(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る医療用マニピュレータについて実施の形態を挙げ、添付の
図1〜
図35を参照しながら説明する。
【0038】
図1、
図2及び
図3に示すように、本実施の形態に係る医療用マニピュレータ10(以下、マニピュレータ10と呼ぶ。)は、先端動作部12に生体の一部又は湾曲針等を把持して所定の処置を行うためのものであり、通常、把持鉗子やニードルドライバ(持針器)等とも呼ばれる。医療用のマニピュレータシステムの一部であり、図示しないコントローラによって制御される。
【0039】
なお、
図1乃至
図3においては、説明のため内部の構造が理解できるよう、筐体(カバー)を省略して図示しているが、実際はモータ100、102等の駆動部は筐体(カバー)の内部に収納されることが好ましい。
【0040】
以下の説明では、
図1〜
図3における幅方向をX方向、高さ方向をY方向及び、連結シャフト18の延在方向をZ方向と規定する。また、先端側から見て右方をX1方向、左方をX2方向、上方向をY1方向、下方向をY2方向、前方をZ1方向、後方をZ2方向と規定する。さらに、特に断りのない限り、これらの方向の記載はマニピュレータ10が中立姿勢である場合を基準として表すものとする。これらの方向は説明の便宜上のものであり、マニピュレータ10は任意の向きで(例えば、上下を反転させて)使用可能であることはもちろんである。
【0041】
図1〜
図3に示すように、マニピュレータ10は、人手によって把持及び操作される操作部14と、該操作部14に固定された作業部16とを有する。作業部16は、作業を行う先端動作部12と、該先端動作部12と操作部14とを連接する長尺で中空の連結シャフト18とを有する。先端動作部12及び連結シャフト18は細径に構成されており、患者の腹部等に設けられた円筒形状のトラカール20から体腔22内に挿入可能であり、複合入力部24の操作により体腔22内において患部切除、把持、縫合及び結紮等の様々な手技を行うことができる。操作部14と作業部16とは一体構成であるが、条件に応じて分離可能な構成にしてもよい。
【0042】
操作部14は、人手によって把持されるグリップハンドル26と、該グリップハンドル26の上部から延在するブリッジ28と、該ブリッジ28の先端に接続されたアクチュエータブロック30とを有する。グリップハンドル26は、人手によって把持されるのに適した長さであり、上部の傾斜面26aに複合入力部24を有する。グリップハンドル26は、ブリッジ28の端部から略Y2方向に向かって延在しており、詳細には連結シャフト18の軸を基準として75°程度の角度に延在している。このような角度にすることにより、マニピュレータ10の全体を動かす際の操作性が高まるとともに、複合入力部24の操作性が高まることが確かめられている。
【0043】
グリップハンドル26のZ1方向端の穴の内部には段差係合部26b(
図1参照)が設けられている。グリップハンドル26の両側面には、ホールド性をよくするためのグリッププレート26gが設けられている。グリップハンドル26の上端部には、ブリッジ28に対する左右一対の接続片26dが設けられている。
【0044】
作業部16は、アクチュエータブロック30に接続されているプーリボックス32と、プーリボックス32からZ1方向に延在している連結シャフト18と、該連結シャフト18の先端に設けられた先端動作部12と、プーリボックス32からZ2方向に延在する筒部34と、該筒部34の基端側に軸支されたトリガレバー36とを有する。
【0045】
先端動作部12は、複合入力部24及びトリガレバー36の操作に基づいて3軸の動作が可能である。すなわち、基端側から順に、Y軸を基準に傾動するヨー軸動作、先端を指向する軸(中立姿勢時にはZ軸)を基準に回転するロール軸、及び開閉可能なグリッパ軸である。ヨー軸及びロール軸は、複合入力部24の操作に基づいて電気的に駆動され、グリッパ軸はトリガレバー36の操作に基づいて機械的に駆動される。ここで機械的とはワイヤ、チェーン、タイミングベルト、リンク、ロッド、ギア等を介して駆動する方式であり、主に、動力伝達方向に非弾性な固体の機械部品を介して駆動する方式である。ワイヤやチェーン等は、張力により不可避的な多少の伸びが発生する場合があるが、これらは非弾性な固体の機械部品とする。後述する荷重リミッタ212は、通常操作時にはほとんど弾性変形がなく、実質的に非弾性部品である。
【0046】
以下、マニピュレータ10の各部分について、複合入力部24、アクチュエータブロック30、プーリボックス32、筒部34とトリガレバー36、及び先端動作部12の順に説明する。
【0047】
先ず、複合入力部24について説明する。複合入力部24は、平面視でZ軸を中心としてX1方向及びX2方向に対象な構造である。
【0048】
図4に示すように、グリップハンドル26の上面は、前方に向けてY1方向に上がる傾斜面26aとなっており、複合入力部24はこの傾斜面26aに設けられている。傾斜面26aの傾斜角θ1は、グリップハンドル26を人手で把持したときに複合入力部24が親指又は人差し指で操作し易い角度であり、Z方向を基準として20°〜35°が好適である。
【0049】
以下、説明の便宜上、傾斜面26a(及び、軸70、軸74)の傾斜方向をJ方向、その前方側をJ1方向、基端側をJ2方向と呼ぶ。また、連結シャフト18の延在方向とグリップハンドル26の延在方向とを含む平面(ZY平面)内で、J方向に直交する方向をK方向、その外側に向かう方向をK1方向(入力部外方向)、その内側に向かう方向をK2方向と呼ぶ。
【0050】
傾斜面26aの中央部には平面視でZ方向に延在するスライド溝26fが設けられている。グリップハンドル26の上部における左右両側面には、K方向に延在し、スライド溝26fに連通する長孔26cが設けられている。
【0051】
図4、
図5に示すように、複合入力部24は、下方部50aがスライド溝26fに嵌り込んだ状態で傾斜面26a上をJ方向に摺動するベースブロック50と、ベースブロック50の上に設けられたハウジング(保持部)52と、回転操作部54と、傾動操作部56と、3つのスイッチ操作子(入力スイッチ)58a、58b及び58cとを有する。ハウジング52内にはスイッチ基板62と、シリコーン体66とを有する。
【0052】
スイッチ操作子58bは、回転操作部54及び傾動操作部56の有効及び無効の切換や、ピボット軸機構を所定の初期姿勢に戻す(一度押すと初期姿勢まで自動的に移動し、停止する。)、又は初期姿勢方向に移動させる(押しているときだけ初期姿勢方向に移動し、初期姿勢になったら自動的に停止する。)ためのスイッチとして用いることができる。
【0053】
同様にスイッチ操作子58a及び58cは、ロール回転機構を所定の初期姿勢に戻す、又は初期姿勢方向に移動させるためのスイッチとして用いることができる。スイッチ操作子58a及び58cは、全く同一の機能を有するスイッチとして左右に配置することで、操作者が操作部14を右手で把持した場合でも左手で把持した場合でも問題なく、同様の操作をすることができる。具体的には、右手操作の場合及び左手操作のいずれの場合にも、例えば親指による同様の操作が可能である。また、現在のロール回転機構の位置(正領域か負領域か)を意識せずにロール回転機構を所定の初期姿勢まで戻し、又は初期姿勢方向に移動させることができる。
【0054】
これらのスイッチの信号は、そのまま独立的にコントローラへ供給してもよいし、他の信号とまとめてシリアル信号化して供給してもよい。ハウジング52の側面88a、88b、88cには、少なくとも1つの入力スイッチが設けられているとよい。
【0055】
図9に示すように、スイッチ基板62は、ベースブロック50の上面に固定されており、7つのタクトスイッチ64a、64b、64c、64d、64e、64f及び64gを有する。タクトスイッチ64d及び64gはJ1方向の端部で左右対象位置に設けられている。タクトスイッチ64e及び64fは、タクトスイッチ64d及び64gよりもややJ2方向側で、左右対象位置に設けられている。タクトスイッチ64a及び64cは、タクトスイッチ64e及び64fよりもややJ2方向側で、左右対象位置に設けられている。タクトスイッチ64bは、最もJ2側で中央位置に設けられている。スイッチ基板62は、J2方向側がやや狭まった五角形であり、タクトスイッチ64a〜64cはその五角形に応じて相互に近接した位置に設けられている。
【0056】
シリコーン体66は弾性体であって、スイッチ基板62に対する防塵・防水機能と、回転操作部54及び傾動操作部56を中立位置に保持する機能とを有する。シリコーン体66は、スイッチ基板62の上面及び側面を覆うとともに、周辺部には上方に反り返ったフランジ66aを有する。さらに、シリコーン体66は、タクトスイッチ64d、64e、64f、64gの部分それぞれ対応した4つの個別膨出部66bと、タクトスイッチ64a〜64cをまとめて覆う膨出部66cとを有している。
【0057】
フランジ66aは、ハウジング52の下面周辺部に設けられた溝52cに嵌り込む。シリコーン体66は、フランジ66a及びその内側の部分がベースブロック50とハウジング52によって挟み込まれ、圧縮されて、防水・防塵作用を奏する。
【0058】
ベースブロック50の下方部50aは、長孔26cから挿入されるビス68によって固定されており、該ビス68を緩めることによって長孔26cに沿って移動し、位置調整が可能である。このように、回転操作部54と傾動操作部56を複合入力部としてユニット化しておき、グリップハンドル26に対して、軸70(又は軸74)の延在方向に沿って一体的に位置の調整を可能としておくことにより、指の長さなどの個人差に対応可能となる。
【0059】
ハウジング52は、J1方向側の薄い前方部52aと、基端側でスイッチ操作子58a、58b、58cが設けられた厚い後方部52bとを有する。後方部52bは、平面視でJ2方向に向かって狭まった台形である。
【0060】
回転操作部54は、前方部52aに設けられた軸70を中心として回動可能な構成である。軸70はX方向に関して複合入力部24の中心で、J方向を指向する軸である。回転操作部54は、X1方向及びX2方向に伸びるレバー72aと、レバー72aの下面に設けられた左右一対の押圧突起72b及び72cと、レバー72aの上側に設けられた略半円形で薄板状の操作子72dとを有する。
【0061】
図6に示すように、レバー72aの左右両端は、J方向に延在する表面に滑り止め用の多数の筋が設けられた半円形状である。操作子72dの外周面は軸70を略中心とし、レバー72aの端部までの長さを略半径とする円弧形状であり、上端及び左右端に指掛け用の浅い切欠72eが設けられている。操作子72dは、側面視でJ方向に直交する方向に突出している。
【0062】
回転操作部54は、操作子72dの切欠72eを指で周方向に向かう回動操作がなされ、ロール回動機構を動作させる機能を有する。このように外周面に指掛け部が設けられている回転操作部54によれば、軸70を中心とした回動操作がなされ、ロール回動機構についての直感的な操作性が得られる。また、指掛け部が傾動操作部56の端部よりも外径側に設けられていることにより、該傾動操作部56との使い分けが容易である。
【0063】
回転操作部54の指掛け部(又は指置き部)は、切欠形状に限らず、使用想定上、外周面で指が掛けられる場所に、指が掛けられるのに適した面積を有する部分が含まれていればよい。
【0064】
図6に示すように、押圧突起72b及び72cの各先端は、タクトスイッチ64d及び64gを覆う個別膨出部66bにそれぞれ軽く接しており、これにより回転操作部54が中立位置に保持される。指操作によって回転操作部54をいずれかの方向に回転させると、押圧突起72b又は72cは、個別膨出部66bを弾性変形させながら下降してタクトスイッチ64d又は64gをオン操作させることができる。回転操作部54は、前方部52aの上面又は側面に当接することで回転角度が制限させるため、タクトスイッチ64dやタクトスイッチ64gを過剰に押すことがない。指を離すと回転操作部54は個別膨出部66bの弾性作用によって中立位置に復帰し、タクトスイッチ64d及び64gはオフになる。
【0065】
図5及び
図7に示すように、傾動操作部56は、後方部52bに設けられた軸74を中心として傾動可能な構成である。軸74はX方向に関して複合入力部24の中心で、J方向を指向する軸である。グリップハンドル26の上面(傾斜面26a)を基準として、軸74は前記の軸70よりもやや離れた箇所に配置されている。
【0066】
傾動操作部56は、ハウジング52の後方部52bの上面を覆う傾動板76と、該傾動板76の下面に設けられた左右一対の押圧突起76b及び76cとを有する。傾動板76の下面と後方部52bの上面との隙間は小さい。傾動板76の上面には、滑り止め用の多数の筋が設けられており、平面視で後方部52bと同様の台形である。グリップハンドル26の上面(傾斜面26a)を基準として、傾動板76の上面はレバー72aよりもやや離れている。
【0067】
押圧突起76b及び76cの各先端は、タクトスイッチ64e及び64fを覆う個別膨出部66bにそれぞれ軽く接しており、これにより傾動操作部56が中立位置に保持される。指操作によって傾動操作部56をいずれかの方向に回転させると、押圧突起76b又は76cは、個別膨出部66bを弾性変形させながら下降してタクトスイッチ64e又は64fをオン操作させることができる。傾動操作部56は、後方部52bの上面に当接することで傾動角度が制限され、タクトスイッチ64e及び64fを過度に押圧することがない。指を離すと傾動操作部56は個別膨出部66bの弾性作用によって中立位置に復帰し、タクトスイッチ64e及び64fはオフになる。
【0068】
傾動操作部56は、傾動板76を指で押し込むことによる傾動操作がなされ、ピボット軸機構を動作させる機能を有する。
【0069】
前記の回転操作部54は周方向に向かう回動操作がなされ、傾動操作部56は押し込むことによる傾動操作がなされ、このような操作方法の違いにより、回動機構とピボット軸機構との対応付けが容易に理解される。
【0070】
側面視(
図1参照)で、回転操作部54及び傾動操作部56の軸70及び軸74は、先端(Z1側)に向かい上側を指向する向きであり、グリップハンドル26を握ったままの回転操作部54及び傾動操作部56の回動操作が容易である。また、軸70及び74は、J方向に平行で、Z方向を基準として20°〜35°の角度であって、特に親指による操作が容易である。
【0071】
さらに、軸70と軸74が平行であることから操作性が高い。さらにまた、軸70及び軸74とグリップハンドル26の延在方向とのなす角度θ2(
図1参照)は、40°〜60°であると、操作性がさらに向上する。ここでグリップハンドル26の延在方向とは、先端動作部を臨む側(Z1側)の稜線26e(曲線であればその平均線)の向きで定義することができる。
【0072】
軸70、軸74、及び傾動操作部56の指による操作面である傾動板76の順にK3方向に向かって配列されていることから、回転操作部54と傾動操作部56を構成し易くなり、しかも傾動操作部56の操作性がよい。また、相互の軸70及び軸74がずれていることにより、回転操作部54と傾動操作部56は操作感が異なって使い分けが容易となる。
【0073】
傾動操作部56は、回転操作部54の手元側に配置され、指掛け部としての切欠72eは、J方向からみて傾動操作部56より大径の円弧形状の操作子72dに設けられていることから、回転操作部54と傾動操作部56との使い分けが一層容易となる。円弧形状の操作子72dは、適度に大径になって操作が容易であり、しかも視覚的に回動機構の入力手段であることが直感的に理解される。また、回転操作部54の周方向操作を行い易い。
【0074】
回転操作部54及び傾動操作部56は、所定の基準位置から正逆方向に回転可能であり、非操作時には弾性体により基準位置に復帰することから、ロール回動機構及びピボット軸機構の正逆方向の操作を直感的に理解可能となる。
【0075】
図8及び
図9に示すように、後方部52bには、スイッチ操作子58a〜58cが収納されている。スイッチ操作子58a〜58cはそれぞれ同じ構成であって、弾性体の四角枠80と、該四角枠80の上部における一方に設けられた円柱体のプッシャ82と、他方に設けられたアーム84と、該アーム84の先端で下方に向けた突起86とを有する。
【0076】
四角枠80の下部は、膨出部66cとハウジング52の内壁に挟持されて(又は接着等により)固定されている。スイッチ操作子58a〜58cの各突起86は、タクトスイッチ64a、64b、64cの上方部に配置され、膨出部66cの上面に軽く接している。スイッチ操作子58a〜58cの各プッシャ82は、ハウジング52の後方部52bにおける三方(左右面及び後面)の側面88a、88b、88cの孔90a、90b、90cから、指で押し込み可能な程度に突出している。
【0077】
このように、ハウジング52の左右面及び後面に設けられたスイッチ操作子58a〜58cは操作性が高く、しかもそれぞれ異なる向きであることから誤操作が防止される。
【0078】
X1方向側の側面88a及びX2方向側の側面88cは、それぞれ、J2方向に向かって中心に寄るように適度に傾斜し、その間の側面88bはJ方向に対して垂直な面となっており、それぞれ、グリップハンドル26を人手で把持したときに、親指又は人差し指で操作し易い位置に設けられている。孔90a〜90cは、操作し易いように側面88a〜88cの略中央部に設けられている。
【0079】
孔90a〜90cから突出したプッシャ82を指で押すことにより、四角枠80は弾性変形し、アーム84が傾動し、その先端の突起86は膨出部66cを弾性変形しながら下降し、タクトスイッチ64a〜64cをオンすることができる。指を離すと膨出部66c及び四角枠80の弾性作用によってスイッチ操作子58a〜58cが原位置に復帰し、タクトスイッチ64a〜64cはオフになる。
【0080】
なお、
図9においては、理解し易いように、シリコーン体66及びハウジング52を省略してスイッチ操作子58a〜58cを空中に浮いた状態で併記している。
【0081】
このように構成される複合入力部24は、
図10に示すように、人手によりグリップハンドル26を把持した状態で、親指による操作が容易な位置及び向きにとなって、回転操作部54、傾動操作部56、スイッチ操作子58a、58b、58cの各操作を容易に行うことができる。また、この状態でトリガレバー36は人差し指による自然な押し引き操作が可能となる。
【0082】
図10から明らかなように、トリガレバー36は、傾動操作部56及び回転操作部54を備える複合入力部24に対して、グリップハンドル26を介して逆側に設けられている。これにより、グリップハンドル26を握ったままトリガレバー36と複合入力部24を異なる指で操作することが可能となる。
【0083】
また例えば、
図11に示すように、回転操作部54を人差し指の中程で操作し、傾動操作部56を親指で操作し、トリガレバー36を中指で操作することによって先端動作部12の3軸を同時に協調動作させることも可能である。
図10及び
図11は、左手による操作例を示しているが、右手操作も同様に可能である。
【0084】
回転操作部54にはいくつかの変形例が考えられる。
【0085】
例えば、
図12に示す第1変形例に係る複合入力部24aの回転操作部54aのように、傾動操作部56の下方において左右に延在するレバー形式としてもよい。この場合も、回転操作部54aは傾動操作部56の端部よりも外径側に指掛け部が設けられており、回転操作部54aと傾動操作部56との使い分けが容易となるとともに、回転操作部54aの周方向操作を行い易い。また、傾動操作部56は、回転操作部54aの一部の上部を覆うように設けられており、回転操作部54aと傾動操作部56がコンパクトにまとまり、操作も容易である。回転操作部54aの指掛け部及び傾動板76の表面には、J方向に延在する多数の細い溝が設けられており、滑り止め作用を奏する。
【0086】
図13に示す第2変形例に係る複合入力部24bの回転操作部54bのように、前記の切欠72eを省略した半円形状としてもよい。この場合も、回転操作部54bの外周面は、指が掛けられるのに適した面積を有し、しかもJ方向に延在する多数の細い溝が設けられており、指掛け部として機能する。
【0087】
図14に示す第3変形例に係る複合入力部24cに示すように、回転操作部54cをJ方向に適度に厚くするとともに、これに応じて切欠72eも指先を安定しておける程度に広く設定してもよい。モータ100、102を覆うカバー96が設けられている場合には、回転操作部54cは初期位置の状態でカバー96と連続的な面(平面又は曲面)を構成するとよい。これにより、無駄な突起や段差等がなく、外観上で好適であるとともに、操作もし易い。複合入力部24cにおいて、傾動操作部56aは、逆台形の形状に構成されている。
【0088】
グリップハンドル26の上部において、傾斜面26aをやや広い略半楕円形状にするとともに、その下部を滑らかな曲面に設定すると略U字形状の凹曲面部26hが形成され、親指と人差し指で掴み易く、グリップハンドル26が滑り落ちにくい。
【0089】
次に、アクチュエータブロック30について説明する。アクチュエータブロック30は、ブリッジ28の先端に接続されている。ブリッジ28は、左右一対の壁体28aで構成されており、グリップハンドル26の接続片26dに対して、ビス92で固定されている。壁体28aにはトリガレバー36の回転中心となるトリガ軸28bが設けられている。
【0090】
図1〜
図3に示すように、アクチュエータブロック30は、2つのモータ100及び102と、該モータ100及び102を支持するアクチュエータブラケット104と、モータ100及び102の回転方向を変換して作業部16に伝達するギア機構部106とを有する。
【0091】
モータ100及び102は、径:長さが1:4程度の円柱形状であり、Z1方向側に設けられた減速機100a、102aと、該減速機100a、102aによって減速された出力軸100b、102bと、Z2方向側に設けられた角度センサ100c、102cとを含んでいる。モータ100及び102は、例えばDCモータである。減速機100a及び102aは、例えば遊星歯車式であり、減速比は1:100〜1:300程度である。角度センサ100c、102cとしては、例えばロータリエンコーダが用いられ、検出した角度信号はコントローラに供給される。モータ100とモータ102は減速機100a及び102aの減速比の違い等により長さが若干異なる。
【0092】
アクチュエータブラケット104は、第1プレート108、第2プレート(モータ板)110、第3プレート(軸支部材)112及び第4プレート(補強板)114とを有しており、切削加工又は溶接加工等によって得られる。
【0093】
第1プレート108は、モータ100及び102の全長の1.3倍程度の長さでZ方向に延在しており、Z1方向端が作業部16のプーリボックス32に接続され、Z2方向端の近傍でブリッジ28に接続されている。第1プレート108の中央部には、軽量化のための孔108aが設けられている。平面視(
図3参照)で、第1プレート108のX方向幅は、第2プレート110よりもZ2側の部分がモータ100及び102の径の2倍よりもやや広く、Z1側のギア機構ベース板(軸支部材)108bはそれよりもさらに広くなっており、両端が一対のビス109により、ブラケット111を介してプーリボックス32に固定されている。
【0094】
第2プレート110は、モータ100及び102の径の1.5倍程度の高さであり、第1プレート108のZ1方向端からその全長の0.3倍程度の箇所からY1方向に向かって突出している。モータ100及び102は、それぞれZ2方向に延在する向きで第2プレート110に対して複数のビス115(
図15参照)で支持されており、その出力軸100b、102bが孔117(
図15参照)を通ってZ1方向側へ突出している。モータ100とモータ102はX方向に対称位置で且つほとんど隙間なく配置されている。モータ100及び102の径Rを基準とすると、側面視で連結シャフト18とモータ100及び102の中心軸間の距離は2R程度であり、モータ100及び102の下面と第1プレート108の上面との間には多少の隙間がある。Z方向に関して、モータ100及び102のZ2方向端部は、グリップハンドル26のZ1方向端部と略等しい位置である。モータ100及び102のケーブル100d、102d(角度センサ100c、102cの接続線を含む。)は、それぞれZ2方向端から延在し、グリップハンドル26に入っている。
【0095】
第3プレート112は、第2プレート110の端部からZ1方向に向かって突出している。第1プレート108と第3プレート112は平行であり、Z1方向端の位置が等しい。第4プレート114は、三方が第1プレート108、第2プレート110及び第3プレート112に接続され、X方向に関して中央部分でYZ平面を形成するように設けられている。第4プレート114は補強板として作用し、第1プレート108、第2プレート110及び第3プレート112が安定する。
【0096】
ギア機構部106は、第1プレート108、第2プレート110及び第3プレート112で囲まれた空間で、第4プレート114を基準にしてX方向に対称構成として設けられている。
【0097】
図2及び
図15に示すように、ギア機構部106は、2本の駆動シャフト(回転体)116a、116bと、2つの駆動傘歯車118a、118bと、2つの従動傘歯車120a、120bとを有する。
【0098】
ギア機構ベース板108b及び第2プレート110には、駆動シャフト116a、116bを支えるベアリング122、124が配置される軸孔126及び128が設けられている。ベアリング122及び124は、外輪の一部がギア機構ベース板108b及び第2プレート110の端面に当接することにより位置決めされている。第2プレート110の上面にはベアリング124の外輪を止める止板130が複数のビス132によって固定されている。止板130には、駆動シャフト116a、116bの端部を露呈させる2つの孔130aが設けられている。
【0099】
出力軸100bは、孔117を貫通して駆動シャフト116aの近傍までZ方向に延在しており、駆動傘歯車118aが押しねじ134によって固定されている。第4プレート114の左右両側面には、駆動傘歯車118aを避ける円弧凹部114aが設けられている。
【0100】
駆動シャフト116aは、上端がベアリング124に軸支され、下端は軸孔126のベアリング122を貫通して所定量突出して、Y方向に延在している。駆動シャフト116aの下端面には、t字形状の凸形状部138が設けられている。
【0101】
駆動シャフト116aは、従動傘歯車120aが押しねじ136によって固定されている。駆動傘歯車118aと従動傘歯車120aは互いに噛合し、出力軸100bの回転を90°変換して駆動シャフト116aに伝達している。
【0102】
駆動シャフト116aは、中太部140の上端がベアリング124の内輪に当接し、下端が従動傘歯車120aを介してベアリング122の内輪に当接することによって位置決めされている。
【0103】
駆動シャフト116a及び116bは、平面視(
図3参照)で、モータ100及び102の軸方向延長線上に配置されている。
【0104】
このような駆動傘歯車118a、118b、従動傘歯車120a、120b、駆動シャフト116a、116bを含むギア機構部106によれば、モータ100及び102が連結シャフト18と比較して大径であっても並列配置が可能になるとともに、モータ配置の自由度が高まる。
【0105】
モータ100とモータ102、及び駆動シャフト116aと駆動シャフト116bは、連結シャフト18を基準としてY方向に対称位置に設けられており、バランスがよい。
【0106】
ギア機構部106では、ギア機構ベース板108b及び第2プレート110が従動傘歯車120a、120bを挟んで駆動シャフト116a及び116bを軸支する軸支部材として作用し、第3プレート112がモータ100及び102を固定するモータ板として作用するとともにギア機構ベース板108bと第2プレート110とを接続しており、簡便でありながら高い剛性が得られ、モータ100、102及び駆動シャフト116a、116bを安定して保持できる。また、駆動シャフト116a及び116bの間に、ギア機構ベース板108b、第2プレート110及び第3プレートとをそれぞれ接続する第4プレート114が設けられていることから、一層高い剛性が得られる。
【0107】
次に、プーリボックス32について説明する。プーリボックス32は、第1の機能として、操作部14のギア機構部106に接続されて、駆動シャフト116a及び116bの回転を連結シャフト18に中継する機能を有し、第2の機能として、筒部34に接続されて、トリガレバー36の操作を連結シャフト18に中継する機能を有し、第3の機能として、連結シャフト18内の気密状態を維持する機能を有する。
【0108】
図16及び
図17に示すように、プーリボックス32は、ボックス本体150をベースに構成されており、該ボックス本体150に設けられた空洞部152、シャフト支持部154及びロッド孔156a、156bと、プーリ(回転体)158a及び158bと、ワイヤガイド部160a、160bと、X方向両面で空洞部152を覆う側板162a、162bとを有する。
【0109】
空洞部152は、X方向両面を連通する孔であって、側面視(
図16参照)で、中程からZ2方向寄りに設けられており、Z方向両端が半円形状となっている。プーリボックス32のX方向両面には空洞部152を囲うOリング164が設けられており、側板162a、162bを装着することによってOリング164が適度に圧縮される。
【0110】
シャフト支持部154は、空洞部152からZ1方向端面に連通する孔であり、連結シャフト18を支持している。連結シャフト18のZ2方向端には、筒状のカプラ165が設けられており、シャフト支持部154はカプラ165を介して連結シャフト18を支持している。カプラ165と連結シャフト18との間には2つのOリング166が設けられ、カプラ165とシャフト支持部154との間にはOリング168が設けられている。連結シャフト18は、X1側の面から固定片170(
図2参照)を2つのビス172でボックス本体150の先端部に締め付けることによって固定されている(
図2参照)。
【0111】
空洞部152には、Y方向に並んだ2対の同軸孔172a(Y1側)、172b(Y2側)にベアリング174a、174bが設けられており、該ベアリング174a、174bによってプーリ158a、158bが軸支されている。プーリ158a、158bは、前記の駆動シャフト116a、116bに対して同軸であり、Y1方向端面のt字形状の凹形状部176が前記の凸形状部138に係合している。凸形状部138と凹形状部176によれば、駆動シャフト116a、116bとプーリ158a、158bは、相互に対応する角度でのみ係合可能となっている。
【0112】
プーリ158aとプーリ158bとの隙間は、駆動シャフト116aと駆動シャフト116bとの隙間と等しく、連結シャフト18の径よりも大きい。
【0113】
プーリ158a及び158bは、同軸孔172aに対してOリング178aで回転可能に気密シールされ、同軸孔172bに対してOリング178bでシールされている。プーリ158a、158bは、Y2側端部においてEリング180によって抜け止めがなされている。プーリ158a、158bの中央部には、径調整部材182が介装されている。径調整部材182によって、後述するワイヤ1052、1054の巻き付け径を調整することができる(
図17参照)。
【0114】
ワイヤガイド部160aは圧入軸184と、該圧入軸184に隣接して軸支された2層の円筒アイドラ186及び188と、これらの円筒アイドラ186及び188の位置決めをする位置決め筒190a及び190bとを有する。圧入軸184は、Y方向に延在し、ボックス本体150に対してY1側の貫通孔194aを通り、Y2側の有底の穴194bに挿入され、それぞれ圧入されている。圧入軸184は、空洞部152において、Y1側からY2側に向かって順に位置決め筒190a、円筒アイドラ186、円筒アイドラ188及び位置決め筒190bが設けられている。円筒アイドラ186及び188は、独立に回転可能なプーリである。
【0115】
2つの円筒アイドラ186同士の隙間S1(円筒アイドラ188同士の隙間も同様)は、連結シャフト18の内径よりも狭く、該内径の1/2以下に設定されている。円筒アイドラ186、188は、回転自在であって、その周面にはワイヤ1054が配置される溝186a、188aが設けられている。円筒アイドラ186及び188は、適度な潤滑性が確保されていれば必ずしも回転可能な構成でなくてもよい。
【0116】
このようなワイヤガイド部160a、160bを用いることにより、連結シャフト18は、モータ100及び102の径やプーリ158aとプーリ158bとの軸間距離S2に依存することなく十分に細くでき、例えば、トラカール20に挿入するのに適した5mm〜10mm程度に設定することができる。また、ギア機構部106を介したモータ100及び102の配置の自由度が高まる。ワイヤ1054の往路線及び復路線は逆方向に動くが、2層の円筒アイドラ186及び188は、これに対応しており、各線が摩擦のない動作が可能である。
【0117】
空洞部152には、2本のロッド192a及び192bがY方向に並んで、Z方向に貫通している。ロッド192a及び192bは、十分に強く且つ細いステンレスパイプ又は中実ロッドであり、Z1方向には貫通し、Z2方向にはロッド孔156a、156bを貫通している。
【0118】
ロッド孔156a、156bにおいて、ロッド192a及び192bは、シール部材194、196を介して保持されている。シール部材194、196は、ロッド192a及び192bに対して隙間なく接触して空洞部152及び連結シャフト18をZ方向に進退自在に気密シールする。
【0119】
ロッド192a及び192bに対してはシール部材194及び196でシールされ、プーリ158a、158bに対してはOリング178a及び178bでシールされ、連結シャフト18に対してはOリング166及び168でシールされ、側板162a、162bに対してはOリング164によってシールされ、圧入軸184は貫通孔194aに圧入されていることから、結局、空洞部152は気密に維持されている。なお、圧入軸184の周囲にOリングを設けてシール性を高めてもよい。連結シャフト18の外周面はトラカール20(
図1参照)によって気密に支持されることから、体腔22に供給された気体が漏出することがない。
【0120】
図18に示すように、シャフト支持部154では、Y方向にロッド192a及び192bが並列し、ワイヤ1052及び1054の各往復線はY方向に近接して並び、ワイヤ1052とワイヤ1054はX方向に並列しており、バランスよく配列されている。
【0121】
次に、筒部34とトリガレバー36の構成について説明する。
【0122】
図1及び
図19に示すように、トリガレバー36は、ブリッジ28のトリガ軸28bに回動自在に軸支されており、該トリガ軸28bに軸支されるアーム部200と、該アーム部200のY2側に設けられた指輪部202と、さらにY2側に設けられた指掛け突起204と、Z2方向側に突出したラチェット爪206とを有する。指輪部202は、主に人差し指が挿入され、指掛け突起204は、主に中指及び薬指を掛けるのに適している。
【0123】
ラチェット爪206は、ラチェットリリース208と一体構成であり、図示しない弾性体によって、先端の爪206aを上方に向けて付勢している。トリガレバー36をZ2方向に大きく変位させると、ラチェット爪206の爪206aは、グリップハンドル26内の段差係合部26bに係合し、トリガレバー36の位置を保持し、エンドエフェクタ1300(
図1参照)を閉状態にロックさせることができる。段差係合部26bは、例えば2段設けられ、トリガレバー36のロック位置又は把持力を調整可能にするとよい。
【0124】
ラチェットリリース208は、一部が露呈される状態で指掛け突起204内に配置されており、露呈部を押圧することによって弾性力に抗して爪206aを下げて、トリガレバー36のロックを解除することができる。
【0125】
筒部34は、プーリボックス32とトリガレバー36との間に設けられた筒体210と、該筒体210内に設けられた荷重リミッタ212及びトリガワイヤ214とを有する。筒体210は、連結シャフト18と略同軸構成であり、筒部34のベース部材であるとともに荷重リミッタ212及びトリガワイヤ214を覆うカバーを兼ねている。筒体210は、内部を監視可能なように、例えばY2側面にスリットを設けてもよい。なお、筒体210の外径が円筒形状である必要はなく、トリガ軸28bとプーリ216を支持できる形状であればよい。
【0126】
荷重リミッタ212は円筒形状であって、外筒212aと、内ロッド212bと、コイルばね212cとを有し、Z1方向端の内ロッド212bがロッド192aの端部に軸支され、Z2方向端の外筒212aがアーム部200における軸200aに軸支されている。コイルばね212cは適度に硬く、外筒212aと内ロッド212bとの間に介在している。荷重リミッタ212は、通常は、実質的な剛体としてロッド192aとトリガレバー36とを接続しているが、過度に大きい荷重がかかったとき、すなわち、エンドエフェクタ1300が何かを挟持するなどしてプリロード以上の荷重がかかったときには、コイルばね212cがさらに圧縮されて内ロッド212bが延出する。これにより、トリガレバー36を過度に強く引いても、その力は荷重リミッタ212によって制限されることになり、エンドエフェクタ1300(
図1参照)及びその駆動機構を保護することができる。
【0127】
なお、荷重リミッタ212の最大荷重は、エンドエフェクタ1300が最大に開いたときにトリガレバー36を最も手前に引いた場合であっても、ワイヤなどの駆動機構が許容強度以下となるように設定されることが望ましい。
【0128】
トリガワイヤ214はZ1方向端がロッド192bの端部に接続(例えば、圧着)され、Z2方向端がピン214aを介してアーム部200における軸200bに軸支されている。トリガワイヤ214は、プーリ216に案内されており、該プーリ216よりもZ1方向側の部分は、ロッド192bと略同軸状となっている。
【0129】
軸200aはトリガ軸28bよりもY1側、軸200bはトリガ軸28bよりもY2側に配置されており、軸200a及び200bはトリガ軸28bから略等距離にある。従って、トリガレバー36を操作することにより、軸200aと軸200bは反対方向に略等距離変位し、これに伴って、ロッド192aとロッド192bが反対方向(Z1方向とZ2方向)に略等距離変位する。
【0130】
図20に示すように、アーム部200のY1側端部は、トリガ軸28bを略中心としてトリガワイヤ214を巻き取る円弧形状であってもよい。これにより、アーム部200の傾斜角度によらず一様な巻き取りが可能となる。
【0131】
このように構成されるマニピュレータ10では、
図10に示すように、アクチュエータブロック30の重心G1は、人手による把持中心O(便宜的にグリップハンドル26の中心部とする。)に対して、Z方向に比較的短い距離Lz1、Y方向に比較的短い距離Ly1となる。また、アクチュエータはモータ100及び102の2つだけであるから、人手にかかるモーメントM1(=G1×Lz1)は十分に小さく、操作者の手に対する負荷が小さい。
【0132】
これに対して、例えば、特許文献2記載のマニピュレータでは、アクチュエータブロック30aが
図10に示す仮想線のように、グリップハンドル26よりもかなりZ1方向に寄っており、Y2方向に突出し、しかもモータは3つある。その重心G2は、把持中心Oに対してZ方向に比較的長い距離Lz2、Y方向に比較的長い距離Ly2となる。したがって、人手にかかるモーメントM2(=G2×Lz2)は比較的大きい。
【0133】
また、実際の手技においては、先端動作部12の向きを変えるために、連結シャフト18を中心としてマニピュレータ10の全体を回転させることがある。例えば、X方向が鉛直方向となるように90°回転させた場合には、アクチュエータブロック30によるモーメントM1は、M1=G1×Ly1となり、かなり小さく、回転が容易である。一方、特許文献2記載のマニピュレータでは、モーメントM2は、M2=G2×Ly2となり、かなり大きい。
【0134】
当然、特許文献2記載のマニピュレータよりもマニピュレータ10の方が、連結シャフト18を中心とした慣性モーメントが小さく、動的操作性が高い。
【0135】
さらに、特許文献2記載のマニピュレータでは、アクチュエータブロック30aが、グリップハンドル26よりもかなりZ1方向寄りにあり、しかもモータが3つZ方向に並列していることから、その先端部もZ1方向に寄り、
図10で、マニピュレータ10における端部とは距離Dの差が生じる。したがって、その分だけマニピュレータ10では連結シャフト18を長くすることができ、体表面又はトラカール20との干渉がなく、操作性が向上する。
【0136】
あるいは、従来のラパロ鉗子と医療用マニピュレータ10を左右の手でそれぞれ把持して用いる場合に、左右の長さのバランスを合わせることができ、操作性が向上する。
【0137】
また、モータ100及び102が連結シャフト18から側方に突出していないことから、他のデバイスと干渉することがなく操作性が低下しない。
【0138】
このような特徴により、マニピュレータ10は、従来の軽い鉗子だけに慣れている操作者にとってもほとんど違和感なく使用が可能である。
【0139】
次に、先端動作部12の構成について説明する。
【0140】
図21に示すように、先端動作部12には、ロッド192a、受動ワイヤ1252a、アイドルプーリ1140a、ガイドプーリ1142a、受動プーリ1156aを含む第1エンドエフェクタ駆動機構1320aと、これに対応した第2エンドエフェクタ駆動機構1320bが設けられている。第1エンドエフェクタ駆動機構1320a及び第2エンドエフェクタ駆動機構1320bは、エンドエフェクタ1300を開閉させる基本的な構成である。
【0141】
第1エンドエフェクタ駆動機構1320aにおける構成要素には符号にaを付し、第2エンドエフェクタ駆動機構1320bにおける構成要素には符号にbを付して区別する。第1エンドエフェクタ駆動機構1320aにおける構成要素と第2エンドエフェクタ駆動機構1320bにおける構成要素で同じ機能のものについては、煩雑とならないよう、代表的に第1エンドエフェクタ駆動機構1320aについてのみ説明する場合がある。
【0142】
図21、
図22においては、理解が容易となるように、第1エンドエフェクタ駆動機構1320aと第2エンドエフェクタ駆動機構1320bを紙面上で並列して示すが、実際のマニピュレータ10に適用する場合には、
図23に示すように、各プーリの軸方向(つまりY方向)に並列させ、アイドルプーリ(円柱部材、伝達部材)1140a及び1140bと、ガイドプーリ(円柱部材、伝達部材)1142aと1142bの回転軸は、それぞれ同軸上に配置するとよい。つまり、アイドルプーリ1140a及び1140bは軸1110(
図23参照)に共通的に軸支することができ、ガイドプーリ1142aと1142bは軸1112に共通的に軸支することができる。ガイドプーリ1142aとガイドプーリ1142bを同軸構成とすることにより、ヨー軸動作機構が簡便になる。
【0143】
図24、
図25、
図26、
図27に示すように、先端動作部12は、ワイヤ受動部1100と、複合機構部1102と、エンドエフェクタ1300とを有し、Y方向の第1回転軸Oyを中心にして、それよりも先の部分がヨー方向に回動する第1自由度と、第2回転軸Orを中心にしてロール方向に回動する第2自由度と、第3回転軸Ogを中心として先端のエンドエフェクタ1300を開閉させる第3自由度とを有する合計3自由度の機構となっている。
【0144】
第1自由度の機構(ピボット回転機構)である第1回転軸Oyは、連結シャフト18の基端側から先端側に延在する軸線Cと非平行に回動可能に設定するとよい。第2自由度の機構(回動機構)である第2回転軸Orは先端動作部12における先端部(つまりエンドエフェクタ1300)の延在方向の軸線を中心として回動可能な機構とし、先端部をロール回転可能に設定するとよい。
【0145】
第1自由度の機構(つまりヨー方向)は、例えば±90°又はそれ以上の稼動範囲を有する傾動機構(又は屈曲機構)である。第2自由度の機構(つまりロール方向)は、例えば±180°又はそれ以上の稼動範囲を有する回動機構である。第3自由度の機構(つまりエンドエフェクタ1300)は、例えば40°又はそれ以上開くことのできる開閉機構である。
【0146】
エンドエフェクタ1300は、手術において実際の作業を行う部分であり、第1回転軸Oy及び第2回転軸Orは、作業を行い易いようにエンドエフェクタ1300の姿勢を変えるための姿勢変更機構を構成する姿勢軸である。一般に、エンドエフェクタ1300を開閉させる第3自由度に係る機構部はグリッパ(又はグリッパ軸)とも呼ばれ、ヨー方向に回動する第1自由度に係る機構部はヨー軸とも呼ばれ、ロール方向に回動する第2自由度に係る機構部はロール軸とも呼ばれる。
【0147】
ワイヤ受動部1100は、一対の舌片部1058の間に設けられており、ワイヤ1052、ワイヤ1054のそれぞれの往復動作を回転動作に変換して複合機構部1102に伝達する部分である。ワイヤ受動部1100は、軸孔1060a、1060aに挿入される軸1110と、軸孔1060b、1060bに挿入される軸1112とを有する。軸1110及び1112は、軸孔1060a、1060bに対して、例えば圧入若しくは溶接により固定される。軸1112は第1回転軸Oyの軸上に配置される。
【0148】
軸1112のY方向両端には、Y方向に対称形状の歯車体1126及び歯車体1130が設けられている。歯車体1126は、筒体1132と、該筒体1132の上部に同心状に設けられた歯車1134とを有する。歯車体1130は、歯車体1126と略同形状であって、該歯車体1126に対してY方向に配置されている。歯車体1130は、筒体1136と、該筒体1136の下部に同心状に設けられた歯車1138とを有する。歯車1134及び歯車1138は、後述するギア体1146のフェイスギア1165の上端部及び下端部に噛合する。
【0149】
筒体1136は筒体1132と略同径、同形状である。筒体1132及び筒体1136には、ワイヤ1052及び1054が所定の固定手段によって一部が固定されて巻き掛けられている。ワイヤ1052及び1054の巻き掛けられる角度は、例えば1.5回転(540°)である。
【0150】
ワイヤ1052及び1054(
図24参照)を回転動作させることにより、歯車体1126及び歯車体1130を軸1112に対して回転させることができる。歯車体1126と歯車体1130を同方向に同速度で回転させると、ギア体1146は軸1112を基準として揺動し、ヨー方向動作が行われる。歯車体1126と歯車体1130を逆方向に同速度で回転させると、ギア体1146は第2回転軸Orを基準として回転し、ロール回転動作が行われる。歯車体1126と歯車体1130を異なる速度で回転させると、ギア体1146は、ヨー方向動作とロール回転動作の複合動作が行われる。つまり、歯車体1126、歯車体1130及びギア体1146は差動機構(例えば、特許文献3における
図23に示される機構に相当する。)を構成している。
【0151】
先端動作部12の機構は差動機構に限らず、例えば、ワイヤ1052が歯車1134を介してフェイスギア1165を駆動するのに対してワイヤ1054は主軸部材1144を直接的に回転駆動する形式(例えば、特許文献3における
図7に示される機構に相当する。)としてもよい。
【0152】
軸1110の略中央部にはアイドルプーリ(円柱部材、伝達部材)1140aが回転自在に軸支されており、軸1112の略中央部にはガイドプーリ(円柱部材、伝達部材)1142aが回転自在に軸支されている。アイドルプーリ1140aは、ガイドプーリ1142aに巻きかける受動ワイヤ(可撓性部材、伝達部材)1252aの巻き掛け角度を常に一定(両側あわせて約180°)に保つためにある。アイドルプーリ1140aの代わりに、ガイドプーリ1142aに受動ワイヤ1252aを1巻き以上してもよい。アイドルプーリ1140a及びガイドプーリ1142aは、受動ワイヤ1252a(
図29参照)に対する滑り、及び摩擦による摩耗を低減するために、表面を滑らかにし、又は摩擦の少ない材質を用いるとよい。ガイドプーリ1142aは、姿勢変更機構におけるヨー軸Oyに設けられている。
【0153】
軸1112における、歯車体1126とガイドプーリ1142aとの間、及びガイドプーリ1142aと歯車体1130との間には主軸部材1144が回転自在に軸支されている。主軸部材1144は、複合機構部1102に向けて突出する筒部を有する。主軸部材1144の軸心部には方形の孔1144aが設けられている。主軸部材1144のZ2方向端部には、ガイドプーリ1142aのY方向両面を保持するとともに軸1112が挿通する孔を有する2枚の補助板1144bが設けられている。補助板1144bはZ1方向に向かって幅広となる山形であって、糸等の異物の侵入を防止する。
【0154】
複合機構部1102は、エンドエフェクタ1300の開閉動作機構と、該エンドエフェクタ1300の姿勢を変化させる姿勢変更機構とを含む複合的な機構部である。
【0155】
複合機構部1102は、主軸部材1144の筒部周面に対して回転自在に嵌挿されたギア体1146と主軸部材1144の先端に設けられたナット体1148と、Z2方向端部が孔1144aに挿入される断面四角の伝達部材1152と、該伝達部材1152のZ2方向端部に対してピン1154により回転自在に軸支される受動プーリ(円柱部材、伝達部材)1156aと、受動板(伝達部材)1158と、円筒状のカバー1160とを有する。
【0156】
主軸部材1144におけるギア体1146と当接する部分には、樹脂製のスラスト軸受部材1144cが設けられている。ナット体1148におけるギア体1146と当接する部分には、樹脂製のスラスト軸受部材1148aが設けられている。スラスト軸受部材1144c及び1148aは低摩擦材であって、当接部分の摩擦及びトルクを低減するとともに、フェイスギア1165に負荷が直接的にかかることを防止する。スラスト軸受部材1144c及び1148aは、いわゆる滑り軸受であるが、転がり軸受を設けてもよい。これにより、エンドエフェクタ1300を強く閉じた場合や開いた場合、すなわちギア体1146が主軸部材1144に強く当接する場合でも、ロール軸動作をスムーズに行うことができる。
【0157】
ギア体1146は、段付き筒形状であって、Z2方向の大径部1162と、Z1方向の小径部1164と、大径部1162のZ2方向端面に設けられたフェイスギア1165とを有する。フェイスギア1165は、歯車1134及び歯車1138に噛合する。ギア体1146は、ナット体1148が主軸部材1144に対して抜けることを防止する。大径部1162の外周には、ねじが設けてある。
【0158】
受動板1158は、Z2方向の凹部1166と、該凹部1166の底面に設けられた係合部1168と、Y方向両面にそれぞれ設けられた軸方向のリブ1170と、リンク孔1172とを有する。係合部1168は、伝達部材1152の先端に設けられたきのこ状の突起1174に係合する形状である。この係合により、受動板1158と伝達部材1152は、相対的なロール軸の回転が可能になる。受動板1158の幅はカバー1160の内径に略等しい。
【0159】
カバー1160は、複合機構部1102の略全体を覆う大きさであり、複合機構部1102及びエンドエフェクタ1300に異物(生体組織、薬剤、糸等)が入り込むことが防止される。カバー1160の内面には、受動板1158の2つのリブ1170が嵌る軸方向の2本の溝1175が対向する向きに設けられている。溝1175にリブ1170が嵌ることにより受動板1158が軸方向にガイドされる。受動板1158の係合部1168には突起1174が係合することから、受動プーリ1156aは孔1144a内において、受動板1158及び伝達部材1152とともに軸方向に進退可能であるとともに、伝達部材1152を基準としてロール回転が可能である。カバー1160は、ギア体1146の大径部1162に対して螺入、圧入等の手段により固定されている。
【0160】
カバー1160は、ギア体1146と基部側で結合(螺合、圧入、溶接等)されており、ギア体1146の回転とともにカバー1160及びエンドエフェクタ1300はロール軸動作を行う。
【0161】
レバー部1310と受動板1158は、グリッパリンク1220により連接されている。つまり、各グリッパリンク1220の一端の孔1220aは、孔1218とともにピン1222が挿入され、他端の孔1220bは、受動板1158のリンク孔1172とともにピン1224が挿入されて連接されている。
【0162】
図28に示すように、アイドルプーリ1140aは、同軸上の第1層アイドルプーリ(第1層アイドル円柱体)1232と第2層アイドルプーリ(第2層アイドル円柱体)1234の2枚が並列して構成されており、ガイドプーリ1142aは、同軸上の第1層ガイドプーリ(第1層ガイド円柱体)1236と第2層ガイドプーリ(第2層ガイド円柱体)1238の2枚が並列して構成されている。
【0163】
図29に示すように、ロッド192aのZ1方向端部は、ワイヤ係合部1250aによって受動ワイヤ(可撓性部材)1252aの両端部に接続されている。
【0164】
図30及び
図31に示すように、ワイヤ係合部1250aは、ロッド192aの先端部1414にローラ1416が設けられ、該ローラ1416に受動ワイヤ1252aが巻き掛けられている。ローラ1416はピン1418に軸支されており回転自在である。これにより、受動ワイヤ1252aはローラ1416に巻きかけられながら適度に進退し、ロッド192aをZ2方向に引くときに、特にヨー軸が屈曲しないような状態でも、受動ワイヤ1252aをX方向のバランスよく引くことができる。先端部1414は、ロッド192aに螺設されている。この第4変形例では、受動ワイヤ1252aのY方向一対の張力が均一となり、長寿命化を図ることができるとともに、上下両方のY方向一対の平行化を図ることができる。
【0165】
図28及び
図29に戻り、受動ワイヤ1252aは、一部がワイヤ係合部1250aに接続された環状の可撓性部材であり、ワイヤ以外にもロープ、樹脂線、ピアノ線及びチェーン等を用いることができる。ここで、環状とは広義であり、必ずしも全長にわたって可撓性部材が適用されている必要はなく、少なくとも各プーリに巻き掛けられる箇所が可撓性部材であればよく、直線部は剛体で接続されていてもよいことはもちろんである。
【0166】
受動ワイヤ1252aは、駆動部材のロッド192aから、アイドルプーリ1140aのX1方向(第1の側方)を通り、X2方向(第2の側方)に向かい、ガイドプーリ1142aのX2方向の面を通り受動プーリ1156aのX2方向面に至る。受動ワイヤ1252aは、さらに、受動プーリ1156aのZ1方向面に半周巻き掛けられてX1方向面に至り、ガイドプーリ1142aのX1方向の面を通り、X2方向に向かいアイドルプーリ1140aのX2方向を通りワイヤ係合部1250aに至る経路で配設されている。
【0167】
つまり、受動ワイヤ1252aは、ワイヤ係合部1250aを基点及び終点とする一巡の経路を構成し、アイドルプーリ1140aの両側方を通り、受動プーリ1156aに巻き掛けられ、アイドルプーリ1140aとガイドプーリ1142aとの間で交差して、略8字形状をなす。これにより、ワイヤ係合部1250a及び受動ワイヤ1252aは、ロッド192aを介してトリガレバー36に対して機械的に接続されていることになる。
【0168】
アイドルプーリ1140a、ガイドプーリ1142a及び受動プーリ1156aは略同径であり、受動ワイヤ1252aがあまり屈曲しないように、レイアウト上の可能な範囲で適度に大径にしている。ワイヤ係合部1250aは、受動ワイヤ1252aが過度に屈曲しないように、アイドルプーリ1140aよりも適度に離れた位置に設けられており、受動ワイヤ1252aの両端部はワイヤ係合部1250aを頂部として鋭角を形成している。アイドルプーリ1140aとガイドプーリ1142aとの間は狭く、例えば、受動ワイヤ1252aの幅と略等しい隙間が形成されている。
【0169】
アイドルプーリ1140a、ガイドプーリ1142a及び受動プーリ1156aには、受動ワイヤ1252aの抜け止めのために、上面及び下面に小さいフランジを設け、又は側面を凹形状にしてもよい。
【0170】
図29から明らかなように、第1エンドエフェクタ駆動機構1320aでは、基端側から先端側に向かって、受動ワイヤ1252a、アイドルプーリ1140a、ガイドプーリ1142a及び受動プーリ1156aが中心線に沿って配置されている。エンドエフェクタ1300は、伝達部材1152等を介して受動プーリ1156aに連結されている。
【0171】
このように構成される第1エンドエフェクタ駆動機構1320aでは、ロッド192a(
図29参照)をZ2方向に引き寄せると、平面視で、第1層アイドルプーリ1232及び第2層ガイドプーリ1238は反時計方向に回転し、第2層アイドルプーリ1234及び第1層ガイドプーリ1236は時計方向に回転する。このように、アイドルプーリ1140a及びガイドプーリ1142aは、それぞれ同軸上で2枚のプーリが並列する構成であることから、当接する受動ワイヤ1252aの動きに従って逆方向に回転可能であり、動作がスムーズである。
【0172】
エンドエフェクタ1300は、一対のグリッパ1302が動作をするいわゆる両開き型である。エンドエフェクタ1300は、カバー1160に対して一体構成のグリッパベース1304と、該グリッパベース1304に設けられたピン1196を基準にして動作する一対のエンドエフェクタ部材1308と、一対のグリッパリンク1220とを有する。
【0173】
各エンドエフェクタ部材1308は、L字形状であって、Z1方向に延在するグリッパ1302と、該グリッパ1302に対して略35°に曲がって延在するレバー部1310とを有する。L字形状の屈曲部には、孔1216が設けられ、レバー部1310の端部近傍には孔1218が設けられている。孔1216にピン1196が挿入されることにより一対のエンドエフェクタ部材1308は第3回転軸Ogを中心として揺動自在となる。
【0174】
各エンドエフェクタ部材1308は側方の1つのグリッパリンク1220によって、受動板1158のピン1224に連接されている。エンドエフェクタ1300の受動板1158ではリンク孔1172が
図25のY方向に対称位置に2つ設けられており、一対のグリッパリンク1220は側面視で交差する配置である。
【0175】
図24、
図25、
図26及び
図27に示すように、第2エンドエフェクタ駆動機構1320bは、第1エンドエフェクタ駆動機構1320a(
図29参照)に対して、基本的には、折り返しプーリ(円柱部材、伝達部材)1350が付加された構成である。受動プーリ1156a及び受動プーリ1156bは同軸構成となっている。
【0176】
主軸部材1144には、ピン1352が挿入及び固定される径方向の軸孔1354が設けられている。軸孔1354は、孔1144aを経由して主軸部材1144の筒部を貫通している。
【0177】
伝達部材1152には、ピン1352が挿通可能な幅で軸方向に延在する長孔1356が設けられている。伝達部材1152は、作業部1016の軸心よりY1方向にややオフセットした位置に設けられるが、先端の突起1174だけは軸心に配置させるとよい(
図29参照)。もちろん、伝達部材1152は中心に配置してもよい。
【0178】
ピン1154は、伝達部材1152を通り抜けてY2方向に突出し受動プーリ1156bを軸支する。受動プーリ1156bは、受動ワイヤ1252bが2巻き可能な幅を有する。孔1144aは、受動プーリ1156a、1156b及び伝達部材1152が挿入可能な高さを有する。受動プーリ1156a及び1156bは、孔1144a内でピン1154によって同軸に軸支されており、独立的に回転自在である。
【0179】
ピン1352は、孔1144a内でY1方向からY2方向に向かって、長孔1356及び折り返しプーリ1350の中心孔に挿入されて、伝達部材1152と受動プーリ1156a及び1156bが軸方向に進退可能である。折り返しプーリ1350はピン1352に軸支されて回転自在であり、位置は固定である。折り返しプーリ1350は受動ワイヤ1252bが2巻き可能な幅を有する。また、折り返しプーリ1350を2層化することにより、開閉動作のときに反対方向に回転できる構成となり、受動ワイヤ1252bとプーリの摩擦を低減させることができる。
【0180】
図32、
図33及び
図34に示すように、第2エンドエフェクタ駆動機構1320bにおいては、受動プーリ1156bよりも先端側に折り返しプーリ1350が設けられ、受動ワイヤ1252bは、受動プーリ1156bと折り返しプーリ1350とにわたって巻き掛けられている。つまり、受動ワイヤ1252bは、駆動部材のロッド192bのワイヤ係合部1250bから、アイドルプーリ1140bのX1方向を通り、X2方向に向かい、ガイドプーリ1142bのX2方向を通り受動プーリ1156bのX2方向面に至る。受動ワイヤ1252bはそのままZ1方向に向かって延在し、折り返しプーリ1350のX2方向の面に達し、該折り返しプーリ1350のZ1方向の面に半回転巻き付けられてZ2方向に折り返す。
【0181】
受動ワイヤ1252bは受動プーリ1156bのZ2方向の面に半回転巻き付けられてX2側を通って再度折り返しプーリ1350に至り、再び該折り返しプーリ1350のZ1方向の面に半回転巻き付けられてZ2方向に折り返す。この後、受動ワイヤ1252bはガイドプーリ1142bのX1方向からアイドルプーリ1140bのX2方向に至り、ロッド192bのワイヤ係合部1250bに接続される。ワイヤ係合部1250a及び受動ワイヤ1252bは、ロッド192bを介してトリガレバー36に対して機械的に接続されていることになる。
【0182】
先端動作部12の構造について理解を容易にするために、その模式図を
図23に示す。
【0183】
このように構成される先端動作部12では、
図21に示すように、人手によりトリガレバー36を十分に引くと、ロッド192aは受動ワイヤ1252aを引き寄せ、受動プーリ1156a、伝達部材1152をZ2方向に移動させることからエンドエフェクタ1300を閉じさせることができる。つまり、ロッド192aや受動ワイヤ1252a、受動プーリ1156a等の伝達部材が牽引されることによりエンドエフェクタ1300が閉じられる。
【0184】
この場合、第2エンドエフェクタ駆動機構1320bについては、ロッド192bは、押し出されるように配置されているため、伝達部材1152の動作を阻害しない。
【0185】
また、
図22に示すように、人手によりトリガレバー36を十分に押し出すと、伝達部材1152及び受動プーリ1156aは先端側にZ1方向に移動してエンドエフェクタ1300を開くことができる。
【0186】
エンドエフェクタ1300には、トリガレバー36を人手によって押し出す力が第2エンドエフェクタ駆動機構1320bによって機械的に直接伝えられることから、弾性体のような所定の力ではなく任意の強い力で開くことができる。したがって、エンドエフェクタ1300の外側面を用いて生体組織を剥離させ、又は孔部を拡開させるような手技に対して好適に用いることができる。
【0187】
また、エンドエフェクタ1300の外側面に対象物が接触した場合には、受動ワイヤ1252b、ロッド192b及びトリガレバー36もそれ以上Z1方向に動かなくなり、操作者はエンドエフェクタ1300の外側面が対象物に接触したこと、及び該対象物の硬さ等を指先で知覚することができる。
【0188】
先端動作部12は、ヨー軸動作及びロール軸動作が可能である。図示を省略するが、先端動作部12では、ヨー軸動作をする場合、ガイドプーリ1142a及びガイドプーリ1142bの軸(
図23参照)を中心にして、それよりも先端の複合機構部1102及びエンドエフェクタ1300がヨー方向に揺動する。先端動作部12は、非干渉機構であることから、ヨー軸動作をしてもエンドエフェクタ1300の開度が変化することはなく、逆にエンドエフェクタ1300の開度を変化させてもヨー軸が動作することはない。エンドエフェクタ1300とロール軸の関係についても同様である。
【0189】
図24及び
図27から了解されるように、先端動作部12ではワイヤ1052及び1054の作用下に歯車1134及び1138が回転し、フェイスギア1165を駆動する。歯車1134及び1138が同方向に同速度で回転するときヨー軸動作となり、反対方向に同速度で回転するときロール軸動作となり、動作速度が異なるときにはヨー軸及びロール軸の複合動作となる。つまり、歯車1134と歯車1138の回転差に応じた動作をする差動機構となっている。
【0190】
先端動作部12の機構は差動機構に限らず、例えば、ワイヤ1052が歯車1134を介してフェイスギア1165を駆動するのに対してワイヤ1054は主軸部材1144を直接的に回転駆動する形式としてもよい。
【0191】
次に、先端動作部12の変形例としての先端動作部12aを
図35に示す。
【0192】
図35に示すように、先端動作部12aは、前記の先端動作部12(
図22参照)と比較して第1エンドエフェクタ駆動機構1320aを有している点で共通するが、第2エンドエフェクタ駆動機構1320bが省略された構成となっている。先端動作部12aについて、先端動作部12と同一の構成要素については同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0193】
先端動作部12aは、前記の両開き型のエンドエフェクタ1300に代えて片開き式のエンドエフェクタ1300aが設けられている。エンドエフェクタ1300aは、固定のグリッパ1202とピン1196を中心として軸開閉動作をするグリッパ1212と、伝達部材1152をZ1方向に弾性付勢するスプリング1305とを有している。グリッパ1212は、伝達部材1152が進退することにともなってグリッパリンク1220を介して開閉駆動される。すなわち、トリガレバー36をZ2方向に引くと第1エンドエフェクタ駆動機構1320aによって伝達部材1152もZ2方向に変位し、グリッパ1212は
図35における反時計方向に回動してエンドエフェクタ1300が閉動作をする。一方、トリガレバー36を開放すると、伝達部材1152はスプリング1305の付勢によってZ1方向に変位し、エンドエフェクタ1300は開状態に復帰する。また、トリガレバー36はZ1方向に復帰する。
【0194】
上述したように、本実施の形態に係るマニピュレータ10によれば、回転操作部54の外周面に指掛け部が設けられており、周方向に向かう回動操作がなされ、傾動操作部56は傾動板76の押し込みによる傾動操作がなされる。これにより、ロール回動機構及びピボット軸機構についてそれぞれ直感的な操作性が得られる。また、回転操作部54の指掛け部が傾動操作部56の端部よりも外径側に設けられていることにより、該傾動操作部56との使い分けが容易であり、従来の鉗子に慣れている操作者も容易に使用可能である。
【0195】
ところで、マニピュレータ10を用いた手技の最中に、操作者がグリップハンドル26を握り直したり、グリップハンドル26を握っていた手を一時的にグリップハンドル26から離したりするために、操作者がグリップハンドル26を握っていた手とは逆の手でマニピュレータ10の上部を握ったり持ったりする場合がある。このとき、操作者の手が回転操作部に触れることで、回動機構が意図せずに動作するおそれがある。回転操作部のこのような誤操作が発生すると、円滑な手技の遂行が困難となる。
【0196】
そこで、以下では、回転操作部の誤操作を防止するためのいくつかの構成例を説明する。なお、本発明に係るマニピュレータ10について、左右方向とは、連結シャフト18の延在方向とグリップハンドル26の延在方向とを含む平面に対して垂直な方向をいうものとする。
【0197】
先ず、
図36〜
図38、
図39A、
図39B及び
図40を参照し、回転操作部を部分的に覆うことで回転操作部への接触を阻止し、回転操作部の誤操作を防止する手段について説明する。
【0198】
図36は、第4変形例に係る複合入力部24d、誤操作防止カバー300及びその周辺の斜視図である。第4変形例に係る複合入力部24dにおける回転操作部54dは、
図14に示した回転操作部54cよりも一回り程度小さく構成されており、回転操作部54dは、上部が円弧状に形成された操作子306と、操作子306の下側に設けられ左右外側に膨出するサイド部308とを有する。
【0199】
操作子306には、上端部及び左右両側に指掛け部として凹状に形成された切欠302、304が設けられている。操作子306の上端部の位置は、カバー96の外面と略同じか内方側(K2方向側)にあり、少なくともカバー96の外面より外方側(K1側)には突出しないものとする。
【0200】
図36に示すように、マニピュレータ10には、回転操作部54dの誤操作を防止するために、回転操作部54dの少なくとも一部を覆う第1構成例に係る誤操作防止カバー300が設けられている。第1構成例に係る誤操作防止カバー300は、回転操作部54dの上部を覆うように構成されている。
【0201】
具体的には、第1構成例に係る誤操作防止カバー300は、回転操作部54dの前方に配置されたカバー96の基端部(J2方向の端部)に設けられている。図示例では、誤操作防止カバー300は、カバー96に取り付けられた部材であるが、カバー96と一体成形されたものであってもよい。
【0202】
また、誤操作防止カバー300は、回転操作部54dの上端部に設けられた指掛け部である切欠302に対向して覆うように左右方向に延在する上壁部310と、回転操作部54dの上部のうち回転操作部54dの回動方向の両側(左右両側)の部分に対向して覆う側壁部312とを有する。
【0203】
上壁部310は、操作子306の上部の形状に沿うように円弧状に形成されている。側壁部312のK方向の長さ(高さ)は、回転操作部54dの上部を除く左右側面が露出されるように設定されている。上壁部310及び側壁部312のJ方向の長さは、上壁部310及び側壁部312のJ2方向の端部が、操作子306のJ2方向側の面(正面)と略同じか、この面よりもJ2方向側に位置するように設定されるのが好ましい。
【0204】
上記のように構成された誤操作防止カバー300を設けることにより、マニピュレータ10の上部で回転操作部54dに近い箇所(例えば、カバー96の基端部)を操作者が握ったり持ったりしても、誤操作防止カバー300が回転操作部54dの上部を覆っているため、操作者の手が回転操作部54dに触れることが阻止される。これにより、回転操作部54dの誤操作が防止される。
【0205】
また、マニピュレータ10の上部で回転操作部54dに近い箇所を操作者が握ったり持ったりしたときには、回転操作部54dの上部が最も人手に接近しやすいが、誤操作防止カバー300は、回転操作部54dの上部を覆うように構成されているので、回転操作部54dへの人手の接触が効果的に阻止される。
【0206】
なお、回転操作部54dの上部を除く左右側面は、誤操作防止カバー300で覆われておらず、外部に露出しているので、操作者はこの露出部分を指で押すことが可能であり、回転操作部54dに対する操作性を低下させることがない。
【0207】
図36に示すように、操作部14には、サイド部308の前方の側面に、左右外側に膨出する凸部314が設けられている。サイド部308は、凸部314に対して左右方向の内側に位置する。具体的には、サイド部308の左右方向の外方端は、凸部314の左右方向の外方端よりも、内方側に位置している。
【0208】
このように、回転操作部54dが左右方向に膨出するサイド部308を有する場合でも、サイド部308が凸部314に対して左右方向の内側に位置するので、マニピュレータ10の上部で回転操作部54dに近い箇所を操作者が握ったり持ったりした際に、操作者の手がサイド部308に触れにくい。従って、回転操作部54dの誤操作を抑制できる。
【0209】
図37は、第2構成例に係る誤操作防止カバー320及びその周辺を示す斜視図である。上述した第1構成例に係る誤操作防止カバー300は、回転操作部54dの上部のうち左右側面のみならず上端部をも覆うように構成されている。これに対し、第2構成例に係る誤操作防止カバー320は、
図37に示すように、回転操作部54dの上部のうち左右両側面を覆う一方、回転操作部54dの上端部に設けられた指掛け部である切欠302を露出させるように構成されている。すなわち、誤操作防止カバー320は、回転操作部54dの上端部に設けられた切欠302を露出させる切欠部323が形成された上壁部322を有する。
【0210】
このように、第2構成例に係る誤操作防止カバー320は、指掛け部である切欠302が露出するように構成されているので、操作者が指掛け部に指を掛ける際に誤操作防止カバー320が邪魔にならない。従って、回転操作部54dに対する操作性を低下させることなく、回転操作部54dの誤操作を防止することができる。
【0211】
図38は、第3構成例に係る誤操作防止カバー330及びその周辺を示す斜視図である。
図38において、誤操作防止カバー330以外の構成は、
図14に示した第3変形例に係る複合入力部24c及びその周辺の構成と同じである。
【0212】
回転操作部54cは、指掛け部である切欠72eが設けられた操作子71と、操作子71の下側に設けられ操作子71よりも左右外側に膨出するレバー72aとを有する。操作部14において、レバー72aのJ1側の箇所(カバー96の一部)には、左右方向に膨出する凸部331が設けられている。
【0213】
図38に示すマニピュレータ10には、回転操作部54cの誤操作を防止するために、レバー72aの少なくとも一部を覆う誤操作防止カバー330が設けられている。誤操作防止カバー330は、J方向に延在する部材であり、凸部331に取り付けられている。
【0214】
誤操作防止カバー330は、凸部331からJ2方向に延在し、図示例では、レバー72aの略下半分の部分を覆う大きさに形成されている。誤操作防止カバー330のJ2方向の端部位置は、レバー72aのJ2方向の中心位置と同じか、それよりもJ2方向に位置していることが好ましい。すなわち、誤操作防止カバー330は、少なくともレバー72aのJ2方向の前半分を覆う大きさであることが好ましい。
【0215】
上記のように構成された誤操作防止カバー330を設けることにより、回転操作部54cが左右方向に膨出するレバー72aを有する場合でも、レバー72aを覆う誤操作防止カバー330により、操作者の手がレバー72aに触れることが阻止されるため、回転操作部54cの誤操作が防止される。
【0216】
図39Aは、第5変形例に係る複合入力部24h、第4構成例に係る誤操作防止カバー332及びその周辺の一部省略斜視図であり、
図39Bは、第5変形例に係る複合入力部24h、第4構成例に係る誤操作防止カバー332及びその周辺の一部省略側面図である。
【0217】
第5変形例に係る複合入力部24hにおける回転操作部54hは、
図14に示した回転操作部54cよりも一回り程度小さく構成されており、その上端部及び左右両側には、指掛け部として凹状に形成された切欠72eが設けられている。
【0218】
回転操作部54hの外周部は、カバー96aの外面よりも内方側にある。すなわち、回転操作部54hの前方に位置するカバー96aの左右方向(X方向)の幅は、回転操作部54hの左右方向の幅よりも広く、且つ、カバー96aの高さは、回転操作部54hの上端部よりも高い。
【0219】
図39A及び
図39Bに示すように、誤操作防止カバー332は、回転操作部54hの上方でJ2方向に突出しており、図示例では、回転操作部54hの前方側に位置するカバー96aの基端部の上部に一体的に設けられ、左右方向(X方向)に延在している。誤操作防止カバー332の突出端は、回転操作部54hの背面(J1方向側の面)よりもJ2方向側に位置している。誤操作防止カバー332の突出端は、回転操作部54hの正面(J2方向側の面)よりもJ1方向側の位置に設定されるのがよい。
【0220】
上記のように構成された誤操作防止カバー332を設けることにより、マニピュレータ10の上部で回転操作部54hに近い箇所(例えば、カバー96aの基端部)を操作者が握ったり持ったりしても、誤操作防止カバー332が回転操作部54hの上方でJ2方向に突出しているので、操作者の手が回転操作部54hに触れることが阻止される。
【0221】
複合入力部24hにおける傾動操作部56bは、左右方向の中央部に、グリップハンドル26側(K2方向側)に窪んでJ方向に延在する凹部333が設けられ、左右両側端に、K1方向に突出する突部334が設けられる。つまり、傾動操作部56bは、左右方向の両端部が中央部よりもK1方向に突出した形状を呈している。このような構成によれば、操作者の手指が傾動操作部56bの凹部333で安定するとともに、左右両側に突部334があることで傾動操作部56bに対する押圧がしやすいので、操作性が向上する。
【0222】
図40は、第6変形例に係る複合入力部24i及びその周辺の一部省略斜視図である。第6変形例に係る複合入力部24iは、第5変形例に係る複合入力部24hの傾動操作部56bを、これとは別構成の傾動操作部56cに置き換えたものである。傾動操作部56cは、左右方向の中央部がグリップハンドル26と反対側(K1方向側)に突出してJ方向に延在する突起部335を有する。このような構成によれば、突起部335を左右方向に押すように操作することで、傾動操作部56cを簡単に操作することができるので、操作性が向上する。
【0223】
次に、
図41〜
図47を参照し、機構的な作用により回転操作部の誤操作を防止する手段について説明する。
【0224】
図41は、回転操作部54が非作動位置にあるときの、第7変形例に係る複合入力部24eの断面図である。
図42は、回転操作部54が作動位置にあるときの、第7変形例に係る複合入力部24eの断面図である。なお、
図41及び
図42において、
図5に示される参照符号と同一の参照符号は、基本的には、同一又は同様な構成を示すものであり、このため同一又は同様な機能及び効果を奏するものとして詳細な説明を省略する。
【0225】
複合入力部24eには、回転操作部54の誤操作を防止する誤操作防止機構340が設けられている。この誤操作防止機構340は、回転操作部54が第1の状態(
図41に示す状態)のときに、回転操作部54による回動機構の動作を不能とし、回転操作部54が第2の状態(
図42に示す状態)のときに、回転操作部54による回動機構の動作を可能とするように構成されている。
【0226】
誤操作防止機構340は、回転操作部54を左右方向に回動可能に支持し且つ軸線方向(J方向)に移動可能にガイドする回転軸70aと、回転操作部54をJ2方向に常時付勢する付勢手段342としてのバネ(図示例ではコイルバネ)342Aとを有する。
【0227】
回転軸70aは、先端部(J1側の端部)がハウジング53の前側壁部53aに固定され、後端部(J2側の端部)がハウジング53の中間壁部53b部に固定されることで、ハウジング53に固定されている。なお、ハウジング53は、回転操作部54と傾動操作部56を取り付けるとともにスイッチ基板62aを収容する部材である点で、
図5に示すハウジング52と基本的な構成及び機能は共通するが、回転操作部54をJ方向に移動可能とするために、前側壁部53aと中間壁部53bの間隔が、ハウジング52のそれよりも長くなっている。
【0228】
回転操作部54の下部には、J方向に貫通する挿通孔55が形成されており、この挿通孔55に回転軸70aが挿通されている。回転軸70aの長さは、前側壁部53aのJ2側の面から中間壁部53bのJ1側の面までの距離より長く設定される。また、前側壁部53aのJ2側の面から中間壁部53bのJ1側の面までの距離は、回転操作部54が、第1の状態と第2の状態に対応する位置間に相当する距離だけ回転軸70aの軸線方向(J方向)に移動できるように設定される。
【0229】
一構成例に係る付勢手段342としてのバネ342Aは、内部に回転軸70aが挿通された状態で、ハウジング53の前側壁部53aと回転操作部54との間に配置され、回転操作部54をJ2方向に常時付勢する。なお、付勢手段342の構成及び配置位置は、図示例に限られず、回転操作部54をJ2方向に付勢できる他の構成及び配置位置であってもよい。
【0230】
回転操作部54は、上記のように回転軸70aをガイドとして軸線方向(J方向)に移動可能であり、且つ付勢手段342によりJ2方向に常時付勢されているので、前方(J1方向)への力を受けていないときには、
図41に示す非作動位置に位置し、J1方向にバネの弾発力を上回る力を受けたときは、J1方向に向かって、
図42に示す作動位置まで移動する。
【0231】
スイッチ基板62a上には、スイッチ基板62(
図5参照)と同様に、回動機構を動作させるためのタクトスイッチ64d、64gが設けられている。タクトスイッチ64d、64gの構成及び機能は、
図9に示したタクトスイッチ64d、64gと同様である。
【0232】
図41に示すように、回転操作部54の第1の状態は、回転操作部54がタクトスイッチ64d、64gを押圧可能な位置からJ2側に退避した「非作動位置」にある状態である。すなわち、第1の状態では、回転操作部54に設けられた押圧突起72b、72c(
図6も参照)がタクトスイッチ64d、64gに対向する位置からずれた位置にあるため、回転操作部54は、タクトスイッチ64d、64gを押圧することができない。
【0233】
一方、回転操作部54をJ1方向に押し込むと、
図42に示すように、回転操作部54は、第2の状態となる。回転操作部54の第2の状態は、回転操作部54がタクトスイッチ64d、64gを押圧可能な「作動位置」にある状態である。すなわち、第2の状態では、押圧突起72b、72cがタクトスイッチ64d、64gに対向する位置にあるため、この位置で回転操作部54を回転させることで、シリコーン体66Aを介してタクトスイッチ64d、64gを押圧可能である。
【0234】
また、
図41に示すように、誤操作防止機構340は、非作動位置に回転操作部54が位置しているときに回転操作部54の回転を阻止する回転ストッパ344をさらに有する。一構成例に係る回転ストッパ344は、中間壁部53bのJ1側の面に設けられた(固定された)突起体344Aであり、回転操作部54が非作動位置に位置しているときに回転操作部54に設けられた凹部346に係合することで、回転操作部54の回転が阻止される。
【0235】
誤操作防止機構340は上記のように構成されているので、回転操作部54が非作動位置にあるときには回動機構は動作せず、回転操作部54を作動位置に移動させない限り、回転操作部54による回動機構の動作が可能とならない。これにより、回転操作部54の誤操作が有効に防止される。
【0236】
すなわち、回転操作部54が非作動位置にあるときは、回転操作部54を操作しても、回転操作部54によりタクトスイッチ64d、64gを押圧することがなく、また、操作者が意図的に回転操作部54を作動位置に移動させない限り、タクトスイッチ64d、64gが押圧されることがない。このため、回転操作部54の誤操作を確実に防止することができる。
【0237】
また、作動位置に回転操作部54が位置しているときには、回転ストッパ344により回転操作部54の回転が阻止されるので、回転操作部54が中立位置から左右いずれかの方向に回転した状態のままJ1方向に移動して作動位置に到達することが防止される。これにより、タクトスイッチ64d、64gを不意に押圧してしまうことが防止される。
【0238】
また、回転ストッパ344の作用により、回転操作部54を操作しようとする操作者は、回転操作部54が回転しないことにより回転操作部54が非作動位置にあることを認識できるため、操作者は、回動機構を動作させることが可能な状態にするためには回転操作部54をJ1方向に押し込む操作が必要であることを容易に理解することができる。
【0239】
図43Aは、回転操作部54が非作動位置にあるときの、第8変形例に係る複合入力部24jの模式説明図である。
図43Bは、第8変形例に係る複合入力部24jの動作説明図である。なお、
図43A及び
図43Bにおいて、
図41に示される参照符号と同一の参照符号は、基本的には、同一又は同様な構成を示すものであり、このため同一又は同様な機能及び効果を奏するものとして詳細な説明を省略する。
【0240】
第8変形例に係る複合入力部24jは、第7変形例に係る複合入力部24eの回転ストッパ344を、回転ストッパ344a及び中立姿勢復帰手段343に置き換えたものである。すなわち、複合入力部24jには、回転操作部54の誤操作を防止する誤操作防止機構340aが設けられており、誤操作防止機構340aは、回転ストッパ334a及び中立姿勢復帰手段343とを有する。
【0241】
回転ストッパ334aは、回転操作部54が非作動位置にある状態(タクトスイッチ64d、64gからJ2方向側に退避した状態)で、回転操作部54の左右両側の下端にストッパ部336が当接して回転操作部54の回転を阻止するものである。図示例の回転ストッパ334aは、回転操作部54の左右両側の下端間にわたる範囲でX方向に延在しているが、左右で分離して、回転操作部54の左右両側の下端に当接する箇所だけ設けられてもよい。
【0242】
このような回転ストッパ334aが設けられているので、回転操作部54が
図43Aに示す非作動位置にあるときには、回転ストッパ344aにより回転操作部54の回転が阻止されるので、回転操作部54が中立姿勢から左右いずれかの方向に回転した状態のままJ1方向に移動して作動位置に到達することが防止される。これにより、タクトスイッチ64d、64gを不意に押圧してしまうことが防止される。
【0243】
中立姿勢復帰手段343は、回転操作部54が
図43Aに示す非作動位置に戻る際に回転操作部54を中立姿勢に自動的に復帰させるためのものであり、図示例では、J2方向に向かうに従ってK1方向に寄る斜面341を有するスロープ343Aとして構成されている。スロープ343Aの斜面341は、回転操作部54が中立姿勢から左右いずれかの側に傾いた状態でJ2方向に移動する際、回転操作部54の左右の下端のうち傾いた側に当接する(
図43Bで仮想線で示した回転操作部54を参照)。スロープ343AのJ2側の端部のK方向の高さは、回転ストッパ334aのストッパ部336のK方向の高さと同じである。
【0244】
このようなスロープ343Aが設けられているので、回転操作部54は、回転ストッパ334aにより回転が規制される位置に戻る過程で、スロープ343Aの斜面341の作用により中立姿勢に自動的に復帰する。このため、回転操作部54が傾いたまま非作動位置に戻ることがなく、回転ストッパ334aを有効に機能させることができる。
【0245】
すなわち、スロープ343Aが無い場合、回転操作部54が傾いたまま非作動位置に戻ることで、回転ストッパ334aが機能しない可能性があるが、誤操作防止機構340aのようにスロープ343Aを有する場合、スロープ343Aにより回転操作部54が非作動位置に戻ったときは、回転操作部54は確実に中立姿勢となるため、回転ストッパ334aが有効に機能し、非作動位置での回転操作部54の回転が確実に阻止される。
【0246】
なお、図示例のスロープ343Aは、回転操作部54の左右両側の下端間にわたる範囲でX方向に延在しているが、左右で分離して、回転操作部54の左右両側の下端に当接する箇所だけ設けられてもよい。また、中立姿勢復帰手段343は、スロープ343Aに限られず、例えば、操作者の手指等による負荷が無い状態で回転操作部54が中立姿勢を保持するように回転操作部54を付勢するバネ(板バネ、コイルバネ等)として構成してもよい。
【0247】
図44は、回転操作部54eが非作動位置にあるときの、第9変形例に係る複合入力部24fの断面図である。
図45は、回転操作部54eが作動位置にあるときの、第9変形例に係る複合入力部24fの断面図である。なお、
図44及び
図45において、
図6に示される参照符号と同一の参照符号は、基本的には、同一又は同様な構成を示するものであり、このため同一又は同様な機能及び効果を奏するものとして詳細な説明を省略する。
【0248】
複合入力部24fには、回転操作部54eの誤操作を防止する誤操作防止機構350が設けられている。この誤操作防止機構350は、回転操作部54eが第1の状態(
図44に示す状態)のときに、回転操作部54eによる回動機構の動作を不能とし、回転操作部54eが第2の状態(
図45に示す状態)のときに、回転操作部54eによる回動機構の動作を可能とするように構成されている。
【0249】
図示例の回転操作部54eの全体形状は、
図6に示した回転操作部54と同様に、指掛け部として機能する切欠72eが設けられた操作子71と、操作子71の下側に設けられ左右方向に膨出するレバー72aとを有した形状であるが、
図13に示した回転操作部54bや
図14に示した回転操作部54cと同様であってもよい。
【0250】
回転操作部54eの左右方向の中央部には、J方向(
図44の図面に垂直な方向)に貫通し且つK方向に延在する長孔352が設けられている。この長孔352には軸70が挿通されており、回転操作部54eは軸70をガイドとしてK方向に移動可能となっている。長孔352は、誤操作防止機構350を構成する一要素である。
【0251】
長孔352内には、回転操作部54eをK1方向に常時付勢する付勢手段354としてのバネ354Aが配置されている。付勢手段354は、誤操作防止機構350を構成する一要素である。なお、付勢手段354の構成及び配置位置は、図示例に限られず、回転操作部54eをK1方向に付勢できる他の構成及び配置位置であってもよい。
【0252】
回転操作部54eは、上記のように軸70をガイドとしてK方向に移動可能であり、且つ付勢手段354により上方(K1方向)に常時付勢されているので、下方(K2方向)への力を受けていないときには、
図44に示す作動位置に位置し、バネの弾発力を上回る下方への力を受けたときは、K2方向に向かって、
図45に示す作動位置まで移動する。
【0253】
図44に示すように、回転操作部54eの第1の状態は、回転操作部54eが、タクトスイッチ64d、64gを押圧可能な位置からK1側に退避した非作動位置にある状態である。すなわち、第1の状態では、回転操作部54eに設けられた押圧突起72b、72cからタクトスイッチ64d、64gまでの距離が大きいため、回転操作部54eは、タクトスイッチ64d、64gを押圧することができない。
【0254】
一方、回転操作部54eをK2方向に押し込むと、
図45に示すように、回転操作部54eは、第2の状態となる。回転操作部54eの第2の状態は、回転操作部54eが、タクトスイッチ64d、64gを押圧可能な「作動位置」にある状態である。すなわち、第2の状態では、押圧突起72b、72cの先端部がシリコーン体66に当接し、タクトスイッチ64d、64gに近接した状態であるため、この位置で回転操作部54eを左右いずれかの方向に回転させることで、シリコーン体66を介してタクトスイッチ64d又は64gを押圧可能である。
【0255】
また、
図44に示すように、誤操作防止機構350は、非作動位置に回転操作部54eが位置しているときに回転操作部54eの回転を阻止する回転ストッパ356をさらに有する。一構成例に係る回転ストッパ356は、非作動位置に回転操作部54eが位置しているときに回転操作部54eの一部(図示例ではレバー72a)に当接することで、回転操作部54eの回転が防止される。
【0256】
具体的には、回転ストッパ356は、回転操作部54eの左側に設けられた第1ストッパ356Aと、回転操作部54eの右側に設けられた第2ストッパ356Bとを有する。第1ストッパ356A及び第2ストッパ356Bは、操作部14における、回転操作部54eに対向する部位に設けられる。
【0257】
図44に示すように、非作動位置に回転操作部54eが位置しているとき、回転操作部54eを右方向に回転させようとしても、回転操作部54eが第1ストッパ356Aに当接することで、回転操作部54eの右方向への回転が阻止される。また、非作動位置に回転操作部54eが位置しているとき、回転操作部54eを左方向に回転させようとしても、回転操作部54eが第2ストッパ356Bに当接することで、回転操作部54eの左方向への回転が阻止される。
【0258】
一方、
図45に示すように、回転操作部54eが下方に移動し、作動位置に回転操作部54eが位置しているとき、回転操作部54eは第1ストッパ356Aと第2ストッパ356Bから離間しているので、左右方向に回転することが可能である。
【0259】
誤操作防止機構350は上記のように構成されているので、回転操作部54eが非作動位置にあるときは回動機構は動作せず、回転操作部54eを作動位置に移動させない限り、回転操作部54eによる回動機構の動作が可能とならない。これにより、回転操作部54eの誤操作が有効に防止される。
【0260】
すなわち、回転操作部54eが非作動位置にあるときは、回転操作部54eを操作しても、回転操作部54eによりタクトスイッチ64d、64gを押圧することがなく、また、操作者が意図的に回転操作部54eを作動位置に移動させない限り、タクトスイッチ64d、64gが押圧されることがない。このため、回転操作部54eの誤操作を確実に防止することができる。
【0261】
また、回転ストッパ356の作用により、回転操作部54eを操作しようとする操作者は、回転操作部54eが回転しないことにより回転操作部54eが非作動位置にあることを認識できるため、操作者は、回動機構を動作させることが可能な状態にするためには回転操作部54eをK2方向に押し込む操作が必要であることを容易に理解することができる。
【0262】
図46は、回転操作部54fが非作動位置にあるときの、第10変形例に係る複合入力部24gの一部を示す断面図である。
図47は、回転操作部54fが作動位置にあるときの、第10変形例に係る複合入力部24gの一部を示す断面図である。この複合入力部24gは、回転ストッパ360の構成のみが、第9変形例に係る複合入力部24fと異なっている。回転ストッパ360は、回転操作部54fに対向する位置に設けられたピン362と、回転操作部54fに設けられたガイド溝364とを有する。
【0263】
ピン362は、操作部14における、回転操作部54fに対向する部位に設けられている。ガイド溝364は、回転操作部54fのJ1側(
図46で紙面の奥側)の面に設けられており、回転操作部54fが非作動位置にあるときに回転操作部54fの回転を阻止する一方、回転操作部54fが作動位置にあるときに回転操作部54fの回転を許容するように構成されている。このため、ガイド溝364は、K方向に延在する縦方向溝364Aと、軸70の中心とピン362の中心とを結ぶ線分を半径とする円の円弧に沿って延在する円弧状溝364Bとを有する。
【0264】
図46に示すように、非作動位置に回転操作部54fが位置しているとき、回転操作部54fを左右いずれかの方向に回転させようとしても、ピン362が縦方向溝364A内に位置するため、回転操作部54fの回転が阻止される。一方、
図47に示すように、回転操作部54fが下方に移動し、作動位置に回転操作部54fが位置しているとき、ピン362が円弧状溝364B内に位置するため、回転操作部54fは左右方向に回転することが可能である。
【0265】
上記のように構成された回転ストッパ360によっても、前述した回転ストッパ356と同様に、回転操作部54fを操作しようとする操作者は、回転操作部54fが回転しないことにより回転操作部54fが非作動位置にあることを認識できるため、操作者は、回動機構を動作させることが可能な状態にするためには回転操作部54fをK2方向に押し込む操作が必要であることを容易に理解することができる。
【0266】
本発明に係る医療用マニピュレータは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。