティブ位相では、手持ち式工具装置1は蓄電池10を放電する。蓄電池10は、最小限の充電状態を下回って放電してはならない。なぜなら、これにより蓄電池10を永久的に損傷してしまう場合があるからである。このような放電を深放電と呼ぶ。蓄電池10は、蓄電池10の深放電防止装置15が深放電を検出した場合に、データインターフェイス9,13を介して手持ち式工具装置1に警報17を発信する。手持ち式工具装置1は、警報17に応答してアクティブ位相を予定より早く終了させ、モータ4をスイッチオフする。
【0021】
警報17は、一義的に同定可能な信号として手持ち式工具装置1に伝達することができる。代替的には、蓄電池10のエラー報告または警報は、状態信号、場合によっては個別の情報ユニットとしてまとめることもできる。さらなる警報は、例えば蓄電池10の許容作動温度の超過に関連していていもよい。
【0022】
深放電の第1の兆候は、蓄電池10の臨界電圧を下回る蓄電池10の端子電圧の降下である。負荷下に、端子電圧は臨界電圧を下回って降下する場合がある。もちろん、蓄電池が負荷されない場合に端子電圧が再び上昇し、ひいては臨界電圧を超える値に到達する場合もある。それ故、深放電は端子電圧に基づき、負荷下にのみ、すなわち、アクティブ位相の間にのみ正確に検出することができる。
【0023】
しかしながら、深放電ではなく短時間のピーク負荷によっても臨界電圧を下回ることがある。負荷がピーク負荷から平均レベルに降下するや否や、端子電圧は平均的な負荷が継続されている場合であっても臨界電圧を超えて再び上昇する。したがって臨界電圧を短時間下回ることは有害な深放電の兆候ではなく、手持ち式工具装置1の高い機械的負荷の兆候でしかない。
【0024】
標準スクリュードライバでは、例えば固定されたねじの解除時にピーク負荷が生じる場合がある。ピーク負荷は、例えば1〜2秒間続く。このような負荷時には、蓄電池10の端子電圧は深放電ではなくても1〜2秒間、臨界電圧下を下回って降下する場合がある。この場合に標準スクリュードライバがスイッチオフされることをは不都合である。それ故、標準スクリュードライバに接続された蓄電池において1〜2秒間の典型的な継続時間、手持ち式工具装置1に深放電が警告されることなしに端子電圧が臨界電圧未満に降下してもよいようになっている。
【0025】
しかしながら、一般に1〜2秒間臨界電圧を下回ることは許容されない。これにについては乾式構造用スクリュードライバを例に挙げることができる。乾式構造用スクリュードライバは、特に乾式構造における要求に適合されたスクリュードライバであり、特にねじを供給するためのマガジンを備えていてもよい。乾式構造用スクリュードライバの消費出力および負荷特性は、標準スクリュードライバの消費出力および負荷特性とは異なっていてる場合もある。乾式構造におけるねじの取付所要時間、すなわち、アクティブ位相は、典型的には平均して0.2〜1秒、例えば0.5秒である。したがって、1〜2秒間臨界電圧を下回ることができるにはアクティブ位相が短すぎる。それ故、乾式構造用スクリュードライバでは、臨界電圧を下回ってもよい許容継続時間を、アクティブ位相よりも短い別の値、例えば典型的なアクティブ位相の80%〜90%に規定している。
【0026】
手持ち式工具装置1は、臨界電圧を下回ってもよい許容継続時間Tを記憶したメモリ20を備えている。許容継続時間Tは、手持ち式工具装置1の種類または使用分野に関連してあらかじめ規定しておいてもよい。メモリは永久メモリであってもよく、許容継続時間Tは手持ち式工具装置1の作製時に規定される。最大許容継続時間Tは、アクティブ位相の予想平均継続時間に関連して規定することができる。例えば最大許容継続時間Tは、アクティブ位相の50%〜90%であってよい。例えば手持ち式丸鋸の1〜2分など比較的長いアクティブ位相を有する手持ち式工具装置1の場合、代替的または付加的に、最大許容継続時間Tの上限を2〜5秒に規定することができる。
【0027】
深放電の監視は、蓄電池10の深放電防止装置15によって行うことができる。臨界電圧は、蓄電池10全体または蓄電池10の個々のセル11のために規定し、監視することができる。代替的または付加的に、深放電の監視は、システム制御部3の深放電防止装置によって行うこともできる。
【0028】
深放電防止装置15は、蓄電池10の端子電圧が臨界電圧未満に降下した場合にトリガされる。深放電防止装置15は第1の時間Tだけ待機している。第1の時間Tの間、端子電圧が臨界電圧未満に留まっていた場合、蓄電池10は手持ち式工具装置1から分離される。一実施形態では、深放電防止装置15は、データインターフェイスを介して手持ち式工具装置に警報を発信する。手持ち式工具装置の制御手段は、警報に応答して電流インターフェイスを作動停止し、かつ/またはモータ4をスイッチオフする。代替的または付加的に、蓄電池10は電流インターフェイス12を作動停止することもできる。
【0029】
第1の時間T内に端子電圧が臨界電圧を超過して再び上昇した場合、深放電防止装置15は作動停止される。第1の時間Tは、臨界電圧を下回ることが許容される、すなわち、蓄電池10またはモータ4のスイッチオフが行われない継続時間をあらかじめ規定する。
【0030】
第1の時間Tまたは最大許容継続時間は、それぞれの始動時に手持ち式工具装置1から蓄電池10に伝達される。最大許容継続時間Tは、手持ち式工具装置1のメモリ20に記憶させてもよい。最大許容継続時間Tを伝達するためには、手持ち式工具装置1にデータインターフェイス13、蓄電池10に対応したデータインターフェイス9が設けられている。
【0031】
手持ち式工具装置1は、典型的な負荷の特性データを蓄電池10に付加的に伝達することができる。これらの特性データは、例えば、アクティブ位相Tの間の消費出力またはアクティブ位相の間に生じるピーク負荷を含む。平均的な特性データを手持ち式工具装置1のメモリ20に記憶させてもよい。例えば、充電された蓄電池10の典型的な作動時に生じる電圧降下を記憶してもよい。深放電防止装置15は、電圧降下時に、この電圧降下が手持ち式工具装置1から伝達された電圧降下よりも大きいか否かをチェックすることができ、大きい場合には深放電の兆候であるといえる。この場合、モータ4はスイッチオフされ、かつ/または電流インターフェイス12が作動停止され、蓄電池10は手持ち式工具装置1から電気的に分離される。
【0032】
手持ち式工具装置1は記録手段21を備えていてもよい。記録手段21は、作動周期中のアクティブ位相の数を数える。作動周期は、使用者がシステムスイッチ2を解除した場合に終了してもよい。代替的に、作動周期は、使用者が所定時間内にシステムスイッチ2を再び操作した場合には継続することができる。
【0033】
記録手段21は、作動継続時間および/または蓄電池10による消費出力のためのデータを揮発性および/または不揮発性に記録することができる。さらに手持ち式工具装置1は、なぜアクティブ位相が終了されたのかを記録しておくことができる。特にエラー報告または警報によるスイッチオフの頻度に関するデータを記録することができる。エラー報告および警報は、例えば蓄電池10の側の警報17、手持ち式工具装置1の二次的深放電防止装置または過負荷防止装置の報告を含む。蓄電池10には、手持ち式工具装置1の側で収集されたデータを記憶することができる不揮発性のデータメモリ18を設けてもよい。作動周期および/またはアクティブ位相の後に、手持ち式工具装置1はデータインターフェイス9を介してデータを記憶させるために蓄電池10に伝達する。
【0034】
手持ち式工具装置1は、蓄電池10が電流インターフェイス12を介した電流供給を中断した場合にデータインターフェイス9の作動を補償する電気的な緩衝器を有している。代替的には、蓄電池10が第1の電流インターフェイスのスイッチオフ後に時間をずらしてスイッチオフする第2の電流インターフェイスを設けてもよい。第2の電流インターフェイスは比較的わずかな消費出力のみを許容し、手持ち式工具装置1の駆動装置を作動するためではなく、データインターフェイス9を作動するために設計されている。
【0035】
次いで手持ち式工具装置1と蓄電池10とからなるシステムの例示的な作動を説明する。使用者がシステムスイッチ2を操作した後、手持ち式工具装置1の最大許容継続時間T、および場合によっては別の特性データが手持ち式工具装置1から蓄電池10に伝達される。これらの特性データは、このためにメモリ20から読み出される。次いで、動力伝達系およびモータ4を作動させることができる。有利には、駆動部およびデータインターフェイス9の並行した作動は防止され、これにより妨害のないデータ伝達が保証される。
【0036】
蓄電池10は、伝達された最大許容継続時間Tおよび別の特性データをチェックすることができる。この継続時間および特性データが蓄電池10の所定最大値を超過した場合、値は対応して制限される。蓄電池10の深放電防止装置15は、伝達された値、および場合によっては制限された値に対応して調整される。手持ち式工具装置1への蓄電池10の出力中に、深放電防止装置15は上記のように端子電圧および/または個別セル電圧を監視する。許容継続時間Tよりも長く臨界電圧を下回った場合、蓄電池10は、警報17を発信し、かつ/または電流供給を遮断する。
【0037】
使用者がアクティブ位相の後にシステムスイッチ2をさらに押圧保持するか、または時間T1内、すなわち、作動周期中にシステムスイッチ2を新たに操作した場合、手持ち式工具装置1と蓄電池10との間のさらなる通信は行われない。時間T1を超過した場合、一構成では、手持ち式工具装置1は最大許容継続時間、および場合によっては別の特性データを新たに伝達することができる。
【0038】
作動周期中に記録手段21は、例えば消費出力、アクティブ位相の数および作動継続時間を検出する。作動周期が終了するとすぐに、すなわち、システムスイッチ2が時間T1の間操作されなかった場合にはすぐに、データは記憶のために蓄電池10に伝達される。
【0039】
アクティブ位相の間に警報17が生じた場合、モータ4はスイッチオフされる。記録手段21は、警報を計数器に記録する。計数器の状態は、作動周期の終了時または警報の発生直後に記憶のために蓄電池に伝達することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 手持ち式工具装置
2 システムスイッチ
4 モータ
10 蓄電池
12,13 インターフェイス
15 深放電防止装置
17 警報
18 データメモリ
20 メモリ
T1 時間