特許第5669842号(P5669842)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許56698424個の駆動車輪を有する自動車両の前端部と後端部との間のエンジントルクの分配方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669842
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】4個の駆動車輪を有する自動車両の前端部と後端部との間のエンジントルクの分配方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/348 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
   B60K17/348 B
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-525191(P2012-525191)
(86)(22)【出願日】2010年7月28日
(65)【公表番号】特表2013-502341(P2013-502341A)
(43)【公表日】2013年1月24日
(86)【国際出願番号】FR2010051595
(87)【国際公開番号】WO2011020963
(87)【国際公開日】20110224
【審査請求日】2013年7月9日
(31)【優先権主張番号】0955718
(32)【優先日】2009年8月20日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】1052778
(32)【優先日】2010年4月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】モンティ, アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ポタン, リシャール
(72)【発明者】
【氏名】ロマーニ, ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】サン−ルー, フィリップ
【審査官】 広瀬 功次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−143264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/28−17/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも4個の駆動輪(3、4、6、7)を有する自動車両の、フロントアクスルシステム(2)とリヤアクスルシステム(3)との間のエンジントルクを分配するための装置(1)であって、
フロントアクスルシステム(2)からリヤアクスルシステム(3)へのトルク伝達の値を示すトルク分配基準に基づいて、前記エンジントルクを分配するように構成される制御アクチュエータ(13)と、
前記車両の速度、および前記フロントアクスルシステム(2)と前記リヤアクスルシステム(5)との間の速度差を計算するための計算手段(30)と
を備えており、
前記トルク分配基準を策定するための策定手段(31)であって、前記車両速度が低閾値よりも低い場合には最大定数に等しく、前記車両速度が低閾値と高閾値との間である場合には前記車両速度および前記速度差の関数に等しく、または前記車両速度が高閾値よりも高い場合にはゼロに等しい前記トルク分配基準の第1の値を決定する初期決定手段(40)を有する策定手段(31)を備えていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記初期決定手段(40)が、その限界が車両速度の関数として変化する一の区間に含まれる前記トルク分配基準の前記第1の値を決定するように構成されており、前記限界が、前記車両速度が前記低閾値と前記高閾値との間に含まれる場合には互いに異なっている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記初期決定手段(40)が、前記低閾値と前記高閾値との間に含まれる中間速度閾値を決定するように構成されており、前記車両速度が前記中間速度閾値と前記高閾値との間に含まれる場合には前記区間の下限がゼロである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記策定手段(31)が、
前記第1の値よりも小さい第2のであって、前記車両速度が最小閾値よりも低い場合には最小定数に等しく、前記車両速度が前記最小閾値と最大閾値との間に含まれる場合には車両速度のみの関数に等しく、または前記車両速度が前記最大閾値よりも高い場合にはゼロに等しい第2のを決定するための第2の決定手段(41)と、
前記トルク分配基準を策定するために前記第1の値または前記第2の値を選択するための選択手段(42)と
を備えている、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記計算手段(30)が、係合される変速比を計算するように構成されており、
前記策定手段(31)が、
前記第1の値よりも小さい第2のであって、前記係合される変速比が第1の前進ギヤまたは後進ギヤであるときに車両速度が最小閾値よりも低い場合には最小定数に等しく、前記車両速度が前記最小閾値よりも高い場合、または前記係合される変速比が前記第1の前進ギヤおよび後進ギヤとは異なる場合にはゼロに等しい第2のを決定するための第2の決定手段(41)と、
前記トルク分配基準を策定するために前記第1の値または前記第2の値を選択するための選択手段(42)と
を備えている、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記計算手段(30)が、スロットルペダルの位置および係合される変速比を計算するように構成されており、
前記策定手段(31)が、前記スロットルペダルの位置が高い方の加速度閾値よりも高い場合で、かつ前記係合される変速比が非ゼロである場合に、選択制御信号を活性化するように構成される選択制御手段(44)を備え、
前記選択手段(42)が、前記選択制御信号を受信して、前記選択制御信号が活性化される場合には前記第1の値を、または前記選択制御信号が非活性化される場合には前記第2の値を選択するように構成されている
請求項4または請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記策定手段(31)が、
トルク分配基準を策定するために、前記選択手段(42)によって前記選択される値またはゼロ値を送信する送信手段(43)と、
前記車両速度が静止閾値よりも低い場合に静止期間中に送信制御信号を活性化するように構成される送信制御手段(45)と
を備えており、
前記送信手段(43)が、前記送信制御信号を受信して、前記送信制御信号が非活性化される場合には前記選択手段(42)によって選択される値を、または前記送信制御信号が活性化される場合には前記ゼロ値を送信するように構成されている、
請求項4〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記計算手段(30)が、スロットルペダル位置を計算するように構成されており、
前記策定手段(31)が、
前記トルク分配基準を策定するために、前記選択手段(42)によって前記選択される値またはゼロ値を送信する送信手段(43)と、
前記スロットルペダルが押し込まれていないときに前記車両速度が静止閾値よりも低くなる場合に静止期間中に送信制御信号を活性化するように構成される送信制御手段(45)と
を備えており、
前記送信手段(43)が、前記送信制御信号を受信して、前記送信制御信号が非活性化される場合には前記選択手段(42)によって前記選択される値を、または前記送信制御信号が活性化される場合には前記ゼロ値を送信するように構成されている、
請求項4〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも4個の駆動輪(3、4、6、7)を有する自動車両のフロントアクスルシステム(2)とリヤアクスルシステム(5)との間のエンジントルクを分配する方法であって、
車両速度、および前記フロントアクスルシステム(2)と前記リヤアクスルシステム(5)との速度不一致を計算する方法において、
記車両速度が低閾値より低い場合には最大定数に等しく、前記車両速度が前記低閾値と高閾値との間に含まれる場合には前記車両速度および速度不一致との関数に等しく、または前記車両速度が前記高閾値よりも高い場合にはゼロに等しくなるように、フロントアクスルシステム(2)からリヤアクスルシステム(3)へのトルク伝達の値を示すトルク分配基準の第1のを決定し、前記エンジントルクを、前記決定されたトルク分配基準に基づいて分配することを特徴とする方法。
【請求項10】
前記決定するステップの間に、その限界が車両速度の関数として変化する一の区間に含まれる前記トルク分配基準の前記第1の値も決定し、前記限界が、前記車両速度が前記低閾値と前記高閾値との間に含まれる場合には互いに異なっている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記決定するステップの間に、前記低閾値と前記高閾値との間に含まれる中間速度閾値を決定し、前記区間の前記下限が、前記車両速度が前記中間速度閾値と前記高閾値との間に含まれる場合にはゼロである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の値よりも小さい第2のであって、かつ前記車両速度が最小閾値よりも低い場合には最小定数に等しく、前記車両速度が前記最小閾値と最大閾値との間に含まれる場合には前記車両速度のみの関数に等しく、または前記車両速度が前記最大閾値よりも高い場合にはゼロに等しい第2のを決定し、
前記トルク分配基準を決定するために、前記第1の値または前記第2の値を選択する、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
スロットルペダル位置および係合される変速比を計算し、
前記スロットルペダル位置が加速度閾値よりも高い場合で、かつ前記係合される変速比が非ゼロである場合に選択制御信号を活性化し(S10)、かつ、
前記選択制御信号が活性化される場合に前記第1の値を選択するか、または前記選択制御信号が非活性化される場合に前記第2の値を選択する、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記車両速度が静止閾値よりも低い場合に静止期間中に送信制御信号を活性化し(S4)、かつ、
前記送信制御信号が非活性化される場合に前記第1または第2の選択値を送信するか、または前記トルク分配基準を決定するために前記送信制御信号が活性化される場合にゼロ値を送信する、
請求項12または請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4輪駆動を有する自動車両のフロントアクスルシステムとリヤアクスルシステムとの間のエンジントルクの分配に関する。
【0002】
特に、本発明は、この種の車両のフロントアクスルシステムからリヤアクスルシステムへのエンジントルクの伝達に関する。
【背景技術】
【0003】
現時点では、4輪駆動を有し、またオフローダーとして知られている車両は、あらゆる種類の障害物を乗り越えることが意図され、車両が移動している状態に適する駆動システムが装着されている必要がある。特に、車両がオフロードモードにある場合には、車両の移動の状態は限定的であり、したがって車両の速度は低位かまたは中位である。
【0004】
特に、車両を始動し、障害物を乗り越える場合に、車両の駆動システムおよび消費を改善することができることは有益である。
【0005】
たとえば、米国特許第5752211号明細書に言及することができる。この文献は、フロントアクスルシステムとリヤアクスルシステムとの間のエンジントルクを分配するための方法を説明しており、この方法では、車両速度の3次関数であるアクスルシステム間の速度オフセットが算出され、これがトルク分配指令から差し引かれる。しかし、この方法は、特に車両速度が特に低位かまたは中位である場合に、車両がオフロードモードで移動している状態を考慮していない。
【0006】
また、欧州特許出願公開第1188597号明細書に言及することができる。この文献は、タイヤの摩耗、または変化に帰すべきタイヤの直径の変化を検出することによって、4輪駆動が装着されている車両のエンジントルクの分配を制御するための装置を説明している。しかし、この明細書は、車両がオフロードモードで移動している状態を考慮していない。
【0007】
さらに、欧州特許出願公開第1275549号明細書は、車輪速度、エンジン速度、スロットルペダル位置などのさまざまな信号の関数として、フロントアクスルシステムとリヤアクスルシステムとの間のトルクの分配についての戦略を説明している。この文献は、2つのアクスルシステム間のエンジントルクの分配の基準値を最適化する方法を提案しているが、エンジントルク分配基準の計算の方法は説明していない。
【0008】
その他の場合では、特開平10−119598号公報は、後輪が空転し始めると後輪に加えられる駆動動力を低減し、前輪に加えられる駆動動力を増大させる制御システムを説明している。しかしこれも、動力分配基準の計算の方法は説明していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的の1つは、4輪駆動を備えた車両のフロントアクスルシステムとリヤアクスルシステムとの間のエンジントルクの分配を改善する手段を提供することであり、これには、電気モータ、内燃機関、またはハイブリッド解決策などの牽引トルクの供給源が装着される。
【0010】
本発明のもう1つの目的は、車両がオフロードモードにある場合に、車両のフロントアクスルシステムとリヤアクスルシステムとの間のエンジントルクを分配するための手段を提供することである。
【0011】
本発明のさらにもう1つの目的は、障害物に対処する能力に有利に働くように適したトルク分配基準を策定する手段を提供しながら、同時に車両の燃料消費を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの態様は、少なくとも4個の駆動輪を有する自動車両のフロントアクスルシステムとリヤアクスルシステムとの間のエンジントルクを分配するための装置であって、エンジントルクを分配するように構成される制御アクチュエータと、車両の速度、およびフロントアクスルシステムとリヤアクスルシステムとの間の速度差を計算するための計算手段とを備える装置を提案している。
【0013】
この装置は、アクチュエータに意図されたトルク分配基準を策定するための策定手段を備えており、この策定手段は、車両速度が低閾値よりも低い場合には最大定数に等しく、車両速度が低閾値と高閾値との間に含まれる場合には車両速度および速度差の関数に等しく、または車両速度が高閾値よりも高い場合にはゼロに等しい、トルク分配基準の第1の値を決定する初期決定手段を備える。
【0014】
したがって、燃料消費を改善し、かつ障害物に対処する自動車両の能力を改善するために、車両がオフロードモードで移動している状態の関数としてトルク分配基準を計算するための手段が提供される。
【0015】
さらに、この装置は、オフロードモードでの駆動状態に応じて、障害物および/または燃料消費に対処する能力に有利に働く。
【0016】
有利なことに、初期決定手段は、その限界が車両速度の関数として変化する一の区間に含まれるトルク分配基準の第1の値を決定するように構成され、限界は、車両速度が低閾値と高閾値との間に含まれる場合には互いに異なっている。
【0017】
したがって、エンジントルクは、たとえアクスルシステム間の速度不一致がゼロであっても伝達され、次いでこのことは、障害物に対処する能力を保証し、車両速度が低閾値よりも低い場合に適用される戦略と比べて燃料消費の低減を保証する。
【0018】
また、初期決定手段は、低閾値と高閾値との間に含まれる中間速度閾値を決定するように構成することができ、この区間の下限は、車両速度が中間速度閾値と高閾値との間に含まれる場合にはゼロである。
【0019】
この場合、燃料消費は改善される。
【0020】
策定手段は、第1の値よりも小さい第2のトルク分配基準値であって、車両速度が最小閾値よりも低い場合には最小定数に等しく、または車両速度が最小閾値と最大閾値との間に含まれる場合には車両速度のみの関数に等しく、または車両速度が最大閾値よりも高い場合にはゼロに等しい第2のトルク分配基準値を決定するための第2の決定手段と、トルク分配基準を策定するために第1の値または第2の値を選択するための選択手段とをさらに備えることができる。
【0021】
あるいは、計算手段が、係合される変速比を計算するように構成される場合には、策定手段は、第1の値よりも小さい第2のトルク分配基準値であって、係合される変速比が第1の前進ギヤまたは後進ギヤである場合で車両速度が最小閾値よりも低い場合には最小定数に等しく、或いは、車両速度が最小閾値よりも高い場合、または係合される変速比が第1の前進ギヤおよび後進ギヤとは異なる場合にはゼロに等しい第2のトルク分配基準値を決定するための第2の決定手段と、トルク分配基準を策定するために第1の値または第2の値を選択するための選択手段とを備えることができる。
【0022】
車両駆動状態が最大トルク分配を必要としない場合には、トルク分配基準は、先の最大トルク分配基準よりも低い最小トルク分配基準を適用することによって低減される。したがって、燃料消費は改善される。
【0023】
計算手段は、スロットルペダル位置および係合される変速比を計算するように構成され、策定手段は、スロットルペダルの位置が高い方の加速度閾値よりも高い場合、かつ係合される変速比が非ゼロである場合には、選択制御信号を活性化するように構成される選択制御手段を備え、選択手段は、選択制御信号を受信して、選択制御信号が活性化される場合には第1の値を、または選択制御信号が非活性化される場合には第2の値を選択するように構成され得る。
【0024】
策定手段はまた、トルク分配基準を策定するために、選択手段によって選択される値またはゼロ値を送信する送信手段と、車両速度が静止閾値よりも低い場合に、静止期間中に送信制御信号を活性化するように構成される送信制御手段とを備えることができ、送信手段は、送信制御信号を受信して、送信制御信号が非活性化される場合には選択手段によって選択される値を、または送信制御信号が活性化される場合にはゼロ値を送信するように構成される。
【0025】
あるいは、計算手段がスロットルペダル位置を計算するように構成される場合には、トルク分配基準を策定するために、選択手段によって選択される値またはゼロ値を送信する送信手段と、スロットルペダルが押し込まれない場合に車両速度が静止閾値よりも低くなる場合には、静止期間中に送信制御信号を活性化するように構成される送信制御手段とを備え、送信手段は、送信制御信号を受信して、送信制御信号が非活性化される場合には選択手段によって選択される値を、または送信制御信号が活性化される場合にはゼロ値を送信するように構成される策定手段の用意を行うことができる。
【0026】
したがって、駆動トルク分配列の耐久力、および前進ギヤと後進ギヤとの間の変化によって発生する寄生的な雑音が改善される。
【0027】
本発明のもう1つの態様は、少なくとも4個の駆動輪を有する自動車両のフロントアクスルシステムとリヤアクスルシステムとの間のエンジントルクを分配する方法であって、車両速度、およびフロントアクスルシステムとリヤアクスルシステムとの間の速度不一致を計算する方法を提案している。
【0028】
この方法では第1のトルク分配基準値が決定される。第1のトルク分配基準値は、車両速度が低閾値より低い場合には最大定数に等しく、または車両速度が低閾値と高閾値との間に含まれる場合には、車両速度および速度不一致の関数に等しく、または車両速度が高閾値よりも高い場合にはゼロに等しく、エンジントルクは、決定されたトルク分配基準に基づいて分配される。
【0029】
有利なことに、決定ステップの間に、その限界が車両速度の関数として変化する一の区間に含まれるトルク分配基準の第1の値も決定され、この限界は、車両速度が低閾値と高閾値との間に含まれる場合には互いに異なっている。
【0030】
決定ステップの間に、低閾値と高閾値との間に含まれる中間速度閾値がさらに決定され、区間の下限は、車両速度が中間速度閾値と高閾値との間に含まれる場合にはゼロである。
【0031】
また、第1の値よりも小さい第2のトルク分配基準値であって、車両速度が最小閾値よりも低い場合には最小定数に等しく、または車両速度が最小閾値と最大閾値との間に含まれる場合には車両速度のみの関数に等しく、または車両速度が最大閾値よりも高い場合にはゼロに等しい第2のトルク分配基準値を決定することができ、トルク分配基準を決定するために第1の値および第2の値を選択することができる。
【0032】
さらに、スロットルペダル位置および係合される変速比を計算することができ、スロットルペダル位置が加速度閾値よりも高い場合で、かつ係合される変速比が非ゼロである場合には選択制御信号を活性化することができ、選択制御信号が活性化される場合には第1の値を、または選択制御信号が非活性化される場合には第2の値を選択することができる。
【0033】
さらに、車両速度が定常期間の間に静止閾値よりも低い場合には送信制御信号を活性化することができ、送信制御信号が活性化される場合には第1または第2の選択値を、または送信制御信号がトルク分配基準を決定するために非活性化される場合にはゼロ値を送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
単に非限定的な実施例として示され、添付の図面を参照して行われる次の説明を理解することによって、本発明のさらなる目的、特徴、および利点が明らかになるであろう。
図1】自動車両のエンジントルク分配装置を概略的に示す図である。
図2】トルク分配基準を策定する手段の一実施形態を概略的に示す図である。
図3】第1のトルク分配基準値を決定する初期決定手段の一実施形態を概略的に示す図である。
図4】送信制御信号を活性化/非活性化するための戦略の一実施態様を概略的に示す図である。
図5】選択制御信号を活性化/非活性化するための戦略の一実施態様を概略的に示す図である。
図6】送信制御信号を活性化/非活性化するための戦略の実施態様の他の形態を概略的に示す図である。
図7】トルク分配基準を策定する手段の実施形態の他の形態を概略的に示す図である。
図8】選択制御信号を活性化/非活性化するための戦略の実施態様の他の形態を概略的に示す図である。
【0035】
十分に分かりやすくするために、同一または類似の要素は、すべての図で同一の参照符号によって特定される。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、自動車両のエンジントルク分配装置1を示している。
【0037】
自動車両は、2つの前輪3および4が取り付けられるフロントアクスルシステム2と、2つの後輪6および7が取り付けられるリヤアクスルシステム5と、自動車両の車輪3、4、6、および7を駆動することが意図されるエンジントルクの供給源8とを備えている。このエンジントルクの供給源8は、リヤ伝動手段9aを介して後輪6、7を駆動し、フロント伝動手段9bを介して前輪3、4を駆動する。エンジントルクの供給源8は、電気モータ、内燃機関、またはハイブリッド解決策であることができる。自動車両は、車両の車輪3、4、6、および7、スロットルペダル11、ならびにクラッチペダル12にエンジントルクを伝達するためのギアボックス10をさらに備える。車両には自動変速機が装着されることもでき、その場合には車両はいかなるクラッチペダルも有さないことになるので、クラッチペダル12は任意であることが留意されよう。
【0038】
分配装置1は、スロットルペダル11およびクラッチペダル12の位置をそれぞれ計測するための2つの位置センサ18および19と共に、電子制御ユニットUCEと、制御アクチュエータ13と、自動車両の車輪3、4、6、および7のそれぞれの速度をそれぞれ計測することが意図される速度センサ14〜17とを備えている。
【0039】
4輪駆動が装着される自動車両のフロントアクスルシステムとリヤアクスルシステムとの間のエンジントルクを分配する方法は、分配装置1の電子制御ユニットUCEで実施され得る。
【0040】
UCEは、接続部20を介して位置センサ18から送られたスロットルペダル11の位置と、接続部21によって位置センサ19から送られたクラッチペダル12の位置と、速度センサ14〜17によってそれぞれ送られ、接続部22〜25によってそれぞれ送信されたあとの車輪3、4、6、および7の速度とを受信するように構成される。
【0041】
さらに、UCEは、接続部26を介してギアボックス10によって係合される変速比に関する情報を受信するように構成される。UCEは、速度、位置、および係合比情報の関数としてトルク分配基準を策定することができる。
【0042】
UCEは、自動車両の構成要素から受信される情報からさまざまな情報を計算するための、および有線ネットワーク32を介して策定手段31に計算された情報を送信するための計算手段30をさらに備えている。これらの策定手段31は、UCE内に含まれ、接続部27を介して制御アクチュエータ13にこれを送信するために、トルク分配基準を策定するように意図される。策定手段は、トルク分配基準のための第1の値を決定するために少なくとも1つの初期決定手段40を備える。
【0043】
制御アクチュエータ13は、接続部27を介してUCEから送られるトルク分配基準を受信するように構成される。この制御アクチュエータ13は、車両のフロントアクスルシステム2とリヤアクスルシステム5との間のエンジントルクを分配し、前方のトルク分配基準によってフロントアクスルシステム2からリヤアクスルシステム5へエンジントルクを特に伝達することがさらにできる。
【0044】
図2は、トルク分配基準Cons_DCoupleを策定する手段31、および計算手段30の一実施形態を概略的に示している。また、図2は、計算手段30も示しており、先の図1で説明された参照のいくつかを繰り返している。
【0045】
計算手段30は、車両速度V、およびフロントアクスルシステム2とリヤアクスルシステム5との間の速度不一致Δωを計算することができるように、それぞれ接続部22〜25を介して車輪3、4、6、および7の速度を受信する。これらの計算手段30は、また、接続部20を介してスロットルペダル位置PedAcc、接続部21を介してクラッチペダル位置PedEmb、および接続部26を介して係合される変速比BVを受信する。
【0046】
有線ネットワーク32は、速度不一致Δωと、車両速度Vと、それぞれスロットルペダル位置PedAcc、クラッチペダル位置PedEmb、係合される変速比BVを含む車両情報とを送信するように接続部33から接続部35を備えている。
【0047】
策定手段31は、
−初期決定手段40と、
−二次決定手段41と、
−選択手段42と、
−送信手段43と、
−選択制御手段44と、
−送信制御手段45と
を備えている。
【0048】
初期決定手段40は、それぞれ接続部33および34を介して速度不一致Δωおよび車両速度Vを受信する。この初期決定手段40は、トルク分配基準の第1の値Cmaxを決定することができ、接続部46を介して選択手段42にこの第1の値Cmaxを送信することができる。第1の値Cmaxは、車両速度Vおよび速度不一致Δωの関数として決定される。
【0049】
二次決定手段41は、接続部34を介して車両速度Vを受信し、トルク分配基準の第2の値Cminを決定することができ、接続部47を介して選択手段42に第2の値Cmainを送信することができる。第2の値Cmainは、車両速度Vだけの関数として決定される。
【0050】
選択制御手段44は、選択制御信号Maxminを活性化または非活性化することができるように、接続部35を介して、スロットルペダル位置PedAccと、クラッチペダル位置PedEmbと、係合される変速比BVとを受信する。この選択制御信号Maxminは、選択手段42に接続部48によって送信される。選択制御信号Maxminは、活性化される場合には値「1」、および非活性化される場合には値「0」を採るブール信号である。
【0051】
選択手段42は、第1の値Cmaxまたは第2の値Cminを選択し、接続部49を介して送信手段43に選択された値を送信するように構成される。さらに、選択手段42は、選択制御信号Maxminが活性化される場合には第1の値Cmaxを送信し、選択制御信号Maxminが非活性化される場合には第2の値Cminを送信するように構成される。
【0052】
さらに、送信制御手段45は、送信制御信号Antibruitを活性化または非活性化する(ことができる)ように接続部34を介して車両速度Vを受信するように構成される。この送信制御手段45は、接続部50を介して送信手段43に送信制御信号Antibruitを送信する。送信制御信号Antibruitは、非活性化される場合には「0」、および、活性化される場合には「1」を採るブール信号である。
【0053】
送信手段43は、接続部27を介して制御アクチュエータ13に選択された結果を送信することができるように、選択手段42によって選択された値、またはゼロ値を選択するように構成される。送信手段43は、送信制御信号Antibruitが非活性化される場合には選択手段42から接続部49によって受信される値を選択し、送信制御信号Antibruitが活性化される場合にはゼロ値を選択する。ゼロ値は、手段51によって策定され、送信手段43に接続部52によって送信される。
【0054】
策定手段31は、ゼロ、または最大基準に対応する第1の値Cmaxに等しい、または最小基準に対応する第2の値Cminに等しいトルク分配基準Cons_DCoupleを策定する。
【0055】
初期決定手段40ならびに制御手段44および55は、次の図で説明される。
【0056】
2次決定手段41は、その一例として、車両速度だけの関数としてトルク分配基準Cons_DCoupleの第2の値Cminを決定することができる。このように、第2の値Cminを策定するための3つの異なる戦略、すなわち低速度基準戦略、中速度戦略、および高速度戦略を確認することができる。したがって、戦略は、車両がオフロードモードで駆動されている状態に合わせて調整され、その結果、障害物および/または燃料消費に対処する能力に有利に働く。したがって、車両速度に応じて次の3つの異なる戦略、すなわち、
−車両が低速度で駆動されている場合、すなわち車両速度が最小閾値よりも低い場合、第2の値Cminは一定で、かつ最小定数に等しく、この最小定数は、障害物に対処する車両の能力と燃料消費の低減との間の妥協点、および最適に駆動するために、スロットルペダルを押し込むことなく下り走行しながら4個の車輪へトルクを分配できることを表す。最小速度閾値および最小定数は、整備の際に調整可能であり、車両の不揮発性メモリにセーブされる。
−車両が中速度で駆動されている場合、すなわち車両速度Vが最小閾値と最大閾値との間に含まれる場合、第2の値Cminが車両速度Vの関数である。この関数は、最小定数とゼロとの間の減少関数である。したがって、障害物に対処する車両の能力は保証され、燃料消費は、低速度戦略より低減される。また、最大速度閾値も、整備の際に調整可能であり、不揮発性メモリにセーブされる。
−車両が高速度で駆動されている場合、すなわち車両速度Vが最大閾値よりも高い場合、第2の値Cminがゼロである。この場合、車両燃料消費は最小である。
【0057】
図3は、トルク分配基準Cons_DCoupleの第1の値Cmaxを決定する初期決定手段40の一実施形態を概略的に示している。
【0058】
初期決定手段40は、調整手段60と、上限を策定する手段61と、下限を策定する手段62と、2つの比較手段63、64とを備えている。
【0059】
調整手段60は、調整基準Creglageを策定し、次いで接続部65を介して第1の比較手段63にこの調整基準Creglageを送信することができるように、それぞれ接続部33および34を介して速度不一致Δωおよび車両速度Vを受信するように構成される。上限を策定する手段61は、速度Vの関数として変化する上限Cborne_supを策定するために、接続部34を介して車両速度Vを受信する。この策定手段61は、接続部66を介して第1の比較手段63に上限Cborne_supを送信する。また、下限を策定する手段62は、下限Cborne_infを策定することができるように、接続部34を介して車両速度Vを受信する。この策定手段62は、接続部67を介して第2の比較手段64に下限Cborne_infを送信する。
【0060】
第1の比較手段63は、上限Cborne_supと調整基準Creglageとの間から最小値を選択し、次いで接続部68を介して第2の比較手段64に結果を送信するように使用され得る。第2の比較手段64は、下限Cborne_infと第1の比較手段63からの結果との間から最大値を選択することができ、トルク分配基準Cons_DCoupleの第1の値に対応するその結果Cmaxを、接続部46によって選択手段42に送信することができる。
【0061】
初期決定手段40は、特に車両速度Vから、および速度不一致Δωから調整基準Creglageを決定することができる。また、初期決定手段40は、この第1の値Cmaxが上限Cborne_supと下限Cborne_infとの間に限られる区間に含まれるように、調整基準Creglageから第1の値Cmaxを決定することができる。
【0062】
したがって、第1の値Cmaxを策定するための4つの異なる戦略、すなわち、
−低速度基準戦略と、
−中速度基準戦略と、
−高速度基準戦略と、
−非常に高速度の基準戦略と
を確認することができる。
【0063】
したがって、戦略は、車両がオフロードモードで駆動されている状態に合わせて調整され、その結果、障害物および/または燃料消費に対処する車両の能力に有利に働く。
【0064】
したがって、車両速度Vに依存する次の4つの異なる戦略がある。
−車両が低速度で駆動されている場合、すなわち車両速度Vが低閾値よりも低い場合、第1の値Cmaxが一定で、かつ最大定数に等しい。この最大定数は、制御アクチュエータ13および車両トルク分配列が耐え得る最大トルクに対応する。この場合、上限Cborne_supは下限Cborne_infに等しく、限界は最大定数に等しい。
−車両が中速度で駆動されている場合、すなわち車両速度Vが低閾値と中間速度閾値との間に含まれる場合、第1の値Cmaxが、車両速度Vおよび速度不一致Δωの関数である。さらに、この第1の値Cmaxは、限界Cborne_infによって下端に、かつ限界Cborne_supによって上端に限られ得る。したがって、トルクの分配は、車両の2つのアクスルシステム2、5との間にいかなる速度不一致Δωもない場合に行われ得る。したがって、障害物に対処する車両の能力が保証され、燃料消費は低速度戦略より低減される。
−車両が高速度で駆動されている場合、すなわち車両速度Vが中間速度閾値と高閾値との間に含まれる場合、第1の値Cmaxは、車両速度Vおよび速度不一致Δωの関数である。さらに、この高速度戦略では、第1の値Cmaxは、限界Cborne_supによって上端に限られることができ、下限Cborne_infはゼロである。したがって、車両の燃料消費は改善される。さらに、車両の2つのアクスルシステムの間にいかなる速度不一致もない場合、すなわち速度不一致Δω=0である場合、調整基準Creglageがゼロで、第1の値Cmaxも同様にゼロであることを意味する。
−車両が非常に高速度で駆動されている場合、すなわち車両速度Vが高閾値よりも高く、第1の値Cmaxがゼロであり、さらに上限Cborne_supおよび下限Cborne_infも同様にゼロである。したがって、車両燃料消費は最小である。
【0065】
初期決定手段40で実施される4つの戦略では、使用される速度閾値および限界Cborne_sup、Cborne_infは、整備の際に調整可能であり、車両の不揮発性メモリにセーブされる。また、上限Cborne_supおよび下限Cborne_infは、最大定数とゼロとの間で減少するように速度の関数として変化することが留意されよう。
【0066】
図4は、送信制御信号Antibruitを活性化/非活性化するための戦略の一実施態様を概略的に示している。
【0067】
送信制御信号Antibruitを活性化/非活性化するためのこの戦略は、以前に説明された送信制御手段45で実施され得る。この活性化/非活性化戦略は、送信手段43を制御するために、送信制御信号Antibruitを活性化または非活性化するように使用され得る。
【0068】
この活性化/非活性化戦略は、送信制御信号Antibruitがゼロに設定される第1のステップS1を含む。次に、第2のステップS2が行われ、ここでは現在の車両速度Vが、車両移動速度閾値Vdeplacementと比較される。車両速度Vが移動速度閾値Vdeplacementよりも高い場合には、次いで第3の比較ステップS3が行われ、そうでない場合には、第1のステップS1が繰り返される。車両速度Vが移動速度閾値Vdeplacementよりも高い場合には、車両は駆動されていると考慮される。第3の比較ステップS3の間中、車両速度Vは、静止閾値Varretと比較される。車両速度Vが静止閾値Varretよりも低い場合には、次いで第4のステップS4が行われ、そうでない場合は、第3の比較ステップS3が繰り返される。第4のステップS4では、送信制御信号Antibruitは、定常期間Δtarretの間、活性化される。次に、この定常期間Δtarretの終わりにおいて、第1の初期化ステップS1が繰り返される。
【0069】
図5は、選択制御信号Maxminを活性化/非活性化するための戦略の一実施態様を概略的に示している。この活性化/非活性化戦略は、以前に説明された選択制御手段44で実施され得る。
【0070】
この活性化/非活性化戦略は、選択制御信号Maxminが活性化される第1の初期化ステップS10を含んでいる。次に、第2の比較ステップS11が、次の3つの状態、すなわち、
−スロットルペダル位置PedAccが、低閾値PedAccSeuilbasよりも低いかどうか、
−クラッチペダル位置PedEmbが、高閾値PedEmbSeuilhautよりも高いかどうか、
−いかなる変速比も係合されないか、すなわちBV=ゼロであるかどうか
の妥当性が試験される間に行われる。
【0071】
3つの状態のうちの1つが妥当である場合には、次いで非活性化ステップS12が行われ、そうでない場合は第1の初期化ステップS10が繰り返される。
【0072】
非活性化ステップS12では、選択制御信号Maxminが非活性化される。次に、もう1つの比較ステップS13が行われ、そこでは次の3つの状態、すなわち、
−スロットルペダル位置PedAccが、高閾値PedAccSeuilhautよりも高いかどうか、
−クラッチペダル位置PedEmbが、低閾値PedEmbSeuilbasよりも低いかどうか、
−変速比が係合される、すなわちBVがゼロ以外であるかどうか
の妥当性が試験される。
【0073】
上の3つの状態が妥当である場合には、第1の初期化ステップS10が繰り返され、そうでない場合は追加の比較ステップS14が行われる。追加の比較ステップS14の間、非活性化ステップS12以来経過した時間Δtが周期時間閾値Δtminmaxと比較される。周期時間閾値Δtminmaxが終了している場合、すなわち周期時間閾値Δtminmaxよりも大きい場合には、第1の初期化ステップS10が繰り返され、そうでない場合は、非活性化ステップS12が繰り返される。
【0074】
図6に示される他の形態では、Antibruit戦略は、適用される状況をよりよく確認するために改善され得る。特に、経験により、一部の運転手は、車両の向きを変える場合、第1の前進ギヤ比から後進ギヤ比に、またその反対に切り替える前に、車両が足踏み状態になるのを待たないことが示されている。
【0075】
図4に示されるAntibruit戦略は、発車の際に運転手が高度な反応を要求していても、操縦の間は車輪アクスルシステム間のトルクの伝達を相殺するので、この場合には最適ではない。
【0076】
図6の他の形態によれば、送信信号Antibruitを活性化/非活性化するための戦略は、2つの平行な分岐を含み、すなわち、前述の速度閾値VdeplacementおよびVarretを含む分岐と、閾値Vdeplacementよりも僅かに高いVembrayage、および閾値Varretよりも高いVdebrayageである閾値を含む分岐とを含む。
【0077】
第1のステップS1では、送信制御信号Antibruitはゼロに設定される。次に、第2のステップS21が行われ、そこでは現在の車両速度Vが、車両移動速度閾値Vdeplacementと比較される。車両速度Vが移動速度閾値Vdeplacementよりも高い場合には、次いで第3の比較ステップS31が行われ、そうでない場合は第1のステップS1が繰り返される。車両速度Vが移動速度閾値Vdeplacementよりも高い場合には、車両はずっと駆動されていると考慮される。第3の比較ステップS31の間、車両速度Vは、静止閾値Varretと比較され、スロットルペダル位置は、閾値PedAccSeuilbasと比較される。車両速度Vが静止閾値Varretよりも低い場合、かつスロットルペダル位置が閾値PedAccSeuilbas未満である場合には、次いで第4のステップS41が行われ、そうでない場合は第3の比較ステップS31が繰り返される。第4のステップS41の間中、送信制御信号Antibruitは、静止周期時間Δtarretの間、活性化される。次いで、定常期間Δtarretの終わりにおいて、第1の初期化ステップS1が繰り返される。しかし、スロットルペダルの圧力は、Δtarretが経過していることを待つことなく、Antibruit=0に自動的に切り換わる。
【0078】
並行して、同じ戦略が、クラッチ係合閾値Vembrayageおよびクラッチ離脱閾値VdebrayageのためのステップS22、S32、およびS42によって繰り返される。この重複は、より多数の実際の操縦状況が包含され得ることを意味する。
【0079】
このように、送信制御信号Antibruitは、運転手が動力を要請することなく車両を減速する場合にだけ送信される。次いで、送信制御信号Antibruitは、今まで通りに、送信制御手段45によって接続部50を介して送信手段43に送出される。送信手段43は、送信制御信号Antibruitが非活性化される場合には選択手段42から接続部49によって受信される値を選択し、また、車輪の後部セットへのトルクの伝達を簡単に中断するために、送信制御信号Antibruitが活性化される場合には手段51によって策定されるゼロ値を選択する。
【0080】
この戦略は、運転手が方向転換操縦時にスロットルを押し込まない場合、伝達装置の寿命を長くし、かつこの操縦時に生じる雑音を除去するために、伝達装置列が、トルクが方向を変える瞬間にアンロードされ得ることを意味する。しかし、これは、車両が減速し、かつ歩行ペースで移動しているけれども運転手がスロットルを押し込んでいる状況においては、グリップ性能および追い越し性能を促進する。
【0081】
図7は、策定手段31の実施形態の他の形態を示しており、これは、第2の基準値Cminを決定するための二次決定手段41が、車両速度Vばかりでなく係合される変速比BVも考慮に入れるという点で、図2の実施形態とは異なる。ここで、その目的は、オフロードモードにおいて、一定値Cminの適用を要求するそれらの状況を確認するのにより優れている。
【0082】
第2の値Cminを策定するために確認され得る次のような3つの異なる戦略がある。
−係合される変速比が第1の前進ギヤ比または後進ギヤであり、かつ車両が低速度で駆動されている場合、すなわち車両速度が最小閾値よりも低い場合、第2の値Cminが一定で、かつ最小定数に等しく、この最小定数は、障害物に対処する車両の能力と燃料消費の低減との間の妥協点、ならびに最適に駆動するために、スロットルペダルを押し込むことなく減速する場合に4個の車輪へトルクを分配できることを表す。最小速度閾値および最小定数は、整備の際に調整可能であり、車両の不揮発性メモリにセーブされる。この戦略の利点は、簡単さ、したがってその信頼性にある。
−ギアボックス変速比が第2のギヤ以上のギヤであり、車両が低速度または中速度、すなわち最小閾値以上であり得る最大閾値よりも低い速度で駆動されている場合、第2の値Cminは車両速度Vの関数である。この関数は、最小定数とゼロとの間の減少関数である。したがって、障害物に対処する車両の能力は保証され、燃料消費は低速度戦略より低減される。また、最大速度閾値は、整備の際に調整可能であり、不揮発性メモリにセーブされる。
−車両が高速度で駆動されている場合、すなわち車両速度Vが最大閾値よりも高い場合、第2の値Cminはゼロである。車両燃料消費は、この場合最小である。
【0083】
次いで、トルク分配基準Cons_DCoupleの第2の値Cminは、本発明の第1の実施形態の場合のように使用される。
【0084】
前述の説明の全体は、オフロードモードで駆動されている車両に関するものである。このモードは、車両に提供される唯一のモードであり得る。あるいは、これは、運転手が選択し得る多くのモードのうちの1つであり得る。図8に示される他の形態によれば、フロントアクスルシステムとリヤアクスルシステムとの間のエンジントルクを分配するための装置は、運転手が2輪駆動モード、オンロードモード、およびオフロードモードを選択することを可能にする手動スイッチ100を備える。この種の構成では、電子制御ユニットは、第1の実施形態で既に述べた要素に加えて、接続部101を介して、スイッチの状態を表す1つまたは複数の信号を受信するように構成されている。このようなスイッチの状態とは、接続部20を介して位置センサ18から送られるスロットルペダル11の位置、接続部21を介して位置センサ19から送られるクラッチペダル12の位置、速度センサ14〜17によってそれぞれ送られ、接続部22〜25によってそれぞれ送信される車輪3、4、6、および7の速度、接続部26を介して送信される、係合される変速比についてのギアボックス10からの情報などである。
【0085】
先の実施形態の場合のように、UCEは、自動車両の構成要素から受信される情報からさまざまな項目の情報を計算する計算手段30であって、オフロードモード基準を策定する手段31と、オンロードモード策定手段31Aと、2輪駆動モード用の基準を策定する手段31Bとを含む策定手段310に有線ネットワーク32を介して計算された情報を送信するための計算手段30を備えている。
【0086】
オフロードモード基準を策定する手段31は、図2および図3に示され、かつ本発明の第1の実施形態に関連して先に説明された策定手段と同一である。
【0087】
オンロードモード基準を策定する手段31Aは、車両速度V、およびフロントアクスルシステムとリヤアクスルシステムとの間の速度不一致Δωを本質的に考慮に入れている。また、これらは、アクチュエータの温度θを考慮することができ、この温度は、温度センサを用いて測定されることができるか、または、たとえば出願、国際公開第2010/007271号パンフレットに説明されるように、速度不一致Δωのヒストリーから評価され得る。策定手段31Aには、また、たとえば文献、国際公開第2009/095627号パンフレットに説明されるように、始動時に基準を最適化するための特別な手段が設けられ得る。策定手段31Aには、また、出願、国際公開第2007/138221号パンフレットに説明されるように、曲がり時にまたは制動状態の下で基準を最適化するための特別な手段が設けられ得る。
【0088】
策定手段31Bは、それ自身ゼロに等しい基準を送出する。
【0089】
UCEは、運転手の希望およびシステム運転モードの選択を確認する専用のユニット200をさらに備えている。このユニットは、コンピュータ30によって計算される手動スイッチ100の位置と、継ぎ目のない滑らかなトルク伝達指令を発生させる専用のユニット300に接続部201を介して運転モード選択信号を送出するために、場合によっては車両速度とを読み取る。トルク伝達指令を発生させるためのユニットは、策定手段31、31A、および31Bで策定される基準値を受信し、アクチュエータ13に送信されるトルク基準を送る。この特定の例では、送られるトルク基準は、ユニット200によって採られる運転モードの選択に対応する3つの基準値のうちのその1つである。2つの運転モードの間の移行期間では、トルク基準は、目標策定手段からの基準値が最初の策定手段によって計算されるものと異なる場合には乱されていないままでいるために、一時的に平滑にされる。
【0090】
それにもかかわらず、本発明は、正確に4個の駆動輪を有する車両に限定されるものではない。逆に、本発明は、いくつかの組の駆動輪を有する任意の車両に適用されることが意図され、各組の車輪は、好ましくは2個以上の任意の数の車輪を備えることができる。
【0091】
最後に、他の代替形態を作り出すために、さまざまな実施形態の技術的特徴を互いに組み合わせることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8