特許第5669525号(P5669525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669525
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20150122BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20150122BHJP
【FI】
   H01L33/00 440
   H01L33/00 432
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-249549(P2010-249549)
(22)【出願日】2010年11月8日
(65)【公開番号】特開2012-104538(P2012-104538A)
(43)【公開日】2012年5月31日
【審査請求日】2013年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】特許業務法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 大
(72)【発明者】
【氏名】波岡 かおり
(72)【発明者】
【氏名】山崎 欣男
【審査官】 佐藤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−182878(JP,A)
【文献】 実開昭51−083277(JP,U)
【文献】 特開2009−283776(JP,A)
【文献】 特開2010−147189(JP,A)
【文献】 特開2010−287583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散反射面を形成する素子搭載面と、前記素子搭載面上に設けられた導体配線と、を有する基板と、
それぞれが長方形の外形を有し、前記素子搭載面上に搭載方向が同一となるように環状に配列され且つ前記導体配線に電気的に接続された複数の半導体発光素子と、を含み、
前記導体配線は、互いに隣接する2つの半導体発光素子間の対向する長辺の一端及び他端同士を結ぶ線分と前記2つの半導体発光素子の対向する長辺とによって囲まれた素子間領域内に侵入しておらず、かつ前記複数の半導体発光素子に囲まれた領域内において細長形状に配置され、長手方向が前記半導体発光素子の長辺方向に略垂直であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
前記基板は前記拡散反射面上に複数の溝を有し、前記複数の溝の底部に前記複数の導体配線が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記溝は白色樹脂によって充填されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体配線が設けられた基板上に発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等の半導体発光素子を搭載した半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
導体配線が設けられた基板にLEDを搭載した半導体発光装置が、照明、バックライト、産業機器等の種々の機器に従来から用いられてきた。近年においては、半導体発光装置の高輝度化の要求が高まっている。
【0003】
特許文献1においては、図1に示されているように、基板101の開口部102内に長方形の形状を有するLED103が6個搭載された半導体発光装置100が開示されている。また、半導体発光装置100においては、LED103の長辺に沿って複数の導体配線104が形成され、導体配線104同士の間にLED103が設けられている。また、LED103のそれぞれのp側電極及びn側電極はボンディングワイヤ105を介して導体配線104に接続されている。更に、基板101の開口部102には透光性樹脂106が充填されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−283776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているような複数のLEDを搭載した半導体発光装置においては、ニアフィールドパターンにおいて、半導体発光装置の中央部と外縁部との色度が異なり、色度むらが発生し、集光レンズとの組み合わせるなどの、集光タイプの光学系の光源として用いる際に好ましくない場合が生じていた。例えば、青色のLEDと黄色の蛍光体を用いることによって擬似的に白色の光を放出する半導体発光装置において、半導体発光装置の中央部が青色寄り、外縁部が黄色寄りに見えるような色度むらが発生していた。このような問題の原因の一つとしては、LEDから放出された光が基板の底面において反射された後に他のLEDに吸収され、半導体発光装置から放出される光の光量等が半導体発光装置内でばらついているためと考えられる。
【0006】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、その目的は、色度むらのない半導体発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の半導体発光装置は、拡散反射面を形成する素子搭載面と、前記素子搭載面上に設けられた導体配線と、を有する基板と、それぞれが長方形の外形を有し、前記素子搭載面上に搭載方向が同一となるように環状に配列され且つ前記導体配線に電気的に接続された複数の半導体発光素子と、を含み、前記導体配線は、互いに隣接する2つの半導体発光素子間の対向する長辺の一端及び他端同士を結ぶ線分と前記2つの半導体発光素子の対向する長辺とによって囲まれた素子間領域内に侵入していないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半導体発光装置においては、半導体発光素子を搭載するための基板上に設けられた導体配線が、環状に配置された複数の半導体発光素子のうちの互いに隣接する2つの半導体発光素子間の対向する長辺の一端及び他端同士を結ぶ線分と当該2つの半導体発光素子の対向する長辺とによって囲まれた素子間領域内に侵入していないため、半導体発光装置の色度むらを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】従来例に係る半導体発光装置の平面図である。
図2】(a)は実施例1に係る半導体発光装置の平面図であり、(b)は図2(a)の線2b−2bに沿った断面図であり、(c)は図2(a)の線2c−2cに沿った断面図である。
図3】実施例1に係る半導体発光装置を構成する第2セラミック層の開口部分の拡大平面図である。
図4】本発明の実施例1に係る半導体発光装置の製造方法における各製造工程を示す断面図である。
図5】(a)は実施例1の第1変形例に係る半導体発光装置の断面図であり、(b)は実施例1の第2変形例に係る半導体発光装置の断面図である。
図6】(a)は図5(a)に係る半導体発光装置の色度の観測角度依存性の結果であり、(b)は図1の半導体発光装置の色度の観測角度依存性の結果である。
図7】実施例2に係る半導体発光装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
先ず、図2(a)、(b)、(c)を参照しつつ実施例1に係る半導体発光装置の構造を説明する。図2(a)は実施例1に係る半導体発光装置の平面図である。図2(b)は図2(a)の線2b−2b(破線で示す)に沿った断面図である。図2(c)は図2(a)の線2c−2c(破線で示す)に沿った断面図である。
【0012】
図2(a)、(b)、(c)に示されているように、半導体発光装置10は、正方形の平面形状を有する基板11と、青色の光を発する9個の発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)12a〜12iと、LED12a〜12iを覆う透光性樹脂13と、LED12a〜12iと電気的に接続された導体配線14a〜14iと、から構成されている。なお、発光ダイオードのいずれかを指定しない場合には、以下において単にLED12とも称する。LED12の平面形状は長方形であり、例えば、短辺が290マイクロメートル(μm)、長辺が500μmであり、長辺が短辺の1.7倍以上になっている。また、LED12の高さは、例えば120μmである。なお、図2(a)において、LED12の長辺方向をX軸方向、短辺方向をY軸方向と定義する。また、図2(b)、(c)において、LED12の厚さ方向をZ軸方向と定義する。
【0013】
LED12は、例えば、透明サファイア基板上に発光層を含むGaN系半導体層が積層されたLEDチップを用いることができる。LED12のp側電極及びn側電極は、当該半導体層の上面側にそれぞれ配置されている。
【0014】
基板11は、Alを含有する低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)から構成されたガラスセラミック基板である。具体的には、基板11は、平板形状を有し且つその表面上に素子搭載面を有する第1セラミック層11aと、第1セラミック層11aの上に設けられて、LED12からの光を反射するリフレクタ及び透光性樹脂13の漏れを防止する側壁として機能する第2セラミック層11bと、から構成されている。第2セラミック層11bは中央部に円柱状の開口11cが設けられ、開口11cの底部おいて第1セラミック層11aが露出している。基板11の表面における反射率は約90%〜96%である。なお、基板11は、Alに代えて例えば、AlNを含有してもよく、Al及びAlNの2つの材料を含有してもよい。
【0015】
また、基板11の素子搭載面上には、全体として配線パターンを構成する10個の導体配線14a〜14jが設けられている。なお、導体配線のいずれかを指定しない場合には、以下において単に導体配線14とも称する。具体的には、導体配線14は、第2セラミック層11bの開口11cの底部に露出した第1セラミック層11aの表面(素子搭載面)上に形成されている。特に、導体配線14a、14bは開口11cの中央部に設けられ、導体配線14c〜14jは開口11cの外縁部分に設けられている。また、導体配線14は、Ag、Ni及びAuが順次積層された(Ag/Ni/Au)金属性のパッドであり、Auが表出した構造を有している。なお、導体配線14は、第1セラミック層11aの内部を貫通する接続配線(図示せず)を介して第1セラミック層11aの裏面に設けられた外部接続パッド(図示せず)に接続されている。
【0016】
更に、第2セラミック層11bの開口11cの底部において露出した第1セラミック層11aの表面(素子搭載面)上には、9個のLED12が配置され、LED12のそれぞれのp側電極及びn側電極はボンディングワイヤ15を介して導体配線14に電気的に接続されている。具体的には、開口11cの底部において露出した第1セラミック層11aの表面の中央部にはLED12aが配置され、LED12aの周囲にLED12b〜12iが配置されている。そして、全てのLED12は同じ向きで配置されている(すなわち、搭載方向が同一である)ため、例えば、LED12のp側電極が+X側に、n側電極が−X側に位置している。また、具体的な接続状態としては、LED12aが導体配線14a、14bに、LED12b、12cが導体配線14a、14dに、LED12dが導体配線14a、14eに、LED12eが導体配線14f、14jに、LED12f、12gが導体配線14b、14hに、LED12hが導体配線14b、14iに、LED12iが導体配線14c、14jに接続されている。ここで、LED12は、シリコーン樹脂の接着剤16を介して第1セラミック層11aの表面上に固着されている。接着剤16は、約20μmの厚さを有している。また、接着剤16は、LED12の光に対して透光性を有するため、LED12の発光層から基板11側へ向かう光は、接着剤16を透過して基板11表面で反射することにより、半導体発光装置10の外部に取り出される。
【0017】
透光性樹脂13は、LED12、導体配線14及びボンディングワイヤ15を覆うとともに、第2セラミック層11bの開口11cを充填している。透光性樹脂13は黄色の蛍光体を含有している。このため、LED12からの青色の光と当該蛍光体からの黄色の光とにより、半導体発光装置10の観測者に対して半導体発光装置10から白色の光が放出されているかのように見せることができる。すなわち、半導体発光装置10は、当該青色の光及び黄色の光から白色の光を擬似的に生成している。
【0018】
次に、図3を参照しつつ、LED12と導体配線14との位置関係について詳細に説明する。図3は、図2(a)の第2セラミック層11bの開口11cの拡大平面図である。なお、図3においては、説明の便宜の観点からボンディングワイヤを図示していない。
【0019】
第2セラミック層11bの開口11cの底部に露出した第1セラミック層11aの表面(以下、露出面20と称する)上の中央部にはLED12aが配置され、LED12aの周囲にLED12b〜12iが配置されている。LED12b〜12iは略円環状に配列され、略円環状に配置されたLED12b〜12iの中心にはLED12aが配置されている。ここで、LED12b〜12iが設けられた領域(図3において太い破線で囲まれた領域)を環状領域21と定義する。すなわち、LED12b〜12iは、環状の素子搭載領域である環状領域21内に略円環状に搭載されている。また、隣接するLED同士のうち、LED12bとLED12c、LED12cとLED12d、LED12fとLED12g、LED12gとLED12hは、Y方向において重なって配置されている。すなわち、LED12bとLED12c、LED12cとLED12d、LED12fとLED12g、LED12gとLED12hは、Y方向において長辺の一部同士が対向し合っている。
【0020】
LED12aとLED12b〜12iが設けられた環状領域21との間には、導体配線14a、14bが設けられている。導体配線14a、14bは、細長形状に配置され、LED12の長辺方向に概ね直交する方向(すなわち、Y軸方向)に伸長し(すなわち、長辺方向に略垂直に伸長し)、且つ、環状領域21に沿って(すなわち、LED12の配列形状に沿って)形成されている。また、導体配線14a、14bはLED12aの短辺に沿って伸長しているが、長辺に沿っては伸長していない。そして、LED12aの長辺から+Y軸方向及び−Y軸方向に向かった近傍領域においては、導体配線14a、14bが概ね設けられていない。また、導体配線14aの一部はLED12b〜12iが設けられた環状領域21にまで伸長しているものの、導体配線14a、14bの大半の部分は環状領域21に存在していない。すなわち、導体配線14a、14bは、環状領域21を避けるように設けられている。特に、導体配線14a、14bは、LED12b〜12iのそれぞれの長辺に沿っては伸長しておらず、LED12b〜12iのそれぞれの長辺近傍にも設けられていない。
【0021】
LED12b〜12iが設けられた環状領域21の外側には、導体配線14c〜14jが設けられている。導体配線14c〜14jは概ねY軸方向に伸長している。また、導体配線14c〜14jは、LED12b〜12iが配置された環状領域21までは伸長していない。導体配線14dはLED12bの短辺に沿って伸長し、また導体配線14hはLED12fの短辺に沿って伸長している。すなわち、導体配線14dはLED12bの短辺近傍に設けられ、また導体配線14hはLED12fの短辺近傍に設けられている。導体配線14c、14e、14f、14g、14i、14jはLED12の短辺及び長辺に沿っては設けられていない。すなわち、また導体配線14c、14e、14f、14g、14i、14jはLED12の短辺近傍及び長辺近傍には設けられてない。
【0022】
また、導体配線14は、LED12bの長辺と、LED12cの長辺と、LED12bの長辺の一端とLED12cの長辺の一端とを結ぶ線分(図3において細い破線で示す)と、LED12bの長辺の他端とLED12cの長辺の他端とを結ぶ線分(図3において細い破線で示す)とによって囲まれた素子間領域22を避けるように設けられている。特に本実施例においては、導体配線14は、素子間領域22内には侵入していない。同様に、LED12c及びLED12dに係る素子間領域23、LED12f及びLED12gに係る素子間領域24、LED12g及びLED12hに係る素子間領域25にも、導体配線14は侵入していない。
【0023】
上述した構成により、LED12の長辺近傍には導体配線14がほとんど設けられておらず、LED12の長辺近傍には第1セラミック層11aの表面が広がっている。第1セラミック層11aは上述したようにガラスセラミックから構成されているため、LED12から第1セラミック層11aに入射した光のほとんどが拡散反射する。すなわち、LED12の長辺近傍には拡散反射面が広がっている。このため、第1セラミック層11aに入射した光のほとんどは拡散反射して透光性樹脂13中の蛍光体と衝突し、半導体発光装置10の外部に放出される。このように第1セラミック層11aに入射した光が拡散反射する場合には、素子搭載面に入射した光が正反射する場合と比較して、反射した光が近傍に搭載された他のLED12によって吸収される確率が低下する。なお、透光性樹脂13中の蛍光体と衝突した光は、更に拡散反射して半導体発光装置10の外部に放出される。
【0024】
一方、導体配線14の表面はAuであるため、ガラスセラミックと比較して拡散反射率は低い。Auの反射率は、青色が約40%、緑色が約55%、黄色が約75%、橙色が約80%であり、これらの反射率のほとんどが正反射によるものである。正反射率が高い導体配線14においては、導体配線14に入射する光は所定の方向に向かって反射するため、拡散反射する場合と比較して透光性樹脂13中の蛍光体と衝突する確率が低下する。このように第1セラミック層11aに入射した光が正反射する場合には、拡散反射する場合と比較して、反射した光が、当該線反射領域を挟んで近傍に搭載された他のLED12に吸収される確率が高くなる。このため、本実施例においては、導体配線14をLED12からの光の放出が多い長辺近傍を避け、LED12からの光の放出が少ない短辺近傍又はLED12から離れた位置に導体配線14を設けている。本実施例においては、特に、環状領域21、素子間領域22〜25を避けるように導体配線14が設けられていることが特徴である。また、本実施例においては、導電性材料の中でも拡散反射率の高いAuが最上層に位置するように導体配線14を構成しているため、Auよりも拡散反射率の低いAgと比較すると、短辺近傍においてもLED12からの光が拡散反射する確率が向上されている。
【0025】
以上のように、本実施例においては、LED12から放出される光の量が比較的に多い部分(LED12の長辺)の近傍には拡散反射面を構成する第1セラミック層11aの表面が広がっているため、LED12から放出される光を透光性樹脂13中の蛍光体と衝突させ、更に拡散反射させた後に半導体発光装置10の外部に高確率で放出することができる。このようなLED12の長辺の近傍領域においてLED12から放出される光が拡散反射するため、LED12から放出された光が他のLED12に吸収される確率が低下する。すなわち、環状領域21におけるLED12の素子搭載面においてLED12から放出された光が反射しても、LED12によって吸収される光量が低下し、半導体発光装置10から放出される光が増加する。また、LED12の素子搭載面で反射して放出される光は、LED12から上方へ向かって直接放出される光よりも、蛍光体を含有する透光性樹脂13中を通る光路長が長く、蛍光体との衝突回数が多いため、黄色味の強い光を得ることができる。そのため、環状領域21を含む中央部における黄色光を補い、中央部における青味が強い色むらを解消することができる。これらのことから、半導体発光装置10の色度むらを低減することが可能になる。特に、実施例1の半導体発光装置10においては、素子間領域22〜25内に導体配線14が侵入していないため、半導体発光装置10の色度むらを低減することが可能になると考えられる。
【0026】
また、本発明の半導体発光装置10を光源として、集光レンズ等の集光タイプの光学系と組み合わせて照明装置を構成することにより、色度むらの極めて小さい光学系を提供することができる。
【0027】
また、実施例1の半導体発光装置10においては、導体配線14a、14bが環状領域21を沿い且つY軸方向に伸長しているため、LED12b、12d、12f、12hと導体配線14a、14bと接続するボンディングワイヤ15の長さを短くすることができる。これにより、LED12と導体配線14との間の抵抗を低減することができる。
【0028】
次に、実施例1に係る半導体発光装置10の製造方法について図4(a)〜(e)を参照しつつ説明する。図4は、本実施例に係る半導体発光装置10の製造方法における各製造工程を示す断面図である。なお、図4(a)〜(e)の断面図は、図2の線2b−2bに沿った断面図である。
【0029】
先ず、ガラスセラミック基板である第1セラミック層11a及び11bからなり、第1セラミック層11aの表面上に導体配線14が設けられた状態の基板11を準備する(図4(a))。その後、LED搭載領域上にシリコーン樹脂からなる接着剤16を塗布する(図4(b))。
【0030】
次に、接着剤16の上にLED12を搭載する(図4(c))。その後、LED12のp側電極、n型電極のそれぞれと導体配線14とをボンディングワイヤ15を介して電気的に接続する(図4(d))。続いて、第2セラミック層11bの開口11cに透光性樹脂13を充填する。かかる工程を経ることによって半導体発光素子10の形成が完了する(図4(e))。
【0031】
上述した実施例における半導体発光装置10においては、導体配線14と接着剤16とが第1セラミック層11aの同一面上に形成されていたが、かかる構造に限定されることはない。例えば、図5(a)又は図5(b)に示されているような構造にしてもよい。
【0032】
図5(a)は半導体発光装置10の第1変形例の断面図であり、図2の線2b−2bに沿った断面に対応している。図5(a)に示されているように、第1セラミック層11aの表面には溝41が設けられている。そして溝41の底部には導体配線14が設けられている。また、溝41の内部には透光性樹脂13が充填されている。なお、他の構造については図2の半導体発光装置10と同一である。
【0033】
このような構造を用いることにより、LED12から放出され光が導体配線14によって正反射する確率が低減し、溝を埋める透光性樹脂13内の蛍光体にLED12からの光が衝突して拡散反射するため、LED12から放出された光が他のLED12に吸収される確率が低下し、LED12から放出された光は、半導体発光装置10の全面に広がって放出される。このため、半導体発光装置10の色度むらをより低減することが可能になる。
【0034】
図5(b)は半導体発光装置10の第2変形例の断面図であり、図2の線1b−1bに沿った断面に対応している。図5(b)に示されているように、第1セラミック層11aの表面には溝41が設けられている。そして溝41の底部には導体配線14が設けられ、溝41の内部には白色樹脂42が充填されている。なお、他の構造については図2の半導体発光装置10と同一である。
【0035】
白色樹脂42は透光性樹脂13よりも反射率が高く、更にはLED12からの光を拡散反射する材料から構成されている。このため、LED12から放出され光が導体配線14によって正反射する確率が低減し、LED12からの光が溝を埋める白色樹脂42によって拡散反射するため、LED12から放出された光が他のLED12に吸収される確率が低下し、LED12から放出された光は、半導体発光装置10の全面に広がって放出される。このため、半導体発光装置10の色度むらをより低減することが可能になる。
【0036】
次に、本実施例に係る半導体発光装置10において色度むらを低減できた結果を図6(a)、(b)を参照しつつ説明する。図6(a)は本実施例の図5(a)に係る半導体発光装置10の色度の観測角度依存性の結果であり、図6(b)は図1の半導体発光装置100(以下、従来サンプルとも称する)の色度の観測角度依存性の結果である。
【0037】
図6(a)、(b)の横軸は観測方向(deg)であり、縦軸は色度である。ここで観測方向とは、半導体発光装置10及び従来サンプルの中央部から+X方向及び−X方向に0度〜60度傾けた位置のことである。すなわち、図6(a)、(b)の結果は、半導体発光装置10及び従来サンプルの中央部から−60度傾けた位置から+60度傾けた位置に徐々に観測位置を変化させ、半導体発光装置10及び従来サンプルの色度を測定した結果である。なお、図6(a)、(b)においては、色度座標中のxの値(ccx)、yの値(ccy)のそれぞれの値の変化が示されている。
【0038】
図6(a)に示されているように、半導体発光装置10においては、−60度〜+60度の範囲内においてccx及びccyの値は約0.295〜0.300の範囲内で変動し、その変動は極めて小さいものであった。すなわち、半導体発光装置10においては、半導体発光装置10の中央部から傾けて観測した場合においても、白色の光が放出されているように見え、半導体発光装置10の色度むらがないことが判った。
【0039】
一方、図6(b)に示されているように、従来サンプルにおいては、−60度〜+60度の範囲内においてccx及びccyの値は約0.295〜0.315の範囲内で変化し、その変動は図6(a)と比較して大きかった。特に、従来サンプルの中央部上で観測した場合には色度が0.295であったが、観測位置を傾けることによって徐々に色度が上昇していた。すなわち、従来サンプルにおいては、従来サンプルを中央部上で観測すると青色寄りに見え、中央部から傾けた位置で観測すると黄色寄りに見えてしまい、従来サンプル全体として色度むらが大きかった。
【0040】
以上のように、本発明の半導体発光装置10においては、半導体発光装置10をいずれの方向から観測した場合においても色度が変動することがなく、従来サンプルと比較して色度むらが低減されていることが判った。
【0041】
実施例1の半導体発光装置10においては、LED12を搭載するための基板11上に設けられた導体配線14が、環状に配置されたLED12のうちの互いに隣接する2つのLEDの対向する長辺の一端及び他端同士を結ぶ線分と当該2つのLEDの対向する長辺とによって囲まれた領域(素子間領域22〜25)内に侵入していないため、半導体発光装置10の色度むらを低減することが可能になる。
【実施例2】
【0042】
実施例1においては導体配線14のそれぞれは、概ねY軸方向に伸長していたが、正方形の導体配線を用いてよい。正方形の導体配線を用いた半導体発光装置について図7を参照しつつ説明する。なお、導体配線以外の構成は実施例1と同一であるため、他の構成部材については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
図7は、実施例2に係る半導体発光装置70の正面図である。図7に示されているように、半導体発光装置70は、正方形の平面形状を有する基板11と、青色の光を発する9個のLED12a〜12iと、LED12a〜12iを覆う透光性樹脂13と、から構成されている。なお、図7において、LED12の長辺方向をX軸方向、短辺方向をY軸方向と定義する。
【0044】
基板11は、第2セラミック層11bの開口11cの内部であって第1セラミック層11aの表面上に、12個の導体配線71a〜71k、71mを有している。なお、導体配線71a〜71k、71mのいずれかを指定しない場合には、以下において単に導体配線71とも称する。LED12と導体配線71との具体的な配置関係として、LED12aの両短辺近傍に導体配線71a、71bが設けられ、LED12bの短辺の−X方向側に導体配線71cが設けられ、LED12cの両短辺近傍に導体配線71a、71dが設けられ、LED12dの短辺の−X方向側に導体配線71eが設けられ、LED12eの両短辺近傍に導体配線71f、71gが設けられ、LED12fの短辺の+X方向側に導体配線71hが設けられ、LED12gの両短辺近傍に導体配線71b、71iが設けられ、LED12hの短辺の+X方向側に導体配線71jが設けられ、LED12iの両短辺近傍に導体配線71k、71mが設けられている。なお、導体配線のいずれかを指定しない場合には、以下において単に導体配線71とも称する。
【0045】
導体配線71のそれぞれは略正方形の形状を有しており、LED12の長辺に平行な方向においてLED12の短辺と対向するように設けられている。すなわち、導体配線71は、LED12の長辺近傍には設けられておらず、LED12の短辺近傍のみに設けられている。また、導体配線71は、LED12bの長辺と、LED12cの長辺と、LED12bの長辺の一端とLED12cの長辺の一端とを結ぶ線分(図7において破線で示す)と、LED12bの長辺の他端とLED12cの長辺の他端とを結ぶ線分(図7において破線で示す)とによって囲まれた素子間領域22を避けるように設けられている。特に本実施例においては、導体配線71は、素子間領域22内には侵入していない。同様に、LED12c及びLED12dに係る素子間領域23、LED12f及びLED12gに係る素子間領域24、LED12g及びLED12hに係る素子間領域25にも、導体配線71は侵入していない。
【0046】
なお、導体配線71は、導体配線14と同様に、Ag、Ni及びAuが順次積層された(Ag/Ni/Au)金属性のパッドであり、Auが表出した構造を有している。
【0047】
実施例2の半導体発光装置70においても、LED12を搭載するための基板11上に設けられた導体配線71が、環状に配置されたLED12のうちの互いに隣接する2つのLEDの対向する長辺の一端及び他端同士を結ぶ線分と当該2つのLEDの対向する長辺とによって囲まれた領域(素子間領域22〜25)内に侵入していないため、半導体発光装置70の色度むらを低減することが可能になる。
【符号の説明】
【0048】
10 半導体発光装置
11 基板
11a 第1セラミック層
11b 第2セラミック層
12a〜12i 発光ダイオード(LED)
13 透光性樹脂
14a〜14j 導体配線
15 ボンディングワイヤ
16 接着剤
21 環状領域(素子搭載領域)
22〜25 素子間領域

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7