(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照し本発明に係るヒンジの実施の一形態であるヒンジ100について説明する。
【0016】
図1に示す如く、ヒンジ100は複合機1の本体2と原稿圧着板3とを回動可能に連結する。複合機1は事務機器の実施の一形態であり、本体2および原稿圧着板3を具備する。
【0017】
本体2は本発明に係る第一連結対象物の実施の一形態である。
本実施形態の本体2は原稿読み取り装置、制御装置、印刷装置、表示装置および入力装置を具備する。本体2の原稿読み取り装置は本体2の上面に配置される。本体2の原稿読み取り装置は本体2の上面に載置された原稿を読み取る(原稿の画像情報を生成する)。本体2の制御装置は複合機1の各部の動作、より詳細には本体2の原稿読み取り装置、本体2の印刷装置および原稿圧着板3のADFの動作を制御する。本体2の制御装置は本体2の原稿読み取り装置が生成した画像情報および本体2に接続された回線(例えば、インターネット回線等)を通じて取得した画像情報を記憶することが可能である。本体2の印刷装置は本体2の原稿読み取り装置の下方に配置される。本体2の印刷装置は本体2の制御装置が記憶した画像情報に基づいて紙に画像を印刷する。本体2の表示装置は例えば液晶パネルからなり、複合機1の動作状況等に係る情報を表示する。
本体2の入力装置は例えばボタン、スイッチ等からなり、作業者が複合機1に対する指示等を入力する際に操作するものである。本体2の表示装置および入力装置は本体2の上面前端部に配置される。
【0018】
原稿圧着板3は本発明に係る第二連結対象物の実施の一形態である。
原稿圧着板3は本体2の原稿読み取り装置の上に載置された原稿を本体2の原稿読み取り装置に向かって押さえつける(圧着する)ことにより、本体2の原稿読み取り装置が原稿を読み取る際に原稿が動く(本体2の原稿読み取り装置との相対的な位置が変化する)ことを防止する。
原稿圧着板3は読取前原稿収容トレイ、ADF(Auto Document Feeder)および読取後原稿収容トレイを具備する。
原稿圧着板3のADFは原稿圧着板3の読取前原稿収容トレイに積層状態で収容された複数枚の原稿を一枚ずつ順に取り出して本体2の原稿読み取り装置の上の所定の読取位置に載置し、本体2の原稿読み取り装置による原稿の読み取りが終了した後、当該読取位置に載置された原稿を原稿圧着板3の読取後原稿収容トレイに搬送する。
【0019】
「事務機器」は、少なくとも原稿を読み取る(原稿の画像情報を取得する)機能を具備する装置を指す。
「原稿」は、シート状物(紙、樹脂製のシート等)のシート面(広い面)に文章、書画、写真等が記されたものを指す。
事務機器の具体例としては以下の(a)〜(d)等が挙げられる。
(a)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報を他の機器(例えば、パーソナルコンピュータ)に送信する機能を具備するスキャナー。
(b)原稿を読み取る機能、読み取った原稿に係る画像情報を通信回線を介して他の機器に送信する機能および他の機器から取得した画像情報をプリントアウトする機能を具備するファクス。
(c)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報をプリントアウトする機能を具備するコピー機。
(d)上記スキャナー、ファクス、およびコピー機としての機能を兼ねる複合機。
【0020】
本実施形態のヒンジ100は複合機1の本体2に原稿圧着板3を回動可能に連結する用途に用いられるが、本発明に係るヒンジの用途はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係るヒンジは、「二つの対象物の一方(第一連結対象物)と他方(第二連結対象物)とを回動可能に連結する用途」に広く適用可能である。
本発明に係るヒンジが適用される他の用途の具体例としては、事務機器の本体とトナーカートリッジを交換するためのハッチ(蓋)とを回動可能(開閉可能)に連結する用途、自動車の車体とボンネットとを回動可能(開閉可能)に連結する用途、便器と便座とを回動可能(開閉可能)に連結する用途、等が挙げられる。
【0021】
図1から
図8に示す如く、ヒンジ100はケース10、アーム20、回動ピン30、スライダ40およびバネ50(
図7参照)を具備する。
以下では、ヒンジ100を構成する各部材の詳細について説明する。
なお、以下では便宜上、
図1において実線で示す如く複合機1の原稿圧着板3が本体2に対して閉じているときの複合機1の上下方向、前後方向および左右方向を基準として(原稿圧着板3が本体2に対して閉じているときの複合機1の上下方向、前後方向および左右方向と、原稿圧着板3が本体2に対して閉じているときの複合機1が具備するヒンジ100の上下方向、前後方向および左右方向と、を対応させて)説明を行う。
【0022】
以下では、主に
図9を用いてケース10の詳細について説明する。
ケース10は本発明に係る第一ウイング部材の実施の一形態である。
図9に示す如く、本実施形態のケース10は左右方向に比べて前後方向に短い概ね直方体形状の部材であり、樹脂材料を一体成形することにより製造される。
【0023】
ケース10には収容室11が形成される。収容室11はケース10の内部に形成される空間であり、ケース10の後面に(後方に)開口している。収容室11の内周面は概ね、上面、下面、左側面、右側面および底面(前面)を有する。収容室11には後で詳述するスライダ40およびバネ50が収容される(
図7参照)。
【0024】
収容室11の内周面における上面の左右中央部には湾曲面11aが形成される。収容室11の内周面における下面の左右中央部には湾曲面11bが形成される。
収容室11の内周面における左側面の上端部には摺動溝11cが形成される。摺動溝11cは収容室11の内周面における左側面に開口し、かつ、収容室11の内周面における底面(前面)から収容室11の開口部まで前後方向に切り通される。
収容室11の内周面における右側面の上端部には摺動溝11dが形成される。摺動溝11dは収容室11の内周面における右側面に開口し、かつ、収容室11の内周面における底面(前面)から収容室11の開口部まで前後方向に切り通される。
収容室11の内周面における底面(前面)の左右中央部には突起11eが形成される。
突起11eは前端部が収容室11の内周面における底面(前面)に連なり、後方に突出する概ね円筒形状の突起である。
【0025】
ケース10には位置決め突起12・13が形成される。位置決め突起12・13はそれぞれケース10の上面の左後端部およびケース10の上面の右後端部に形成され、上方に突出する概ね円柱形状の突起である(
図3参照)。
【0026】
ケース10には貫通孔14・15が形成される。貫通孔14・15はそれぞれケース10の左前端部およびケース10の右前端部に配置され、ケース10の上面から下面まで上下方向に貫通する。
【0027】
ケース10にはアーム支持突起16・17が形成される。アーム支持突起16・17はそれぞれケース10の後面の左右端部(収容室11の開口部の左側方および右側方となる位置)から後方に突出する突起である。
アーム支持突起16には貫通孔16aが形成される。貫通孔16aはアーム支持突起16の左側面から右側面まで左右方向に貫通する。
アーム支持突起17には貫通孔17aが形成される。貫通孔17aはアーム支持突起17の左側面から右側面まで左右方向に貫通する。
ケース10を左右方向から見たとき、貫通孔16aおよび貫通孔17aは重なる(一直線に並ぶ)。
【0028】
図1に示す如く、ケース10は原稿圧着板3の後端部に固定される。
より詳細には、原稿圧着板3の下面の後端部に形成された空間(不図示)にケース10を収容し、位置決め突起12・13を原稿圧着板3の下面の後端部に形成された空間の上面に形成された位置決め穴(不図示)に嵌装し、貫通孔14・15にネジを貫装し、当該ネジを原稿圧着板3の下面の後端部に形成された空間の上面に形成されたネジ穴(不図示)に螺装する、という一連の作業を行うことにより、ケース10が原稿圧着板3の後端部に固定される。
【0029】
以下では、主に
図10を用いてアーム20の詳細について説明する。
アーム20は本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態である。
図10に示す如く、本実施形態のアーム20は概ね上下方向に延びた形状の部材であり、樹脂材料を一体成形することにより製造される。
本実施形態のアーム20はアーム本体21、第一カム部22および第二カム部23を備える。
第一カム部22および第二カム部23を合わせたものは本発明に係るカム部の実施の一形態である(言い換えれば、本発明に係るカム部の実施の一形態は、第一カム部22および第二カム部23を有する)。第一カム部22は本発明に係る第一カム部の実施の一形態である。第二カム部23は本発明に係る第二カム部の実施の一形態である。
【0030】
アーム本体21はアーム20の主たる構造体を成す部分であり、左右方向に比べて前後方向に薄く、かつ上下方向に長い概ね直方体形状の部材である。
アーム本体21の前面下部には係止爪21aが形成される。係止爪21aはアーム本体21の前面よりも前方に突出した突起であり、かつ係止爪21aの基部が弾性変形することにより係止爪21aの先端部(前端部)がアーム本体21の前面よりも後方となる位置まで退避することが可能である。
【0031】
第一カム部22はアーム本体21の上左端部に連なる部材であり、アーム本体21の前方および上方に突出した形状を有する。
第一カム部22の前方から前上部を経て上部までの部分には滑らかな曲面が形成され、当該曲面がカム面22aを成す。
第一カム部22には貫通孔22bが形成される。貫通孔22bは第一カム部22の後下部に配置され、第一カム部22の左側面から右側面まで左右方向に貫通する。
【0032】
第二カム部23はアーム本体21の上右端部に連なる部材であり、アーム本体21の前方および上方に突出した形状(本実施形態の場合、第一カム部22に対して左右対称となる形状)を有する。
第二カム部23の前方から前上部を経て上部までの部分には滑らかな曲面が形成され、当該曲面がカム面23aを成す。
第二カム部23には貫通孔23bが形成される。貫通孔23bは第二カム部23の後下部に配置され、第二カム部23の左側面から右側面まで左右方向に貫通する。
アーム20を左右方向から見たとき、貫通孔22bおよび貫通孔23bは重なる(一直線に並ぶ)。
図3、
図5の(a)および
図10に示す如く、第一カム部22および第二カム部23は左右方向に間隔を空けて配置される。
【0033】
図1に示す如く、アーム20は本体2の上後端部に固定される。
より詳細には、係止爪21aの基部を後方に傾倒するように弾性変形させて係止爪21aの先端部(前端部)がアーム本体21の前面よりも後方となる位置まで退避した状態でアーム20のアーム本体21を本体2の上面の後端部に形成された固定穴(不図示)に差し込み、次いで係止爪21aを弾性力(弾性変形した係止爪21aが元の形状に戻ろうとする力)で前方に突出させて当該固定穴の内周面の前部に形成された係止穴(不図示)に係止させる、という一連の作業を行うことにより、アーム20が本体2の上後端部に固定される。
【0034】
以下では、
図2、
図3および
図5を用いて回動ピン30の詳細について説明する。
回動ピン30は本発明に係る「第一ウイング部材に対する第二ウイング部材の回動軸」の実施の一形態である。
図5の(a)に示す如く、回動ピン30は胴体部31および頭部32を有する。本実施形態の回動ピン30は金属材料からなる。
【0035】
胴体部31は回動ピン30の胴体を成す略円柱形状の部分である。
図3および
図5の(a)に示す如く、胴体部31の一端部(先端部)にはカシメ穴31aが形成される。
カシメ穴31aは胴体部31の一端部(先端部)の端面に形成された穴である。カシメ穴31aが形成されることにより、胴体部31の一端部(先端部)には薄肉の部分(略円筒形状の部分)が形成される。
【0036】
頭部32は胴体部31の他端部(基端部)に連なる略円盤形状の部分である。頭部32の外径(直径)は胴体部31の外径(直径)よりも大きい。
【0037】
図5の(a)に示す如く、回動ピン30の胴体部31は、左方向から右方向に向かってケース10のアーム支持突起16に形成された貫通孔16aおよびアーム20の第一カム部22に形成された貫通孔22bに貫装され、次いで「アーム20の第一カム部22および第二カム部23で挟まれる空間」を通り、続いてアーム20の第二カム部23に形成された貫通孔23bおよびケース10のアーム支持突起17に形成された貫通孔17aに貫装される。
本実施形態では貫通孔16aおよび貫通孔17aの内径(直径)は胴体部31の外径(直径)よりも僅かに小さく、かつ貫通孔22bおよび貫通孔23bの内径(直径)は胴体部31の外径(直径)よりも僅かに大きいので、回動ピン30はケース10に対して回動ピン30の軸線方向(本実施形態では、左右方向)に移動不能(ケース10から脱落不能)かつ回転不能に固定されるとともにアーム20に回動可能に軸支される。
従って、回動ピン30はケース10とアーム20とを回動可能に連結し、ひいては、ヒンジ100は本体2(の上面後端部)と原稿圧着板3(の下面後端部)とを回動可能に連結する。
【0038】
また、
図5の(a)に示す状態から胴体部31の一端部(先端部)に形成された薄肉の部分を回動ピン30の半径方向(軸線方向に垂直な方向)に押し広げるようにカシメる(塑性変形させる)ことにより、回動ピン30の一端部、すなわちカシメられた部分の外径(直径)は貫通孔17aの内径(直径)よりも大きくなる。なお、頭部32の外径(直径)は貫通孔16aよりも大きい。
このように、胴体部31の一端部(先端部)をカシメることにより、回動ピン30をケース10に対して脱落不能に固定することが可能である。
【0039】
本実施形態では回動ピン30はケース10およびアーム20に対して別体であるが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、十分な強度を確保することが可能であり、かつ本発明に係る第二ウイング部材を本発明に係る第一ウイング部材に回動可能に連結することが可能であれば、本発明に係る回動軸を本発明に係る第一ウイング部材または第二ウイング部材と一体としても良い(本発明に係る回動軸を本発明に係る第一ウイング部材または第二ウイング部材と一体的に成形しても良い)。
【0040】
以下では、主に
図11を用いてスライダ40の詳細について説明する。
スライダ40は本発明に係るスライド部材の実施の一形態である。
図11に示す如く、本実施形態のスライダ40は受け部41、第一カム当接部42および第二カム当接部43を備える。本実施形態のスライダ40は樹脂材料を一体成形することにより製造される(受け部41、第一カム当接部42および第二カム当接部43は一体的に成形される)。
受け部41は本発明に係る受け部の実施の一形態である。第一カム当接部42および第二カム当接部43を合わせたものは本発明に係るカム当接部の実施の一形態である(本発明に係るカム当接部の実施の一形態は、第一カム当接部42および第二カム当接部43を有する)。第一カム当接部42は本発明に係る第一カム当接部の実施の一形態である。第二カム当接部43は本発明に係る第二カム当接部の実施の一形態である。
【0041】
受け部41は前端部が開口し、かつ後端部が閉塞された概ね円筒形状の部分である。
受け部41にはバネ収容穴41aが形成される。バネ収容穴41aは受け部41の内周面および底面(受け部41の後端部を閉塞する板状の部分の前側の板面)で囲まれ、受け部41の前端面には開口するが、受け部41の後端面には開口しない(
図7参照)。
【0042】
第一カム当接部42は受け部41の外周面の左端部に連なり、受け部41の外周面の左端部から左側方に突出したブロック状の部分である。
第一カム当接部42の後面には後方に突出する突起が形成され、当該突起の表面(後面)が第一カム当接面42aを成す。
図8および
図11の(b)に示す如く、第一カム当接部42は受け部41の後端部よりも前方寄りとなる位置に配置される。従って、第一カム当接面42aも受け部41の後端部よりも前方寄りとなる位置に配置される。
第一カム当接部42の左上端部には摺動突起42bが形成される。摺動突起42bは前後方向に延びた形状の突起(突条)である。
【0043】
第二カム当接部43は受け部41の外周面の右端部に連なり、受け部41の外周面の右端部から右側方に突出したブロック状の部分である。
第二カム当接部43の後面には後方に突出する突起が形成され、当該突起の表面(後面)が第二カム当接面43aを成す。
図11の(b)に示す如く、第二カム当接部43は受け部41の後端部よりも前方寄りとなる位置に配置される。従って、第二カム当接面43aも受け部41の後端部よりも前方寄りとなる位置に配置される。
第二カム当接部43の右上端部には摺動突起43bが形成される。摺動突起43bは前後方向に延びた形状の突起(突条)である。
【0044】
第一カム当接部42および第二カム当接部43は左右方向に間隔を空けて配置される。
より詳細には、第二カム当接部43は受け部41を挟んで第一カム当接部42の反対側となる位置に配置される(第一カム当接部42は受け部41の左側方に配置され、第二カム当接部43は受け部41の右側方に配置される)。
【0045】
図2、
図7および
図8に示す如く、スライダ40はケース10の収容室11に収容される。
図7に示す如く、スライダ40が収容室11に収容されたとき、受け部41の外周面の上端部が湾曲面11aに当接し、受け部41の外周面の下端部が湾曲面11bに当接する。
図8に示す如く、スライダ40が収容室11に収容されたとき、第一カム当接部42の上面が収容室11の内周面における上面の左半部に当接し、第一カム当接部42の下面が収容室11の内周面における下面の左半部に当接する。
同様に、スライダ40が収容室11に収容されたとき、第二カム当接部43の上面が収容室11の内周面における上面の右半部に当接し、第二カム当接部43の下面が収容室11の内周面における下面の右半部に当接する。
また、スライダ40が収容室11に収容されたとき、第一カム当接部42の左側面は収容室11の内周面における左側面に当接し、摺動突起42bは摺動溝11cに嵌合する(
図9、
図11参照)。
同様に、スライダ40が収容室11に収容されたとき、第二カム当接部43の右側面は収容室11の内周面における右側面に当接し、摺動突起43bは摺動溝11dに嵌合する。
【0046】
従って、スライダ40が収容室11に収容されたとき、スライダ40はケース10に対して「ケース10に回動可能に連結されたアーム20に接近する方向(
図7においては、後方)」および「ケース10に回動可能に連結されたアーム20から離間する方向(
図7においては、前方)」には移動可能に支持される。
なお、以下では便宜上、「ケース10に支持されたスライダ40がケース10に回動可能に連結されたアーム20に接近する方向」を「スライダ40の接近方向」と定義し、「ケース10に支持されたスライダ40がケース10に回動可能に連結されたアーム20から離間する方向」を「スライダ40の離間方向」と定義し、「スライダ40の接近方向」および「スライダ40の離間方向」を合わせたものを「スライダ40の移動方向」と定義する。
【0047】
また、スライダ40が収容室11に収容されたとき、スライダ40はケース10に対して「スライダ40の移動方向」に垂直な方向(
図7においては、上下方向および左右方向)には移動不能であり、かつ、ケース10に対して相対回転不能である。
【0048】
以下では、
図1および
図7を用いてバネ50の詳細について説明する。
バネ50は本発明に係る付勢部材の実施の一形態である。
本実施形態のバネ50は金属材料からなる巻きバネであり、圧縮バネ(圧縮された状態で使用されるバネ)である。
図7に示す如く、バネ50はケース10の収容室11に収容される。
ケース10の収容室11に収容されたバネ50の一端部(前端部)は収容室11の底面(前面)に当接するとともに突起11eに嵌合し、バネ50の他端部(後端部)はスライダ40のバネ収容穴41aに挿入されるとともにバネ収容穴41aの底面(受け部41の後端部を閉塞する板状の部分の前側の板面)に当接する。
バネ50はスライダ40をケース10の収容室11の開口部から突出する方向、すなわち「スライダ40の接近方向(
図7においては、後方)」に付勢し、スライダ40の第一カム当接部42の第一カム当接面42aをアーム20の第一カム部22のカム面22aに当接させ(
図8参照)、スライダ40の第二カム当接部43の第二カム当接面43aをアーム20の第二カム部23のカム面23aに当接させる(
図10、
図11参照)。
その結果、バネ50の付勢力(圧縮される方向に弾性変形したバネ50が元の形状に戻ろうとする力)はスライダ40を経てアーム20に伝達され、アーム20はケース10に対して左側面視で反時計回りに回動する方向に付勢され(
図7、
図8参照)、原稿圧着板3は本体2に対して開く方向に付勢される(
図1参照)。
このように、バネ50はアーム20がケース10に対して左側面視で反時計回りに回動するように(ひいては、原稿圧着板3が本体2に対して開く方向に回動するように)アーム20にトルクを付与する。
【0049】
組み立てられたヒンジ100においては、以下の(1−1)〜(1−4)の事項が成立する。
【0050】
(1−1)第一カム当接部42および第二カム当接部43は、受け部41に対して「回動ピン30の軸線方向(本実施形態の場合、左右方向)」にずれた位置に配置される(
図5の(a)、
図11参照)。
【0051】
(1−2)第一カム当接面42a(第一カム当接部42において第一カム部22と当接する面)は、「受け部41におけるスライダ40の接近方向側の端部(受け部41の後端部)」よりも「スライダ40の離間方向寄り(前方寄り)」となる位置に配置される(
図8参照)。
同様に、第二カム当接面43a(第二カム当接部43において第二カム部23と当接する面)は、「受け部41におけるスライダ40の接近方向側の端部(受け部41の後端部)」よりも「スライダ40の離間方向寄り(前方寄り)」となる位置に配置される。
【0052】
(1−3)受け部41は、第一カム部22および第二カム部23に対して、「回動ピン30の軸線方向(本実施形態の場合、左右方向)」にずれた位置に配置される(
図3、
図5参照)。
より詳細には、受け部41は、「回動ピン30の軸線方向(本実施形態の場合、左右方向)」において第一カム部22および第二カム部23で挟まれる位置に配置される(
図3、
図5参照)。
【0053】
(1−4)受け部41におけるスライダ40の接近方向側の端部(受け部41の後端部)が「回動ピン30の軸線方向(本実施形態の場合、左右方向)」において第一カム部22および第二カム部23で挟まれる空間に配置されることにより、受け部41におけるスライダ40の接近方向側の端部(受け部41の後端部)が「回動ピン30の軸線方向(本実施形態の場合、左右方向)」から見たときに第一カム部22および第二カム部23に重なる。
【0054】
なお、ヒンジ100のアーム20がケース10に対して回動し、その結果としてスライダ40がケース10に対して移動するとき、受け部41はケース10に対するアーム20の回動を阻害しない。
より詳細には、スライダ40がケース10に対して移動するとき、受け部41はアーム20に当接しない。また、受け部41がアーム20に当接した場合であっても、「第一カム部22および第二カム部23と第一カム当接部42および第二カム当接部43とが当接した状態」が解除されたり、あるいはケース10に対するスライダ40の移動が阻害されたりすることはない。
【0055】
以上の如くヒンジ100を構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、第一カム当接部42および第二カム当接部43を受け部41に対して「回動ピン30の軸線方向(本実施形態の場合、左右方向)」にずれた位置に配置することにより、スライダ40を「従来のヒンジにおけるスライダ」に比べて「スライダ40の移動方向」において小さくする(短くする)ことが可能である。
その結果として、スライダ40を支持するケース10(ひいてはヒンジ100)を回動ピン30の軸線方向に垂直な方向において小さくすることが可能である。
また、第一カム当接面42aおよび第二カム当接面43aを受け部41の後端部よりも「スライダ40の離間方向寄り(前方寄り)」となる位置に配置することにより、「従来のヒンジにおけるスライダ」に比べてバネ50をよりアーム20に接近した位置(スライダ40の接近方向寄りとなる位置)に配置することが可能であり、この点からもスライダ40を「従来のヒンジにおけるスライダ」に比べて「スライダ40の移動方向」において小さくする(短くする)ことが可能である。
【0056】
本実施形態では、一つの受け部41を二つのカム当接部(第一カム当接部42および第二カム当接部43)で挟む構成としたが、本発明に係るスライド部材はこれに限定されない。
例えば、本発明に係るスライド部材の他の構成としては、受け部およびカム当接部を一つずつ備えるもの、二つの受け部および一つのカム当接部を備えるもの、等が挙げられる。
【0057】
なお、付勢部材の付勢力によるスライド部材の変形あるいは破損を防止し、かつ第一ウイング部材に対するスライド部材の移動を滑らかにする観点からは、第一ウイング部材に支持されたスライド部材における受け部材およびカム当接部の配置を第一ウイング部材に対する第二ウイング部材の回動軸方向において対称形とすることが望ましい。
この観点からは、本実施形態の如く一つの受け部41および二つのカム部(第一カム当接部42および第二カム当接部43)を備えるとともに一つの受け部41を二つのカム当接部(第一カム当接部42および第二カム当接部43)で挟むスライダ40とする、あるいは二つの受け部および一つのカム当接部を備えるとともに二つの受け部で一つのカム当接部を挟むスライダとすることがより望ましい。
【0058】
本実施形態ではケース10およびアーム20は樹脂材料を一体成形することにより製造されるが、本発明に係る第一ウイング部材および第二ウイング部材はこれに限定されず、例えば、アルミニウム合金等のダイキャストからなる構成でも良く、金属板を適宜折り曲げたものからなる構成でも良い。
【0059】
本実施形態では、ケース10は原稿圧着板3に固定され、アーム20は本体2に固定されるが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係るヒンジは、第一ウイング部材が第一連結対象物または第二連結対象物のうちいずれか一方に固定され、かつ、第一ウイング部材が第一連結対象物または第二連結対象物のうちいずれか他方(第一連結対象物または第二連結対象物のうち、第一ウイング部材が固定されなかった方の対象物)に固定されるヒンジを含む。
換言すれば、本発明に係るヒンジは、第一ウイング部材が第一連結対象物に固定されるとともに第二ウイング部材が第二連結対象物に固定されるヒンジ、および、第一ウイング部材が第二連結対象物に固定されるとともに第二ウイング部材が第一連結対象物に固定されるヒンジ、を含む。
【0060】
本実施形態ではカム当接部(第一カム当接部42および第二カム当接部43)が受け部41と一体的に成形されるが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係るスライド部材は、それぞれ別体の受け部およびカム当接部を互いに固定したものでも良い。
それぞれ別体の受け部およびカム当接部を互いに固定する方法の例としてはネジ止め、接着、溶接、嵌合等が挙げられる。