(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記天空一様光成分算出手段は、前記水平面に対する天空一様光成分を算出し、前記天空全体を前記水平面に投影した第一投影面積と、前記非遮蔽天空部分を前記傾斜面に投影した第二投影面積とを算出して、前記第一投影面積と前記第二投影面積との比からなる混合天空率を算出し、前記水平面に対する天空一様光成分の値に前記混合天空率を乗じることにより、前記障害物による影の影響を加味した前記傾斜面への天空一様光成分を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の日射評価装置。
前記天空一様光成分算出手段は、前記傾斜面に対する天空一様光成分を算出し、前記天空のうち前記傾斜面自身によって遮られることなく前記傾斜面から望むことのできる天空部分を前記傾斜面に投影した第三投影面積と、前記非遮蔽天空部分を前記傾斜面に投影した第四投影面積とを算出して、前記第三投影面積と前記第四投影面積との比からなる傾斜天空率を算出し、前記傾斜面に対する天空一様光成分の値に前記傾斜天空率を乗じることにより、前記障害物の影響を加味した前記傾斜面への天空一様光成分を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の日射評価装置。
前記日射成分算出手段は、前記日射成分の一つとして、太陽周辺の空から届く光の成分として前記傾斜面に対する太陽周辺光成分を算出し、所定時間内において前記傾斜面から前記傾斜面自身に遮られることなく太陽を望むことができる時間に対する、前記所定時間内において前記傾斜面から前記傾斜面自身または前記障害物に遮られることなく太陽を望むことができる時間の比を算出し、当該比の値を前記所定時間内における前記傾斜面への太陽周辺光成分に乗じることにより、前記障害物の影響を加味した前記傾斜面への太陽周辺光成分を算出する太陽周辺光成分算出手段を有する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の日射評価装置。
前記日射成分算出手段は、前記日射成分の一つとして、太陽周辺の空から届く光の成分として前記傾斜面に対する太陽周辺光成分を算出し、前記傾斜面の位置から、前記障害物によって遮られることなく太陽を望むことができる場合は1を、前記障害物によって太陽が遮られて望めない場合は0を、前記傾斜面への太陽周辺光成分に乗じることにより、前記傾斜面への前記障害物による影の影響を加味した太陽周辺光成分を算出し、複数時刻における前記傾斜面への前記障害物による影の影響を加味した太陽周辺光成分を積算することによって、所定時間内の前記傾斜面への前記障害物による影の影響を加味した太陽周辺光成分を算出する太陽周辺光成分算出手段を有する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の日射評価装置。
前記日射成分算出手段は、前記日射成分の一つとして、太陽周辺の空から届く光の成分として前記傾斜面に対する太陽周辺光成分を算出し、天空における太陽の位置を中心とする所定形状の太陽周辺領域を、前記傾斜面または地平水平面に遮られることなく前記傾斜面の位置から望むことのできる面積または立体角を第一面積として算出し、前記傾斜面と地平水平面と前記障害物とに遮られることなく前記太陽周辺領域を前記傾斜面から望むことのできる面積または立体角を第二面積として算出し、前記第一面積と前記第二面積との比の値を前記傾斜面への前記太陽周辺光成分に乗じることにより、前記傾斜面への前記障害物による影の影響を加味した太陽周辺光成分を算出し、複数時刻における前記傾斜面への前記障害物の影響を加味した前記太陽周辺光成分を積算することによって、所定時間内の太陽周辺光成分を算出する太陽周辺光成分算出手段を有する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の日射評価装置。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ本発明に係わる日射評価装置、日射評価方法及び日射評価プログラムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0036】
(第1実施形態:全体構成)
図1は、第1実施形態の日射評価装置1の構成を示す機能ブロック図である。日射評価装置1は、傾斜面への日射強度または日射量を算出する装置である。日射強度とは、単位時間に単位面積が太陽から受ける放射エネルギー(MJ/hm
2)をいい、日射量とは、単位面積が太陽から受ける放射エネルギー(MJ/m
2)をいう。また、傾斜面とは、その中心点の地球上の位置(傾斜面地点)と法線ベクトルとから特定される平面をいう。本第1実施形態は、傾斜面の地点における水平面への日射強度または日射量を示す水平面日射データが取得できる場合における、日射評価装置1による傾斜面への日射強度または日射量の算出の実施形態である。
図1に示される通り、この日射評価装置1は、機能構成として、取得部2(取得手段)、日射成分算出部3(日射成分算出手段)及び日射評価部4(日射評価手段)を含んで構成されている。さらに、日射成分算出部3は、
図1に示される通り、直達光成分算出部30、天空一様光成分算出部31(天空一様光成分算出手段)、太陽周辺光成分算出部32(太陽周辺光成分算出手段)、地平水平光成分算出部33、及び地表散乱光成分算出部34を含んで構成されている。
【0037】
日射評価装置1は、CPU等のハードウェアから構成されているものである。
図2は、日射評価装置1のハードウェア構成図である。
図1に示される日射評価装置1は、物理的には、
図2に示すように、CPU61、主記憶装置であるRAM62及びROM63、入力デバイスであるキーボード等の入力装置64、ディスプレイ等の出力装置65、データ送受信デバイスである通信モジュール66、及びハードディスク等の補助記憶装置67等を含むコンピュータシステムとして構成されている。
図1に示す各機能ブロックの機能は、
図2に示すCPU61、RAM62等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU61の制御のもとで入力装置64、出力装置65、通信モジュール66を動作させるとともに、RAM62や補助記憶装置67におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0038】
以下、
図1に示す機能ブロックに基づいて、日射評価装置1の各機能ブロックを説明する。
【0039】
取得部2は、入力装置64または通信モジュール66を介して、日射強度または日射量を算出するための各種データを取得する。例えば、取得部2は、傾斜面の地球上での位置(即ち傾斜面地点)を特定できる傾斜面位置データを取得する。また、取得部2は、傾斜面の法線ベクトルを特定できる傾斜面法線データを取得する。また、取得部2は、傾斜面地点における水平面への日射強度または日射量を示す水平面日射データを取得する。また、取得部2は、傾斜面への日射を遮る障害物の位置、形状、大きさ、方向等に関する障害物データを取得する。また、取得部2は、計算対象期間を特定するための日時データを取得する。
【0040】
日射成分算出部3は、取得部2によって取得された傾斜面位置データと傾斜面法線データと水平面日射データと障害物データと日時データとに基づいて、日射強度または日射量の所定の日射成分毎に、障害物による影の影響を加味した傾斜面への当該日射成分の値を算出する。
【0041】
本実施形態においては、日射成分として、太陽から直線的に届く光の成分である直達光成分、天空に一様に広がる光の成分である天空一様光成分、太陽周辺の空から届く光の成分である太陽周辺光成分、地平線水平線から届く光の成分である地平水平光成分、及び地表から散乱されて届く光の成分である地表散乱光成分を算出する例を説明する。
【0042】
直達光成分算出部30は、障害物による影の影響を加味した傾斜面への直達光成分の値を算出する。天空一様光成分算出部31は、障害物による影の影響を加味した傾斜面への天空一様光成分の値を算出する。太陽周辺光成分算出部32は、障害物による影の影響を加味した傾斜面への太陽周辺光成分の値を算出する。地平水平光成分算出部33は、障害物による影の影響を加味した傾斜面への地平水平光成分の値を算出する。
【0043】
日射評価部4は、日射成分算出部3において算出された日射成分を合計することにより、傾斜面への日射強度または日射量を算出する。
【0044】
(第1実施形態:全体処理)
次に、日射評価装置1の処理について説明する。
図3は、日射評価装置1の処理を示すフローチャートである。
【0045】
まず、取得部2が、傾斜面位置データ、傾斜面法線データ、水平面日射データ、日時データ、及び障害物データを取得する(S50、取得ステップ)。S50の後、直達光成分算出部30が、傾斜面地点における無影時の傾斜面への直達光成分を算出する(S51)。更に直達光成分算出部30は、S51の後、障害物による影の影響を加味した傾斜面への直達光成分を算出する(S52)。
【0046】
また、S50の後、天空一様光成分算出部31が、傾斜面地点における無影時の傾斜面または水平面への天空一様光成分を算出する(S53)。更に天空一様光成分算出部31は、S53の後、障害物による影の影響を加味した傾斜面への天空一様光成分を算出する(S54)。
【0047】
また、S50の後、太陽周辺光成分算出部32が、傾斜面地点における無影時の傾斜面への太陽周辺光成分を算出する(S55)。更に太陽周辺光成分算出部32は、S55の後、障害物による影の影響を加味した傾斜面への太陽周辺光成分を算出する(S56)。
【0048】
また、S50の後、地平水平光成分算出部33が、傾斜面地点における無影時の傾斜面または水平面への地平水平光成分を算出する(S57)。更に地平水平光成分算出部33は、S57の後、障害物による影の影響を加味した傾斜面への地平水平光成分を算出する(S58)。
【0049】
また、S50の後、地表散乱光成分算出部34が、傾斜面地点における無影時の傾斜面への地表散乱光成分を算出する(S59)。
【0050】
そして、日射評価部4が、S52にて算出された障害物による影の影響を加味した傾斜面への直達光成分、S54にて算出された障害物による影の影響を加味した傾斜面への天空一様光成分、S56にて算出された障害物による影の影響を加味した傾斜面への太陽周辺光成分、S58にて算出された障害物による影の影響を加味した傾斜面への地平水平光成分、及びS59にて算出された地表散乱光成分を合計することにより、傾斜面への日射強度または日射量を算出する。
【0051】
なお、直達光成分の算出処理(S51及びS52)、天空一様光成分の算出処理(S53及びS54)、太陽周辺光成分の算出処理(S55及びS56)、地平水平光成分の算出処理(S57及びS58)、及び地表散乱光成分の算出処理(S59)について、いずれか一つ以上の算出処理を省略することができる。あるいは、これら日射成分に、その他の日射成分を加えて障害物による影の影響を加味した傾斜面への日射強度または日射量を算出する構成にしてもよい。
【0052】
(第1実施形態:直達光成分)
次に、
図3のS51及びS52の処理の詳細について説明する。まず、S51において、直達光成分算出部30は、以下の3つのデータを算出する。1つ目は、取得部2によって取得された水平面日射データに含まれる水平面直達光成分である。2つ目は、取得部2によって取得された傾斜面位置データ及び日時データに基づいて算出された太陽の方位・高度である。3つ目は、太陽の方位・高度、及び取得部2によって取得された傾斜面法線データに基づいて算出された太陽光の傾斜面に対する入射角である。日射成分算出部3は、以上の3つのデータに基づいて、無影時の傾斜面への直達光成分を算出する。
【0053】
続いて、S52において、直達光成分算出部30は、S51で算出した太陽の方位・高度、及び取得部2によって取得された障害物データに基づいて、直達光が障害物によって遮られるか否かを判定する。直達光成分算出部30は、直達光が障害物によって遮られる場合は0として、直達光が障害物によって遮られない場合は無影時の値と等しい値として、障害物による影の影響を加味した傾斜面への直達光成分を算出する。
【0054】
(第1実施形態:天空一様光成分)
次に、
図3のS53及びS54の処理の詳細について説明する。まず、S53において、天空一様光成分算出部31は、Hayモデル(後述の文献3及び文献4参照)、Perezモデル(後述の文献1及び文献2参照)、及びその他任意のモデルのうちいずれか1つのモデルに従い、傾斜面地点における無影時の水平面への天空一様光成分を算出する。Hayモデルでは、取得部2によって取得された水平面日射データ、日時データに基づいて算出された太陽の方位・高度に基づいて、無影時の水平面への天空一様光成分を算出する。Perezモデルでは、取得部2によって取得された水平面日射データ、日時データに基づいて算出された太陽の方位・高度、及び取得部2によって取得された傾斜面位置データから特定される傾斜面の標高に基づいて、無影時の水平面への天空一様光成分を算出する。その他任意のモデルでは、取得部2によって取得された水平面日射データ、及びその他のデータに基づいて、無影時の水平面への天空一様光成分を算出する。
【0055】
続いて、S54において、天空一様光成分算出部31は、取得部2によって取得された傾斜面法線データ及び障害物データに基づいて、傾斜面と同一地点から望む天空のうち傾斜面自身と障害物とによって遮られることなく傾斜面から望むことができる天空の部分を非遮蔽天空部分として算出する。次に、天空一様光成分算出部31は、日射成分算出部3によって算出された無影時の水平面への天空一様光成分の値と、非遮蔽天空部分とに基づいて、障害物による影の影響を加味した傾斜面への天空一様光成分を算出する。
【0056】
天空一様光成分算出部31が、無影時の水平面への天空一様光成分の値と、非遮蔽天空部分とに基づいて、障害物による影の影響を加味した傾斜面への天空一様光成分を算出する際の具体例を
図4を用いて説明する。
図4において、Tは傾斜面、Hは傾斜面の地点における水平面、Bは傾斜面への日射を遮る障害物、Sは天空を示す。まず、天空一様光成分算出部31は、天空S全体を水平面Hに投影した第一投影面積P1と、非遮蔽天空部分を傾斜面Tに投影した第二投影面積P2とを算出する。次に、天空一様光成分算出部31は、第一投影面積P1と第二投影面積P2との比P2/P1からなる混合天空率を算出する。次に、天空一様光成分算出部31は、水平面Hに対する天空一様光成分の値に混合天空率P2/P1を乗じることにより、障害物Bによる影の影響を加味した傾斜面Tへの天空一様光成分を算出する。
【0057】
上記では、無影時の水平面への天空一様光成分を用いて障害物による影の影響を加味した傾斜面への天空一様光成分の算出方法を説明した。以下では、無影時の傾斜面への天空一様光成分を用いて計算する例を、
図5を用いて説明する。
【0058】
まず、S53において、天空一様光成分算出部31は、無影時の傾斜面への天空一様光成分を算出する。Hayモデルでは、取得部2によって取得された水平面日射データ、日時データに基づいて算出された太陽高度、及び取得部2によって取得された傾斜面法線データから算出された傾斜面の傾斜角に基づいて、無影時の傾斜面への天空一様光成分を算出する。Perezモデルでは、取得部2によって取得された水平面日射データ、日時データに基づいて算出された太陽高度、傾斜面の傾斜角、日時、及び取得部2によって取得された傾斜面位置データから特定される傾斜面の標高に基づいて、無影時の傾斜面への天空一様光成分を算出する。
【0059】
次に、S54において、天空一様光成分算出部31は、
図5に示す天空Sのうち傾斜面T自身によって遮られることなく傾斜面Tから望むことのできる天空S部分を傾斜面Tに投影した第三投影面積P3と、非遮蔽天空部分を傾斜面Tに投影した第四投影面積P4とを算出する。次に、天空一様光成分算出部31は、第三投影面積P3と第四投影面積P4との比P4/P3からなる傾斜天空率を算出する。次に、天空一様光成分算出部31は、無影時の傾斜面Tへの天空一様光成分の値に傾斜天空率P4/P3を乗じることにより、障害物Bの影響を加味した傾斜面Tへの天空一様光成分を算出する。
【0060】
(第1実施形態:太陽周辺光成分)
次に、
図3のS55及びS56の処理の詳細について説明する。まず、S55において、太陽周辺光成分算出部32は、Hayモデル、Perezモデル、及びその他任意のモデルのうちいずれか1つのモデルに従い、無影時の傾斜面への太陽周辺光成分を算出する。Hayモデルでは、取得部2によって取得された水平面日射データ及び傾斜面法線データ、日時データに基づいて算出された太陽高度・方位、及び取得部2によって取得された傾斜面法線データから算出された傾斜面の傾斜角に基づいて、無影時の傾斜面への太陽周辺光成分を、積算値(日射量)または瞬時値(日射強度)として算出する。Perezモデルでは、取得部2によって取得された水平面日射データ及び傾斜面法線データ、日時データに基づいて算出された太陽高度・方位、日時、及び取得部2によって取得された傾斜面位置データから特定される傾斜面の標高に基づいて、無影時の傾斜面への太陽周辺光成分を、積算値(日射量)または瞬時値(日射強度)として算出する。その他任意のモデルでは、水平面日射データ及びその他のデータに基づいて、無影時の傾斜面への太陽周辺光成分を、積算値(日射量)または瞬時値(日射強度)として算出する。
【0061】
以下、無影時の積算値(日射量)を用いて障害物の影の影響を加味した傾斜面への太陽周辺光成分を計算する方法について説明する。S56において、太陽周辺光成分算出部32は、取得部2によって取得された障害物データ、及び太陽の方位・高度に基づいて、所定時間Tc内において傾斜面から傾斜面自身に遮られることなく太陽を望むことができる時間T
1に対する、所定時間内において傾斜面から傾斜面自身または障害物に遮られることなく太陽を望むことができる時間T
2を算出し、これら時間の比T
2/T
1を算出する。次に、太陽周辺光成分算出部32は、当該比の値T
2/T
1を所定時間Tc内における無影時の傾斜面への太陽周辺光成分の積算値に乗じることにより、障害物の影響を加味した傾斜面への太陽周辺光成分(積算値)を算出する。
【0062】
または、無影時の瞬時値(日射強度)を用いて積算値(日射量)を次のように計算しても良い。すなわち、S56において、太陽周辺光成分算出部32は、取得部2によって取得された障害物データ、及び太陽の方位・高度に基づいて、所定時刻tにおいて、傾斜面の位置から、障害物によって遮られることなく太陽を望むことができるか否かを判定する。次に、太陽周辺光成分算出部32は、障害物によって遮られることなく太陽を望むことができる場合は1を、障害物によって太陽が遮られて望めない場合は0を、無影時の傾斜面への太陽周辺光成分の瞬時値に乗じることにより、当該時刻における傾斜面への障害物による影の影響を加味した太陽周辺光成分(瞬時値)を算出する。次に、太陽周辺光成分算出部32は、複数(n個)の時刻t+i×Δt(1≦i≦n)における傾斜面への障害物による影の影響を加味した太陽周辺光成分を積算し、これに時間刻みの値Δtを乗算することによって、所定時間(n×Δt)内の傾斜面への障害物による影の影響を加味した太陽周辺光成分(積算値)を算出する。
【0063】
または、無影時の瞬時値を用いて積算値を次のように計算してもよい。すなわち、S56において、太陽周辺光成分算出部32は、取得部2によって取得された障害物データ、及び太陽の方位・高度に基づいて、当該時刻の天空における太陽の位置を中心とする所定形状の太陽周辺領域を、傾斜面または地平水平面に遮られることなく傾斜面の位置から望むことのできる面積または立体角を第一面積S
1として算出し、当該時刻tにおいて、傾斜面と地平水平面と障害物とに遮られることなく太陽周辺領域を傾斜面から望むことのできる面積または立体角を第二面積S
2として算出する。次に、太陽周辺光成分算出部32は、第一面積S
1と第二面積S
2との比(S
2/S
1)の値を当該時刻tにおける無影時の傾斜面への太陽周辺光成分に乗じることにより、当該時刻tにおける、傾斜面への障害物による影の影響を加味した太陽周辺光成分(瞬時値)を算出する。次に、太陽周辺光成分算出部32は、複数(n個)の時刻t+i×Δt(1≦i≦n)における傾斜面への障害物の影響を加味した太陽周辺光成分を積算し、これに時間刻みの値Δtを乗算することによって、所定時間(n×Δt)内の太陽周辺光成分(積算値)を算出する。
【0064】
なお、太陽周辺領域は、天空における太陽の位置を中心に視半径が10°から35°までのいずれかの大きさを持つ円の領域に設定される。
【0065】
(第1実施形態:地平水平光成分)
次に、
図3のS57及びS58の処理の詳細について説明する。まず、S57において、地平水平光成分算出部33は、Perezモデルに従い、取得部2によって取得された水平面日射データ、日時に基づいて算出された太陽高度、日時、取得部2によって取得された傾斜面法線データから算出された傾斜面の傾斜角、及び取得部2によって取得された傾斜面位置データから特定される傾斜面の標高に基づき、無影時の傾斜面または水平面への地平水平光成分を算出する。続いて、S58において、地平水平光成分算出部33は、取得部2によって取得された障害物データ及び傾斜面法線データ、及び地平水平光成分算出部33によって算出された無影時の傾斜面への地平水平光成分に基づいて、障害物による影の影響を加味した傾斜面への地平水平光成分を算出する。
【0066】
(第1実施形態:地表散乱光成分)
次に、
図3のS59の処理の詳細について説明する。S59において、地表散乱光成分算出部34は、取得部2によって取得された水平面日射データ、取得部2によって取得された傾斜面法線データから算出された傾斜面の傾斜角、地表反射率(アルベド)に基づいて、傾斜面への地表散乱光成分を算出する。具体的には、水平面に対する全天空からの日射強度または日射量の値に、アルベドと、(1−cosβ)/2を乗じることで算出する。ここに、βは傾斜面の水平面に対する角度を意味する。なお、地表散乱光成分算出部34は、アルベドの値を、水平面日射データに含まれる積雪量に関するデータに基づき一意的に決定する。
【0067】
(第1実施形態:計算例)
以下では、第1実施形態における日射評価装置1による傾斜面への日射量の算出の計算例としてPerezモデル(後述の文献1、2)を利用して計算する場合について説明する。以下の計算において、計算は全て日射評価装置1が行う。日射評価装置1のどの機能ブロックがどの計算を行うかは上述の説明より明らかであるため、以下では計算の主体の明記を省略する。また、以下の計算では以下の記号を適宜用いる。
A:無影時の傾斜面への直達光成分
α:障害物による影の影響を加味した傾斜面への直達光成分
B1:無影時の傾斜面への太陽周辺光成分
β1:障害物による影の影響を加味した傾斜面への太陽周辺光成分
B2:無影時の傾斜面への天空一様光成分
B2’:無影時の水平面への天空一様光成分
β2:障害物による影の影響を加味した傾斜面への天空一様光成分
B3:無影時の傾斜面への地平水平光成分
β3:障害物による影の影響を加味した傾斜面への地平水平光成分
C:無影時の傾斜面への地表散乱光成分
γ:障害物による影の影響を加味した傾斜面への地表散乱光成分
また、以下の計算例において、適宜以下の4つの文献の内容を参照する。
文献1:R.Perez et al., A new simplifiedversion of the Perez diffuse irradiance model for tilted surfaces, Sol. Energy39(3),221-231(1987).
文献2:NEDO報告書 平成17年度太陽光発電システム共通基盤技術研究開発 「標準日射データの地理的分解能向上に関する調査研究」 参考3 H18年3月 (財)日本気象協会
文献3:An Introduction to Solar Radiation,Iqbal, AcademicPress(1983).
文献4:J.E..Hay, Study of Shortwave Radiationon Non-horizontal Surface. Rep. No. 79-12, Atmospheric Environment Service, Downsview, Ontario(1979).
【0068】
本計算例では、南南東向き、仰傾斜角30°の傾斜面について、9月15日12〜13時(以下「計算期間」という。)の東京における計算例を示す。各種データとして次の値を取得する。
傾斜面法線データ(傾斜面の単位法線ベクトル)
東向き成分:sin(30°)×sin(22.5°)=0.19134
北向き成分:−sin(30°)×cos(22.5°)=−0.46194
上向き成分:cos(30°)=0.86603
傾斜面位置データ
北緯35度41.2分、東経139度45.8分、高度6.1m
日時データ
9月15日12〜13時
【0069】
水平面日射データ(気象協会またはNEDO等の機関から取得したMETPV−3データによれば、9月15日12時〜13時の東京における水平面日射量は以下の通り。)
水平面全天日射量:1.85MJ/m
2
水平面直達日射量:0.12MJ/m
2
水平面天空散乱日射量:1.73MJ/m
2
積雪量:0cm
【0070】
まず、傾斜面への直達光成分を次の通り算出する。
A=(水平面直達日射量)×≪cosθ/cosθz≫
ここに、θzは太陽天頂角(90°−太陽高度)を、θは太陽光の傾斜面への入射角を、≪≫は計算期間における平均を算出することをそれぞれ意味する。
本計算例において取得したデータの条件では、計算期間におけるcosθ/cosθzの平均値は、1.11238となり、従って傾斜面への直達光成分(A)は0.12MJ/m
2×1.11238=0.133MJ/m
2となる。
次に、傾斜面への太陽周辺光成分B1、水平面への天空一様光成分B2’、傾斜面への地平水平光成分B3の算出方法について説明する。これらの日射成分は次式により算出される。
B1=(水平面天空散乱日射量)×(F’1(χc/χh))
B2’=(水平面天空散乱日射量)×(0.5(1+cosβ)(1−F’1))
B3=(水平面天空散乱日射量)×(F’2sinβ)
ここに、βは傾斜面の水平面に対する角度(傾斜角)を意味する。また、F’1、F’2は次式で算出される。
F’1=F’11(ε)+F’12(ε)・Δ+F’13(ε)・θz
F’2=F’21(ε)+F’22(ε)・Δ+F’23(ε)・θz
ここに、F’11(ε)、F’12(ε)、F’13(ε)、F’21(ε)、F’22(ε)、F’23(ε)は、εの値に応じて、
図6に示すテーブルに従い割り振られる。なお、本計算例においては、
図6は
図2に示すROM63に記憶され、CPU61が適宜読み出して利用する。
また、εは晴天度パラメータを意味し、ε=(水平面天空散乱日射量+法線面直達日射量)/(水平面天空散乱日射量)で算出される。また、Δは散乱光パラメータを意味し、Δ=(水平面天空散乱日射量)×(m/I
ON)で算出される。mはエアマスを意味し、太陽高度Hと標高Z(メートル)から算出される(m=(sinH+0.15×(H+3.885)
−1.253)
−1×(1−Z/44308)
5.257)。また、I
ONは太陽定数I
SCと1月1日からの通し番号nから算出される(I
ON=I
SC×(1+0.033×cos(2π×(n−2)/365)))。
なお、法線面直達日射量は水平面直達日射量に≪cosθz≫を乗算することで得られる。以上より、
計算期間のcosθzの平均値:0.82040
法線面直達日射量:In=0.12/0.82040=0.14627
ε=(1.73+0.14627)/1.73=1.085
F’11=−0.038
F’12=1.115
F’13=−0.109
F’21=−0.023
F’22=0.106
F’23=−0.037
m=1.2167(エアマス)
Δ=0.42351
(ただし、本計算例では、I
ON=I
SCとして計算する。)
≪太陽天頂角θz≫=0.60829(ラジアン)
これらより、
F’1=0.36791
F’2=−0.00061
さらに、χcは、太陽光の傾斜面への入射角θの大きさに応じて次の通り算出される。即ち、χcは、θ<π/2−αのとき、φ
h×cosθで計算され、π/2−α≦θ≦π/2+αのとき、φ
h×φ
c×sin(φ
c×α)で計算され、θ>π/2+αのとき、0と計算される。また、χhは、太陽天頂角θzの大きさに応じて次の通り算出される。即ち、χhは、θz<π/2−αのとき、cosθzで計算され、θz≧π/2−αのとき、φ
h×sin(φ
h×α)で計算される。ここに、αは定数で25°(=0.436ラジアン)を意味する。φ
hは太陽天頂角θzの大きさに応じて次の通り算出される。即ち、φ
hは、θz<π/2−αのとき、1と計算され、π/2−α≦θzのとき、(π/2−θz+α)/2αで計算される。また、φ
cは(π/2−θ+α)/2αで計算される。 この計算期間のχc/χhは、cos(θ)/cos(θz)であるため、その平均値は、1.11238
以上より、太陽周辺光成分B1、天空一様光成分B2’、地平水平光成分B3の各成分は以下の通り算出される。
太陽周辺光成分B1は、
B1=(水平面天空散乱日射量)×F’1×(χc/χh)
=0.70801(日射量)
水平面への天空一様光成分B2’、
B2’=(水平面天空散乱日射量)×(1−F’1)
=1.09352(日射量)
(なお、ここで、傾斜天空率を用いて影の影響を算出する場合(即ち、傾斜面への天空一様光成分B2を算出する場合)は、B2=(水平面天空散乱日射量)×0.5(1+cosβ)×(1−F’1)で算出される。本計算例では、β=30°、cosβ=0.866なので、B2=1.0203(日射量)となる。)
傾斜面への地平水平光成分B3は、
B3=(水平面天空散乱日射量)×F’2×sinβ
=−0.0003(日射量)
続いて、地表散乱光成分Cの算出方法について説明する。地表散乱光成分は、水平面全天日射量(1.85MJ/m
2)、アルベド(0.15)、及び(1−cosβ)/2の積として、以下の通り算出される。
C=0.01859MJ/m
2(日射量)・・・(1)
なお、アルベドは、水平面日射データとして取得した積雪量の値に応じて次の通り決定する。即ち、積雪量が0cm以上5cm未満の場合、0.15とし、積雪量が5cm以上の場合、0.7とする。
【0071】
続いて、障害物による影の影響を加味した各成分の値の算出方法について説明する。
本計算例においては、障害物データとして、
図9に示す2枚の壁90及び壁91を取得した場合について説明する。壁90は幅20m、高さ30mの壁であり、傾斜面の地点から
図9に示すように北10mにある。壁91は幅3m、高さ8mの壁であり、傾斜面の地点から
図9に示すように南4mにある。
まず、直達光成分と太陽周辺光成分の計算について説明する。直達光成分および太陽周辺光成分の計算においては、障害物である壁90及び壁91によって太陽が遮られる時間を計算し、この2者について、太陽が障害物によって遮られる時間全体の計算期間に対する割合を算出する。本計算例においては、44.3%が遮られる結果を得た。
具体的な計算方法を以下に示す。
与えられた緯度、経度、日時における太陽の高度と方位を計算する方法は公知である(たとえばhttp://www.nao.ac.jp/koyomi /topics/html/topics2005.html)。これらの方法により、傾斜面の位置および当該計算期間における太陽の高度と方位を1分毎に計算する。計算された太陽高度、方位において、影が発生するか否かを立体幾何学的計算により求める。本計算例において取得したデータに基づき、太陽が障害物によって遮られる時間全体の計算期間に対する割合を求めたところ、上記のとおり44.3%との結果を得た。この間において、傾斜面に対する直達光成分Aおよび太陽周辺光成分B1の強度が一定であるとし、直達光成分Aおよび太陽周辺光成分B1の44.3%が障害物によって遮られると計算する。従って、
α+β1
=A×(1−0.443)+B1×(1−0.443)
=(0.133+0.70801)×(1−0.443)MJ/m
2(日射量)・・・(2)
【0072】
次に、天空一様光成分の計算について説明する。障害物が無い場合の天空を水平面に投影した面積に対する、与えられた傾斜面の設置方位、仰角および障害物配置において障害物に遮られることなく傾斜面から望める天空の部分を傾斜面に投影した面積の比(混合天空率)を計算する。本計算例においては、66.6%の結果を得た。(ここで、傾斜天空率を用いて算出する場合、障害物が無い場合の天空を傾斜面に投影した面積に対する、与えられた斜面の設置方位、仰角および障害物配置において障害物に遮られることなく傾斜面から望める天空の部分を傾斜面に投影した面積の比を計算し、71.4%の結果を得た。)
具体的な計算方法を以下に示す。
なお、以下では、傾斜面の位置を中心として東に向かう方向を正とする軸と、北に向かう方向を正とする軸と、天頂に向かう方向を正とする軸による3次元座標系に基づき説明する。天球上の任意の点の天頂からの角度(0〜π/2)をθとし、天球上の任意の点を地表面上に投影した像の東からの角度(0〜2π)をηとする。f(θ,η)を、日射を計算する点からその方位仰角に建物等の障害物が無ければ1、あれば0を返す関数として作成し、g(θ,η)を、日射を計算する点からその方位仰角が、斜面自身に隠されずに見えれば1、斜面自身に隠れる場合は0を返す関数として作成する。f(θ,η)およびg(θ,η)は立体幾何学の計算により作成する。
この斜面の単位法線ベクトルは以下の通り。
東向き成分:sin(30°)×sin(22.5°)=0.19134
北向き成分:−sin(30°)×cos(22.5°)=−0.46194
天頂向き成分:cos(30°)=0.86603
β2=B2’×∫∫f(θ,η)×g(θ,η)×n・m(θ,η)×sin(θ)dθdη/∫∫cos(θ)×sin(θ)dθdη
上式をθおよびηについて、1deg刻みで計算する場合を以下に例示する。
【数1】
=B2’×6870.7/10312.2
=1.09352×0.666MJ/m
2(日射量)・・・(3)
なお、上記(数1)における分母の式が第一投影面積に対応し、分子の式が第二投影面積に対応する。
(ここで、傾斜天空率を用いて算出する場合は、傾斜面への天空一様光成分B2を用いて、次の通り計算する。
【数2】
=B2×6870.7/9621.7
=1.0203×0.714MJ/m
2(日射量)・・・(3)
なお、上記(数2)における分母の式が第三投影面積に対応し、分子の式が第四投影面積に対応する。)
【0073】
続いて、地平水平光成分の計算方法について説明する。地平水平光は以下の通り計算する。傾斜面の天頂からの状況を
図10に示す。
これより、
【数3】
ここで、δは傾斜面の法線ベクトルを水平面に投影した像からの角度を意味する。また、h(δ)は、傾斜面から見てその方角δに建物等の障害物が無ければ1、あれば0を返す関数として作成する。本計算例における障害物の例によれば、1.94deg<δ<43.06degにおいてh(δ)=0、その他の場合はh(δ)=1 である。よって、
β3=B3×(sin(90deg)−sin(43.06deg)+sin(1.94deg)−sin(−90deg))/(sin(90deg)−sin(−90deg))
=−0.0003×(2+0.034−0.683)/2
=−0.0003×0.676
=−0.0002MJ/m
2(日射量)
なお、計算の結果、値が負になる場合は、0を置くこととする。上記計算結果では、値が負であるため、
β3=0・・・(4)
(1)〜(4)の結果を合計し、傾斜面への日射量として以下を得た。
(0.133+0.70801)×(1―0.443)+1.09352×0.666+0.01859
=1.215MJ/m
2(日射量)
(ここで、傾斜天空率を用いて算出する場合、
(0.133+0.70801)×(1―0.443)+1.0203×0.714+0.01859
=1.215MJ/m
2(日射量))
【0074】
上記の計算例では、地平水平光成分が0となる場合を説明したが、0でない例として、東京、9月19日、朝6〜7時、斜面方位仰角および障害物配置は上記の計算例と同様の場合について地平水平光の計算例を以下に示す。
気象協会またはNEDO等の機関から取得したMETPV-3データ東京において、9月19日、朝6〜7時の日射データは、以下のとおり。
水平面全天日射量:0.43MJ/m
2
水平面直達日射量:0.18MJ/m
2
水平面天空散乱日射量:0.25MJ/m
2
積雪量:0cm
当該期間のcosθzの平均値:0.22463
時間積算法線面直達日射量:In=0.18/0.22463=0.8013(日射量)
ε=(0.25+0.8013)/0.25=4.205
F’21=0.267
F’22=−0.792
F’23=0.076
太陽高度、標高より
m=4.364(エアマス)
従ってΔ=0.25×4.364/4.97=0.2195
ただし、計算を簡略化し、1+0.033cos(2π(n−1)/365)を1とする。
また、この計算期間の太陽天頂角θzの平均は、1.3438
これらより、
F’2=0.1953
従って上記の計算例と同じ斜面仰角においては、
B3=F’2・sinβ
=0.1953×0.5
=0.09765MJ/m
2(日射量)
従って、上記の計算例と同じ傾斜面方位仰角、障害物配置においては、
【数3】
ただし、1.94deg<δ<43.06degにおいてh(δ)=0、その他の場合はh(δ)=1である。よって、
β3=B3×(sin(90deg)−sin(43.06deg)+sin(1.94deg)−sin(−90deg))/(sin(90deg)−sin(−90deg))
=0.0660MJ/m
2(日射量)
【0075】
(第2実施形態:全体構成)
図7は、第2実施形態の日射評価装置1’の構成を示す機能ブロック図である。日射評価装置1’は、第1実施形態と同様に、傾斜面への日射強度または日射量を算出する装置である。本第2実施形態は、傾斜面の地点と、水平面への日射強度または日射量を示す水平面日射データを取得できる日射計測地点とが異なる場合における、日射評価装置1’による傾斜面への日射強度または日射量の算出の実施形態である。
図7に示される通り、この日射評価装置1’は、機能構成として、取得部2’(取得手段)、日射成分算出部3’(日射成分算出手段)、日射評価部4’(日射評価手段)、及び影影響算出部5’(影影響算出手段)を含んで構成されている。日射評価装置1’は、第1実施形態と同様に、
図2に示すハードウェアで構成され、
図7に示す各機能ブロックの機能は
図2に示すハードウェア上で動作する。
【0076】
以下、
図7に示す機能ブロックに基づいて、日射評価装置1’の各機能ブロックを説明する。
【0077】
取得部2’は、傾斜面の地球上での地点を特定できる傾斜面位置データを取得する。また、取得部2’は、傾斜面の法線ベクトルを特定できる傾斜面法線データを取得する。また、取得部2’は、傾斜面への日射を遮る障害物の位置、形状、大きさ、方向等に関する障害物データを取得する。また、取得部2’は、水平面への日射強度または日射量を示す水平面日射データを取得する。また、取得部2’は、計算対象期間を特定するための日時データを取得する。また、取得部2’は、水平面日射データを計測した地球上での地点を特定できる日射計測位置データを取得する。
【0078】
日射成分算出部3’は、取得部2’によって取得された日射計測位置データと水平面日射データとに基づいて、日射計測地点における水平面または法線面(法線が太陽の方向を向いている平面)への日射強度または日射量に含まれる所定の日射成分を算出する。具体的には、日射計測地点における法線面への直達光成分と、日射計測地点における水平面への天空に一様に広がる天空一様光成分と、日射計測地点における法線面への太陽周辺光成分と、日射計測地点における傾斜面への地平水平光成分とを算出する。
【0079】
影影響算出部5’は、日射成分算出部3’によって算出された日射計測地点における各日射成分を、傾斜面への値に変換すると共に、障害物データに基づいて障害物による影の影響を加味した値に変換する。すなわち、影影響算出部5’は、日射成分算出部3’によって算出された日射計測地点における法線面への直達光成分に基づいて、傾斜面への直達光成分を算出し、障害物データに基づいて、傾斜面の地点から障害物によって遮られることなく太陽を望むことができるか否かに応じて傾斜面への直達光成分の値を変動させて、障害物による影の影響を加味した傾斜面への直達光成分を算出する。また、影影響算出部5’は、日射成分算出部3’によって算出された、日射計測地点における水平面への天空一様光成分に基づいて、傾斜面への天空一様光成分を算出するとともに、傾斜面から障害物によって遮られることなく望むことができる天空部分を障害物データに基づいて算出する。そして、影影響算出部5’は、これら算出した値に基づいて、障害物による影の影響を加味した傾斜面への天空一様光成分を算出する。また、影影響算出部5’は、日射成分算出部3’によって算出された日射計測地点における法線面への太陽周辺光成分に基づいて、障害物による影の影響を加味した傾斜面への太陽周辺光成分を算出する。また、影影響算出部5’は、日射成分算出部3’によって算出された日射計測地点における傾斜面への地平水平光成分に基づいて、障害物による影の影響を加味した傾斜面(傾斜面地点における傾斜面)への地平水平光成分を算出する。
【0080】
日射評価部4’は、影影響算出部5’において算出された日射成分を合計することにより、障害物の影の影響を加味した傾斜面への日射強度または日射量を算出する。
【0081】
(第2実施形態:全体処理)
次に、日射評価装置1’の処理について説明する。
図8は、日射評価装置1’の処理を示すフローチャートである。
【0082】
まず、取得部2’が、傾斜面位置データ、傾斜面法線データ、障害物データ、水平面日射データ、日時データ、及び日射計測位置データを取得する(S70、取得ステップ)。S70の後、日射成分算出部3’が、無影時の法線面への直達光成分を算出する(S71)。S71の後、影影響算出部5’が、障害物による影の影響を加味した傾斜面への直達光成分を算出する(S72)。
【0083】
また、S70の後、日射成分算出部3’が、無影時の傾斜面または水平面への天空一様光成分を算出する(S73)。S73の後、影影響算出部5’が、障害物による影の影響を加味した傾斜面への天空一様光成分を算出する(S74)。
【0084】
また、S70の後、日射成分算出部3’が、無影時の法線面への太陽周辺光成分を算出する(S75)。S75の後、影影響算出部5’が、障害物による影の影響を加味した傾斜面への太陽周辺光成分を算出する(S76)。
【0085】
また、S70の後、日射成分算出部3’が、無影時の傾斜面または水平面への地平水平光成分を算出する(S77)。S77の後、影影響算出部5’が、障害物による影の影響を加味した傾斜面への地平水平光成分を算出する(S78)。
【0086】
また、S70の後、日射成分算出部3’が、無影時の傾斜面への地表散乱光成分を算出する(S79)。
【0087】
そして、日射評価部4’が、S72にて算出された障害物による影の影響を加味した傾斜面への直達光成分、S74にて算出された障害物による影の影響を加味した傾斜面への天空一様光成分、S76にて算出された障害物による影の影響を加味した傾斜面への太陽周辺光成分、S78にて算出された障害物による影の影響を加味した傾斜面への他の成分、例えば地平水平光成分、及びS79にて算出された地表散乱光成分を合計することにより、傾斜面への日射強度または日射量を算出する。
【0088】
なお、直達光成分の算出処理(S71及びS72)、天空一様光成分の算出処理(S73及びS74)、太陽周辺光成分の算出処理(S75及びS76)、他の成分の算出処理(S77及びS78)、及び地表散乱光成分の算出処理(S79)について、いずれか一つ以上の算出処理を省略することができる。
【0089】
(第2実施形態:直達光成分)
次に、
図8のS71及びS72の処理の詳細について説明する。まず、S71において、日射成分算出部3’は、取得部2’によって取得された水平面日射データに含まれる水平面直達光成分と、取得部2’によって取得された日射計測位置データ及び日時データに基づいて、日射計測位置における太陽の方位と高度を算出する。次に、日射成分算出部3’は、算出されたそれらデータに基づいて、無影時の日射計測位置における法線面への直達光成分を算出する。具体的には、水平面直達光成分の値を、cos(θz)で除算することで無影時の日射計測地点における法線面への直達光成分を算出する。ここに、θzは、太陽天頂角(角度90°から日射計測地点における太陽高度を引いた値)を意味する。
【0090】
続いて、S72において、影影響算出部5’は、算出された無影時の日射計測位置における法線面への直達光成分、及び日射成分算出部3’によって算出された太陽方位・高度に基づいて、無影時の傾斜面地点における傾斜面への直達光成分を算出する。具体的には、無影時の日射計測地点における法線面への直達光成分の値に、cos(θ)を乗算することで無影時の傾斜面地点における傾斜面への直達光成分を算出する。ここに、θは、太陽と傾斜面地点とを結ぶ線と、傾斜面の法線の成す角を意味する。
【0091】
なお、無影時の傾斜面地点における傾斜面への直達光成分をより正確に計算するために、影影響算出部5’に次の処理を行わせる構成にしても良い。即ち、S71において算出された無影時の日射計測位置における法線面への直達光成分及び太陽方位・高度に基づき、まず、無影時の傾斜面地点における法線面への直達光成分を算出し、この無影時の傾斜面地点における法線面への直達光成分に基づいて無影時の傾斜面地点における傾斜面への直達光成分を算出する。この場合、無影時の傾斜面地点における法線面への直達光成分を、日射計測位置における太陽高度に基づいて算出してもよいし、傾斜面地点における太陽高度を計算した上でこれに基づき算出してもよいし、太陽が傾斜面地点の真上にある状態(エアマス=1)における大気透過率に基づいて算出してもよい。あるいは、傾斜面地点における法線面への直達光成分を、日射計測位置における太陽高度、傾斜面地点における太陽高度、エアマス=1における大気透過率のいずれか2つ以上を加味して計算することとしても良い。
【0092】
次に、影影響算出部5’は、日射成分算出部3’によって算出された太陽の方位・高度、及び取得部2’によって取得された障害物データに基づいて、直達光が障害物によって遮られるか否かを判定する。影影響算出部5’は、直達光が障害物によって遮られる場合は0として、直達光が障害物によって遮られない場合は無影時の値と等しい値として、障害物による影の影響を加味した傾斜面への直達光成分を算出する。なお、上述の障害物データに基づいて直達光が障害物によって遮られるか否かを判定する処理は、第1実施形態のS52の処理と同様である。
【0093】
(第2実施形態:天空一様光成分)
次に、
図8のS73及びS74の処理の詳細について説明する。本第2実施形態においては、天空一様に広がる光の成分である天空一様光成分の値は、日射計測位置と傾斜面地点とで異ならないものとして処理する。
【0094】
まず、S73において、日射成分算出部3’は、Hayモデル、Perezモデル、及びその他任意のモデルのうちいずれか1つのモデルに従い、無影時の日射計測地点における傾斜面または水平面への天空一様光成分を算出する。Hayモデルでは、取得部2’によって取得された水平面日射データ、日時データに基づいて算出された太陽方位・高度、及び取得部2’によって取得された傾斜面法線データから算出された傾斜面の傾斜角に基づいて、無影時の日射計測地点における傾斜面または水平面への天空一様光成分を算出する。Perezモデルでは、取得部2’によって取得された水平面日射データ、日時データに基づいて算出された太陽方位・高度、日時、取得部2’によって取得された傾斜面法線データから算出された傾斜面の傾斜角、及び取得部2’によって取得された傾斜面位置データから特定される傾斜面の標高に基づいて、無影時の日射計測地点における傾斜面または水平面への天空一様光成分を算出する。その他任意のモデルでは、取得部2’によって取得された水平面日射データ、及びその他のデータに基づいて、無影時の日射計測地点における傾斜面または水平面への天空一様光成分を算出する。上述のとおり、本第2実施形態においては、天空一様光成分の値は、日射計測地点と傾斜面地点とで異ならないものとして処理する。従って、影影響算出部5’は、算出された無影時の日射計測地点における傾斜面または水平面への天空一様光成分の値を、そのまま無影時の傾斜面地点における傾斜面または水平面への天空一様光成分の値として処理する。
【0095】
続いて、S74において、影影響算出部5’は、取得部2’によって取得された傾斜面法線データ及び障害物データに基づいて、傾斜面と同一地点から望む天空のうち傾斜面自身と障害物とによって遮られることなく傾斜面から望むことができる天空の部分を非遮蔽天空部分として算出する。次に、影影響算出部5’は、算出された無影時の傾斜面地点における傾斜面または水平面への天空一様光成分の値と、非遮蔽天空部分とに基づいて、障害物による影の影響を加味した傾斜面地点における傾斜面への天空一様光成分を算出する。なお、天空一様光成分の値が日射計測地点と傾斜面地点とで異ならないものとして扱う本第2実施形態においては、上述のS73およびS74の処理は、第1実施形態のS53およびS54の処理と同様である。
【0096】
(第2実施形態:太陽周辺光成分)
次に、
図8のS75及びS76の処理の詳細について説明する。まず、S75において、日射成分算出部3’は、Hayモデル、Perezモデル、及びその他任意のモデルのうちいずれか1つのモデルに従い、無影時の日射計測地点における法線面への太陽周辺光成分を算出する。Hayモデルでは、取得部2’によって取得された水平面日射データ及び傾斜面法線データ、日時データに基づいて算出された太陽高度・方位、及び取得部2’によって取得された傾斜面位置データから特定される傾斜面の傾斜角に基づいて、無影時の日射計測地点における法線面への太陽周辺光成分を、積算値(日射量)または瞬時値(日射強度)として算出する。Perezモデルでは、取得部2’によって取得された水平面日射データ及び傾斜面法線データ、日時データに基づいて算出された太陽高度・方位、日時、及び取得部2’によって取得された傾斜面位置データから特定される傾斜面の標高に基づいて、無影時の日射計測地点における法線面への太陽周辺光成分を、積算値(日射量)または瞬時値(日射強度)として算出する。その他任意のモデルでは、水平日射データ及びその他のデータに基づいて、無影時の日射計測地点における法線面への太陽周辺光成分を、積算値(日射量)または瞬時値(日射強度)として算出する。
【0097】
続いて、S76において、影影響算出部5’は、日射成分算出部3’によって算出された無影時の日射計測地点における法線面への太陽周辺光成分の積算値(日射量)または瞬時値(日射強度)に基づいて、無影時の傾斜面地点における傾斜面への太陽周辺光成分を瞬時値または積算値として算出する。具体的には、無影時の日射計測地点における法線面への太陽周辺光成分の値に、cos(θ)を乗算することで無影時の傾斜面地点における傾斜面への太陽周辺光成分を算出する。ここに、θは、太陽と傾斜面地点とを結ぶ線と、傾斜面の法線の成す角を意味する。
【0098】
なお、無影時の傾斜面地点における傾斜面への太陽周辺光成分をより正確に計算するために、影影響算出部5’に次の処理を行わせる構成にしても良い。即ち、S75において算出された無影時の日射計測位置における法線面への太陽周辺光成分及び太陽方位・高度に基づき、まず、無影時の傾斜面地点における法線面への太陽周辺光成分を算出し、この無影時の傾斜面地点における法線面への太陽周辺光成分に基づいて無影時の傾斜面地点における傾斜面への太陽周辺光成分を算出する。無影時の傾斜面地点における法線面への太陽周辺光成分を瞬時値または積算値として算出する。この場合、無影時の傾斜面地点における法線面への太陽周辺光成分を、太陽が傾斜面地点の真上にある状態(エアマス=1)における大気透過率に基づいて算出してもよいし、日射測定地点における太陽方位・高度に基づいて算出してもよいし、傾斜面地点における太陽方位・高度に基づいて算出してもよい。あるいは、傾斜面地点における法線面への太陽周辺光成分を、日射計測位置における太陽高度、傾斜面地点における太陽高度、エアマス=1における大気透過率のいずれか2つ以上を加味して計算することとしても良い。
【0099】
次に、無影時の積算値(日射量)を用いて障害物の影の影響を加味した傾斜面への太陽周辺光成分を計算する方法を説明する。影影響算出部5’は、取得部2’によって取得された障害物データ、及び太陽の方位・高度に基づいて、所定時間Tc内において傾斜面から傾斜面自身に遮られることなく太陽を望むことができる時間T
1に対する、所定時間内において傾斜面から傾斜面自身または障害物に遮られることなく太陽を望むことができる時間T
2を算出し、これら時間の比(T
2/T
1)を算出する。次に、影影響算出部5’は、当該比の値T
2/T
1を所定時間Tc内における無影時の傾斜面への太陽周辺光成分の積算値に乗じることにより、障害物の影響を加味した傾斜面への太陽周辺光成分(積算値)を算出する。なお、上述の無影時の積算値を用いて障害物の影の影響を加味した傾斜面への太陽周辺光成分を算出する処理は、第1実施形態のS56における処理と同様である。
【0100】
また、無影時の瞬時値(日射強度)を用いて障害物の影の影響を加味した傾斜面への太陽周辺光成分の積算値を計算する方法について説明する。影影響算出部5’は、取得部2’によって取得された障害物データ、及び太陽の方位・高度に基づいて、所定時刻tにおいて、傾斜面の位置から、障害物によって遮られることなく太陽を望むことができるか否かを判定する。次に、影影響算出部5’は、障害物によって遮られることなく太陽を望むことができる場合は1を、障害物によって太陽が遮られて望めない場合は0を、無影時の傾斜面への太陽周辺光成分の瞬時値に乗じることにより、当該時刻における傾斜面への障害物による影の影響を加味した太陽周辺光成分(瞬時値)を算出する。次に、影影響算出部5’は、複数(n個)の時刻t+i×Δt(1≦i≦n)における傾斜面への障害物による影の影響を加味した太陽周辺光成分を積算し、これに時間刻みの値Δtを乗算することによって、所定時間(n×Δt)内の傾斜面への障害物による影の影響を加味した太陽周辺光成分(積算値)を算出する。なお、上述の無影時の瞬時値(日射強度)を用いて障害物の影の影響を加味した傾斜面への太陽周辺光成分を計算する方法の処理は、第1実施形態のS56における処理と同様である。
【0101】
または、無影時の瞬時値を用いて次のように積算値を計算してもよい。すなわち、無影時の傾斜面への太陽周辺光成分を瞬時値として算出した後に、影影響算出部5’は、取得部2’によって取得された障害物データ、及び太陽の方位・高度に基づいて、時刻tの天空における太陽の位置を中心とする所定形状の太陽周辺領域を、傾斜面または地平水平面に遮られることなく傾斜面の位置から望むことのできる面積または立体角を第一面積S
1として算出し、当該時刻tにおいて、傾斜面と地平水平面と障害物とに遮られることなく太陽周辺領域を傾斜面から望むことのできる面積または立体角を第二面積S
2として算出する。次に、影影響算出部5’は、第一面積S
1と第二面積S
2との比S
2/S
1の値を当該時刻tにおける無影時の傾斜面への太陽周辺光成分に乗じることにより、当該時刻tにおける、傾斜面への障害物による影の影響を加味した太陽周辺光成分(瞬時値)を算出する。次に、影影響算出部5’は、複数(n個)の時刻t+i×Δt(1≦i≦n)における傾斜面への障害物の影響を加味した太陽周辺光成分を積算し、これに時間刻みの値Δtを乗算することによって、所定時間(n×Δt)内の太陽周辺光成分(積算値)を算出する。なお、上述の無影時の瞬時値を用いて積算値を計算する処理は、第1実施形態のS56における処理と同様である。
【0102】
なお、太陽周辺領域は、天空における太陽の位置を中心に視半径が10°から35°までのいずれかの大きさをもつ円の領域に設定される。
【0103】
(第2実施形態:地平水平光成分)
次に、
図8のS77及びS78の処理の詳細について説明する。本第2実施形態においては、地平線水平線からくる光の成分である地平水平光成分の値は、日射計測位置と傾斜面地点とで異ならないものとして処理する。
【0104】
まず、S77において、日射成分算出部3’は、Perezモデルに従い、取得部2’によって取得された水平面日射データ、日時データに基づいて算出された太陽方位・高度、日時、取得部2’によって取得された傾斜面位置データから特定される傾斜面の傾斜角、及び取得部2’によって取得された傾斜面位置データから特定される傾斜面の標高に基づき、無影時の日射計測地点における傾斜面への地平水平光成分を算出する。上述のとおり、本第2実施形態においては、地平水平光成分の値は、日射計測地点と傾斜面地点とで異ならないものとして処理する。従って、影影響算出部5’は、算出された無影時の日射計測地点における傾斜面への地平水平光成分の値を、そのまま無影時の傾斜面地点における傾斜面への地平水平光成分の値として処理する。
【0105】
続いて、S78において、影影響算出部5’は、取得部2’によって取得された障害物データ及び傾斜面法線データ、算出された無影時の傾斜面地点における傾斜面への地平水平光成分に基づいて、障害物による影の影響を加味した傾斜面への地平水平光成分を算出する。なお、上述のS78の一部の障害物による影の影響を加味した傾斜面への地平水平光成分の算出処理は、第1実施形態のS58における処理と同様である。
【0106】
(第2実施形態:地表散乱光成分)
次に、
図8のS79の処理の詳細について説明する。無影時の地表散乱光成分は、傾斜面地点における全天から水平面への全日射強度または全日射量に、アルベド及び(1−cosβ)/2を乗算することで算出する。本第2実施形態においては、傾斜面地点における水平面への全日射強度または全日射量を次の方法で算出する。即ち、日射計測位置における水平面への各成分((1)直達光成分、(2)天空一様光成分、(3)太陽周辺光成分)を傾斜面地点における水平面への成分に変換して各成分を合計することによって算出する。
【0107】
S79において、まず、日射成分算出部3’は、S71にて算出された無影時の日射計測地点における法線面への直達光成分に基づいて、無影時の傾斜面地点における水平面への直達光成分を算出する。次に、日射成分算出部3’は、S73にて算出された無影時の日射計測地点における傾斜面または水平面への天空一様光成分に基づいて、無影時の傾斜面地点における水平面への天空一様光成分を算出する。更に、日射成分算出部3’は、S75にて算出された無影時の日射計測地点における法線面への太陽周辺光成分の瞬時値または積算値に基づいて、無影時の傾斜面地点における水平面への太陽周辺光成分を算出する。続いて、日射成分算出部3’は、算出された無影時の傾斜面地点における水平面への直達光成分、天空一様光成分並びに太陽周辺光成分とを合計して、傾斜面地点における無影時の水平面への全日射強度または全日射量を算出する。
【0108】
次に、日射成分算出部3’は、算出された傾斜面地点における水平面への全日射強度または全日射量、地表反射率(アルベド)、取得部2’によって取得された傾斜面位置データから特定される傾斜面の傾斜角に基づいて、傾斜面への地表散乱光成分を算出する。なお、日射成分算出部3’は、アルベドの値を、水平面日射データに含まれる日射計測地点における積雪量データに基づき一意的に決定する。あるいは、取得部2’が、傾斜面地点における積雪量データを取得し、係る積雪量データに基づき日射成分算出部3’がアルベドを一意的に決定する構成としても良い。
【0109】
(第2実施形態:計算例)
以下では、第2実施形態における日射評価装置1’による傾斜面地点における傾斜面への日射量の算出の計算例について説明する。以下では、Hayモデル(文献3及び文献4参照)を用いて計算する例を説明する。なお、以下の計算において、計算は全て日射評価装置1’が行う。日射評価装置1’のどの機能ブロックがどの計算を行うかは上述の説明より明らかであるため、以下では計算の主体の明記を省略する。
【0110】
本計算例では、9月15日12時〜13時の八丈島における水平面日射データに基づき、同時刻の、伊豆鳥島における、南南東向き、傾斜角30°の傾斜面への日射量を計算した例を示す。また、本計算例においては、水平面日射データとして取得される水平面天空散乱日射量を、Hayモデルにより天空一様光成分と、太陽周辺光成分の2者に分離する場合について説明する(すなわち、地平水平光成分の値を0として計算する例を説明する)。また、以下では、傾斜面の位置を中心として東に向かう方向を正とする軸と、北に向かう方向を正とする軸と、天頂に向かう方向を正とする軸による3次元座標系に基づき説明する。
なお、以下の計算では以下の記号を適宜用いる。
A:傾斜面地点における無影時の傾斜面への直達光成分
A’:日射計測地点における無影時の法線面への直達光成分
α:傾斜面地点における障害物による影の影響を加味した傾斜面への直達光成分
B1:傾斜面地点における無影時の傾斜面への太陽周辺光成分
B1’:日射計測地点における無影時の法線面への太陽周辺光成分
B1’’:日射計測地点における無影時の水平面への太陽周辺光成分
β1:傾斜面地点における障害物による影の影響を加味した傾斜面への太陽周辺光成分
B2:傾斜面地点における無影時の傾斜面への太陽周辺光成分
B2’:日射計測地点における無影時の水平面への天空一様光成分
β2:傾斜面地点における障害物による影の影響を加味した傾斜面への天空一様光成分
C:傾斜面地点における無影時の傾斜面への地表散乱光成分
γ:傾斜面地点における障害物による影の影響を加味した傾斜面への地表散乱光成分
本計算例において、まず、各種データとして次のデータを取得する。
傾斜面法線データ(傾斜面の単位法線ベクトル)。
東向き成分:sin(30°)×sin(22.5°)=0.19134
北向き成分:−sin(30°)×cos(22.5°)=−0.46194
上向き成分:cos(30°)=0.86603
日射計測位置データ(八丈島の位置)。
北緯33度6.1分、東経139度47.3分
傾斜面位置データ(伊豆鳥島の位置)。
北緯30度29分、東経140度18分
日時データ
9月15日、12時〜13時
【0111】
水平面日射データ(気象協会またはNEDO等の機関から取得したMETPV−3データによれば、9月15日、12時〜13時の、八丈島における水平面日射量は以下の通り)。
水平面全天日射量:2.61MJ/m
2(日射量)
水平面直達日射量:0.99MJ/m
2(日射量)
水平面天空散乱日射量:1.62MJ/m
2(日射量)
積雪量:0cm
【0112】
次に、日射計測地点(八丈島)における無影時の法線面への直達光成分(A’)を算出する。
A’=(水平面直達日射量)/≪cosθz≫
ここに、θzは太陽天頂角(90°−太陽高度)を、≪≫は計算期間における平均を意味する。八丈島の計算期間における1/cosθzの平均値は、1.18628である。
従って日射計測地点における法線面への直達光成分(A’)は
A’=0.99×1.18628=1.17442MJ/m
2(日射量)
続いて、日射計測地点(八丈島)における無影時の水平面への太陽周辺光成分(B1’’)及び天空一様光成分(B2’)を算出する。この計算期間の水平面天空散乱日射量に基づく、太陽周辺光成分および天空一様光成分は、文献3(p316(11.5.8))より、β=0と置くことで、以下の通り求められる。
太陽周辺光成分:1.62×(2.61−1.62)/4.97=0.322696MJ/m
2(日射量)
(∵rb≡cosθz/cosθz≡1 文献3のP316に記載の式(11.5.8)参照)
天空一様光成分:1.62×(1―(2.61−1.62)/4.97)=1.297304=B2’(日射量)
次いで、日射計測地点における法線面に対する太陽周辺光成分(B1’)を以下の通り求める。
B1’=B1’’/≪cosθz≫
=0.322696×1.18628=0.38281MJ/m
2(日射量)
【0113】
以下のとおりA’,B1’,B2’,C’から、傾斜面地点(伊豆鳥島)における無影時の傾斜面への各日射成分(直達光成分A、太陽周辺光成分B1、天空一様光成分B2、地表散乱光成分C)を計算する。
太陽と計算対象地点とを結ぶ線と、傾斜面の法線の成す角度をθとすると、伊豆鳥島におけるcosθの平均値は、0.9140848
ここで、A及びB1については、A’及びB1’に対してそれぞれcosθを乗じることで算出する。また、上述の通り、天空一様光成分については、日射計測地点の値(B2’)と傾斜面地点(B2)の値は異ならない(B2’=B2)ものとして扱う。また、Cについては第1実施形態の計算例と同様に算出する。
従って、
A=A’×≪cosθ≫
=1.17442(MJ/m
2)×0.9140848=1.07352(MJ/m
2(日射量))
B1=B1’×≪cosθ≫
=0.38281(MJ/m
2)×0.9140848=0.349921(MJ/m
2(日射量))
B2=B2’
C=(1.17442×0.867691+0.38281×0.867691+1.297304)(MJ/m
2)×0.15×(1−cos30°)/2(日射量)
=2.64849(MJ/m
2)×0.15×(1−cos30°)/2
=0.026612 (MJ/m
2(日射量))
【0114】
続いて、障害物による影の影響を加味した各成分の値を計算する。障害物として、
図9に示す2枚の壁がある場合について説明する。影の影響を計算する方法は、第1実施形態における計算例に示したものと同様である。
直達光成分および太陽周辺光成分が当該壁により遮られる時間を計算した結果、この2者は31.1%が遮られる。また、水平面への天空一様光成分については、与えられた傾斜面の設置方位、仰角および障害物配置に基づき混合天空率を計算した結果、0.666の値を得た。
これらより傾斜面日射量として以下を得る。
(1.07352+0.349921)×(1−0.311)+1.297304×0.666+0.026612
=1.871(MJ/m
2(日射量))