(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669475
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】過電圧保護素子
(51)【国際特許分類】
H01H 37/76 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
H01H37/76 G
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-176245(P2010-176245)
(22)【出願日】2010年8月5日
(65)【公開番号】特開2011-34973(P2011-34973A)
(43)【公開日】2011年2月17日
【審査請求日】2013年7月11日
(31)【優先権主張番号】10 2009 036 125.1
(32)【優先日】2009年8月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594070612
【氏名又は名称】フェニックス コンタクト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Phoenix Contact GmbH & Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン デピング
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル テクト
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム ヴォスギエン
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム フィリップ
【審査官】
出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−098590(JP,U)
【文献】
実開昭59−162795(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)、前記ハウジング(2)内に配置された過電圧を制限する少なくとも1つの構成素子(3)、過電圧保護素子(1)を保護すべき電流路または信号路に電気的に接続するための2つの接続コンタクト(4,5)、導電性の連結エレメント(6)、および前記連結エレメント(6)に作用するバネ系(7)を備えた過電圧保護素子であって、
第1の接続コンタクト(4)が過電圧を制限する前記構成素子(3)の第1の極に直に導電性接触しており、
前記過電圧保護素子(1)の正常状態では、前記連結エレメント(6)は熱によって解除される接続を介して第2の接続コンタクト(5)および過電圧を制限する前記構成素子(3)の第2の極に導電性接触しており、過電圧を制限する前記構成素子(3)の温度が所定の限界温度を超えると、前記接続が解除され、
熱によって前記接続が解除されると、前記連結エレメント(6)は前記バネ系(7)の力によってコンタクト位置から動かされ、前記第2の接続コンタクト(5)および過電圧を制限する前記構成素子(3)の第2の極にもはや導電性接触しない形式の過電圧保護素子において、
前記導電性連結エレメント(6)は、絶縁性分離エレメント(10)と固定的に接続されており、前記導電性連結エレメント(6)および前記絶縁性分離エレメント(10)は1つの共通した構成部材を形成し、
熱によって前記接続が解除されると、前記絶縁性分離エレメント(10)が前記第2の接続コンタクト(5)と過電圧を制限する前記構成素子(3)の第2の極との間へと動く、
ことを特徴とする過電圧保護素子。
【請求項2】
前記導電性連結エレメント(6)が前記絶縁性分離エレメント(10)内に配置された少なくとも1つの金属部材によって形成されている、
請求項1記載の過電圧保護素子。
【請求項3】
前記絶縁性分離エレメント(10)が剛性の高い絶縁プレートによって形成されている、
請求項1または2記載の過電圧保護素子。
【請求項4】
前記第2の接続コンタクト(5)に剛性の高い金属製の接続エレメント(11)が固定的に接続されており、
前記過電圧保護素子(1)の正常状態では、前記連結エレメント(6)と前記金属製接続エレメント(11)との間、および、前記連結エレメント(6)と過電圧を制限する前記構成素子(3)の第2の極との間にそれぞれ熱によって解除される接続が形成されている、
請求項1から3のいずれか1項記載の過電圧保護素子。
【請求項5】
前記ハウジング(2)の中にリリーススライダ(12)が可動に配置されており、
前記リリーススライダ(12)は、前記絶縁性分離エレメント(10)と接続されており、熱によって前記接続が解除されたときに、前記リリーススライダ(12)が前記バネ系(7)の力によって第1の位置から第2の位置へと動かされるように前記バネ系(7)に接触しており、
前記リリーススライダ(12)の第1の位置では、前記第2の接続コンタクト(5)と過電圧を制限する前記構成素子(3)の第2の極との間に前記導電性連結エレメント(6)が配置されており、
前記リリーススライダ(12)の第2の位置では、前記第2の接続コンタクト(5)と過電圧を制限する前記構成素子(3)の第2の極との間に前記絶縁性分離エレメント(10)が配置されている、
請求項1から4のいずれか1項記載の過電圧保護素子。
【請求項6】
前記リリーススライダ(12)に、前記絶縁性分離エレメント(10)の一部を受け入れる少なくとも1つの運搬フック(13)が配置されている、
請求項5記載の過電圧保護素子。
【請求項7】
前記リリーススライダ(12)に孔(14)が形成されており、
前記孔(14)の中には遠隔通信コンタクトを操作するリリースピン(15)が配置されており、
前記リリースピン(15)は、前記ハウジング(2)の下面(17)の開口部から突き出ている、
請求項5または6記載の過電圧保護素子。
【請求項8】
前記リリースピン(15)は、フランジ(18)を有しており、
前記バネ系(7)は、前記リリースピン(15)に配置された2つのコイルスプリング(19)から成っており、
一方のコイルスプリング(19)は、一方では前記ハウジング(2)に、他方では前記リリースピン(15)の前記フランジ(18)に接触しており、
他方のコイルスプリング(19)は、一方では前記フランジ(18)に、他方では前記リリーススライダ(12)に接触している、
請求項7記載の過電圧保護素子。
【請求項9】
光学的な状態指示子が設けられており、前記ハウジング(2)に覗き窓(21)が形成されている、
請求項1から8のいずれか1項記載の過電圧保護素子。
【請求項10】
前記リリーススライダ(12)は、色付き指示面(22)を有しており、
前記リリーススライダ(12)の位置に依存して、前記指示面(22)または前記指示面(22)の所定の領域が、前記ハウジング(2)の前記覗き窓(21)の下方に配置されている、
請求項5から8のいずれか1項を引用する請求項9記載の過電圧保護素子。
【請求項11】
過電圧を制限する前記構成素子(3)は、内部ハウジング(23)によって少なくとも部分的に包囲されており、
前記内部ハウジング(23)は、前記ハウジング(2)の前記覗き窓(21)の下方に配置された少なくとも1つの領域(24)内では色付きに形成されており、
前記リリーススライダ(12)の前記色付き指示面(22)は、可撓的に形成されており、前記リリーススライダ(12)の第2の位置では前記内部ハウジング(23)の前記色付き領域(24)を覆う、
請求項10記載の過電圧保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングと、該ハウジング内に配置された少なくとも1つの、過電圧を制限する構成素子、例えばバリスタと、過電圧保護素子を保護すべき電流路または信号路に電気的に接続する2つの接続コンタクトと、導電性の連結エレメントと、該連結エレメントに作用するバネ系とを備えた過電圧保護素子に関する。なおここで、第1の接続コンタクトは過電圧を制限する構成素子の第1の極と導電性接触しており、過電圧保護素子が正常状態のとき、連結エレメントは熱によって解除される接続を介して第2の接続コンタクトと過電圧を制限する構成素子の第2の極とも導電性接触しており、過電圧を制限する構成素子の温度が所定の限界温度を超えると熱によって接続が解除され、熱によって接続が解除されると、連結エレメントは第2の接続コンタクトおよび過電圧を制限する構成素子の第2の極ともはや導電性接触しないようにバネ系の力によってコンタクト位置から動かされる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1からは、バリスタの状態を監視するために熱分離装置を有する過電圧保護素子が公知である。この過電圧保護素子では、第1の接続エレメントは可撓性のある導体によって剛性の高い分離エレメントと接続されており、分離エレメントの可撓性導体とは反対側の端部ははんだ点を介してバリスタに設けられた接続ラグに接続されている。他方の接続エレメントは可撓性導体を介してバリスタまたはバリスタの接続ラグに固定的に接続されている。分離エレメントにはバネ系によって力が印加される。印加された力は、はんだ接続が解除されると、分離エレメントを接続ラグから直線的に離すので、過剰な熱負荷でバリスタは電気的に切り離される。はんだ接続が解除されると、同時にバネ系を介して遠隔通信コンタクトが操作されるので、過電圧保護素子の状態を遠隔監視することができる。バリスタを接続するために可撓性導体を使用すると、過電圧保護素子が排出しうる最大許容パルス電流の大きさが制限されてしまう。
【0003】
特許文献2からも過電圧保護素子が公知である。この過電圧保護素子では、温度スイッチの原理に従ってバリスタの状態の監視が行われる。したがって、バリスタの過熱時には、バリスタと分離エレメントとの間のはんだ接続が解除され、バリスタが電気的に切り離される。さらに、はんだ接続が解除されると、プラスチックエレメントがバネの戻り力によって第1の位置から第2の位置へずらされる。この第2の位置では、弾性のある金属舌片として形成された分離エレメントがプラスチックエレメントによって熱的および電気的にバリスタから分離されているので、金属舌片とバリスタの接触点との間に時に生じるアークが消弧される。プラスチックエレメントは並列して配置された2つの色付きマークを有しているため、光学的な状態指示子としても機能するので、過電圧保護素子の状態は直接その場で読み取ることができる。
【0004】
特許文献3には2つのバリスタを備えた過電圧保護素子が開示されている。この2つのバリスタは2つの分離手段を有しており、これらの分離手段はそれぞれの寿命の終わりにバリスタを個別に切り離すことができる。分離手段は弾性のあるそれぞれ1つの分離舌片を有している。なお、分離舌片の第1の端部は第1の接続部に固定的に接続されており、分離舌片の第2の端部は過電圧保護素子の正常状態でははんだ点を介して接続舌片によってバリスタに固定されている。バリスタが許容されないほど過熱すると、はんだ接続は融解する。分離舌片ははんだ付けされた状態(過電圧保護素子の正常状態)では静止位置から偏っており、予荷重がかかっているので、分離舌片の自由端ははんだ接続が軟化するとバリスタの接続舌片から離れ、それによってバリスタが電気的に切り離される。必要とされる耐絶縁性と耐電流漏洩性を保証し、切離箇所が開いたときに生じるアークを消弧するためには、分離舌片がはずれるときに分離舌片の第2の端部と過電圧を制限する構成素子の接続舌片との間の距離をできるだけ大きくすることが必要である。さらに、分離舌片が十分なバネ性を有するためには、分離舌片の断面が大きすぎてはならない。しかし、そうすると、最大許容パルス電流が同様に制限されてしまう。
【0005】
特許文献4からは、冒頭で述べた過電圧保護素子が公知である。この過電圧保護素子では、バネ荷重された剛性の高い金属スライダの一方の端部が、過電圧保護素子の正常状態では第1の接続エレメントとバリスタに接続された接続ラグとにはんだ付けされている。この過電圧保護素子でも、バリスタが許容されないほど過熱すると、はんだ点が加熱されるので、スライダはスライダにかかるバネの力のために第1の接続エレメントと接続ラグとの間の接続位置から動かされ、その結果、バリスタが電気的に切り離される。切離箇所が開いたときに生じるアークを消弧するために、第1の接続エレメントとバリスタに接続された接続ラグとの間には空隙だけがあるので、過電圧保護素子はアークを確実かつ迅速に消弧できるように比較的大きな寸法を有していなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE 42 41 311 C2
【特許文献2】DE 20 2004 006 227 U1
【特許文献3】DE 695 03 743 T2
【特許文献4】DE 699 04 274 T2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
公知の過電圧保護素子はふつう装置下部とともに過電圧保護装置を形成する「保護コネクタ」として形成されている。この種の過電圧保護装置は、例えば進相導体L1,L2,L3および中性導体、場合によっては接地導体PEも保護しなければならないので、この種の過電圧保護装置を取り付けるために、公知の過電圧保護装置では、個々の導体のための相応の接続ラグが装置下部に設けられている。装置下部とそれぞれの過電圧保護素子との簡単な機械的および電気的接触のために、過電圧保護装置素子では接続コンタクトはコネクタピンとして形成されており、このコネクタピンに対して、装置下部において接続ラグに接続された対応するジャックが割り当てられているので、過電圧保護素子は簡単に装置下部に取り付けることが可能である。
【0008】
この種の過電圧保護装置では、過電圧保護素子が差し込み可能であることによって設置および取付が非常に簡単かつ時間がかからずに実行できる。その上、この種の過電圧保護装置は部分的にさらに、少なくとも1つの過電圧保護素子の状態を遠隔通信するためのシグナルトランスミッタとして切換接点を、また個々の過電圧保護素子内に光学的状態指示子を有している。状態指示子は、過電圧保護素子内に配置された過電圧制限素子がまだ機能しているか否かを示す。ここで、過電圧制限素子としては、とりわけバリスタが使用される。しかし、過電圧保護素子の使用目的に応じて、ガス充填型サージ保護器、スパークギャップまたはダイオードを使用してもよい。
【0009】
前に説明した、公知の過電圧保護素子で使用されている、はんだ接続の融解に基づいた熱分離装置は複数の課題を満たさなければならない。過電圧保護素子の正常状態、すなわち、切り離されていない状態では、第1の接続エレメントと過電圧を制限する構成素子との間に確実で良好な電気的接続が保証されていなければならない。所定の限界温度を超えたら、切離箇所によって過電圧制限素子の確実な切り離しと持続的な耐絶縁性および耐電流漏洩性が保証されなければならない。さらに、過電圧保護装置がDINレール装置のために定められた寸法を超えないように過電圧保護素子ができるだけ小さな寸法を有していなければならない場合、公知の過電圧保護装置は低電力クラスおよび中電力クラスでしか使用できない、すなわち、65kA未満のパルス電流しか使用できない。
【0010】
したがって、本発明の課題は冒頭で述べた形式の過電圧保護素子において上に挙げた欠点を解消することである。その際、正常状態における確実で良好な電気的接続も、故障した過電圧制限素子の確実な切り離しも保証されなければならない。さらに、過電圧保護素子によってできるだけ大きなパルス電流を排出することができるように、過電圧保護素子のサイズをできるだけ小さくした場合でも、できるだけ高い耐絶縁性と耐電流漏洩性が達成されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、本願発明に従い、ハウジング、該ハウジング内に配置された、とりわけバリスタである、過電圧を制限する少なくとも1つの構成素子、過電圧保護素子を保護すべき電流路または信号路に電気的に接続するための2つの接続コンタクト、導電性の連結エレメント、および該連結エレメントに作用するバネ系を備えた、過電圧保護素子であって、第1の接続コンタクトが過電圧を制限する前記構成素子の第1の極と直に導電性接触しており、前記過電圧保護素子の正常状態では、前記連結エレメントは熱によって解除される接続を介して第2の接続コンタクトおよび過電圧を制限する前記構成素子の第2の極と導電性接触しており、過電圧を制限する前記構成素子の温度が所定の限界温度を超えると、前記接続が解除され、熱によって前記接続が解除されると、前記連結エレメントは前記バネ系の力によってコンタクト位置から動かされ、前記第2の接続コンタクトおよび過電圧を制限する前記構成素子の第2の極ともはや導電性接触しない形式の、過電圧保護素子において、熱によって前記接続が解除されると、絶縁性分離エレメントが前記第2の接続コンタクトと過電圧を制限する前記構成素子の第2の極との間へと動かされるように、前記導電性連結エレメントが前記絶縁性分離エレメントと接続されているように構成することにより解決される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】過電圧保護素子の1つの実施例の断面図である。
【
図2】外部ハウジングなしの、
図1による過電圧保護素子の分解図である。
【
図3】外部ハウジングを取り去った、正常状態における過電圧保護素子の一部の断面図である。
【
図4】電気的に切り離されたバリスタを有する、
図3による過電圧保護素子の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
正常状態のときには第2の接続コンタクトと過電圧制限素子の第2の極との間に配置されており、これら両方に導電接続されている導電性接続エレメントが、熱によって接続が解除されると第2の接続コンタクトと過電圧制限素子の第2の極との間に配置される絶縁性分離エレメントと接続されていることによって、切離箇所が開いたときに、切離箇所に入り込む絶縁性分離エレメントによって、時に生じるアークが確実に消弧される。過電圧保護素子の故障時には、はんだ接続が解除された後に導電性の連結エレメントがバネ系の力によって第2の接続コンタクトと過電圧制限素子の第2の極の間の間隙から動かされ、絶縁性分離エレメントが間隙に入り込む。
【0014】
基本的に、導電性の連結エレメントと絶縁性分離エレメントをどのように形成し、相互に接続しうるかについては様々な可能性が存在する。絶縁性分離エレメントは、例えば絶縁材料からなるプリント基板で、表面が両面とも導電性である領域を有するプリント基板から形成されていてよい。なお、導電性表面は貫通コンタクトによって相互に電気的に接続されている。しかし、分離エレメントは、連結エレメントの領域以外では絶縁されている導電性材料、例えば絶縁被覆または絶縁カバーを有する導電性材料からなっていてもよい。
【0015】
本発明の好適な実施形態によれば、絶縁性分離エレメントは剛性の高い絶縁板によって、導電性連結エレメントは少なくとも1つの金属部材によって形成される。なお、金属部材は有利には絶縁板に形成された開口部内に圧入されている。絶縁性分離エレメントと導電性連結エレメントは互いに固定的に接続されており、1つの共通した構成部材を形成している。これにより、一方では過電圧保護素子の取り付けが容易になり、他方では導電性連結エレメントと絶縁性分離エレメントがつねに一緒に動かされることが保証される。
【0016】
本発明の別の有利な実施形態によれば、第2の接続コンタクトは剛性の高い金属製の接続エレメントと固定的に接続されており、過電圧保護素子の正常状態では、剛性の高い前記金属製接続エレメントの、第2の接続コンタクトとの反対側の端部は、熱によって解除される接続を介して、すなわち、はんだ接続を介して、導電性連結エレメントの一方の側面に接続されている。剛性の高い前記金属製接続エレメントの寸法は、非常に振幅の大きなパルス電流も問題なく伝送できるように大きさとしてよい。過電圧保護素子の正常状態では、過電圧を制限する構成素子の第2の極またはこの極に接続された接続ラグが接続エレメントの一方の側面に、剛性の高い金属製接続エレメントが連結エレメントの他方の側面にはんだ付けされているので、第2の接続コンタクトは金属製接続エレメントと連結エレメントを介して過電圧を制限する構成素子の第2の極または第2の極の接続ラグと導電接続されている。
【0017】
まず、熱によって接続が解除されると、すなわち、はんだ接続が解除されると、連結エレメントがバネ系の力によってコンタクト位置から動かされる。基本的に、これは連結エレメントとハウジングの間に直にバネを配置することによって実現できる。こうすることで、連結エレメントははんだ接続が解除されたときに直接バネによってコンタクト位置から引き出される、または押し出される。もちろん、バネを連結エレメントにではなく、(連結エレメントに固定的に接続された)絶縁性分離エレメントに接触させることも可能である。
【0018】
本発明の好適な実施形態によれば、ハウジングの中にリリーススライダが可動に配置されており、熱によって接続が解除されたときにリリーススライダがバネ系の力によって第1の位置から第2の位置へ動かされるように、リリーススライダにバネ系が接触している。リリーススライダはさらに、第2の接続コンタクトと過電圧制限素子の第2の極または接続ラグとの間でリリーススライダの第1の位置に導電性連結エレメントが、リリーススライダの第2の位置に絶縁性分離エレメントが配置されるように、絶縁性分離エレメントまたは連結エレメントに接続されている。したがって、リリーススライダは第2の接続コンタクトまたは第2の接続コンタクトに接続された高剛性の金属製接続エレメントと第2の極または第2の極に接続された接続ラグとの間の間隙から導電性連結エレメントを動かすために使用される。導電性連結エレメントは絶縁性分離エレメントと固定的に接続されているので、分離エレメントも同時に間隙内を動く。
【0019】
リリーススライダの実施形態と、リリーススライダが連結エレメントまたは分離エレメントに接触しているか否かとに応じて、導電性連結エレメントは間隙から押し出される、または引き出される。好適な実施形態によれば、リリーススライダには絶縁性分離エレメントの一部を受け入れる少なくとも1つの運搬フックが配置されている。絶縁性分離エレメントは、有利にはその下端で、運搬フックによって持ち上げられるので、絶縁性分離エレメントは、ひいては導電性連結エレメントも、リリーススライダが第1の位置から第2の位置へ動くと、上に動かされる。これにより、連結エレメントは間隙から押し出され、絶縁性分離エレメントが間隙の中へ移動する。
【0020】
それゆえ、本発明による過電圧保護素子では、連結エレメントが可動に配置された唯一の導電素子である。これに対して、金属製接続エレメントは接続コンタクトと同様に高い剛性を有するように形成されているので、両方のエレメントは相応して頑丈に形成することができ、大きなパルス電流を確実に伝送することができるように相応して大きな断面を有することができる。可動の供給ラインが設けられていないことで、非常に高いサージ電流および短絡電流容量が保証される。
【0021】
本発明による過電圧保護素子は有利には「保護コネクタ」として形成されており、対応する装置下部とともに過電圧装置を形成している。装置下部は有利には過電圧保護素子の状態を遠隔通信するために遠隔通信コンタクトを有している。装置下部の遠隔通信コンタクトに属するスイッチを操作するために、過電圧保護素子内にはハウジングの下面の開口部を通って突き出るリリースピンが設けられている。ここで、リリースピンは好ましくはリリーススライダと接続されているので、リリーススライダの第1の位置から第2の位置への動きによってリリースピンも同時に動かされる、すなわち、持ち上げられる。このために、リリーススライダには矢筒状の孔が形成されており、この孔の中にリリースピンが配置されている。
【0022】
別の好適な実施形態によれば、リリースピンは同時に、リリースピンと一緒にバネ系を形成する2つのコイルスプリングを固定またはガイドするためにも使用される。2つのコイルスプリングは中央部にフランジを有するリリースピン上に配置されているので、一方のコイルスプリングは一方ではハウジングに、他方ではリリースピンに接触しており、他方のコイルスプリングは一方ではフランジに、他方ではリリーススライダに接触している。この種の2つのコイルスプリングを有するバネ系の利点については、DE 42 41 311 C2とそこに図示および説明されているバネ系を参照されたい。
【0023】
ここではまだ手短に説明するだけであるが、本発明による過電圧保護素子の最後の有利な実施形態によれば、過電圧保護素子内に配置された過電圧制限素子がまだ機能しているか否かを示す光学的な状態指示子が設けられている。このために、リリーススライダに好ましくは色付き指示面が形成されている。指示面または指示面の所定の領域は、リリーススライダの位置に依存して、ハウジング内に形成された覗き窓の下に配置されている。覗き窓は好ましくはハウジングの上面に形成されていてもよい。そうすれば、過電圧保護装置がDINレールにはめられている場合でも状態指示子を容易に読み取ることが可能である。
【0024】
個々には、本発明による過電圧保護素子は様々な仕方で実施および改良することができる。これについては、請求項1に従属する請求項と、以下の好適な実施例の説明を図面とともに参照されたい。
【実施例】
【0025】
図には、ハウジング2を有する過電圧保護素子1が記載されており、ハウジング2の中に過電圧制限素子3が配置されている。図示されている実施例において、過電圧制限素子はバリスタ3である。あるいは、このために例えば二重バリスタまたはガス充填型サージ保護器を過電圧制限素子3として使用してもよい。保護コネクタとして形成された過電圧保護素子1はブレードコンタクトとして形成された2つの接続コンタクト4,5を有しており、これら2つの接続コンタクト4,5は、ここには図示されていない装置下部の対応するジャックに差込可能である。
【0026】
特に
図2の分解図から分かるように、過電圧保護素子1はその他に導電性連結エレメント6とバネ系7を有している。バリスタ3の2つの極はそれぞれ接続ラグ8,9に接続されており、過電圧保護素子1の正常状態では、バリスタ3は2つの接続ラグ8,9を介して2つの接続コンタクト4,5に接続されている。第1の接続コンタクト4は直接(有利には一体的に)過電圧制限素子3の第1の極の接続ラグ8と接続されている。
【0027】
本発明によれば、導電性連結エレメント6は絶縁性分離エレメント10と固定的に接続されている。図示されている実施例では、連結エレメント6は金属部材によって、絶縁性分離エレメント10は開口部を有する高剛性絶縁プレートによって形成され、この開口部に金属部材が圧入されている。さらに、
図2から分かるように、第2の接続コンタクト5はここでは接続アングルブラケットとして形成されている高剛性の金属製接続エレメント11に固定的に接続されている。この高剛性金属製接続エレメント11の寸法は、65kAよりも大きなパルス電流を伝えることができるように為されている。
【0028】
過電圧保護素子の正常状態では、連結エレメント6は一方ではバリスタ3の第2の極の接続ラグ9に、他方では高剛性接続エレメント11の、第2の接続コンタクト5とは反対側の端部にはんだ付けされているので、第2の接続コンタクト5ははんだ接続が存続している間は接続エレメント11、連結エレメント6および接続ラグ9を介してバリスタ3の第2の極に接続されている。この導電性の機械的部材の頑丈な設計のおかげで、すでに述べたように、大きなパルス電流も確実に伝送し、排出することができる。
【0029】
バリスタ3の故障のために、連結エレメント6と接続ラグ9の間ならびに連結エレメント6と接続エレメント11の間のはんだ接続の融解が生じた場合、連結エレメント6はバネ系7の力によってコンタクト位置から上へと動かされ、同時に絶縁性分離エレメント10は接続ラグ9と高剛性接続エレメント11の間の間隙に入り込む。切離箇所が開いたときに発生するアークは切離箇所に進入する絶縁性分離エレメントによって直接消弧されるので、第2の極の接続ラグ9と関連する接続コンタクト5または接続エレメント11との間の距離を大きくしなくても、高い耐絶縁性と耐電流漏洩性ならびにアークの迅速な消弧が保証される。それゆえ、過電圧保護素子1は比較的小さな許容差を有することができ、DINレールにはめられた装置下部のコネクタ部材として適している。接続エレメント11ではなく、連結エレメント6だけが動かされるので、接続アングルブラケットとして形成された接続エレメント11は相応して頑丈に、十分に大きな断面を有するように形成することができる。
【0030】
さらに、特に
図2の分解図から、過電圧保護素子1がさらに有利にはプラスチックで製造されたリリーススライダ12を有していることが分かる。リリーススライダ12の下部には、分離エレメント10の下面を引っ掛ける2つの運搬フック13がある。さらに、リリーススライダ12には片側が閉じた孔14が形成されており、この孔14の中にリリースピン15が収納されている。リリースピン15の下端16はハウジング2の下面17に配置された開口部から突き出ているので、リリースピン15によって、ここでは図示されていない装置下部に配置された遠隔通信コンタクトのスイッチを操作することができる。
【0031】
リリースピン15の真ん中部分には環状のフランジ18があり、このフランジ18のおもて面はそれぞれリリースピン15にはめたコイルスプリング19に接している。2つのコイルスプリング19は装着した状態では荷重がかかっているので、下側のコイルスプリング19は一方ではハウジング2に、他方ではフランジ18の下側のおもて面に接触しており、上側のコイルスプリング19は一方ではフランジ18の上側のおもて面に、他方では矢筒のように機能する片側が閉じた、リリーススライダ12の孔14に接触している。コイルスプリング19のバネ力はリリーススライダ12とその運搬フック13を介して絶縁性分離エレメント10に、したがってまた一方では連結エレメント6と接続ラグ9の間の、他方では連結エレメント6と接続エレメント11の間のはんだ点に作用する。
【0032】
時間が経つにつれて過負荷または経年劣化によってバリスタ3を介して漏れ電流が持続的に流れると、バリスタ3が加熱される。そして、はんだの融解温度に達すると、はんだ接続が解除される。なぜならば、はんだ点が2つのコイルスプリング19のバネ力に対抗するのに必要な力をもはや提供することができないからである。すると、リリーススライダ12が下側の第1の位置(
図3)から上側の第2の位置(
図4)へと移動する。その際、分離エレメント10に掛けられた運搬フック13によって絶縁プレートも上に向かって動かされるので、連結エレメント6として使用される金属部材は接続ラグ9と接続エレメント11の間の間隙から押し出され、絶縁性分離エレメント10が間隙に押し込まれる。間隙に入り込む分離エレメント10がバリスタ3の第2の極と第2の接続コンタクト5の間の電気的接続を遮断するので、バリスタ3は電気的に切り離される。同時に、発生したスイッチングアークも間隙に入り込む分離エレメント10によって遮られ、消弧される。
【0033】
バリスタ3または過電圧保護素子1の状態を示すために、ハウジング2の上面20に形成された覗き窓21を通して認識可能な光学的状態指示子が設けられている。この光学的状態指示子は、図示された実施例では、リリーススライダ12が可撓性のある色付き指示面22を有し、この指示面22がリリーススライダ12の上側の第2の位置で過電圧保護素子1の内部ハウジング23に形成された違う色の領域24を覆うことによって形成される。覗き窓21の下にある、内部ハウジング23の領域24は例えば緑色で着色されているので、この緑色領域24はリリーススライダ12(
図3)の上側の第1の位置でハウジング2の上面20の覗き窓21を通して見ることができる。はんだ接続が解除され、リリーススライダ12が上側の第2の位置に移動したことによってバリスタ3が故障した場合、可撓性のある指示面22が内部ハウジングの色付き領域24を覆うので、今やハウジング2の覗き窓21を通してリリーススライダ12の指示面22を見ることができる。この指示面22が例えば赤で着色されていれば、バリスタ3がまだ機能しているか(緑色の状態が示す)、または故障していて電気的に切り離されているのかを、覗き窓21を通して迅速かつ簡単に識別することができる。
【0034】
以上に説明した光学的状態指示子の実施形態の代わりに、指示面22を2色(緑色領域および赤色領域)に形成してもよい。その場合、リリーススライダ12の位置に応じて、指示面22の一方の領域を覗き窓21を通して見ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 過電圧保護素子
2 ハウジング
3 過電圧を制限する構成素子
4 接続コンタクト
5 接続コンタクト
6 連結エレメント
7 バネ系
8 接続ラグ
9 接続ラグ
10 絶縁性分離エレメント
11 金属製接続エレメント
12 リリーススライダ
13 運搬フック
14 孔
15 リリースピン
16 リリースピンの下端
17 ハウジングの下面
18 フランジ
19 コイルスプリング
20 ハウジングの上面
21 覗き窓
22 指示面
23 内部ハウジング
24 内部ハウジングの色付き領域