特許第5669846号(P5669846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5669846エネルギーシステムの故障時にハイブリッド車両を動作させる方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669846
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】エネルギーシステムの故障時にハイブリッド車両を動作させる方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/26 20060101AFI20150129BHJP
   B60W 20/00 20060101ALI20150129BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20150129BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20150129BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20150129BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   B60K6/20 330
   B60K6/20 320
   B60K6/48
   B60K6/54
   B60L11/14
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-529180(P2012-529180)
(86)(22)【出願日】2010年7月29日
(65)【公表番号】特表2013-504480(P2013-504480A)
(43)【公表日】2013年2月7日
(86)【国際出願番号】EP2010061056
(87)【国際公開番号】WO2011029668
(87)【国際公開日】20110317
【審査請求日】2012年3月14日
【審判番号】不服2014-2405(P2014-2405/J1)
【審判請求日】2014年2月7日
(31)【優先権主張番号】102009029417.1
(32)【優先日】2009年9月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル レーナー
【合議体】
【審判長】 中村 達之
【審判官】 加藤 友也
【審判官】 槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−137299(JP,A)
【文献】 特開2007−28803(JP,A)
【文献】 特開2009−179311(JP,A)
【文献】 特開平11−4507(JP,A)
【文献】 特開2003−138958(JP,A)
【文献】 特開2004−320840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W10/08-10/26
B60W20/00
B60K6/48-6/54
B60L11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーシステムの故障時にハイブリッド車両を動作させる方法であって、
当該ハイブリッド車両は、少なくとも2つの駆動体(1、2)によって協働で、または別個に駆動され、少なくとも1つの電気的な駆動体(2)が高圧エネルギーシステム(11)を電気的に充電し、当該高圧エネルギーシステムは、低圧エネルギーシステム(22、23)に電気エネルギーを供給し、
ハイブリッド車両の少なくとも1つの制御ユニット(13、14、15、17、18)に供給するために高電圧を低電圧に変換し、高圧エネルギーシステム(11)内で故障を確認すると、当該高圧エネルギーシステムを前記電気的な駆動体(2)から切り離す方法において、
前記電気的な駆動体(2)はパルス変換装置(20)を介してスイッチング装置(24)と接続されており、当該スイッチング装置によって、前記高圧エネルギーシステム(11)の正常な動作状態時には前記高圧エネルギーシステム(11)を前記電気的な駆動体(2)と接続し、前記高圧エネルギーシステム(11)の故障時には当該接続を遮断し、
前記高圧エネルギーシステム(11)を切り離した後、走行動作に必要な制御機器へのエネルギー供給を維持するために、前記電気的な駆動体(2)を、前記高圧エネルギーシステム(11)に対応する高電圧を発電する状態から、ユーザにとって安全上危険ではない電圧を発電する状態に移し、
当該安全上危険ではない電圧を、前記少なくとも1つの制御ユニット(13、14、15、17、18)に供給するために低電圧に変換する、
ことを特徴とする、エネルギーシステムの故障時にハイブリッド車両を動作させる方法。
【請求項2】
高圧エネルギーシステム(11)内で故障を確認するために、高電圧を導く部品を監視する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
高圧エネルギーシステム(11)内で故障を確認するために、高圧エネルギーシステムへのコミュニケーション接続を監視する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ユーザにとって安全上危険ではない電圧は60Vである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記電気的な駆動体(2)を電気モータとして構成し、当該電気モータはトルク制御モードから電圧制御モードへ切り換えられる、請求項1または4記載の方法。
【請求項6】
前記ハイブリッド車両の、少なくともパワーウィンドウ、空調装置またはリヤウィンドウガラスヒーターの動作を含む快適動作を担う制御ユニットを、前記高圧エネルギーシステム(11)内で故障が確認された後にオフにする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
エネルギーシステムの故障時にハイブリッド車両を動作させる装置であって、
当該ハイブリッド車両は、少なくとも2つの駆動体(1、2)によって協働で、または別個に駆動され、少なくとも1つの電気的な駆動体(2)が高圧エネルギーシステム(11)を電気的に充電し、当該高圧エネルギーシステムは、低圧エネルギーシステム(22、23)に電気エネルギーを供給し、
ハイブリッド車両の少なくとも1つの制御ユニット(13、14、15、17、18)に供給するために高電圧が低電圧に変換され、高圧エネルギーシステム(11)内で故障が確認されると、当該高圧エネルギーシステムが前記電気的な駆動体(2)から切り離される装置において、
前記電気的な駆動体(2)はパルス変換装置(20)を介してスイッチング装置(24)と接続されており、当該スイッチング装置は、前記高圧エネルギーシステム(11)の正常な動作状態時には前記高圧エネルギーシステム(11)を前記電気的な駆動体(2)と接続し、前記高圧エネルギーシステム(11)の故障時には当該接続を遮断するものであり、
前記高圧エネルギーシステム(11)を切り離した後、走行動作に必要な制御機器へのエネルギー供給を維持するために、前記電気的な駆動体(2)を、前記高圧エネルギーシステム(11)に対応する高電圧を発電する状態から、ユーザにとって安全上危険ではない電圧を発電する状態に移す手段(14、19)が設けられており、
当該安全上危険ではない電圧は、前記少なくとも1つの制御ユニット(13、14、15、17、18)に供給するために低電圧に変換される、
ことを特徴とする、エネルギーシステムの故障時にハイブリッド車両を動作させる装置。
【請求項8】
直流電圧変換器(21)が一方で前記スイッチング装置(24)と前記パルス変換装置(20)に接続されており、他方では前記低圧エネルギーシステム(22、23)に接続されている、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記直流電圧変換器(21)は、高電圧を低電圧に変換する第1の動作モードと、前記安全上危険ではない電圧を低電圧に変換する第2の動作モードとの間で切換可能である、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記パルス変換装置(20)は、自身に印加された電圧を二方向に変換できるように構成されている、請求項7記載の装置。
【請求項11】
前記電気的な駆動体(2)は電気モータとして構成されており、当該電気モータは、高圧エネルギーシステム(11)である高圧バッテリー(11)を監視するバッテリー管理制御ユニット(18)によって故障が通知された場合には、電気モータ制御ユニット(13)によって、トルク制御動作モードから、電圧制御動作モードに、安全上危険ではない電圧を供給するために、切り換えられる、請求項7記載の装置。
【請求項12】
前記低圧エネルギーシステム(22、23)は低圧バッテリー(22)を含んでおり、当該低圧バッテリーには直流電圧変換器(21)を介して低電圧が供給され、当該低圧バッテリーは前記制御ユニット(13、14,15,17、18)に、搭載電源網(23)を介して低電圧を供給する、請求項7記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーシステムの故障時にハイブリッド車両を動作させる方法に関する。ここでこのハイブリッド車両は、少なくとも2つの駆動体によって協働で、または別個に駆動され、少なくとも1つの電気的な駆動体は、高圧エネルギーシステムを電気的に充電する。この高圧エネルギーシステムは、低圧エネルギーシステムに電気エネルギーを供給する。ハイブリッド車両の少なくとも1つの制御ユニットへ供給するために、高電圧が低電圧に変換される。さらに本発明は、この方法を実施するための装置に関する。
【0002】
ハイブリッド駆動構造を備えた車両は内燃機関を有しており、第2の駆動体として主に少なくとも1つの電気機械を有している。従って駆動トルクは、ハイブリッド車両の走行動作中、2つの駆動体によって調達される。電気的な駆動部は、エネルギー蓄積部と接続されている。エネルギー蓄積部は、電気的な駆動部に電気エネルギーを供給する。内燃機関が牽引モードにある場合には、電気的な駆動部はジェネレータとして作動し、これによってエネルギー蓄積部に電気エネルギーが供給され、エネルギー蓄積部に再びエネルギーが充電される。
【0003】
電気的な駆動部を動作させるためには、高い電圧が必要である。これはエネルギー蓄積部として形成されている高圧バッテリーによって供給される。高圧エネルギーシステムから、低圧エネルギーシステムに、DC/DC変換器を介してエネルギーが供給される。
【0004】
近年では、ハイブリッド車両の製造時にスタータが省かれ、内燃機関はこの電気機械によって始動される。
【0005】
ハイブリッド車両の高圧エネルギーシステムは常に、高圧バッテリーの充電状態に関してのみ監視されるのではなく、高圧エネルギーシステムの機械的なカバー部が動いているか否か、ないしは開放されているか否かに関しても検査される。カバー部が動いている、ないしは開放されている場合には、高圧エネルギーシステムは迅速に、安全上の考慮からオフされ、これによって、生じ得る火花フラッシュオーバーが阻止される、またはエネルギーシステムでの操作時に操作者が保護される。しかしこれによって結果的に、電気機械にもはや高電圧が供給されなくなり、高圧バッテリーが再充電されなくなる。従って、時間が経つにつれて、ハイブリッド車両の制御機器にエネルギーを供給する低圧エネルギーシステムのバッテリーが空になる。制御機器のエネルギー供給が行われなくなると、ハイブリッド車両はその少し後に走行しなくなる。
【0006】
本発明の開示
請求項1の特徴部分に記載された構成を有する、本発明による、エネルギーシステム故障時のハイブリッド車両動作方法は、次のような利点を有している。すなわち、低圧エネルギーシステムを介した制御機器のエネルギー供給が電気的な駆動体によって維持される、という利点を有している。高圧エネルギーシステムを切り離した後に、電気的な駆動体は、ユーザにとって安全上危険ではない電圧を形成する状態に移される。この安全上危険ではない電圧は少なくとも1つの制御ユニットの給電のために低圧電圧に変換される。これらのことによって、高圧エネルギーシステムの故障時でも、ハイブリッド車両の緊急動作が常に可能となる。ジェネレータ動作において電気的に作動する電気機械は、低圧エネルギーシステムに対するエネルギー供給のために使用される。これによって、高圧エネルギーシステムの故障時にも充分にエネルギーが供給され、ハイブリッド車両の走行動作に必要な全ての制御機器がこの状態においても機能できる状態に保たれる。
【0007】
有利には、高圧エネルギーシステム内の故障を確認するために、高い電圧を導く部品、殊に、その機械的なカバー部が観察される。「カバーオープン識別」とも称される、機械的なカバー部の継続的な観察によって、迅速かつ確実に、高圧エネルギーシステム内の故障が識別される。小さいずれによっても、高圧エネルギーシステムはオフされ、運転者および車両が危険にさらされることがなくなる。それにもかかわらず、本発明の方法によって、常に充分にエネルギーが供給され、ハイブリッド車両の立ち往生が確実に阻止される。
【0008】
ある発展形態では、高圧エネルギーシステム内での故障を確認するために、高圧エネルギーシステムへのコミュニケーション接続、殊にバス接続が監視される。これによって、高圧エネルギーシステムへのコミュニケーション接続、ないしは高圧エネルギーシステム内でのコミュニケーション接続の遮断が確実に識別され、これに続いて、高圧エネルギーシステムがオフされる場合には、電気的な機械が、低圧エネルギーシステムのエネルギー供給部として確実に始動される。
【0009】
ある実施形態では、操作者にとって安全上危険ではない電圧は約60Vである。これによって、電気機械のシステムないしはその周辺部分で活動し得る運転者が損傷する危険が確実に無くなる。
【0010】
有利には電気的な駆動体は電気モータとして形成される。これはトルクによって制御されるモードから、電圧によって制御されるモードへと切り換えられる。この電圧制御によって、確実に、約60Vの安全上危険ではない電圧値が継続的に維持され、低圧エネルギーシステムの給電が保証される。
【0011】
1つの実施形態では、高圧エネルギーシステム内の故障検出時に、ハイブリッド車両の快適走行を担う制御ユニットがオフされる。これによって、ハイブリッド車両の走行動作に必要な全ての制御ユニットに確実にエネルギーが供給されることが保証される。快適動作のため、例えばパワーウィンドウ、空調装置またはリアウィンドウガラスヒーターのための制御機器は、14Vの低圧に変換される300Vの電圧を供給する、高圧エネルギーシステムが再び動作の準備ができている状態になるまで、低圧エネルギーシステムに負荷をかけなくなる。
【0012】
本発明の別の発展形態は、エネルギーシステムの故障時にハイブリッド車両を動作させる装置に関する。ここでこのハイブリッド車両は、少なくとも2つの駆動体によって協働で、または別個に駆動され、少なくとも1つの駆動体は高圧エネルギーシステムを電気的に充電し、この高圧エネルギーシステムは低圧エネルギーシステムに電気エネルギーを供給する。この際に高電圧は、ハイブリッド車両の少なくとも1つの制御ユニットへの供給のために低電圧に変換される。高圧エネルギーシステム内で故障が確認されると、これは電気的な駆動体から切り離される。高圧エネルギーシステムの故障時にも、低圧エネルギーシステムを介した制御機器のエネルギー供給を維持するために、手段が設けられている。この手段は、高圧エネルギーシステムの切り離し後に、電気的な駆動体を、ユーザに対して安全上危険ではない電圧を形成する状態にする。この安全上危険ではない電圧は、少なくとも1つの制御ユニットに供給されるために、低い電圧に変換される。電気的な機械が安全上危険ではない電圧を形成し、ここから低圧エネルギーシステムに充分にエネルギーが供給されることによって、ハイブリッド車両の緊急動作が常に可能になる。なぜなら、走行動作に必要な制御ユニットにはエネルギーが充分に供給されるからである。
【0013】
有利には電気的な駆動体は、パルス変換装置を介して、スイッチング装置と接続されている。これは、高圧エネルギーシステムの障害の無い動作状態においては高圧エネルギーシステムを電気的な駆動体と接続し、高圧エネルギーシステムの故障時にはこの接続を遮断する。高圧エネルギーシステム内の故障検出時に、高圧バッテリー管理のための制御ユニットによって駆動制御される簡単なスイッチング装置によって、故障した高圧エネルギーシステムが、ハイブリッド車両のエネルギー供給網から容易に切り離される。しかも大きな構成上の手間および経費はかからない。
【0014】
1つの実施形態では、直流電圧変換器の一方がスイッチング装置およびパルス変換装置へと続いており、他方が、低圧エネルギーシステムと接続されている。直流電圧変換器はDC/DC変換器、すなわち、第1の値の直流電圧を第2の値の直流電圧に変換する変換器である。
【0015】
1つの発展形態では、この直流電圧変換器は、高電圧を低電圧に変換する第1の動作モードと、安全上危険ではない電圧を低電圧に変換する第2の動作モードとの間で切り換え可能である。従って、直流電圧変換器を僅かに修正することによって充分に、2つのモードにおける動作を保証することができる。これによって、付加的な素子を省くことができる。
【0016】
有利にはパルス変換装置は次のように構成されている。すなわち、これが自身に印加されている電圧を2つの方向において変換できるように構成されている。従ってパルス変換装置は、電気的な駆動体によって供給される交流電圧を、高圧エネルギーシステム内に供給される直流電圧に変換し、またはその逆も行う。パルス変換装置も、それ自体、ハイブリッド車両の電気システム内に既に設けられている素子であり、ハイブリッド車両の継続的な緊急動作にも使用される。しかも、付加的な素子が準備される必要はない。
【0017】
1つの実施形態では電気的な駆動体は電気モータとして構成されている。これは、高圧エネルギーシステム、殊に高圧バッテリーを監視するバッテリー管理制御ユニットによる故障通知時には、電気モータ制御ユニットによって、トルク制御動作モードから、安全上危険ではない電圧を供給する電圧制御動作モードに切り換えられる。このようにして電気モータは、低圧搭載電源網に対するエネルギー源として作動する。従ってハイブリッド車両の継続的な前進運動が可能になる。
【0018】
1つの発展形態では、低圧エネルギーシステムは、低圧バッテリーを含んでいる。これには直流電圧変換器を介して低電圧が供給され、低電圧搭載電源網を介して、制御ユニットに低い電圧を供給する。低電圧バッテリーはここで一定に、ハイブリッド車両の制御ユニットの給電に必要な14Vの直流電圧に充電される。
【0019】
本発明には多くの実施形態がある。このうちの1つを、図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】パラレルハイブリッド駆動部の概略部
図2】従来技術に従った、エネルギーシステム内へのハイブリッド駆動部の組み込み
図3図2に示されたエネルギーシステムの、本願発明による構成の実施例
図4】本発明の方法をあらわす概略的なフローチャート
【実施例】
【0021】
同じ特徴には、同じ参照番号が付与されている。
【0022】
図1は、パラレルハイブリッド駆動部を備えた車両の基本図を示している。このハイブリッド駆動部は、第1の駆動ユニットである内燃機関1と、第2の駆動ユニットである電気モータ2とによって形成されている。
【0023】
内燃機関1は、ドライブトレーン3を介して、ギア4と接続されている。ここでこのギアは、同じように、ホイール軸6上のディファレンシャル5を介して、ホイール7を駆動させる。
【0024】
電気モータ2は、内燃機関1のシャフト8上に配置されており、これによって同様に、ギア4と接続されているドライブトレーン3とつながっている。ギア4とドライブトレーン3との間には、始動クラッチ12が配置されている。始動クラッチは、車両の車両運動を開始するために、ドライブトレーン3をギアと接続する。従って電気モータ2は、ホイール7の駆動および車両の総トルクに寄与する。電気モータ2および内燃機関1は、分断クラッチ9を介して相互に接続されている。この分断クラッチ9は、開放状態において、電気モータ2のみを介した車両の駆動を許容する。また、分断クラッチ9の閉鎖状態では、内燃機関1も電気モータ2も、車両の駆動に寄与する。
【0025】
さらに、電気モータ2は、パワーエレクトロニクス10を介して、高圧バッテリー11と接続されている。この高圧バッテリーは、電気モータ2に、そのモーター動作時に電気エネルギーを供給する。択一的に、高圧バッテリー11は、電気モータのジェネレータ動作時に、電気モータからエネルギー供給される。すなわち、高圧バッテリー11は電気モータ2を介して充電される。
【0026】
ハイブリッド車両の各ユニットは、制御機器を介して開ループ制御ないしは閉ループ制御される。従って内燃機関1は、エンジン制御機器13によって監視される。また電気モータ2は、電気モータ制御機器14によって開ループ制御される。ギア制御機器15は、始動クラッチ12とギア4を監視する。また、ホイール7に配置されているブレーク16は、ブレーキ管理制御機器17によって駆動制御される。高圧バッテリー11および高圧バッテリーに接続されている、ハイブリッド車両の高圧エネルギーシステムも、バッテリー管理制御機器18によって監視および開ループ制御される。エンジン制御機器13、電気モータ制御機器14、ギア制御機器15、ブレーキ管理制御機器17およびバッテリー管理制御機器18はそれぞれ、ユニット1、2、3、4、7、11、12の実際状態を検出するセンサS、およびユニット1、2、3、4、7、11、12を駆動制御するアクチュエータAと接続されており、車両制御システム19につながっている。車両制御システムは、内燃機関1、電気モータ2、ギア4、ホイール7、高圧バッテリー11および始動クラッチ12等の個々のユニット内の経過を調整する。
【0027】
電気モータ2を動作させるために、高圧バッテリー11から供給される高い電圧が必要である。この高い電圧は約300Vであり、14Vの低い電圧に変換される。これは、図2に関連して説明される。
【0028】
図2は、従来技術の、ハイブリッド車両のエネルギーシステム内へのハイブリッド駆動部の組み込みを示している。電気モータ2は、パルス変換装置20を介して、高圧バッテリー11と接続されている。パルス変換装置20は、高圧バッテリー11から供給された300Vの直流電圧を、モーターとしての動作のために電気モータ2に供給される交流電圧に変換する。この動作状態では、電気モータ2は、ハイブリッド車両の駆動に寄与する。電気モータ2が電気モータ制御機器14によってジェネレーター動作に切り換えられると(これはハイブリッド車両の制動過程時である)、電気モータ2は、交流電圧を供給する。この交流電圧は、パルス変換装置20によって再び直流電圧に変換され、高圧バッテリー11に供給され、これの負荷を軽減する。
【0029】
高圧バッテリー11も、パルス変換装置20も、DC/DC変換器21と接続されている。このDC/DC変換器は、高圧バッテリー11から供給された300Vの直流電圧を、約14Vの低い電圧に変換する。これによって低圧バッテリー22が充電される。この低圧バッテリーは、ハイブリッド車両の低圧エネルギーシステム内に配置されており、搭載電源網23を介して、ハイブリッド車両の全ての制御機器に低電圧を供給する。車両の快適機能を制御する、詳細に示されていない制御機器の他に、図1に示されている、エンジン制御機器13、電気モータ制御機器14、ギア制御機器15、ブレーキ管理制御機器17およびバッテリー管理制御機器18もこれに属する。
【0030】
安全上の理由から、特に、高電圧からの保護のために必ず必要な「カバーオープン識別」時に、高圧エネルギーシステム内に故障があることが識別されると、図3に示されているように、高圧バッテリー11とパルス変換装置20との間に配置されているスイッチ24が開放され、高圧バッテリー11はハイブリッド車両のエネルギーシステムから切り離される。この場合には、低圧エネルギーシステムに対して電圧はもはや供給されない。しかし、走行動作に必要な制御機器、例えばエンジン制御機器13、電気モータ制御機器14、ギヤ制御機器15、ブレーキ管理制御機器17およびバッテリー管理制御機器18に対するエネルギー供給を維持するために、電気モータ2がエネルギー源として用いられる。電気モータ2はジェネレーター動作で作動し、60Vの交流電圧を供給する。この電圧は、パルス変換装置20によって60Vの直流電圧に変換される。スイッチ24が開放されているので、この60Vの直流電圧がDC/DC変換器21に印加される。このDC/DC変換器21は、次のように構成されている。すなわち、高圧バッテリー11によって供給された300Vの電圧を変換するだけでなく、電気モータ2およびパルス変換装置21によって供給された60Vを14Vの低電圧に変換することもできるように構成されている。14Vのこの低電圧は、低圧バッテリー22の充電のために用いられる。
【0031】
電気モータ2によって供給される電圧は60Vに制限されている。従ってこれは危険ではなく、ハイブリッド車両のエネルギーシステムに従事する人間に危害が与えられることはない。
【0032】
制御機器13、14、15、17、18に対する補助エネルギー供給を行うための経過は、図4に基づいて、詳細に説明される。ブロック101では、バッテリー管理制御機器18がハイブリッド車両の高圧エネルギーシステムを監視する。ここでは、高圧バッテリー11の充電状態だけでなく、CANバスシステムとして形成されているコミュニケーションシステムも、高圧バッテリーシステムへの遮断に関して監視される。さらに、高圧バッテリーシステムのカバー部が検査される。これは「カバーオープン識別」(cover open)として知られており、きわめて小さい不規則性も識別される。このような不規則性は、高圧エネルギーシステム内に障害を生じさせることがあり、ハイブリッド車両の安全性を脅かし得る。
【0033】
バッテリー管理制御機器18によって故障が識別されると、バッテリー管理制御機器はブロック102において、図3に示されているように、高圧バッテリーをオフし、高圧バッテリー11とパルス変換装置20との間のスイッチ24を開放する。さらにバッテリー管理制御機器18は、コミュニケーション線路に故障が無い場合には、高圧エネルギーシステム内の障害に関する情報を、車両管理システム19に伝達する。コミュニケーション線路が故障を有している場合には、これは車両管理システム19によって識別される。
【0034】
ブロック103内では、バッテリー管理システムの指示に従って、DC/DC変換器21が動作モード「変換300V→14V’」から動作モード「変換60V→14V’」へと切換られる。
【0035】
車両管理システム19は、ブロック104において、命令を電気モータ制御機器14に出力する。この命令は、車両の駆動に寄与している場合に電気モータ2が使用しているトルク制御モードから、電圧制御モードへと電気モータ2を移すという命令である。この電圧制御モードでは、安全上危険ではない60Vの目標電圧に閉ループ制御される。これは次に14Vの低い電圧に変換される。ブロック105では、14Vの電圧が供給されるので、ハイブリッド車両の高圧エネルギーシステムが故障した場合にも、ハイブリッド車両は継続的に緊急走行に移される。緊急走行時には、高い電圧を用いずに、さらなる走行が可能である。
図1
図2
図3
図4