(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669462
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】ピアスセレクタ
(51)【国際特許分類】
B21D 28/24 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
B21D28/24 D
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-152772(P2010-152772)
(22)【出願日】2010年7月5日
(65)【公開番号】特開2012-11444(P2012-11444A)
(43)【公開日】2012年1月19日
【審査請求日】2013年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175582
【氏名又は名称】三協オイルレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘実
(72)【発明者】
【氏名】三島 啓雄
(72)【発明者】
【氏名】柴田 清司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 実
【審査官】
宇田川 辰郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−330217(JP,A)
【文献】
特開2004−148404(JP,A)
【文献】
特開2001−001196(JP,A)
【文献】
特開平07−204755(JP,A)
【文献】
米国特許第5881625(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/24
B21D 28/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端にフランジ形状を有するピアス頭部と、下端に被加工物に孔をあける先端部と、を有し、ケーシングのピアス加工方向貫通孔に摺動自在に支持されるピアスパンチと、
前記ピアス頭部のフランジ形状の上下端面を挟持し、前記ピアスパンチの加工方向及び非加工方向への駆動力を伝達するピアスリングと、
前記ピアスリングに係合して前記ピアスリングを非加工方向に付勢する付勢手段と、
先端部にテーパ部を有し、水平方向から進出して、前記ピアスリングの上部に前記テーパ部を当接させて、前記ピアスリングを加工方向に駆動するスライドプレートと、
前記スライドプレートを水平方向に進退させる駆動装置と、
を有することを特徴とするピアスセレクタ。
【請求項2】
前記付勢手段は、金属製若しくは合成樹脂製の弾性体、または、前記ピアスリングの下部に一端部が係合し他端部が前記スライドプレートに係合して基部を中心に揺動することで前記ピアスパンチを非加工方向に強制的に移動させる揺動自在なレバーであること、
を特徴とする請求項1に記載のピアスセレクタ。
【請求項3】
前記ピアスリングと前記ピアスパンチとは、前記ピアスパンチがそれ自身の長手方向の軸芯回りに回転しないように、前記ピアスパンチの頭部における円形の外周部の一部と前記ピアスリングの内側壁面の一部とに、互いに当接する回止め用の平坦状壁面部が設けられていること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のピアスセレクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に孔等を開けるプレス金型に取り付け、被加工物に孔等を開ける、或いは、孔等を開けないの切り替えを行い被加工物への孔加工等の打ち分けを制御(選択)するパンチ切換装置であるピアスセレクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パンチ切替装置は、プレス金型に取り付け、或いは、プレス金型用カム装置の工具取付面に固定され、
図5(A)に示すように、ピアスパンチ3をケーシング2で加工方向に摺動自在に支持して、エアシリンダー等の駆動手段7によって水平に往復直線移動(駆動)するセレクトバー(スライドプレート)6が設けられている。
図5(B)に示すように、このセレクトバー(スライドプレート)6が前記ピアスパンチ3の頭部3bの上に進出して、ピアスパンチ3を加工方向に強制的に突出させることで、被加工物に孔を開けることができるようになっている。また、
図5(A)に示すように、前記セレクトバー(スライドプレート)6が後退しているときには、前記ピアスパンチ3が加工方向とは逆方向に移動可能となり、若しくは強制的にレバー5で押し上げられ、孔を開けない状態になる。このように、ピアスパンチ3を孔加工可能状態、若しくは孔加工不要状態に適宜制御して、被加工物に孔を開ける、孔を開けないの選択をするパンチ切換装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2003−107802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のパンチ切換装置においては、
図5(A)に示す状態から
図5(B)に示す状態に移行する際に、まれにピアスパンチ3の頭部3bに嵌装されたピアスリング9が加工方向に移動しても、ピアスパンチ3のシャンク部外径公差の違いにより、ピアスパンチとケーシング嵌合部との間に僅かな隙間やガタが生じて、
図5(C)に示すようにピアスパンチ3が加工方向に移動しない場合があった。このとき、前記ピアスリング9の上端面から前記ピアスパンチ3の頭部上端面が上に突出してしまい、セレクトバー(スライドプレート)6の先端部に衝突してしまうことがある。このような障害が発生すると、被加工物に孔加工を行うことができないのは勿論のこと、このパンチ切換装置のリテーナ部分に損傷が生じてしまう。よって、この動作不具合問題は確実に防止する必要があり、本発明に係るピアスセレクタは、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明
のピアスセレクタは、上端にフランジ形状を有するピアス頭部と、下端に被加工物に孔をあける先端部と、を有し、ケーシングのピアス加工方向貫通孔に摺動自在に支持されるピアスパンチと、ピアス頭部のフランジ形状の上下端面を挟持し、ピアスパンチの加工方向及び非加工方向への駆動力を伝達するピアスリングと、ピアスリングに係合してピアスリングを非加工方向に付勢する付勢手段と、先端部にテーパ部を有し、水平方向から進出して、ピアスリングの上部にテーパ部を当接させて、ピアスリングを加工方向に駆動するスライドプレートと、スライドプレートを水平方向に進退させる駆動装置と、を有する。
【0006】
また
、付勢手段は、金属製若しくは合成樹脂製の弾性体、または、ピアスリングの下部に一端
部が係合し他端部がスライドプレートに係合して基部を中心に揺動することでピアスパンチを非加工方向に強制的に移動させる揺動自在なレバーである
。更に
、ピアスリングとピアスパンチとは、ピアスパンチがそれ自身の長手方向の軸芯回りに回転しないように、ピアスパンチの頭部における円形の外周部の一部とピアスリングの内側壁面の一部とに、互いに当接する回止め用の平坦状壁面部が設けられている
。
【発明の効果】
【0007】
本発明のピアスセレクタによれば、ピアスリングの天板部がピアスパンチの頭部の上に被さって覆っており、スライドプレートが進出すると、必ずピアスリングが当接されて加工方向に移動され、ピアスリングの天板部の作用によりピアスパンチが確実に突出する。さらに、直接、スライドプレートが前記ピアスパンチ頭部に当接することが無くなり、スライダープレートとピアスポンチの頭部とが衝突して損傷するということも解消されると言う優れた効果を奏するものである。
また、付勢手段は、弾性体や強制的に移動させる揺動レバーであって、公知の手段により対応できて設計の自由度が増すものである。更に、ピアスリングとピアスパンチとに回止め用の平坦状壁面部があることで、ピアスパンチの回転を止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るピアスセレクタ1の使用状態であって、ピアスパンチ3が上に待機させられている状態の縦断面図(A)と、ピアスパンチ3が下に突出させられて使用可能状態の縦断面図(B)とである。
【
図2】同本発明のピアスセレクタ1におけるピアスリング4の正面図(A)、側面図(B)、背面図(C)、平面図(D)、底面図(E)である。
【
図3】同ピアスリング4にピアスパンチ3を差し込む様子を説明する説明図である。
【
図5】従来例に係るピアスセレクタ10の使用状態であって、ピアスパンチ3が上に待機させられている状態の縦断面図(A)と、ピアスパンチ3が下に突出させられて使用可能状態の縦断面図(B)と、動作不具合状態を示す説明図(C)である。
【
図6】同従来例におけるピアスリング9の縦断面図(A)と正面図(B)とである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るピアスセレクタ1は、
図1(A),(B)に示すように、ピアスパンチの加工方向への移動突出を確実にすることと、スライドプレートがピアスパンチの頭部上端面に直接当接しないように、ピアスリングにピアスパンチの頭部を覆う天板部を設けるものである。
【実施例1】
【0010】
本発明の第1実施例は、
図1(A),(B)に示すように、プレス金型に取り付け、或いは、カム装置の工具取付面に固定されるパンチ切換装置であるピアスセレクタ1が在り、その構成は、鋼製のケーシング2と、該ケーシング2のピアス加工方向貫通孔2aに摺動自在に支持されて被加工物に下端先端部3aで孔を開けるピアスパンチ3とがある。
【0011】
前記ピアスパンチ3の上部に設けられフランジを有するピアス頭部3bに嵌装され当該ピアスパンチ3の加工方向への移動を伝達するピアスリング4と、該ピアスリング4の下部に一端側アーム端部5aで係合して当該ピアスリング4及びピアスパンチ3を強制的に押し上げるとともに前記ピアスリング4及びピアスパンチ3が加工方向に移動する際には前記ピアスリング4との係合を解除して退避する揺動自在なレバー5が在る。尚、このレバー5は、ピアスパンチ3を非加工方向に移動させる付勢手段としての一例であり、その他の付勢手段、例えば、コイルスプリング,皿バネ等の金属製、若しくは、ウレタン樹脂等の合成樹脂製の、同様の作用・効果を奏する公知の付勢手段であってもよい。
【0012】
前記レバー5の一部である他端側アーム端部5bに係合してこのレバー5を中央基部5cを中心に揺動させると共に先端部のテーパ部6aで前記ピアスリング4及びピアスパンチ3の上部に水平方向から進出して該ピアスリング4及びピアスパンチ3を強制的に加工方向に移動させるスライドプレート6と、該スライドプレート6を水平方向に進退させる駆動装置(エアシリンダーなど)7とからなるピアスセレクタ1である。
【0013】
前記ピアスリング4は、ピアスパンチ3の頭部3bを覆う天板部4aが設けられ、前記スライドプレート6が駆動装置7によって摺動してピアスリング4及びピアスパンチ3の上位置に進出したときに、該スライドプレート6の下面6bが前記天板部4aの上面に摺接して、前記ピアスパンチ3の頭部3bには前記スライドプレート6が直接的に摺接したり、当接したり若しくは衝突したりしないようにしている。
【0014】
前記ピアスリング4は、
図2(A)〜(E)に示すように、鋼製であって全体が横から見てコ字型で、正面からみると、中間部4bが空間となっており、下部側には、ピアスパンチ3を差入れ込むスリット4cが設けられ、前記天板部4aの左右方向の片側端部にテーパ部4dが設けられ、前記スライドプレート6の先端部6aが当接してピアスリング4を直交方向に移動させるガイドとなっている。尚、この天板部4aは、この実施例では全面を板状にしているが、これに限らず、天板部4aの一部に孔やスリットなどがあってピアスパンチ3の頭部3bを全面的に覆っていなくても、前記ピアスパンチ3の頭部3bにスライドプレート6が直接的に摺接したり、当接したり若しくは衝突したりしないようにして、上記実施例1と同様の効果を奏するものであれば良い。
【0015】
前記天板部4aと下部側とを連結している連結部4eの内側面には、ピアスパンチ3の回止めとなる平坦状壁面部4fが設けられている。
図3に示すように、ピアスパンチ3をスリット4cから頭部3bを差込み、ピアスパンチ3側の平坦状壁面部3cと前記ピアスリング側の平坦状壁面部4fとを合わせて当接させることで、ピアスリング4に対してピアスパンチ3が回転しないようになる。
【0016】
このように、ピアスリング4とピアスパンチ3とは、ピアスパンチ3がそれ自身の長手方向の軸芯回りに回転しないように、ピアスパンチの頭部3bにおける円形の外周部の一部とピアスリング4の内側壁面の一部とに、互いに当接する回止め用の平坦状壁面部3c、4fが設けられている。
【0017】
尚、前記ピアスリング4は、バッキングプレート8を取り除いて示す平面図の
図4に示すように、当該ピアスリング4の左右方向における平坦状壁面4gがケーシング2のピアスリング用嵌合孔の左右平坦状壁面2b,2cと摺接しているので、上下方向の軸芯回りに回転することがない。
【0018】
このようにしてなるピアスセレクタ1は、
図1(A),(B)に示すように、孔明け作用をさせる場合には、駆動装置7を駆動させてロッド7aを前方向に進出させる。これにより、スライドプレート6が前方向に進出すると共に、レバー5も揺動され、その一端側アーム端部5aが中央基部5cを中心にして反時計方向に回転する。
【0019】
前記スライドプレート6の先端部のテーパ部6aが、ピアスリング4の天板部4aのテーパ部4dに当接して当該ピアスリング4を下に下降させる。このピアスリング4の下降に伴いピアスパンチ3も下降して突出し、孔明け可能な状態となる。このピアスパンチ3の頭部3bは、前記スライドプレート6と当接することがない。また、前記天板部4aによってピアスパンチ3が加工方向に強制的に突出されるので、動作不具合が生じないものである。
【0020】
また、ピアスパンチ3の回り止めが設けられていることで、孔明け工程時、若しくは、孔明け待機工程時において、振動などにより軸芯回りに回転するということが無く、安定した孔明け作業が期待できる。こうして、プレス金型へ取り付けられた或いはカム装置の工具取付面に固定されたピアスセレクタ1が
図1(B)に示す孔明け可能状態となったので、上型を上下移動させて或いはカム装置のカムスライダを所定の加工方向に摺動させて被加工物に孔加工するものである。又、孔加工不要状態にするのであれば、駆動装置7によってロッド7aを後退させて、ピアスパンチ3を強制的に持ち上げておくものである。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係るピアスセレクタ1は、ワークを加工する各種の工具にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0022】
1 ピアスセレクタ、
2 ケーシング、 2a ピアス加工方向貫通孔、
3 ピアスパンチ、 3a 下部先端部、
3b 頭部、
4 ピアスリング、 4a 天板部、
4b 中間部、 4d テーパ部、
4e 連結部、 4f 平坦状壁面、
4g 平坦状壁面、
5 レバー、 5a 一端側アーム端部、
5b 他端側アーム端部、 5c 中央基部、
6 スライドプレート、 6a テーパ部、
6b 下面、
7 駆動装置、 7a ロッド、
8 バッキングプレート、
9 従来のピアスリング、
10 従来のピアスセレクタ。