特許第5669570号(P5669570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669570
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】放送受信機
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/16 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
   H04B1/16 G
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-291830(P2010-291830)
(22)【出願日】2010年12月28日
(65)【公開番号】特開2012-142647(P2012-142647A)
(43)【公開日】2012年7月26日
【審査請求日】2013年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】クラリオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100169856
【弁理士】
【氏名又は名称】尾山 栄啓
(72)【発明者】
【氏名】稲子 和仁
(72)【発明者】
【氏名】野澤 恒夫
(72)【発明者】
【氏名】富田 陽紀
(72)【発明者】
【氏名】若林 和紀
(72)【発明者】
【氏名】清水 剛志
(72)【発明者】
【氏名】齋賀 菜美
(72)【発明者】
【氏名】石井 伸
(72)【発明者】
【氏名】多田 成輝
【審査官】 小池 堂夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−307215(JP,A)
【文献】 特開2007−195072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RDS(Radio Data System)方式の信号フォーマットにより伝送される放送信号を受信するチューナと、
前記チューナが受信した放送信号からAF(Alternative Frequencies)局データを復号し記憶する記憶手段と、
前記AF局データを用いた周波数追従で放送信号を正常に復号できる信号レベルが得られた放送周波数に含まれる多重データを参照して、前記記憶手段に記憶されているAF局データに所定の識別情報を付す識別情報付与手段と、
を有し、
前記識別情報に基づいて追従する放送周波数の順序を決定し、周波数追従を実行し、
前記識別情報付与手段は、前記信号レベルが得られた放送周波数に含まれる追従対象側のPI(Programme Identification)コードと、前記記憶手段に記憶されている最も古いAF局データに含まれる該記憶手段側のPIコードとを比較し、該比較結果に応じて前記識別情報を該最も古いAF局データに付す、
放送受信機。
【請求項2】
前記記憶手段は、
前記AF局データを記憶する第一の記憶領域と、
前記第一の記憶領域と異なる第二の記憶領域と、
を有し、
前記識別情報付与手段は、前記第一の記憶領域の記憶容量を超えるAF局データが記憶される場合に前記比較処理を実行し、前記識別情報を付したAF局データを該第一の記憶領域から前記第二の記憶領域に移動する、
請求項に記載の放送受信機。
【請求項3】
前記識別情報を付したAF局データを前記第二の記憶領域に移動後、周波数追従の実行前に受信していたAF局データを前記第一の記憶領域に記憶する、
請求項に記載の放送受信機。
【請求項4】
移動体に搭載された、
請求項1から請求項の何れか一項に記載の放送受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送受信機に関連し、詳しくは、RDS方式による多重放送に適合して設計され、当該方式の信号フォーマットによる放送信号を受信して処理するように構成された放送受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
放送番組に関連する関連データ等をオーディオ放送信号に多重して伝送するラジオ放送が規格化され、実用化されている。その一つに、例えばヨーロッパ放送連合で規格化されたRDS(Radio Data System)が知られている。RDS方式では、アナログFM放送信号にデジタルデータが多重されている。RDS方式の多重データ(以下、「RDSデータ」と記す。)には、PI(Programme Identification)コード、AF(Alternative Frequencies)リスト等が含まれている。PIコードは、国名コードや番組コード等を含む番組識別コードである。AFリストは、同一の又は関連する番組を放送する放送局の周波数リストである。RDS方式に適合して設計された放送受信機は、例えば車で移動中に選択局のサービスエリアを外れると、AFリストを参照して同一番組等を放送する別の放送局(以下、「AF局」と記す。)への受信切替を自動的に行う。この種の放送受信機の具体的構成例は特許文献1に記載されている。
【0003】
ところで、受信状態が悪化している状況下においては、選択局で放送されている全てのRDSデータをロス無く受信することが難しい。例えば受信エラーが発生した場合は、AFリストの一部又は全部を復号できない虞がある。受信状態が良好であっても、カバーエリアの関係上、物理的に受信可能な全てのAF局がAFリストに含まれているとは限らない。
【0004】
そこで、放送受信機は、過去に受信したAF(以下、説明の便宜上「実績AF」と記す。)リストをメモリに蓄積する。放送受信機は、選択局の受信状態が悪化すると、メモリ内の実績AFリストを優先的にチェックして実績AF局を追従し、受信の可否を試行する。実績AF局の受信状態が良好でない場合は、追従を行う前に受信していた番組のAF(以下、説明の便宜上「受信AF」と記す。)リストを参照して受信AF局を追従し、受信の可否を試行する。
【0005】
実績AFリストには、受信エラー等により聴取している番組から取得できないAF局データが含まれていることがある。実績AFリストは、受信AFリストのAF局抜けを補う点で有益な情報である。しかし、実績AF局データの記憶を無制限に認めると、受信できない実績AF局データをメモリ内に数多く抱えることになる。そのため、実績AF局のチェック時間が長くなり、受信切替が速やかに行われない不具合が生じる。そこで、記憶可能な実績AF局データ数には上限が設定されている。制限数を超える実績AF局データを記憶する場合は、古い実績AF局データが順に破棄される。制限数を超えない場合であっても、受信を試行して失敗した実績AF局データは破棄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−107320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本件特許出願時の当該分野においては、記憶可能な実績AF局データ数を上記の通りに効果的に制限するのが技術常識である。しかし、本発明者は、これまで破棄の対象とされている実績AF局データの中にも受信可能なAF局のデータが含まれている可能性を考慮して、当該実績AF局データを有効活用すべきことに着眼した。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、破棄の対象とされていた実績AF局データを利用して受信切替を行うのに好適な放送受信機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る放送受信機は、RDS方式の信号フォーマットにより伝送される放送信号を受信するチューナと、チューナが受信した放送信号からAF局データを復号し記憶する記憶手段と、AF局データを用いた周波数追従で放送信号を正常に復号できる信号レベルが得られた放送周波数に含まれる多重データを参照して、記憶手段に記憶されているAF局データに所定の識別情報を付す識別情報付与手段とを有し、識別情報に基づいて追従する放送周波数の順序を決定し、周波数追従を実行することを特徴としている。
【0010】
このように、記憶手段内のAF局データを破棄せずに識別情報を付して保持しておくと、従来破棄されていたAF局にまで追従対象を拡張できると共に、識別情報に基づいた効率的な周波数追従を行うことが可能になる。受信可能なAF局の追従漏れが軽減されるため、ユーザは高品位な放送サービスをより一層持続的に聴取できるようになる。
【0011】
識別情報付与手段は、周波数追従で放送信号を正常に復号できる信号レベルが得られた放送周波数に含まれる追従対象側のPIコードと、記憶手段に記憶されている最も古いAF局データに含まれる該記憶手段側のPIコードとを比較し、該比較結果に応じて識別情報を該最も古いAF局データに付す構成としてもよい。
【0012】
記憶手段は、例えばAF局データを記憶する第一の記憶領域と、第一の記憶領域と異なる第二の記憶領域とを有した構成としてもよい。この場合、識別情報付与手段は、第一の記憶領域の記憶容量を超えるAF局データが記憶される場合に比較処理を実行し、該識別情報を付したAF局データを該第一の記憶領域から第二の記憶領域に移動する。
【0013】
本発明に係る放送受信機は、識別情報を付したAF局データを第二の記憶領域に移動後、周波数追従の実行前に受信していたAF局データを第一の記憶領域に記憶する構成としてもよい。
【0014】
識別情報付与手段は、周波数追従で放送信号を正常に復号できる信号レベルが得られた放送周波数に含まれる追従対象側のPIコードと、周波数追従を試行して失敗した記憶手段に記憶されているAF局データに含まれる該記憶手段側のPIコードとを比較し、該比較結果に応じて識別情報を該追従失敗したAF局データに付す構成としてもよい。
【0015】
本発明に係る放送受信機は、一般乗用車等の移動体に搭載された機器であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、破棄の対象とされていた実績AF局データを利用して受信切替を行うのに好適な放送受信機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態の放送受信機の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態において実行される処理のフローチャートを示す図である。
図3】本発明の実施形態において実行される処理のフローチャートを示す図である。
図4】本発明の実施形態において実行される処理のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の放送受信機について説明する。本実施形態の放送受信機は、RDS方式による多重放送の受信に適したラジオである。
【0019】
図1は、本実施形態の放送受信機1の構成を示すブロック図である。放送受信機1は、車載型の放送受信機であり、一般乗用車等に装備される。放送受信機1は、RDS方式による多重放送に適合して設計され、当該方式の信号フォーマットによる放送信号を受信して処理するように構成されている。
【0020】
図1に示されるように、放送受信機1は、アンテナ101、チューナ102、アナログ信号処理回路103、オーディオ信号処理回路104、パワーアンプ105、スピーカ106、RDS復調器107、PLL(Phase Locked Loop)回路108、マイクロコンピュータ109、入力インタフェース110、ディスプレイ111を有している。
【0021】
放送受信機1は、放送電波をアンテナ101で受信してチューナ102に出力する。チューナ102は、マイクロコンピュータ109によるPLL回路108を介した制御により、受信電波から選択局のRF(Radio Frequency)信号を抽出する。抽出されたRF信号は、フィルタリング等の信号処理に適した中間周波数に周波数変換される。チューナ102は、周波数変換によって得たIF(Intermediate Frequency)信号をアナログ信号処理回路103に出力する。
【0022】
選択局は、例えば入力インタフェース110に対するユーザ操作により指定される。選択局の指定情報は、マイクロコンピュータ109の内蔵RAM(Random Access Memory)に記憶される。マイクロコンピュータ109は、例えば放送受信機1の電源投入直後、内蔵RAMの記憶情報に従ってPLL回路108を介したチューナ102の選局動作を制御する。
【0023】
アナログ信号処理回路103は、IF検波(IF-Detection)回路、ノイズキャンセラ(Noise Canceller)、弱電界処理(Multiplex)回路を有している。アナログ信号処理回路103に入力したIF信号は、IF検波回路でオーディオ信号に検波後、ノイズキャンセラによってノイズが除去される。オーディオ信号は、弱電界処理回路により、ミュート、ハイカット、セパレーション制御等の選択局の受信状態に応じた処理が施されてオーディオ信号処理回路104に出力される。
【0024】
オーディオ信号処理回路104に入力したオーディオ信号は、所定のオーディオ信号処理後、パワーアンプ105によるボリュームに応じた利得調節を経てスピーカ106から音声として出力再生される。
【0025】
アナログ信号処理回路103には、例えばSメータが内蔵されている。Sメータは、アナログオーディオ信号復調時の検波電圧の値を所定のサンプリング周期で測定してマイクロコンピュータ109に出力する。上記検波電圧値は、受信電波に比例した直流電圧であり、受信電波のCN比と相関がある。マイクロコンピュータ109は、上記検波電圧値を監視して受信電波のCN比を推定する。
【0026】
アナログ信号処理回路103で検波された信号はRDS復調器107にも出力される。検波信号は、RDS復調器107による復調処理後、マイクロコンピュータ109のRDS復号器でRDSデータに復号されて内蔵RAMに記憶される。
【0027】
RDSデータには、PS(Programme Service)、RT(Radio Text)、AFリスト、PIコード等が含まれている。マイクロコンピュータ109は、例えばPS、RTをディスプレイ111の表示画面に表示し、AFリストやPIコードの情報に従ってPLL回路108を介してチューナ102の選局動作を制御する。
【0028】
内蔵RAMには、実績AF局データが記憶されている。実績AF局データには、PIコードや放送周波数等の放送局の情報が含まれている。内蔵RAMに記憶可能な実績AF局データ数には上限が設定されている。図2は、制限数を超える実績AF局データを記憶する際に実行される処理のフローチャートを示す。説明の便宜上、本明細書中の説明並びに図面において、処理ステップは「S」と省略して記す。
【0029】
例えば選択局の受信状態の悪化に伴い周波数追従が行われる場合、選択局の受信切替完了前に図2のフローチャートの処理が実行される。周波数追従では、AF局が所定の順序でテストされ、充分な信号レベル(放送信号を正常に復号できる信号レベル)が得られるか否かがチェックされる。周波数追従の具体的説明は後述する。
【0030】
図2に示されるように、S1の処理では、内蔵RAMに記憶されている実績AF局データ数が制限数に達しているか否かが判定される。実績AF局データ数が制限数に達していない場合(S1:NO)、周波数追従を行う前に受信していた番組のPIコードや放送周波数等の情報が最も新しい実績AF局データとして内蔵RAMに記憶される(S7)。実績AF局データの記憶後、本フローチャートの処理は終了する。
【0031】
内蔵RAM内の実績AF局データ数が制限数に達している場合(S1:YES)、内蔵RAM内の最も古い実績AF局データ(以下、「最古実績AF局データ」と記す。)のPIコードと、周波数追従で充分な信号レベルが得られた放送周波数に重畳されているPIコード(すなわち、受信を希望するPIコードであり、以下、「追従対象PIコード」と記す。)が全桁一致しているか否かが判定される(S2)。
【0032】
最古実績AF局データのPIコードと追従対象PIコードが全桁一致していると判定された場合(S2:YES)、最古実績AF局データが内蔵RAM内の受信AF記憶領域に移動する(S6)。そのため、実績AF局データ用の記憶領域に一データ分の空きができる。受信AF記憶領域は、実績AF局データを記憶する領域とは別個に割り当てられた、受信AF局データを記憶するための領域である。説明の便宜上、受信AF記憶領域に移動した最古実績AF局データを「最古受信AF局データ」と記す。S7の処理では、周波数追従を行う前に受信していた番組のPIコードや放送周波数等の情報が最も新しい実績AF局データとして内蔵RAMに記憶され、本フローチャートの処理は終了する。
【0033】
最古実績AF局データのPIコードと追従対象PIコードが一致していないと判定された場合(S2:NO)、両PIコードのAreaコードのみが相違するか否かが判定される(S3)。ここで、PIコードは、2バイト構成であり、上位1バイト中の下位4ビットがAreaコードと定義される。
【0034】
最古実績AF局データのPIコードと追従対象PIコードのAreaコード以外が一致する(言い換えると、Areaコードのみ不一致の)場合(S3:YES)、最古実績AF局データの反転フラグがオンになる(S4)。反転フラグは、内蔵RAM内の実績AF局データとAreaコードのみが相違することを示すフラグである。S6の処理では、反転フラグがオンされた最古実績AF局データが受信AF記憶領域に移動する。そのため、実績AF局データ用の記憶領域に一データ分の空きができる。S7の処理では、周波数追従を行う前に受信していた番組のPIコードや放送周波数等の情報が最も新しい実績AF局データとして内蔵RAMに記憶され、本フローチャートの処理は終了する。
【0035】
最古実績AF局データのPIコードと追従対象PIコードがAreaコードのみ相違する場合以外は(S3:NO)、最古実績AF局データは破棄される(S5)。そのため、実績AF局データ用の記憶領域に一データ分の空きができる。S7の処理では、周波数追従を行う前に受信していた番組のPIコードや放送周波数等の情報が最も新しい実績AF局データとして内蔵RAMに記憶され、本フローチャートの処理は終了する。
【0036】
図3は、別の形態の処理のフローチャートを示す。選択局の受信状態が悪化した場合、内蔵RAM内の実績AF局データを参照して実績AF局の追従が行われる。図3に示されるように、実績AF局の受信状態が悪く実績AF局への追従が失敗すると(S11)、追従失敗の原因がPIコードエラーか否かが判定される(S12)。具体的には、追従を試みた内蔵RAM内の実績AF局(以下、「追従失敗実績AF局」と記す。)データのPIコードと追従対象PIコードが全桁一致するか否かが判定される。両PIコードが全桁一致する場合(S12:NO)、本フローチャートの処理は終了する。両PIコードが不一致の場合(S12:YES)、処理はS13に進む。
【0037】
S13の処理では、追従失敗実績AF局データのPIコードと追従対象PIコードの不一致の内容が検出される。両PIコードがAreaコードのみ相違する場合(S13:YES)、追従失敗実績AF局データの反転フラグがオンになる(S14)。S15の処理では、反転フラグがオンされた追従失敗実績AF局データが受信AF記憶領域に移動する。説明の便宜上、受信AF記憶領域に移動した追従失敗実績AF局データを「追従失敗受信AF局データ」と記す。追従失敗受信AF局データの移動後、本フローチャートの処理は終了する。
【0038】
追従失敗実績AF局データのPIコードと追従対象PIコードがAreaコードのみ相違する場合以外は(S13:NO)、追従を試みたAFのPIコードが妨害波等の影響で正常に復号できていない可能性が高い。そのため、追従失敗実績AF局データのPIエラーフラグがオンになる(S16)。S15の処理では、PIエラーフラグがオンされた追従失敗実績AF局データが受信AF記憶領域に移動する。追従失敗受信AF局データの移動後、本フローチャートの処理は終了する。
【0039】
図4は、選択局の受信状態が悪化した場合に周波数追従を行ってAF局の受信切替を所定の優先順位に従って試行する処理のフローチャートを示す。図4のフローチャートの処理は、放送受信機1の動作中、繰り返し実行される。
【0040】
図4に示されるように、S31の処理では、所定のAF局切替開始条件が満たされるか否かが監視される。例えば選択局の受信強度が所定の閾値を下回るとき、受信状態の悪化に伴うAF局の受信切替が必要であり、所定のAF局切替開始条件が満たされる。所定のAF局切替開始条件が満たされない場合(S31:NO)、本フローチャートの処理は終了する。所定のAF局切替開始条件が満たされる場合(S31:YES)、処理はS32に進む。
【0041】
S32の処理では、マイクロコンピュータ109の内蔵タイマAのカウントが開始される。S33の処理では、内蔵RAM内の実績AF局データを参照して実績AF局に対する追従が行われる。追従は、内蔵RAM内の新しい実績AF局から順に試行される。追従可能な実績AF局が検出された場合(S34:YES)、受信周波数が当該実績AF局に切り替えられる。次いで、内蔵タイマAがクリアされ(S45)、本フローチャートの処理は終了する。
【0042】
追従可能な実績AF局が検出されない場合(S34:NO)、内蔵タイマAのカウント値がカウント値Bを超えているか否かが判定される(S35)。カウント値Bを超えていない場合(S35:NO)、受信AF記憶領域内の確定フラグがオンされた受信AF局データを参照して受信AF局に対する追従が行われる(S36、S42)。追従では、確定フラグがオンされた受信AF局データの中から受信最良局を探す。受信最良局が検出された場合(S43:YES)、受信周波数が当該受信AF局に切り替えられる。次いで、内蔵タイマAがクリアされ(S45)、本フローチャートの処理は終了する。
【0043】
確定フラグがオンされた受信AF局の中から追従可能な受信AF局が検出されない場合(S43:NO)、所定のAF局切替開始条件が満たされるか否かが改めてチェックされる(S44)。所定のAF局切替開始条件が満たされない場合(S44:NO)、内蔵タイマAがクリアされ(S45)、本フローチャートの処理は終了する。所定のAF局切替開始条件が満たされる場合(S44:YES)、処理はS33に戻り、本フローチャートの処理は継続する。
【0044】
カウント値Cは、カウント値Bよりも大きい値として定義される。内蔵タイマAのカウント値がカウント値Bを超えるがカウント値Cに満たない場合(S35:YES、S37:NO)、受信AF記憶領域内のフラグ無しの受信AF局データを参照して受信AF局に対する追従が行われる(S38、S42)。追従では、フラグ無しの受信AF局データの中から受信最良局を探す。受信最良局が検出された場合(S43:YES)、受信周波数が当該受信AF局に切り替えられる。次いで、内蔵タイマAがクリアされ(S45)、本フローチャートの処理は終了する。なお、確定フラグは、一定条件下でオフされる。一例として、マニュアルチューニングやシーク等により受信周波数を変更した場合に、新たに受信した局のRDSデータのAFが実績AF局データとして内蔵RAMに記憶されていれば、当該実績AF局データは確定フラグがオフされた(フラグ無しの)状態で受信AF記憶領域に移動する。
【0045】
フラグ無しの受信AF局の中から追従可能な受信AF局が検出されない場合(S43:NO)、所定のAF局切替開始条件が満たされるか否かが改めてチェックされる(S44)。所定のAF局切替開始条件が満たされない場合(S44:NO)、内蔵タイマAがクリアされ(S45)、本フローチャートの処理は終了する。所定のAF局切替開始条件が満たされる場合(S44:YES)、処理はS33に戻り、本フローチャートの処理は継続する。
【0046】
カウント値Dは、カウント値Cよりも大きい値として定義される。内蔵タイマAのカウント値がカウント値Cを超えるがカウント値Dに満たない場合(S35:YES、S37:YES、S39:NO)、受信AF記憶領域内の反転フラグがオンされた受信AF局データを参照して受信AF局に対する追従が行われる(S40、S42)。追従では、反転フラグがオンされた受信AF局データの中から受信最良局を探す。受信最良局が検出された場合(S43:YES)、受信周波数が当該受信AF局に切り替えられる。次いで、内蔵タイマAがクリアされ(S45)、本フローチャートの処理は終了する。
【0047】
反転フラグがオンされた受信AF局の中から追従可能な受信AF局が検出されない場合(S43:NO)、所定のAF局切替開始条件が満たされるか否かが改めてチェックされる(S44)。所定のAF局切替開始条件が満たされない場合(S44:NO)、内蔵タイマAがクリアされ(S45)、本フローチャートの処理は終了する。所定のAF局切替開始条件が満たされる場合(S44:YES)、処理はS33に戻り、本フローチャートの処理は継続する。
【0048】
内蔵タイマAのカウント値がカウント値Dを超える場合(S35:YES、S37:YES、S39:YES)、受信AF記憶領域内のPIエラーフラグがオンされた受信AF局データを参照して受信AF局に対する追従が行われる(S41、S42)。追従では、PIエラーフラグがオンされた受信AF局データの中から受信最良局を探す。受信最良局が検出された場合(S43:YES)、受信周波数が当該受信AF局に切り替えられる。次いで、内蔵タイマAがクリアされ(S45)、本フローチャートの処理は終了する。
【0049】
PIエラーフラグがオンされた受信AF局の中から追従可能な受信AF局が検出されない場合(S43:NO)、所定のAF局切替開始条件が満たされるか否かが改めてチェックされる(S44)。所定のAF局切替開始条件が満たされない場合(S44:NO)、内蔵タイマAがクリアされ(S45)、本フローチャートの処理は終了する。所定のAF局切替開始条件が満たされる場合(S44:YES)、処理はS33に戻り、本フローチャートの処理は継続する。
【0050】
このように、従来破棄されていた実績AF局データを条件付きで保持すると共に所定の優先順位付けを行うと、周波数追従の時間を効率良く抑えつつ、破棄対象であった実績AF局データを利用した受信切替が好適に達成される。受信可能なAF局の追従漏れが軽減されるため、ユーザは高品位な放送サービスをより一層持続的に聴取できるようになる。なお、確定フラグ付きのAFは、正常な復号結果より得られたデータに含まれるAFであり信頼性が高いため、追従試行の優先順位が高い。PIエラーフラグ付きのAFは、過去に異なる局と判断されたものである。しかし、PIエラーフラグ付きのAFは、エリアを移動して受信環境が改善した結果、同一局と判断される可能性もある。但し、同一局と判断される可能性は低いため、追従試行の優先順位が低い。反転フラグ付きのAFは、放送エリアが異なるだけで同じ内容を放送している可能性がある。そのため、PIエラーフラグ付きのAFよりも追従試行の優先順位が高い。
【0051】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0052】
101 アンテナ
102 チューナ
103 アナログ信号処理回路
104 オーディオ信号処理回路
105 パワーアンプ
106 スピーカ
107 RDS復調器
108 PLL回路
109 マイクロコンピュータ
110 入力インタフェース
111 ディスプレイ
図1
図2
図3
図4