(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669927
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】使い捨て電極パッチ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0408 20060101AFI20150129BHJP
A61B 5/0478 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
A61B5/04 300M
A61B5/04 300N
A61B5/04 300V
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-503708(P2013-503708)
(86)(22)【出願日】2010年4月8日
(65)【公表番号】特表2013-523313(P2013-523313A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】NO2010000130
(87)【国際公開番号】WO2011126376
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2013年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】507173229
【氏名又は名称】メッド ストーム イノヴェーション エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ストーム,ハンネ
【審査官】
石原 徹弥
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−513243(JP,A)
【文献】
特開平10−075936(JP,A)
【文献】
特開平09−019420(JP,A)
【文献】
特表2003−500149(JP,A)
【文献】
特開2004−024769(JP,A)
【文献】
特開昭54−021085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/04−5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療目的用の使い捨て電極パッチであって、
前記電極パッチは、
第一及び第二表面を備える柔軟で長尺の担体と、
前記第一表面の第一末端における第一接着性領域上に配される第一接着性素材と、
前記第一表面の第二末端における第二接着性領域上に配される第二接着性素材と、
前記担体の前記第一表面上における前記第一及び前記第二接着性領域間に配される複数の電極と、を備え、
これによって、前記電極パッチは、前記第一表面上の前記電極が身体部分の皮膚と接触するように前記身体部分へと巻くことができ、
更に、前記第一表面の前記第一及び第二接着性領域は、共につままれて前記身体部分を囲む安定アセンブリーを形成することができ、
前記電極は、対電流電極、測定電極及び参照電圧電極を含み、
前記対電流電極及び前記参照電圧電極は、それらの中心が前記測定電極の中心を横切るラインに対して反対側に配置され、前記ラインは、前記長尺の担体に対して平行である、使い捨て電極パッチ。
【請求項2】
前記担体は、発泡素材を含む、請求項1に記載の使い捨て電極パッチ。
【請求項3】
前記電極は、電極ペーストの被覆層によって作成される、請求項1又は2に記載の使い捨て電極パッチ。
【請求項4】
前記第一及び前記第二接着性領域を除く前記第一表面の領域は、非接着性である、請求項1から3のいずれかに記載の使い捨て電極パッチ。
【請求項5】
前記電極の数は、3つである、請求項1から4のいずれかに記載の使い捨て電極パッチ。
【請求項6】
前記対電流電極、前記測定電極及び前記参照電圧電極の各々は、実質的に円形の形状を有する、請求項5に記載の使い捨て電極パッチ。
【請求項7】
前記長尺の担体に対して平行であり、前記測定電極の中心を横切る前記ラインは、前記対電流電極及び前記参照電圧電極の各々の領域も横切る、請求項6に記載の使い捨て電極パッチ。
【請求項8】
前記身体部分は、早期又は新生児乳児を含む乳児の身体部分である、請求項1から7のいずれかに記載の使い捨て電極パッチ。
【請求項9】
前記身体部分は、足若しくは踵の足底側又は手の掌である、請求項1から8のいずれかに記載の使い捨て電極パッチ。
【請求項10】
皮膚コンダクタンスを測定する構成としての、請求項1から9のいずれかによる電極パッチの使用。
【請求項11】
患者の自律神経系をモニターする構成としての、請求項1から9のいずれかによる電極パッチの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、医療目的のための、特に患者の身体部分の皮膚上へ固定するための使い捨て電極パッチに関する。
【0002】
発明の背景
医療用電極は、多くの用途(例えば脳(EEG)、心臓(ECG)又は筋肉(EMG)の電気的活性の測定のため)に必要とされている。医療用電極は、例えば、電流、電位/電圧、皮膚コンダクタンス及び皮膚抵抗を測定するために使用することができる。ある種の医療用電極は、例えば、除細動器、電気ショック療法及び他の治療方法の場合には、患者へ電気エネルギーを供給するために使用することもできる。
【0003】
医療用電極は、電気生理学及び神経科学の分野においても用いられている。機器及び方法の特定の種類では、患者(例えば鎮静状態の患者)の自律神経系の状態を評価する(例えば痛み又は麻酔中の覚醒を検出する)ために皮膚コンダクタンスの測定値を利用する。
【0004】
WO-03/094726は、鎮静状態の患者の自律神経系をモニタリングする装置及び方法の一例であり、患者の皮膚に設置された電極を用いて測定することで、皮膚コンダクタンスを測定している。患者の痛み/不快及び患者の覚醒を示すシグナルは、皮膚コンダクタンスの測定値から導き出される。
【0005】
医療用電極パッチは、しばしば接着剤によって皮膚に固定される。皮膚に対して接着剤を直接使用することで患者の皮膚を刺激する可能性があることはよく知られている。これは、新生児又は早産児の場合、彼らの皮膚は接着剤に非常に脆弱であるため特に重大なことである。
【0006】
新生児が保育器にいるときは、湿度は特に高くなっている。そこでの湿った環境において、接着性電極を新生児の皮膚に付けることは特に困難である。
【0007】
発明の開示
本発明の目的は、特に湿った環境において、皮膚が敏感な乳児又は他の人/患者に都合よく用いることができる改良型電極パッチを提供することにある。
【0008】
本発明は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0009】
本発明に関して記載した実施形態、態様及び原理の簡単な説明は、添付の図面を参照して以下でより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、患者の身体部分に取り付ける前の電極パッチを図示している模式図である。
【
図2】
図2は、患者の身体部分に取り付けられた電極パッチを図示している模式図である。
【
図3】
図3は、患者の身体部分に取り付けられる前の電極パッチの一実施形態を図示している模式図である。
【0011】
詳細な説明
図1は、患者の身体部分に取り付けられる前の状態における、本発明の使い捨て電極パッチを図示している模式図である。
【0012】
電極パッチ1は、第一伝導性電極2、第二伝導性電極3及び第三伝導性電極4を備え、柔軟性があり、長尺で、非伝導性の担体に全て配置されている。担体は、第一表面5及び第二裏面(
図1では見えない)を備えている。
【0013】
担体5は、長尺形状(例えば、図示の通りの実質的な矩形)を有する。あるいは、上記形状は、丸コーナ、卵形又は任意の他の適切な形状をもつ矩形であってもよい。
【0014】
第一接着性材料は、第一表面の第一末端における第一接着性領域6に配置される。
【0015】
同様に、第二接着性材料は、第一表面の第二末端における第二接着性領域7に配置される。
【0016】
公知の感圧性接着剤(自己接着、粘着性接着剤)を使用してもよい。
【0017】
複数の電極は、担体の第一表面上における第一接着性領域と第二接着性領域との間に配置される。電極は、Ag/AgCl電極として知られているタイプであってもよい。但し、他のタイプを代わりに使用してもよい。
【0018】
かかる構成は、第一表面上の電極が身体部分の皮膚と接触するように電極パッチを身体部分周りに巻くことができる。また、第一表面の第一及び第二接着性領域は、共につままれて身体部分を囲む安定アセンブリーを形成することができる。これは、
図2により詳しく図示されている。
【0019】
電極パッチを取り付ける上記構成は、生じた測定値が不自然な結果を導く可能性がある、過剰で望ましくない動きを電極が被らないことを確保する。
【0020】
更に、接着剤と皮膚との直接接触は、回避されるか又は著しく低減される。
【0021】
加えて、2つの接着性パッチ領域を共に結合することは、湿った環境(例えば、保育器内部)であっても、しっかり且つ安定した接続となる。
【0022】
第一及び第二接着性領域を除く第一表面の領域は、非接着性であってもよい。これは、身体部分の皮膚への接着に関する潜在的な不利益又は刺激効果を低減させるだろう。
【0023】
担体は、発砲材料又は他の柔軟な材料を含むことができる。
【0024】
電極は、電極ペーストの層で覆われてもよい。電極ペーストは、使い捨て電極パッチの一部として作成してもよい。あるいは、電極ペーストは、使用前に施してもよい。
【0025】
一態様において、第一電極2は対電流電極であり、第二電極3は測定電極であり、そして、第三電極4は参照電圧電極である。使用中、第一電極1は、第一連絡線(図示せず)と電気的に接続してもよい。同様に、第二電極2は、第二連絡線(図示せず)と電気的に接続してもよい。同様に、第三電極4は、第三連絡線(図示せず)と電気的に接続してもよい。
【0026】
電極2、3、4の形状、サイズ及び数は、電極の使用目的及び他の状況に従って変更してもよい。一態様において、電極パッチには3つの電極が存在する。
【0027】
図2は、身体部分8(例えば乳児の足の足底側)に取り付けられた医療用電極パッチを図示している概略図である。
図1に図示されているのと同じ (同一参照番号を有するもの)である、
図2のそれらのエレメントに関する詳細な説明は、
図1の説明を参照してください。
【0028】
身体部分8は、早期児又は新生児を含む乳児の身体部分であってもよい。しかしながら、医療用電極パッチは、医療用電極パッチを皮膚に取り付ける必要があるか又はそのことが望ましい任意のヒト又は動物個体の身体部分に用いてもよい。
【0029】
身体部分8は、足若しくは踵の足底側、又は手の掌、又は任意の他の適切な身体部分であってもよい。
【0030】
実現されるように、電極パッチは、第一表面上の電極2、3、4が身体部分8の皮膚と接触するように身体部分8へと巻くことができる。更に、第一及び第二接着性領域は、共につままれて(押圧して)身体部分8を囲むきつくて安定なアセンブリーが形成される。
【0031】
上述の図のいずれかにて開示したように医療用電極パッチは、例えば、(例:患者の)皮膚コンダクタンスを測定する構成として使用してもよい。
【0032】
かかる使用において、電極パッチ1は、上述した
図2に関する方法により、皮膚領域で皮膚のコンダクタンスを測定するために、患者の身体部分上の皮膚領域に取り付け・設置してもよい。
【0033】
第一電極2は対電流電極、第二電極3は測定電極、そして第三電極4は参照電圧電極であってもよく、その全てがパッチ5に配置される。パッチ5は、皮膚領域に配置して本願明細書に記載されている結合手段によって取り付けられる。
【0034】
電極パッチ1及びそれに接続した外部機器は、測定電極の下の角質層(皮膚の表層)に対して電圧を一定に印加することを確実におこなうことができる。測定電極3と対電流電極2との間の閉回路における派生電流は、対電流電極2と測定電極3の間に接続される測定値変換器(図示せず)によって測定してもよい。測定値変換器は、電流電圧変換器(例えばトランス抵抗増幅器又は単なる抵抗)を備える 。それは、測定電極3からの電流を電圧に変換する。
【0035】
本願明細書において開示される電極パッチは、患者における自律神経系のモニタリング用の構成として使用することもできる。かかるモニタリングは、診断目的以外であってもよい。
【0036】
この場合、同様の構成が前述したように使用される。加えて、測定機器は、皮膚コンダクタンスの測定値に基づく、患者における自律神経系のモニタリング用に構成された処理デバイスに接続される。適切な処理及びモニタリング手段/方法の実施例は、(参照により明示的に引用する)WO-03/094726に開示されている。
【0037】
図3は、患者の身体部分に取り付けられる前の電極パッチの模式図を図示している一実施形態である。
【0038】
図1に図示した実施形態に対応する様式において、電極パッチ1は、第一伝導性電極2、第二伝導性電極3及び第三伝導性電極4を備え、柔軟性があり、長尺で、非伝導性である担体に全てが配置されている。担体は、第一表面5及び第二裏面(
図3では見えない)を備える。電極は、対電流電極、測定電極及び参照電圧電極を備える。より詳しくは、第一電極2は対電流電極であり、第二電極3は測定電極であり、そして第三電極4は参照電圧電極である。電気接続は、
図1に関する上記実施形態等と同一の方法により提供することができる。
【0039】
担体5は、長尺形状(例えば、図示の通りの、丸コーナーをもつ実質的な矩形)を有する。他の形状は、先に記載した通り可能である。
【0040】
第一接着性材料は、第一表面の第一末端における第一接着性領域6に配置され、第二接着性材料は、第一表面の第二末端における第二接着性領域7に配置される。
【0041】
図3で示す電極パッチの実施形態において、対電流電極2と参照電圧電極4は、それらの中心が測定電極3の中心を横切るライン9に対して反対側に配置される。ライン9は、長尺の担体に対して平行である。ライン9は、物理的な線として認識する必要はないことを理解すべきである。むしろ、このラインは、電極パッチにおける様々な電極の相対位置を規定する目的で、本明細書では備えている。
【0042】
示されている通り、対電流電極2、測定電極3及び参照電圧電極4は、実質的に円形の形状を有することができる。他の形状は、可能である。
【0043】
図3にて図示したように、長尺の担体と平行であり、測定電極3の中心を横切る前述のラインは、対電流電極2及び参照電圧電極4の各々の領域を横切ることもできる。
【0044】
あるいは、長尺の担体と平行であり、測定電極の中心を横切るラインは、対電流電極2と参照電圧電極4のいずれも横切らないか、ラインは、対電流電極2と参照電圧電極4の1つだけと横切ることができる。
【0045】
図3に示す実施形態では、対電流電極2、測定電極3及び参照電圧電極4の面積は、同じか実質的に同じである。他の実施態様において、上記面積は、種々であってもよい。例えば、
図1の実施形態では、測定電極3は、対電流電極2及び参照電圧電極4より実質的に大きい。
【0046】
図3には、参照電圧電極4と測定電極3との間に、傾斜帯状領域10が更に示され、測定電極3と対電流電極2との間に、同様の傾斜帯状領域11が更に示されている。一態様においては、電極ペーストは、電極2、3及び4だけでなく、それぞれの電極2、3、4を囲んでいる菱形又は平行四辺形の領域にも施される。しかしながら、一態様においては、電極ペーストは、傾斜帯状部10、11には施されない。また、一態様においては、電極ペーストは、接着性領域6及び7には施されない。
【0047】
一態様においては、電極パッチは、予め施された電極ペーストによって製造され、電極ペーストは、接着性領域6及び7並びに、傾斜帯状部10、11以外は、パッチの表面5の全体に予め施すことが可能である。
【0048】
電極パッチ及びそのエレメントに関する更に考え得る値及び仕様は、以下で与えられる(これは図示のためであって、限定するためのものではない):
【0049】
中央電極3の面積:100mm
2から400mm
2、より具体的には、200mm
2から300mm
2であって、例えば約260mm
2。
【0050】
外側電極2、4の面積:30mm
2から250mm
2、より具体的には、70mm
2から150mm
2であって、例えば約100mm
2。
【0051】
あるいは、中央電極3は、外側電極の各々と同じか大体同じ面積とすることもできる。
【0052】
電極と電極との距離:0.2mmから3mm、より具体的には、0.5mmから1.2mmであって、例えば約0.7mm。
【0053】
あるいは、例えば電極ペーストが施されない傾斜帯状領域の場合、電極と電極との距離(即ち、次の電極の外縁間の距離)は、2mmから8mm、より具体的には、4から6mmであって、例えば、約5mmであってもよい。
【0054】
パッチの全長:40mmから120mm、より具体的には、60mmから100mmであって、例えば約80mm。
【0055】
パッチの全幅:10mmから30mm、より具体的には、15mmから25mmであって、例えば約20mm。
【0056】
パッチの厚さ:0.5mmから2mm、より具体的には、0.8mmから1.5mmであって、例えば約1.0mm。
【0057】
第一接着性領域6及び第二接着性領域7の(長尺パッチの縦方向に測定した)長さ:5mmから20mm、より具体的には、8mmから15mmであって、例えば約10mm。
【0058】
傾斜帯状領域の長さ:2から6mm、より具体的には、3から5mmであって、例えば約4mm。
【0059】
電極パッチに対する適用に有効な電極ペーストは、例えば、次の組成物を有することができる:
【0060】
6gのヒドロキシエチルセルロース700、0.58gのNaCl、0.1gのメチルパラヒドロキシベンゼン、0.1gのプロピルパラヒドロキシベンゼン、2gの96%アルコール及び精製水を加えて100gとしたもの。他の組成物を含む電極ペーストを代わりに使用してもよい。
【0061】
様々な状況(例えば身体部分の様々なサイズ)に対処させるために、寸法が変更可能であることは、当業者なら容易に理解するだろう。
【0062】
発明概念は、上述の例示的な実施形態に限定されない。むしろ、発明の範囲は、付随の特許請求の範囲に記載される。