【実施例】
【0024】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0025】
図において、符号1は、自動車で例示される車両であり、図中矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、車両1の前方に向かっての車体2の幅方向をいうものとする。
【0026】
上記車体2の内部が車室3であり、この車体2の後面部は後壁4により形成されている。この後壁4は、板金製の後壁本体4aと、この後壁本体4aの下端部をその後方から覆ってこの後壁本体4aに支持される樹脂製のリヤバンパ4bとを備えている。
【0027】
上記後壁4にはバックドア装置6が設けられる。このバックドア装置6は、車体2の後面視(
図1)で、車体2の幅方向の車体中心線7を基準として左右対称形とされている。上記バックドア装置6は、上記後壁4に形成され、車室3の内外を連通させるバックドア開口9と、このドア開口9をその後方から開閉可能に閉じるバックドア10と、上記ドア開口9の開口縁部に取り付けられ、上記ドア10の外縁部の前面に弾性的に圧接するウェザストリップ11とを備えている。
【0028】
上記ドア10は、このドア10の前面側(車室3側)を形成し、上記ドア開口9を全体的に閉じるインナパネル13と、このインナパネル13にその後方から全体的に重ねられて接着剤14により互いに結合されるアウタパネル15とを備えている。この場合、これら両パネル13,15は、少なくともその各外縁部同士が接着剤14により全体的に接着されている。上記インナパネル13は全体的にポリプロピレン(PP)などの樹脂製で、射出成形により一体的に形成され、その上部には横長の矩形状ウィンド開口17が貫設されている。
【0029】
上記アウタパネル15は、上記ウィンド開口17よりも上側の上記インナパネル13の上部に重ねられる上部パネル18と、上記ウィンド開口17よりも下側の上記インナパネル13の下部に重ねられる下部パネル19と、上記ウィンド開口17と同じ高さに位置する上記インナパネル13の各側部、上記上部パネル18の下端縁部、および上記下部パネル19の上端縁部にそれぞれその後方から重ねられるウィンドパネル20とを備えている。上記上部パネル18と下部パネル19とはポリプロピレン(PP)などの樹脂製で、上記ウィンドパネル20はガラス製であり、これら18〜20も接着剤14により互いに結合されている。
【0030】
上記インナパネル13とアウタパネル15とで構成されるドア10の面方向の各部は、それぞれその内部が閉じられた空間21とされ、つまり、このドア10は中空閉断面構造とされて、強度と剛性との向上が図られている。
【0031】
上記ドア10の下部側が、上記後壁4の後側で上方、下方回動A,B可能となるよう、上記ドア10のインナパネル13の上端部を上記後壁4の上部に枢支させる左右一対の枢支具23,23が設けられている。
【0032】
また、上記ドア10のインナパネル13における上下方向の中途部の左右各側部にそれぞれ前方に向かって突設され、上記後壁4の後壁本体4aの後面に圧接して上記ドア10のそれ以上の前方移動を弾性的に阻止する左右一対の上側ストッパ24,24と、上記インナパネル13の下端部の左右各角部にそれぞれ前方に向かって突設され、上記後壁4のバンパ4bの後面に圧接して上記ドア10のそれ以上の前方移動を弾性的に阻止する左右一対の下側ストッパ25,25と、上記したように各ストッパ24,25によって前方移動が阻止された上記ドア10の下端部における左右方向での中央部を上記後壁4の後壁本体4aに解除可能にロックするロック具26とが設けられる。
【0033】
上記インナパネル13の上端部の後面(空間21側の内面)には、左右一対の板金製の補強プレート28が接着剤により固着され、これら各補強プレート28により上記インナパネル13の上端部の左右各側部が補強されている。
【0034】
前記枢支具23は、上記後壁4の上端部の左右各側部に締結具30により取り付けられる固定側部材31と、上記インナパネル13の上端部の左右各側部の前面に当接させられ、他の締結具32により上記補強プレート28と共締めされて取り付けられる回動側部材33と、車体2の幅方向に延びる軸心34回りに上記回動側部材33がドア10と共に上方、下方回動A,Bするよう、上記回動側部材33を上記固定側部材31に枢支させる枢支軸35とを備えている。
【0035】
上記ドア10のインナパネル13の左右各側部の前方近傍で上下方向に延び、その一端部である上端部が上記後壁4に取り付けられ、他端部である下端部が上記ドア10のインナパネル13に取り付けられる左右一対のダンパステー38が設けられる。具体的には、このダンパステー38の上端部は、上記後壁4の上側部に上自在継手39を介し不図示の締結具により取り付けられ、下端部は、上記インナパネル13の上下方向の中間部における側部に下自在継手40を介し締結具41により取り付けられている。なお、上記ダンパステー38の下端部を後壁4に取り付け、同上ダンパステー38の上端部をドア10のインナパネル13に取り付けてもよい。
【0036】
図3,4において、上記インナパネル13における上記枢支具23の回動側部材33の取付部(締結具30による回動側部材33の締結部)13aから同上インナパネル13における上記ダンパステー38の下端部の他の取付部(締結具41による下自在継手40の締結部)13bに至る上記インナパネル13の部分13cは、車体2の側面視(
図4)で、連続的な直線形状となるよう形成され、かつ、ほぼ鉛直方向に延びている。
【0037】
具体的には、上記インナパネル13の部分13cは、車体2の後面視(
図3)で、梨地模様とした部分である。即ち、上記インナパネル13の部分13cは、このインナパネル13の上端部の側部における上記した取付部13aから、一旦、車体2の外側方に延びた後、前記ウィンド開口17の上側部を迂回して下方に延び、上記インナパネル13の上下方向の中間部の側部における上記した他の取付部13bに至っている。
【0038】
図1〜4において、上記インナパネル13の上下方向の中間部の側部後面から一体的に突出する上下一対の突出体43,43が設けられている。これら突出体43,43は、横断面が円形状をなし、上記した他の取付部13bの上方近傍に位置している。なお、上記突出体43は単一であってもよく、3つ以上であってもよい。また、断面矩形であってもよく、板形状であってもよい。
【0039】
図1,3〜5において、上記空間21内で上下方向に長く延びる補強材45が設けられる。この補強材45の長手方向の一端部側(下端部)は、上記した他の取付部13bの後面に前記締結具41による共締めにより取り付けられ、他端部側(上下方向の中途部)は一旦上記インナパネル13から離れるよう後方に向けて屈曲した後、上記各突出体43,43の突出端部に締結具44の締結により取り付けられる。上記補強材45は、その長手方向の各部断面がU字形状をなす板金製である。車体2の後面視(
図3)で、前記補強材45のほとんどは、上記インナパネル13の部分13cと重なるよう配置される。なお、上記各突出体43への補強材45の他端部側の取り付けは、クリップ、リベット、熱溶着などに依ってもよい。
【0040】
図1,3,4において、上記空間21内で上下方向に延び、その上端部が前記補強プレート28に締結具48により締結され、下端部が上記補強材45の上端部に締結具49により締結される補強バー50が設けられている。車体2の後面視(
図3)で、上記補強バー50のほとんどは、上記インナパネル13の部分13cと重なるよう配置されている。また、車体2の側面視(
図4)で、上記補強バー50は、上記インナパネル13の部分13cから後方に少し離れて、このインナパネル13の部分13cにほぼ平行に延びている。
【0041】
図1,6において、車体2の後面視(
図1)で、上記インナパネル13の下端部の左右各角部において、その側縁部13d側から下縁部13e側にまでほぼ直線的に全体的に延びる脆弱部52が形成されている。この脆弱部52は、上記インナパネル13の角部を屈曲させることにより形成され、前方に向かって開く溝53とされている。この溝53の底板は前記アウタパネル15の下部パネル19の前面(空間21側の内面)に接着剤14により接着されている。
【0042】
なお、上記溝53の底板は上記アウタパネル15の下部パネル19の前面に接着させなくてもよい。また、上記脆弱部52は上記インナパネル13の角部における側縁部13d側から下縁部13e側にまで延びるビードや長孔形状のスリットであってもよい。
【0043】
前記ダンパステー38は、ガスを封入したシリンダ式のもので、その長手方向に伸縮自在とされ、かつ、上記ガスの圧力により常時伸長するよう付勢されている。
【0044】
そして、上記ドア10を上方回動Aさせるときには、上記ダンパステー38は、その付勢力により伸長しながら、上記ドア10の自重を支持する。このため、上記ドア10の上方回動Aは軽快にできる。また、このように、ドア10を上方回動Aさせて、上記ドア開口9を全開にしたとき、上記ダンパステー38は、その付勢力により上記ドア10の自重の全てを支持する。このため、上記ドア10は上方回動Aした姿勢のままに保持され、つまり、上記ドア開口9が開かれたままに保持される(
図2中一点鎖線)。
【0045】
上記状態から、ドア10を下方回動Bさせようとするときには、上記ダンパステー38からの付勢力に打ち勝つように、上記ドア10に操作外力を与える。すると、上記ダンパステー38は下方回動Bするドア10に付勢力を与えながら収縮する。そして、このドア10は、上記ダンパステー38からの付勢力に対抗しながら下方回動Bして、上記ドア開口9を閉じる。
【0046】
前記したように、インナパネル13における枢支具23の取付部13aから同上インナパネル13におけるダンパステー38の他端部の他の取付部13bに至る上記インナパネル13の部分13cを、車体2の側面視(
図4)で、連続的な直線形状となるよう形成している。
【0047】
このため、上記インナパネル13の部分13cの上下方向のいずれかの部位に強度上の断点が生じることは未然に防止される。よって、上方回動Aさせたドア10の自重をダンパステー38がその付勢力で支持する場合や、このダンパステー38からの付勢力に対抗しながら上記ドア10に操作外力を与えて、このドア10を下方回動Bさせる場合には、上記ダンパステー38の付勢力に基づき上記インナパネル13の部分13cのいずれかの部位に応力集中が生じることは抑制されて、ドア10が撓み易くなることが防止される。
【0048】
この結果、上方回動Aさせたドア10の自重を上記ダンパステー38がその付勢力で支持する場合には、上記したようにドア10が撓み易くなることが防止される分、より安定した支持が得られる。また、ドア10を回動させる場合にも、上記したようにドア10が撓み易くなることが防止される分、このドア10の回動操作性が、より向上する。
【0049】
また、上記したドア10の安定した支持を得ることや、ドア10の回動操作性の向上という効果は、前記したように、インナパネル13の部分13cを連続的な直線形状にすることにより達成される。
【0050】
このため、ドア10の撓み防止として、上記インナパネル13を補強する補強材を別途に設けないで足りることから、ドア10の部品点数の増加が抑制され、つまり、簡単な構成によって、かつ、安価に上記効果が達成される。しかも、上記したように別途の補強材を設けないで足りることから、上記効果は、ドア10の質量の増加を防止しつつ達成でき、これは、樹脂製のドア10を備えて軽量化を目的とする車両1にとって、極めて有益である。
【0051】
また、前記したように、インナパネル13におけるダンパステー38の他端部の他の取付部13b近傍の後面から一体的に突出する突出体43と、上記他の取付部13bに一端部側が取り付けられ、他端部側が上記突出体43の突出端部に取り付けられる補強材45とを備えている。
【0052】
ここで、上方回動させたドア10の自重をダンパステー38がその付勢力で支持する場合や、このダンパステー38からの付勢力に対抗しながら上記ドア10に操作外力を与えて、このドア10を下方回動Bさせる場合、更には、上記ドア10を下方回動Bさせて、上記ドア開口9を衝撃的に閉じる場合には、上記インナパネル13におけるダンパステー38の他端部の他の取付部13bには上記付勢力や衝撃力の外力によって応力集中が生じがちとなる。
【0053】
しかし、上記した他の取付部13bに外力が与えられた場合に、この外力が大きくて、この外力の少なくとも一部が上記補強材45を介し上記突出体43の突出端部に伝達された場合には、上記インナパネル13に一体的に突出して樹脂製である上記突出体43は、これが金属製のものである場合に比べ、上記のように伝達された外力により円滑に弾性的に撓んで、上記外力が上記した他の取付部13bに集中することが効果的に緩和される。よって、この外力により上記した他の取付部13bに応力集中が生じることは、より確実に防止されることから、この他の取付部13bの上記外力による破損は、より確実に防止される。
【0054】
また、上記した他の取付部13bの破損防止は、第1に、スポット溶接を採用しないで達成されることから、ドア10の形成作業は容易にできる。また、第2に、上記突出体43は、インナパネル13から一体的に突出したものであって樹脂製であり、その弾性かつ軽量という特性が有効利用されて、上記したように外力が緩和される。このため、上記他の取付部13bの破損防止をする場合でも、上記したように軽量な上記突出体43を利用することにより、ドア10の質量の増加を防止してドア10を軽量にできる。そして、これは、樹脂製のドア10を備えて軽量化を目的とする車両1にとって、極めて有益である。
【0055】
また、前記したように、上端部が補強プレート28を介しインナパネル13の上端部に連結され、下端部が上記補強材45を介しインナパネル13の上下方向の中途部に連結される補強バー50を設けている。
【0056】
このため、上記ドア10の樹脂製インナパネル13が、外気温度、ドア10の自重、もしくはダンパステー38の付勢力により伸長しようとするとき、この伸長は、上記補強バー50に引張応力である反力が生じることによって防止される。よって、上記後壁4のドア開口9に対するドア10の良好な建付精度が維持される。
【0057】
また、前記したようにインナパネル13におけるダンパステー38の他端部の他の取付部13bに何らかの外力が与えられるとき、この外力の一部は上記補強バー50によりインナパネル13の上端部側に伝達されて上記外力が分散される。このため、上記外力により上記した他の取付部13bに応力集中が生じることは、更に、確実に防止される。よって、上記した他の取付部13bが上記外力により破損することは、更に確実に防止される。