特許第5669750号(P5669750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5669750車両ウイングの閉動作の制御方法及び対応する車両の閉システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669750
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月12日
(54)【発明の名称】車両ウイングの閉動作の制御方法及び対応する車両の閉システム
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/632 20150101AFI20150122BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20150122BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20150122BHJP
【FI】
   E05F15/14
   B60J5/04 C
   B60J5/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-541170(P2011-541170)
(86)(22)【出願日】2009年12月10日
(65)【公表番号】特表2012-512348(P2012-512348A)
(43)【公表日】2012年5月31日
(86)【国際出願番号】EP2009008841
(87)【国際公開番号】WO2010075945
(87)【国際公開日】20100708
【審査請求日】2011年11月15日
(31)【優先権主張番号】102008062641.4
(32)【優先日】2008年12月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(74)【代理人】
【識別番号】100097250
【弁理士】
【氏名又は名称】石戸 久子
(74)【代理人】
【識別番号】100103573
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】ローランド・ブライトナー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・ダイシュル
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・リンドマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガンク・ミュッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ディーター・ショイナート
(72)【発明者】
【氏名】エッカート・シューラー
(72)【発明者】
【氏名】ファルク・ツィードラー
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−244619(JP,A)
【文献】 特許第2823553(JP,B2)
【文献】 特開平10−220108(JP,A)
【文献】 特開2009−197483(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01441100(EP,A1)
【文献】 独国実用新案第202004004676(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00−15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知されたスタート位置から最終位置に移動し、前記最終位置が、車両ウイング(10、20、30、40、50)の閉位置となっている車両ウイングの閉動作の制御方法であって、
前記スタート位置に達すると、前記車両ウイング(10、20、30、40、50)の閉動作は、規定された第1の時間(t)で第1の閉経路にわたり始動し、続いて、規定された第2の時間(t)にわたり中断して、
前記第2の時間(t)が経過すると、第3の時間(t)で前記第1の閉経路よりも長い第2の閉経路にわたって行われる閉動作が、前記車両ウイング(10、20、30、40、50)が前記最終位置に達するまで続行され、ユーザ又は第三者に前記車両ウイング(10、20、30、40、50)の前記閉動作が始まることを警告し、
前記スタート位置は、開いた状態の車両ウイング(10、20、30、40、50)を手動で閉じることにより到達され、前記車両ウイングの動作は前記スタート位置から前記最終位置まで自動で行われ
前記車両ウイング(10、20、30、40、50)が、前記最終位置に達した後で、規定された第4の時間(t)にわたりさらに閉方向に動き、対応する前記車両ウイング(10、20、30、40、50)がしっかり閉まっているのを確実にする、
方法。
【請求項2】
閉動作の間、検知されたスタート位置から最終位置までドライブ(14、24、34、44、54)によって移動する少なくとも1つの車両ウイング(10、20、30、40、50)を含み、前記最終位置がこの車両ウイングの閉位置となっている、請求項に記載の方法を実施するための車両の閉システムであって、
評価及び制御ユニット(12、22、32、42、52)は、前記スタート位置に達した場合に、対応する車両ウイング(10、20、30、40、50)の前記ドライブ(14、24、34、44、54)を、規定された第1の時間(t)で第1の閉経路にわたり閉方向に制御して前記閉動作を開始し、前記第1の時間(t)が経過した後、前記評価及び制御ユニット(12、22、32、42、52)は、規定された第2の時間(t)にわたり前記ドライブ(14、24、34、54)の制御を中断して、
前記第2の時間(t)が経過すると、第3の時間(t)で前記第1の閉経路よりも長い第2の閉経路にわたって行われる閉動作が、前記車両ウイング(10、20、30、40、50)が前記最終位置に達するまで続行され、前記車両ウイング(10、20、30、40、50)の前記閉動作が開始されることをユーザ又は第三者に警告し、
前記スタート位置は、開いた状態の車両ウイング(10、20、30、40、50)を手動で閉じることにより到達され、前記車両ウイングの動作は前記スタート位置から前記最終位置まで自動で行われ
前記評価及び制御ユニット(12、22、32、42、52)は、前記最終位置に達した後、対応する前記車両ウイング(10、20、30、40、50)の前記ドライブ(14、24、34、44、54)を、規定された第4の時間(t)にわたり閉方向に引き続き制御し、前記最終位置に錠が確実にかみ合うようにする、
閉システム。
【請求項3】
前記評価及び制御ユニット(12、22、32、42、52)が、位置検知手段(16、26、36、46、56)によって提供されるインフォメーションを評価することにより少なくとも1つの前記車両ウイング(10、20、30、40、50)の位置を算出し、前記位置検知手段(16、26、36、46、56)は、少なくとも1つのリミットスイッチ及び/又は少なくとも1つの位置検知センサを有することを特徴とする、請求項に記載の閉システム。
【請求項4】
少なくとも1つの前記車両ウイング(10、20、30、40、50)が、車両ドア(10、20、30、40)及び/又はトランクリッド(50)として実施されていることを特徴とする、請求項2または3に記載の閉システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に基づく車両ウイングの閉動作の制御方法と、請求項の前提部分に基づく方法を実施するための対応する車両閉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ドア又はフラップなどの、ウイング構造を有する車両ウイングの周知の制御方法は、ドア又はフラップを、プレロック位置又は特別なスタート位置から錠(ロック)のメインロック位置又は完全閉鎖位置に移動させる。車両デザイン及び錠機構の設計に応じて、自動閉動作が開始される際のドア又はフラップの開き空間は様々に大きい。取扱いが不適切又は不注意である場合は、開いたままになっているドア又はフラップの空間に指又は身体が挟み込まれるという負傷の危険性がある程度存在する。
【0003】
特許文献1には、車両ウイングの開閉操作システムが説明されている。説明されている操作システムには、車両ウイングが開位置と閉位置との間で移動できるようにする駆動ユニットと、車両ウイングをその閉位置でボディフレームにロックするラッチロックとが含まれており、このラッチロックは一緒に作用する2つのロック部品を有し、それらの部品の1つは車両ウイングに配置され、他方はボディフレームに配置されている。駆動ユニットの第1の駆動手段は、最後の閉運動段階の前に作動停止になり、その後、第2の駆動手段によって車両ウイングが最終位置に再移動する。この第2の駆動手段はモータ駆動の駆動装置として実施されており、この駆動装置によって、ラッチロックがロックされる際に、一方のロック部品を、繰り出し状態のキャッチ位置から車両ウイングの最終位置に該当する、収納状態の非使用位置に動かすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許発明第10303778B4明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、閉動作の前に、人間、特にユーザ及び第三者に警告を与える、車両ウイングの閉動作の制御方法及びその方法を実施するための対応する閉システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1の特徴を備える車両ウイング閉動作の制御方法を提供することと、請求項の特徴を備える車両閉システムと、によってこの課題を解決する。
【0007】
本発明の有利な実施形態及び発展形態は、従属請求項の中に示されている。
【0008】
本発明に基づき、車両ウイングの自動閉動作は、スタート位置に達すると、規定された短い第1の時間にわたり始動し、それに続いて、規定された第2の時間にわたり中断して、ユーザ又は第三者に車両ウイングの閉動作が始まることを警告する。閉動作の開始時における、この特別な閉動作制御方法により、とりわけ不適切な取扱いがなされた場合のユーザ又は第三者に対する安全性が向上する。閉動作の短い始動は、ユーザ又は第三者が気づくことのできる、実際の閉動作前の警告メッセージとして働くため、場合により車両ウイングの開き空間に気づかずに置いた指又は身体の一部を、有利な方法で、実際の閉動作前に余裕を持って引き戻すことができる。第1の時間は、比較的小さい閉経路しか戻らないように短く設定され、有利な方法では、第2の時間が、指又はその他の身体の一部を開き空間から遠ざけるのに十分な時間をユーザ又は第三者に提供するように設定されている。第2の時間が経過すると、第1の時間よりも明らかに長い第3の時間にわたって行われる閉動作が、車両ウイングの最終位置に達するまで続行される。
【0009】
本発明に基づく方法の実施形態では、車両ウイングが、最終位置に達した後で、規定された第4の時間にわたりさらに閉方向に動き、対応する車両ウイングがしっかり閉まっていることを確実にする。
【0010】
本発明に基づく方法のもう1つの実施形態では、スタート位置が、例えば車両ウイングの錠のプレロック位置となっており、最終位置が車両ウイングの錠のメインロック位置になっている。
【0011】
本発明に基づく方法を実施する車両の閉システムには、閉動作の間、検知されたスタート位置から最終位置までドライブによって移動する少なくとも1つの車両ウイングが含まれており、その最終位置がこの車両ウイングの閉位置となっている。本発明に基づき、評価及び制御ユニットは、スタート位置に達した場合に、対応する車両ウイングのドライブを、規定された短い第1の時間にわたり閉方向に制御して閉動作を開始する。短い第1の時間が経過した後、評価及び制御ユニットは、規定された第2の時間にわたりドライブの制御を中断して、車両ウイングの閉動作が開始されることをユーザ又は第三者に警告する。第1の時間は、有利な方法において、比較的小さい閉経路しか戻らないように短く設定されている。第2の時間は、有利な方法では、車両ウイングの開き空間に置かれている可能性のある指又はその他の身体の一部を、そこから遠ざけるのに十分な時間をユーザ又は第三者に提供するように設定されている。規定された第2の時間が経過した後、評価及び制御ユニットは、再び閉方向にドライブを制御し、対応する車両ウイングがその最終位置に達するまで、短い第1の時間よりも明らかに長い第3の時間にわたり閉動作を続行する。少なくとも1つの車両ウイングは、例えば、車両ドア及び/又はトランクリッド又はリヤドアとして実施することができる。
【0012】
本発明に基づく閉システムの実施形態では、評価及び制御ユニットが、位置検知手段によって提供されるインフォメーションを評価することにより、少なくとも1つの車両ウイングの位置を算出する。位置検知手段は、例えば、少なくとも1つのリミットスイッチ及び/又は少なくとも1つの位置検知センサを有することができる。
【0013】
本発明に基づく閉システムのもう1つの実施形態では、スタート位置が、車両ウイングの錠のプレロック位置となっており、最終位置が車両ウイングの錠のメインロック位置になっている。最終位置に達した後、評価及び制御ユニットが、対応する車両ウイングのドライブを、規定された第4の時間にわたり閉方向に引き続き制御し、メインロック位置に錠が確実にかみ合うようにする。
【0014】
本発明の有利な実施形態を図に示し、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に基づく車両閉システムの実施例のブロック図である。
図2】車両ウイングのドライブの作動図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から分かるように、図に示されている本発明に基づく車両閉システム1の実施例は、ドアとして実施されている4つの車両ウイング10、20、30、40と、トランクリッドとして実施されている1つの車両ウイング50とを含んでいる。各車両ウイング10、20、30、40、50は、閉動作の間、例えば電気モータ、水力モータなどとして実施されている、対応するドライブ14、24、34、44、54によって、検知されたスタート位置から閉位置となっている最終位置に移動することができる。図に示されている実施例では、スタート位置が車両ウイング10、20、30、40、50の錠のプレロック位置となり、最終位置が車両ウイング10、20、30、40、50の錠のメインロック位置となっている。車両ウイング10、20、30、40、50の1つの閉動作を実施するため、対応する評価及び制御ユニット12、22、32、42、52が、対応するドライブ14、24、34、44、54を閉方向に制御する。対応する車両ウイング10、20、30、40、50の現在位置は、付属する評価及び制御ユニット12、22、32、42、52が、位置検知手段16、26、36、46、56によって提供されるインフォメーションを評価することにより算出する。この位置検知手段16、26、36、46、56は、例えばリミットスイッチ、位置検知センサなどを有している。車両ウイング10、20、30、40、50の評価及び制御ユニット12、22、32、42、52は、車両バスシステム5に連結されており、対応する車両ウイング10、20、30、40、50の現在の閉状態をこのバスシステムに提供する。さらに、この評価及び制御ユニット12、22、32、42、52は、例えばアクセス許可システム、リモコンシステムなどの上位システムからコマンドとインフォメーションとを受信する。
【0017】
続いて、図1及び2を用いて、車両ウイング10、20、30、40、50の閉動作を制御する本発明に基づく方法の実施例を説明する。図2は、車両ウイング10、20、30、40、50のドライブ14、24、34、44、54の作動図を示し、ここではスイッチ、センサなどの電子コンポーネントの反応時間及び/又はデバウンス時間が考慮されている。
【0018】
図2の中で時間topenによって表されている、開いた状態の車両ウイング10、20、30、40、50が手動で閉められる場合、対応する車両ウイング10、20、30、40、50は、第1の時点tで自動閉動作のスタート位置に達し、次に評価及び制御ユニット12、22、32、42、52が、対応する車両ウイング10、20、30、40、50のドライブ14、24、34、44、54を、第1の時点tから次の第2の時点tまで、規定された短い第1の時間tにわたり閉方向に制御する。短い第1の時間tが経過した後、評価及び制御ユニット12、22、32、42、52は、第2の時点tで、規定された第2の時間tにわたり第3の時点tまでの閉動作を中断して、車両ウイング10、20、30、40、50の閉動作が開始されることを車両ユーザ又は第三者に警告する。第3の時点tでは、評価及び制御ユニット12、22、32、42、52が、再び閉方向にドライブ14、24、34、44、54を制御し、対応する車両ウイング10、20、30、40、50が第4の時点tでその最終位置に達するまで、短い第1の時間よりも明らかに長い第3の時間tにわたり閉動作を続行する。メインロック位置に錠が確実にかみ合うようにするため、評価及び制御ユニット12、22、32、42、52は、第4の時点tで最終位置に達した後、対応する車両ウイング10、20、30、40、50のドライブ14、24、34、44、54を、追加動作時間とも呼ばれる規定された第4の時間tにわたり、第5の時点tに達するまで閉方向に引き続き制御する。第5の時点tに達することによって、評価及び制御ユニット12、22、32、42、52は、ドライブ14、24、34、44、54の動作方向を第6の時点tまで逆方向にして、時間tの間、ドライブ14、24、34、44、54を特定のパーキング位置に動かす。
【0019】
車両ウイングの閉動作を制御する本発明に基づく方法の実施形態及び本発明に基づく閉システムの実施形態は、有利な方法で、特に不適切な取扱いがなされた場合のユーザ又は乗員の安全性を向上させる。対応するドライブの短い始動は、実際の閉動作前に気付くことのできる警告メッセージとして働くため、場合により開き空間の範囲内に気づかずに置いていた指又は身体の一部を遅れずに引き戻すことができる。
図1
図2