(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0018】
まず、本発明の一実施形態による位置検出装置1の適用例を説明する。
【0019】
位置検出装置1は、
図1Aおよび
図1Bに示すように、たとえば自動二輪車の車体AにブラケットKとボルトやナット(図示省略)などを介して取り付けられる。位置検出装置1は、たとえば、サイドスタンドSの位置を検出するために使用される。サイドスタンドSは、本発明の「対象物」の一例である。
【0020】
サイドスタンドSの上端部には、
図1Aに示すように、ブラケットKを係合する凹型の係合部Sbが形成されている。
図5Aおよび
図5Bに示すように、サイドスタンドSの上端部に形成された貫通孔Saと、ブラケットKに形成された貫通孔Kaには、回転軸Jが貫通されている。サイドスタンドSと回転軸Jとは固定されている。回転軸Jの頭部Jaは、位置検出装置1の内側に係合されている。
【0021】
ボルトBは、位置検出装置1に設けられた貫通孔20を貫通して、回転軸Jの一端に螺合されている。ナットNは、回転軸Jの他端に螺合されている。サイドスタンドSと位置検出装置1とは、回転軸JとボルトBとナットNにより、ブラケットKに取り付けられている。
【0022】
サイドスタンドSは、
図1Bに示すように、回転軸Jを中心にして、車体AやブラケットKに対して回動する。サイドスタンドSの側面とブラケットKの側面とが当接することにより、サイドスタンドSの回動範囲は、
図1Aに示す起立位置と、
図1Bに示す収納位置との間に制限される。つまり、サイドスタンドSは回転することにより、起立位置と収納位置との間を移動する。
【0023】
図1Aに示すコイルばねCは、サイドスタンドSとブラケットKに引っ掛けられている。コイルばねCは、サイドスタンドSを引っ張って、起立位置または収納位置に保持する。サイドスタンドSの回動は、自動二輪車の利用者の足による操作で行われる。
【0024】
次に、位置検出装置1の構造を説明する。
【0025】
図2に示すように、位置検出装置1には、ホルダ2、カバー3、ケース4、遮磁板5、保持リング6、磁石7、磁気センサ8、基板9、ハーネス10、フック11、およびブッシュ14などが備わっている。
【0026】
カバー3とケース4は、カバー3のロック3aをケース4の角孔4aに嵌め込むことにより、
図3および
図5A〜
図8に示すように組み付けられる。カバー3とケース4の間には、
図5A、
図5B、
図7、および
図8に示すようにOリング16が挟み込まれる。カバー3とケース4で形成される内部空間には、遮磁板5、保持リング6、磁石7、磁気センサ8、および基板9などが収納される。カバー3とケース4は、本発明の「収納容器」の一例である。
【0027】
カバー3の側部には、
図2に示すように、凹部3bが形成されている。凹部3bは、側方に開放されている。
図1Aおよび
図1Bに示すように、ピンPをカバー3の凹部3bを通してブラケットKに固定することにより、カバー3とケース4のブラケットKに対する回転が阻止される。
【0028】
図2、
図5A、および
図5Bに示すように、カバー3の内側の係合部3cには、上方からホルダ2の下側の凸部2cが係合される。ホルダ2の上側の大係合部2aには、
図1A、
図1B、
図5A、および
図5Bに示すように、サイドスタンドSの上端部が係合される。ホルダ2は、サイドスタンドSの上端部を保持する。ホルダ2の小係合部2bには、回転軸Jの頭部Jaが係合される。
【0029】
遮磁板5は、鉄などの強磁性体で構成されている。
図2に示すように、遮磁板5の外周縁には、小径部5aと大径部5bとが形成されている。遮磁板5の内周縁には、半円弧状の係合部5cが複数形成されている。保持リング6の外周縁には、上方へ突出する突起6aが複数形成されている。
図4に示すように、遮磁板5の係合部5cに保持リング6の突起6aを係合することにより、保持リング6が遮磁板5を保持する。
【0030】
保持リング6は、
図5Aおよび
図5Bに示すように、カバー3とケース4に上下から所定の隙間をおいて挟まれる。遮磁板5も、カバー3とケース4に上下から所定の隙間をおいて挟まれる。保持リング6の窪みとカバー3およびケース4の間には、Oリング12、13が挟み込まれる。
【0031】
保持リング6の内周縁の上端には、
図2および
図4に示すように、歯型部6bが形成されている。歯型部6bは、不規則な凹凸形状をしている。
図5Aおよび
図5Bなどで、ホルダ2の内周縁の下端には、保持リング6の歯型部6bと噛み合う歯型部2dが形成されている。ブッシュ14は、ホルダ2と保持リング6の内側に挿し込まれている。ボルトBは、ブッシュ14の内空部を貫通している。
【0032】
ホルダ2、保持リング6、および遮磁板5は、サイドスタンドSに連動して、回転軸Jを中心に回転する。遮磁板5は、本発明の「磁性体」の一例である。
【0033】
磁気センサ8は、たとえばホールICから構成されている。磁気センサ8は、基板9の上面に実装されている。
図2に示すように、基板9の先端側(ケース4側)の幅は、後端側(ハーネス10側)の幅より狭くなっている。基板9には、磁気センサ8以外に、検出回路15とハーネス10の一端などが実装されている。ハーネス10の他端は、自動二輪車の制御装置(図示省略)などに接続されている。
【0034】
磁気センサ8は、磁石7の発生する磁力を検出して、検出回路15に信号を出力する。検出回路15は、磁気センサ8の出力値(電圧値)に基づいて、サイドスタンドSの位置を検出する。
【0035】
ケース4には、
図7および
図8などに示すように、横長の空間から成る基板収納部4bが形成されている。基板収納部4bは、
図2および
図4に示すように、ケース4の側方へ突出している。ケース4の最も突出した側端部が、基板収納部4bの入口4dである。
【0036】
基板収納部4bの側壁(入口4d以外の3面)には、
図2および
図5A〜
図8に示すように、溝4e、4f、4g、4h、4iが複数設けられている。ケース4の下面(ホルダ2と反対側の外側面)からの各溝4e、4f、4g、4h、4iの高さは同一である。また、各溝4e、4f、4g、4h、4iの幅は、同一でかつ基板9の厚みより若干大きくなっている。
【0037】
溝4e、4f、4g、4h、4iは、基板収納部4bの入口4dから挿入された基板9の板面を挟
み込んで、基板9を保持する。詳しくは、
図5Aおよび
図5Bに示すように、相対する溝4f、4hが、基板9の幅狭な先端側の相対する両側端部9f、9hの板面を挟み込む。
図7に示す溝4eと
図8に示す
溝4gは、溝4f、4hと同様に、相対する位置にあって、基板9の幅広な後端側の相対する両側端部9e、9g(
図2)の板面を挟み込む。基板9の基板収納部4bおよび溝4e、4f、4g、4h、4iへの収納方向(
図7および
図8で上方向)に対して、奥にある溝4iは、基板9の先端部9iの板面を挟み込む。
【0038】
溝4e、4f、4g、4h、4iに挟み込まれる基板9の端部9e、9f、9g、9h、9iには、何も実装されていない。
図5A、
図5B、
図6、および
図8に示すように、相対する溝4f、4hのうち、一方の溝4hでは、底の一方(下側)の角が面取りされている。相対する溝4e、4gにおいても、溝4hと同一側壁に設けられた一方の溝4gでは、底の一方の角が同様に面取りされている。
【0039】
このため、基板9は、
図6に矢印で示すように、溝4hの面取りされた斜面4jに沿って、溝4hの他方の角側(上側)と、溝4hの開口側(反対側の溝4f側)へ移動する。そして、基板9は、溝4f、4hの上側の壁と、溝4fの底(
図6で左側の壁)に押し付けられる。同様に、基板9は、溝4gの面取りされた斜面4jに沿って、溝4gの他方の角側(上側)と、溝4gの開口側(反対側の溝4e側)へ移動し、溝4e、4gの上側の壁と、溝4eの底に押し付けられる(図示省略)。
【0040】
図7および
図8に示すように、基板収納部4bの入口4dは、フック11、ハーネス10の保護ブッシュ17、およびカバー3により塞がれる。
図3および
図4に示すように、フック11はケース4に取り付けられる。保護ブッシュ17はフック11に取り付けられる。
【0041】
フック11は、基板9の溝4e、4f、4g、4h、4iへの収納方向に対して後端部9dを押さえる。このため、基板9の先端部9iは、溝4iの底に押し付けられる。フック11は、本発明の「押さえ部材」の一例である。
【0042】
図5A〜
図8に示すように、ケース4の磁気センサ8の上側には、磁石収納部である凹部4kが設けられている。凹部4kは、
図4に示すように、上方と側方に開放されている。凹部4kは、上方から挿し込まれた磁石7を保持する。凹部4kの大きさは、磁石7とほぼ同等になっている。
【0043】
凹部4kの側方の開放部分は、磁石7が抜け出ないような大きさになっている。凹部4kの上端には、磁石7の抜けを防止するロック4rが設けられている。
図5A〜
図8に示すように、凹部4kとカバー3の間には、Oリング16に設けられたシール部16aが挟み込まれている。シール部16aは、磁石7を凹部4kの底に押し付ける。
【0044】
ケース4の磁気センサ8と磁石7の間には、
図5A〜
図6に示すように、空間4mが設けられている。ケース4の下面から空間4mまでの距離と、ケース4の下面から遮磁板5までの距離とは、ほぼ同等になっている。空間4mの高さは、遮磁板5の厚みより若干大きくなっている。空間4m、遮磁板5、基板9、磁気センサ8、および磁石7は、平行になっている。
【0045】
遮磁板5は、サイドスタンドSに連動して、回転軸Jを中心に回転することにより、
図5Aおよび
図5Bに示すように、空間4mに対して出入りする。遮磁板5の移動方向は、基板9と平行になっている。遮磁板5が移動することにより、磁石7の磁界が変化する。磁気センサ8は、その磁界の変化を検出する。
【0046】
次に、位置検出装置1の動作を説明する。
【0047】
図1Aに示すように、サイドスタンドSが起立位置にあるときは、
図5Aに示すように、遮磁板5の小径部5aが、磁石7および磁気センサ8の近傍に位置する。つまり、遮磁板5が、磁石7と磁気センサ8の間の空間4m外に位置して、磁石7の発生する磁界から磁気センサ8を遮蔽していない状態となっている。
【0048】
このとき、磁気センサ8の出力値が低レベルになるため、検出回路15(
図2)は、遮磁板5が非遮磁位置(空間4m外)にあって、サイドスタンドSが起立位置にあることを検出する。そして、検出回路15は、この検出結果を自動二輪車の制御装置に、ハーネス10を介して送信する。
【0049】
サイドスタンドSが起立位置から、
図1Bに示すように収納位置へ回動したときは、
図5Bに示すように、遮磁板5の大径部5bが、磁石7と磁気センサ8の間の空間4m内に位置する。つまり、遮磁板5が、磁石7の発生する磁界から磁気センサ8を遮蔽した状態となる。
【0050】
このとき、磁気センサ8の出力値が高レベルになるため、検出回路15は、遮磁板5が遮磁位置(空間4m内)にあって、サイドスタンドSが収納位置にあることを検出する。そして、検出回路15は、この検出結果を自動二輪車の制御装置に、ハーネス10を介して送信する。
【0051】
上記実施形態によると、ケース4の基板収納部4bの溝4e、4f、4g、4h、4i内に入口4dから、磁気センサ8を実装した基板9を挿し込んでいる。また、ケース4の凹部4k内に上方から、磁石7を挿し込んでいる。このため、基板9と磁気センサ8と磁石7とを容易に位置決めして、基板9と磁気センサ8と磁石7の位置精度を高めることができる。
【0052】
また、サイドスタンドSに連動する遮磁板5を、ケース4の磁気センサ8と磁石7との間に設けた空間4mに対して出入りするように移動させている。このため、磁気センサ8および磁石7に対する遮磁板5の位置精度を高めることができる。
【0053】
さらに、上記の結果、磁気センサ8による磁力の検出誤差を小さくして、サイドスタンドSの位置の検出精度を高めることが可能となる。
【0054】
また、上記実施形態では、ケース4の凹部4kが、上方に開放されていて、下方に開放されていない。このため、磁石7を凹部4k内に上方から挿し込んで、磁石7の底面を凹部4kの底に容易に位置決めすることができる。また、磁石7と下方の磁気センサ8との距離のばらつきを抑制することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、基板9の相対する両側端部9e、9f、9g、9hの板面を挟み込むように、ケース4に複数の溝4e、4f、4g、4hが設けられている。このため、各溝4e、4f、4g、4h内に基板9の側端部9e、9f、9g、9hを容易に挿し込んで、基板9および磁気センサ8を容易かつ安定に位置決めすることができる。
【0056】
また、磁気センサ8などの部品が実装されていない基板9の側端部9e、9f、9g、9h、9iを溝4e、4f、4g、4h、4i内に挿し込むので、基板9上の部品の損傷を防止することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、溝4g、4hの底の下側の角を面取りしているので、基板9が、その面取りされた斜面4jに沿って、溝4g、4hの上側と開口側へ移動して、溝4g、4hの上側の壁と、反対側の溝4e、4fの底に押し付けられる。このため、基板9および磁気センサ8の、溝4e、4f、4g、4h、4i内での上下方向と溝4e、4f、4g、4hの深さ方向へのがたつきを抑制して、位置精度を一層高めることができる。
【0058】
さらに、上記実施形態では、フック11が、基板9の後端部9dを押さえて、先端部9iを溝4iの底に押し付けている。このため、基板9および磁気センサ8の、溝4e、4f、4g、4h、4iへの収納方向に対するがたつきを抑制して、位置精度を一層高めることができる。
【0059】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、上記実施形態では、ケース4の基板収納部4bの各側壁に溝4e、4f、4g、4h、4iを設けた例を挙げたが、本発明はこれに限るものではない。これ以外に、たとえば、基板収納部4bの奥の溝4iを省略したり、相対する溝4e、4f、4g、4h、4iの一方を省略したりしてもよい。この場合、省略した溝に代えて、基板9の板面を上方または下方から支持する支持面を設けるようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、磁石7を上方から凹部4k内に挿し込む例を挙げたが、本発明はこれに限るものではない。これ以外に、たとえば、凹部4kの側方の開放面積を大きくして、磁石7を側方から凹部4k内に挿し込むようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、溝4g、4hの底の下側の角を面取りした例を挙げたが、本発明はこれに限るものではない。これ以外に、たとえば、相対する各溝4e、4f、4g、4hや奥の溝4iにも、同様に面取りを施すようにしてもよい。また、溝4e、4f、4g、4h、4iの底の上側の角を面取りするようにしてもよい。底に面取りを施す溝の位置や数などは、上記実施形態に限定せず、適宜選択すればよい。
【0062】
また、上記実施形態では、磁気センサ8の一例としてホールICを示したが、本発明はこれに限るものではない。これ以外に、たとえば、磁気抵抗素子やリードスイッチなどのその他の磁気センサを用いてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、サイドスタンドSが収納位置にあるときに、遮磁板5が磁石7の磁界から磁気センサ8を遮蔽し、サイドスタンドSが起立位置にあるときに、遮磁板5が磁石7の磁界から磁気センサ8を遮蔽しない例を挙げたが、本発明はこれに限るものではない。これとは逆に、サイドスタンドSが起立位置にあるときに、遮磁板5が磁石7の磁界から磁気センサ8を遮蔽し、サイドスタンドSが収納位置にあるときに、遮磁板5が磁石7の磁界から磁気センサ8を遮蔽しないようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、検出回路15において、磁気センサ8の出力値に基づき、サイドスタンドSの位置を判断した例を挙げたが、本発明はこれに限るものではない。これ以外に、たとえば、磁気センサ8の出力値を検出回路15から自動二輪車の他の制御装置へ送信し、該他の制御装置において、サイドスタンドSの位置を判断するようにしてもよい。つまり、サイドスタンドSの位置を判断するためのデータを位置検出装置1で検出し、その判断部は位置検出装置1の外部に設けられていてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、遮磁板5が回転することにより変位した例を挙げたが、本発明はこれに限るものではない。これ以外に、遮磁板5が直線的に変位する場合にも、本発明は適用することができる。
【0066】
さらに、上記実施形態では、自動二輪車のサイドスタンドSの位置を検出する位置検出装置1に、本発明を適用した例を挙げたが、これ以外の対象物の位置を検出するための検出装置に対しても、本発明を適用することは可能である。