(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に従来の踏切しゃ断機が開示されているが、従来の踏切しゃ断機の制御ブロック図を
図3に示し、その動作を簡単に説明する。
【0003】
図3に示すように、従来の踏切しゃ断機は、制御リレーとして、しゃ断棹の上昇・下降制御用のリレーCR1と、モータ3およびブレーキ5の制御用のリレーCR2とを備える。
【0004】
下降動作を指示する制御入力がなされると、リレーCR1が落下して動作接点(扛上接点ともいう)CR1aが開放することでモータ駆動制御部1000に下降動作の動作指示信号が入力される。また、リレーCR1の落下により、動作接点CR1bが開放されてカムスイッチCSのうち、下降側カムスイッチCS2が有効とされる。カムスイッチCSには、しゃ断棹が上昇基準位置に達したことを検出する上昇側カムスイッチCS1と、下降基準位置に達したことを検出する下降側カムスイッチCS2とがある。なお、上昇基準位置および下降基準位置は角度範囲として設定され、カムスイッチCSを機構的に調整することで設定変更可能である。
【0005】
さて、下降側カムスイッチCS2が有効とされるが、下降動作開始時のこの時点では下降側カムスイッチCS2がOFF(非検出)のため、リレーCR2が落下する。リレーCR2の落下により動作接点CR2bが開放され、ブレーキ5が緩解される。リレーCR2の落下により復旧接点(落下接点ともいう)CR2aが構成されて、モータ電源がモータ駆動制御部1000に供給される。モータ駆動制御部1000は、モータ電源が供給されることで起動して、制御入力に従ってモータ3を下降方向に駆動する。
【0006】
そして、しゃ断棹が下降位置に到達すると、下降側カムスイッチCS2がON(検出)となり、リレーCR2が扛上する。リレーCR2の扛上により動作接点CR2bが構成されてブレーキ5が作動される。また、復旧接点CR2aが開放されてモータ電源のモータ駆動制御部1000への供給が停止され、モータ3の駆動が停止する。
【0007】
一方、上昇動作を指示する制御入力がなされると、リレーCR1が扛上して動作接点CR1aが構成されることでモータ駆動制御部1000に上昇動作の動作指示信号が入力される。また、リレーCR1の扛上により、上昇側カムスイッチCS1が有効とされるが、上昇動作開始時のこの時点では上昇側カムスイッチCS1がOFF(非検出)のため、リレーCR2が落下する。リレーCR2の落下により動作接点CR2bが開放され、ブレーキ5が緩解される。また、リレーCR2の落下により復旧接点CR2aが構成されて、モータ電源がモータ駆動制御部1000に供給される。モータ駆動制御部1000は、モータ電源が供給されることで起動して、制御入力に従ってモータ3を上昇方向に駆動する。
【0008】
そして、しゃ断棹が上昇位置に到達すると、上昇側カムスイッチCS1がON(検出)となり、リレーCR2が扛上する。リレーCR2の扛上により動作接点CR2bが構成されてブレーキ5が作動される。また、復旧接点CR2aが開放されてモータ電源のモータ駆動制御部1000への供給が停止され、モータ3の駆動が停止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の踏切しゃ断機においては幾つかの問題があった。
まず、しゃ断棹の昇降動作の停止時にしゃ断棹が振動する問題である。これは、モータを駆動中にモータ電源の供給を停止することでしゃ断棹の昇降動作を停止していたためである。モータが急停止することで、しゃ断棹の振動が生じていた。
【0011】
次に、しゃ断棹の上昇動作の開始時に、しゃ断棹が一時的に下降する問題である。これは、ブレーキの緩解に遅れてモータが駆動されていたためである。具体的には、モータ電源が供給されてモータ駆動制御部が起動し、モータを駆動させるため、タイムラグが生じていたのが原因である。
【0012】
次に、しゃ断棹の停止位置の調整に熟練を要し、且つ、防塵カバーの開閉に手間がかかるという問題である。しゃ断棹の停止位置を調整するためには、防塵カバーで防護されたカムスイッチを調整する必要があった。ところが、カムスイッチの調整自体が簡単でなく、また、カムスイッチが検出してから実際にモータが停止するまでのタイムラグ等も加味して調整する必要があった。
【0013】
本発明は上述した課題に鑑みて考案されたものであり、本発明の第1の目的は、しゃ断棹の昇降動作の停止時にしゃ断棹が振動する問題を解決することである。また、しゃ断棹の上昇動作の開始時にしゃ断棹が一時的に下降する問題を解決すること、および、しゃ断棹の停止位置の調整を簡単に実現可能とすることを更なる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための第1の発明は、
しゃ断棹を昇降動作させるモータ(例えば、
図1のモータ3)と、
前記しゃ断棹が上昇動作時に所定の上昇基準位置に達したこと、下降動作時に所定の下降基準位置に達したことを検出する検出手段(例えば、
図1のカムスイッチCS)と、
モータ電源が供給され、前記検出手段が非検出の間、上昇動作或いは下降動作を指示する制御入力に従って前記モータを駆動制御し、前記検出手段の検出に応じて前記モータの回転速度を徐々に減速して停止させる駆動制御手段(例えば、
図1の駆動停止制御部11)と、
前記検出手段が検出、且つ、前記モータが非駆動の場合に、前記モータ電源の供給を停止させるモータ電源供給制御手段(例えば、
図1の復旧接点CR3a、リレーCR2、復旧接点CR2a)と、
を備えた踏切しゃ断機である。
【0015】
第2の発明は、
前記検出手段が検出、且つ、前記モータが非駆動の場合に、前記しゃ断棹を制動するブレーキを作動させる第1のブレーキ作動制御手段(例えば、
図1の動作接点CR2b)、
を更に備えた第1の発明の踏切しゃ断機である。
【0016】
第3の発明は、
前記制御入力が上昇動作をさせる指示入力であり、且つ、前記モータが非駆動の場合に、前記しゃ断棹を制動するブレーキを作動させる第2のブレーキ作動制御手段(例えば、
図1の動作接点CR1c、復旧接点CR3b)、
を更に備えた第1又は第2の発明の踏切しゃ断機である。
【0017】
第4の発明は、
前記駆動制御手段は、前記しゃ断棹の停止位置を調整するために前記モータの減速に係るパラメータを調整する調整手段(例えば、
図1の駆動停止制御部11、スイッチ17)を有する、
第1〜第3の何れかの発明の踏切しゃ断機である。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、上昇動作時にしゃ断棹が上昇基準位置に達したこと、下降動作時に下降基準位置に達したことが検出手段により検出される。この検出手段が非検出で、モータ電源が供給されている間、制御入力に従って駆動制御手段がモータを駆動制御してしゃ断棹を上昇動作或いは下降動作させる。そして、検出手段の検出に応じて、モータの回転速度が徐々に減速されて停止される。一方、モータ電源の供給は、検出手段が検出、且つ、モータが非駆動の場合に、停止される。これにより、しゃ断棹が上昇基準位置或いは下降基準位置に到達した場合であっても直ぐにモータ電源の供給が停止されず、モータの回転速度を徐々に減速して停止させることが可能となり、昇降動作の停止時におけるしゃ断棹の振動抑制を実現できる。
【0019】
第2の発明によれば、検出手段が検出、且つ、モータが非駆動の場合に、ブレーキを作動させてしゃ断棹を制動することができる。これにより、モータ駆動が停止して昇降動作を停止した時に合わせてしゃ断棹を制動することができる。
【0020】
第3の発明によれば、上昇動作をさせる制御入力がなされた場合であっても、モータが非駆動の場合には、しゃ断棹を制動するブレーキが作動される。よって、上昇動作の開始時にしゃ断棹が一時的に下降することがない。
【0021】
第4の発明によれば、検出手段が検出してからモータを停止させるための減速に係るパラメータを調整することで、しゃ断棹の停止位置を簡単に調整することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用した一実施形態について説明するが、本発明を適用可能な形態は、以下の実施形態に限らないことは勿論である。
【0024】
図1は、本実施形態の踏切しゃ断機1の制御ブロック図である。
図3に示した従来の踏切しゃ断機100と同一の部材・要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0025】
踏切しゃ断機1は、従来の踏切しゃ断機100と同様、しゃ断棹の上昇動作および下降動作の何れを実行するかの制御入力に従ってモータ3を上昇方向或いは下降方向に駆動させる。また、しゃ断棹が所定の基準位置に到達したことをカムスイッチCSが検出し、モータ3の駆動を停止するとともにブレーキ5を作動させてしゃ断棹の位置を保持する。
【0026】
踏切しゃ断機1が従来の踏切しゃ断機100と異なる点は、モータ駆動制御部10と、外部リレー回路部20とである。
モータ駆動制御部10は、CPU(Central Processing Unit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のプロセッサー、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリ等を有し、メモリに記憶されたプログラムを実行することで、モータ3への電源供給を制御してモータ3を駆動する。また、当該プログラムの実行により実現される機能部として駆動停止制御部11を有する。
【0027】
駆動停止制御部11は、カムスイッチCS(上昇側カムスイッチCS1および下降側カムスイッチCS2)からの検出結果信号に基づいてモータ3の駆動を停止する制御を行う。ただし、停止制御は、モータ3の回転速度を徐々に減速させることで行う。
【0028】
カムスイッチCS(上昇側カムスイッチCS1および下降側カムスイッチCS2)は、上昇動作時にしゃ断棹が所定の上昇基準位置に達したこと、下降動作時に所定の下降基準位置に達したことを検出する検出手段に相当し、従来のカムスイッチCSと同様である。但し、本実施形態の踏切しゃ断機1は、カムスイッチCSを調整することなく、しゃ断棹の停止位置を調整することが可能である。
【0029】
駆動停止制御部11は、カムスイッチCSの検出結果が到達検出を示すHレベルとなった場合に、モータ3を減速させて停止させるが、減速に係るパラメータ(以下「調整パラメータ」という)は調整可能に構成されている。調整パラメータには、減速を開始するタイミングや、減速時間、減速度などの中から、しゃ断棹の停止位置を調整可能なものを適宜選択することができる。本実施形態では、カムスイッチCSの検出結果がHレベル(検出)となってから減速を開始するまでの時間(ディレー時間;時素)を調整パラメータとし、減速時間および減速度については一定とする。ディレー時間を調整することで、カムスイッチCSの検出からモータ3が実際に停止するまでの時間が変更されるため、しゃ断棹の停止位置を調整することが可能となる。
【0030】
具体的には、しゃ断棹の下降動作或いは上昇動作の試行と、調整パラメータの値(以下「調整パラメータ値」という)であるディレー時間の設定とを繰り返すだけで、簡単にしゃ断棹の停止位置を調整することができる。上昇側カムスイッチCS1および下降側カムスイッチCS2を調整する必要が無い。この調整パラメータ値を設定する機能を担う調整部12を、駆動停止制御部11が有する。調整部12が実行する調整処理については
図2を参照して後述する。
【0031】
調整パラメータ値はメモリ13に記憶される。駆動停止制御部11は、この調整パラメータ値を読み出してモータ3の駆動を停止する制御を行う。また、調整パラメータ値には、下降動作用の値と、上昇動作用の値との2種類が含まれる。
【0032】
メモリ13は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリで構成される。メモリ13に記憶される調整パラメータ値は、デジタル値として表示部15に表示され、スイッチ17の操作によって値が増減されて更新される。表示部15は、例えば7セグメントLEDや液晶ディスプレイ等で構成することができる。
【0033】
表示部15およびスイッチ17は、防塵カバーによって防護される上昇側カムスイッチCS1および下降側カムスイッチCS2から離れた位置に設けられ、防塵カバーを取り外すことなくスイッチ17を操作可能に配置構成される。このため、スイッチ17の操作に当たって、防塵カバーを取り外す必要はない。
【0034】
また、モータ駆動制御部10は、リレーCR3および、リレーCR3の復旧接点CR3aならびに復旧接点CR3bを有する内部リレー回路部を備える。リレーCR3は、駆動停止制御部11から出力されるモータの駆動状態を表す信号に応じて扛上/落下する。具体的には、駆動停止制御部11は、モータ3が駆動中(完全停止していない停止制御中を含む)の場合にはON(Hレベル)信号を、非駆動の場合にはOFF(Lレベル)信号を、リレーCR3に出力する。従って、リレーCR3は、モータ3が駆動されている際に扛上し、モータ3の駆動が停止された際に落下する。
【0035】
復旧接点CR3aは、カムスイッチCSとリレーCR2との間に設けられる。復旧接点CR3aは、カムスイッチCSの検出結果がHレベル(到達検出)となり、且つ、モータ3が駆動されていないリレーCR3の落下時に、リレーCR2を扛上させるように作用する。復旧接点CR3aは、リレーCR2および復旧接点CR2aとともに、モータ電源の供給を停止させるモータ電源供給制御手段に相当する。
【0036】
復旧接点CR3bはリレーCR1の動作接点CR1cと直列接続され、直列接続された動作接点CR1cおよび復旧接点CR3bが、ブレーキ5を作動させる動作接点CR2bと並列に接続される。復旧接点CR3bは、しゃ断棹を上昇動作させる制御入力がなされてリレーCR1が扛上し、且つ、モータ3が駆動されていないリレーCR3の落下時に、ブレーキを作動させるように作用する。
【0037】
モータ駆動制御部10の外部に設けられる外部リレー回路部20は、
図3に示した従来の外部リレー回路部200と比べて、カムスイッチCSとリレーCR2間の信号線がモータ駆動制御部10に引き込まれたこと、ブレーキ5を作動させる制御を担う動作接点CR2bと並列に新たな回路を設けたこと、が異なる。後者の並列回路のうち、リレーCR1の動作接点CR1cが外部リレー回路部20に設けられ、復旧接点CR3bがモータ駆動制御部10の内部リレー回路部に設けられる。
【0038】
次に、踏切しゃ断機1の動作について説明する。
まず、下降動作について説明する。しゃ断棹を下降動作させる制御入力がなされると、リレーCR1が落下し、動作接点CR1aが開放されることにより、下降動作を指示する信号がモータ駆動制御部10に入力される。また、動作接点CR1bが開放されることで、カムスイッチCSのうち、下降側カムスイッチCS2が有効とされるが、この時点ではしゃ断棹の角度が下降側カムスイッチCS2の検出角度範囲外(下降基準位置外)のため、下降側カムスイッチCS2は非検出となる。この結果、復旧接点CR3aに関わらず、リレーCR2が落下する。リレーCR2の落下により、復旧接点CR2aが構成され、モータ電源がモータ駆動制御部10へ供給される。
【0039】
また、リレーCR1の落下により動作接点CR1cが開放され、リレーCR2の落下により動作接点CR2bも開放されるため、ブレーキ5の作動が停止されて緩解される。
【0040】
モータ電源の供給によりモータ駆動制御部10が起動すると、モータ駆動制御部10は、下降動作を指示する制御入力に従って、モータ3を下降方向へ駆動させる。モータ3が駆動されるとリレーCR3が扛上し、復旧接点CR3aが開放されるが、リレーCR3の扛上前においても下降側カムスイッチCS2が非検出のため、リレーCR2は依然として落下した状態のまま、変化しない。
【0041】
また、リレーCR3の扛上により復旧接点CR3bが開放されるが、リレーCR3の扛上前においても動作接点CR1cが開放されているため、ブレーキ5の緩解の状態は変化しない。
【0042】
そして、モータ3の駆動によりしゃ断棹が下降して、下降側カムスイッチCS2の検出角度範囲(下降基準位置)に到達すると、下降側カムスイッチCS2がこれを検出する。すると、駆動停止制御部11は、検出結果がHレベル(到達検出)となったことから、メモリ13に記憶された下降動作用の調整パラメータ値に従って、モータ3の駆動を減速停止させる制御を行う。本実施形態では、調整パラメータ値がディレー時間であることから、検出結果がHレベル(到達検出)となってから、設定されたディレー時間だけ遅れたタイミングで、モータ3の回転速度を徐々に低減させて停止させる制御を行う。
【0043】
そして、モータ3の駆動が停止して非駆動の状態になると、リレーCR3が落下して、復旧接点CR3aが構成されてリレーCR2が扛上する。すると、リレーCR2の扛上により動作接点CR2bが構成されてブレーキ5が作動する。
【0044】
すなわち、しゃ断棹の下降動作が停止する場合、モータ3の回転速度が徐々に減速されて停止されるため、停止時にしゃ断棹が振動することはない。また、しゃ断棹の下降動作の停止に合わせてブレーキ5が作動するため、しゃ断棹の下降速度がゆっくりとなって停止した位置で保持されることとなる。
【0045】
また、リレーCR2の扛上により、復旧接点CR2aが開放され、モータ駆動制御部10へのモータ電源の供給が停止されて、モータ駆動制御部10が動作不能となる。しかし、リレーCR3は既に落下しているため、復旧接点CR3aは構成状態のまま変化せず、外部リレー回路部20のリレーCR2が扛上した状態のままとなる。よって、動作接点CR2bも構成した状態のままとなり、ブレーキ5が作動した状態となる。
【0046】
次に、上昇動作について説明する。しゃ断棹を上昇動作させる制御入力がなされると、リレーCR1が扛上し、動作接点CR1aが構成されることで、上昇動作を指示する信号がモータ駆動制御部10に入力される。また、動作接点CR1bが構成されることで、カムスイッチCSのうち、上昇側カムスイッチCS1が有効とされるが、この時点ではしゃ断棹の角度が上昇側カムスイッチCS1の検出角度範囲外(上昇基準位置外)のため、上昇側カムスイッチCS1は非検出となる。この結果、復旧接点CR3aに関わらず、リレーCR2が落下する。リレーCR2の落下により、復旧接点CR2aが構成され、モータ電源がモータ駆動制御部10へ供給される。
【0047】
また、リレーCR1の扛上により動作接点CR1cが構成され、この時点ではリレーCR3が落下していることにより復旧接点CR3bが構成されているため、ブレーキ5は作動状態にある。
【0048】
そして、モータ電源の供給によりモータ駆動制御部10が起動し、モータ3が上昇方向へ駆動されると、リレーCR3が扛上し、復旧接点CR3bが開放される。これにより、ブレーキ5の作動が停止されて緩解される。すなわち、上昇動作時において、モータ3の駆動に応じてブレーキ5が緩解される。より詳細には、モータ3が駆動してからブレーキ5が緩解される。このため、しゃ断棹が一時的に下降することがない。
【0049】
モータ3の駆動によりしゃ断棹が上昇して、上昇側カムスイッチCS1の検出角度範囲(上昇基準位置)に到達すると、上昇側カムスイッチCS1がこれを検出する。すると、駆動停止制御部11は、検出結果がHレベル(到達検出)となったことから、メモリ13に記憶された上昇動作用の調整パラメータ値に従って、モータ3の駆動を減速停止させる制御を行う。下降動作と同様の制御である。
【0050】
そして、モータ3の駆動が停止して非駆動の状態になると、リレーCR3が落下して、復旧接点CR3aが構成されてリレーCR2が扛上する。この結果、動作接点CR2bが構成されてブレーキ5が作動する。すなわち、上昇動作においても、しゃ断棹が上昇位置で停止する場合、モータ3の回転速度が徐々に減速されて停止されるため、停止時にしゃ断棹が振動することがない。
【0051】
また、リレーCR2の扛上により復旧接点CR2aが開放され、モータ駆動制御部10へのモータ電源の供給が停止されて、モータ駆動制御部10が動作不能となる。但し、ブレーキ5が作動状態におかれることは、下降動作と同様である。
【0052】
次に、調整部12が実行する調整処理について
図2を参照して説明する。
図2は、調整処理の流れを示すフローチャートである。調整処理は、現在の調整パラメータ値に従った上昇位置又は下降位置までモータ駆動がなされる通常動作によって、しゃ断棹が上昇位置又は下降位置に停止された後に、実行開始される。
【0053】
調整処理が開始されると、先ず、調整部12は、リレーCR3に出力している信号を強制的にON(Hレベル)として、リレーCR3を扛上させ、ブレーキ5を緩解させる(ステップS2)。そして、調整処理の終了操作(ステップS4)がなされるまでの間、ステップS6〜S14を繰り返す。
【0054】
すなわち、上昇位置および下降位置のどちらの停止位置を調整するかの操作入力がなされると(ステップS6)、当該操作入力に応じた上昇動作用の調整パラメータ値あるいは下降動作用の調整パラメータ値をメモリ13から読み出して、当該調整パラメータ値に対応する停止位置までモータ3を駆動させ、当該停止位置で停止するように制御する(ステップS8)。これにより、しゃ断棹が調整前の停止位置で停止した状態となる。なお、現在しゃ断棹が停止している停止位置と、調整しようとする停止位置とが同じ場合には、ステップS6での操作入力をせず(ステップS6)、ステップS8をスキップすることができる。
【0055】
そして、スイッチ17から、停止位置を調整する調整操作が入力されると(ステップS10:YES)、操作入力された調整量だけモータ3を駆動し(ステップS12)、その調整量に応じて、メモリ13に記憶されている調整パラメータ値を設定更新する(ステップS14)。なお、調整する方向(上昇または下降)も操作入力されることは勿論である。そして、調整を行った停止位置(上昇位置および下降位置の一方)とは反対側の停止位置を調整する場合や再調整を行う場合には、ステップS4〜S14を繰り返す。
【0056】
調整が終了し、終了操作がなされると(ステップS4:YES)、調整部12は、リレーCR3に出力している信号をOFF(Lレベル)として、リレーCR3を落下させることでブレーキ5を作動させ(ステップS20)、調整処理を終了する。そして通常動作へ戻る。
【0057】
以上、本実施形態の踏切しゃ断機1によれば、モータ電源が供給され、且つ、カムスイッチCSが非検出の間、モータ駆動制御部10は、制御入力に従ってモータ3を駆動制御してしゃ断棹を上昇動作或いは下降動作させる。そして、カムスイッチCSの検出に応じて、モータ3の回転速度を徐々に減速して停止させる。一方、モータ電源の供給は、カムスイッチCSが検出、且つ、モータ3が非駆動(リレーCR3の落下)の場合に停止される。このため、しゃ断棹が基準位置に到達してカムスイッチCSが検出した場合であっても、直ぐにモータ電源の供給が停止されず、モータの回転速度を徐々に減速して停止させることができる。また、モータ3の駆動が停止するとブレーキ5が作動する。このため、昇降動作の停止時におけるしゃ断棹の振動抑制が実現されるとともに、しゃ断棹の停止位置を確実に保持することができる。
【0058】
また、上昇動作をさせる制御入力がなされた場合、モータ3が駆動されるまで、しゃ断棹を制動するブレーキ5が作動状態にある。このため、上昇動作の開始時にしゃ断棹が一時的に下降することがない。
【0059】
また、カムスイッチCSの検出に応じてモータ3の回転速度を徐々に減速して停止させる制御を、調整パラメータ値によって調整することができる。このため、調整パラメータ値を変更設定することでしゃ断棹が停止する位置を簡単に調整することができる。
【0060】
しかも、調整パラメータ値の設定は調整処理によって簡単に実現できる。すなわち、ブレーキ5が強制緩解されてしゃ断棹が所与の停止位置まで移動された後、調整員の調整操作に応じた分だけモータ3が駆動制御され、さらに調整パラメータ値が自動的に設定更新されることで調整が行われる。これにより、熟練を要することのない簡単な調整が実現される。
【0061】
以上、本発明を適用した一実施形態について説明したが、本発明が適用可能な形態が上述の実施形態に限られるものではない。
例えば、モータ駆動制御部10および外部リレー回路部20の機能を、リレーを用いずにソフトウェア的に実現した電子制御装置を構成することとしてもよい。この場合、電子制御装置の内部に、ソフトウェア的にモータ駆動制御部10および外部リレー回路部20の機能を実現すればよい。
【解決手段】モータ電源が供給され、且つ、カムスイッチCSが非検出の間、モータ駆動制御部10は、制御入力に従ってモータ3を駆動制御してしゃ断棹を上昇動作或いは下降動作させる。そして、カムスイッチCSの検出に応じて、モータ3の回転速度を徐々に減速して停止させる。一方、モータ電源の供給は、カムスイッチCSが検出、且つ、モータ3が駆動されていない(リレーCR3の落下)場合に停止される。このため、しゃ断棹が基準位置に到達してカムスイッチCSが検出した場合であっても、直ぐにモータ電源の供給が停止されず、モータ3の回転速度を徐々に減速して停止させることができる。