(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669495
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】樹脂封止金属部品、それに用いるリードフレーム、及び金属部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20150122BHJP
H01M 2/04 20060101ALI20150122BHJP
H01M 2/06 20060101ALI20150122BHJP
H01M 2/26 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
H01L23/50 K
H01M2/04 F
H01M2/06 F
H01M2/26 A
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-209730(P2010-209730)
(22)【出願日】2010年9月17日
(65)【公開番号】特開2012-64880(P2012-64880A)
(43)【公開日】2012年3月29日
【審査請求日】2013年9月13日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、経済産業省、戦略的基盤技術高度化支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504258664
【氏名又は名称】株式会社大貫工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大貫 英仁
(72)【発明者】
【氏名】上嶋 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】御田 護
【審査官】
小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−098500(JP,A)
【文献】
特開2002−083917(JP,A)
【文献】
特開昭58−199547(JP,A)
【文献】
特開2009−076385(JP,A)
【文献】
特開平07−273270(JP,A)
【文献】
特開2007−258587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/50
H01M 2/04
H01M 2/06
H01M 2/26
B21D 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス加工された金属部品と、前記金属部品を封止する封止樹脂とを有する樹脂封止金属部品において、
前記金属部品の少なくとも一部で前記封止樹脂が密着する被封止部にプレス加工の粗面が形成され、
このプレス加工粗面は、微細な凹凸を繰り返す第1の凹凸面と、さらにこの第1の凹凸面上に形成される該第1の凹凸面より微細な凹凸よりなる第2の凹凸面とにより構成されていることを特徴とする樹脂封止金属部品。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂封止金属部品において、
前記金属部品がリードフレームであり、
前記プレス加工粗面は、リードフレームの表裏両面の一部で且つ少なくとも他の部品との接続部を除いて前記被封止部となる部位に形成され、
かつ前記リードフレームにおける前記被封止部における板厚側面には、微細な溝列のプレス抜き加工面が形成されている樹脂封止金属部品。
【請求項3】
請求項2記載の樹脂封止金属部品において、前記板厚側面の前記プレス抜き加工面には、このプレス抜き加工面の前記微細な溝列よりも微細な凹凸面がプレス加工されている樹脂封止金属部品。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の樹脂封止金属部品において、
前記第1の凹凸面は、山と谷が連続的或いは断続的に繰り返す凸凹面により構成されている樹脂封止金属部品。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の樹脂封止金属部品において、前記第1の凹凸面は、多数の微細突起の集合により構成されている樹脂封止金属部品。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項記載の樹脂封止金属部品において、
前記封止樹脂がモールド樹脂或いは接着剤よりなる樹脂封止金属部品。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項記載の樹脂封止金属部品において、
前記樹脂封止金属部品は、半導体電子部品をモールド樹脂により封止する半導体パッケージに用いるリードフレームであって、リードフレームの一端が前記半導体電子部品とワイヤボンディングを介して接続され、他端がモールド樹脂外部に引き出され、且つリードフレームの一部に設けた前記プレス加工粗面に前記モールド樹脂が密着している樹脂封止金属部品。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1項記載の樹脂封止金属部品において、
前記樹脂封止金属部品は、正極、負極、電解質、セパレータを実装する電池の前記正極と正極端子とを接続するリードフレームと、電池の電極アッセンブリを収容するケースを閉じるキャップであって、前記リードフレームが前記キャップに設けた通孔を通して前記正極端子に接続され、
前記プレス加工粗面は、前記リードフレームの前記キャップの通孔を通る部位と、前記キャップの通孔及びその周辺に設けられ、この通孔及びその周辺に充填される封止接着剤が前記プレス加工粗面に密着している樹脂封止金属部品。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項記載の樹脂封止金属部品において、
前記第1の凹凸面は、凹凸の高低差が1〜100μm、凹凸の幅が1〜200μmであり、
前記第2の凹凸面が算術平均粗さ(Ra)が0.1〜10μmの粗さである樹脂封止金属部品。
【請求項10】
請求項2ないし8のいずれか1項記載の樹脂封止金属部品において、
前記板厚側面の前記微細な溝列のプレス抜き加工面は、凹凸の高低差が1〜100μm、凹凸の幅が1〜200μmである樹脂封止金属部品。
【請求項11】
請求項3ないし8のいずれか1項記載の樹脂封止金属部品において、
前記板厚側面における前記微細な溝列よりも微細な前記凹凸面は、算術平均粗さ(Ra)が0.1〜10μmの粗さである樹脂封止金属部品。
【請求項12】
金属プレス加工により成形されたリードフレームにおいて、
一部にプレス加工の粗面が形成され、
このプレス加工粗面は、微細な凹凸を繰り返す第1の凹凸面と、さらにこの第1の凹凸面上に形成される該第1の凹凸面より微細な凹凸よりなる第2の凹凸面とにより構成されていることを特徴とするリードフレーム。
【請求項13】
請求項12記載のリードフレームにおいて、
前記プレス加工粗面は、リードフレームの表裏両面の一部に形成され、
かつ前記リードフレームにおける前記プレス加工粗面と交わる板厚側面には、微細な溝列のプレス抜き加工面が形成されているリードフレーム。
【請求項14】
金属プレス加工による金属部品の製造方法において、
ワークとなる金属板材の片面又は両面の一部に超硬金型のパンチ及びダイを用いてプレス転写することによりプレス加工粗面を形成する工程と、
前記プレス加工粗面工程後に、前記金属板材を抜き加工することにより前記金属部品を得ると共にこの金属部品における前記プレス加工粗面と交わる板厚側面に、微細な溝列のプレス抜き加工面を形成する工程とを有し、
且つ前記プレス加工粗面形成に用いるパンチ及びダイには、プレス加工粗面転写用の高さ或いは深さを有する第1の凹凸面と、さらにこの第1の凹凸面上に形成される該第1の凹凸面より微細な凹凸よりなるプレス加工粗面転写用の第2の凹凸面とが形成されていることを特徴とする金属部品の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の金属部品の製造方法において、
前記パンチ及びダイに形成される転写用の前記第1の凹凸面は、エンドミル或いはマシニングセンターにより形成され、転写用の前記第2の凹凸面は、前記第1の凹凸面にブラスト処理を施すことで形成されている金属部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばメモリー、ロジック、カスタムLSI、パワーデバイス、LEDなどの半導体パッケージや電池などに用いるリードフレーム等の樹脂封止金属部品、それに用いるリードフレーム、及び金属部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品として、例えばメモリー、ロジック、トランジスタ、ダイオード、LEDなどの半導体パッケージが広く使用されている。最近の電子部品では、照明用、表示用のLEDや、自動車用のパワーデバイスの需要が高まっており、これに用いられる半導体パッケージの小型化が進んでいる。また電池では、自動車用やパソコン用にリチウムイオン電池の需要が高まっており、リチウムイオン電池の場合も、半導体パッケージ同様に小型高出力化が急速に進んでいる。
【0003】
小型化が益々進む半導体パッケージでは、半導体デバイスを保護するために樹脂封止するが、半導体デバイスを搭載し外部に電極を取り出す金属端子(リードフレーム)と樹脂の界面の面積がパッケージの小型化によって益々狭小化している。
【0004】
このため、樹脂と金属端子の界面からの水分の浸入による半導体デバイスの腐食、短絡などが発生するおそれがあり、信頼性の観点からその予防策を講じることが強く望まれている。
【0005】
またリチウムイオン電池においては、電解液の漏洩や外気の浸入を防ぐために、電極リード端子(リードフレーム)の取り出し口を接着剤や樹脂で封止するが、小型化によって半導体パッケージ同様の封止面積の狭小化による電解液の漏洩や外気浸入のおそれがあり、その予防策を講じることが望まれている。
【0006】
このような最近の状況を踏まえ、信頼性確保を目的とした、リードフレームなどの樹脂封止金属部品と樹脂の密着性の向上が大きな課題になっている。金属部品と樹脂の密着性の向上方法には現在2つの面からの開発が進んでいる。一つは樹脂の接着性の改良、二つ目は金属表面の粗化処理方法である。
【0007】
樹脂の接着性の改良では、熱可塑性のPPS樹脂やLCP樹脂の流動性の改良や、化学的な樹脂の改質が試みられている。
【0008】
一方、金属表面の粗化処理方法では、化学的粗化処理法が知られている。化学的粗化処理法としては、金属の表面を溶解して粗化する方法、または特許文献1(特開2005−353919号公報)に記載のように金属の表面に粗化めっきをする方法がある。いずれも樹脂と金属の接触界面の面積を増加させ、さらにアンカー効果(投錨効果)により密着強度(剥離強度)を高めることができる。
【0009】
化学的溶解法では、例えばアルミニウムの表面に微細な凹凸を形成できる特殊な薬品を用いる。めっき粗化法では、電気めっき法によって表面に凹凸の粗いめっきを析出させる。この化学的粗化処理法は、粗化液の選定によって、数μmの微細な凹凸を形成できる特徴があるが、化学薬品を用いるため特殊な処理槽を必要とし、さらに、電気めっきによる粗化では、前処理液やめっき液を用いるためにめっき装置が必要である。
【0010】
また、かような化学的粗化処理方法は、排気排液の処理や洗浄処理における環境汚染対策を講じる必要があり、また、作業環境の悪化につながることが懸念される。
【0011】
このほか粗化処理には機械的方法があり、例えば特許文献2(特開2001−225346号公報)では、金属部品がインサートされた樹脂複合成形品を製造する方法において、予め金属部品表面に鋼鉄やガラスなどの硬い微粉末を吹き付けて粗化するブラスト処理法が良く知られている。この方法は、大きな機械加工部品や構造体の表面を梨地処理して、塗料との密着性を良くするなどの目的で実際に用いられるが、小型の製品には適さず、且つ部分的な粗化処理ができない。半導体パッケージやリチウムイオン電池は小型であり、かつ樹脂と接触する部分のみの粗化処理が求められる。
【0012】
例えば、半導体パッケージでは、そのリードフレームにおける封止樹脂との界面以外の部分を粗化した場合、リードフレームのはんだ付けが行われる箇所のはんだ付け性が阻害される。また照明用LEDパッケージでは、はんだ付け性のほかに反射率が低下する問題がある。リチウムイオン電池では、電池キャップから電極用のリードフレームを外部に引き出すが、キャップと金属電極の界面は接着剤や樹脂で封止される。この場合も樹脂との界面のみを粗化する必要がある。金属電極と樹脂界面のほかの部分を粗化した場合、接触電気抵抗が増加するなどの問題があり、好ましくない。上述の化学的な粗化処理方法も浸漬方法であるために部分的な粗化処理は非常に困難であり、機械的処理法と同様の問題がある。
【0013】
以上のように、現在、半導体パッケージやリチウムイオン電池などの信頼性向上の要求がますます強くなっており、金属部品と樹脂との密着性の改良が急務となっているが、現在これに応え得る手法が無いのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−353919号公報
【特許文献2】特開2001−225346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、従来の化学的な粗化処理や機械的粗化処理に代わる新たな機械的粗化処理を可能とし、しかも部分的な粗化処理を短時間で可能にする金属プレス加工方法及びそれにより得られる樹脂封止用の金属部品の樹脂に対する界面接着の面積を狭小化した領域においても充分な接着性、密着性を確保し、封止性及び剥離強度に優れ、しかも他部品との半田接続や電気的接続、他の機能性にも支障のない樹脂封止金属部品及びリードフレームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記目的を達成するために、基本的には、次のような金属プレス加工方法、樹脂封止金属部品及びリードフレームを提案する。
(1)金属プレス加工による金属部品の製造方法において、
ワークとなる金属板材の表裏面の一部に超硬金型のパンチ及びダイを用いてプレス転写することによりプレス加工粗面を形成する工程と、
前記プレス加工粗面形成工程前あるいは後に、前記金属板材を抜き加工することにより前記金属部品を得ると共にこの金属部品における前記プレス加工粗面と交わる板厚側面に、微細な溝列のプレス抜き加工面を形成する工程とを有する金属部品の製造方法。または、上記工程に加えて、前記抜き加工による溝列形成後に、この溝列の面(板厚側面)に側面叩きパンチを用いて、梨地レベルの微細な粗面を形成する金属部品の製造方法。
【0017】
好ましくは、前記プレス加工粗面形成に用いるパンチ及びダイには、プレス加工粗面転写用の高さ或いは深さを有する第1の凹凸面と、さらにこの第1の凹凸面上に形成される該第1の凹凸面より微細な粗面(例えば梨地レベルの粗面)よりなる第2の凹凸面とが形成されていることを特徴とする金属部品の製造方法。
(2)プレス加工された金属成形体よりなる金属部品と、前記金属部品を封止する封止樹脂とを有する樹脂封止金属部品において、
前記金属部品の少なくとも一部で前記封止樹脂が密着する被封止部にプレス加工の粗面が形成され、
このプレス加工粗面は、微細な凹凸を繰り返す第1の凹凸面と、さらにこの第1の凹凸面上に形成される該第1の凹凸面より微細な凹凸よりなる第2の凹凸面とにより構成されていることを特徴とする樹脂封止金属部品。
(3)金属プレス加工により成形されたリードフレームにおいて、
一部にプレス加工の粗面が形成され、
このプレス加工粗面は、微細な凹凸を繰り返す第1の凹凸面と、さらにこの第1の凹凸面上に形成される該第1の凹凸面より微細な凹凸よりなる第2の凹凸面とにより構成されていることを特徴とするリードフレーム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金属材料に対して、従来の化学的な粗化処理や機械的粗化処理に代わる新たな機械的粗化処理を可能とし、しかも部分的な粗化処理を短時間で可能にする金属プレス加工方法を実現することができる。
【0019】
また、それにより得られる金属部品(金属プレス加工品)の粗化処理部たるプレス加工粗面は、微細加工の第1の凹凸面と、それよりもさらに微細な第2の凹凸面とを組み合わせた複合的な粗面により構成されるので、限られた被封止部における封止樹脂に対する有効な界面接着(密着)面積を増やして、狭小化される金属部品あっても優れた気密封止を維持できる樹脂封止金属部品及びリードフレームを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1の樹脂封止金属部品の適用対象となる半導体パッケージの一例を示す縦断面図及びその一部拡大断面図。
【
図2】実施例1に係る樹脂封止金属部品(リードフレーム)の斜視図。
【
図3】本発明の実施例2の樹脂封止金属部品の適用対象となるリチウムイオン電池の一例を示す縦断面図及びその要部拡大断面図。
【
図5】本発明の金属プレス加工方法(金属プレス導電体の製造方法)の一実施例におけるプレス加工粗面形成工程を示す説明図(実施例3)。
【
図6】本発明の金属プレス加工方法(金属プレス導電体の製造方法)の一実施例における抜き加工工程を示す説明図(実施例3)。
【
図7】微細溝加工側面を有する抜き加工金型のパンチ及びダイを用いてワークWを抜き加工した場合の、ワークW´(型抜き金属プレス加工品)の被加工面(ワーク板厚側面)とそれに隣接する非加工面を示す図。
【
図8】実施例4において、溝加工後にブラスト処理を行ったパンチのレーザ顕微鏡による観察結果を示す図。
【
図9】実施例4におけるプレス加工真鍮面のレーザ顕微鏡観察結果を示す図。
【
図10】本願発明に係るテストピースの仕様を示す正面図及び側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を図面に示す実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0022】
先ず、
図1及び
図2により、樹脂封止金属部品(導電体)の一実施例を半導体パッケージに適用した場合について説明する。
図1は、本実施例の樹脂封止金属部品の適用対象となる半導体パッケージの一例を示す縦断面図及びその一部拡大断面図である。
図2は、本実施例に係る樹脂封止金属部品(リードフレーム)の斜視図である。
【0023】
図1における半導体パッケージは、例えばパワートランジスタを構成する半導体チップ1、それを支持する金属ベース2、入出力用のリード端子となるリードフレーム3、前記半導体チップ1とリードフレーム3間を接続するボンディングワイヤ4、及びこれらの部材を封止する封止樹脂5よりなる。
【0024】
封止樹脂5は、例えばトランスファーモールド樹脂であり、樹脂封止金属部品(樹脂封止導電体)となるリードフレーム3については、一部が樹脂封止され、その他の部分は外部に引き出されている。
【0025】
このリードフレーム3は、例えば銅合金材よりなる金属プレス加工品である。
図1に示すリードフレーム3は、作図の便宜上、模式的に描かれているが、実際には
図2に示すように板状のものである。リードフレーム3は、銅合金に限らず、その他、アルミニウム、アルミニウム合金、42アロイ(42mass%Ni-Fe合金)などの鉄系合金など適宜な金属導電材料を使用することが可能である。リードフレーム3の一部(被封止部)に封止樹脂5が密着するプレス加工の粗面(粗化処理部)7が形成される。
【0026】
このプレス加工粗面7は、
図1の要部拡大図に示すように、リードフレーム3の表裏面の一部に形成される微細な山谷が繰り返される第1の凹凸面7aと、さらにこの第1の凹凸面7a上に形成されるより微細な梨地レベルの第2の凹凸面7bと、これらの凹凸面のある表裏面部位と交わるリードフレーム板厚側面に形成される第3の凹凸面7c(
図2参照)とにより構成されている。第2の凹凸面7bは、第1の凹凸面7aより微細な凹凸よりなる。また必要に応じて、第3の凹凸面7c面にも、第2凹凸面7b同様のより微細な梨地レベルの凹凸が形成される(図示省略:これを7dとする)。
【0027】
本実施例における第1の凹凸面7aは、凹凸高さ(谷〜山)1〜100μm、幅(山〜山のピッチ)1〜200μm程度の微細な三角形の突起が多数配列されることで構成されている。三角形の突起は、峰状の山と谷が繰り返す凸凹面により構成してもよい。凹凸の形状は、加工が可能であれば、例えば円錐形、ピラミッド形状、連続した溝形状など任意のパターンであり形状を問わない。
【0028】
第2の凹凸面7bおよび7dは、算術平均粗さ(Ra)が0.1〜10μmの粗さである。
【0029】
第1、第2の凹凸面7a,7bはいずれもプレス加工による粗化処理により形成されている。
【0030】
さらに、リードフレーム3における板厚側面に形成される第3の凹凸面7cは、凹凸高さ(谷から山)1〜100μm、幅(山〜山のピッチ)、1〜200μmの範囲の深さを有して繰り返す微細な溝列のプレス抜き加工面により形成されている。また第3の凹凸面7cの表面にも、第2の凹凸面7b同様の算術平均粗さ(Ra)が0.1〜10μmの粗さの粗化面を必要に応じて形成してもよい。
【0031】
これらのプレス加工粗面の仕様は、粗化対象品の金属部品の板厚(強度)に支障をきたさない範囲で設定され、例えば10分の数ミリメートル〜数ミリメートル程度の板厚であれば、上記した数値であれば金属板材の強度は確保できる。
【0032】
これらのプレス加工粗面7(7a,7b,7c)の形成方法については後述する。
【0033】
リードフレーム3の粗化処理部7はリードフレームの一部に形成され、粗化処理部7を除く部分で半導体チップ側の一端近傍にワイヤパッドとなる銀めっき部6が形成され、この銀めっき部6にボンディングワイヤ4の一端が超音波接合法により接続されている。
【0034】
上記本実施例の樹脂封止構造によれば、リードフレーム3の粗化処理部7を煩雑な処理を不要とする金属プレス加工により実現できる。しかも、粗化処理部たるプレス加工粗面は、微細加工の第1の凹凸面と、それよりもさらに微細な第2の凹凸面とを組み合わせた複合的な粗面により構成されるので、限られた被封止部における封止樹脂に対する界面接着(密着)面積を増やして、狭小化される金属部品であっても優れた気密封止を維持でき、ひいては半導体パッケージの小型化に対応した樹脂封止リードフレームを実現することができる。
【実施例2】
【0035】
次に、
図3及び
図4により、樹脂封止金属部品の他の実施例(実施例2)を、リチウムイオン電池に適用した場合について説明する。
図3は、本実施例の適用対象となるリチウムイオン電池の一例を示す縦断面図、
図4は、その部分拡大断面図である。
【0036】
図3のリチウムイオン電池は、負極端子となる有底筒形の電池ケース10の内部に、正極板(正極)11と負極板(負極)12とそれらの電極間に介在するセパレータ13とからなる電極アッセンブリが多数積層されて実装される。電極アッセンブリは、そのほか、正極板1と負極板2を、それらの間を絶縁するセパレータ13を介在させて巻き回して形成するものなど、その形状は種々のものが考えられ、本願発明はいずれにおいても適用可能である。また、非水電解液(電解質)がケース10内に充填されている。
【0037】
正極、負極、電解質のそれぞれの材料は、リチウムイオンを移動し、リチウムイオンの授受が可能であればよいので、多くの種類があり、また、その種類によって特性に違いが出てくるが、これらの材料は、公知のものを使用すればよいので、説明を省略する。
【0038】
ケース10の上部開口は、電極アッセンブリをケース10内に実装した後に内側の金属キャップ(例えばアルミニウム製キャップ)14によって封止されている。金属キャップ14には、非水電解液を注液するための且つケース10内のガスを放出させるための安全弁15が設けられている。
【0039】
金属キャップ14には、正極板11と正極端子16とを接続するリードフレーム17を通すための通孔18が設けられている。リードフレーム17は、この通孔18を通されて、正極板11と正極端子16とを接続する。リードフレーム17の一端は、正極端子16に設けた孔20に通されてかしめられている。
【0040】
正極端子16は、外側の外装樹脂キャップ19に固定されている。
【0041】
リードフレーム17と通孔18との間、および正極端子16と金属キャップ14との間には封止樹脂として接着剤21が充填されている。接着剤としては、例えばエポキシ系接着剤を用いるがそれに限定されるものではなく、適宜な絶縁性の接着剤を用いれば良く、またモールド成形金型を用いた樹脂成形などでもかまわない。
【0042】
図4に示すように、本実施例でもリードフレーム17の一部(少なくとも被封止部)には、接着剤21との界面接着面積を高めるために、実施例1同様のプレス加工粗面(粗化処理部)22が設けられる。さらにリードフレーム以外の金属部品、すなわち金属キャップ14の一部、すなわち接着剤21が接着するキャップ14の表面一部と通孔18の孔壁にそれぞれプレス加工粗面23及び24が設けられている。
【0043】
リードフレーム17に設けたプレス加工粗面22は、リードフレーム両面一部に設けた第1、第2の凹凸面(実施例1の第1、第2の凹凸面7a,第7bと同様のプレス加工面)とこれらの凹凸面に直交する板厚側面に設けた第3の凹凸面(実施例1の第3の凹凸面7cと同様のプレス抜き加工面)からなる。また必要に応じて第3の凹凸面7c面にも、第2の凹凸面7b同様の凹凸面を形成してもよい。
【0044】
金属キャップ14の通孔18周辺に設けられるプレス加工粗面23も、実施例1の第1、第2の凹凸面7a,第7bと同様のプレス加工面である。
【0045】
通孔18の内壁に設けられるプレス加工粗面24は、実施例1の第3の凹凸面7cと同様のプレス抜き加工面からなる。またこの面にも、必要に応じて上記した第2の凹凸面7b同様の凹凸面が形成される。
【0046】
すなわち、本実施例では、プレス加工粗面が、リードフレーム17の金属キャップ14の通孔18を通る部位と、金属キャップ14の通孔18及びその周辺に設けられ、この通孔18及びその周辺に充填される封止接着剤21がプレス加工粗面に密着している
本実施例においても、狭小化されるリードフレーム及びその周辺金属部材(金属キャップなど)の間の封止樹脂接着面積を十分に確保でき、しかも、接着面積を高める金属部品の粗化処理を金属プレス加工により実現するので、化学粗化処理のような製造工程の煩雑を避け、しかも必要とされる部位に限定して粗化処理を行うことができる。また正極端子16の接着剤と接する面も必要に応じて7a,7bを形成する。
【実施例3】
【0047】
次に樹脂封止用の金属部品の製造方法(金属プレス加工方法)について、上記したリードフレーム3を一例に説明する。なお、本実施例の金属プレス加工方法は、樹脂封止用の金属部品であれば、リードフレームに限定されるものではなく種々のものに適用可能である。
【0048】
図5はリードフレーム(ワーク:金属加工プレス品)の金属表面の一部に超硬金型のパンチを用いてプレス転写することによりプレス加工粗面を形成する工程を示す説明図である。
【0049】
プレス加工粗面を形成する場合、図の左側に示すように、金型となるパンチ50の底面には、エンドミルやマシニングセンターなどによりプレス加工粗面(第1凹凸面7a相当)転写用の精密微細加工面51が施される。パンチ底面には、例えば凹凸高さ(谷〜山)1〜100μm、幅(山〜山のピッチ)1〜300μmの範囲の微細な三角形の突起列の精密微細加工面51が形成されている。凹凸の形状は連続した溝またはピラミッド形状、円錐形状など、加工が可能な任意のパターンであり形状を問わない。この微細凹凸の表面にはさらにブラスト処理を施す。これによってパンチ50には、微細凹凸の表面にさらに微細なブラスト加工52(第2凹凸面7b転写用プレス面)を行った三次元マイクロ構造加工の底面が得られる。このパンチ50を、ワークW(例えば銅合金:リードフレーム加工前の金属材)に用いられている銅合金の表面に、順送プレスにより押し当てると、銅合金表面には図の右側のパンチ加工部の断面に示すような三次元マイクロ構造加工面が得られる。
【0050】
順送プレスでは長い帯状の金属条を、巻き取りながらプレス加工できるので、銅合金の必要な箇所に連続して微細な凹凸を部分的に連続的に加工することが可能となる。
図5ではパンチ加工面の例で説明したが、
図5に示すダイ55側にも微細な凹凸加工とブラスト処理を施すことによって、ワーク(銅合金)Wの裏面にも三次元マイクロ構造加工面(プレス加工粗面)が得られる。
【0051】
図6のプレス加工粗面の形成工程後に、ワークWは、順送プレスにより
図6に示す型抜きが行われる。
【0052】
図6の左側には、抜き加工用のパンチ60の両側面(図では片側の側面のみ示す)にプレス加工粗面転写用の凹凸高さ(谷〜山)1〜100μm、幅(山〜山のピッチ)1〜300μmの範囲の微細溝(または微細突条列:
図1の第3の凹凸面7c転写用)61を形成した例を示す。この微細溝61も、エンドミルやマシニングセンターなどを用いた精密微細加工で形成される。また、抜き加工用のダイ65の側面にも上記パンチ同様微細な溝または突起などを形成する。ワークWのパンチ60及びダイ65を用いて抜き加工する場合(
図6の右側)には、パンチ及びダイに用いた微細溝の精密位置合わせをすることにより行われる。さらに必要に応じて凹凸面7c面にも、第2の凹凸面7b同様の凹凸面がブラスト加工法などによって形成される。
【0053】
上記パンチ及びダイを用いたワークWを抜き加工すると、抜き加工により得られた加工金属部品W´がリードフレームの形状を呈しかつその板厚側面に微細溝の凹凸面(実施例の第3の凹凸面7c相当)が形成される。また抜き加工後、リードフレームの側面から、再度ブラスト処理などによって第2の凹凸面7b同様の凹凸面(転写用)のみを形成したパンチを押し当てることによって、加工金属部品の側面にも第2の凹凸面が形成される。この抜き加工側面に第2の凹凸面形成用のパンチを押し当てる方法は、プレスの金型の上下運動を横方向の運動に変換する、カム駆動方式によってプレスパンチを横方向に移動することで行える。この方法は、深絞り加工における横方向からの穴明け加工などに良く用いられている。
【0054】
本実施例では、側面の抜き加工による第1の凹凸面7c(或いは凹凸面7c面に必要に応じて行う第2の凹凸面同様のプレス粗面加工)をリードフレームの表裏面加工の後工程としたが、この凹凸面7c(或いは7c面に施す第2の凹凸面も含めて)の形成加工を前工程で行い、その後に7aの第1の凹凸面加工および、7bの粗面加工による第2の凹凸加工を行っても構わない。
【実施例4】
【0055】
実施例4では、ダイス鋼(SKD11)のパンチに対して、深さ50μm、ピッチ250μmの溝をマシニングセンターによって形成した。実施例4では、溝加工表面にさらにSiC微粒子によるブラスト加工を行った。溝加工後にブラスト処理を行ったパンチのレーザ顕微鏡による観察結果を
図8に示す。またダイ側もパンチ側と同様の溝およびブラスト加工を行ったダイを用いた。
【0056】
パンチのブラスト加工面の算術平均粗さRaは、3.0〜4.0μmの範囲であった。この加工パンチを用いて銅合金材料(Zn32mass%-Cu)の表面および裏面に対してプレス加工を行った。プレス加工はクランクプレスマシンを用い、回転数100RPMで行った。プレス加工銅合金材料面のレーザ顕微鏡観察結果を
図9(a)に示す。
図9(a)に示すように、ワークW(銅合金材料)の加工面にブラスト加工を行ったパンチの転写による粗面加工面が見られる。比較のためにブラスト加工なしのパンチによる銅合金材料のプレス加工面は同図(b)に示すように、溝内部は平滑であることが分かる。ブラスト加工を行ったパンチおよびダイによる銅合金材料粗面加工面の平均粗さ(Ra)はブラスト加工パンチの平均粗さ(Ra)同様、3.0〜4.0μmであった。またブラスト加工を行わない場合の銅合金材料表面の平均粗さ(Ra)は0.2〜0.3μmであった。
【0057】
さらに抜き加工側面には、第1の凹凸加工(7c)を行った。この加工断面を
図7に示す。
図7に示すように、0.64mmの銅合金材料(リードフレーム)の抜き加工断面に対して、ピッチ0.1mmの溝が形成されていることがわかる。レーザ顕微鏡測定による溝の深さは平均3μmであった。
【0058】
この7a,7b,7cを形成した銅合金材料によるテストピースを用いてそのテストピースの周りに樹脂成形して、ガスリーク試験を行った。ガスリーク試験用のテストピースを
図10に示すように、厚さ0.64mm、幅4mm、長さ70mmの銅合金材料の中央部10mmの範囲の表面、裏面、およびプレス抜き加工側面の4面に対して、クランクプレスによる凹凸加工が施されている。テストピースの表裏両面には第1(溝加工:第1の凹凸面7a相当)、第2(粗面加工:第2の凹凸面7b相当)の凹凸加工が、また両側面には第3の凹凸加工(溝加工:第3の凹凸面7c相当)が施されている(これを実施例テストピースと称する)。
【0059】
ガスリーク試験法の図は省略するが、一方の端に内径φ8mmの樹脂製中空ホースを挿入し、また他端にも8mmφ樹脂製中空ホースを挿入し、一方のホースに0.1MPaの圧力の空気圧を連続加圧方式で試験した。試験時間は2hとした。リーク量は、水中に沈めた他端のホースからリークする空気を、軽量瓶で捕集して計測した。
図10に示す凹凸形成プレス加工部を有する銅合金材料には、本実施例の粗面加工銅合金材料(Zn32mass%-Cu)を用いた。銅合金材料には、第1の凹凸面7a,第3の凹凸7cの粗面加工深さ(溝深さ)0.05mm(50μm)、0.1mm(100μm)の2つについて行った。また比較のために第1凹凸面7a,第3の凹凸面7cは有するが、ブラスト加工無し(第2凹凸面7b無し)のパンチにより加工した銅合金材料に関しても試験を行った(これを比較例テストピースと称する)。成形樹脂には、PPS樹脂を用いた。樹脂成形金型温度は150℃とした。
【0060】
ガスリーク試験の結果を纏めて表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
ガスリーク試験は、それぞれのテストピースについて3回行われた。ガスリーク試験の結果によれば、表1に示すように、第1の凹凸面7a,第2の凹凸面7b,第3の凹凸面7cのいずれの凹凸加工形状を有する実施例テストピースは、溝深さ50μmのものが、3回のテストともリーク量(l/h)が「0,0,0」であり、溝深さ100μmのものが、3回のテストのリーク量(l/h)が「0,0,0.033」であり、比較例テストピースに較べていずれも気密性に優れていることが実証された。
【0063】
したがって、上記した本実施例の半導体パッケージやリチウムイオン電池などのリードフレーム、キャップなどの樹脂封止を必要とする部品に本発明に係る粗面加工処理を適用することで、狭小化される金属部品あっても優れた気密封止効果が得られる。
【0064】
また、従来の煩雑な化学的な粗化処理や機械的粗化処理に代わる新たな簡便な機械的粗化処理を可能とし、しかも部分的な粗化処理を短時間で可能にする金属プレス加工方法を実現することができる。
【0065】
なお、上記した実施例では、樹脂封止金属部品として主に半導体パッケージのリードフレーム、リチウムイオン電池のリードフレーム、金属キャップを一例に説明したが、本発明は、それ以外の同様の樹脂封止される金属部品であれば種類を問わず適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…半導体チップ、3…樹脂封止金属部品(リードフレーム)、5…封止樹脂、7…プレス加工粗面、7a…第1の凹凸面、7b…第2の凹凸面、7c…第3の凹凸面、14…樹脂封止金属部品(金属キャップ)、17…樹脂封止金属部品(リードフレーム)、22,23,24…プレス加工粗面。