(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記車体の進行方向を逆方向に設定した第1のモードと第2のモードを備え、前記第1のモードと前記第2のモードを切り替えることにより、前記車体を旋回させることなく前記進行方向を逆転させる、
ことを特徴とした請求項1又は2に記載の走行ロボット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示された従来の走行ロボットは、車体を安定させるために、常に巻取装置を巻取り方向に付勢してワイヤを引き続ける必要がある。この場合、前述したようにクローラの進行方向の長さが、少なくとも2段分の階段の角部に接触可能な長さに設定されていれば、階段上を平らな面の坂道と同じように、安定した状態でワイヤを介して車体を階段の上部へ引き上げることができる。
【0007】
しかし、クローラの進行方向の長さが、2段分の階段の角部に接触可能な長さより短い場合は、階段を一段毎に段差乗越えを行なわなければならず、常に車体を階段の上方へ引き上げ続けるためには巻取装置の駆動力を強力なものとする必要があり、巻取装置の大型化をきたすことになる。巻取装置が大型化するとその重量が大きくなり、走行ロボットの車体に巻取装置を搭載する場合、巻取装置の重量により走行ロボットの運動性能が低下し、その結果、消費電力が増大するといった課題がある。
【0008】
また、2階以上の階段で、手すりを有する階段を昇降する場合に於いては、手すり部に係合したワイヤの摩擦力に対しワイヤの牽引力の垂直成分が大きい場合、ワイヤが手すりから外れてしまうという課題があった。
【0009】
更に、走行ロボットが階段の狭い踊場を旋回して方向転換するためには、走行ロボットの車体の大きさが限定され、車体が階段を安定して昇降するために必要な前述のクローラの進行方向の長さを確保できないという課題がある。
【0010】
また、特許文献2に示された従来の走行ロボットは、巻取機としての収納リールは油圧により駆動されるように構成されており、大型であり重量が大きく、走行ロボットの運動性能が低下するといった課題がある。また、収納リールが大型であるため、小型の走行ロボットの車体に搭載できないという課題がある。
【0011】
この発明は、従来の走行ロボットに於ける前述のような課題を解消するためになされたもので、巻取装置を使用して急傾斜の階段でも安定した昇降が可能であり、且つ階段の踊り場のような狭い場所でも旋回が可能な走行ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明による走行ロボットは、
車体と、
前記車体に設けられ、前記車体を移動させる移動手段と、
前記車体に設けられ、ワイヤ若しくはケーブルを巻取り及び送り出し得る巻取装置と、
前記車体に設けられ、前記車体の進行方向の傾斜角度を検出する角度検出器と、
前記移動手段と前記巻取装置の駆動を制御する制御装置と、
を備え、
前記ワイヤ若しくはケーブルの一端は、前記車体が少なくとも階段を上昇又は下降するときは、前記階段の上方部に固定され、
前記制御装置は、少なくとも前記車体が前記階段を上昇若しくは降下するとき、前記角度検出器が検出した前記
傾斜角度に基づいて、前記巻取装置による前記ワイヤ若しくはケーブルの巻取りの停止と巻取りの開始と送り出しと、のうちの少なくとも一つを制御して前記車体の転倒を防止する、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明による走行ロボットによれば、ワイヤ若しくはケーブルの一端は、車体が少なくとも階段を上昇又は下降するときは、階段の上方部に固定され、制御装置は、少なくとも車体が階段を上昇若しくは降下するとき、角度検出器が検出した角度に基づいて、巻取装置によるワイヤ若しくはケーブルの巻取りの停止と巻取りの開始と送り出しと、のうちの少なくとも一つを制御して車体の転倒を防止するようにしているので、車体の長さを短くしても転倒させることなく安定して階段の上昇若しくは降下を行うことができる。
【0014】
又、車体の長さを短く設定できるので、階段の狭い踊り場等に於いても旋回することが可能となる。
【0015】
更に、ワイヤ若しくはケーブルを常に張力がかかる状態ではなく、車体が転倒角に達する前に必要最小限の力を加えることができるので、巻取機の駆動力は小さなり、装置の小型、軽量化、省電力化を実現することができ、運動性能も損なわれることはない。又、ワイヤにかかる張力が抑えられるため、手すり部に引っかかったワイヤが引抜ける危険性を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による走行ロボットについて詳細に説明する。
図1はこの発明の実施の形態1による走行ロボットの平面図、
図2はこの発明の実施の形態1による走行ロボットの側面図である。
図1及び
図2に於いて、走行ロボット100の基本骨格を成す部分である車体1は、第1の走行用モータ31と第2の走行用モータ32を搭載している。第1の駆動側スプロケット21と第1の従動側スプロケット23は、車体1の一方の側部に回動自在に設置されている。第2の駆動側スプロケット23と第2の従動側スプロケット24は、車体1の他方の側部に回動自在に設置されている。これらのスプロケット21、22、23、24は、歯車形状部を外周部に備えた車輪である。
【0020】
この発明の実施の形態1に於いては、第1の走行用モータ31は、第1の駆動側スプロケット21に回転駆動力を供給し、第2の走行用モータ32は第2の駆動側スプロケット23に回転動力を供給する。前記各スプロケット21、22、23、24、各クローラ41、42、各モータ31、32は、車体の移動手段を構成する。
【0021】
第1のクローラ41は、第1の駆動側スプロケット21の歯車形状部と第1の従動側スプロケット22の歯車形状部に夫々係合するように装着されており、第1の駆動側スプロケット21の回転駆動力により駆動されて第1の駆動側スプロケット22と第1の従動側スプロケット22の外周部を巡って回動する。このとき第1の従動側スプロケット22は、第1のクローラ41に駆動されて同時に回転する。同様に、第21のクローラ42は、第2の駆動側スプロケット23の歯車形状部と第2の従動側スプロケット24の歯車形状部に夫々係合するように装着されており、第2の駆動側スプロケット23の回転駆動力により駆動されて第2の駆動側スプロケット23と第2の従動側スプロケット24の外周部を巡って回動する。このとき第2の従動側スプロケット24は、第2のクローラ42に駆動されて同時に回転する。
【0022】
前述の第1のクローラ41と第2のクローラ42は、地面や床面、若しくは階段の角部に接触し、第1のクローラ41と第2のクローラ42が同一方向に同一の速度で回動すれば、走行ロボット100はその方向に走行し、第1のクローラ41と第2のクローラ42とが異なる速度で回動し、又は第1のクローラ41と第2のクローラ42のうちの一方が回動を停止し、又は第1のクローラ41と第2のクローラ42が逆方向に回動すれば、走行ロボット100は方向転換若しくは旋回する。
【0023】
巻取装置5は、車体1の上部に搭載されており、巻取用モータ(図示せず)により駆動されてワイヤ7を巻取るように構成されている。走行ロボット100を牽引するのに十分な強度を有するワイヤ7は、車体1の前方に突出するように設置されたガイドバー8を介して車体1以外の場所に固定される。尚、ワイヤ7に代えて、走行ロボット100を牽引するのに十分な強度を有するロープ等を用いても良い。車体1に搭載されたバッテリ6は、第1の走行用モータ31と第2の走行用モータ32と巻取用モータに電力を供給する。
【0024】
走行用前方カメラ11は、巻取装置5の前方側に固定され、走行用後方カメラ12は、巻取装置5の後方に固定されている。車体1に搭載された角度検出装置9は、車体1の前後方向の傾き角度を検出する。又、車体1には、後述する演算装置(以下、CPUと称する)が搭載されており、車体1とは分離して設けられている制御装置から無線若しくは有線により送信された制御信号を受信して後述する演算動作を行なう。
【0025】
図3は、この発明の実施の形態1による走行ロボットの構成を示すブロック図である。
図3に於いて、車体1とは分離して設けられている前述の制御装置14は、無線若しくは有線により制御信号101を、車体1に搭載された伝送装置16を介して、走行ロボット100の車体1に搭載されているCPU15へ送信する。制御信号を受信したCPU15は、巻取用モータ13、第1の走行用モータ31、及び第2の走行用モータ323へ指令信号を与える。
【0026】
角度検出装置9は、車体1の前後方向の傾き角度を検出しその検出した角度を示す角度信号をCPU15に送信する。CPU15は、角度検出装置9から受信した角度信号を、伝送装置16を介して無線若しくは有線により制御装置14へ送信する。走行ロボット100の車体1に搭載された走行用前方カメラ11及び走行用後方カメラ12は、撮影した走行ロボット100の走行方向前方及び後方の映像を、無線若しくは有線により伝送装置16を介して制御装置14へ送信する。
【0027】
次に、以上のように構成されたこの発明の実施の形態1による走行ロボット100の動作について説明する。
図4は、この発明の実施の形態1による走行ロボットの階段上昇動作を示すフローチャート、
図5は、この発明の実施の形態1による走行ロボットの階段上昇動作を説明する説明図である。
【0028】
又、
図5のθ1は、車体1の重心位置と床面との接点を結ぶ直線が、水平面に対し90°よりも大きくなった転倒角を示し、θ2は、車体1の重心位置が階段角部から垂直に引いた線上にあるとき復帰角を示す。走行ロボット100は、車体1が復帰角θ2より小さくなると階段角部を支点とし、階段側へ回転する。
【0029】
図4及び
図5に於いて、ステップS1では、第1の走行用モータ31及び第2の走行用モータ32は、制御装置14からの制御信号101を受信したCPU15からの指令信号に基づいて、車体1を前進させる方向に駆動される。これにより第1のクローラ41と第2のクローラ42は前進方向に回動し、走行ロボット100は前進する。このとき、ワイヤ7の先端部は上昇すべき階段200の上方部に固定されており、巻取装置5は、CPU15からの指令信号に基づいて駆動される巻取用モータ13の駆動力により、ワイヤ7が弛まないように走行ロボット100の前進に伴って順次巻取る。
図5の(a)は、ステップS1に於ける走行ロボット100の走行状態を示している。
【0030】
次に、ステップS2に於いて、走行ロボット100は、
図5の(b)に示すように階段200の第1段目の段差壁面201と接触し、
図5の(c)に示すようにその段差壁面201を駆け上がる。次にステップS3に進み、角度検出装置9により検出された車体1の前後方向の傾斜角度と所定の登板角(走行ロボット100が段差開始と検知する角度、約30°程度だが、条件により適宜変更する)とを比較し、車体の傾斜角度が所定の登坂角より大きくなった場合(Y)に、走行ロボット100の車体1が上昇を開始したと判断しステップS4に進んで上昇を開始し、車体1の傾斜角度が所定の登坂角より大きくない場合(N)には、ステップS3に戻る。
【0031】
尚、走行ロボット100が、
図5の(b)、(c)に示すように階段200の第1段目若しくはそれ以降の段の位置にとどまっている時は、ワイヤ7の弛みが生じないので巻取用モータ13は停止状態にあり、巻取装置5によるワイヤ7の巻取りは停止している。
【0032】
次に、ステップS5に進み、再び車体1の前後方向の傾斜角度と所定の登坂角とを比較し、車体1の傾斜角度が所定の登坂角より小さいとき(Y)は、走行ロボット100が階段200の第1段目の段差乗越えが完了したと判断してステップS10に進み、更にステップS1に戻り、階段200の2段目以降に対して前述の動作を繰り返す。
【0033】
一方、ステップS5での判定の結果、車体1の傾斜角度が所定の登坂角より小さくないとき(N)は、ステップS6に進み、車体1の傾斜角度と所定の転倒角θ1とを比較する。ステップS6に於いて、車体1の傾斜角度が所定の転倒角θ1より大きいと判定したとき(Y)は、ステップS7に進んで巻取用モータ13を駆動して巻取装置5によるワイヤ7の巻取りを開始する。つまり、走行ロボット100が第1段目の段差壁面201若しくはそれ以降の段差壁面を駆け上った後も、車体1の傾斜角度が所定の復帰角θ2よりも小さくならず、そのまま所定の転倒角θ1より大きい場合は、走行ロボット100に転倒の可能性があると判断し、巻取用モータ13を駆動して巻取装置5によるワイヤ7の巻取りを開始するものである。
【0034】
ここで、前述の所定の復帰角θ2と所定の転倒角θ1との関係は、
θ2<θ1
に設定されている。
【0035】
巻取装置5によるワイヤ7の巻取りが開始されることにより、車体1はワイヤ7により引上げられると同時に、第1のクローラ41、第2のクローラ42の駆動力により階段200の各段の角部を駆上がり続け、その角部を支点に、ワイヤ7の張力によるモーメント及び各クローラ41、42の駆動力により、車体1は
図5の(d)に示す矢印Xのように回転し、車体1の傾斜角度が所定の復帰角度θ3(図示せず)に達したとき、ステップS9に進み、巻取りを中止する。そして、ステップS10に進み、走行ロボット100が階段200の段差乗り越えを完了したと判断して、再びステップS1に戻り、走行ロボット100は再び前進し、以降、ステップS1からの動作を繰り返す。
【0036】
ステップS8に於いて、車体の傾斜角度が所定の復帰角度θ3より小さくなっていないと判定したとき(N)は、ステップS7に戻り巻取装置5によるワイヤ7の巻取りを継続する。
【0037】
尚、
図4の動作フローでは、ステップS3及びステップS4の動作は、操作者が走行ロボット100の登坂状況を確認するためのものであり、ステップS4の通過回数を数えることで、乗越え段差数を確認できる。しかし、車体1の登坂状況の確認が不要の場合は、車体1の角度確認を転倒角θ1、復帰角θ2のみとし、
(1)車体1の角度が転倒角θ1を超えた場合は、ワイヤ巻取りを行う。
(2)車体1の角度が復帰角θ2未満に戻った場合は、ワイヤ巻取りを中止する。
動作を行えば良い。
【0038】
図6は、この発明の実施の形態1による走行ロボットの階段上昇動作時に於ける、階段の手摺りに係合したワイヤに作用する力を説明する説明図である。
図6に於いて、走行ロボット100は、踊り場201を介して屈曲した階段200をワイヤ7を巻取りながら上昇している。この場合、ワイヤ7に牽引されながら走行ロボット100が階段200を上昇を継続すると、階段200の手摺り211にワイヤ7が係合し、ワイヤ7と手摺り210との間の摩擦力に対してワイヤ7の牽引力の垂直成分の方が大きくなり、ワイヤ7が手摺り210から引抜けてしまうことがある。
【0039】
しかし、この発明の実施の形態1による走行ロボットによれば、走行ロボット100は常にワイヤ7を巻取り続けているわけではなく、前述したように走行ロボット100が所定の転倒角θ1を超えて倒れそうになった場合にのみ、ワイヤ7を巻取ってワイヤ7により走行ロボット100を牽引するようにしているので、ワイヤ7が手摺り211から引抜けてしまう危険性を最小限に抑えることができる。
【0040】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2による走行ロボットについて説明する。
図7は、この発明の実施の形態2による走行ロボットの斜視図である。
図7に於いて、走行ロボット100は、車体1の前面に設置された突出部としてのスキッドプレート17と、車体1及び巻取装置(図示せず)等の上部を覆うカバー90と、原子力発電所等に於ける人の立入りが困難な場所等での探査を行うための2つの計測器181、182と、カメラ19を搭載している。
【0041】
制御信号の通信、電源の供給を行うためのケーブル70は、走行ロボット100を牽引するのに十分な強度を備えており、走行ロボット100を牽引するワイヤとして使用される。走行ロボット100に搭載された巻取装置(図示せず)は、ケーブル70を巻取り可能に構成されている。走行ロボット100の後方に装着されたガイド部80は、ケーブル70を摺動自在にガイドする。
【0042】
スキッドプレート17は、板金等で軽量に製作されており、走行ロボット100の本来の重心位置を変化させることなく、走行ロボット100の車体長を可能な限り延長することができる。
【0043】
図8は、この発明の実施の形態2による走行ロボットの階段降下動作を説明する説明図である。
図8に於いて、走行ロボット100は、巻取機5からケーブル70を引き出している側を進行方向Yに対する後方側とし、巻取機5からケーブル70を送り出しながら階段200を降下する。走行ロボット100の前方側に設置したスキッドプレート17は、階段200の次段の平坦部202に当接し、走行ロボット100が階段の段差を下る際に進行方向に転倒することを防止する。
【0044】
図9は、この発明の実施の形態2による走行ロボットの階段上昇動作を説明する説明図である。
図9に於いて、走行ロボット100は、巻取機5からケーブル70を引き出している側を進行方向Zに対する前方側とし、巻取機5によりケーブル70を巻取りながら階段200を上昇する。
【0045】
スキッドプレート17は、走行ロボット100の転倒を防止するためのものである。従って、車体1が階段の角部203を支点として回転したときに、スキッドプレート17の先端171と階段の次段の平坦部202とが接した時の車体角度θ4が、前述の所定の転倒角θ1よりも小さくなるように、スキッドプレート17は車体1に固定されている。
【0046】
次に、この発明の実施の形態2による走行ロボットの動作について説明する。
図10は、この発明の実施の形態2による走行ロボットの階段上昇動作を示すフローチャートである。
図9及び
図10に於いて、階段200の上昇動作は実施の形態1の場合と基本的には同様であるが、スキッドプレート17を備えているので走行ロボット100は前述の所定の転倒角θ1に達しないため、ステップS6での判定基準を、車体の角度がθ4より大きくなった時点とし、その時点からケーブル70の巻取りを開始する。その他のステップは、前述の実施の形態1に於ける
図4のフローチャートと同様であるので説明を省略する。
【0047】
この発明の実施の形態2による走行ロボットによれば、スキッドプレートを備えているので、階段等の上昇時に走行ロボットの転倒をより確実に防止することができる。
【0048】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3による走行ロボットについて説明する。この発明の実施の形態3による走行ロボットによれば、モード1とモード2の制御モードが設定されており、操作者によりそのモードの選択が可能なように構成されている。又、前述の制御装置11に対応する制御装置に接続された表示画面を備え、その画面に選択されたモードに応じて走行ロボットの前方方向の画面を映すように構成されている。
【0049】
モード1では、走行ロボット100の前進が操作ボタン1に設定され、後進がボタン2に設定されている。通常時はモード1が選択され、表示画面には、走行ロボット100の進行方向前方に位置する前方走行カメラ11が撮影した映像が映し出される。階段等の降下が終了し、若しくは緊急事態により操作者が走行ロボット100を引き返させる判断を下した場合、制御装置11の設定をモード2に切替える。モード2では、ボタン1とボタン2の設定が入れ替わり、表示画面には進行方向前方に位置こととなる後方走行カメラ12が撮影した映像が映し出される。その他の構成は、実施の形態1又は2と同様であるので説明を省略する。
【0050】
図11は、この発明の実施の形態3による走行ロボットの制御動作を示すフローチャートである。
図11に於いて、制御装置11は、最初の時点でモード1に設定されている。即ち、ステップS31は制御装置11の最初の時点を示し、制御装置11の設定がモード1であり、走行ロボット100の前進がタン1に設定され、後進がボタンン2に設定されている。このとき、表示画面は、進行方向前方に位置する前方走行カメラ11の撮影した映像が映し出される。走行ロボット100は、この選択されているモード1により前進走行を行う。
【0051】
次に、走行ロボット100が階段200を降下する場合は、前述の実施の形態2に於ける
図8により説明したように、走行ロボット100はケーブル70を引き出している側を進行方向に対する後方側として階段200を降下する。つまり、この場合はモード1に於けるボタン2により走行ロボット100の後進を指示することになる。
【0052】
次に、ステップS32に進んで、走行ロボット100は、モード1に於けるボタン2による後進により、階段200の降下を行う。この階段の降下動作は、前述の
図10に示したフローチャートの通りである。
【0053】
次に、ステップS33に於いて、走行ロボット100が階段の最下段に到達したか否か、若しくは緊急事態の発生により引き返し操作者が走行ロボット100を引き返えさせる判断をしたか否かを判定する。その判定の結果、走行ロボット100が階段200の最下段に到達したと判定した場合(Y)、若しくは緊急事態の発生等により走行ロボット100の引き返えしを判断した場合(Y)は、ステップS34に進む。
【0054】
一方、ステップS33での判定の結果、走行ロボット100が階段200の最下段に到達していないと判定した場合(N)、若しくは走行ロボット100の引き返えしを判断していない場合(N)は、ステップS31に戻り、階段200の降下を継続する。
【0055】
ステップS33からステップS34に進んだ場合は、操作者は制御装置11のモード設定をモード2に切替える。モード2では、モード1に場合に比してボタン1とボタン2の設定が入替わり、走行ロボット100の後進がボタン1に設定され、走行ロボット100の前進がボタン2に設定される。そして、表示画面には後方走行カメラ12が撮影した映像が表示される。
【0056】
次にステップS35に於いて、走行ロボット100は、モード2によるボタン2の設定に基づいて前進動作に入り、先ほどの階段200の降下動作から階段200の上昇動作に切替る。階段の上昇動作については、前述の実施の形態1又は実施の形態2に於いて説明した通りであるので、説明を省略する。
【0057】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4による走行ロボットについて説明する。
図12は、この発明の実施の形態4による走行ロボットの斜視図である。
図12に於いて、走行ロボット100は、車体1の前面に設置されたスキッドプレート17と、車体1及び巻取装置(図示せず)等の上部を覆うカバー90と、原子力発電所等に於ける人の立入りが困難な場所等での探査を行うための2つの計測器181、182と、カメラ19を搭載している。
【0058】
又、走行ロボット100は防水構造に構成され、車体1の両側部に夫々フロート81、82を備えており、水上を浮遊可能に構成されている。夫々のスプロケット21、22、23、24には、夫々、水かき部220が装着されている。尚、水かき部220以外の水上を移動可能な推進装置を設けても良い。
【0059】
図13は、この発明の実施の形態4による走行ロボットの階段上昇動作を説明する説明図であり、階段200の最下段がプールのような水溜り、若しくは階段200がその途中から水没しているような状況で、走行ロボット100が動作する状況を示す。
図5の(a)は、水溜り900に浮遊している走行ロボット100が、階段200を上昇する直前の状態を示し、
図5の(b)は、走行ロボット100が階段200の上昇を開始した状態を示している。
図14は、この発明の実施の形態4による走行ロボットの階段上昇動作を示すフローチャートである。
【0060】
図13及び
図14に於いて、例えば操作者が走行ロボット100の引き返しを判断した場合、制御装置14から走行ロボット100に階段200を上昇し戻るよう信号を送信する。ステップS41では、水溜り900に浮遊している走行ロボット100は、階段200を上昇するに当たり、先ず、巻取装置5によるケーブル70の巻取りを開始してステップS42に進む。即ち、
図13の(a)に示す状態から階段200を上昇するためには、床面からの支持力が必要となるが、水上でその力を得ることは困難であり、一段目の段差を登りきるまでケーブル70若しくはワイヤにより走行ロボット100を牽引する必要があるため、巻取装置5によるケーブル70の巻取りを開始する。これにより、走行ロボット100は水上移動を行ない、階段200の下方に移動し、
図13の(a)に示す状態となる。
【0061】
次に、ステップS43に於いて、走行ロボット100は、階段200の段差壁面201に接触した後、第1のクローラ41及び第2のクローラ42の駆動力とケーブル70の牽引力により段差壁面201を駆上がりを開始する。ステップS44ではケーブル70の巻取りを継続し、走行ロボット100は階段200の最初の段の角部に至る。このとき、走行ロボット100は、階段の角部を支点に、ケーブル70の張力によるモーメント及び各クローラ41、42の駆動力により、前述の
図5の(d)で示したように矢印Xの方向に回転する。
【0062】
次に、ステップS45では、走行ロボット100の車体1の角度が前述の所定の復帰角度θ3よりも小さいか否かを判定し、車体1の角度が前述の所定の復帰角度θ3よりも小さいと判定したとき(Y)は、ステップS46に進んで、ケーブル70の巻取りを完了する。この時点で、走行ロボット100は水上から階段200への最初の段への登段を完了したことになる。一方、ステップS45に於いて車体1の角度が前述の所定の復帰角度θ3よりも小さくないと判定したとき(N)は、ステップS44に戻ってケーブル70の巻取りを継続する。
【0063】
ステップS45以降は、前述の実施の形態1乃至3により説明したと同様の動作で階段200を上昇し、若しくは下降する。
【0064】
この発明の実施の形態4による走行ロボットによれば、水上を走行することが可能であり、水上から階段を上昇し、更には階段を下降して水上を走行することができる。
【0065】
尚、この発明は、その発明の範囲内に於いて、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。