特許第5669875号(P5669875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669875
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】クリップ供給器
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20150129BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20150129BHJP
   A61B 1/04 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   A61B17/12 310
   A61B1/00 334D
   A61B1/04 370
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-38711(P2013-38711)
(22)【出願日】2013年2月28日
(62)【分割の表示】特願2011-6716(P2011-6716)の分割
【原出願日】2011年1月17日
(65)【公開番号】特開2013-146568(P2013-146568A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2013年3月4日
(31)【優先権主張番号】12/723,007
(32)【優先日】2010年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510158325
【氏名又は名称】マイクロライン サージカル インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROLINE SURGICAL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】ジャンリュック ブルノワ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー デヴリン
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/089539(WO,A1)
【文献】 特開2000−510362(JP,A)
【文献】 特開2013−132559(JP,A)
【文献】 特開平05−337119(JP,A)
【文献】 実開昭63−131380(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/10
A61B 17/11
A61B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドピース;
フレームと一対のジョーを有し、上記ハンドピースから軸方向に延びるツールエンドアッセンブリ;
上記ツールエンドアッセンブリを取り囲んで上記ハンドピースから軸方向に延びる中空の回転シャフト;
上記一対のジョーは、上記中空の回転シャフトの先端部に設けられていて少なくとも一つの対象物にクリップを供給すること;及び
上記フレームに固定され、上記中空の回転シャフトの内部空間に沿って軸方向に延びる撮像スコープ;を有し、
上記撮像スコープは、上記ツールエンドアッセンブリの軸方向と平行な方向の像を撮像する、上記フレームの先端に備えられた対物レンズシステムを備えていること;及び
上記一対のジョーと、上記フレームに固定された上記撮像スコープは、上記中空の回転シャフトと一緒に回転すること;
を特徴とするクリップ供給器。
【請求項2】
請求項1記載のクリップ供給器において、
上記撮像スコープは、撮像スコープの手元側に備えられたイメージカプラーとカメラヘッドを有し、上記対物レンズシステムで撮像された像をビデオディスプレイに送信する像送信ユニットを備えているクリップ供給器。
【請求項3】
請求項1記載のクリップ供給器において、
上記ハンドピースのセンタに結合されたカラー;
上記ハンドピースの上端部に備えられた補強マウント;及び
上記カラーの上端部から上記補強マウントの上端部に延びるフード;をさらに備え、
このフードとハンドピースの少なくとも一部との間に、空間が形成されているクリップ供給器。
【請求項4】
請求項1記載のクリップ供給器において、
上記撮像スコープは、上記中空の回転シャフトに沿って設けられた第1の部分と、上記ハンドピースに沿って設けられた第2の部分とを有しているクリップ供給器。
【請求項5】
請求項3記載のクリップ供給器において、
上記撮像スコープは、上記中空の回転シャフトに沿って設けられた第1の部分と、上記フード内の空間に設けられた第2の部分とを有しているクリップ供給器。
【請求項6】
請求項4記載のクリップ供給器において、
上記カラーは、上記撮像スコープの第2の部分と第1の部分を上記中空の回転シャフトに沿って結合するのを可能とする開口を備えているクリップ供給器。
【請求項7】
請求項1記載のクリップ供給器において、
上記ハンドピースは、
ハンドル部分;
このハンドル部分に枢着された上記一対のジョーを動作させるトリガー;及び
上記中空の回転シャフトの反対側のハンドピースの手元側に備えられたクリップを有するカートリッジを受け入れる開口;を備え、
上記カートリッジは、該カートリッジからの上記クリップが上記一対のジョーの間に位置するように、上記中空の回転シャフトを通って延びているクリップ供給器。
【請求項8】
請求項3記載のクリップ供給器において、
上記撮像スコープは光ファイバを含んでいるクリップ供給器。
【請求項9】
請求項8記載のクリップ供給器において、
さらに、上記補強マウントを通って延びる軸受を有し、上記光ファイバの手元側の端部は、該光ファイバがねじれないように、上記補強マウントに対して回転するように、この軸受に固定されているクリップ供給器。
【請求項10】
請求項8記載のクリップ供給器において、
上記一対のジョーと光ファイバは、上記ツールエンドアッセンブリに固定されていて、上記中空の回転シャフトと一緒に回転し、上記光ファイバは、該光ファイバが上記一対のジョーと一緒に回転するとき、該光ファイバに加わるストレスを減少させるサービスループを備えているクリップ供給器。
【請求項11】
請求項1記載のクリップ供給器において、
上記ハンドピースは、上記ツールエンドアッセンブリの軸方向回りに上記中空の回転シャフトを回転させ、上記一対のジョーの方向を、少なくとも一つの対象物回りに供給するように調整するアジャスターを備えているクリップ供給器。
【請求項12】
ハンドピース;
フレームと一対のジョーを有し、上記ハンドピースから軸方向に延びるツールエンドアッセンブリ;
上記ツールエンドアッセンブリを取り囲んで上記ハンドピースから軸方向に延びる回転シャフト;
上記一対のジョーは、上記回転シャフトの先端部に設けられていて少なくとも一つの対象物にクリップを供給すること;
上記フレームに固定され、上記回転シャフトの内部空間に沿って軸方向に延びる撮像スコープ;
上記ハンドピースは、上記クリップを有するカートリッジを受け入れるように構成されていること;及び
上記カートリッジは、該カートリッジからの上記クリップが上記一対のジョーの間に位置するように、上記回転シャフトを通って延びていること;
を有することを特徴とするクリップ供給器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピクチャーインピクチャー(PIP)表示機能を有する内視鏡ビデオシステム及び同内視鏡ビデオシステムに用いる内視鏡、並びにこれらに用いるクリップ供給器に関する。
【0002】
従来の内視鏡ビデオシステムは一般的に、先端部に対物レンズシステムを有する内視鏡を有しており、該レンズシステムによって形成された像を例えばビデオモニタにより観察することができる。この内視鏡ビデオシステムは、医学的な用途では体腔内の像を観察するために用いられる。この内視鏡ビデオシステムは、医学的な処置を実行するため、種々の内視鏡ツールと一緒に用いられる。クリップ供給器は、このようなツールの一種であり、組織を把持し、つまみ、あるいはシールするために、術者の片方の手によって操作される。このようなクリップ供給器は、例えば本出願人による引用文献1−3に開示されており、これらの公報の全ての内容は、本明細書の内容として参照される。通常、このような内視鏡ビデオシステム及び内視鏡ツールはそれぞれ、患者の皮膚に開けた小さな切開孔から体腔内に挿入される。この内視鏡ビデオシステムは、体腔内を照明する光源及び対物レンズシステムで捉えられた(撮像された)体腔の像を送信する像送信(伝送)手段と一緒に用いられ、内視鏡ビデオシステムのユーザはその像を観察することができる。
【0003】
ビデオモニタは通常、患者の体腔内の像を2次元で表示する。内視鏡ビデオシステム及び内視鏡ツールは、患者の皮膚の別の切開孔から頻繁に体腔内に挿入されるため、2次元画像の角度は内視鏡ビデオシステムに依存し、内視鏡ツールには依存しない。問題は、術者にとって、内視鏡ビデオシステムと内視鏡ツールの体腔内における位置を正確に定めることが困難な点にある。例えば、術者が、内視鏡ツールとしてのクリップ供給器を用いて、動脈に長手方向に間隔をおいてクリップを装着する場合、視認性が悪いと、前に装着したクリップに対して正確に次のクリップの位置を定めることが困難になる。実際、体腔内でのクリップ供給器の動きをビデオモニタで見ながら操作する術者は、前に装着したクリップより近すぎたり遠すぎたりする位置にクリップを置いてしまう可能性、あるいは前に装着したクリップと重複する位置にクリップを置いてしまう可能性がある。このようなクリップの誤配置は、クリップ供給器やクリップを損傷し、さらには、患者を傷つけるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開2003-0040759号公報
【特許文献2】米国特許公開2007-0049950号公報
【特許文献3】米国特許第6,277,131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明は、従来の内視鏡ビデオシステムのこのような問題点を解決することを目的とする。このため、本発明の内視鏡ビデオシステムは、医療処置の間に患者の体腔内の像を多角的に撮像する第1と第2のビデオ撮像システムを有しており、これにより、医療処置の正確性と安全性を高め、患者の健康と安全を確保しつつ、内視鏡ビデオシステム及び内視鏡ツールの損傷を防ぐ。また、クリップの誤配置を防止して該クリップを適切な位置に供給することで、クリップ供給器やクリップが損傷するのを防止する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、本発明は体腔内を観察可能とする内視鏡ビデオシステムを備えている。この内視鏡ビデオシステムは、第1の器具と第2の器具とを備えており、第1の器具は、体腔内を照明する光源と、この光源によって照明された体腔を撮像する第1のカメラとを備えている。第2の器具は、医療処置を実行する手術ツールと、照明された体腔を撮像する第2のカメラを備えている。本内視鏡ビデオシステムはまた、第1のカメラで撮像された第1の像及び第2のカメラで撮像された第2の像を受け取るビデオコントロールユニットと、このビデオコントロールユニットから送られた第1、第2の像を表示するビデオディスプレイとを有している。
【0007】
本発明の内視鏡ビデオシステムは、別の態様では、第1の器具が、第1の像をビデオコントロールユニットとの間で授受する、第1のイメージカプラーと第1のカメラヘッドを有する第1の像送信ユニットを備えている。
【0008】
本発明の内視鏡ビデオシステムは、さらに別の態様では、第2の器具が、ハンドピースと、このハンドピースの先端に結合されて該ハンドピースから軸方向に延びる回転シャフトを備えており、体腔内に挿入可能である。
【0009】
本発明の内視鏡ビデオシステムは、手術ツールが、回転シャフトの先端部に備えられた一対のジョーを備えており、この一対のジョーの間にクリップを供給することができる。
【0010】
回転シャフト中には、第2のカメラを収納することができる。そして、この第2のカメラは、ハンドピースから一対のジョーに向けて、回転シャフトの内部空間に軸方向に延びる撮像スコープを備えている。
【0011】
撮像スコープは、その一態様では、その先端部に対物レンズシステムを備え、手元側に、第2のイメージカプラーと第2のカメラヘッドを有する第2の像送信ユニットを備えている。そして、第2の像送信ユニットが第2の像を受け取りビデオコントロールユニットに送信する。
【0012】
上記撮像スコープは、光ファイバを含むことが実際的である。
【0013】
この光ファイバは、その一態様では、上記対物レンズシステムと該光ファイバが軸ねじれを生じることなく上記一対のジョーと一緒に回転するように、上記ハンドピースに備えられた軸受に固定されている。
【0014】
光ファイバは、該光ファイバが一対のジョーと一緒に回動したとき該光ファイバに加わるストレスを減少させるサービスループを備えることが好ましい。
【0015】
また第2のカメラは、第2の器具の軸方向と平行な光軸を有する対物レンズシステムを備えることが好ましい。
【0016】
ハンドピースは、その一態様では、ハンドル部分と、このハンドル部分に枢着された、上記手術ツールを動作させるトリガーとを備えている。
【0017】
またハンドピースは、その一態様では、該ハンドピース内に挿入可能な、クリップを有するカートリッジを備え、該カートリッジは、該カートリッジからのクリップが上記一対のジョーの間に位置するように、上記回転シャフトを通って延びている。
【0018】
またハンドピースは、その一態様では、第2の器具の軸方向回りに上記回転シャフトを回転させ、一対のジョーの方向を調整するアジャスターを備えている。
【0019】
このハンドピースは、別の態様では、上記軸受に固定された撮像スコープの回転とは独立させて、上記回転シャフトを回転させるアジャスターを備えている。
【0020】
第2の器具は、具体的には例えば、クリップ供給器である。
【0021】
撮像スコープは、その一態様では、回転シャフトに沿って設けられた第1の部分と、ハンドピースに沿って設けられた第2の部分とを有している。
【0022】
本発明の内視鏡ビデオシステムにおいて、ビデオコントロールユニットは、その一態様では、第1の像送信ユニットを介して第1の器具に電気接続された第1のカメラコントローラ;第2の像送信ユニットを介して第2の器具に電気接続された第2のカメラコントローラ;及び第1のカメラコントローラ、第2のカメラコントローラ及びビデオディスプレイに接続されたピクチャーインピクチャーコンバータ;を備えており、ピクチャーインピクチャーコンバータはビデオディスプレイと通信して、第1の像及び第2の像を同時に表示する。
【0023】
このピクチャーインピクチャーコンバータには、ビデオディスプレイに表示される第1の像と第2の像の相対的な大きさを調整するプロセッサを含ませることが好ましい。
【0024】
ピクチャーインピクチャーコンバータにはまた、ビデオディスプレイに表示される第1の像と第2の像の相対的な位置を調整するプロセッサを含ませることができる。
【0025】
ピクチャーインピクチャーコンバータにはさらに、ビデオディスプレイに、第1の像と第2の像の少なくとも一方と、照明された体腔の像ではない第3の像を表示するプロセッサを含ませることができる。
【0026】
本発明の内視鏡ビデオシステムにおいて、第1の像は照明された体腔の透視像、第2の像は医療処置の対象部位の透視像とすることができ、この第1の像と第2の像がビデオディスプレイに同時に表示される。
【0027】
医療処置の対象部位の透視像は、手術ツールの軸方向と平行な方向からの像とすることが好ましい。
【0028】
本発明の一態様では、クリップ供給器が備えられている。このクリップ供給器は、その一態様では、ハンドピース;フレームと一対のジョーを有し、上記ハンドピースから軸方向に延びるツールエンドアッセンブリ;ツールエンドアッセンブリを取り囲んで上記ハンドピースから延びる回転シャフト;上記一対のジョーは、この回転シャフトの先端部に設けられていて少なくとも一つの対象物にクリップを供給すること;及びフレームに固定され、上記回転シャフトの内部空間に沿って軸方向に延びる撮像スコープ;を有することを特徴としている。
【0029】
本発明のクリップ供給器において、撮像スコープは、その一態様では、上記ツールエンドアッセンブリの軸方向と平行な方向の像を撮像する、上記フレームの先端に備えられた対物レンズシステムと、上記撮像スコープの手元側に備えられたイメージカプラーとカメラヘッドを有し、上記対物レンズユニットで撮像された像をビデオディスプレイに送信する像送信ユニットを備えている。
【0030】
本発明のクリップ供給器の一態様では、ツールエンドアッセンブリに固定された、一対のジョーと撮像スコープは、回転シャフトと一緒に回転する。
【0031】
本発明のクリップ供給器は、その一態様では、さらに、ハンドピースのセンタに結合されたカラー;ハンドピースの上端部に備えられた補強マウント;及びカラーの上端部から上記補強マウントの上端部に延びるフード;を備えており、このフードとハンドピースの少なくとも一部との間に、空間が形成されている。
【0032】
本発明のクリップ供給器において、撮像スコープは、その一態様では、回転シャフトに沿って設けられた第1の部分と、上記ハンドピースに沿って設けられた第2の部分とを備えている。
【0033】
本発明のクリップ供給器において、撮像スコープはまた、回転シャフトに沿って設けられた第1の部分と、上記フード内の空間に設けられた第2の部分とを備えている。
【0034】
本発明のクリップ供給器において、上記カラーは、上記撮像スコープの第2の部分と第1の部分を上記回転シャフトに沿って結合するのを可能とする開口を備えている。
【0035】
本発明のクリップ供給器において、ハンドピースは、具体的には例えば、ハンドル部分;このハンドル部分に枢着された上記一対のジョーを動作させるトリガー;及び回転シャフトの反対側のハンドピースの手元側に備えられたクリップを有するカートリッジを受け入れる開口;を備えており、該カートリッジは、該カートリッジからのクリップが上記一対のジョーの間に位置するように、上記回転シャフトを通って延びている。
【0036】
本発明のクリップ供給器において、撮像スコープは光ファイバを含むことが実際的である。
【0037】
本発明のクリップ供給器は、さらに、上記補強マウントを通って延びる軸受を有し、上記光ファイバの手元側の端部は、該光ファイバがねじれないように、上記補強マウントに対して回転するように、この軸受に固定されている。
【0038】
本発明のクリップ供給器において、上記一対のジョーと光ファイバは、上記ツールエンドアッセンブリに固定されていて、上記回転シャフトと一緒に回転し、上記光ファイバは、該光ファイバが上記一対のジョーと一緒に回転するとき、該光ファイバに加わるストレスを減少させるサービスループを備えている。
【0039】
本発明のクリップ供給器において、上記ハンドピースは、上記ツールエンドアッセンブリの軸方向回りに上記回転シャフトを回転させ、上記一対のジョーの方向を、少なくとも一つの対象物回りに供給するように調整するアジャスターを備えている。
【発明の効果】
【0040】
本発明の内視鏡ビデオシステムによれば、医療処置の間に患者の体腔内の像を多角的に撮像する第1と第2のビデオ撮像システムを有しているため、医療処置の正確性と安全性を高め、患者の健康と安全を確保しつつ、内視鏡ビデオシステム及び内視鏡ツールの損傷を防ぐことができる。また、クリップの誤配置を防止して該クリップを適切な位置に供給することで、クリップ供給器やクリップが損傷するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
以下本発明の実施例を添付の実施例に従って説明する。以下の説明において、同一の符号は同一または類似の部分を示している。
図1】本発明による内視鏡ビデオシステムを医療処置の用途で示す一実施形態の斜視図である。
図2】本発明による内視鏡ビデオシステムの内視鏡器具の軸方向と平行な方向の像を撮像するための撮像スコープを有する内視鏡ツールの先端部を示す部分斜視図である。
図3】本発明による内視鏡ビデオシステムのハンドピースの先端部に配置したカラーを示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図示実施形態は、本発明の原理とコンセプトを示すために最も有用で理解しやすい形態を示したものである。このため、本発明の基本的な理解に必要な程度を示すに留め、細部の構造を示すことはしていない。図面とその説明は、当業者が本発明を実施する際のいくつかの形態を明らかにするものである。
【0043】
従って、本発明は、体腔内を観察するための内視鏡ビデオシステムであって、クリップ供給器のような内視鏡器具を同時に使用可能な内視鏡ビデオシステムに関する。しかし、本発明の内視鏡ビデオシステムには、他の公知の内視鏡器具を組み合わせてもよい。
【0044】
図1は、体腔(10)を観察するための内視鏡ビデオシステム(1)と、体腔(10)の対象部位(20)を示している。本内視鏡ビデオシステム(1)は、体腔(10)を照明及び(又は)撮像する第1の器具(30)、対象部位(20)を含む照明された体腔(10)の一部を撮像し医療処置を実行する第2の器具(40)、及びこの第1、第2の器具で撮像された像を受け取り、医療処置中にビデオディスプレイ(60)に送信するビデオコントロールユニット(50)を備えている。
【0045】
より詳細には、第1の器具(30)は、体腔(10)を照明する光源(31)と、対象部位(20)を含む照明された体腔(10)の第1の像(61)を捉える(撮像する)第1のカメラを備えている。光源(31)は、図1に示すように、ポート(33)においてケーブル(32)を介して第1の器具(30)に接続されている。あるいは、光源(31)は、体腔(10)を照明するように、第1の器具(30)に一体的に装着してもよい。
【0046】
本実施形態では、ケーブル(32)は、光ガイドとなる光学繊維束から構成されている。あるいは、ケーブル(32)は、光送信(伝送)に適した他の公知のコネクタに置き換えることができる。第1のカメラは、光を電気信号に変換するCMOS、CCD、その他のイメージセンサを有する対物レンズシステムを備え、この電気信号がコンピュータのモニタやビデオスクリーンのようなビデオディスプレイ(60)に送信される。第1のカメラはまた、第1のイメージカプラー(35)を含む第1の像送信ユニット(34)と、第1の像(61)を受け取り、ビデオコントロールユニット(50)に送信する第1のカメラヘッド(36)を備えている。ビデオコントロールユニット(50)は、第1のカメラの像をビデオディスプレイ(60)に表示する。
【0047】
第2の器具(40)は、手術に用いる手術ツール(72)と、照明された体腔(10)の第2の像(62)を捉える第2のカメラを有している。第2の器具(40)には、上述の実施形態の光源(31)と同様の光源が備えられている。この光源は、ケーブルを介して第2の器具(40)に接続され、または該第2の器具(40)の軸方向に沿わせて一体に備えられており、体腔の対象部位(20)を照明して観察領域の視認性を高める。実施形態では、手術ツール(72)は、アブレータ(切断器)、スカルペル(メス)、クリップ供給器、シザース(ハサミ)、クランプ、フォーセプス(鉗子)、カウテライザー(鍼灸)のような内視鏡と一緒に用いる適当な手術ツールである。加えて、本明細書で「像」の語は、ビデオディスプレイ(60)上に表示可能なすべてのものを意味し、第1、第2のカメラで捉えられる像に限定されない。
【0048】
第1のカメラと同様に、第2のカメラは、光を電気信号に変換してビデオディスプレイ(60)に送信する、CMOS、CCD、その他のイメージセンサを有する対物レンズシステムを備えている。第2のカメラはまた、第2のイメージカプラー(42)を含む第2の像送信ユニット(41)と、第2の像(62)を受け取って、ビデオコントロールユニット(50)に送信する第2のカメラヘッド(43)を備えていて、この第2の像がビデオディスプレイ(60)に表示される。
【0049】
加えて、第2のカメラの対物レンズシステムは、手術ツール(72)の軸方向と平行な光軸を有している。このため、第2のカメラは、体腔(10)の像であって第1のカメラによる像とは異なる対象部位(20)の像を提供することができる。この像は、以下「ツール像」と呼び(呼ぶことがあり)、体腔(10)と対象部位(20)の別の像を提供し、照明された体腔(10)内において、対象部位(20)の他の物体との相対的な動きの視認性を高める。この視認性の向上によって、操作の正確性と安全性が高まり、操作に必要な時間を短縮することができる。
【0050】
このように、ビデオコントロールユニット(50)は、第1、第2の像(61,62)を受け取り、ビデオディスプレイ(60)は、ビデオコントロールユニット(50)から送信されたこの像(61,62)を表示する。さらに、ビデオコントロールユニット(50)は、ケーブル(52)を介して第1の像送信ユニット(34)から第1のカメラに電気的に接続された第1器具カメラコントローラ(51)と、ケーブル(54)を介して第2の像送信ユニット(41)から第2のカメラに電気的に接続された第2器具カメラコントローラ(53)と、ケーブル(56,57)を介して第1、第2の器具カメラコントローラ(51,53)のそれぞれに電気的に接続されたピクチャーインピクチャーコンバータ(以下PIPコンバータ、55)とを有している。ビデオコントロールユニット(50)はまた、ケーブル(58)を介してビデオディスプレイ(60)に電気的に接続されている。
【0051】
PIPコンバータ(55)は、第1、第2の像(61,62)が単独でまたは同時に表示されるようにビデオディスプレイ(60)との間で通信する。PIPコンバータ(55)は、照明された体腔(10)内の追加の像を捉えるために、追加のカメラコントローラ(及び対応するカメラ)に電気的に接続することが可能である。加えて、PIPコンバータ(55)は、EKGマシン、体温計のようなPIPコンバータ(55)と通信(及びさらに像やデータの送受信)ができる他のデバイスに接続することができる。これらの接続によって、本内視鏡ビデオシステム(1)の操作性を高め、与えられた医療操作中の本システムの使用をより容易にすることができる。
【0052】
さらに、カメラコントローラ(51,53)とビデオディスプレイ(60)は、ケーブル(56,57,58)を介してPIPコンバータ(55)に電気的に接続されているが、このようなケーブル接続は、ワイヤレス接続、赤外線接続のような公知の送信機構に置き換えることが可能である。
【0053】
PIPコンバータ(55)は、ビデオディスプレイ(60)に表示された第1、第2の像(61,62)の相対的な大きさと位置を調整するプロセッサを含んでおり、これらの像は、本内視鏡ビデオシステムユーザの種々の好みの機器に表示される。このため、PIPコンバータ(55)は、本内視鏡ビデオシステム(1)をユーザの使用機器にセットし使用可能とするコンピュータプログラムに接続することができる。
【0054】
プロセッサは、第1と第2の像の少なくとも一方を表示し、さらに、照明された体腔(10)の像ではない第3の像をビデオディスプレイ(60)に表示する。この第3の像は、例えば、EKGモニタ、輝度検出器、温度読取器等の医療処置中の外科医に必要な像とすることができる。加えて、この像は、個々に、または同時に表示することができる。同時に表示する場合には、ビデオディスプレイ(60)上の像は、外科医の好みに応じて、重ねられ、間隔をおき、一方の上に他方を重ねて表示することができる。
【0055】
第1の像(61)は、医療処置のために、手術ツール(72)と対象部位(20)を見るための照明された体腔(10)内の透視像である。一方、第2の像(62)は、図1に示すように、対象部位(20)における医療処置における手術ツール(72)の透視像である。本実施形態では、透視像、別言すると、手術ツール(72)によって撮られた対象部位のツール像は、該手術ツール(72)の軸方向と平行な方向から撮像した像である。加えて、これらの像は、熱像(サーモグラフィ)、カラー画像、白黒画像等、ビデオディスプレイ(60)での観察に適した像とすることができる。
クリップ供給器
【0056】
実施形態では、第2の器具(40)はクリップ供給器であり、このクリップ供給器は、本内視鏡ビデオシステム(1)に合体させることができる。図1ないし図3につき、このクリップ供給器を説明する。
【0057】
図1図2に示すように、クリップ供給器(40)は、ハンドピース(44)、回転シャフト(45)及びツールエンドアッセンブリ(70)を有している。ツールエンドアッセンブリ(70)は、積層したクリップのクリップカートリッジ(46)を受けるフレーム(71)と一対のジョー(可動顎)(72)を備えている。ツールエンドアッセンブリ(70)は、ハンドピース(44)から軸方向に延び、回転シャフト(45)はハンドピース(44)から軸方向に延びてツールエンドアッセンブリ(70)を取り囲んでいる。一対のジョー(72)は、回転シャフト(45)の先端部に設けられていて、少なくとも一つの対象部位にクリップ(47)を供給する。
【0058】
クリップ供給器(40)の第2のカメラは、撮像スコープ(73)を有しており、この撮像スコープ(73)は、回転シャフト(45)の内部空間に軸方向に沿って延びるようにフレーム(71)に結合されている。図2に示すように、撮像スコープ(73)は、対物レンズシステム(74)を有し、第2の像送信ユニット(41)に接続されている。撮像スコープ(73)はその少なくとも一部が回転シャフト(45)内に収納されており、残りの部分がハンドピース(44)に結合されている。撮像スコープ(73)と一対のジョー(72)は、図示するように、フレーム(71)に取り付けられており、回転シャフト(45)の回転に従って回転する。このため、撮像スコープ(73)は、軸方向に間隔をおいてフレーム(71)に溶接されあるいはクランプされている。加えて、撮像スコープ(73)は、10kファイバの柔軟マイクロ光ファイバから構成することができる。
【0059】
実施形態では、ハンドピース(44)は、ハンドル部分(80)と、このハンドル部分(80)に枢着されたトリガー(81)を備えている。トリガー(81)は、一対のジョー(72)を動作させる。ハンドピース(44)は、クリップカートリッジ(46)を受け入れる開口を備えている。この開口は、ハンドピース(44)の軸方向に延びていて、クリップカートリッジ(46)をハンドピース(44)の手元側からクリップ供給器(40)の先端に備えられた一対のジョー(72)に向かって挿入することができる。さらに、クリップカートリッジ(46)は、ハンドピース(44)のこの開口、及びフレーム(71)に形成したカートリッジ受容部を介し回転シャフト(45)を通って延びている。
【0060】
クリップカートリッジ(46)は、ハンドピース(44)の手元側に装填されるとしたが、例えば、ハンドピース(44)の側面(前方側面または後方側面)に形成した開口を介して該ハンドピース(44)内に装填することも可能である。あるいは、クリップカートリッジ(46)は、ハンドピース(44)の適当な位置に設けた摺動可能なあるいはヒンジ構造の引込器によって該ハンドピース(44)に装填することも可能である。別の実施形態では、クリップカートリッジ(46)は、離脱不能にハンドピース(44)に予め装填しておくこともできる。
【0061】
ハンドピース(44)はさらに、回転シャフト(45)を軸回りに回転させて一対のジョー(72)の方向を変え、少なくとも一つの対象物の回りにクリップ(47)を供給するアジャスター(82)を備えている。ユーザは、アジャスター(82)を用いて、体腔(10)内の対象部位(20)において対象物にクリップ(47)を供給する位置に一対のジョー(72)を回転させることができる。トリガー(81)が操作されると、クリップ(47)はクリップカートリッジ(46)から解放されて、一対のジョー(72)の間に位置し、体腔(10)内の対象部位(20)の対象物に供給される。一対のジョー(72)は、対象物の回りに装着される常開型の弾性クリップを閉じておくタイプ、あるいは対象物に装着される常閉型の弾性クリップを開いておくタイプのいずれも用いることができる。さらにクリップ供給器(40)は、体腔(10)内でステープルを供給し、あるいは、対象物を把持して除去し調整するものであってもよい。別言すると、クリップ供給器(40)は、クリップやステープルを供給する以外の目的で、本装置の機能を増加させるために用いることができる。
【0062】
クリップ供給器(40)はさらに、ハンドピース(44)の先端部に結合されたカラー(83)、ハンドピース(44)の上端部に備えられた軸受(85)を有する補強マウント(84)、及びフード(86)を備えている。フード(86)は、補強マウント(84)の上端からカラー(83)の上端に延び、該フード(86)と少なくともハンドピース(44)の一部との間に閉じた部屋を画成する。カラー(83)は、回転シャフト(45)をハンドピース(44)に接続し、補強マウント(84)は軸受(85)を内蔵している。上述のように、軸受(85)は補強マウント(84)を通って延び、光ファイバの手元側端部は軸受(85)に接続されていて、該光ファイバが補強プレートに対して回動し、第2の像送信ユニット(41)に接続される。
【0063】
フード(86)は、撮像スコープ(73)のサービスループ(環状部)(87)を収納するのに適した形状と材料からなっており、回転シャフト(45)の操作中に光ファイバにねじれが生じるのを可能とする。フード(86)はまた、サービスループ(87)の汚染、及び光ファイバの損傷を防止する。フード(86)は、サービスループ(87)に対するアクセスを可能とするために、あるいはクリップ供給器(40)の一部を修理するために、着脱可能とすることもできる。このため、クリップ供給器(40)は、ディスポーザブルとしても再使用可能としてもよい。
【0064】
図1に示すように、光ファイバ(すなわち撮像スコープ)は、軸受(85)に固定されている。光ファイバは、対物レンズシステム(74)と光ファイバが一対のジョー(72)と一緒に回転する一方で、回転シャフト(45)の回転中に光ファイバに生じるねじれを制限するように、軸受(85)に接続されている。すなわち、軸受(85)は、ユーザがアジャスター(82)を使用するとき、回転シャフト(45)回りに光ファイバが過度にねじれて破損するのを防止する目的を有する。撮像スコープ(73)の回転シャフト(45)回りの回転は、軸受(85)に固定された撮像スコープ(73)の回転とは独立していることに注意が必要である。
【0065】
撮像スコープ(73)は、サービスループ(87)を含む、第1部分(88)と第2部分(89)を有すると見ることも可能である。第1部分(88)は、回転シャフト(45)に沿って設けられ、第2部分(89)は、フード(86)によって画成された空間内でハンドピース(44)に沿って設けられている。前述のように、撮像スコープ(73)の第1部分(88)は、軸方向に間隔をおいてフレーム(71)に溶接しまたはクランプすることができる。第2部分(89)(軸受(85)に固定されたサービスループ(87)を含む)は、ツールエンドアッセンブリ(70)に沿う光ファイバが、一対のジョー(72)及び回転シャフト(45)と一緒に回転するとき、撮像スコープ(73)に生じるストレス(軸ねじれを含む)を減少させる。
【0066】
図2に示すように、第1部分(88)と第2部分(89)は、カラー(83)の開口(90)を介して互いに結合されている。図3に示すように、開口(90)は、サービスループ(87)が外部に曝されることなく、第1部分(88)内で進退することを可能にしている。このことは、ねじれの問題だけでなく、撮像スコープ(73)の汚染及び破損を防ぐことにも関係している。加えて、カラー(83)は、光ファイバのねじれ量を制限し、破壊点までねじれるのを防止するための付加的な安全機構として、カラー(83)の側部に設けたストップピン(91)を備えている。
【0067】
以上のように、本発明の内視鏡ビデオシステムは、医療処置の対象部位の観察を容易にする。その結果、医療処置の正確性と安全性が高まり、内視鏡ビデオシステムの及び付随する内視鏡ツールの破損のリスクを大きく減少させ、患者の健康と安全性を確かにすることができる。
【0068】
以上本発明を適当に結合することができる複数の実施例に基づいて説明したが、説明に用いた言葉は、限定のためでなく、説明と図示のために用いたものである。本発明の精神から離れることなく、特許請求の範囲内での種々の変更が可能である。また、特定の手段、物質及び実施形態に従って本発明を説明したが、開示した実施例に限定されることはなく、請求範囲と等価な構造、方法及び使用例を含むものである。
【符号の説明】
【0069】
1 内視鏡ビデオシステム
10 体腔
20 対象部位
30 第1の器具
31 光源
32 ケーブル
33 ポート
34 第1の像送信ユニット
35 第1のイメージカプラー
36 第1のカメラヘッド
40 第2の器具(クリップ供給器)
41 第2の像送信ユニット
42 第2のイメージカプラー
43 第2のカメラヘッド
44 ハンドピース
45 回転シャフト
46 クリップカートリッジ
47 クリップ
50 ビデオコントロールユニット
51 第1器具カメラコントローラ
52 54 56 57 58 ケーブル
53 第2器具カメラコントローラ
55 PIP(ピクチャーインピクチャー)コンバータ
60 ビデオディスプレイ
61 第1の像
62 第2の像
70 ツールエンドアッセンブリ
71 フレーム
72 手術ツール(ジョー)
73 撮像スコープ
74 対物レンズシステム
80 ハンドル部分
81 トリガー
82 アジャスター
83 カラー
84 補強マウント
85 軸受
86 フード
87 サービスループ
88 第1部分
89 第2部分
90 開口
91 ストップピン
図1
図2
図3