特許第5669605号(P5669605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669605
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】部品供給装置および部品供給方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 21/00 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
   B23P21/00 307P
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-24805(P2011-24805)
(22)【出願日】2011年2月8日
(65)【公開番号】特開2012-161889(P2012-161889A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2013年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123434
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 英昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(72)【発明者】
【氏名】岩下 純久
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−161967(JP,A)
【文献】 特開2010−152865(JP,A)
【文献】 実開平03−123635(JP,U)
【文献】 実開昭60−004328(JP,U)
【文献】 特開2009−142949(JP,A)
【文献】 特開2010−082799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品供給領域に供給された部品を用いて所定の作業を行い、作業後の当該部品を前記部品供給領域へ戻す動作を行うロボットに対し、部品の供給および作業後の部品の取出を行う部品供給装置であって、
前記ロボットの可動領域内に設けられた少なくとも2箇所以上の部品供給領域それぞれと作業者の作業領域との間で手動により往復移動される、少なくとも2以上の部品供給手段と、
前記ロボットにより作業後の部品が前記部品供給手段に戻されたか否かを判断する状況判断手段と、
前記部品供給手段が前記部品供給領域に移動したか否かを判断する可動判断手段と、
前記状況判断手段で作業後の部品が戻されたと判断した部品供給手段のロック機構を解除して、当該部品供給手段を前記部品供給領域から前記作業者の作業領域へ移動可能な状態にすると共に、前記可動判断手段で前記部品供給領域に移動したと判断した部品供給手段のロック機構を動作させて、当該部品供給手段を前記部品供給領域から移動不可能な状態にするロック制御手段と、
前記ロック制御手段でロック機構を解除した部品供給手段について、当該部品供給手段を前記作業者の作業領域へ移動させて作業後の部品の取出および新たな部品の供給を行うことを、前記作業者に対して指示する指示手段とを備えることを特徴とする部品供給装置。
【請求項2】
部品供給領域に供給された部品を用いて所定の作業を行い、作業後の当該部品を前記部品供給領域へ戻す動作を行うロボットに対し、部品の供給および作業後の部品の取出を行う部品供給装置に適用する部品供給方法であって、
前記ロボットの可動領域内に設けられた少なくとも2箇所以上の部品供給領域それぞれと作業者の作業領域との間で手動により往復移動される、少なくとも2以上の部品供給手段それぞれに対して、
状況判断手段が、前記ロボットにより作業後の部品が前記部品供給手段に戻されたか否かを判断する状況判断ステップと、
ロック制御手段が、前記状況判断ステップで作業後の部品が戻されたと判断した部品供給手段のロック機構を解除して、当該部品供給手段を前記部品供給領域から前記作業者の作業領域へ移動可能な状態にするロック解除ステップと、
指示手段が、前記ロック解除ステップでロック機構を解除した部品供給手段について、当該部品供給手段を前記作業者の作業領域へ移動させて作業後の部品の取出および新たな部品の供給を行うことを、前記作業者に対して指示する指示ステップと、
可動判断手段が、前記部品供給手段が前記部品供給領域に移動したか否かを判断する可動判断ステップと、
前記ロック制御手段が、前記可動判断ステップで前記部品供給領域に移動したと判断した部品供給手段のロック機構を動作させて、当該部品供給手段を前記部品供給領域から移動不可能な状態にするロック動作ステップとを備えることを特徴とする部品供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業者とロボットの間に介在して部品の供給および取出を行う部品供給装置および部品供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生産設備内でロボットを用いて部品を組み立てる作業工程において、このロボットとの間で部品を供給したり完成品を取り出したりする必要がある。
部品供給装置(例えば、ローダ・アンローダ機構)が無い場合、作業者が部品供給および取出を行うため、作業者の作業範囲とロボットの可動範囲を隔離することが不可能となる。そのため、作業者による部品供給および取出に要する時間分、サイクルタイムが伸びてしまう。また、作業者の作業中はロボットのアクチュエータの電源を切断する場合があり、そうすると、原点復帰が必要なアクチュエータでは原点復帰の時間を要するため、サイクルタイムが伸びてしまう。これらの設備停止ロスは、設備効率化の阻害要因となる。
【0003】
一方、ローダ・アンローダ機構(例えば、特許文献1参照)を介して部品供給および取出しを行う場合、作業者の作業範囲とロボットの可動範囲を隔離することが可能となる。しかしながら、ローダ・アンローダ機構自体がアクチュエータおよび可動部を具備しているため、作業者をローダ・アンローダ機構から隔離する等の何らかの措置が必要となる。例えば、非特許文献1に開示された部品供給装置は、作業ステージと部品供給ステージの2ステージをテーブル回転方式で交互に入れ替えることで、作業者とロボットを隔離すると共に、ロボットの作業中にも部品を供給および取出し可能である。しかしながら、テーブル回転中は扉が閉まりその間は部品供給ができないため、設備停止ロスの課題を完全には解決できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−110640号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】マコー株式会社、[online]、[平成23年1月4日検索]、インターネット<URL:http://www.macoho.co.jp/r_search/detail_souchi/00077.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の部品供給装置は以上のように構成されているので、部品の供給および取出を行う際に、ロボットの作業時間ロスが発生してしまうという課題があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、作業者が部品の供給および取出を行う際のロボットの作業時間ロスを抑制してサイクルタイムを短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る部品供給装置は、ロボットの可動領域内に設けられた少なくとも2箇所以上の部品供給領域それぞれと作業者の作業領域との間で手動により往復移動される、少なくとも2以上の部品供給手段と、ロボットにより作業後の部品が部品供給手段に戻されたか否かを判断する状況判断手段と、部品供給手段が部品供給領域に移動したか否かを判断する可動判断手段と、状況判断手段で作業後の部品が戻されたと判断した部品供給手段のロック機構を解除して、当該部品供給手段を部品供給領域から作業者の作業領域へ移動可能な状態にすると共に、可動判断手段で部品供給領域に移動したと判断した部品供給手段のロック機構を動作させて、当該部品供給手段を部品供給領域から移動不可能な状態にロックするロック制御手段と、ロック制御手段でロック機構を解除した部品供給手段について、当該部品供給手段を作業者の作業領域へ移動させて作業後の部品の取出および新たな部品の供給を行うことを、作業者に対して指示する指示手段とを備えるものである。
【0009】
この発明に係る部品供給方法は、ロボットの可動領域内に設けられた少なくとも2箇所以上の部品供給領域それぞれと作業者の作業領域との間で手動により往復移動される、少なくとも2以上の部品供給手段それぞれに対して、状況判断手段が、ロボットにより作業後の部品が部品供給手段に戻されたか否かを判断する状況判断ステップと、ロック制御手段が、状況判断ステップで作業後の部品が戻されたと判断した部品供給手段のロック機構を解除して、当該部品供給手段を部品供給領域から作業者の作業領域へ移動可能な状態にするロック解除ステップと、指示手段が、ロック解除ステップでロック機構を解除した部品供給手段について、当該部品供給手段を作業者の作業領域へ移動させて作業後の部品の取出および新たな部品の供給を行うことを、前記作業者に対して指示する指示ステップと、可動判断手段が、部品供給手段が部品供給領域に移動したか否かを判断する可動判断ステップと、ロック制御手段が、可動判断ステップで部品供給領域に移動したと判断した部品供給手段のロック機構を動作させて、当該部品供給手段を部品供給領域から移動不可能な状態にするロック動作ステップとを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、作業後の部品が戻されたと判断した部品供給手段のロック機構を解除して、当該部品供給手段を部品供給領域から作業者の作業領域へ移動可能な状態にすると共に、部品供給領域に移動したと判断した部品供給手段のロック機構を動作させて、当該部品供給手段を部品供給領域から移動不可能な状態にロックするようにして、ロボットがロックされた部品供給手段に在る部品を用いて作業を行って作業後の部品を当該部品供給手段に戻す間に、作業者が他の部品供給手段に在る作業後の部品を取出し新たな部品を供給することを可能にしたので、作業者が部品の供給および取出を行う際のロボットの作業時間ロスを抑制してサイクルタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施の形態1に係る部品供給装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る部品供給装置を適用した生産設備全体の構成を示す図である。
図3】実施の形態1に係る部品供給装置の動作を示すフローチャートである。
図4】実施の形態1に係る部品供給装置を適用した生産設備全体の動作を示すタイミングチャートである。
図5図4に示すタイミングチャートの続きである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る部品供給装置1の構成を示すブロック図である。この部品供給装置1は、ワーク(部品)をセットしたり、取り出したりするための領域であるトレイ(部品供給手段)にワークが在るか無いかの判断を行うトレイ状況判断手段2と、トレイを可動させてよいか判断するトレイ可動判断手段3と、トレイをロックして可動させないようにしたりロック解除して可動できるようにしたりするロック制御手段4と、作業者に作業の指示を与える表示制御手段5とを備える。
【0013】
また、図2は、部品供給装置1を適用した生産設備の構成を示す図である。以下では、作業者32がワークを第1トレイ10および第2トレイ20に供給し、ロボット30がワークを取り出して組立作業領域31で組立作業等の所定作業を行って完成品(部品)を第1トレイ10および第2トレイ20に戻す場合を例に用いて説明する。また、ロボット30と作業者32の間には、各作業領域を仕切るための隔離壁33を設けており、ロボット30の可動領域は隔離壁33を挟んだ一方のロボット作業領域であり、隔離壁33を超えて作業者領域側で作業することはできない。一方、作業者32は隔離壁33よりロボット作業領域側に侵入することはできない。
【0014】
第1トレイ10および第2トレイ20は、手動により可動して、隔離壁33を跨いでロボット作業領域と作業者領域を行き来することができる。第1トレイ10および第2トレイ20の可動機構はどのような構成であってもよく、例えば第1トレイ10および第2トレイ20側に可動レールを設け、作業領域側に固定レール11,21を設けて、作業者32が手動で可動可能に構成する。図示例の第1トレイ10は作業者領域に引き出された状態であり、第2トレイ20はロボット作業領域に収納された状態である。ロボット30は、第2トレイ20の領域(部品供給領域)において、トレイ上の部品を取出したり、完成品を戻したりすることが可能である。
また、これら第1トレイ10および第2トレイ20それぞれには、部品供給装置1と接続されたスイッチ(図中ではSW)12a,12b,22a,22bと、ロック機構13,23と、表示装置14,24とが設けられている。
【0015】
図1および図2において、部品供給装置1のトレイ状況判断手段2は、第1トレイ10および第2トレイ20にワークまたは完成品が在るか無いかを判断する。判断方法としては、例えばトレイ状況判断手段2にロボット30の動作シーケンスの情報を予め設定しておき、トレイ状況判断手段2がロボット30の動作のタイミングに応じてワークまたは完成品の有無を判断する。また例えば、第1トレイ10および第2トレイ20に近接センサ、光電センサ、画像センサ等のセンサを設置し、トレイ状況判断手段2がセンサの出力を取得してワークまたは完成品の有無を判断する。
【0016】
トレイ可動判断手段3は、第1トレイ10および第2トレイ20がロボット作業領域側に収納されたか否かを判断する。判断方法としては、例えば上述したような固定レール11のロボット30の側にスイッチ12aを配置し、第1トレイ10がスイッチ12aの設置位置まで可動するとこのスイッチ12aがオン状態となるようにする。そして、トレイ可動判断手段3がスイッチ12aのオン状態を検知して、第1トレイ10がロボット作業領域側に収納されたと判断する。第2トレイ20についても同様に、スイッチ22aを配置してオン状態を検知し、収納されたことを判断すればよい。なお、スイッチはロボット作業領域側だけでなく、作業者領域側にも配置して(図2に示すスイッチ12b,22b)、スイッチ12a,22aがオフ状態になり、続いてスイッチ12b,22bがオン状態になると第1トレイ10および第2トレイ20が作業者領域側に収納されたと判断するようにし、トレイ可動判断手段3の判断の確実性を高めてもよい。
また例えば、スイッチの代わりに近接センサ、光電センサ等のセンサを配置して、スイッチ同様に第1トレイ10および第2トレイ20の位置を検知してもよいし、トレイ状況判断手段2の画像センサを流用して判断してもよい。
【0017】
ロック制御手段4は、第1トレイ10および第2トレイ20にそれぞれ設けられたロック機構13,23を独立に制御し、トレイ状況判断手段2およびトレイ可動判断手段3の判断結果に基づいて、ロック機構13,23をロックして第1トレイ10および第2トレイ20を固定状態にしたり、ロックを解除して可動可能な状態にしたりする。ロック機構13,23はどのような構成であってもよく、少なくともロボット作業領域側での可動をロックおよびロック解除できればよい。
ロック動作条件としては、例えば、作業者32がワークをセットしたトレイをロボット作業領域に押し込むことを条件とし、少なくとも、トレイ可動判断手段3にてトレイがロボット作業領域側に収納されたことを判断して、ロック制御手段4がこのトレイのロック機構を動作させればよい。
ロック解除条件としては、例えば、ロボット30が完成品をトレイに戻すことを条件とし、少なくとも、トレイ状況判断手段2にてトレイに完成品が在ることを判断して、ロック制御手段4がこのトレイのロック機構を解除させればよい。
【0018】
表示制御手段5は、第1トレイ10および第2トレイ20にそれぞれ設けられた表示装置14,24を独立に制御し、トレイ状況判断手段2およびロック制御手段4の判断結果に基づいて、第1トレイ10および第2トレイ20のワーク有無の状況、およびロック/解除の状況を表示させる。作業者32はこの表示を確認して、トレイを可動させ、ワークをセットしたり完成品を取り出したりすることになる。
なお、トレイそれぞれに表示装置を設けてもよいし、複数のトレイで1台の表示装置を設けてもよい。また、スピーカなど音声装置以外の装置を用いて作業者32に指示を出してもよい。
また、隔離壁33を透明部材にして、作業者32が第1トレイ10および第2トレイ20へのワークのセット状態を目視できるようにし、表示制御手段5および表示装置14,24を省略してもよい。作業者32が完成品を取り出し不可能な状態の場合、第1トレイ10および第2トレイ20はロックされ引き出せないため、ロボット30の動作への影響はない。
【0019】
なお、図1の例では、部品供給装置1がトレイ状況判断手段2、トレイ可動判断手段3、ロック制御手段4および表示制御手段5から構成され、別体の第1トレイ10、第2トレイ20、スイッチ12a,22a、ロック機構13,23および表示装置14,24を制御するようにしたが、これに限定されるものではなく、別体の第1トレイ10などを部品供給装置1と一体に構成してもよい。
【0020】
次に、図3に示すフローチャートを用いて、部品供給装置1の動作を説明する。ここでは、説明を簡略にするため、部品供給装置1が1つの第1トレイ10を具備する場合を例に用いて、部品供給装置1の基本的な動作を説明する。
生産設備の初期状態では、第1トレイ10がロボット作業領域側に収納されているものとする。ロック制御手段4は第1トレイ10が可動可能な状態となったか否かを判断して(ステップST1、状況判断ステップ)、可動可能な状態になると(ステップST1“YES”)、そのトレイをロック解除する(ステップST2、ロック解除ステップ)。
【0021】
上述のロック解除条件では、第1トレイ10に完成品が在る場合を条件として挙げたが、生産設備の初回動作時は例外的に第1トレイ10が空である場合をロック解除条件とする。従って、ステップST1においてトレイ状況判断手段2が第1トレイ10を空と判断すると、ロック制御手段4がこの第1トレイ10を可動可能状態と判断して、ロック機構13のロックを解除する。続いて表示制御手段5が、ロック解除した第1トレイ10の表示装置14に、完成品取出およびワークセット可能状態であること、およびロック解除状態であることを表示する(ステップST3、指示ステップ)。
これ以降は、第1トレイ10に完成品が在れば、ロック制御手段4はこの第1トレイ10を可動可能状態と判断してロック解除し、この場合は表示制御手段5が表示装置14に完成品取り出し可能状態であること、およびロック解除状態であることを表示する。
【0022】
作業者32は、表示装置14の表示を確認して第1トレイ10を作業者領域に引き出し、完成品を取り出して、新しいワークを第1トレイ10にセットする。ワークセット後は、作業者32が手動により第1トレイ10をロボット作業領域へ押し出す。
【0023】
ロック制御手段4は、トレイ可動判断手段3の判断結果より、第1トレイ10がロボット作業領域側に収納されたか否かを判断して(ステップST4、可動判断ステップ)、収納された状態になると(ステップST4“YES”)、そのトレイをロックする(ステップST5、ロック動作ステップ)。また、表示制御手段5は表示装置14の表示を消す。
【0024】
ロボット30は、予め設定された動作シーケンスにより、ロックされた第1トレイ10にセットされたワークを取り出して組立作業領域31にハンドリングし、組み立て等の作業を行う。作業後のワークは完成品として元の第1トレイ10へ、ロボット30によりハンドリングされる。
【0025】
これを繰り返すことにより、ロボット30と作業者32とが互いに干渉することなく処理を進行することができる。
【0026】
上記では第1トレイ10のみの説明をしたが、第2トレイ20についても同様の処理を行えばよい。特に、トレイが2つある場合、一方のトレイをロボット作業領域側でロックしてロボット30が作業する間に、他方のトレイをロック解除して作業者32に完成品取出およびワークセットを行わせるようにすれば、ロボット30の待ち時間を無くすことができる。以下、具体例を示す。
【0027】
ここでは、図4および図5に示すタイミングチャートを用いて、生産設備全体の動作を説明する。なお、図4および図5において、第1トレイ10または第2トレイ20にワークが無い状態は空欄、在る場合は「ワ」、完成品がある場合は「完」と表記する。また、組立作業領域31にてロボット30が作業していない状態は空欄、作業中は「途」と表記する。
第1トレイ10はワーク無し、第2トレイ20はワーク在り、かつ、組立作業領域31にて第1トレイ10が供給したワークをロボット30が組み立て作業中の場合(ステップST11)、このロボット30が作業を完了すると完成品を組立作業領域31から取り出して(ステップST12)、元の第1トレイ10に置く(ステップST13)。
【0028】
完成品が第1トレイ10に置かれると、部品供給装置1は第1トレイ10が可動可能状態であると判断してロック機構13のロックを解除し、表示装置14に完成品取出およびワークセット可能状態であることを表示する(ステップST14)。詳細は前述したとおりである。
作業者32は、表示装置14の表示を確認してから第1トレイ10を引き寄せ、完成品を取り出して新しいワークをセットする(ステップST15)。詳細は後述するが、この作業は時間Tの範囲内であればどのタイミングでもよい。
ワークがセットされ第1トレイ10がロボット作業領域側に収納されると、部品供給装置1は表示装置14の表示を消す(ステップST16)と共に、ロック機構13をセットする。
【0029】
作業者32が第1トレイ10から完成品を取り出し新しいワークをセットしている間に、ロボット30は第2トレイ20にセットされたワークを取り出して組立作業領域31にハンドリングする(ステップST17)。そして、ロボット30はこのワークに対して作業を完了すると(ステップST18)、完成品を組立作業領域31から取り出して(ステップST19)、元の第2トレイ20に置く(ステップST20)。
このように、作業者32が第1トレイ10に対して作業している間は、ロボット30は第2トレイ20から取り出したワークに対して作業を行っており、第1トレイ10の領域へ取出作業を行うことは無いように動作する。従って、ロボット30が前回の完成品を第1トレイ10に置いてから今回の完成品を第2トレイ20に置くまでの時間T(ステップST13〜ST20の間)、作業者32は任意のタイミングで前回の完成品を第1トレイ10から取り出して新たなワークをセットすることができる。
【0030】
完成品が第2トレイ20に置かれると、部品供給装置1は第2トレイ20が可動可能状態であると判断してロック機構23のロックを解除し、表示装置24に完成品取出およびワークセット可能状態であることを表示する(ステップST21)。
作業者32は、表示装置24の表示を確認してから第2トレイ20を引き寄せ、完成品を取り出して新しいワークをセットする(ステップST22)。この作業も時間Tの範囲内であればどのタイミングでもよい。
ワークがセットされ第2トレイ20がロボット作業領域側に収納されると、部品供給装置1は表示装置24の表示を消す(ステップST23)と共に、ロック機構23をセットする。
【0031】
作業者32が第2トレイ20から完成品を取り出し新しいワークをセットしている間に、ロボット30は第1トレイ10にセットされたワークを取り出して組立作業領域31にハンドリングする(ステップST24)。そして、ロボット30はこのワークに対して作業を完了すると(ステップST25)、完成品を組立作業領域31から取り出して(ステップST26)、元の第1トレイ10に置く(ステップST27)。
【0032】
以下、これを繰り返す。即ち、完成品が第1トレイ10に置かれると、第1トレイ10のロックが解除され、作業者32に完成品取出およびワークセットの指示が出され(ステップST28)、作業者32が指示を受けて完成品の取り出しとワークのセットを行う(ステップST29)。この間に、ロボット30はもう一方の第2トレイ20からワークを取り出して組立作業領域31にハンドリングし(ステップST30)、作業を行う。
【0033】
以上の工程を繰り返すことによって、ロボット30と作業者32とが互いに干渉することなく、処理を進行することが可能となる。また、ロボット30が一方のトレイのワークについて組み立て等の作業を行っている時間Tの範囲内で、作業者32がもう一方のトレイについて完成品の取り出しとワークのセットを行えばよいため、ロボット30は作業者32の作業を待つ必要がなく、かつ、作業者32の作業のためにロボット30を停止させる必要がない。よって、作業時間のロスを最小限に抑えて、生産のサイクルタイムを短縮することができる。
【0034】
以上より、実施の形態1によれば、部品供給装置1は、隔離壁33で隔てられたロボット作業領域と作業者領域との間で手動により往復移動される第1トレイ10および第2トレイ20と、ロボット30により作業した後の完成品が第1トレイ10および第2トレイ20に戻されたか否かを判断するトレイ状況判断手段2と、第1トレイ10および第2トレイ20がロボット作業領域に収納されたか否かを判断するトレイ可動判断手段3と、トレイ状況判断手段2で完成品が戻されたと判断した第1トレイ10または第2トレイ20のロック機構13,23を解除して、このトレイをロボット作業領域から作業者領域へ移動可能な状態にすると共に、トレイ可動判断手段3でロボット作業領域に収納されたと判断した第1トレイ10または第2トレイ20のロック機構13,23を動作させて、このトレイをロボット作業領域から移動不可能な状態にするロック制御手段4と、ロック制御手段4でロック機構13,23を解除した第1トレイ10または第2トレイ20について、表示装置14,24により、このトレイを作業者領域へ移動させて完成品の取出および新たなワークの供給を行うことを作業者32に対して表示する表示制御手段5とを備えるように構成した。
このため、ロボット30がロックされた第1トレイ10および第2トレイ20のいずれか一方に在るワークを用いて作業を行って完成品を戻す間に、作業者32が第1トレイ10および第2トレイ20のいずれか他方にある完成品を取出し新たなワークをセットできる。
よって、作業者32が完成品の取出およびワークのセットを行う際のロボット30の作業時間ロスを抑制してサイクルタイムを短縮することができる。
【0035】
なお、上記実施の形態1では、部品供給装置1が第1トレイ10と第2トレイ20の2つのトレイを具備する構成としたが、これに限定されるものではなく、トレイが3つ以上あってもよい。作業者32がトレイから完成品を取り出し新しいワークをセットするのに要する時間間隔が図4および図5の時間T以上になる場合には、3つ以上のトレイがあることで、ロボット30の待ち時間を除去することができる。
【0036】
また、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、上述した実施の形態の構成に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても本発明に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1 部品供給装置
2 トレイ状況判断手段
3 トレイ可動判断手段
4 ロック制御手段
5 表示制御手段(指示手段)
10 第1トレイ(部品供給手段)
11,21 固定レール
12a,12b,22a,22b スイッチ
13,23 ロック機構
14,24 表示装置(指示手段)
20 第2トレイ(部品供給手段)
30 ロボット
31 組立作業領域
32 作業者
33 隔離壁
図1
図2
図3
図4
図5