特許第5669700号(P5669700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669700
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】媒体搬送装置及び媒体の搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/12 20060101AFI20150122BHJP
【FI】
   B65H7/12
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-204709(P2011-204709)
(22)【出願日】2011年9月20日
(65)【公開番号】特開2013-63843(P2013-63843A)
(43)【公開日】2013年4月11日
【審査請求日】2013年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(72)【発明者】
【氏名】松岡 大樹
(72)【発明者】
【氏名】水上 和弥
(72)【発明者】
【氏名】森田 義和
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−292574(JP,A)
【文献】 特開平05−043091(JP,A)
【文献】 特開2011−037524(JP,A)
【文献】 特開2009−149406(JP,A)
【文献】 特開2008−100783(JP,A)
【文献】 特開2003−137457(JP,A)
【文献】 特開2008−290782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/00 − 7/20
B65H 43/00 − 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の媒体の搬送路を挟んで対向するように配置される超音波送信器及び超音波受信器を有する超音波センサと、
前記超音波受信器の出力を増幅する増幅器と、
前記搬送路で搬送される第1の媒体及び第1の媒体よりも厚い第2の媒体を区別する種別検出手段と、
前記増幅器により増幅された前記超音波受信器の出力に基づいて、前記搬送路で搬送される媒体の重送の有無を検知する重送検知手段と、を備え、
前記重送検知手段は、前記種別検出手段の検出結果に基づいて、前記増幅器による増幅率を変更する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記重送検知手段は、前記搬送路で搬送される媒体が第2の媒体である場合に第2の媒体の搬送を第1の媒体の重送として判定しない請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
第1の媒体が排出される第1排出経路と、
第2の媒体が排出される第2排出経路と、
前記種別検出手段の検出結果に基づいて、前記搬送路で搬送される媒体の排出経路を前記第1排出経路及び前記第2排出経路のいずれかに切り換える経路切換部と、
を備える請求項1又は2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記種別検出手段は、前記搬送路で搬送される媒体の厚さを検出する厚さ検出センサを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
前記重送検知手段は、前記厚さ検出センサの検出結果に基づいて前記超音波受信器の出力を調整する出力調整部を備える請求項4に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
前記種別検出手段は、
前記搬送路で搬送される媒体の辺の長さを検出する寸法センサと、
第1の媒体と第2の媒体との間の辺の長さの相違に基づき第1の媒体と第2の媒体を判別する判別部と、
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
前記種別検出手段は、前記搬送路を挟むように対向して配置される超音波送信器及び超音波受信器を備えた、前記超音波センサと異なる第2の超音波センサを備え、
前記超音波センサと前記第2の超音波センサとは、超音波送信器と超音波受信器との間に介在する媒体の厚さ及び/又は媒体の重送有無の相違に対する出力の減衰特性が異なることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項8】
前記媒体を搬入する搬入部と、
前記搬入部から搬入される複数枚の媒体を分離して1枚ずつ前記搬送路に投入する前記分離部と、
前記重送検知手段が前記重送を検知した場合に、前記媒体を前記分離部まで戻して前記媒体を再分離させる搬送制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項9】
シート状の媒体の搬送路を挟んで対向するように配置される超音波送信器及び超音波受信器を有する超音波センサにおける前記超音波受信器の出力であって、前記超音波受信器の出力を増幅する増幅器により増幅された出力を検出するステップと、
前記搬送路で搬送される第1の媒体及び第1の媒体よりも厚い第2の媒体を区別する種別検出手段によって、前記搬送路で搬送される媒体種別を判別するステップと、
前記増幅器により増幅された前記超音波受信器の出力に基づいて、前記搬送路で搬送される媒体の重送の有無を検知するステップと、を含み、
前記検知するステップにおいて、前記種別検出手段の検出結果に基づいて、前記増幅器による増幅率を変更する、
ことを特徴とする媒体の搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で論じられる実施態様は、シート状の媒体を搬送する媒体搬送装置および搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の媒体搬送装置として、超音波式2枚検知方法により複数枚の用紙が搬送されることを検知するものが知られている。超音波式2枚検知方法は、全ての枚葉紙に共通のしきい値を予め算出し、これを給紙部のスタート時に制御装置の検知波高レベル設定回路に自動的に設定して、同しきい値により給紙部からの枚葉紙が2枚であるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−193786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波センサを用いて、単葉の媒体が搬送されているか重送が発生しているかを検知する場合には、媒体の枚数だけでなく媒体の厚さによっても超音波センサの出力レベルが変化する。このため、例えばカードの様な媒体が搬送されると紙媒体の重送が発生していると誤検知されることがある。開示の装置及び方法は、異なる厚さの媒体が搬送された場合の重送の誤検知を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
装置の一観点によれば、シート状の媒体を搬送する媒体搬送装置が与えられる。媒体搬送装置は、媒体の搬送路を挟んで対向するように配置される超音波送信器及び超音波受信器を有する超音波センサと、搬送路で搬送される第1の媒体及び第1の媒体よりも厚い第2の媒体を区別する種別検出手段と、超音波センサの出力及び種別検出手段の検出結果に基づいて、搬送路で搬送される媒体の重送の有無を検知する重送検知手段を備える。
【0006】
方法の一観点によれば、シート状の媒体の搬送方法が与えられる。搬送方法は、媒体の搬送路を挟んで対向するように配置される超音波送信器及び超音波受信器を有する超音波センサの出力を検出するステップと、搬送路で搬送される第1の媒体及び第1の媒体よりも厚い第2の媒体を区別する種別検出手段によって、搬送路で搬送される媒体種別を判別するステップと、超音波センサの出力の検出結果及び種別検出手段による判別結果に基づいて、搬送路で搬送される媒体の重送の有無を検知するステップを含む。
【発明の効果】
【0007】
本件開示の装置又は方法によれば、異なる厚さの媒体が搬送された場合に媒体搬送装置で生じる重送の誤検知が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】原稿読取装置の構成例の概略を示す図である。
図2】制御回路及び駆動回路の構成例を示す図である。
図3】センサ駆動回路の構成例を示す図である。
図4】(A)及び(B)は、異なる調整状態のおける超音波センサの出力特性の説明図である。
図5】重送検知処理の第1例の説明図である。
図6】重送判定閾値の調整の説明図である。
図7】重送検知処理の第2例の説明図である。
図8】(A)及び(B)は、第2超音波センサの出力特性の第1例及び第2例を示す図である。
図9】重送検知処理の第3例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<1.ハードウエア構成>
以下、添付する図面を参照して本発明の実施例について説明する。図1は、原稿読取装置の構成例の概略を示す図である。本実施例では、シート状の媒体を搬送する媒体搬送装置が、原稿を搬送して原稿画像をイメージセンサで読み取る原稿読取装置として実現される。媒体搬送装置は、原稿読取装置だけでなく、複写装置や印刷装置、シート加工装置、カード処理装置など、シート状の媒体を取り扱うどのような装置としても実現可能である。
【0010】
原稿読取装置1は、原稿搬入部2、第1原稿排出部3、第2原稿排出部4、ピックローラ11、分離ローラ12a及び12b、搬送ローラ13a、13b、14a、14b、15a、15b、16a及び16bを備える。原稿読取装置1は、原稿を搬送するための第1搬送路20、直線搬送路21及び湾曲搬送路22を備える。ピックローラ11によって原稿搬入部2からピックされた重なった原稿は分離ローラによって分離され、1枚ずつ第1搬送路20に投入される。第1搬送路20上を搬送される原稿が搬送ローラ14a及び14bの位置まで至ると、搬送路は、第1原稿排出部3へ至る直線搬送路21及び第2原稿排出部4へ至る湾曲搬送路22に分岐する。
【0011】
屈曲搬送路22は、原稿読取装置1の上部に設けられた第2原稿排出部4へ原稿を屈曲して搬送する。一方で、比較的剛性が高いカード状の原稿を搬送する場合には、直線的な直線搬送路21を経由して原稿を第1原稿排出部3から排出することで、搬送機構が破損されることが防止される。
【0012】
直線搬送路21及び湾曲搬送路22の分岐箇所には経路切換部23が設けられる。経路切換部23は、機械的な構成によって直線搬送路21と湾曲搬送路22との間で原稿を搬送する経路を切り替える。例えば、経路切換部23がA位置にある場合に原稿は直線搬送路21で搬送され、経路切換部23がB位置にある場合に原稿は湾曲搬送路22で搬送される。
【0013】
さらに、原稿読取装置1は、イメージセンサ17と、制御回路30と駆動回路40を備える。イメージセンサ17は、搬送路上の原稿の画像を読み取って電気的信号を生成する。制御回路30は、イメージセンサ17の検出信号から原稿画像を生成し、またピックローラ11、分離ローラ12a及び12b、搬送ローラの駆動側ローラ13a、14a、15a及び16a、並びに経路切換部23の動作を制御する。駆動回路40は、制御回路30の制御に従って、各ローラ11、12a、12b、13a、14a、15a及び16a及、経路切換部23並びにイメージセンサ17を駆動する。
【0014】
原稿読取装置1は、超音波センサ50及び第2センサ51を備える。超音波センサ50は、超音波送信器50a及び超音波受信器50bを備える。超音波送信器50a及び超音波受信器50bは、第1搬送路20を挟んで対向するように配置される。これら超音波センサ50及び第2センサ51は、制御回路30の制御に従って駆動回路40により駆動される。超音波センサ50及び第2センサ51の検出結果は、駆動回路40を介して制御回路30に読み取られる。第2センサ51については、各実施例の説明において後述する。なお、各ローラの配置パターンは、原稿読取装置1の実施形態の違いに応じて適宜変更されることがあり、上記の配置例に限定されるものではない。例えば、搬送ローラ13a及び13bを超音波センサ50よりも後の位置に設けてもよい。
【0015】
図2は、制御回路30及び駆動回路40の構成例を示す図である。制御回路30は、CPU(Central Processing Unit)31、メモリ32、補助記憶装置33、インタフェース回路34及びバス35を備える。添付する図面においてインタフェース回路を「I/F」と表記する。CPU31、メモリ32、補助記憶装置33及びインタフェース回路34は、バス35によって電気的に接続されている。
【0016】
CPU31は、補助記憶装置33に格納されるコンピュータプログラムを実行することにより、イメージセンサ17で読み取った原稿画像の生成処理や、以下に説明する原稿の重送検知処理を実行する。補助記憶装置33は、コンピュータプログラムを記憶するための、不揮発性記憶装置や、読み出し専用メモリ(ROM: Read Only Memory)やハードディスクなどを含んでいてよい。
【0017】
メモリ32には、CPU31が現在実行中のプログラムや、このプログラムによって一時的に使用されるデータが記憶される。メモリ32は、ランダムアクセスメモリ(RAM: Random Access Memory)を含んでいてよい。CPU31は、インタフェース回路34を介して、駆動回路40に対する制御信号を駆動回路40へ出力し、また、駆動回路40を経由して各センサ17、50及び51の出力信号を受信する。
【0018】
駆動回路40は、モータ駆動回路41、アクチュエータ駆動回路42並びにセンサ駆動回路43及び44を備える。モータ駆動回路41は、制御回路30の指示に従って各ローラ11、12a、12b、13a、14a、15a及び16aに回転駆動力をそれぞれ与えるモータ45…45を駆動する。また、アクチュエータ駆動回路42は、制御回路30の指示に従って経路切換部23を駆動するアクチュエータ46を動作させ、直線搬送路21と湾曲搬送路22との間の経路切り替えを行う。
【0019】
センサ駆動回路43は、第2センサ51を駆動し及び第2センサ51の出力信号を検出して制御回路30へ出力する。また、センサ駆動回路44は、超音波センサ50を駆動し及び超音波センサ50の出力信号を検出して制御回路30へ出力する。以下、図3を参照して、センサ駆動回路44の構成例を説明する。
【0020】
センサ駆動回路44は、送信回路60と、前段増幅器61と、バンドパスフィルタ62と、後段増幅器63と、サンプルホールド回路64と、アナログディジタル変換器65を備える。超音波送信器50aは超音波を出力する。送信回路60は、超音波送信器50aに対してこれを駆動する駆動信号を供給する。送信回路60は、超音波送信器50aの送信周波数に対応する周波数で発振する発信回路を備え、CPU31の制御信号に従って駆動信号の強度を変化させて、超音波送信器50aから送信する超音波の強度を調整することができる。
【0021】
超音波受信器50bは、超音波送信器50aと第1搬送路20を挟んで対向して設けられ、超音波送信器50aにより送信されて原稿Cを透過した超音波を受信する。超音波受信器50bは、超音波送信器50aから受信した超音波に応じた電気信号を出力する。この電気信号は前段増幅器61により増幅され、増幅後の信号に含まれるノイズがバンドパスフィルタ62で除去される。この後、ノイズ除去後の信号が後段増幅器63で増幅される。そして、サンプルホールド回路64が増幅後の信号のピーク値をサンプルアンドホールドし、アナログディジタル変換器65は、このピーク値をデジタル値に変換する。
【0022】
CPU31は、このデジタル信号を超音波センサ50の出力信号Sとして入力する。CPU31は、出力信号Sを重送判定閾値Th1と比較して、出力信号Sが閾値Th1より低い場合に、搬送される原稿の重送を検知する。
【0023】
<2.第1実施例>
以下、原稿読取装置1の各実施例について説明する。第1実施例では第2センサ51として、搬送される原稿の厚さを検出する紙厚検知センサが使用される。紙厚検知センサとしては、光学式紙厚センサ、圧力センサ及び機械式センサなど様々な形式のセンサが利用可能である。例えば光学式紙厚センサは、原稿の表面の反射光の変位を検出することによって原稿の紙厚を検出する。圧力センサは、原稿の紙厚に応じて変化する圧力を検出する。機械式センサは、原稿に接するローラの移動量を検出する。
【0024】
CPU31は、紙厚検知センサである第2センサ51の出力信号によって、搬送される原稿が、紙原稿であるのか、紙原稿よりも厚いカードの様な原稿であるのかを区別する。CPU31は、紙厚が異なる複数種の原稿が搬送されても、重送であるか否かを判断できるように、原稿の紙厚に応じて超音波センサ50の出力を調整する。以下の説明において紙原稿よりも厚いカードの様な原稿のことを「カード原稿」と表記することがある。
【0025】
図4の(A)及び図4の(B)は、異なる調整状態における超音波センサ50の出力特性の説明図である。図4の(A)の実線100は、単数の紙原稿が搬送されている場合の出力特性を示し、点線101は、紙原稿の重送が発生している場合の出力特性を示す。重送のため区間102において超音波センサ50の出力Sが低下する。このため、CPU31は、超音波センサ50の出力Sが重送判定閾値Th1より小さいか否かで重送有無を判断することができる。
【0026】
実線110は、単数のカード原稿が搬送されている場合の出力特性を示し、点線111は、カード原稿の重送が発生している場合の出力特性を示す。カード原稿の場合は、重送が発生していなくても超音波センサ50の出力Sは重送判定閾値Th1より小さいため、CPU31は重送有無を判断することができない。
【0027】
そこで、CPU31は、第2センサ51の出力信号によりカード原稿の搬送を検出した場合には、カード原稿搬送時の出力特性が図4の(B)の実線110及び点線111となるように超音波センサ50の出力Sの強度を調整する。実線110は、単数のカード原稿が搬送されている場合の出力特性を示し、点線111は、カード原稿の重送が発生している場合の出力特性を示す。参考のため、実線100及び点線101は、超音波センサ50の出力調整前の紙原稿搬送時の出力特性を示したものである。図4の(B)に示す出力特性では、単数のカード原稿が搬送されている場合の出力110が重送判定閾値Th1を超え、カード原稿重送時の出力111は重送判定閾値Th1より小さくなる。このためCPU31は、カード原稿の重送有無を判断することができる。
【0028】
CPU31は、超音波送信器50aから送信する超音波の強度を変更することによって超音波センサ50の出力Sを調整してよい。この場合、例えばCPU31は、送信回路60が出力する駆動信号の強度を調整する。これに代えて又はこれに加えてCPU31は、超音波受信器50bの出力信号の増幅率を変更することによって超音波センサ50の出力Sを調整してよい。この場合、例えばCPU31は、前段増幅器61及び/又は後段増幅器63の増幅器を調整する。
【0029】
以下、図5を参照して、第1実施例における重送検知処理を説明する。ステップS101において第2センサ51は、搬送中の原稿の紙厚を検出する。ステップS102においてCPU31は、原稿の紙厚に応じて超音波センサ50の出力Sを調整する。例えば、CPU31は、搬送原稿がカード原稿であるときの超音波センサ50の出力強度を、搬送原稿が紙原稿であるときの超音波センサ50の出力強度よりも強くする。
【0030】
ステップS103においてCPU31は、ステップS102において超音波センサ50の出力強度が調整可能であったか否かを判定する。出力強度が調整できた場合(ステップS103:Y)には処理はS104へ進む。出力強度が調整できない場合(ステップS103:N)には処理には異常終了する。例えば、第2センサ51の出力値が予定の範囲を超える場合には、この出力値に応じた超音波センサ50の調整ができない。異常終了にCPU31は、原稿読取装置1のユーザインタフェースによってオペレータに警報を出力する。
【0031】
ステップS104においてCPU31は、超音波センサ50の出力Sを検出する。ステップS105においてCPU31は、出力Sが重送判定閾値Th1より小さいか否かを判断する。出力Sが重送判定閾値Th1より小さい場合(ステップS105:Y)には処理はステップS110に進む。出力Sが重送判定閾値Th1以上の場合(ステップS105:N)には処理はステップS106に進む。
【0032】
ステップS106においてCPU31は、第2センサ51が検出した搬送原稿の厚さがカード原稿の厚さ以上であるか否かを判断する。搬送原稿の厚さがカード原稿の厚さ以上である場合(S106:Y)には、処理はステップS108へ進む。搬送原稿の厚さがカード原稿の厚さより薄い場合(S106:N)には、処理はステップS107へ進む。ステップS107においてCPU31は、経路切換部23により原稿の搬送経路として湾曲搬送路22を選択する。その結果、紙原稿は湾曲搬送路22を経由して第2原稿搬出部4から搬出される。その後、処理が終了する。
【0033】
ステップS108においてCPU31は、原稿の搬送経路を湾曲搬送路22から直線搬送路21に変更できるか否かを判断する。例えば、CPU31は、第1原稿搬出部3の開閉を検出して搬送経路の変更可否を判断する。搬送経路を直線搬送路21に変更できる場合(ステップS108:Y)には処理はS109へ進む。搬送経路を変更できない場合(ステップS108:N)には、処理はS107へ進む。
【0034】
ステップS109においてCPU31は、経路切換部23により原稿の搬送経路を湾曲搬送路22から直線搬送路21に切り替える。その結果、カード原稿は直線搬送路21を経由して第1原稿搬出部3から搬出される。その後、処理が終了する。
【0035】
ステップS110においてCPU31は、紙原稿又はカード原稿の重送を検知する。ステップS111においてCPU31は、搬送ローラの駆動側ローラ13a及び分離ローラ12a及び12bを逆転させて、原稿を分離ローラ12a及び12bの位置まで戻す。そして原稿を再度分離した後に、処理をステップS101へ戻す。
【0036】
なお、上記の実施例ではCPU31は、原稿の紙厚に応じて超音波センサ50の出力強度を調整した。これに代えて又はこれに加えてCPU31は、原稿の紙厚に応じて重送検知の重送判定閾値Th1を調整してもよい。図6を参照して、重送判定閾値の調整を説明する。
【0037】
実線100は、単数の紙原稿が搬送されている場合の出力特性を示し、点線101は、紙原稿の重送が発生している場合の出力特性を示す。実線110は、単数のカード原稿が搬送されている場合の出力特性を示し、点線111は、カード原稿の重送が発生している場合の出力特性を示す。CPU31は、紙原稿及びカード原稿の搬送時にそれぞれ異なる重送判定閾値Th1及びTh2を使用する。このようにCPU31は、紙厚が異なる複数種の原稿が搬送されても重送であるか否かを検知できるように、原稿の紙厚に応じて重送判定閾値を調整する。
【0038】
本実施例によれば、紙厚が異なる複数種の原稿が搬送されても重送有無の誤検知を防止することができる。その結果、重送検知時の原稿の再分離及び搬送再開を誤って実行する機会が減り、原稿搬送のスループットを向上させることが可能となる。また、本実施例では原稿厚さに応じて搬送路を切り替えるため、湾曲搬送路での搬送が困難なカード原稿を直線搬送路で搬送し、それ以外は湾曲搬送路で搬送する搬送路の切り替え制御が可能となる。
【0039】
<3.第2実施例>
続いて、他の実施例について説明する。第2実施例では第2センサ51として、搬送原稿の辺の長さを検出する寸法センサが使用される。例えば、寸法センサは、複数のサイズ検知位置に設けた光センサの検出信号に応じて原稿の寸法を検出してよい。また、寸法センサは、原稿画像を取得して原稿の寸法を検出するためのイメージセンサであってもよい。この場合、イメージセンサ17を第2センサ51として兼用してもよい。
【0040】
CPU31は、第2センサ51によって検出した原稿の寸法によって、搬送原稿が、紙原稿であるのかカード原稿であるのかを区別する。カード原稿は、例えば運転免許証や身分証明証のように、規格化された紙原稿に比べて小さいことが多い。このため、CPU31は、原稿の寸法によって、搬送原稿が紙原稿であるのか紙原稿よりも厚いカードの様な原稿であるのかを区別する。
【0041】
CPU31は、搬送原稿が紙原稿であると判断した場合には、超音波センサ50による重送検知を有効にする。また、CPU31は、搬送経路として湾曲搬送路22を選択する。CPU31は、搬送原稿がカード原稿であると判断した場合には、超音波センサ50による重送検知を無効にする。また、CPU31は、搬送経路として直線搬送路21を選択する。
【0042】
以下、図7を参照して、第2実施例における重送検知処理を説明する。ステップS201においてCPU31は、超音波センサ50の出力Sを検出する。ステップS202においてCPU31は、出力Sが重送判定閾値Th1より小さいか否かを判断する。出力Sが重送判定閾値Th1より小さい場合(ステップS202:Y)には処理はステップS204に進む。出力Sが重送判定閾値Th1以上の場合(ステップS202:N)には処理はステップS203に進む。ステップS203においてCPU31は、原稿の搬送経路として湾曲搬送路22を選択する。その結果、紙原稿は湾曲搬送路22を経由して第2原稿搬出部4から搬出される。その後、処理が終了する。
【0043】
ステップS204において第2センサ51は、搬送原稿の寸法を検出する。ステップS205においてCPU31は、搬送原稿の寸法が、所定のカードサイズであるか否かを判断する。搬送原稿の寸法がカードサイズである場合(ステップS205:Y)には処理はステップS206に進む。搬送原稿の寸法がカードサイズでない場合(ステップS205:N)には処理はステップS208に進む。
【0044】
ステップS206においてCPU31は、原稿の搬送経路を湾曲搬送路22から直線搬送路21に変更できるか否かを判断する。搬送経路を直線搬送路21に変更できる場合(ステップS206:Y)には処理はS207へ進む。搬送経路を変更できない場合(ステップS206:N)には、処理はS203へ進む。S207においてCPU31は、経路切換部23により原稿の搬送経路を湾曲搬送路22から直線搬送路21に切り替える。その結果、カード原稿は直線搬送路21上を経由して第1原稿搬出部3から搬出される。このようにステップS206における判断に関わらず、CPU31は、搬送原稿の寸法がカードサイズであると判断した場合には原稿の重送を検知しない。このため、搬送原稿がカード原稿である場合には、重送検知が無効化される。
【0045】
ステップS208においてCPU31は、紙原稿の重送を検知する。ステップS209の処理は、図5のステップS111と同様である。その後処理は、ステップS201へ戻る。
【0046】
本実施例によれば、紙原稿と寸法が異なるカード原稿が搬送された場合に、重送有無の誤検知を防止することができる。その結果、重送検知時の原稿の再分離及び搬送再開を誤って実行する機会が減り、原稿搬送のスループットを向上させることが可能となる。また、本実施例では、湾曲搬送路での搬送が困難なカード原稿を直線搬送路で搬送し、それ以外は湾曲搬送路で搬送する搬送路の切り替え制御が可能となる。なお、原稿読取装置1の実施形態の違いに応じて超音波センサ50と第2センサ51の配置順序を変えてもよく、上記の配置例に限定されるものではない。例えば、超音波センサ50と第2センサ51の配置順序を逆にして、超音波センサ50を原稿搬入部2側に、第2センサ51を排出部3及び4側に配置してもよい。
【0047】
<4.第3実施例>
続いて、他の実施例について説明する。第3実施例の第2センサ51は超音波センサ50と同様の構成を有する。以下の説明において、第2センサ51を「第2超音波センサ51」と表記する。CPU31は、第2超音波センサ51の検出信号に応じて、単数のカード原稿が搬送されているのか紙原稿の重送が発生しているのかを判断する。
【0048】
このため、第2超音波センサ51の出力特性を超音波センサ50の出力特性と変え、単数のカード原稿を検出している場合と紙原稿の重送を検出する場合とで出力値の差がより広くなるように調整される。なお、超音波センサ50と第2超音波センサ51との間の干渉を防ぐために、超音波センサ50と第2超音波センサ51で送信される超音波の周波数を異ならせることが好ましい。
【0049】
図8の(A)は、第2超音波センサ51の出力特性の第1例を示す図である。本調整例では、第2超音波センサ51が送信する超音波の送信周波数が調整される。超音波は、周波数が低いほど厚い原稿を透過しやすい特性を有する。したがって、第2超音波センサ51が送信する超音波の送信周波数を超音波センサ50よりも低く調整すれば、カード原稿搬送時の減衰レベルが低減される。一方で、重送検知時の超音波センサの出力の減衰は原稿間の空気層によるものである。したがって、超音波の送信周波数の変化による重送時の出力の変動はカード原稿搬送時の場合の変動よりも小さい。このため、第2超音波センサ51が送信する超音波の送信周波数を超音波センサ50よりも低くすれば、単数のカード原稿の搬送時と紙原稿の重送時とで出力値の差がより広くなる。
【0050】
実線100、点線101及び二点鎖線102は、超音波センサ50の出力特性を示し、それぞれ単数の紙原稿の搬送時、紙原稿の重送時及び単数のカード原稿の搬送時の出力特性を示す。点線201及び二点鎖線202は、第2超音波センサ51の出力特性を示し、それぞれ紙原稿の重送時及び単数のカード原稿の搬送時の出力特性を示す。第2超音波センサ51が送信する超音波の送信周波数は超音波センサ50よりも低く調整され、その結果、単数のカード原稿の搬送時の出力202の減衰は、超音波センサ50の場合の出力102よりも小さい。
【0051】
このため、単数のカード原稿の搬送時の出力202と紙原稿の重送時における出力201との差が、超音波センサ50の場合におけるそれぞれの出力102及び101の差よりも拡大する。したがって、カード検出閾値Th3と第2超音波センサ51の出力S2を比較して、S2<Th3か否かで紙原稿の重送と単数のカード原稿の搬送とを判別する場合に、カード検出閾値Th3の選定が容易になり精度が向上する。
【0052】
図8の(B)は、第2超音波センサ51の出力特性の第2例を示す図である。本調整例では、第2超音波センサ51において原稿へ超音波が入射する入射角が調整される。上述の通り重送検知時の超音波センサの出力の減衰は原稿間の空気層によるものである。このため、原稿へ超音波が入射する入射角が大きくなると、原稿間を通過する距離が長くなるため原稿重送時における減衰量が増加する。一方で、単数の原稿を透過する場合の入射角の違いによる減衰量の変動は重送時の場合の変動よりも小さい。このため、第2超音波センサ51における原稿への超音波の入射角を超音波センサ50よりも大きくすれば、単数のカード原稿の搬送時と紙原稿の重送時とで出力値の差がより広くなる。
【0053】
点線101及び二点鎖線102は、超音波センサ50の出力特性を示し、それぞれ紙原稿の重送時及び単数のカード原稿の搬送時の出力特性を示す。点線201及び二点鎖線202は、第2超音波センサ51の出力特性を示し、それぞれ紙原稿の重送時及び単数のカード原稿の搬送時の出力特性を示す。第2超音波センサ51における原稿への超音波の入射角は超音波センサ50よりも大きく調整され、その結果、重送発生時の出力201の減衰は、超音波センサ50の場合の出力101よりも大きい。このため、単数のカード原稿の搬送時の出力202と紙原稿の重送時における出力201との差が、超音波センサ50の場合におけるそれぞれの出力102及び101の差よりも拡大する。
【0054】
なお、第2超音波センサ51の送信周波数を超音波センサ50の送信周波数よりも低くする調整と、第2超音波センサ51の入射角を超音波センサ50の入射角よりも大きくする調整とを組み合わせてもよい。これらの調整のいずれか一方だけを行ってもよい。
【0055】
ある実施例では、超音波センサ50の送信周波数として200kHzが使用され、第2超音波センサ51の送信周波数が200kHzよりも低く調整される。他の実施例では、超音波センサ50の送信周波数として300kHzが使用され、第2超音波センサ51の送信周波数が300kHzよりも低く調整される。
【0056】
また、ある実施例では、超音波センサ50における超音波の入射角として15度が使用され、第2超音波センサ51における超音波の入射角が15度よりも大きな角度に調整される。ある実施例では、超音波センサ50における超音波の入射角として25度が使用され、第2超音波センサ51における超音波の入射角が25度よりも大きな値に調整される。
【0057】
以上の超音波センサ50及び第2超音波センサ51の出力に基づく搬送原稿の判別条件及び重送検知条件をまとめると次の表の通りとなる。
【0058】
【表1】
【0059】
(1)超音波センサ50の出力Sが重送判定閾値Th1以上の場合には、単数の紙原稿が搬送されていると判断する。
(2)超音波センサ50の出力Sが重送判定閾値Th1よりも小さく、第2超音波センサ51の出力S2がカード検出閾値Th3以上の場合には、単数のカード原稿が搬送されていると判断する。
(3)超音波センサ50の出力Sが重送判定閾値Th1よりも小さく、第2超音波センサ51の出力S2がカード検出閾値Th3よりも小さい場合には、紙原稿の重送が発生していると判断する。
【0060】
以下、図9を参照して、第3実施例における重送検知処理を説明する。ステップS301においてCPU31は、超音波センサ50の出力Sを検出する。ステップS302においてCPU31は、出力Sが重送判定閾値Th1より小さいか否かを判断する。出力Sが重送判定閾値Th1より小さい場合(ステップS302:Y)には処理はステップS304に進む。出力Sが重送判定閾値Th1以上の場合(ステップS302:N)には処理はステップS303に進む。ステップS303においてCPU31は、原稿の搬送経路として湾曲搬送路22を選択する。その後、処理が終了する。
【0061】
ステップS304において第2センサ51は、第2超音波センサ51の出力S2を検出する。ステップS305においてCPU31は、出力S2がカード検出閾値Th3よりも小さいか否かを判断する。出力S2がカード検出閾値Th3より小さい場合(ステップS305:Y)には処理はステップS308に進む。出力S2がカード検出閾値Th3以上の場合(ステップS305:N)には処理はステップS306に進む。
【0062】
ステップS306においてCPU31は、原稿の搬送経路を湾曲搬送路22から直線搬送路21に変更できるか否かを判断する。搬送経路を直線搬送路21に変更できる場合(ステップS306:Y)には処理はS307へ進む。搬送経路を変更できない場合(ステップS306:N)には、処理はS303へ進む。S307においてCPU31は、経路切換部23により原稿の搬送経路を湾曲搬送路22から直線搬送路21に切り替える。ステップS306における判断に関わらず、CPU31は、搬送原稿がカード原稿であると判断した場合には原稿の重送検知を無効化する。
【0063】
ステップS308においてCPU31は、紙原稿の重送を検知する。ステップS309の処理は、図5のステップS111と同様である。その後処理は、ステップS301へ戻る。
【0064】
本実施例によれば、紙原稿とカード原稿が搬送された場合に、重送有無の誤検知を防止することができる。その結果、重送検知時の原稿の再分離及び搬送再開を誤って実行する機会が減り、原稿搬送のスループットを向上させることが可能となる。また、本実施例では、湾曲搬送路での搬送が困難なカード原稿を直線搬送路で搬送し、それ以外は湾曲搬送路で搬送する搬送路の切り替え制御が可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1 原稿読取装置
2 原稿搬入部
3 第1原稿搬出部
4 第2原稿搬出部
11 ピックローラ
12a、12b 分離ローラ
13a、13b、14a、14b、15a、15b、16a、16b 搬送ローラ
17 イメージセンサ
20 第1搬送路
21 直線搬送路
22 湾曲搬送路
23 経路切換部
50 超音波センサ
51 第2センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9