特許第5669906号(P5669906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669906
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】成形可能な生分解性ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08L 3/02 20060101AFI20150129BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20150129BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20150129BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20150129BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20150129BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20150129BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20150129BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20150129BHJP
   A61F 13/26 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   C08L3/02ZBP
   C08L29/04 B
   C08L29/04 S
   C08L31/04 B
   C08L71/02
   C08L101/16
   C08K5/053
   C08K5/103
   B29C45/00
   A61F13/20 350
【請求項の数】16
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-185690(P2013-185690)
(22)【出願日】2013年9月6日
(62)【分割の表示】特願2007-534966(P2007-534966)の分割
【原出願日】2005年10月5日
(65)【公開番号】特開2014-28963(P2014-28963A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2013年10月7日
(31)【優先権主張番号】2004905695
(32)【優先日】2004年10月5日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】502247341
【氏名又は名称】プランティック・テクノロジーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン,ルランデ
(72)【発明者】
【氏名】パートリッジ,イアン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ローズ,エリザベス・エミリー
(72)【発明者】
【氏名】オークリー,ニコラス・ロイ
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/074352(WO,A1)
【文献】 特開2000−327840(JP,A)
【文献】 特表平08−503985(JP,A)
【文献】 特表2000−509427(JP,A)
【文献】 特表平07−505436(JP,A)
【文献】 特表平06−507193(JP,A)
【文献】 特開平06−322182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 3/02
C08L 29/04
C08L 31/04
C08L 71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性の射出成形可能なポリマー組成物であって、乾燥重量基準で、
a)デンプンおよび/または高アミロース加工デンプン50〜85重量%;
b)ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、およびエチレンとビニルアルコールのコポリマーから選択され、溶融状態のデンプン成分と適合する融点を有する、水溶性ポリマー4〜13重量%;
c)3種類以上のポリオール可塑剤10〜35重量%;
d)100,000から400,000の範囲の分子量を有するポリエチレンオキシド0.5〜10重量%;及び
e)食品等級の乳化剤0.25〜3重量%;
の組成物を有するポリマー組成物であって、前記ポリオール可塑剤は100,000から400,000の範囲の分子量を有するポリエチレンオキシドを含まないという条件付きである前記ポリマー組成物。
【請求項2】
12〜22脂肪酸または脂肪酸塩0から1.5重量%をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分b)がポリビニルアルコールである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリオール可塑剤が、ソルビトールと少なくとも2種類の他のポリオールとの混合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
他のポリオールが、グリセロール、マルチトール、キシリトール、エリトリトール、マンニトール、エチレングリコール、およびジエチレングリコールからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
食品等級の乳化剤が、2から10の親水性親油性バランス数を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
乳化剤が、グリセロールモノステアレート、ステアロイル乳酸ナトリウムまたはそれらの混合物から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
12〜22脂肪酸または脂肪酸塩がステアリン酸である、請求項2から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物を射出成形することにより形成された、2〜3重量%の最終含水率を有する医療用具。
【請求項10】
射出成形により製造されたタンポンアプリケーターであって、乾燥重量基準で、
a)50〜100%が加工デンプンであるデンプン50〜70重量%;
b)ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、およびエチレンとビニルアルコールのコポリマーから選択され、溶融状態のデンプン成分と適合する融点を有する、水溶性ポリマー5〜13重量%;
c)3種類以上のポリオール可塑剤10〜35重量%;
d)100,000から400,000の範囲の分子量を有するポリエチレンオキシド0.5〜10重量%;及び
e)食品等級の乳化剤の0.25〜3重量%;
の組成物であって、前記ポリオール可塑剤は100,000から400,000の範囲の分子量を有するポリエチレンオキシドを含まないという条件付きである組成物を有するタンポンアプリケーター。
【請求項11】
組成物が、C12〜22脂肪酸または脂肪酸塩0〜1重量%をさらに含む、請求項10に記載のタンポンアプリケーター。
【請求項12】
ヒドロキシプロピル化した高アミロースデンプン55〜65重量%;ポリビニルアルコール11〜13重量%;ソルビトールと、マルチトール、グリセロールおよびキシリトールのうちの少なくとも2つを含有するポリオール混合物18〜21重量%;100,000〜400,000の範囲の分子量を有するポリエチレンオキシド1.5〜2.5重量%;グリセロールモノステアレートおよびステアロイル乳酸ナトリウム0.5〜1.5重量%;ならびにステアリン酸0.7〜0.9重量%;を含有する、請求項10または11に記載のタンポンアプリケーター。
【請求項13】
製品が2〜4重量%の含水率を有する、請求項10から12のいずれか一項に記載のタンポンアプリケーター。
【請求項14】
70MPaと400MPaの間のヤング率、8MPaと15MPaの間の引張り強さおよび30と300%の間の破断点伸びを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物を有する射出成形製品。
【請求項15】
160MPaと200MPaの間のヤング率、10MPaと15MPaの間の引張り強さおよび50%と150%の間の破断点伸びを有する、請求項10から13のいずれか一項に記載のタンポンアプリケーター。
【請求項16】
下水中で生分解性であり、下水管理システムに悪影響を与えないように分解する請求項10から13のいずれか一項に記載のタンポンアプリケーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性ポリマー製品、特に射出成形可能なデンプンをベースにしたポリマ
ーの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性である多くのプラスチック製品に対する需要が増大している。注目の対象とな
っている1つの製品は、便利に水洗便器に流すことができ、水分散性でありかつ生分解性
であるようなタンポンアプリケーターである。デンプンベースのポリマーの製造において
は特に射出成形に対して困難に遭遇してきた。デンプンの分子構造は、デンプンを可塑化
しそれを押出しダイに通すために必要なせん断応力と温度条件によって悪影響を受ける。
ほとんどの製品に対して発泡は避けなければならず、これは一般にデンプンの含水率のた
めに注意を必要とする。発泡は、米国特許第5314754号および第5316578号
に示されているように、押出しダイを出る前の融成物からガス抜きすることによって回避
されてきた。後者の特許はデンプンに水を添加することも避けている。米国特許第556
9692号で説明されているように、デンプンに結合している水は高圧を必要とするよう
な蒸気圧を発生することはないために、デンプンは、デンプンを乾燥せずとも水の添加を
避けることによって、120℃と170℃の間の温度で処理することができる。
【0003】
デンプンの溶融加工可能性を改良する別の取り組みは、デンプンの融点を低下させる米
国特許第5362777号におけるような添加剤を供給するものである。その添加剤は、
ジメチルスルホキシド、ポリオールおよびアミノまたはアミド化合物の選択肢から選ばれ
る。
【0004】
米国特許第5043196号は、射出成形用の高アミロースデンプンを開示している。
米国特許第5162392号は、射出成形可能なコーンスターチとLDPEとの生分解性
ポリマーに関する。
【0005】
特定用途のためのデンプンポリマーを製造するために、それらは一連の他のポリマーと
ブレンドされてきた。生のデンプン、ポリビニルアルコールおよびタルクをグリセロール
および水とブレンドする生分解性のインフレートフィルム(blown film)が米国特許第5
322866号に開示されている。米国特許第5449708号は、デンプンエチレンア
クリル酸およびステアリン酸の塩にグリセロール系滑剤を加えた組成物を開示している。
たわみ性があって明澄透明なシートが米国特許第5374304号に開示されている。こ
れらは、高アミロースデンプンおよびグリセロール可塑剤で構成されている。高アミロー
スまたは加工デンプンと併用したデンプンの使用も提案されている。米国特許第5314
754号および第5316578号は、両方とも、ヒドロキシプロピル置換デンプンを含
む加工デンプンの使用を提案している。記載されているところによれば、ヒドロキシプロ
ピル化により破断点伸びおよび破裂強度が増し、ポリマーの弾性(レジリエンス;resili
ence)の改良が増進する。
【0006】
WO00/36006は、多量の加工デンプンと少量の水溶性ポリビニルアルコールと
を用いる生分解性の水溶性配合物を開示している。これらの配合物は、熱成形可能である
が射出成形可能な組成物の実施例は存在しない。
【0007】
生分解性タンポンアプリケーターは、多くの特許の対象である。
米国特許第5759569号は、おむつの表面シートおよびタンポンアプリケーター用
の生分解性ポリマーとしてトランスポリイソプレンを開示している。
米国特許出願公開第2003/0036721号および第2003/0040695号
は、ポリエチレンオキシドおよびその他の成分を含む水洗便器に流せるタンポンアプリケ
ーターに関するものである。
米国特許第5002526号は、ポリビニルアルコールのタンポンアプリケーターを開
示している。
米国特許第5350354号は、デンプンまたは加工デンプン、少なくとも5%のグリ
セロールなどの可塑剤および水からなるタンポンアプリケーターを開示している。
米国特許第5804653号は、タンポンアプリケーター用の成形可能なポリビニルア
ルコール組成物に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、タンポンアプリケーターなどの使用目的に対して許容される特性を有
するように処理加工することができる射出成形可能な生分解性ポリマーを提供することで
ある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、生分解性の射出成形可能なポリマー組成物であって、乾燥重量基準で、
a)デンプンおよび/または高アミロース加工デンプン50〜85重量%;
b)ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、およびエチレンとビニルアルコールのコ
ポリマーから選択され、溶融状態のデンプン成分と適合する融点を有する、水溶性ポリマ
ー4〜13重量%;
c)ポリオール可塑剤10〜35重量%;
d)ポリエチレンオキシドまたはポリエチレングリコール0.5〜10重量%;
e)C12〜22脂肪酸または脂肪酸塩0〜1.5重量%;および
f)食品等級の乳化剤0.25〜3重量%;
を有する組成物を提供する。
【0010】
記載された該組成物は、尿サンプルコレクタおよびタンポンアプリケーターなどの医療
用具を含む射出成形製品を形成するのに適している。加工デンプン含量の上限は、そのコ
ストによって決まる。この成分は、良好な凝集性および伸長特性、良好な光学特性、なら
びに劣化(後退;retrogradation)に対する抵抗を含む構造上の利点を、結果として得ら
れる材料に与える。劣化(後退;retrogradation)という用語は、加熱および冷却操作の
後に貯蔵中のデンプン成分によって結晶性に戻ることを表現するために使用されている。
この過程は、ステーリング(staling)と一般に呼ばれるもので、デンプンをベースとす
る食品の長期間の貯蔵中の硬化(hardeningまたはstiffening)を説明する。ヒドロキシ
プロピル化は、結晶性を抑えるのに役立つ。代表的のな加工デンプンとしては、ヒドロキ
シC2〜6アルキル基を有するものまたはジカルボン酸の無水物との反応により変性した
デンプンが挙げられる。好ましい成分は、ヒドロキシプロピル化したアミロースである。
ヒドロキシエーテル置換を形成するその他の置換基は、ヒドロキシエチルまたはヒドロキ
シブチルであってよく、あるいはエステル誘導体を生成するためには、無水マレイン酸、
無水フタル酸または無水オクテニルコハク酸などを使用することができる。置換度(1構
成単位中の置換されているヒドロキシル基の平均数)は、好ましくは0.05から2であ
る。好ましいデンプンは、高アミローストウモロコシデンプンである。好ましい成分は、
Penford Australiaにより市販されている、ヒドロキシプロピル化され
た高アミロースデンプンA939である。使用されるヒドロキシプロピル化の最低水準は
、6.0%である。代表的な値は、6.1〜6.9%である。
【0011】
コスト節減および特性最適化の理由のため、このデンプンの一部を次のものに置き換え
ることができる:
1)より高いかまたはより低いレベルにヒドロキシプロピル化したもの。
2)より高いレベルの非加工デンプン。これは、特に加工デンプンのヒドロキシプロ
ピル化のレベルが増大される場合に可能であり得る。
3)より高い度合いの疎水性を有する無水オクテニルコハク酸(OSA)で変性した
デンプン。この加工デンプンの添加は、置換度の増加と共に耐水性を増加させる。OSA
デンプン中のアセチル結合は、その材料が水および生物活性のある環境に接近した際の生
分解性を保持することを保証する。
4)好ましくはデンプンがグラフトしているスチレンブタジエンからなるデンプンコ
ポリマー。この材料は、製品の衝撃抵抗を改善する。
【0012】
その他のデンプン成分は、任意の市販のデンプンである。これは、小麦、トウモロコシ
、ポテト、米、オートムギ、クズウコン、エンドウ豆などを起源として誘導することがで
きる。
【0013】
一般に含水率(ウェット基準;wet basis)は約5〜15%である。非加工デンプンは
、最終製品のバリヤー特性に寄与する再生可能な資源からの安価な生分解性原料であり、
したがってこの用途には極めて魅力的である。しかしながら、その使用は、劣化(後退(
retrogradation);脆性をもたらす結晶化)の発生、結果として形成された製品の限定さ
れた視覚的透明性、限定されたフィルム形成性および限定された引き伸ばしに対する弾力
性によって制限される。高アミロースデンプンは、劣化(後退)に対する感度が低い(な
ぜなら劣化(後退)は加熱処理したデンプン中のアミロペクチンの結晶化と主として関係
すると見られるためである)。デンプンの全体量の分率としての非加工デンプンの好まし
い濃度範囲は、0〜50%である。
【0014】
組成物のポリマー成分b)は、デンプンと相容性であり、水溶性、生分解性であり、デ
ンプンに対する処理温度と適合する低融点を有することが好ましい。ポリビニルアルコー
ルが好ましいポリマーであるが、エチレン−ビニルアルコール、エチレン酢酸ビニルのポ
リマーまたはポリビニルアルコールとのブレンドを使用することもできる。選択したポリ
マーの水溶性は、好ましくは室温条件で起こってはならない。PVOHは、優れたフィル
ム形成性およびバインダー特性、良好な弾性の組合せを提供し、デンプンをベースとする
配合物の処理加工を助ける。PVA(ポリビニルアルコール)は、酢酸ビニルモノマーの
重合によって製造されるポリ酢酸ビニルを加水分解することによって製造される。完全に
加水分解した等級のものは、残留アセテート基はあってもわずかであるが、部分的に加水
分解した等級のものは、いくらかの残留アセテート基を保有している。完全に加水分解し
た等級のものは熱水(93.3℃(200°F))に溶解し、室温まで冷却したときも溶
液のままである。PVOHの好ましい等級のものとしては、DuPontのElvano
l 71−30およびElvanol 70−62が挙げられる。それらの特性を表1に
記載する。
【0015】
【表1】
【0016】
分子量が高い等級のものほど、脆性およびおそらく感水性も減少するようである。最大
量は主としてコストによって決まる。PVOHの量が増すことによってヤング率が著しく
下がる。6%未満ではフィルム形成は困難である。射出成形材料のための好ましい濃度範
囲は6〜13%である。
【0017】
好ましい可塑剤は、ポリオール、特に、ソルビトールと、1つまたは複数のその他のポ
リオール類、特にマルチトール、グリセロール、マンニトールおよびキシリトールとの混
合物であるが、エリトリトール、エチレングリコールおよびジエチレングリコールもまた
適切である。可塑剤は三重の役割を果たし、それは、押出し配合工程のためおよび射出成
形工程に適するレオロジーを提供し、一方でまた製品の機械的性質にもプラスに作用する
。コスト、食品との接触または皮膚/粘膜の膜との接触が、適切な可塑剤の選択における
重要な課題である。最終製品の加工処理性能、機械的性質および保管寿命は、ポリオール
混合物の正確な組成に依存する。ゼロまたは非常に低い水分含量において、可塑剤含量は
、好ましくは10%から35%、より好ましくは20%である。使用される可塑剤(1つ
または複数)の種類によって、射出成形した製品の平衡含水率は、標準的な水分平衡法に
より測定しておよそ2〜5%である。
【0018】
ソルビトール、マルチトールおよびグリセロールのブレンドは、キシリトールならびに
キシリトールのソルビトールとグリセロールとのブレンドと同様に、配合物の機械的性質
を修正するために特に適する。ソルビトールおよびキシリトールは特に良好な湿潤剤であ
る。しかしながら、グリセロールを、特にある一定の基準点未満で使用する場合、可塑剤
の存在によってポリマー鎖が一時的に移動性を増すために、結晶化または少なくとも高度
の秩序化が起こり、非可塑化デンプン配合物と比較して、これらの配合物の剛性および脆
性を増す原因となる逆可塑化が起こり得る。
【0019】
さらにソルビトールはそれだけで使用される場合結晶化が見られる。いくつかのポリオ
ール類(特にソルビトールおよびグリセロール)は、表面への移行を示すことがあり、ソ
ルビトールの場合は不透明な結晶性フィルムを、あるいはグリセロールの場合は油状のフ
ィルムを形成することがあり得る。さまざまなポリオールをブレンドすることによってこ
の影響はさまざまな程度まで阻止される。安定化は、乳化剤としてグリセロールモノステ
アレートおよびステアロイル乳酸ナトリウムを添加することによって高めることができる
。さらに、塩との相乗効果により機械的性質に対してより強力な効果がもたらされる。
【0020】
代わりの可塑剤は、5%から10%のエポキシ化アマニ油である。好ましくは乳化シス
テムによって安定化されているこの可塑剤は、加工処理を助けるが、ヤング率のさらなる
著しい低下をもたらすことはない。
【0021】
配合処理中は適切なデンプンのゼラチン化を確保するために水を存在させる。過剰の水
は、通気(venting)またはオン/オフラインのペレット乾燥を用いて配合の途中で除去
することができ、さらに射出成形する前に例えばホッパー乾燥を用いて望ましい水準に調
節することができる。選択したポリオールのブレンドの湿潤特性は、製品の適切で安定し
た含水率に影響する。利用したポリオールブレンドによって、可塑剤含量は、好ましくは
10〜35%であり、水含量は、10〜0%である。高度に柔軟性の射出成形成分に対し
て、可塑剤含量は、硬い射出成形品またはシート製品に対するよりも好ましくは高い。
【0022】
ポリエチレンオキシドおよびポリエチレングリコールは、交互にまたは共に、組成物が
生体適合性であり、尿サンプルコレクタおよびタンポンアプリケーターを含む粘膜組織と
の接触を有する医療用具に使用することができることを確保する。好ましいポリエチレン
オキシドは、20,000より上の分子量を有するものである。医療用に対して配合物は
、細胞毒性(Cytoxicity)試験(ISO 10993−5)、感作試験(IS
O 10993−10)および刺激性試験(ISO 10993.10)に合格しなけれ
ばならない。好ましい添加剤は、ポリエチレンオキシド(分子量210,000のPEG
−5000)であり、ステアリン酸の代わりに0.57%または2%加えると、細胞毒性
試験で細胞溶解(lysis)ゼロの結果をもたらし、0.57%のステアリン酸に加えて5
%を添加した場合も、ゼロの細胞溶解の結果を生じる。ポリエチレンオキシドおよびポリ
エチレングリコールは、交互にまたは共に、さらに耐水性の増大を配合物に与え、特に多
層構造(MLS)の層間剥離を生じ得る過剰な膨潤を防ぐ。
【0023】
脂肪酸または脂肪酸塩成分は、0.5〜1.5%の濃度で存在するのが好ましい。ステ
アリン酸が好ましい成分である。ステアリン酸のナトリウム塩およびカリウム塩も使用す
ることができる。この場合もやはりコストがこの成分の選択の要因であり得るが、ラウリ
ン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸およびベヘン酸はすべて適する。ステア
リン酸は、それがデンプンとのより良好な相容性を示しているため潤滑剤として好ましい
。ステアリン酸と同様にステアリン酸カルシウムなどの塩を使用することができる。ステ
アリン酸は、デンプン系ポリマーの表面に移行するようである。
【0024】
デンプンは脂肪酸と複合体を形成するものと考えられる。デンプングルコピラノシド(
グルコース)は、「いす形」立体配置をした6員環である。環の周囲は親水性であるが、
その面は疎水性である。そのデンプン鎖は、1回転当たり約6個の残基を有するらせんを
形成している。その結果、親水性の外面と疎水性の内面とを備えた中空のシリンダーとな
っている。内側の空間は、直径が約4.5オングストロームであり、ステアリン酸のよう
な直鎖アルキル分子がその中にうまくおさまり得る。同様にしてGMSなどの乳化剤の脂
肪酸部分は、ゼラチン化したデンプンと複合体を形成してデンプンの結晶化を抑制し、そ
れによってステーリング(staling)の進行を遅らせることができる。アミロース(デン
プン中の線状成分)と、およびアミロペクチン(デンプン中の分岐成分)と複合体化する
モノグリセリドの量は、乳化剤の脂肪酸部分の飽和度に依存する。不飽和脂肪酸は、脂肪
酸鎖中の二重結合によってもたらされる屈曲(bend)を有しており、それがそれらの複合
体を形成する能力を制限する。ステアリン酸は処理加工助剤として特に有用であるが、P
EOまたはPEGの存在下では、必要がないことがある。適切な処理加工助剤の選択は、
必要なMLSの層間剥離に対する抵抗によって大きく制限される。
【0025】
乳化剤は、好ましくは食品等級の乳化剤であり、脂質および親水性成分の組成物中での
均一な分散を維持する助けをする。一般的にその選択はHLB(親水性親油性バランス)
値による。好ましい乳化剤は、HLB数が2と10の間の食品等級の乳化剤から選択され
、プロピレングリコールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、グリセロール
モノステアレート、アセチル化モノグリセリド(ステアレート)、ソルビタンモノオレエ
ート、プロピレングリコールモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ステアロイ
ル−2−乳酸カルシウム、グリセロールモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、
大豆レシチン、モノグリセリドのジアセチル化酒石酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリ
ウム、ソルビタンモノラウレートが挙げられる。ステアロイル乳酸ナトリウムおよびグリ
セロールモノステアレートがデンプン系で通常使用される。
【0026】
【表2】
【0027】
1〜1.5%の範囲の量で添加されたグリセロールモノステアレートは、機械的性質を
安定化させ、ブレンドの均一性を増す乳化剤として作用する。0.25%から1.5%で
可塑剤系に添加されたステアロイル乳酸ナトリウムは、機械的性質をさらに安定化させ、
ブレンドの均一性を増加させる。ステアロイル乳酸は(ナトリウムまたはカリウム塩とし
て)生地補強剤としても通常使用され、それ故、劣化(後退)防止剤として作用すること
ができる。グリセロールモノステアレートとステアロイル乳酸ナトリウムとを組み合わせ
ることにより特性のより早い安定化が得られる。HLB値は、加成則に従い、SSLとG
MSの適当な混合物については4〜10程度のものである。
【0028】
水は、デンプンを「ゼラチン化」(脱構造化または融解とも呼ばれる)してポリマーの
ゲル構造にするために加えられる。水は、また、最終生成物中で可塑剤のように作用し、
材料を軟化させ、すなわち弾性率を低下させる。材料の含水率は、水分活性または30%
未満または75%を超える相対湿度(RH)で変動し得る。多くの応用において材料が暴
露されるその場所のRHは、最大90%の値まで到達し得る。安定した機械的性質、ラミ
ネーション特性およびあらゆる温度での処理加工の容易さのためには不揮発性の可塑剤が
望ましい。それ故、いくらかの量またはすべての量の水を、配合段階の途中または後およ
び/またはその後の射出成形もしくはフィルム形成の供給段階中に蒸発させるのがよいこ
とがある。これは押出し器の容器(barrel)を脱気し、かつ/またはペレットをオンライ
ン乾燥することにより達成することができる。可塑化されていない配合物の押出し加工は
10%の低さの水濃度で可能であり、ポリオール可塑剤を含む配合物は射出成形前に遊離
水0%まで乾燥させることができる。好ましい含水率は、水分吸収実験によって測定され
た最終生成物の使用中のRH範囲における配合物の平衡含水率である。これは配合物の固
有の組成によるが、3〜12%の範囲である。
【0029】
タンポンアプリケーターに対して、乾燥重量基準での好ましい配合は、以下のものであ
る:
a)50〜100%が加工デンプンであるデンプン50〜70重量%;
b)ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、およびエチレンとビニルアルコールのコ
ポリマーから選択され、溶融状態のデンプン成分と適合する融点を有する、水溶性ポリマ
ー5〜13重量%;
c)ポリオール可塑剤15〜35重量%;
d)分子量が20,000より上のポリエチレンオキシド0.5〜5重量%;
e)C12〜22脂肪酸または脂肪酸塩0〜1重量%;および
f)食品等級の乳化剤0.25〜1.5重量%。
タンポンアプリケーターの含水率は約2〜4重量%である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
好ましい配合物として、大量に射出成形され、安価であり、下水系(例えば水洗便器)
を用いて使い捨てができ、食品接触または医療用品に適しており、生分解性であることが
必要な、例えばタンポンアプリケーターなどの製品への配合物の応用に関して説明する。
これらの基準をすべて満たす配合物は現在市場で入手することはできない。
【0031】
タンポンアプリケーターは、一般的には100を超えるキャビティを備えたマルチキャ
ビティ金型の中で低密度ポリエチレン(LDPE)を射出成形することによって通常は製
造される。タンポンアプリケーターは、タンポンを押し進めたときに開く柔らかい翼から
なる任意の丸い先端を備えた外筒と内部のプランジャーとを含む2つの部品の製品であり
、タンポンと共に組み立てられフローラップで包装される。タンポンアプリケーターに使
用されるポリマーの標準的な望ましい機械的性質は、400MPa未満のヤング率、30
%を超える破断点伸びおよび10MPaを超える破断点引張り応力である。該アプリケー
ターは、水と接触したとき瞬時の粘着性を示してはならず、カビの生育に対して耐性がな
ければならない。
【0032】
好ましいタンポンアプリケーターは、ヒドロキシプロピル化した高アミロースデンプン
55〜65重量%;ポリビニルアルコール11〜13重量%;ソルビトールと、マルチト
ール、グリセロールおよびキシリトールのうちの少なくとも2つを含有するポリオール混
合物18〜21重量%;100,000〜400,000の範囲の分子量を有するポリエ
チレンオキシド1.5〜2.5重量%;グリセロールモノステアレートおよびステアロイ
ル乳酸ナトリウム0.5〜1.5重量%;ステアリン酸0.7〜0.9重量%;を含有す
る。
【0033】
コストおよび性能を考慮すると、タンポンアプリケーターの適切な配合物は表3である
(ドライおよびウェット基準)。
【0034】
【表3】
【0035】
この配合物において、ポリオール組成物は、好ましくは[ソルビトール]>2[マルチ
トール]≧[グリセロール]である。使用される可塑剤(1つまたは複数)の組成によっ
て、射出成形製品の平衡含水率は、標準的水分計の方法により測定したとき、2〜5%程
度である(図5参照)。この平衡には、24時間以内に、または粒状物の含水率が10%
未満でありさえすれば、処理加工直後にさえ到達する。この配合物は、197MPaのヤ
ング率、15.2MPaの破断点応力、および113%の破断点伸びを有する。
【0036】
該アプリケーターは、生分解性であり、現在使用されている非生分解性材料と遜色ない
強度および柔軟性の特性を有する。製造コストもまた同程度である。
【0037】
該材料は、共回転または逆回転二軸スクリューあるいは選択されたデザインの一軸スク
リュー押出機を用いる、押出しコンパウンディングによって製造される。好ましい方法は
、押出圧力が少なくとも20バールであり、スクリュー速度が少なくとも100RPMの
二軸スクリュー共回転コンパウンディングである。他の可塑剤の量および性質によっては
水をその方法に(可塑剤と一緒の液体注入を用いて)加えてもよい。水の除去は、押出品
ストランド、粒状物の遠心分離および流動床の対流乾燥、またはバレルベント(barrel v
enting)あるいは両方を用いて行うことができる。粒状物は、水中ペレット製造、ダイフ
ェースカットまたはストランドの冷却と切断によって得ることができる。
【0038】
適当な方法は、配合と射出成形が直列していることを必要とし、押出物は、射出ポット
に蓄積され、型に注入される。ここで射出成形器入口の含水率は、最良の処理加工条件お
よび最小の収縮のために最適化される。
必要に応じて、射出成形部品のさらなる乾燥が、トンネル乾燥機、ドラム乾燥容器、ま
たは流動床で生じてもよい。
【0039】
材料は、従来のホットおよびコールドランナーシステムを備えたスクリュー駆動または
射出駆動方法を用いて射出成形することができる。上記の配合物の粘度は、射出成形法に
とって一般的なせん断速度におけるLDPEのそれと同程度以下である。これは、マルチ
キャビティ処理加工に対する圧力が従来の方法と同程度であり得ることを意味する。本発
明の選択された配合物に対するシングルキャビティ射出成形条件について、射出圧力は、
50〜500バール程度、バレル温度90〜180℃、ノズル温度80〜120℃、金型
温度25〜90℃である。射出成形効率に影響するその他の基本的な態様は、成形後部品
が十分に固化するために要する時間によって支配されるサイクル時間である。本発明の配
合物に関する低い処理加工温度、および実際の溶融状態が存在しないことにより、固化時
間が短く、それによってポリエチレンと同程度のサイクル時間がもたらされる。このこと
が、該配合物を高容量の射出成形作業に適するものとする。
【実施例】
【0040】
対照例(コントロール)
本発明の配合物が、如何に本発明の応用に対して特異的な特性をもたらすかを示すため
に、以下に記載の実施例は、特許明細書WO00/36006に記載されている熱成形用
途に適する生分解性デンプン−PVOHをベースとした材料である対照例(コントロール
)と比較する。
【0041】
実施例1
23%の可塑剤(ドライ基準)以外は、「対照(コントロール)」配合物と同じ銘柄お
よび相対的比率のデンプン、PVOHならびにステアリン酸を含有する配合物を作成した
。可塑剤系は、グリセロール、マルチトールおよびソルビトールが3.3:1.5:1の
比率の混合物からなる。さらにこの配合物は、生体適合性のための1%のポリエチレンオ
キシドおよび乳化剤として1.7%のグリセロールモノステアレートを含有する。それは
、表5に示すようにタンポンアプリケーターに対するすべての機械的性質の要件を満たす

実施例2
2番目の配合物は、グリセロール、マルチトールおよびソルビトールが4.3:1:3
.5である可塑剤の組成以外は実施例1と同じである。この著しく高いソルビトールの量
によって表4に示されているようにより高いヤング率がもたらされる。
実施例3
対照(コントロール)の配合物は、必要とされる医療用品クラスIIAの水準の生体適
合性を確保するために必要な細胞毒性テストに合格しないため、タンポンアプリケーター
には不適である。この実施例においては、細胞毒性の助けとなるステアリン酸を除去し、
PEOを0.6%の量で加えた。
【0042】
実施例4
また、細胞毒性の決定要因を立証するために作成したこの実施例は、対照配合物(コン
トロール)と同じ量のステアリン酸を保持する一方で5.5%量のPEOを有する。
実施例5
対照(コントロール)、実施例3および実施例4と比較するため、この配合物は、ステ
アリン酸なしで、2%量のPEOを含有する。これらの配合物の生体適合性が後に検討さ
れ、表8に集計されている。さらに、この配合物は、より高いPVOH量を除いて実施例
2と対比される。PVOH対(ドライ)デンプンの比率は、実施例2の0.11の比率に
比べて0.20である。これにより、著しいヤング率の低下、および著しい破断点伸びの
増加がもたらされ、それぞれ図3および図4に、ならびに表4に示されているとおりであ
る。
実施例6
この配合物は、実施例1のグリセロール、マルチトール、ソルビトールの混合物で21
%まで可塑化されている。それは、1%GMSおよび0.28%SSL、ならびに0.5
%PEOの乳化剤系を含有する。それは、表5に示すようにタンポンアプリケーターに対
するすべての機械的性質の要件を満たす。
【0043】
実施例7
この配合物は、より高いPVOH量を除いて実施例1と対比される。PVOH対(ドラ
イ)デンプンの比率は、実施例1の0.11の比率に比べて0.23である。これにより
、著しいヤング率の低下、および著しい破断点伸びの増加がもたらされ、それぞれ図3
よび図4に、ならびに表4に示されているとおりである。
実施例8
この配合物は、実施例1のポリオール混合物で32%まで可塑化されている。高レベル
の可塑化によりヤング率、引張り強さが著しく低下し、破断点伸びを劇的に増大する。特
性はGMS/SSLのそれぞれ1%と0.25%の混合物により安定化され、細胞毒性は
1%のPEOにより克服される。
【0044】
比較例9
次の3つの比較例は、使用した可塑剤の量への機械的性質の依存性を定量化するために作成し、図2および表4に示した。可塑剤のポリオール混合物は実施例1のものである。この配合は14%の可塑剤を含む。GMS/SSL乳化剤を0.3%/0.1%の量で、PVOHを対照例(コントロール)と同じ比率で組み込み、PEOは加えない。
比較例10
この配合物は、比較例9と同じPVOH/デンプン比、同じ種類および量の乳化剤、同じ種類の可塑剤を有するが、可塑剤の量が14%の代わりに23%である。4%平衡含水率において、得られた引張り試験片は、表5に示されているようにタンポンアプリケーターに対するすべての機械的性質の要件を満たす。
比較例11
この配合物は、比較例9と同じPVOH/デンプン比、同じ種類および量の乳化剤、同じ種類の可塑剤を有するが、可塑剤の量が32%である。この配合物は、また、PVOHの量が少ないこと以外は実施例8と対比される。PVOH対(ドライ)デンプンの比は、実施例8についての0.18の比と対比して0.11:1である。これにより、著しいヤング率の低下、および著しい破断点伸びの増加がもたらされ、それぞれ図3および図4に、ならびに表4に示されているとおりである。
【0045】
比較例12
次の4つの比較例は、使用したポリオール可塑剤の種類への機械的性質の依存性を定量化するために作成し、図1および表4に示されている。GMS/SSL乳化剤が1%/0.25%の量で組み込まれている。PVOH対デンプンの比は0.21でありPEOは加えない。4つの配合は、それぞれ35%の可塑剤(ドライ基準で)を含有する。この配合物の可塑剤のポリオール混合物はグリセロール、マルチトール、ソルビトールが4:2:1の比率の混合物からなる。後で議論し、表6にまとめられているように、これらの配合物は、異なる湿潤性挙動を示し、機械的性質およびそれらの安定性に役立っているものと考えられる。
比較例13
ポリオール可塑剤を比較するためにこの材料は35%のソルビトールを含有する。ソルビトールは3つの比較した可塑剤系のうちの最も強力な湿潤剤であり、表6で示すように130℃における最低の水分損失測定を生じる。ソルビトールのより高い融点に加えてその湿潤性挙動により、図1に示すように最も高いヤング率がもたらされる。それは、表5に示すように、タンポンアプリケーターのすべての機械的性質の要件を満たす。しかしながら、純粋なソルビトールは、射出成形物表面に不透明な白色の結晶層を生じるブルーミング効果を示し、これは本発明の好ましい配合物におけるようにソルビトールを少量のマルチトールおよびグリセロールと混合することによって除去することができる。
比較例14
ポリオール可塑剤を比較するため、この材料は35%のキシリトールを含有する。
比較例15
ポリオール可塑剤を比較するため、この材料は35%のグリセロールを含有する。
【0046】
この配合物をISO標準10993クラス2Aのタンポンアプリケーターなどの医療用
品に特に適するようにするその有利な特性は、以下の項目である:
1.低いヤング率(<400MPa)
材料の剛性は、ポリオール可塑剤の量および組成で操作でき、可塑化してない配合物に
対する1145MPaから、最大量の可塑剤を含む実施例に対する21MPaまでの範囲
であり得る。これによりこれらの等級は広範囲の射出成形用途に適するものとなる。
表4に示すように、一連の可塑剤系を使用することにより、ヤング率(圧縮成形したド
ッグボーンの)は可塑剤として水のみを含有する基本ケースの配合物から著しく低下して
いる(試験法ASTM638)。
【0047】
【表4】
【0048】
2.破断点ひずみ(>30%)
材料の伸展性挙動は、可塑剤の量で操作でき、可塑化してない配合物に対する37%の
最低から、最大量の可塑剤およびPVOHを含む実施例に対する300%近くまでの範囲
であり得る。これによりこれらの等級は広範囲の射出成形用途に適するものとなる。
3.引張り強さ(>10MPa)
材料の引張り強さは、可塑剤の量で操作でき、高度に可塑化した配合物に対する4.5
MPaから、低い量またはゼロの可塑剤の実施例に対する25MPaまでの範囲であり得
る。したがって、広範囲の射出成形用途に適する等級を調製することができる。
【0049】
表5は、すべての機械的性質を同時に満足する配合物をまとめている。ここで表にした
含水率は、Perkin elemer HB43水分計を用いてASTM638により
試料を40時間コンディショニングした後に測定する。
【0050】
【表5】
【0051】
過去におけるデンプンをベースとしたポリマーの問題点は、水分の蒸散および/または結晶化の結果として、時間が経つと機械的性質が変化することであった。ここで作成した組成物の多くは、持続性で非硬化性の機械的性質を示す。種々の特性が平衡に達するために必要な時間は、工程の乾燥段階ならびに使用される可塑剤および乳化剤系とその湿潤特性に依存する。表6は、比較例12(グリセロール>マルチトール>ソルビトールの混合物)および比較例15(グリセロール)と比較して比較例13(ソルビトール)および比較例14(キシリトール)で使用されている可塑剤系の優れた湿潤特性を示す。表は、ハロゲン水分計を用いて130℃で測定した含水率を、この試験のために、乾燥されていない、混ぜ合わせた配合中の実際の含水率と比較して示している。
【0052】
【表6】
【0053】
オンラインで射出成形部品中の平衡含水率に到達させるにはバレルベントと粒状物乾燥
の組合せが推奨される。粒質物乾燥/ベントなしで製造された配合物は、最初の100時
間以内に著しい硬化を示す。いくらかのその後の硬化は、今度は結晶化および/または逆
可塑化効果による。適切な含水率で加工された好ましいポリオール組成の配合物は、表7
に示されているように機械的性質の老化(エージング)を示さない。観察される変化があ
ってもそれは実施例全体にわたって繰り返す傾向をたどることはなく、おそらく小さいサ
ンプルサイズおよび部品製造の実験規模によるものである。
【0054】
【表7】
【0055】
4.従来のLDPEに相当する収縮
射出成形した引張り試験片の収縮を観察した。多くの配合物が何らかのプロセス最適化前でさえLDPEと同等以下の収縮を示した。その他はより高い収縮を示し、さらなる最適化が必要であろうが、すべての等級について制御可能であることが見出された。
実施例又は比較例 収縮率(流れ方向)
実施例6 6.6%±1.3%(N=11)
比較例12 4.5%±0.5%(N=40)
比較例14 2.9%±0.4%(N=9)
比較例13 2.6%±0.2%(N=10)
【0056】
5.生分解性
本発明の組成物は、国際標準、特に工業用コンポスト化施設および廃水管理システムに
対するEN13432:2000に準じて、生分解性およびコンポスト化可能である。生
分解性試験は、EN13432要件、特にコンポストのISO14855および水媒体の
ISO14851またはISO14852に準じて行った。EN13432指定の崩壊試
験により、商業用コンポスト化の模擬条件において所要の崩壊の水準が示された。
【0057】
6.水洗便器に流せる
本発明の組成物は、廃水処理の模擬条件において実質的に崩壊し、したがって水洗便器
に流せるものと考えられる。2つの例の材料(対照配合(コントロール)の1mmの厚さ
のシートおよび実施例5の配合の1mmの厚さの射出成形部品)をトイレットペーパーと
比較して水洗の可能性について試験した。
水洗可能性の試験に対しては、標準法CEN TC 249 WI 249510(「
プラスチック−廃水処理プラントにおける崩壊性の評価−検収完了および仕様書のための
試験計画)を修正したものを使用した。該方法に対しての修正点は、a)天然物質の完全
な乾燥は、微細構造を変化させ、したがってその物質の水分吸収挙動を変えるかもしれな
いため試料乾燥を削除したこと;b)水洗便器に流した物質により経験された乱流状態を
より良く模倣するために、異なる容器および撹拌条件を使用したこと;c)廃物処理プラ
ントにおける篩い分け処置をより良く再現するために、篩に集めた残渣を過剰の水で洗浄
したことである。「水洗性因子」は、水中で16時間撹拌した後10mmの網の篩を通過
する物質の画分として定義した。
対照(コントロール)および実施例5の配合の両方とも1.0の水洗性因子を達成し、
これらの物質が水洗便器に流せるものと考えられることがわかった。
【0058】
7.生体適合性
生体適合性試験は、クラス2Aの医療用具に必要なものとして、ISO標準10993
「医療用具の生物学的評価」に準じて行った。このクラスは、粘膜の細胞膜との単数回ま
たは複数回使用での接触あるいは最大で24時間にもなり得る接触に適する用具を表す。
このタイプの用具は、以下の試験に合格しなければならない:
細胞毒性(ISO10993−5)
細胞培養技術の使用により、これらの試験は、医療用具、物質および/またはそれらの
抽出物により引き起こされる細胞の溶解(細胞死)、細胞増殖の阻止、および細胞に対す
るその他の影響を測定する。細胞毒性を測定するために使用することができる方法は2つ
存在する。1つは、ISOの溶離法であり他は寒天重層法である。前者はより高感度の試
験であり、本発明の評価に使用した。
感作(ISO10993−10)
これらの試験は、適当なモデルを用いて、医療用具、物質および/または抽出物の接触
感作に対する可能性を予測する。これらの試験は、可能性のある抽出物への暴露または接
触がたとえ微量でもアレルギーまたは感作反応を生じ得るために適切である。感作試験は
、ISO10993−10に記載されている。
本発明の配合物は、この試験の条件を満たす。
刺激作用(ISO10993−10)
これらの試験は、適当なモデルの皮膚、眼および粘膜の膜などの移植組織についての適
当な部位を用いて医療用具、物質および/または抽出物の刺激作用の可能性を予測する。
刺激作用試験は、ISO10993−10に記載されている。
【0059】
生分解性デンプン−PVOH材料(対照;コントロール)は、生体適合性ではなく、そ
れは、おそらく露出した細胞に対して界面活性剤として作用するステアリン酸の影響のた
めに細胞毒性試験に不合格となる。本発明の配合物は、生体適合性を確保するためにポリ
エチレンオキシド(またはポリエチレングリコール)をさまざまな量で添加し、ステアリ
ン酸の存在および不存在の両方において効果的であることが示されている。表8は、生体
適合性試験を受けた配合物の例をまとめている。
【0060】
【表8】
【0061】
細胞毒性試験は、本発明の実施例3、実施例4および実施例5が合格した(ISOの溶
離法IXの37℃で行う最小必須培地抽出(MEM))。さらに、刺激作用試験および感
作試験の篩い分け試験としてわれわれが想定したマウスにおけるUSP全身毒性試験は、
生体適合性を増すことを意図した添加剤を含まない本発明の対照(コントロール)の配合
物が合格し、それ故、生体適合性を付与した実施例3、実施例4および実施例5を試験す
ることは必要ないと考えた。
【0062】
8.低コスト
この配合物は、この用途に対するいくつかの主要な基準を満たすどんな生分解性材料よ
りコストが著しく低く、現行の生分解性ではなくまたは水洗便器に流せないタンポンアプ
リケーターより、実用化できない程高価ということはない(現行のLDPEの価格と比較
して最大で2〜3倍)。この種の配合物は、石油から誘導されるポリマーのような価格変
動の水準を経験することはない。
【0063】
低いヤング率、高い破断点伸び、適度な引張り強さ、生体適合性、生分解性、水洗性お
よび射出成形性の組合せにより、これらの配合物は、タンポンアプリケーターなどの医薬
および衛生装置に対して理想的に適合する。
【0064】
タンポンアプリケーターの性能および外観は、容認できるものであり、従来の非生分解
性アプリケーターと同じく良好である。現段階で認定はされていないが、この材料は、多
くの従来のポリマーより柔らかくてより自然な感触を有する。本発明の組成物から製造さ
れたアプリケーターの著しい利点は、廃棄がはるかに簡単であり、より便利で衛生的であ
ることである。上の記述および実施例から、本発明は、価格および性能特性が従来の非生
分解性の射出成形性ポリマーに匹敵する生分解性デンプンポリマーを提供することが理解
できる。このため、タンポンアプリケーターは、環境に優しいというさらなる利点が追加
されて体裁がよいと同時に魅力的であり得る。
【0065】
本発明はタンポンアプリケーターに関して説明されているが、当業者であれば、本発明
の射出成形組成物は、また、他の用途にも製品の所望の特性に対する特定の組成物の内容
を調整することによって使用することができることを理解するであろう。該組成物は、水
洗性および生分解性が望ましい綿棒、採尿補助具、カトラリー、ひしゃく、へらなどを含
むその他の医療または食品関連製品を成形するために使用することができる。これらの特
性は、また、トイレットペーパーの巻心、トイレットブラシヘッド、包装で使用されるク
リップおよびひも、食肉加工で使用される食道クリップ、建物の一時的な下水管プラグ、
不活性な弾薬シミュレーション、蚊避けバケツを含む現在くずまたはごみ管理の問題を象
徴している製品でも組成物を有用にする。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】可塑剤の種類に応じた機械的性質を示す図である。
図2】可塑剤の量に応じた機械的性質を示す図である。
図3】PVOHの量に応じたヤング率を示す図である。
図4】PVOHの量に応じた破断点伸びを示す図である。
図5】粒状物含水率に応じた射出成形した引張り試験片の平衡含水率を示す図である。
図1
図2
図3
図4
図5