(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱源と送風機を有した空気調整空間と、試料体が配される試験空間とを備え、空気調整空間と試験空間との間で空気を循環させて、試験空間内を所望の環境に形成する環境試験装置であって、送風機から水滴が吐出される場合がある環境試験装置において、
空気調整空間には、上下を区分する壁を構成する部材であって前記送風機から吐出された水滴が落下又は溜まり得る位置にある部材があり、当該壁を構成する部材には、主に空気の流通を想定した空気流通開口が設けられ、
送風機は、吐出口を有し、当該吐出口が前記空気流通開口と連通するように設置されており、
前記壁を構成する部材には、主に液体の流通を想定した液体流通開口が設けられていることを特徴とする環境試験装置。
【背景技術】
【0002】
製品や素材等(以下、単に試料体という)の性能や耐久性を試験する装置として、環境試験装置がある。この種の環境試験装置は、試験対象の試料体が載置される試験空間を備え、この試験空間内の温度や湿度を所望の試験環境に調整するものである。すなわち、この種の環境試験装置は、試験空間内を所望の試験環境に調整するべく、空気を加熱するヒータや、空気を冷却する冷却器(例えば、冷凍サイクルの一部を形成する蒸発器)、さらには試験空間内の空気を攪拌する送風機が少なくとも搭載されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、1つの恒温恒湿槽内を、仕切壁によって、試料体を載置する試験空間と、試験環境の形成に寄与する前記した各機器(ヒータ、冷却器、並びに送風機等)が配された空気調整空間とに区分した環境試験装置が開示されている。そして、この環境試験装置は、送風機よりも空気の流れ方向上流側にヒータや冷却器を配し、ヒータや冷却器で温度調整された空気(以下、調整空気ともいう)を、送風機によって試験空間側に送り出し、試験空間内の温度や湿度を調整する構成とされている。
【0004】
ところが、この種の環境試験装置は、試験空間内を所望の試験環境に調整する際に、送風機から送り出される調整空気と共に水滴が吐き出される場合がある。すなわち、蒸発器に付着した水滴が送風機に混入して、そのまま当該送風機から吐き出される場合がある。また同様に、送風機内に導入された調整空気に含まれた水蒸気が、意図しない温度変化等の影響により、凝縮して水滴となり、その水滴が当該送風機から吐き出される場合がある。特にこの後者に関しては、試験空間内を高湿状態に制御する場合に発生し易い。
【0005】
すなわち、試験空間内を高湿の試験環境に調整する場合は、高湿状態の調整空気が送風機に導入される。一般的に、高湿状態の空気は、微少な温度低下によっても飽和状態に至り、水滴を発生してしまう可能性が高い。すなわち、送風機に高湿状態の調整空気が導入され、送風機内で当該調整空気の温度が微少であっても低下した場合においては、調整空気が飽和状態となり、幾分かの水滴を発生させる。そして、このようにして発生した水滴は、調整空気の流れに乗って、送風機の吐出口から飛散するように吐出したり、送風機の吐出口に至る内壁に沿ってせり上がるようにして吐出する。
【0006】
こうして、送風機から水滴が吐き出されると、試験空間側に飛散する場合がある。そして、この飛散した水滴が、環境試験中の試料体に付着すれば、試料体や試験そのものに悪影響を及ぼすおそれがあるため、回避する必要があった。
そのため、この種の環境試験装置101は、
図12に示すように、空気調整空間102内に配した送風機113が、その吐出口115を上方に向けた姿勢で設置された構成とされている。これにより、送風機113から吐出される調整空気を、一旦、上方に向けて送り出すことができるため、調整空気と共に運ばれてくる水滴が、直接、試験空間103側に飛散してしまうことが抑制されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術の環境試験装置101では、試験空間103側への水滴の飛散を完全に阻止することができなかった。すなわち、従来の環境試験装置101は、調整空気と共に吐き出される水滴が、送風機113の吐出口115近傍に集められるが、吐出口115から吐き出される後続の調整空気によって、その集められた水滴が試験空間103側に吹き飛ばされてしまう場合があった。
これについて、以下に具体的に説明する。
【0009】
上記した環境試験装置101では、送風機113の吐出口115を除く他の部分が閉塞壁105により閉め切られている。また、送風機113の吐出口115から上方に向けて吐き出された水滴は、重力によって、吐出口115に程近い位置に落下する。すなわち、送風機113から吐き出され、重力によって落下した水滴であれ、送風機113の内壁をせり上がってきた水滴であれ、
図13(a)に示すように、閉塞壁105に集められる。そしてその後、閉塞壁105に落下した水滴(以下、落下後の水滴ともいう)は、送風機113から吐出する空気の流れの影響を受けて移動する。すなわち、落下後の水滴は、全体的に、送風機113の風の影響が少ない方に向けて移動し、
図13(b)に示すような大きな水溜まりを形成する。そして、この水溜まりが、送風機の風の影響を受け得る所定の大きさまで成長すると、
図13(c)に示すように、その水溜まりの一部が分離して、試験空間103側に移動し、ついには前記分離した水滴が試験空間103内に飛散してしまう。
【0010】
このように、従来技術の環境試験装置は、送風機から吐出された水滴が、試験空間内に直接的に飛散することを防止できるが、送風機から吐出されて吐出口近傍に溜められた水滴を、試験空間内に飛散させてしまう場合があった。
【0011】
そこで、閉塞壁上の水滴の飛散を防止するべく、送風機の吐出口よりも下流側に、水滴の飛散を防止するフィルターを設ける方策が勘案される。しかしながら、この方策を採用した場合、水滴の飛散は防止できるが、フィルター自体が空気抵抗となり、試験空間への風量が著しく落ちてしまうことが懸念される。そしてこれにより、試験空間において、所望の試験環境を生成することが困難となるおそれがある。また、フィルターが目詰まりを生じれば、環境試験装置本来の機能が損なわれてしまうおそれもある。
【0012】
また、その他の方策として、送風機の送風量を通常よりも低減して環境試験を行うことが勘案される。これにより、閉塞壁上に落下した水滴の飛散の抑制効果が期待できる。しかしながら、この方策を採用した場合、送風機の送風量の低下によって、ヒータや冷却器を通過する空気の流通速度も低下するため、熱交換効率が大幅に低下し環境試験そのものに悪影響が及ぶおそれがある。
【0013】
そこで、本発明では、従来技術の問題点に鑑み、送風機から吐き出される水滴が、試験空間側に飛散することがない環境試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するべく提供される請求項1に記載の発明は、熱源と送風機を有した空気調整空間と、試料体が配される試験空間とを備え、空気調整空間と試験空間との間で空気を循環させて、試験空間内を所望の環境に形成する環境試験装置であって、
送風機から水滴が吐出される場合がある環境試験装置において、空気調整空間には、上下を区分する
壁を構成する部材であって前記送風機から吐出された水滴が落下又は溜まり得る位置にある部材があり、当該壁を構成する部材には、主に空気の流通を想定した空気流通開口が設けられ、送風機は、吐出口を有し、当該吐出口が前記空気流通開口と連通するように設置されており、前記
壁を構成する部材には、主に液体の流通を想定した液体流通開口が設けられていることを特徴とする環境試験装置である。
前記壁を構成する部材が閉塞壁であり、当該閉塞壁に前記液体流通開口が設けられていることが望ましい(請求項2)。
【0015】
本発明の環境試験装置は、送風機の吐出口と連通する空気流通開口と、その空気流通開口に対して空気の流れ方向下流側に位置する試験空間との間に、主に液体が流通する液体流通開口を設けた構成とされている。すなわち、液体流通開口は、試験空間を基準とすれば、空気流通開口よりも空気の流れ方向下流側に位置している。これにより、送風機から水滴が吐き出されて、
上下を区分する壁を構成する部材上にその水滴が落下した場合であっても、その水滴が試験空間側に到達する前に、液体流通開口を介して排出することができる。したがって、本発明によれば、送風機から吐き出された水滴を、液体流通開口から排出できるため、前記水滴が試験空間側に飛散することを防止することができる。
【0016】
ここで、送風機から吐き出されて
上下を区分する壁を構成する部材上に溜まった水滴を、効率的に排水するためには、液体流通開口の位置決めが重要である。先に説明したように、送風機から吐き出されて
上下を区分する壁を構成する部材上に落下した水滴は、送風機から吐出される後続の風によって、「風の影響が小さい領域」に向かって移動する。また、この「送風機の風の影響が小さい領域」は、実際に環境試験を実施して、水滴の集合具合を目視することで決定することができる。すなわち、このようにして決定された「送風機の風の影響が小さい領域」に液体流通開口を設ければ、わざわざ勾配等を設けなくとも、所定の位置に水滴を集めることができるため、加工費等に起因したコストアップを避けることができる。
そこで、かかる知見に基づき提供される請求項
5に記載の発明は、前記液体流通開口を、送風機による風の影響が小さい領域に設けたことを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、
上下を区分する壁を構成する部材上に落下した水滴を、「送風機による風の影響が小さい領域」に設けた液体流通開口から排出することができるため、
当該壁を構成する部材の加工手間等によるコストアップを殆ど発生させない。また、「送風機による風の影響が小さい領域」には、水滴が集まり易いため、効率的な排水を実施することができる。すなわち、本発明によれば、試験空間側への水滴の飛散をより効果的に防止することができる。
【0018】
本発明の環境試験装置は、空気調整空間と試験空間との間を区切る空間分割壁を有し、前記空間分割壁は、前記閉塞壁と接続されるもので、前記液体流通開口は、空間分割壁又は閉塞壁に設けられていることが望ましい。
即ち、請求項3に記載の発明は、空気調整空間と試験空間との間を区切る空間分割壁を有し、当該空間分割壁は仕切本体と当該仕切本体から折り曲げられた仕切り天面を備え、前記壁を構成する部材の少なくとも一部が仕切り天面で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の環境試験装置である。
また請求項4に記載の発明は、熱源と送風機を有した空気調整空間と、試料体が配される試験空間とを備え、空気調整空間と試験空間との間で空気を循環させて、試験空間内を所望の環境に形成する環境試験装置であって、送風機から水滴が吐出される場合がある環境試験装置において、空気調整空間と試験空間との間を区切る空間分割壁を有し、空気調整空間には、上下を区分する閉塞壁が設けられ、当該閉塞壁には、主に空気の流通を想定した空気流通開口が設けられ、送風機は、吐出口を有し、当該吐出口が前記空気流通開口と連通するように設置されており、前記閉塞壁と前記空間分割壁との間であって前記送風機から吐出された水滴が落下又は溜まり得る位置に隙間を設け、当該隙間を主に液体の流通を想定した液体流通開口とすることを特徴とする環境試験装置である。
【0019】
本発明の環境試験装置に設ける前記液体流通開口は、前記空気流通開口と比べると、開口面積が小さいことが望ましい。(請求項
6)
【0020】
請求項
7に記載の発明は、前記液体流通開口を複数設けたことを特徴とする請求項
1〜6のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0021】
かかる構成によれば、複数の液体流通開口によって、
上下を区分する壁を構成する部材に落下した水滴を排出することができるため、より効率的な排水を実施することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の環境試験装置は、送風機の吐出口が連通する空気流通開口と試験空間との間に、主に液体を排出する液体流通開口を設けたため、送風機の吐出口から水滴が吐き出されたとしても、その水滴が試験空間側に飛散してしまう前に、試験空間以外の場所に排出することができる。これにより、送風機から吐き出された水滴が、試験空間側に飛散することが防止されるため、環境試験中の試料体に水滴に起因した不具合を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態に係る環境試験装置1について説明する。
まず、本実施形態の環境試験装置1の基本構成について説明する。
図1に示す環境試験装置1は、周囲を断熱材3で覆われた筐体2を有する、所謂恒温恒湿装置である。すなわち、筐体2は、恒温恒湿槽5を成すものであり、内部が仕切壁(空間分割壁)4によって、試験室(試験空間)6と、空調用通路(空気調整空間)7とに区切られている。そして、恒温恒湿槽5内の上部側と下部側には、試験室6と空調用通路7とを連通する開口9、19が設けられている。
【0025】
試験室6は、環境試験を行う際に、試料となる機器や部品等を配置する空間で、当該空間の温度を検知する室内温度検知手段23と、当該空間の相対湿度を検知する室内湿度検知手段24が設けられている。室内温度検知手段23は、例えば、従来公知の測温抵抗体等の温度センサである。一方、室内湿度検知手段24は、例えば、従来公知の湿度センサである。
【0026】
空調用通路7は、所望の温度や湿度の空気を生成する部分であり、下部側(空気の流れ方向上流側)から順番に、加湿器14、蒸発器(熱源)15、加熱ヒータ(熱源)26、送風機27が配されている。
加湿器14は、蒸発皿30と従来公知の電気ヒータ31を有し、電気ヒータ31によって蒸発皿30内に貯留した水を蒸発させるものである。
蒸発器(冷却器)15は、公知の冷却装置10の一部であり、冷凍サイクルの一部を担うべく機能するものである。すなわち、蒸発器15は、内部に相変化する冷媒が流通し、冷却能力と表面温度を変化させることができるものである。
加熱ヒータ26は、従来公知の電気ヒータであり、空調用通路7を通過する空気を加熱するものである。
【0027】
送風機27は、従来公知の多翼型の遠心送風機であり、回転フィン28とそれを内蔵した外郭部材33を有し、回転フィン28の軸心方向から空気を吸気して、回転方向に空気を吐出するものである。すなわち、送風機27は、外郭部材33に吸気口35と吐出口36を有し、吸気口35は、外郭部材33であって、回転フィン28の回転軸と直交する側面に形成されており、吐出口36は、回転フィン28の回転方向に沿った周面に形成されている。
【0028】
また、空調用通路7には、送風機27よりも上部側(空気の流れ方向下流側)に、平面視形状が長方形を呈した閉塞壁16が設けられている。閉塞壁16は、所定の位置において形成された部材厚方向に貫通した空気流通開口17を有し、当該空気流通開口17からのみ空気の通過を許す部材である。すなわち、閉塞壁16は、空気流通開口17に、送風機27の吐出口36を連通させることによって、送風機27から吐出される空気を、試験室6側に送ることができる。なお、本実施形態では、閉塞壁16の空気流通開口17の開口形状はほぼ方形状であり、当該空気流通開口17の開口サイズは、送風機27の吐出口36の開口サイズとほぼ同じ大きさである。
【0029】
続いて、本実施形態の環境試験装置1の特徴的構成について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、送風機27から吐出され得る水滴の試験室6側への飛散を防止するべく、主に液体の流通を許す開口形状が円形の液体流通開口11が閉塞壁16に設けられている。
【0030】
液体流通開口11は、
図1、2に示すように、閉塞壁16に複数(本実施形態では3つ)設けられており、それぞれが所定の位置に配されている。そして、本実施形態では、各液体流通開口11a〜11cの位置が、予め実施された実験により決定されている。具体的には、各液体流通開口11a〜11cの位置は、送風機27から吐出した水滴が溜まり得る位置であり、閉塞壁16に落下後、送風機27から吐き出される後続の風の影響で水滴が集まり得る領域内である。すなわち、本実施形態では、実験により、
図3に示すように、送風機27から吐き出される風の影響が小さい領域Vに、水滴が集まることを確認し、その領域Vに各液体流通開口11a〜11cを設けることとした。
以下、この領域Vについて詳細に説明する。
【0031】
すなわち、前記領域Vを構成する領域V1〜V3は、空気の流れ方向を基準に、空気流通開口17と試験室6との間であって、送風機27から水滴が吐出した際に、その水滴が風によって下流に流され得る距離を考慮した位置に設定されている。つまり、各領域V1〜V3は、閉塞壁16における、空気流通開口17よりも空気の流れ方向下流側の位置に設けられている。
【0032】
より詳細には、各領域V1〜V3は、送風機27の吐出風量にも依るが、
図3に示すように、空気流通開口17の最も試験室6寄りの開口辺部40を基準に、その開口辺部40から各領域V1〜V3の空気流通開口17側端部までの距離Pが、一定距離離反する位置に配されている。また、空気流通開口17の開口辺部40から各領域V1〜V3の試験室6側端部までの距離Sが距離Pよりも長い。すなわち、各領域V1〜V3は、開口辺部40から少なくとも距離P離れた位置で、空気流通開口17の開口辺部40に沿うように、直列状に位置するように設定されている。そして、領域V1〜V3は、隣接する互いの間隔Q、Rを、空気流通開口17の開口辺部40に沿った方向に、所定距離空けた配置に設定されている。
【0033】
したがって、液体流通開口11a〜11cのそれぞれは、各領域V1〜V3の範囲内において独立して存在し、各開口中心が、空気流通開口17の開口辺部40を基準とした所定の範囲(距離Pを超え且つ距離S未満の範囲)内に位置するような配置にされている。
【0034】
次に、本実施形態の環境試験装置1の基本動作について説明する。
本実施形態の環境試験装置1では、送風機27によって恒温恒湿槽5内の空気を循環して、試験室6内に所望の環境が作られる。すなわち、恒温恒湿槽5内の空気は、送風機27によって仕切壁4の下部側の開口9から空調用通路7側に吸入され、空調用通路7を鉛直上方に向けて通過して、仕切壁4の上部側の開口19から試験室6側に吐出される。
【0035】
より詳細に説明すると、送風機27が起動されると、
図4に示すように、空調用通路7内の空気が送風機27の吸気口35に吸い込まれて、吐出口36から吐出される。そして、送風機27から吐出された空気は、仕切壁4の上部側の開口19から試験室6側に送り出される。これにより、試験室6内の壁面に沿うように空気の流れが形成される。そして、仕切壁4の下部側の開口9に到達した空気が、再び空調用通路7内に導入される。空調用通路7には、前記したように、空気の流れ方向に沿って順番に加湿器14、蒸発器15、加熱ヒータ26が配置されているため、空調用通路7に導入された空気は、加湿器14で必要に応じて加湿され、蒸発器15を通過してから、加熱ヒータ26側に流れる。
なお、環境試験装置1は、室内温度検知手段23と室内湿度検知手段24によって、試験室6内の現状の温度(現状気温)と現状の相対湿度(現状相対湿度)が監視され、所定の設定条件に基づいて、各機器(加湿器14、冷却装置10、加熱ヒータ26、送風機27等)が制御される。
【0036】
続いて、本実施形態の環境試験装置1における特徴的機能について説明する。
一般的に、環境試験装置1は、前記基本動作の際に、送風機から水滴が吐き出される場合がある。先にも説明したが、送風機から吐き出される水滴は、送風機の吐出口の姿勢により、直接的に試験室側に飛散することはほぼないが、閉塞壁に落下した後に二次的に飛散する場合がある。そこで、本実施形態では、送風機27から吐き出されて閉塞壁16に落下した水滴が、二次的に試験室6側に飛散することを防止できる水滴飛散防止機能を有する。
【0037】
すなわち、本実施形態では、前記したように、閉塞壁16に3つの液体流通開口11a〜11cを設け、その液体流通開口11a〜11cによって水滴飛散防止機能が果たされている。詳細に説明すると、前記基本動作によって、送風機27が駆動され、送風機27から水滴が吐き出されると、
図5(a)に示すように、その水滴は送風機27の吐出口36に程近い閉塞壁16上に落下する。すなわち、閉塞壁16上に、複数の水滴が付着した状態となる。そして、閉塞壁16上に落下した水滴(以下、落下後の水滴という)の大半は、送風機27から吐き出される後続の風の影響により、所定の方向、つまり当該後続の風の影響が少ない領域(本実施形態では領域V1〜V3)に向かって移動する。すなわち、領域V1〜V3には、
図5(b)に示すように、落下後の水滴があらゆる方向から移動してくる。そして、領域V1〜V3のいずれかに到達した水滴が、
図5(c)に示すように、液体流通開口11に至れば、その液体流通開口11を介して、下方に排出される。具体的には、液体流通開口11から排出された水滴は、空調用通路7の下方に向けて流れて排水される。なお、本実施形態では、空調用通路7の底部に、加湿器14の蒸発皿30が配されているため、蒸発皿30に排水される。
【0038】
このように、本実施形態では、閉塞壁16に複数の液体流通開口11を設けて、送風機27から吐き出される水滴を、試験室6側に殆ど飛散させることなく適切に排出することができる。これは、以下に示す実験の結果からも明らかである。
【0039】
すなわち、本実施形態の環境試験装置(実施例)1と、従来の環境試験装置(比較例)を、同一の試験条件(設定する目標温度及び目標湿度等)の下、作動させる実験を行った。そして、送風機27から吐き出される水滴が、試験室6側にどの程度飛散するかを比較した。
【0040】
実施例と比較例の実験結果は、以下に示す表1の通りである。
試験条件は、試験室6内の目標温度を摂氏10℃、目標湿度を98%とした。
また、試験室6には、試料体に見立てて、一辺が100mmの正方形状の銅板を4枚、所定の配置で並べた。具体的には、4枚の銅板は、
図6に示すように、試験室6側から空調用通路7を正面視して、左側に2枚並べ(手前側から左A、左Bとする)、右側に2枚並べた(手前側から右A、右Bとする)配置である。
【0042】
実験結果によれば、実施例の場合においては、送風機27から吐き出される水滴の飛散量が少なく、いずれの銅板にも殆ど水滴の付着が見られなかったが(4枚の銅板の平均水滴付着数は約5滴)、比較例の場合においては、実施例に比べると水滴の飛散量が多く、全ての銅板に多くの水滴が付着していた(4枚の銅板の平均水滴付着数は約16滴)。すなわち、実施例においては、比較例で見られた水滴数の約3割程度しか見られなかった。
【0043】
上記実施形態では、液体流通開口11を、送風機27から吐き出される風の影響が少ない領域に設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、液体流通開口を、送風機27から吐き出される水滴が落下し得る領域に設けたり、前記風の影響が少ない領域と前記落下し得る領域に跨るように設けても構わない。例えば、送風機27の吐出口36から試験室6に至るまでの間に、スリット状の液体流通開口を設けた構成が挙げられる。
以下に、そのスリット状の液体流通開口について具体的に説明する。
【0044】
まず、以下の説明の理解を容易にするべく、閉塞壁16と仕切壁4の構成の実体について付言する。
上記実施形態では、説明を簡素化するために、板状の閉塞壁16と仕切壁4を示し、単にそれらを突き合わせて接合したような恒温恒湿槽5内の構成を示したが、実際は若干異なる。すなわち、実際の環境試験装置では、
図7に示すように、仕切壁4としては、試験室6側の側壁を形成する仕切本体43と、その上端から仕切本体43に対して直交方向に折り曲げられた仕切天面45と、その仕切天面45の張出端部から直交方向下方に折り曲げられた突き合わせ壁46を有するものが採用され、閉塞壁16としては、空気流通開口17が設けられた閉塞本体47と、閉塞本体47の対向する一対の端部から直交方向下方に折り曲げられた突き合わせ壁48、49を有するものが採用されている。そして、仕切壁4と閉塞壁16とは、突き合わせ壁46と突き合わせ壁48とを突き合わせて、スポット溶接やピン等の締結要素を用いて接合されている。
【0045】
そこで、本発明者は、加工の容易性や、加工による強度低下の影響性等を考慮して、閉塞壁16の突き合わせ壁48あるいは仕切壁4の突き合わせ壁46の一部を切り取って、スリット状の液体流通開口42を形成することを考えた。そして、
図8には、仕切壁4の突き合わせ壁46の一部を切り取って形成された液体流通開口42が示されている。すなわち、本構成においては、液体流通開口42は、
図9、10に示すように、当該仕切壁4と閉塞壁16とを突き合わせた状態において、閉塞壁16の空気流通開口17よりも下流側であって、その空気流通開口17と試験室6とを結ぶ直線上に設けている。そしてこのように、液体流通開口42を形成し配置することで、送風機27から吐出される風の影響が少ない領域と水滴が落下し得る領域に液体流通開口42を跨らせることができる。
したがって、本構成においても、上記実施形態とほぼ同様の作用効果を期待することが可能である。
なお、
図9、10に示したように、空気流通開口17のスリット長さを、空気流通開口17の開口幅よりも大きくすることで、上記実施形態より水滴除去の効果を高めることができる。
【0046】
また、
図11に示すように、仕切壁4や閉塞壁16を加工することなく、試験室6と空調用通路7とを区切る仕切壁4と、閉塞壁16との間に若干の隙間21を設け、その隙間21から水滴を排出する構成であっても構わない。
また、本発明では、液体流通開口11や隙間21に強制的に水滴が流れ込むように、当該液体流通開口11や隙間21に向けて下り勾配の傾斜面を設けた構成であっても構わない。
【0047】
上記実施形態では、液体流通開口11を閉塞壁16に3つ設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、2つ以下であったり、4つ以上液体流通開口11を設けた構成であっても構わない。また、液体流通開口11は、円形の開口形状に限定されず、楕円形、長方形、矩形等、他のいかなる形状であっても構わない。
【0048】
上記実施形態では、液体流通開口11を通過した水滴は、空調用通路7を下方に向けて自然落下する構成を示したが、本発明はこれに限定されず、液体流通開口11と連通する配管を設け、配管を介して排水できる構成であっても構わない。
【0049】
上記実施形態では、領域Vの範囲よりも小さく設定した液体流通開口11を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、領域Vの範囲と同程度の大きさの液体流通開口を設けた構成であっても構わない。