(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の組成物では、難燃性が十分に確保されない場合があった。ここで、難燃剤の添加量を増加させれば難燃性を向上させることはできる。しかし、この場合、組成物の機械的特性が低下してしまう。
【0005】
このため、優れた機械的特性を確保しながら優れた難燃性をも確保できる難燃性樹脂組成物が求められていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた機械的特性を確保しながら優れた難燃性をも確保できる難燃性樹脂組成物、及び、これを用いたケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため、難燃剤である金属水酸化物の分解開始温度とシリコーン系化合物の分解開始温度との大小関係に着目して検討した。その結果、ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、シリコーン系化合物、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸含有化合物及び金属水酸化物等の無機系難燃剤がそれぞれ所定の割合で配合されている場合には、無機系難燃剤の分解開始温度をシリコーン系化合物の分解開始温度よりも低くすることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、ポリオレフィン樹脂と、前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1.5質量部以上20質量部以下の割合で配合されるシリコーン系化合物と、前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部以下の割合で配合される脂肪酸含有化合物と、前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5質量部以上40質量部以下の割合で配合される無機系難燃剤とを含み、前記無機系難燃剤の分解開始温度が前記シリコーン系化合物の分解開始温度よりも低い難燃性樹脂組成物
であって、前記無機系難燃剤が水酸化アルミニウムである難燃性樹脂組成物である。
【0009】
本発明の難燃性樹脂組成物によれば、優れた機械的特性を確保しながら、優れた難燃性をも確保することができる。
【0010】
なお、本発明者らは、本発明の難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる理由については以下のように推察している。
【0011】
すなわち、無機系難燃剤の分解開始温度がシリコーン系化合物の分解開始温度よりも低いため、燃焼時にシリコーン系化合物が熱によって分解する前に、無機系難燃剤が熱によって分解される。このときの無機系難燃剤の分解は吸熱反応であると考えられる。このため、ポリオレフィン樹脂の温度上昇が十分に抑制され、燃焼の継続を阻害することが可能となる。そして、シリコーン系化合物が熱によって分解されるようになると、シリコーン系化合物によってポリオレフィン樹脂の表面にバリア層が形成される。このため、難燃効果が高まっているものと本発明者らは推察している。
【0014】
また、上記難燃性樹脂組成物においては、前記無機系難燃剤が前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対して10質量部以上25質量部以下の割合で配合されていることが好ましい。
【0015】
この場合、無機系難燃剤の配合量が上記範囲を外れる場合に比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。
【0016】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記脂肪酸含有化合物がステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウムであることが好ましい。
【0017】
この場合、脂肪酸含有化合物がステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウムのいずれでもない場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
【0018】
また本発明は、導体と、前記導体を被覆する絶縁層とを有する絶縁電線を備えており、前記絶縁層が、上述した難燃性樹脂組成物で構成されるケーブルである。
【0019】
さらに本発明は、導体と、前記導体を被覆する絶縁層と、前記絶縁層を覆うシースを有するケーブルであって、前記絶縁層と前記シースの少なくとも一方が、上述した難燃性樹脂組成物で構成されるケーブルである。
【0020】
なお、本発明において、分解開始温度とは、本発明の難燃性樹脂組成物について、発生ガス分析法(EGA−MS法)により発生ガス分析を行い、この分析により決定される分解開始温度を言う。具体的には、分解開始温度は、熱分解装置(パイロライザー)を取り付けた試料導入部とガスクロマトグラフ質量分析装置とが、SUSからなるキャピラリーチューブ(製品名「Ultra ALLOY−DTA」、フロンティア・ラボ株式会社製、内径0.15mm、長さ2.5m)で接続された熱分析ガスクロマトグラフ質量分析装置(製品名「GCMS−QP2010」、株式会社島津製作所製)を用いて、下記条件で測定されたEGAサーモグラムにおけるベースラインに対するピークの立上り点に対応する温度を言う。
<条件>
熱分解装置における昇温速度:50℃/min
温度範囲:70〜700℃
カラムオーブン温度:320℃
キャリアーガス:ヘリウム
圧力:90.0kPa
カラム流量:0.92mL/min
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、優れた機械的特性を確保しながら、優れた難燃性をも確保できる難燃性樹脂組成物及びこれを用いたケーブルが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について
図1及び
図2を用いて詳細に説明する。
【0024】
[ケーブル]
図1は、本発明に係るケーブルの一実施形態を示す部分側面図であり、平形ケーブルを示すものである。
図2は、
図1のII−II線に沿った断面図である。
図1及び
図2に示すように、ケーブル10は、1本の絶縁電線4と、1本の絶縁電線4を被覆するシース3とを備えている。そして、絶縁電線4は、内部導体1と、内部導体1を被覆する絶縁層2とを有している。
【0025】
ここで、絶縁層2及びシース3は難燃性樹脂組成物で構成されており、この難燃性樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂と、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1.5質量部以上20質量部以下の割合で配合されるシリコーン系化合物と、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部以下の割合で配合される脂肪酸含有化合物と、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5質量部以上40質量部以下の割合で配合される無機系難燃剤とを含んでいる。ここで、無機系難燃剤の分解開始温度はシリコーン系化合物の分解開始温度よりも低い。
【0026】
上記難燃性樹脂組成物で構成される絶縁層2及びシース3は、優れた機械的特性を確保しながら、優れた難燃性を確保することができる。このため、ケーブル10は、優れた機械的特性を確保しながら、優れた難燃性を確保することができる。
【0027】
[ケーブルの製造方法]
次に、上述したケーブル10の製造方法について説明する。
【0028】
(導体)
まず内部導体1を準備する。内部導体1は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。また、内部導体1は、導体径や導体の材質などについて特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。
【0029】
(難燃性樹脂組成物)
一方、上記難燃性樹脂組成物を準備する。難燃性樹脂組成物は、上述したように、ポリオレフィン樹脂と、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1.5質量部以上20質量部以下の割合で配合されるシリコーン系化合物と、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部以下の割合で配合される脂肪酸含有化合物と、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5質量部以上40質量部以下の割合で配合される無機系難燃剤とを含んでいる。
【0030】
(ポリオレフィン樹脂)
上述したように、ポリオレフィン樹脂としては、例えばエチレン系樹脂、及び、プロピレン系樹脂などが挙げられる。これらは1種類単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。ここで、エチレン系樹脂とは、エチレンを構成単位として含む樹脂を言い、エチレン系樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂(PE)、エチレンアクリル酸エチル共重合体(EEA)及びエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が挙げられる。またプロピレン系樹脂としては、プロピレンを構成単位として含む樹脂を言い、プロピレン系樹脂としては、例えばポリプロピレン樹脂(PP)などが挙げられる。
【0031】
(シリコーン系化合物)
シリコーン系化合物は、難燃助剤として機能するものであり、ポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。ここで、ポリオルガノシロキサンは、シロキサン結合を主鎖とし側鎖に有機基を有するものであり、有機基としては、例えばメチル基、ビニル基、エチル基、プロピル基、フェニル基などが挙げられる。具体的にはポリオルガノシロキサンとしては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルエチルポリシロキサン、メチルオクチルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサンなどが挙げられる。ポリオルガノシロキサンとして、シリコーンパウダー、シリコーンガム及びシリコーンレジンが挙げられる。中でも、シリコーンガムが好ましい。この場合、ブルームが起こりにくくなる。
【0032】
シリコーン系化合物は、上述したようにポリオレフィン樹脂100質量部に対して1.5質量部以上20質量部以下の割合で配合される。
【0033】
ポリオレフィン樹脂100質量部に対するシリコーン系化合物の割合が1.5質量部未満である場合、難燃性が顕著に低下する。
【0034】
また、ポリオレフィン樹脂100質量部に対するシリコーン系化合物の配合割合が20質量部より大きい場合、ブルームが発生しやすくなる。
【0035】
シリコーン系化合物は、15質量部以下の割合で配合されることが好ましい。この場合、シリコーン系化合物の割合が15質量部より大きい場合に比べて、より優れた機械特性が得られる。
【0036】
シリコーン系化合物は、無機系難燃剤の表面に予め付着させておいてもよい。この場合、難燃性樹脂組成物中に含まれる各無機系難燃剤の全体がシリコーン系化合物で被覆されていることが好ましい。この場合、無機系難燃剤をポリオレフィン樹脂中に容易に分散させることができるため、難燃性樹脂組成物における特性の均一性がより向上する。
【0037】
無機系難燃剤の表面にシリコーン系化合物を付着させる方法としては、例えば無機系難燃剤にシリコーン系化合物を添加して混合し、混合物を得た後、この混合物を40〜75℃にて10〜40分乾燥し、乾燥した混合物をヘンシェルミキサ、アトマイザなどにより粉砕することによって得ることができる。
【0038】
なお、シリコーン系化合物の分解開始温度(T1)は、ポリオレフィン樹脂の分解開始温度(T2)よりも小さいことが好ましい。この場合、T1がT2以上である場合に比べて、より難燃性に優れるという利点が得られる。
【0039】
(T2−T1)は、0℃より大きければ特に限定されないが、100〜250℃であることが好ましい。この場合、(T2−T1)が上記範囲を外れる場合に比べて、より難燃性に優れるという利点が得られる。(T2−T1)は、より好ましくは150〜200℃である。
【0040】
(脂肪酸含有化合物)
脂肪酸含有化合物は、難燃助剤として機能するものである。脂肪酸含有化合物とは、脂肪酸又はその金属塩を含有するものを言う。ここで、脂肪酸としては、例えば炭素原子数が12〜28である脂肪酸が用いられる。このような脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、ベヘン酸及びモンタン酸が挙げられる。中でも、脂肪酸としては、ステアリン酸又はツベルクロステアリン酸が好ましく、ステアリン酸が特に好ましい。この場合、ステアリン酸又はツベルクロステアリン酸以外の脂肪酸を用いる場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
【0041】
脂肪酸の金属塩を構成する金属としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛及び鉛などが挙げられる。脂肪酸の金属塩としては、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウムが好ましい。この場合、脂肪酸含有化合物がステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウムのいずれでもない場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
【0042】
脂肪酸含有化合物は、上述したようにポリオレフィン樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部以下の割合で配合される。
【0043】
脂肪酸含有化合物の割合が5質量部未満である場合、難燃性が顕著に低下する。
【0044】
ポリオレフィン樹脂100質量部に対する脂肪酸含有化合物の配合割合が20質量部より大きい場合、ブルームが発生しやすくなる。
【0045】
脂肪酸含有化合物は、15質量部以下の割合で配合されることが好ましい。この場合、脂肪酸含有化合物の割合が15質量部より大きい場合に比べて、より優れた機械特性が得られる。
【0046】
(無機系難燃剤)
無機系難燃剤は、シリコーン系化合物の分解開始温度(T1)よりも低い分解開始温度(T3)を有する無機系の難燃剤であれば特に限定されるものではない。
【0047】
T1−T3が0℃以下であると、難燃性が顕著に低下する。
【0048】
上記無機系難燃剤としては、例えば水酸化アルミニウム、アルミン酸カルシウム水和物などが挙げられる。中でも、水酸化アルミニウムが好ましい。この場合、無機系難燃剤が水酸化アルミニウム以外の無機系難燃剤である場合に比べて、より優れた機械的特性が得られる。
【0049】
(T1−T3)は、0℃より大きければ特に限定されないが、50〜250℃であることが好ましい。この場合、(T1−T3)が上記範囲を外れる場合に比べて、より難燃性に優れるという利点が得られる。(T1−T3)は、より好ましくは50〜150℃である。
【0050】
無機系難燃剤は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5質量部以上40質量部以下の割合で配合される。
【0051】
この場合、ポリオレフィン樹脂100質量部に対する無機系難燃剤の配合割合が40質量部を超える場合に比べて、難燃性が顕著に増加する。一方、ポリオレフィン樹脂100質量部に対する無機系難燃剤の配合割合が5質量部未満である場合に比べて、難燃性が顕著に増加する。
【0052】
また、無機系難燃剤はポリオレフィン樹脂100質量部に対して10質量部以上25質量部以下の割合で配合されることが好ましい。この場合、無機系難燃剤の配合量が上記範囲を外れる場合に比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。
【0053】
上記難燃性樹脂組成物は、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、加工助剤、着色顔料、滑剤、カーボンブラックなどの充填剤を必要に応じてさらに含んでもよい。
【0054】
上記難燃性樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂、無機系難燃剤、シリコーン系化合物、及び、脂肪酸含有化合物等を混練することにより得ることができる。混練は、例えばバンバリーミキサ、タンブラ、加圧ニーダ、混練押出機、二軸押出機、ミキシングロール等の混練機で行うことができる。このとき、シリコーン系化合物の分散性を向上させる観点からは、ポリオレフィン樹脂の一部とシリコーン系化合物とを混練し、得られたマスターバッチ(MB)を、残りのポリオレフィン樹脂、無機系難燃剤及び脂肪酸含有化合物等と混練してもよい。
【0055】
次に、上記難燃性樹脂組成物で内部導体1を被覆する。具体的には、上記の難燃性樹脂組成物を、押出機を用いて溶融混練し、チューブ状の押出物を形成する。そして、このチューブ状押出物を内部導体1上に連続的に被覆する。こうして絶縁電線4が得られる。
【0056】
(シース)
最後に、上記のようにして得られた絶縁電線4を1本用意し、これら絶縁電線4を、上述した難燃性樹脂組成物を用いて作製したシース3で被覆する。シース3は、絶縁層2を物理的又は化学的な損傷から保護するものである。
【0057】
以上のようにしてケーブル10が得られる。
【0058】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態ではケーブル10は1本の絶縁電線4を有しているが、本発明のケーブルは1本の絶縁電線4を有するケーブルに限定されるものではなく、シース3の内側に絶縁電線4を2本以上有していてもよい。またシース3と絶縁電線4との間には、ポリプロピレン等からなる樹脂部が設けられていてもよい。
【0059】
また上記実施形態では、絶縁電線4の絶縁層2及びシース3が上記の難燃性樹脂組成物で構成されているが、絶縁層2が通常の絶縁樹脂で構成され、シース3のみが、絶縁層2を構成する難燃性樹脂組成物で構成されてもよい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
(実施例1〜14及び比較例1〜6)
ベース樹脂、シリコーンマスターバッチ(シリコーンMB)、脂肪酸含有化合物及び無機系難燃剤を、表1〜5に示す配合量で配合し、バンバリーミキサによって160℃にて15分間混練し、難燃性樹脂組成物を得た。なお、表1〜5において、各配合成分の配合量の単位は質量部である。また表1〜5において、ポリエチレン樹脂(PE)の配合量が100質量部となっていないが、シリコーンMB中にも樹脂が含まれており、PEとシリコーンMB中の樹脂とを合計すればベース樹脂の合計量は100質量部となる。さらに表1〜5には、無機系難燃剤の分解開始温度(T3)、シリコーン系化合物の分解開始温度(T1)及びベース樹脂の分解開始温度(T2)も示した。
【0062】
上記ベース樹脂、シリコーンMB、脂肪酸含有化合物および無機系難燃剤としては具体的には下記のものを用いた。
(1)ベース樹脂
(A)ポリエチレン樹脂(PE)(商品名「エクセレンGMH GH030」、住友化学社製)
(B)エチレンアクリル酸エチル共重合体(EEA、商品名「DPDJ−6503」、日本ユニカー社製)
(C)エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA、商品名「エバフレックス V5274」、三井デュポンポリケミカル社製)
(D)ポリプロピレン樹脂(PP、商品名「E111G」、プライムポリマー社製)
(2)シリコーンMB(商品名「X−22−2125H」、信越化学社製)
50質量%シリコーンガムと50質量%PEとを含有
(3)脂肪酸含有化合物
ステアリン酸Mg(商品名「エフコケムMGS」、ADEKA社製)
(4)無機系難燃剤
A)水酸化アルミニウム(商品名「BF013」、日本軽金属社製、平均粒径:1.2μm)
B)水酸化マグネシウム(商品名「マグシーズN6」、神島化学工業社製)
C)水酸化カルシウム(吉澤石灰工業社製)
【0063】
次いで、この難燃性樹脂組成物をバンバリーミキサによって160℃にて15分間混練した。その後、この難燃性樹脂組成物を、単軸押出機(L/D=20、スクリュー形状:フルフライトスクリュー、マース精機社製)に投入し、その押出機からからチューブ状の押出物を押し出し、導体(素線数1本/断面積2mm
2)上に、厚さ0.7mmとなるように被覆した。こうして絶縁電線を得た。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0064】
上記のようにして得られた実施例1〜14及び比較例1〜6の絶縁電線について、以下のようにして難燃性および機械的特性についての評価を行った。
【0065】
<難燃性>
実施例1〜14及び比較例1〜6の絶縁電線をそれぞれ10本用意し、これらについて、JIS C3665−1に基づいて垂直一条燃焼試験を行い、難燃性を評価した。このとき、具体的には、絶縁電線を上部で支持する上部支持材の下端から炭化の終了点までの長さが50mm以上540mm以下であれば「合格」とし、50mm未満又は540mm超の場合には「不合格」とした。そして、合格率(%)を求めた。結果を表1〜5に示す。なお、燃焼試験においては、バーナーの炎を60秒間接触させた。また表1〜5において、難燃性の合否基準は下記の通りとした。
合格率が70%以上:合格
合格率が70%未満:不合格
【0066】
<機械的特性>
機械的特性の評価は、実施例1〜14及び比較例1〜6の絶縁電線について、JIS C3005により引張試験を行い、測定された引張強度に基づいて行った。結果を表1〜5に示す。表1〜5において、引張強度の単位はMPaであり、引張強度の合否基準は下記の通りとした。引張試験において、引張速度は200mm/min、標線間距離は20mmとした。
10MPa以上:合格
10MPa未満:不合格
【0067】
表1〜5に示す結果より、実施例1〜14の絶縁電線は、難燃性及び機械的特性の点で合格基準に達していた。これに対し、比較例1〜6の絶縁電線は、難燃性及び機械的特性のうち少なくとも1つの点で合格基準に達していなかった。
【0068】
このことから、本発明の難燃性樹脂組成物によれば、優れた機械的特性を確保しながら、優れた難燃性を確保することができることが確認された。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂と、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1.5質量部以上20質量部以下の割合で配合されるシリコーン系化合物と、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部以下の割合で配合される脂肪酸含有化合物と、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5質量部以上40質量部以下の割合で配合される無機系難燃剤とを含み、無機系難燃剤の分解開始温度がシリコーン系化合物の分解開始温度よりも低い難燃性樹脂組成物。