(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669908
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】冷却部品を用いて反りの少ない3次元オブジェクトを積層方式で形成する製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 67/00 20060101AFI20150129BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
B29C67/00
B22F3/105
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-192013(P2013-192013)
(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2014-58157(P2014-58157A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2013年9月17日
(31)【優先権主張番号】10 2012 216 515.0
(32)【優先日】2012年9月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512266187
【氏名又は名称】エボニック インダストリーズ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Evonik Industries AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マイク グレーベ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ディークマン
(72)【発明者】
【氏名】ズィークリート ヘッセル−ゲルトマン
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン クロイツ
【審査官】
越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−183146(JP,A)
【文献】
特開2003−305778(JP,A)
【文献】
特開2005−089863(JP,A)
【文献】
特開2003−001714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 67/00−67/04
B22F 3/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元のオブジェクトを積層方式で形成するための装置(1)であって、
高さ調整可能な成形プラットフォーム(16)を備えた成形チャンバ(20)と、
電磁波を加えると固結する材料の層を前記成形プラットフォーム(16)上に成膜するための堆積装置(17)と、
電磁波を放出する放射源(11)を有する照射装置と、
前記電磁波を制御するための制御装置(13)と、
前記少なくとも1つのオブジェクト(15)に相当する、前記層の場所に照射するために、前記電磁波の放射経路に設けられたレンズ(18)と
を有する装置(1)において、
前記オブジェクト(15)と同時に少なくとも1つの冷却部材(21)が形成されるように構成されており、
前記冷却部材(21)は柱形を有するオブジェクトであり、前記柱体の幅は一端または両端に向かって漏斗形に拡がっている、
ことを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの冷却部材(21)は粉末ケーキ(23)中に組み込まれる、
請求項1記載の装置(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの冷却部材(21)は中空体である、
請求項1または2記載の装置(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの冷却部材(21)は冷媒を含む、
請求項1から3までのいずれか1項記載の装置(1)。
【請求項5】
前記冷媒は、固体、液体または気体である、
請求項4記載の装置(1)。
【請求項6】
前記冷却部材(21)は前記オブジェクト(15)から5〜100mm離れている、
請求項4または5記載の装置(1)。
【請求項7】
前記冷却部材は封止されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記冷却部材は、冷却液を充填するためのインレットを有する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の装置(1)で3次元のオブジェクトを積層方式で形成する製造方法において、
少なくとも1つのオブジェクト(15)と少なくとも1つの冷却部材(21)とを同時に形成する
ことを特徴とする製造方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの冷却部材(21)の形成終了後、当該冷却部材(21)内部の固結されていない材料を除去する、
請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの冷却部材(21)の形成終了後、当該少なくとも1つの冷却部材(21)内に冷媒を充填する、
請求項9または10記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元オブジェクトを積層方式で製造するための装置と、積層方式で形成する製造方法と、対応する成形体とに関する。
【背景技術】
【0002】
試作品をスピーディに形成することは、最近しばしば挙げられることの多い課題となっている。これを可能にする手法は、ラピッドプロトタイピング、ラピッドマニファクチャリングまたはアディティブ・ファブリケーション手法と称される。特に適しているのは、粉末状の材料を利用した手法であり、この手法は、1層ごとに選択的な溶融と硬化とによって、所望の構造体を形成するものである。この手法では、突出部やアンダーカットの場合のサポート構造を省略することができる。というのも、溶融領域を包囲する成形フィールド面が十分なサポート機能を果たすからである。また、サポートを除去する後処理も省略することができる。このような手法は、少数の製品を製造するのにも適している。成形チャンバ温度は、成形プロセス中に、積層方式で製造される構造体に反りが生じないように選択される。
【0003】
ラピッドプロトタイピング用に特に適した手法は、選択的レーザ焼結手法(SLS)である。この手法では、チャンバ内において樹脂粉末にレーザビームを選択的に短時間照射し、これにより、レーザビームが当てられた粉末粒子が溶融する。この溶融した粒子は相互に混ざり合い、迅速に硬化して再び固体の塊に戻る。この手法では、新たに層を設けて照射することを繰り返すことにより、3次元体を簡単かつ迅速に作製することができる。
【0004】
粉末状のポリマーから成形体を成形するこのレーザ焼結法(ラピッドプロトタイピング)は、US6136948およびWO96/06881(双方ともDTM Corporation社)に詳細に記載されている。これに用いるための、多くのポリマーおよびコポリマーがクレームに記載されており、たとえばポリアセテート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アイオノマーおよびポリアミドが記載されている。
【0005】
他の非常に適した手法として、たとえばWO01/38061に記載されたようなSIV法(選択的結合阻止法)や、EP1015214に記載されたような手法がある。これら両手法とも、粉末を溶融させるために面状の赤外線加熱を用いて実施される。溶融の選択性は、前者の手法では抑制剤を被着することにより実現され、後者の手法ではマスクにより実現される。US2004/232583A1に別の手法が記載されており、この手法では、溶融するための必要なエネルギーをマイクロ波発生器によって生成し、選択性はサセプタを被着することにより実現される。WO2005/105412には、溶融に必要なエネルギーを電磁波によって生成する手法が記載されており、この手法でも、選択性は吸収材を被着することにより実現される。
【0006】
従来技術から公知である上述の手法の問題は、粉末ケーキ中にある複数の部品が不均等に冷却されてしまうということである。この粉末ケーキの中心は必然的に、外側領域(縁部)よりも格段に遅く冷却される。この作用はさらに、ポリマー粉末の凝集体の熱伝導率が悪いことによって増幅される。この粉末ケーキにおける温度差が大きいと、部材の反りに繋がる。さらに、粉末ケーキの中心の冷却が緩慢であることにより、粉末ケーキの中心にある粉末にかかる熱的負荷は大きくなる。従来技術では、積層方式で形成される部材のこの反りを最小限にするために、粉末ケーキを可能な限り緩慢に冷却していた。このような緩慢な冷却は、成形容器周辺に取り付けられる絶縁部または付加的な加熱部を用いて行われる。従来技術の別の実施態様として、適切に温度調整されるチャンバ内にて成形容器を冷却する手法がある。このことによって部品の反りは低減するが、冷却時間が格段に長くなることにもなり、これにより、ポリマー粉末にかかる熱的負荷も大きくなる。
【0007】
DE102007009273に、粉末ケーキを冷却する手法が記載されている。この冷却は、層状ケーキ中に少なくとも部分的に流体を流すことにより行われる。このようにして、中心区域も縁部区域も冷却される。中心区域と縁部区域とに同時にかつ無差別に流すことにより、まず最初に縁部領域が冷却されるので、作製すべきオブジェクトにおいて反りが生じることになる。このようなプロセスには、複雑な制御電子回路が必要である。さらに、粉末ケーキと作製されるオブジェクトとにコンタミネーションが生じる可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US6136948
【特許文献2】WO96/06881
【特許文献3】WO01/38061
【特許文献4】EP1015214
【特許文献5】US2004/232583A1
【特許文献6】WO2005/105412
【特許文献7】DE102007009273
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の課題は、粉末ケーキを均質および/または所期のように冷却することにより、部品の反りを最小化することである。この冷却は、粉末ケーキの外側領域でも中心においても均質でなければならない。また、ポリマー粉末の冷却時間および熱的負荷も低減しなければならない。上述のことは、流体による粉末ケーキのコンタミネーションが無いよう、また、複雑な制御技術を用いずに、実現できるようにしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、本発明の装置によって解決される。本発明の第1の対象は、3次元オブジェクトを積層方式で製造するための装置(1)であり、当該装置(1)は、高さ調整可能な成形プラットフォーム(16)を有する成形チャンバ(20)と、電磁波を加えると固結する材料の層を前記成形プラットフォーム(16)上に成膜するための装置(17)と、照射装置とを含み、前記照射装置は、電磁波を放出する放射源(11)と、制御ユニット(13)と、前記層の、少なくとも1つの前記オブジェクトに相当する場所に照射するためのレンズ(18)とを有し、前記レンズ(18)は、前記電磁波の放射経路に設置されている。前記装置(1)において、作製すべき前記オブジェクト(15)と同時に、少なくとも1つの冷却部材(21)を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】3次元オブジェクトを製造するための本発明の装置の基本的構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
有利には、前記冷却部材(21)は冷媒である。1つの有利な実施形態では、前記冷却部材(21)は粉末ケーキ(23)に組み込まれる。
【0013】
前記冷却部材(21)および前記オブジェクト(15)は、相互に別個の2つの物であるか、または、相互に分離可能な2つの物である。
【0014】
本発明の装置(1)により、オブジェクト(15)を所期のように冷却させることができる。
【0015】
驚くべきことに、本発明の装置(1)により、オブジェクト(15)および冷却部材(21)が作製された後、粉末ケーキが流体により汚染されることなく、また、複雑な制御技術も必要とすることなく、粉末ケーキの縁部区域と中心区域とが均質に冷却できることが判明した。
【0016】
図1に、3次元オブジェクトを製造するための本発明の装置(1)の基本的構成を示す。この部品は、たとえば成形フィールドの中央に位置決めされる。レーザ(11)からレーザビーム(12)が走査システム(13)により、レンズ(18)を通って、温度調整かつ不活性化された、成形すべきオブジェクト(15)の粉末表面(14)に向けられる。前記粉末表面(14)は、有利には窒素を用いて不活性化されている。前記レンズはここでは、たとえばスキャナのミラー等である他の光学部品を成形チャンバ雰囲気から分離する機能を有する。前記レンズは、作業フィールド全体にわたって可能な限り均質な焦点を保証するために、Fシータレンズシステムとして構成されることが多い。成形チャンバ内には、固結すべき材料を前記成形プラットフォーム(16)上に堆積させるための堆積装置(17)が設置されている。前記冷却部材(21)は粉末ケーキ中に組み込まれており、この粉末ケーキを所期のように冷却するために用いられる。前記冷却部材(21)は有利には中空体から成り、有利には、この中空体の壁厚と断面との比は0.3未満である。前記少なくとも1つの冷却部材(21)は有利には、前記オブジェクト(15)から5〜100mm離れて配置されており、有利には10〜50mm離れて配置されている。
【0017】
前記冷却部材(21)は上述の積層方式を用いて形成され、溶融ないしは焼結されたポリマー粉末から成る。この冷却体の幾何学的形状を介して、粉末ケーキの相応の位置における冷却能力を調整することができる。
【0018】
前記冷却体は、非常に異なる幾何学的形状を有することができ、たとえば当該冷却体は、柱形、トーラス形、角錐形、円柱形、円錐形、球形、直方体形または立方体形であるか、または節を有するオブジェクト等である。1つの実施形態では、前記柱体の幅は、一端または両端に向かって漏斗形に拡がっていく。このことにより、(ほぼ)垂直に配置されたときの冷却体の安定性の向上ないしは注入の改善が実現される。有利には前記冷却体は、下方向に封止されている。このように封止することにより、冷却体はたとえば液状の冷媒を収容することができる。前記冷却体の一部または全部を封止するか、または、前記冷却体は、冷却液を注入するための少なくとも1つのインレットを有することができる。有利には前記冷却体は、冷媒を循環系内で循環させるための少なくとも1つのインレットと少なくとも1つのアウトレットとを有する。このインレットおよびアウトレットに、冷媒を輸送するためのチューブを設けることができる。
【0019】
本発明はまた、3次元オブジェクトを積層方式で形成する製造方法も対象とし、当該製造方法は以下のステップを有する:
まず、ポリマー粉末を固結することにより、前記少なくとも1つのオブジェクト(15)と前記少なくとも1つの冷却体(21)とを同時に形成する。次に、成形プロセスの実施中または終了後、冷却体に冷媒を充填し、冷却体は粉末ケーキの周辺領域を冷却する。1つの有利な実施形態では、冷却体に冷媒を充填する前に、たとえば吸引によって粉末を冷却体の内部領域から除去する。冷媒を冷却体内に注入することにより、当該冷却体の外側にある粉末ケーキの粉末が冷媒によって汚染されることがなくなる。冷媒を1回冷却体内に充填してここに留めるか、または、連続的または規則的に冷媒を交換することができる。それに代えて択一的に、前記冷媒を循環系内に入れて外部から(冷却体の外側から)冷却することも可能である。上述の実施形態を相互に組み合わせることも可能である。
【0020】
冷却体の冷却能力が、粉末ケーキ内の冷却プロセス中に所望の温度分布を生じさせるように、前記1つまたは複数の冷却体を構成、位置決めおよび方向決めすることができる。冷却能力を最適化するために1つまたは複数の供給口および/または排出口が設けられるように、前記1つまたは複数の冷却体を構成することができる。前記冷媒は、気体や液体や固体の物質から成ることができ、または、これらの物質の混合物から成ることもできる。その際には、低反応性物質、とりわけ不活性物質が有利である。有利なのは、気体および/または液体の冷媒である。たとえば、空気、窒素、アルゴン、水、水混合物、高沸点の有機溶剤、油、または、銅または鋼等である金属が適している。前記水混合物は界面活性剤を含むことができる。適した油としては、シリコーン油がある。高沸点の有機溶剤は、100℃を超える沸点を有するものである。有利には、前記沸点は150℃を上回り、特に有利には200℃を上回り、非常に有利には250℃を上回る温度である。適しているのはたとえば、Sasol Germany GmbH社の商品名 Marlotherm SH で販売されているジベンジルトルエン等である。
【0021】
冷媒の温度および物性は、粉末ケーキにおける冷却中に所望の温度分布を実現できるように選択すべきである。その際には冷媒は、熱伝導、対流、熱放射または沸騰冷却によって放熱することができる。
【0022】
この冷却プロセスは、装置(1)の内部においても外部においても行うことができる。また、温度調整される外部のチャンバ内において前記冷却プロセスを行うことも可能である。
【0023】
以下、3次元オブジェクトの積層方式による製造方法を説明する。本発明はこの説明内容に限定されない。
【0024】
基本的に、当業者に公知であるポリマー粉末はすべて、本発明の装置(1)ないしは本発明の方法にて使用するのに適している。特に適しているのは、たとえばポリエチレン(PE,HDPE,LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステルエステル、ポリエーテルエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリアルキレンテレフタレート等である熱可塑性プラスチックや熱可塑性エラストマ(Thermoelast)、とりわけポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルフォン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアリルエーテルケトン、とりわけポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリアリルエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)またはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレンスルフィド、とりわけポリフェニレンスルフィド(PPS)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフッ化ビニリデン、ならびに、上記熱可塑性プラスチックのコポリマー、混合物および/またはポリマーブレンドであり、たとえばポリアリルエーテルケトン(PAEK)/ポリアリルエーテルスルフォン(PAES)コポリマー等である。特に有利なのは、前記ポリマー粉末が少なくとも1種類のポリアミドまたはポリエーテルケトンを含むこと、特にポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド6.6またはPEEKを含むことであり、ここで挙げたこれらのポリアミドが特に有利である。
【0025】
動作時にはまず、通常はコンピュータにおいて構築プログラム等に基づき、製造すべきオブジェクト(15)の形状に関するデータを作成ないしは記憶する。オブジェクト(15)を製造するためには、この形状に関するデータは、オブジェクト(15)を、オブジェクトの寸法と比較して薄い、多数の水平方向の層に分割し、形状データを前記1層ごとにたとえばデータセットとして、たとえばCADデータとして作成するように処理される。ここでは各層のデータの作成および処理は、各層の形成前に行うか、または各層の形成と同時に行うことができる。
【0026】
次に、成形チャンバの表面を含む平面に成形プラットフォーム(16)の表面が来る最高位置に、当該成形プラットフォーム(16)を高さ調整装置によって移動させ、その後、当該成形プラットフォーム(16)を、第1の材料層の所定の厚さの分だけ下げることにより、生成された陥入部内に、側方が当該陥入部の壁によって区切られ、下が当該成形プラットフォーム(16)の表面により区切られた低い領域が形成されるようにする。その後、たとえば回転シリンダの形態である堆積装置(17)によって、固結すべき材料の第1層を所定の層厚で(1重の層厚で)、前記陥入部と成形プラットフォーム(16)とに形成された空洞ないしは低い領域に入れ、場合によってはこの第1層をヒータによって、適切な作業温度にまで、たとえば100℃〜360℃にまで、有利には120℃〜200℃にまで加熱する。このヒータは当業者に慣用されているものである。次に前記制御ユニット(13)は、層のすべての場所に順次、偏向された光ビーム(12)を照射させて、材料を焼結ないしは溶融させるように、前記偏向装置を制御する。このようにして、まず最初に固体の底部層を形成することができる。第2のステップにおいて、前記成形プラットフォーム(16)を前記高さ調整装置により、通常は1重の層厚の分だけ下げる。このようにして陥入部内に形成された低い領域に、前記堆積装置(17)によって第2の材料層を入れ、場合によってはこの第2の材料層もヒータにより加熱する。
【0027】
1つの実施形態では、約2〜10mmの壁厚を有する第1の環状壁層が、当該層の他の粉末状材料を完全に包囲するように形成されるよう、偏向された光ビーム(12)が、前記陥入部の内側面に接する材料層の領域にのみ当たり、材料層を焼結により固結させるように、今度は前記偏向装置を制御ユニット(13)により制御することができる。よって、制御のこの部分は、形成すべきオブジェクト(15)を包囲する容器壁を形成すると同時に当該オブジェクト(15)を1層ごとに形成するための装置となる。
【0028】
上記にて説明したのと同様に、次の層の層厚(たとえば1重の層厚)の分だけ成形プラットフォーム(16)を下げて材料を堆積させて加熱すると、オブジェクト(15)と冷却部材(21)との製造を自動的に行うことができる。こうするためには制御ユニット(13)は、当該制御ユニットに記憶された、製造すべきオブジェクト(15)の座標と冷却部材(21)の座標とにしたがって固結すべき層の場所に光ビーム(12)を偏向させて当てるように、偏向装置を制御する。以降の層でも同様のことを実施する。前記オブジェクト(15)と、焼結されていない残りの材料とを一緒に包囲することにより、成形プラットフォーム(16)を作業テーブルの下に下げたときに材料が流出するのを防止する容器壁の形状に、環状の壁領域を所望のように形成する場合には、オブジェクトの各層ごとに前記装置によって、環状の壁層の上に別の環状の壁層を焼結して設ける。EP1037739に記載されたような交換容器や、固体状態で組み込まれた容器を用いる場合には、上述のような壁の作成を省略することができる。
【0029】
形成された前記オブジェクト(15)は、冷却後に装置(1)から取り出すことができる。この形成されたオブジェクトまたは当該オブジェクトの表面において温度を測定するためには、接触測定方式または非接触測定方式の適切な温度計を用いることができる。
【0030】
本発明の製造方法によって製造されたオブジェクト(15)もまた、本発明の対象である。
【0031】
他の実施形態が無くても、当業者であれば、上述の開示内容を非常に幅広く利用できることは明らかである。よって、上述の有利な実施形態や実施例は、決して本発明を限定するものではなく、本発明を説明するための記載内容に過ぎないと解すべきである。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。本発明の他の択一的な実施形態も同様に明らかである。
【0033】
特記しない限りは、これらの実施例は以下の記載に従って処理された。この試験は、ドイツの EOS GmbH 社の装置 EOSINT P380 にて実施されたものである。層厚は0.15mmであり、成形プラットフォームは3mm下げられ、3mmの粉末を堆積させた。成形チャンバは、120分以内で処理温度まで加熱された。成形チャンバ内の温度の分布は必ずしも均一というわけではないので、装置に組み付けられたパイロメータを用いて測定される温度を成形チャンバ温度/処理温度と定義する。この処理温度は175℃であり、取出チャンバ温度は130℃である。最初の露光前に、80個の粉末層を成膜した。レーザ(11)から走査システム(13)を用いて、レンズ(18)を通るようにレーザビーム(12)を、温度調整および不活性化(N
2)された成形フィールド面(14)に向けて照射する。作業フィールド全体にわたって可能な限り均質な焦点を保証するために、前記レンズをFシータレンズシステムとした。
【0034】
総じて12個のオブジェクトを形成し、各1つの群の4個のオブジェクトを同一の高さに位置決めした。1群の各オブジェクト間の間隔は100mmであり、1群の各オブジェクトと成形フィールドの中心との間の各間隔はすべて等しい。前記オブジェクトの各群の間の高さ間隔は50mmである。成形体は、1辺の長さが50mmである立方体である。露光終了後、成形チャンバ内および取出チャンバ内の加熱素子をスイッチオフして冷却フェーズを開始する前に、さらに100個の別の層を設けた。成形プロセス全体において、各1層を形成するのに必要な時間は55秒未満であった。
【0035】
冷却フェーズでは、成形フィールドの中心および角(成形フィールドの隣接する縁辺までの間隔は30mmである)において、ドイツの Newport Electronics GmbH 社のPT100温度計を上から粉末ケーキに140mmの深さまで刺すことにより、この場所の温度を測定できるようにした。
【0036】
参考例1(本発明ではない)
ここで処理したのは、表1に示した粉末特性値を有するPA12粉末である。露光パラメータは以下の通りである:
レーザ出力 19.0W
走査速度 1100mm/s
露光ライン間の距離 0.3mm。
粉末ケーキの冷却は機器内で行われる。表2に、成形プロセスの終了後の温度特性を示している。
【0037】
実施例2(本発明)
ここで処理したのは、表1に示した粉末特性値を有するPA12粉末である。露光パラメータは以下の通りである:
レーザ出力 19.0W
走査速度 1100mm/s
露光ライン間の距離 0.3mm。
12個のオブジェクトの他にさらに、冷却部材も一緒に成形した。この冷却部材は、14mmの外径と1mmの壁厚と150mmの高さとを有する円筒体である。この円筒体はたとえば、成形フィールドの中心より外側に位置決めされる(円筒体の中心軸と成形フィールドの中心点との間の距離は30mmである)。成形プロセスの終了後、この円筒体内部から粉末を除去する。体積流量が7l/minである温度調整された空気(23℃)を用いて、この冷却円筒体を洗浄した。粉末ケーキの冷却は機器内で行われる。表2に、成形プロセスの終了後の温度特性を示している。
【0038】
実施例3(本発明)
ここで処理したのは、表1に示した粉末特性値を有するPA12粉末である。露光パラメータは以下の通りである:
レーザ出力 19.0W
走査速度 1100mm/s
露光ライン間の距離 0.3mm。
12個のオブジェクトの他にさらに、冷却部材も一緒に成形した。この冷却部材は、16mmの外径と1mmの壁厚と150mmの高さとを有する円筒体であり、この円筒体の下端部は閉じられている。円筒体の上端部は漏斗状に形成されている(漏斗直径 25mm、漏斗高さ30mm)。この冷却部材はたとえば、成形フィールドの中心より外側に位置決めされる(円筒体の中心軸と成形フィールドの中心点との間の距離は20mmである)。成形プロセスの終了後、この円筒体内部から粉末を除去する。円筒体に Marlotherm SH(23℃)を完全に充填した。粉末ケーキの冷却は機器内で行われる。表2に、成形プロセスの終了後の温度特性を示している。
【0039】
本発明でない参考例1では、粉末ケーキの中心の方が縁部よりも格段に緩慢に冷却されることが分かる。本発明の実施例では、縁部の温度と中心との温度との差が格段に小さくなっており、粉末ケーキはより均質に冷却するようになっている。このことにより、製造すべき3次元のオブジェクトの反りは低減し、複数の3次元オブジェクトの形成は全体的により速く行えるようになる。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【符号の説明】
【0042】
11 レーザ
12 レーザビーム
13 走査システム
14 オブジェクト15の粉末表面
15 成形すべきオブジェクト
16 成形プラットフォーム
17 成膜装置
18 レンズ
20 成形チャンバ
21 冷却部材
23 粉末ケーキ