特許第5669848号(P5669848)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5669848クロム及びコバルトを有さない黒色化成被覆を製造するための処理溶液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669848
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】クロム及びコバルトを有さない黒色化成被覆を製造するための処理溶液
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/48 20060101AFI20150129BHJP
   C23C 22/34 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   C23C22/48
   C23C22/34
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-530209(P2012-530209)
(86)(22)【出願日】2010年9月8日
(65)【公表番号】特表2013-505362(P2013-505362A)
(43)【公表日】2013年2月14日
(86)【国際出願番号】EP2010063178
(87)【国際公開番号】WO2011036058
(87)【国際公開日】20110331
【審査請求日】2013年9月5日
(31)【優先権主張番号】09171140.8
(32)【優先日】2009年9月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】300081877
【氏名又は名称】アトテツク・ドイチユラント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100167852
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ズデネク サザノフ
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス ベドルニク
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン シュヴァーツ
(72)【発明者】
【氏名】ビェアン ディングヴェアト
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−328483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/00 − 22/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒く、クロム及びコバルトを有さない化成層を製造するための処理溶液であって、
a)少なくとも1つの、式M’Ocd+[式中、cは1〜3の整数であり、かつdは1〜3の整数である]のオキソカチオンからなる群から選択される水溶性金属錯カチオン、及び/又は式M’’Xab-[式中、XはF,Cl、Br及びIからなる群から選択され、aは3〜6の整数であり、bは1〜4の整数であり、かつM’及びM’’はMn、V、Ti、W、Mo、Zr、B、Si及びAlからなる群から選択される]のハロゲン錯イオン、
b)少なくとも1つの酸化剤
c)式(1)及び(2)
HS−R1−COOR2 (1)
5OOC−R3−S−S−R4−COOR6 (2)
[式中、R1は、直鎖及び分枝鎖のC1〜C8−アルキル、及びアリールから選択され、
2は、H、NH4+、Li+、Na+、K+、並びに直鎖及び分枝鎖のC1〜C4−アルキルからなる群から選択され、
3及びR4は、独立して、直鎖及び分枝鎖のC1〜C8−アルキル、及びアリールからなる群から選択され、かつ
5及びR6は、独立して、H、NH4+、Li+、Na+、K+、並びに直鎖及び分枝鎖のC1〜C4−アルキルからなる群から選択される]の化合物からなる群から選択される、少なくとも1つの有機硫黄化合物
を含み、前記酸化剤が過酸化物である、処理溶液。
【請求項2】
前記M’が、Mn、V、Ti、W、Mo及びZrからなる群から選択される、請求項1に記載の処理溶液。
【請求項3】
前記M’’が、B、Al、Si、Ti及びZrからなる群から選択される、請求項1に記載の処理溶液。
【請求項4】
式M’Ocd+の少なくとも1つのオキソカチオン及び式M’’Xab-の少なくとも1つのハロゲン錯イオンを含有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の処理溶液。
【請求項5】
前記酸化剤が、過酸化水素、有機過酸化物、アルカリ金属過酸化物、過ホウ酸塩、過硫酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の処理溶液。
【請求項6】
前記式(1)及び(2)の化合物の基が、以下、
1がC1〜C2−アルキルであり、かつ
3及びR4が、独立して、C1〜C2−アルキルの中から選択される
の中から選択される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の処理溶液。
【請求項7】
前記R3及びR4が同一である、請求項6に記載の処理溶液。
【請求項8】
前記有機硫黄化合物が、チオグリコール酸、ジチオジグリコール酸、チオ乳酸及び3−チオプロピオン酸からなる群から選択される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の処理溶液。
【請求項9】
前記過酸化物が過酸化水素である、請求項に記載の処理溶液。
【請求項10】
前記式M’Ocd+の少なくとも1つのオキソカチオンが、MnO+、VO3+、VO2+、WO22+、MoO22+、TiO2+、ZrO2+及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の処理溶液。
【請求項11】
前記式M’’Xab-の少なくとも1つのハロゲン錯イオンが、SiF62-、TiF62-及びZrF62-からなる群から選択される、請求項1から10までのいずれか1項に記載の処理溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
種々の方法が、腐食性環境の影響に対して金属材料表面を保護するための先行技術において利用可能である。他の金属、例えば亜鉛及びそれらの合金の被覆で保護されるべき金属加工物の被覆は、産業において普及し確立された方法である。被覆金属の腐食を低減し、又はそれをできる限り長期間妨げるために、たいてい、特に陰極を保護するベースコート金属、例えば亜鉛及びそれらの合金上に化成層(conversion layer)を使用する。それらの化成層は、ベースコート金属又はそれらの合金の生成物と、広いpH範囲にわたって水性媒体中で不溶性である反応溶液との反応である。かかる化成層の例は、リン酸処理層及びクロメート処理層である。
【0002】
クロメート処理層の場合において、処理されるべき表面は、クロム(VI)イオンを含む酸性溶液中に浸漬される。問題の表面が、例えば亜鉛表面である場合に、亜鉛の一部は溶解する。ここで行われる還元状態下で、クロム(VI)は、特に水素の発生の結果としてよりアルカリ性である表面膜中で特にクロム(III)水酸化物又は緩やかに溶解するμ−オキソ架橋したもしくはμ−ヒドロキソ架橋したクロム(III)錯体として沈澱されるクロム(III)に還元される。緩やかに溶解する亜鉛クロム(VI)を同時に形成する。全体的に、電解液による腐食作用に対して非常に効果的に保護する、閉鎖的な、不浸透性の化成層は、亜鉛表面上で形成される。クロム(VI)化合物は、急性毒性だけでなく、高い発癌可能性を有し、その結果これらの化合物に関連する方法に関する置き換えが必須である。
【0003】
三価クロム化合物の種々の錯体を使用する多数の方法が、六価クロム化合物を使用するクロム処理方法のための置き換えとして新たに確立されている。
【0004】
三価クロム化合物を基礎とする方法に対する変法として、先行技術も、化成層を形成するために他の金属に頼った方法を記載している。特許出願WO 2008/119675は、無色層及びわずかに虹色の層を導く、オキソカチオン及び複合ハロゲンイオンを含むクロム及びコバルトを有さない化成層を製造するための処理溶液を記載している。
【0005】
しかしながら、先行技術において記載されているこれらのクロム及びコバルトを有さない化成層の欠点は、該化成層が、従来、干渉現象に基づく色にのみ存在することである。これは、視覚的に透明な、青みを帯びた又は着色された虹色の、及び黄色の層を含む。
【0006】
Cr(III)に基づく不動態化においても使用されるような染料は、主に、クロムを有さない化成層の場合においても使用されうる。
【0007】
しかしながら、Cr(III)を基礎とする化成層の場合において、薄い膜厚(≦500nm)の結果として、黒として感知されるべき色のための可視光の全ての波長にわたって、表面によって反射される光の吸収が十分ではない。
【0008】
Cr(III)を含有する化成層に基づく黒く着色する方法の場合において、遷移金属、例えばコバルト又は鉄が、一般的に、化成層中にその場で微粉砕された黒色顔料を製造するために、不動態化に対して、Co(II)又はFe(II)もしくはFe(III)として添加される。
【0009】
黒い不動態化のような製造のための処理溶液は、例えばEP 1 970 470 A1において記載されている。かかる処理溶液は、Cr3+及びCo2+イオンに加えて、硝酸イオン及び少なくとも2つの異なるカルボン酸を含む。
【0010】
鉄は、系の腐食保護が鉄を含有する顔料の取り込みによって著しく弱められる欠点を有する。
【0011】
コバルトは、より良い腐食保護を有する系を可能にするが、特定の条件下で健康の点から問題がある欠点を有する。
【0012】
特許文献JP 2005−206872は、黒い不動態化を製造するためのCr6+イオンを有さない処理溶液を記載しており、該溶液は、Cr3+イオンと共に、硫酸イオン、塩化物イオン、塩化物及び硝酸塩のオキソ酸のイオン、並びに硫黄化合物からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるイオンを含有する。この方法において製造される黒い不動態化層は、クロムイオンを含有する。
【0013】
文献JP 2005−187925は、Cr3+イオン、さらに金属イオン及び有機硫黄化合物を含有する、着色した不動態化層を製造するための処理溶液を記載している。この方法において製造される黒い不動態化層は、クロムイオンを含有する。
【0014】
文献JP 2005−187838は、同様に、黒い不動態化層を製造するための水性処理溶液を記載しており、該溶液は、少なくともNi及びCo、並びに硫黄化合物からも選択されるイオンを含有する。この方法において製造される黒い不動態化層は、ニッケル及び/又はコバルトイオンを含有する。
【0015】
発明の目的
本発明の目的は、腐食保護を増加するための、及び亜鉛含有表面を黒く着色するための、反応溶液及び方法を提供することであり、該溶液は、毒性のある金属、例えばクロム及びコバルトを有さない。
【0016】
装飾的に高品質の黒色の印象を有するクロム及びコバルトを有さない不動態化の、経済的利点と職業衛生学の利点とを組み合わせる方法が、従って望ましい。
【0017】
発明の説明
本発明は、クロムイオン及びコバルトイオンを有さない水性の酸マトリックス中で硫黄を含有する化合物の使用に基づく。かかる処理溶液は、亜鉛及びそれらの合金上に製造されるべき黒い化成層を可能にする。
【0018】
本発明の処理溶液は、
a)少なくとも1つの、式M’Ocd+、[式中、cは1〜3の整数であり、かつdは1〜3の整数である]のオキソカチオンからなる群から選択される複合水溶性金属カチオン、及び/又は式M’’Xab-、[式中、XはF,Cl、Br及びIからなる群から選択され、aは3〜6の整数であり、bは1〜4の整数であり、かつM’及びM’’はMn、V、Ti、W、Mo、Zr、B、Si及びAlからなる群から選択される]の複合ハロゲンイオン、
b)過酸化水素、有機過酸化物、アルカリ金属過酸化物、過ホウ酸塩、過硫酸塩、硝酸塩、有機ニトロ化合物、有機N−オキシド及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの酸化剤
c)式(1)及び(2)
HS−R1−COOR2 (1)
5OOC−R3−S−S−R4−COOR6 (2)
[式中、R1は、直鎖及び分枝鎖のC1〜C8−アルキル、アリールの中から選択され、C1〜C2−アルキルが好ましく、
2は、H、適したカチオン(NH4+、Li+、Na+、K+)、並びに直鎖及び分枝鎖のC1〜C4−アルキルから選択され、
3及びR4は、独立して、直鎖及び分枝鎖のC1〜C8−アルキル、アリールの中から選択され、その際基R3及びR4は、特に有利には同一であり、それぞれC1〜C2−アルキルであり、かつ
5及びR6は、独立して、H、適したカチオン(NH4+、Li+、Na+、K+)、並びに直鎖及び分枝鎖のC1〜C4−アルキルの中から選択され、その際、基R5及びR6は有利には同一である]の化合物からなる群から選択される、少なくとも1つの有機硫黄化合物
を含む。
【0019】
前記式(1)及び(2)の適した硫黄化合物の添加は、クロム、鉄、コバルト及びニッケルの不在下でさえ達せられるべき、化成層の黒い着色を可能にする。このタイプの化合物のリストは網羅的ではなく、かつ、特に、前記式に対応する適した化合物を加水分解等によって、反応溶液を製造するために使用されるべき溶液の条件下で、又は反応溶液又は金属表面との反応の条件下で、遊離することができる化合物、例えば塩及びそれら化合物のエステルを含む。最も好ましい硫黄化合物は、チオグリコール酸、3−チオプロピオン酸、ジチオグリコール酸及びチオ乳酸である。
【0020】
前記式(1)及び(2)の硫黄化合物は、0.2g/l〜500g/l、有利には1g/l〜100g/l、及び最も有利には3g/l〜20g/lの量で本発明の処理溶液に添加される。
【0021】
式M’Ocd+のオキソカチオンは、有利には、それらの硝酸塩、硫酸塩及びハロゲン化物の形で本発明の処理溶液に添加され、オキソカチオンは、処理溶液中で加水分解によって形成される。例えば、硫酸ジルコニル(ZrO(SO4))は、ZrO2+の源として使用される。
【0022】
適した金属M’の例は、Mn、V、W、Mo、Ti及びZrである。適したオキソカチオンの例は、MnO+、VO3+、VO2+、WO22+、MoO22+、TiO2+、ZrO2+及びそれらの混合物である。特に好ましいオキソカチオンは、チタン及びジルコニウムのものである。オキソカチオンは、0.02g/l〜50g/l、有利には0.05g/l〜10g/l、及び最も有利には0.1g/l〜5g/lの量で、処理溶液に添加される。
【0023】
式M’’Xab-の複合ハロゲンイオンは、それらの金属塩、有利にはそれらのアルカリ金属塩、特に有利にはそれらのナトリウム及びカリウム塩の形で添加される。BF4-、TiF62-、ZrF62-、SiF62-、AlF63-及びそれらの混合物からなる群から選択される式M’’Xab-の複合ハロゲンアニオンが好ましい。SiF62-、TiF62-及びZrF62-の複合ハロゲンイオンが特に好ましい。式M’’Xab-の複合ハロゲンアニオンは、0.02g/l〜100g/l、有利には0.05g/l〜50g/l、及び最も有利には0.1g/l〜10g/lの量で、本発明の処理溶液に添加される。
【0024】
本発明の処理溶液は、式M’Ocd+[式中、M’はMn、V、Ti、W、Mo、Zr]の少なくとも1つのオキソカチオン、又は式M’’Xab-の少なくとも1つの複合ハロゲンイオンを含んでよい。本発明のさらなる実施態様において、処理溶液は、少なくとも1つのオキソカチオン及び少なくとも1つの複合ハロゲンイオンの双方の混合物を含有する。この実施態様は、金属層の増加させた耐腐食性をもたらすことから好ましい(実施例3〜7を参照)。
【0025】
本発明の処理溶液における少なくとも1つの酸化剤は、過酸化水素、有機過酸化物、アルカリ金属過酸化物、過硫酸塩、過ホウ酸塩、硝酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましい酸化剤は、過酸化水素である。少なくとも1つの酸化剤は、0.2g/l〜100g/l、有利には1g/l〜50g/l、及び最も有利には5g/l〜30g/lの量で、処理溶液に添加される。
【0026】
本発明の処理溶液のさらに好ましい一実施態様において、そのpHは、酸又は塩基によって、0.5〜5.0の範囲、有利には1.0〜3.0の範囲、特に有利には1.3〜2.0の範囲の値に調整される。HNO3又はH2SO4が有利には酸として使用され、かつ水酸化ナトリウムが有利には塩基として使用される。
【0027】
本発明の処理溶液は、処理溶液での金属表面の直接的な処理によって、処理溶液中への被覆されるべき基材の浸漬によって、又は処理溶液で基材をフラッシングすることによって、腐食保護層を製造するために使用される。浸漬又はフラッシングによる使用は、有利には、20〜100℃、有利は30〜70℃、より有利には40〜60℃、及び特に有利には約50℃の範囲の処理溶液の温度で実施される。処理溶液中で又は処理溶液で被覆されるべき基材の浸漬又はフラッシングによって腐食保護層を製造するための最も適した処理時間は、種々のパラメータの関数として、例えば処理溶液の組成、処理温度、金属表面のタイプ、及び所望される腐食保護の程度として変動し、通常の実験によって決定されうる。一般に、処理時間は5〜180秒の範囲内、有利には30〜120秒の範囲内である。
【0028】
この方法で堆積された黒い化成層は、亜鉛を含有する表面上での亜鉛腐食生成物の形成に基づく、良好な腐食保護を製造する。
【0029】
製造された黒い化成層によってもたらされる腐食保護におけるさらなる増加を達成するために、記載された化成層は、通常の後処理工程を受けてよい。前記後処理工程は、例えば、ケイ酸塩、有機官能性シラン及びナノサイズSiO2並びにポリマー分散液によるシーリングを含む。
【0030】
続く処理によって製造されたシーリング層は、下にある化成層のバリヤー作用を改良し、かつ従って、さらに、全体の被覆系によってもたらされる腐食保護を改良する。
【0031】
実施例
比較例
硫酸ジルコニル0.25質量%の溶液800mlを、ヘキサフルオロチタン酸カリウム13.6g/lと、撹拌しながら混合し、その混合物を30分間勢いよく撹拌する。その溶液を、続いて1000mlにする。該溶液を水で1:4の比(溶液1l+水3l)で希釈し、続いて過酸化水素溶液1l(10質量%)に添加する。
【0032】
そのpHを、NaOHによって50℃でpH1.6に調整する。
【0033】
低合金鋼のシートを、適した前処理の後に、アルカリ性の亜鉛メッキ電解液(亜鉛12g/l及びNaOH120g/lを含む、Atotech Deutschland GmbH製のProtolux(登録商標)3000)中で亜鉛10μmで被覆する。
【0034】
亜鉛メッキ後に、その金属シートを洗浄し、前記で製造した処理溶液中に直接浸漬する。緩やかに撹拌しながら60秒の処理時間後に、その金属シートを取り出し、洗浄し、そして乾燥する。それは、多色の虹色の表面を有する。
【0035】
実施例1
化成層を製造するための比較例1において記載されている処理溶液を、チオグリコール酸10g/lと混合し、そしてそのpHを、NaOHによってpH1.6(50℃)に調整する。
【0036】
低合金鋼のシートを、適した前処理の後に、アルカリ性の亜鉛メッキ電解液(亜鉛12g/l及びNaOH120g/lを含む、Atotech Deutschland GmbH製のProtolux(登録商標)3000)中で亜鉛8〜15μmで被覆する。
【0037】
亜鉛メッキ後に、その金属シートを洗浄し、前記で製造した処理溶液中に直接浸漬する。緩やかに撹拌しながら60秒の処理時間後に、その金属シートを取り出し、洗浄し、そして乾燥する。それは、濃い黒い表面を有する。
【0038】
実施例2
化成層を製造するための比較例1において記載されている処理溶液を、3−チオプロピオン酸11g/lと混合し、そしてそのpHを、NaOHによってpH1.6(50℃)に調整する。
【0039】
低合金鋼のシートを、適した前処理の後に、アルカリ性の亜鉛メッキ電解液(Protolux(登録商標)3000)中で亜鉛10μmで被覆する。
【0040】
亜鉛メッキ後に、その金属シートを洗浄し、前記で製造した処理溶液中に直接浸漬する。緩やかに撹拌しながら60秒の処理時間後に、その金属シートを取り出し、洗浄し、そして乾燥する。それは、濃い黒い表面を有する。
【0041】
実施例3
化成層を製造するための比較例1において記載されている処理溶液を、ジチオジグリコール酸11g/lと混合し、そしてそのpHを、NaOHによってpH1.6(50℃)に調整する。
【0042】
低合金鋼のシートを、適した前処理の後に、アルカリ性の亜鉛メッキ電解液(Protolux(登録商標)3000)中で亜鉛10μmで被覆する。
【0043】
亜鉛メッキ後に、その金属シートを洗浄し、前記で製造した処理溶液中に直接浸漬する。緩やかに撹拌しながら60秒の処理時間後に、その金属シートを取り出し、洗浄し、そして乾燥する。それは、濃い黒い表面を有する。
【0044】
この方法で製造した表面を有する金属シートを、80℃で、熱対流炉中で、15分間乾燥し、そして腐食保護を、ISO 9227 NSSに従った塩水噴霧試験で試験する。該金属シートは、48時間、亜鉛腐食保護が>5%の面積に対して生じるまで、試験に耐えた。
【0045】
実施例4
実施例3に従って製造した表面を有する金属シートを洗浄し、ケイ酸塩を含有するポリウレタン分散液(Atotech Deutschland GmbH製のCorrosil(登録商標) Plus 501)を含むシール溶液中に浸漬し、そして80℃で、熱対流炉中で15分間乾燥する。腐食保護を、ISO 9227 NSSに従った塩水噴霧試験で試験した。該金属シートは、120時間、亜鉛腐食保護が>5%の面積に対して生じるまで、試験に耐えた。腐食保護を増加するために通常使用したシール溶液を、従って、本発明によるクロム及びコバルトを有さない黒い化成層上で使用することもできる。
【0046】
実施例5
変換層を製造するための比較例1において記載されている処理溶液を、チオ乳酸13g/lと混合し、そしてそのpHを、NaOHによってpH1.6(50℃)に調整する。
【0047】
低合金鋼のシートを、適した前処理の後に、アルカリ性の亜鉛メッキ電解液(Protolux(登録商標)3000)中で亜鉛10μmで被覆する。
【0048】
亜鉛メッキ後に、その金属シートを洗浄し、前記で製造した処理溶液中に直接浸漬する。緩やかに撹拌しながら60秒の処理時間後に、その金属シートを取り出し、洗浄し、そして乾燥する。それは、濃い黒い表面を有する。
【0049】
この方法で製造した表面を有する金属シートを、80℃で、熱対流炉中で、15分間乾燥し、そして腐食保護を、ISO 9227 NSSに従った塩水噴霧試験で試験する。該金属シートは、48時間、亜鉛腐食保護が>5%の面積に対して生じるまで、試験に耐えた。
【0050】
実施例6
ヘキサフルオロチタン酸カリウム3.5g/lの溶液1000mlを、過酸化水素溶液250ml(10質量%)と撹拌しながら混合し、そしてチオグリコール酸10g/lを添加する。
【0051】
そのpHを、HNO3によって50℃でpH1.6に調整する。
【0052】
低合金鋼のシートを、適した前処理の後に、アルカリ性の亜鉛メッキ電解液(Protolux(登録商標)3000)中で亜鉛10μmで被覆する。
【0053】
亜鉛メッキ後に、その金属シートを洗浄し、前記で製造した処理溶液中に直接浸漬する。緩やかに撹拌しながら60秒の処理時間後に、その金属シートを取り出し、洗浄し、そして乾燥する。それは、濃い黒い表面を有する。
【0054】
この方法で製造した表面を有する金属シートを、80℃で、熱対流炉中で、15分間乾燥し、そして腐食保護を、ISO 9227 NSSに従った塩水噴霧試験で試験する。該金属シートは、24時間、亜鉛腐食保護が>5%の面積に対して生じるまで、試験に耐えた。
【0055】
実施例7
硫酸ジルコニル2.5g/lの溶液1000mlを、過酸化水素溶液250ml(10質量%)と撹拌しながら混合し、そしてチオグリコール酸10g/lを添加する。
【0056】
そのpHを、NaOHによって50℃でpH1.6に調整する。
【0057】
低合金鋼のシートを、適した前処理の後に、アルカリ性の亜鉛メッキ電解液(Protolux(登録商標)3000)中で亜鉛10μmで被覆する。
【0058】
亜鉛メッキ後に、その金属シートを洗浄し、前記で製造した処理溶液中に直接浸漬する。緩やかに撹拌しながら60秒の処理時間後に、その金属シートを取り出し、洗浄し、そして乾燥する。それは、濃い黒い表面を有する。
【0059】
この方法で製造した表面を有する金属シートを、80℃で、熱対流炉中で、15分間乾燥し、そして腐食保護を、ISO 9227 NSSに従った塩水噴霧試験で試験する。該金属シートは、24時間、亜鉛腐食保護が>5%の面積に対して生じるまで、試験に耐えた。