(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669929
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】顎矯正インプラント及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/68 20060101AFI20150129BHJP
A61B 17/56 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
A61B17/58 310
A61B17/56
【請求項の数】37
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-507930(P2013-507930)
(86)(22)【出願日】2010年4月29日
(65)【公表番号】特表2013-524992(P2013-524992A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】US2010032908
(87)【国際公開番号】WO2011136775
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2013年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】505377463
【氏名又は名称】ジンテス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ フラー
(72)【発明者】
【氏名】ティモ ツィリヒ
(72)【発明者】
【氏名】マーク クリスティアン メツガー
【審査官】
森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−530138(JP,A)
【文献】
特開昭63−270044(JP,A)
【文献】
特開2006−130317(JP,A)
【文献】
特開平06−149991(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01502556(EP,A2)
【文献】
特表2006−519636(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第2179701(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00 − 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上顎骨の第1の部分が前記上顎骨の第2の部分から分割されかつ該第2の部分に対して位置を移動された後に前記上顎骨に取り付けられるよう構成されたインプラントであって、
前記第2の部分から前記第1の部分を分割する前に、前記第1の部分が前記第2の部分から分割されかつ位置を移動された後の前記第1の部分の特定の表面部分に適合する非線形の波形を形成した、プレート部材であって、該プレート部材は、前記プレート部材を前記第1の部分に固定するために骨固定エレメントを収容するよう構成された少なくとも1つの固定開口を形成している、プレート部材と、
前記プレート部材から延びた複数のフィンガであって、該フィンガは、前記第2の部分から前記第1の部分を分割する前に、前記第1の部分が前記第2の部分から分割されかつ位置を移動された後の前記第2の部分の特定の表面部分に適合する非線形の波形を形成するように予め成形されており、
前記プレート部材の前記非線形の波形と、前記複数のフィンガの前記非線形の波形は、それぞれ、前記第1の部分が前記移動された位置にある時にのみ、前記第1及び第2の部分の前記特定の表面部分と整合するように構成されていることを特徴とする、インプラント。
【請求項2】
前記フィンガの各々は、固定エレメントを収容するよう構成された少なくとも1つの開口を有する、請求項1記載のインプラント。
【請求項3】
前記プレート部材は、固定エレメントを収容するよう構成された少なくとも1つの開口を有する、請求項2記載のインプラント。
【請求項4】
前記プレート部材の少なくとも1つの開口は、鉛直方向で前記フィンガのうちの少なくとも1つと整合させられている、請求項3記載のインプラント。
【請求項5】
前記プレート部材は、該プレート部材を第1の部分と第2の部分とに分割するブリッジング部分を有する、請求項1記載のインプラント。
【請求項6】
前記ブリッジング部分は除去可能である、請求項5記載のインプラント。
【請求項7】
前記ブリッジング部分は、基準穴を有する、請求項5記載のインプラント。
【請求項8】
前記フィンガは、前記プレート部材に沿って間隔を置いて配置されておりかつ前記プレート部材に対して実質的に垂直に延びている、請求項1記載のインプラント。
【請求項9】
骨の第1の部分を前記骨の第2の部分から分離する分割手技の後に前記骨の第1の部分を前記骨の第2の部分に接合するよう構成されたインプラントであって、
前記分割手技の後の前記骨の第1の部分の外面に適合するよう、前記分割手技の前に予め成形されたプレート部材であって、該プレート部材は、該プレート部材を前記骨の第1の部分に固定するために固定エレメントを収容するよう構成された少なくとも1つの開口を有する、プレート部材と、
前記プレート部材から延びており、かつ(i)前記分割手技の後であって、(ii)前記骨の第2の部分に対して前記骨の第1の部分の位置を移動させた後の前記骨の第2の部分の特定の表面部分に適合する非線形の波形を形成するよう前記分割手技の前に予め成形された少なくとも1つのフィンガと、を備えていて、
前記少なくとも1つのフィンガは、前記分割手技の後で曲げることなしに前記非線形の波形を形成しているように予め成形されていることを特徴とする、インプラント。
【請求項10】
前記プレート部材は、前記分割手技の前に、該分割手技の後の前記骨の第1の部分の外面の波形に対応するよう予め成形されている、請求項9記載のインプラント。
【請求項11】
前記骨は、上顎骨である、請求項9記載のインプラント。
【請求項12】
前記プレート部材は、非線形の波形を形成するよう予め成形されている、請求項11記載のインプラント。
【請求項13】
前記プレート部材の前記非線形の波形は、前記骨の第1の部分の外面における波形に対応している、請求項12記載のインプラント。
【請求項14】
前記分割手技の後の前記上顎骨の前記第2の部分の前記外面に対応するように前記分割手技の前にそれぞれ予め成形された複数のフィンガを有する、請求項11記載のインプラント。
【請求項15】
前記プレート部材の少なくとも1つの開口は、鉛直方向で前記フィンガのうちの1つと整合させられている、請求項14記載のインプラント。
【請求項16】
前記プレート部材は、前記プレート部材を第1の部分と第2の部分とに分割するブリッジング部分を有する、請求項11記載のインプラント。
【請求項17】
前記ブリッジング部分は、除去可能である、請求項16記載のインプラント。
【請求項18】
前記ブリッジング部分は、基準穴を有する、請求項16記載のインプラント。
【請求項19】
骨切り術案内インプラントであって、
上顎骨の術前形状に対応するよう予め成形されたプレート部材であって、該プレート部材は術前に前記上顎骨の特定の表面部分に適合する非線形の波形を形成していて、該非線形の波形は、前記プレート部材が前記上顎骨と整合するように構成されたものであるプレート部材と、
前記上顎骨の前記術前形状に適合するよう術前に成形された、前記プレート部材から延びたテンプレート部分であって、該テンプレート部分は、複数の開口を形成しており、該開口は、前記上顎骨の第1の部分を前記上顎骨の第2の部分から分離する境界線を形成するために前記上顎骨において切断案内経路に沿って整合させられた穴を骨切り術前に穿孔するためのテンプレートを提供するよう配置されている、テンプレート部分と、を備え、切断器具が前記切断案内経路に沿って前記上顎骨を切断した後に前記第1の部分は前記第2の部分から分割されることを特徴とする、骨切り術案内インプラント。
【請求項20】
前記テンプレート部分は、複数のフィンガを含み、各フィンガは、前記開口のうちの1つを形成している、請求項19記載の骨切り術案内インプラント。
【請求項21】
前記プレート部材は、ドリルを収容するよう構成された複数の開口を形成している、請求項19記載の骨切り術案内インプラント。
【請求項22】
前記プレート部材は、基準穴を有する、請求項19記載の骨切り術案内インプラント。
【請求項23】
顎矯正手術キットであって、
術前に成形されていて、プレート部材を有しかつ複数の開口を形成した骨切り術案内インプラントであって、前記開口は、上顎骨の第1の部分を上顎骨の第2の部分から分離する境界線を形成するために前記上顎骨において切断案内経路に沿って整合させられた穴を骨切り術前に穿孔するためのテンプレートを提供するよう配置されており、切断器具が前記切断案内経路に沿って前記上顎骨を切断した後に前記第1の部分は前記第2の部分から分割される、骨切り術案内インプラントと、
骨固定インプラントであって、前記第1の部分が前記第2の部分から分割された後の前記上顎骨の前記第1の部分に対応するよう予め成形されたプレート部材と、該プレート部材から延びておりかつ前記第1の部分が前記第2の部分から分割された後の前記上顎骨の前記第2の部分に対応するよう予め成形されている少なくとも1つのフィンガとを有する、骨固定インプラントと、を備えることを特徴とする、顎矯正手術キット。
【請求項24】
前記骨切り術案内インプラントの前記プレート部材は、前記第1の部分が前記第2の部分から分割される前の前記上顎骨の形状に対応するよう予め成形されている、請求項23記載の顎矯正手術キット。
【請求項25】
(i)前記骨切り術案内インプラントのプレート部材は、該プレート部材から延びた複数のフィンガを有する、請求項23記載の顎矯正手術キット。
【請求項26】
さらに複数の固定エレメントを備える、請求項23記載の顎矯正手術キット。
【請求項27】
前記骨固定インプラントの前記プレート部材は、前記プレート部材を第1の部分と第2の部分とに分割するブリッジング部分を有する、請求項23記載の顎矯正手術キット。
【請求項28】
前記ブリッジング部分は、除去可能である、請求項27記載の顎矯正手術キット。
【請求項29】
(i)前記骨切り術案内インプラントのプレート部材と、前記骨固定インプラントのプレート部材とは、それぞれ基準開口を有し、(ii)該基準開口はそれぞれ、前記上顎骨に形成された共通の固定エレメント収容穴に対応している、請求項23記載の顎矯正手術キット。
【請求項30】
前記切断案内経路は、前記穴の間に設けられている、請求項23記載の顎矯正手術キット。
【請求項31】
前記骨切り術案内インプラントは、さらに、前記骨インプラントを配置及び固定するための前記上顎骨上の位置を形成する穴を分割前に穿孔するためのテンプレートを提供するよう配置された第2の複数の開口を形成している、請求項23記載の顎矯正手術キット。
【請求項32】
少なくとも2つの別個の骨インプラントセグメントに分離されるよう構成された骨固定インプラントであって、該骨固定インプラントは、
第1の湾曲した部分と、延在方向に沿って前記第1の部分から間隔を置いて配置された第2の湾曲した部分とを有するプレート部材であって、該プレート部材はさらに、第1の接合部及び第2の接合部のそれぞれにおいて前記第1の湾曲した部分と前記第2の湾曲した部分との間に接続されたブリッジ部分を有し、前記第1の湾曲した部分と前記第2の湾曲した部分とはそれぞれ、前記第1の湾曲した部分と前記第2の湾曲した部分とを骨に固定するために固定エレメントを収容するよう構成された少なくとも1つの開口を形成している、プレート部材と、
前記第1の湾曲した部分と前記第2の湾曲した部分とのそれぞれから延びた少なくとも1つのフィンガであって、該少なくとも1つのフィンガのそれぞれは、該少なくとも1つのフィンガのそれぞれを骨に固定するために固定エレメントを収容するよう構成された少なくとも1つの開口を形成している、少なくとも1つのフィンガと、を備え、
前記第1の湾曲した部分と前記第2の湾曲した部分とが前記骨に固定された後、前記第1の湾曲した部分及び前記第2の湾曲した部分から前記ブリッジ部分が除去可能であるように前記第1の接合部及び前記第2の接合部が破壊可能であるように、前記第1の接合部及び前記第2の接合部は前記プレート部材の残りの部分に対して弱められており、これにより、前記延在方向に沿って前記プレート部材の前記第1の湾曲した部分と前記プレート部材の前記第2の湾曲した部分との間に延びた間隙を形成することを特徴とする、骨固定インプラント。
【請求項33】
前記第1の湾曲した部分は、第1の接合部において前記ブリッジ部分から延びており、前記第2の湾曲した部分は、第2の接合部において前記ブリッジ部分から延びている、請求項32記載の骨固定インプラント。
【請求項34】
前記第1の接合部及び前記第2の接合部は、パーフォレーションを有する、請求項33記載の骨固定インプラント。
【請求項35】
(i)前記ブリッジ部分は、プレートと、該プレートの各端部から延びた延長部とを有し、(ii)前記接合部は、前記延長部の端部に配置されている、請求項33記載の骨固定インプラント。
【請求項36】
前記ブリッジ部分は、恒久的な固定エレメントを収容するように構成された開口を備えていない請求項32記載の骨固定インプラント。
【請求項37】
前記ブリッジ部分は、前記延在方向に対して垂直の方向に沿って該ブリッジ部分の内面から延びた突出部を有し、更に、前記突出部を通って延びる基準穴を有している請求項32記載の骨固定インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
顎矯正手術は、概して、構造、成長、睡眠時無呼吸、TMJ疾患に関連する顎及び顔面の条件を修正するために又は矯正問題を修正するために行われる。例えば、著しく後退した上顎又は開咬を有する個人に対して、上顎骨切り術が有効である。このような手技において、外科医は、両眼窩の下側で切断を行い、上顎骨の分割された部分を上顎骨の一体の部分から分離させる。口蓋及び上側の歯を含む分割された部分全体は、一つのユニットとして移動することができる。次いで、分割された部分は、上側の歯と下側の歯とが適切に咬み合うまで移動させられる。歯が再位置決めされると、小さなスクリュ及びプレートが使用されて、自然の骨の修復が生じるまで上顎の分割された部分を新たな位置に固定する。
【0002】
幾つかの顎矯正手術は複数のプレートを上顎骨に固定し、上顎骨の分割された部分を第2の一体の部分に対して保持する。想像できるように、複数のプレートの適応及び使用は、手技を不必要に長くかつ複雑にする。
【0003】
その他のプレートシステムは、手技を完了するために外科医、歯科医、矯正歯科医などのような複数の分野を必要とする。その結果、しばしば、分野の間で誤解が生じる。これらの欠点及びその他の欠点は、顎矯正手術において使用されるこのようなプレートシステムに起因する。
【0004】
したがって、顎矯正手術を計画及び実施するためのより優れかつより正確な方法を達成することが望ましい。
【0005】
概要
本開示は、概して、顎矯正手術において使用されるインプラントの改良、特に、顎矯正手術において使用するための、特定の患者用のプレートの改良に関する。しかしながら、開示されたインプラントは、この特定の用途に限定されない。
【0006】
1つの実施の形態において、顎矯正手術において使用するためのインプラントは、プレート部材と、プレート部材から延びた複数のフィンガとを有する。プレート部材は、上顎骨の術前形状に対応するように予め成形されている。プレート部材は、少なくとも1つの固定開口を有し、この固定開口は、プレートを貫通しており、プレート部材を上顎骨に固定するために骨固定エレメントを収容するよう構成されている。フィンガは、上顎骨の形状に対応するよう予め成形されている。
【0007】
別の実施の形態において、上顎骨の第1の部分を上顎骨の第2の部分から分離する分割手技の後に上顎骨の第1の部分を上顎骨の第2の部分に接合するよう構成されたインプラントが開示される。インプラントは、プレート部材と、プレート部材から延びた保持構造とを有する。プレート部材は、分割手技の後に上顎骨の第1の部分の外面に対応するように、分割手技の前に、予め成形されている。プレート部材は、プレート部材を上顎骨の第1の部分に固定するために固定エレメントを受容するよう構成された少なくとも1つの開口を有する。保持構造は、分割手技の後に上顎骨の第2の部分に対応するよう予め成形されている。
【0008】
別の実施の形態において、顎矯正手術において使用するための骨切り術案内インプラントが開示される。骨切り術案内インプラントは、プレート部材と、プレート部材から延びた複数のフィンガとを有する。プレート部材及びフィンガは、上顎骨の術前形状に対応するよう予め成形されている。各々のフィンガは開口を形成しており、フィンガの開口は、上顎骨の分割された部分を上顎骨の一体の部分から分離させるために上顎骨の切断案内経路を形成する穴を骨切り術の前に穿孔するためのテンプレートを提供するよう配置されている。
【0009】
別の実施の形態において、インプラントは、ブリッジ部分によって分離された第1の部分と第2の部分とを有するプレート部材を有する。第1及び第2の部分は各々、プレート部材を骨に固定するために固定エレメントを収容するよう構成された少なくとも1つの開口を有する。少なくとも1つのフィンガは、第1及び第2の部分の各々から延びており、各々のフィンガは、各々のフィンガを骨に固定するために固定エレメントを収容するよう構成された少なくとも1つの開口を有する。プレート部材が骨に固定された後、ブリッジ部分は除去可能であり、これにより、プレート部材の第1の部分をプレート部材の第2の部分から分離させる。
【0010】
上顎骨の形状を修正する方法も開示される。好適には、複数の穴が配置されるべき上顎骨における複数の位置が決定される。案内インプラントの案内開口が複数の位置と整合するように配置されるように、案内インプラントが上顎骨に位置決めされる。次いで、案内インプラントの案内開口を用いて上顎骨に穴が形成される。穴の位置に基づき、上顎骨を少なくとも第1の部分と第2の部分とに分離させるために骨切り術が行われる。骨切り術が完了すると、予め成形された固定インプラントが上顎骨に位置決めされ、修正された形状に上顎骨を保持するよう配置される。骨固定インプラントは、上顎骨の術後形状に対応するよう予め成形されている。所定位置に配置されると、骨固定インプラントは、固定エレメントを用いて上顎骨に固定される。
【0011】
上顎骨の顎矯正手術において使用するための予め成形されたインプラントをカスタマイズする方法も開示される。インプラントをカスタマイズするために、まず、患者の上顎骨の術前三次元モデルがコンピュータにおいて形成され、その際、上顎骨の第1の部分と、上顎骨の第2の部分とは、第1の相対位置を形成している。次いで、上顎骨の術前三次元モデルは、術後形状に操作され、その際、上顎骨の第1の部分と、上顎骨の第2の部分とは、第1の相対位置とは異なる第2の相対位置を形成している。所望の位置に配置されると、骨固定インプラントは、上顎骨の計画された術後形状に適合するようカスタム製造される。インプラントは、長手方向プレート部材と、プレート部材の上縁から延びた複数のフィンガとを有する。
【0012】
前記概要、及び実施の形態の例の以下の詳細な説明は、添付された概略的な図面に関連して読んだ場合によりよく理解される。発明を例示するために、図面は、現時点で好適な実施の形態を示している。しかしながら、発明は、図面に開示された特定の手段に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】上顎骨に固定される骨固定インプラントを備えた頭骨の斜視図である。
【
図2A】1つの実施の形態にしたがって構成された骨固定インプラントの斜視図である。
【
図2B】
図2Aに示された骨固定インプラントの正面図である。
【
図2C】
図2Aに示された骨固定インプラントの平面図である。
【
図2D】
図2Aに示された骨固定インプラントの左側の側面図である。
【
図3A】1つの実施の形態にしたがって構成された骨切り術案内インプラントの斜視図である。
【
図3B】
図3Aに示された骨切り術案内インプラントの正面図である。
【
図3C】
図3Aに示された骨切り術案内インプラントの平面図である。
【
図3D】
図3Aに示された骨切り術案内インプラントの左側の側面図である。
【
図4】
図2A〜
図2Dの骨固定インプラントと、
図3A〜
図3Dの骨切り術案内インプラントとを、個々の患者の上顎骨に対応するようにカスタマイズする方法を示す図である。
【
図5A】手術される上顎骨を含む頭骨の正面図である。
【
図5B】
図5Aに示した頭骨の上顎骨の術前形状を示す、拡大した詳細な図である。
【
図5D】骨切り術案内インプラントによって形成された案内穴を通って上顎骨に穿孔された穴を示す、
図5Cに示した上顎骨の正面図である。
【
図5E】穿孔された穴を示す、
図5Dに示した上顎骨の正面図である。
【
図5F】切断ガイドとしての穴を用いて上顎骨において行われる骨切り術を示す、
図5Eに示した上顎骨の正面図である。
【
図5G】術後形状に再位置決めされた上顎骨の分割された部分を示す、
図5Fに示した上顎骨の正面図である。
【
図5I】上顎骨に取り付けられた骨固定インプラントを示す、
図5Hに示した上顎骨の正面図である。
【
図5J】除去された骨固定インプラントのブリッジ部分を示す、
図5Iに示した上顎骨の正面図である。
【0014】
例示的な実施の形態の詳細な説明
図1を参照すると、顎矯正手術において使用される骨固定インプラント10は、患者の頭骨12、特に、骨切り術のような分割手技によって上顎骨14が第1の"分割された"部分18と第2の"一体の"部分22とに分離させられた後における患者の上顎骨14のような、下に位置する骨に固定されるよう設計されている。上顎骨14の第1の部分18は、通常、上側の歯を支持しており、骨切り術が行われた後に頭骨12から完全に分離されているのに対し、上顎骨14の第2の部分22は頭骨12と一体のままである。骨固定インプラント10は、上顎骨の第1及び第2の部分に取り付けられ、これにより、骨形成が生じる間、上顎骨の第1の部分18を第2の部分22に対して支持及び保持するよう構成されている。インプラント10は、手術中の合併症及び患者が手術室で過ごす時間を最小限に減じるように術前にカスタマイズされている。
【0015】
用語は、以下の説明において便宜のためにのみ用いられ、限定するものではない。"右"、"左"、"下"、"上"との用語は、参照されている図面での方向を示している。"内"若しくは"遠位"、及び"外"若しくは"近位"との用語は、それぞれ、インプラント及びインプラントの関連する部分の幾何学的中心に向かう方向と、それから離れる方向とを示す。"前"、"後"、"上"、"下"、"内側"、"外側"との用語、及び関連する用語及び/又はフレーズは、参照される人体における好適な位置及び向きを示し、限定しようとするものではない。用語は、上に列挙した用語、それらの派生語、及び同じ由来の用語を含む。
【0016】
図2A〜
図2Dを参照すると、インプラント10及びインプラントの様々な構成部材は、ここでは長手方向"L"及び横方向"A"に沿って水平方向に、かつ厚さ方向"T"に沿って鉛直方向に延びているものとして説明される。本明細書においてそうでないことが明示されない限り、"横方向"、"長手方向"及び"厚さ方向"との用語は、様々な構成部材の直交する方向成分を説明するために用いられる。インプラント10が上顎骨14のような上顎骨上に埋め込まれた場合、厚さ方向Tは、概して上下方向(若しくは尾頭方向)に沿って鉛直に延びるのに対し、長手方向L及び横方向Aによって形成された平面は、水平方向に、概して内側−外側方向及び前後方向に延びる。したがって、"鉛直方向"及び"水平方向"という方向に関する用語は、単に分かりやすさ及び例示のために例示したインプラント10及びその構成部材を説明するために用いられている。
【0017】
図2A〜
図2Dに示したように、骨固定インプラント10は、長手方向Lに延在しかつ湾曲した長手方向プレート部材30と、長手方向部材30から鉛直方向に延びた保持構造34とを有する。長手方向プレート30は、上縁38と、実質的に上顎骨と同一平面上に位置するよう構成された骨係合面と、骨係合面とは反対側の外面とを有する。したがって、保持構造34は、長手方向部材30の上縁38から上方へ延びている。
図1に示したように、骨形成が生じる間、骨固定インプラント10は上顎骨の第1の部分18を第2の部分22に対して支持及び保持する。骨固定インプラント10及びその構成部材は、様々な生体適合性材料、例えば、コバルトクロムモリブデン(CoCrMo)、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、セラミックから、又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)及び生体再吸収(bioresorbable)材料のようなポリマから形成することができる。物理的又は化学的特性を高めるために又は薬物を提供するために、骨固定インプラント10にコーティングが付加若しくは塗布されてよい。コーティングの例は、プラズマ溶射されたチタンコーティング、又はヒドロキシアパタイトを含む。
【0018】
図1及び
図2A〜
図2Dに示したように、長手方向部材30は、上顎骨14の第1の部分18に取り付けられるよう構成されている。概して、長手方向部材30は、長手方向部材30を第1の部分46と第2の部分50とに分離する中央ブリッジ部材42を有する。第1及び第2の部分46,50は、ブリッジ部材42から、各々の接合部54から延びている。図示のように、第1の部分46はブリッジ部材42から第1の方向に延びているのに対し、第2の部分50はブリッジ部材42から、第1の方向とは概して反対の第2の方向に延びている。
図2Cに最もよく示したように、第1の部分46及び第2の部分50は各々、長手方向に延びながら横方向Aに湾曲している。したがって、
図2Cに最もよく示したように、長手方向部材30は、概してC字形の構造を形成するように湾曲させられている。さらに、
図2B及び
図2Dに最もよく示したように、第1の部分46及び第2の部分50は各々、長手方向に延びながら厚さ方向Tに傾斜している。長手方向部材30の曲率及び形状は、概して上顎骨14の形状に対応している。
【0019】
さらに加えて、長手方向部材30の第1及び第2の部分46及び50は、長手方向部材30の外面から骨係合面まで貫通した複数の固定エレメント収容開口/穴58を有する。各々の穴58は、スクリュのような固定エレメントを収容するよう構成されている。しかしながら、あらゆる固定エレメントが満足できるものであることを理解すべきである。インプラント10は、固定エレメントを長手方向部材30の各々の穴58に通して上顎骨14の第1の部分18に挿入することによって上顎骨14の第1の部分18に固定されるよう構成されている。
【0020】
長手方向部材30のブリッジ部材42は、長手方向Lに延在したプレート62と、プレート62の各々の端部から横方向Aに延びた延長部66と、プレート62の内面から同様に横方向に延びた、中央に配置された突出部70とを有する。接合部54は、各々の延長部66の後端に配置されている。つまり、長手方向部材30の第1及び第2の部分46,50はそれぞれ、ブリッジ部材42の各々の延長部66の後端から延びている。ブリッジ部材42は、インプラント10が上顎骨14に固定されると、接合部54において長手方向部材30から除去されてよい。接合箇所54は、インプラント10が上顎骨14に固定されるとブリッジ部材42が容易に除去されるように、弱くなっている。例えば、ブリッジ部材42をつまみ取ることによってブリッジ部材42が除去されるように、接合部54は、薄くなっているか、パーフォレーションが設けられているか、又はその他の方式で構成されていてよい。しかしながら、スニップ又はプライヤによって接合箇所54を切断することによってブリッジ部材42が除去されてよいことを理解すべきである。ブリッジ部材42は除去可能であるので、患者に残されるインプラント10の量は最小限に減じられる。
【0021】
図2Bに示したように、ブリッジ部材は、さらに、ブリッジ部材42のプレート62と突出部70との両方を横方向に貫通した基準穴74を有する。インプラント10はまず、固定エレメントを基準穴74に通して上顎骨14内へ挿入することにより上顎骨14に固定される。基準穴74に挿入された固定エレメントは、上顎骨への完全な固定のために外科医がインプラント10を正確に位置合わせする間、インプラント10を上顎骨14に一時的に固定する。
【0022】
長手方向部材30、特に第1及び第2の部分46,50は、上顎骨14の第1の部分18の術後形状に対応するよう予め成形されている。これに関して、長手方向部材は、分割手技の後の上顎骨の第1の部分の外面に対応するように、分割手技の前に予め成形されている。上顎骨14へのインプラント10の配置の前に手作業による曲げが不要であるように部材30が予め成形されていることが好ましいが、部材30は、上顎骨14へのインプラント10の配置の前に最小限の曲げ(例えば部材30を上顎骨14に固定する場合に行われる曲げ)のみが必要とされるよう予め成形されていてよい。
図2Cに最もよく示したように、第1及び第2の部分46,50は、上顎骨14の第1の部分18の特定の表面部分に対応する複数の非線形の波形78を有する。しかしながら、上顎骨14の第1の部分18の形状は、上顎骨14の術前形状と術後形状との間で変化させられなくてもよいことを理解すべきである。したがって、長手方向部材30は、上顎骨14の第1の部分18の術前形状と術後形状との両方に対応するよう予め成形されていてよい。
【0023】
図2A〜
図2Dに示したように、インプラント10の保持構造34は、少なくとも1つのフィンガ80、例えば長手方向部材30の上縁38から延びた複数のフィンガ80を有する。例示的な実施の形態によれば、2つのフィンガ80が、長手方向部材30の第1及び第2の部分46及び50の各々から延びている。しかしながら、あらゆる数のフィンガ80が第1及び第2の部分46及び50から延びていてよいことを理解すべきである。図示したように、各々のフィンガ80は、フィンガ80を上顎骨14の第2の部分22に固定するために、固定エレメント、例えばスクリュを収容するよう構成された少なくとも1つの固定エレメント収容開口又は穴84を有する。しかしながら、あらゆる固定エレメントが満足できることを理解すべきである。例示された実施の形態は、2つの穴84を有する各々のフィンガ80を示しているが、各々のフィンガは、あらゆる数、例えば1,2,3,4,等の穴を有してよいことを理解すべきである。
【0024】
図2Bに最もよく示したように、フィンガ80は、長手方向部材30の第1及び第2の部分46,50に沿って互いに間隔を置いて配置されていて、フィンガが延び始めている部分46,50における箇所に対して実質的に垂直に延びている。つまり、長手方向プレート部材30は、非線形であり、縁部38に沿った複数の異なる箇所において接線を形成する。したがって、各々のフィンガ80は、フィンガ80が延び始める縁部38における箇所において形成される接線に対して垂直に延びている。しかしながら、フィンガ80は垂直に延びていなくてもよく、長手方向部材30に対して所定の角度で延びていてもよいことを理解すべきである。好適には、インプラント10全体にわたる均等な力の分布をさらに高めるために、各々のフィンガ80が長手方向部材30の縁部38から延びている箇所と長手方向部材30の固定エレメント穴58が整合させられるように、各々のフィンガ80が長手方向部材30から延びている。
【0025】
保持構造34又はフィンガ80は、上顎骨14の第2の部分22の術後形状に対応するよう予め成形されており、上顎骨の第1の部分の形状及び関係に対応する固定部材を提供するように、第1及び第2の部分46,50から延びている。これに関して、フィンガ80は、分割手技の後の上顎骨の第2の部分の外面に対応するように、分割手技の前に予め成形されている。フィンガ30は、上顎骨14へのインプラント10の配置の前に手作業による曲げが不要であるように予め成形されているのが好ましいが、フィンガ80は、上顎骨14へのインプラント10の配置の前に最小限の曲げのみが必要とされるように予め成形されていてよい。したがって、
図2Cに最もよく示したように、フィンガ80は、上顎骨14の第2の部分22の特定の表面部分に対応する複数の非線形の波形90を有する。フィンガ80は予め成形されているので、フィンガ80は、上顎骨14の所望の位置においてのみ正確に合致し、正確な整合、ひいては所望の修正された形状を達成したという確証を外科医に提供する。
【0026】
インプラント10が上顎骨に固定される前に、上顎骨14を第1の部分18と第2の部分22とに分離させるために骨切り術が行われる。外科医のための案内を提供するために、上顎骨14に骨切り術が行われる前に、一時的な骨切り術案内インプラント110が上顎骨14に固定される。特に、骨切り術案内プレート110は、骨切り術を行う間に外科医がたどるためのテンプレートを提供する。例えば、骨切り術案内インプラント110は、外科医が、骨切り術を行う間にたどるために、上顎骨に案内穴を形成することを可能にする。これにより、骨切り術案内インプラントは、ドリル案内インプラントとして働く。骨切り術案内インプラントは、骨インプラント10を埋め込む間に外科医がたどるためのテンプレートも提供する。骨切り術案内インプラント110は、外科手術中の合併症及び患者が手術室において過ごす時間を最小限に減じるよう術前にカスタマイズされてもいる。
【0027】
図3A〜
図3Dに示したように、骨切り術案内インプラント110は、長手方向Lに延在しかつ湾曲した長手方向プレート部材130と、長手方向部材130から厚さ方向Tで鉛直方向に延びた複数のフィンガ若しくは突出部134を有するテンプレート部分132とを含む。インプラント10と同様に、骨切り術案内インプラント110は、上縁138と、上顎骨と実質的に同一平面に位置するよう構成された骨係合面と、骨係合面とは反対側の外面とを有する。骨切り術案内インプラント110と、その構成部材とは、様々な生体適合性材料、例えば、コバルトクロムモリブデン(CoCrMo)、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、セラミックから、又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、及び生体再吸収性材料のようなポリマから形成することができる。物理的又は化学的特性を高めるために又は薬剤を提供するために骨切り術案内インプラント110にコーティングが付加又は塗布されてよい。コーティングの例は、プラズマ溶射されたチタンコーティング又はヒドロキシアパタイトを含む。
【0028】
図3Cに最もよく示したように、長手方向プレート部材130は、中央接合部154から反対方向に延びた第1の部分146及び第2の部分150を有する。各部分146及び150は、長手方向に延びながら横方向Aに湾曲している。したがって、
図3Cに示したように、長手方向部材130は、骨固定インプラント10と同様に概してC字形の構造を形成するように湾曲させられている。さらに、
図3B及び
図3Dに最もよく示したように、第1の部分146及び第2の部分150はそれぞれ、長手方向に延びながら厚さ方向Tに傾斜している。長手方向部材130の曲率及び形状は、上顎骨14の形状に対応するよう構成されているべきである。
【0029】
図3Bに示したように、長手方向プレート部材130は、さらに、外面から骨係合面まで中央接合部154の近くにおいてプレート部材130を貫通した基準穴174を有する。骨切り術案内インプラント110は、まず、固定エレメントを基準穴174に通して上顎骨14内へ挿入することによって上顎骨14に固定される。基準穴174に挿入された固定エレメントは、一時的であり、骨切り術ガイドが提供されるように外科医が正確にインプラント110を整合させる間、利用される。
【0030】
図3A〜
図3Dに示したように、長手方向プレート部材130は複数の開口若しくは穴176を形成している。
図3Bに最もよく示したように、例示した実施の形態は、各々の部分146及び150に3つの穴176を有する。穴176は、互いに間隔を置いて配置されており、骨インプラント10の長手方向部材30によって形成された穴58と整合する予備穴を外科医が上顎骨14に穿孔するためのテンプレートを提供する。したがって、外科医は、骨インプラント10の穴58を予め穿孔された穴と整合させることによって、骨切り術が行われた後に骨インプラント10を上顎骨14の第1の部分18にどこで固定するかが分かる。しかしながら、場合によっては、長手方向プレート部材130は開口176を有さず、つまり、骨インプラント10を適切に整合させるために、予め穿孔された穴は不要であることを理解すべきである。
【0031】
図3A〜
図3Dに示したように、骨切り術案内インプラントのフィンガ134は、長手方向部材130の上縁138から延びている。特に、2つのフィンガ134が、長手方向部材130の第1及び第2の部分146及び150の各々から延びている。しかしながら、あらゆる数のフィンガ134が第1及び第2の部分146及び150から延びていてよいことを理解すべきである。
【0032】
図3Bに最もよく示したように、フィンガ134は、長手方向部材130に沿って間隔を置いて配置されており、フィンガが延び始める長手方向部材130における箇所に対して実質的に垂直に延びている。つまり、長手方向部材130は、非線形であり、上縁138に沿った様々な箇所において接線を形成する。したがって、フィンガ134は、フィンガ134が延び始める上縁138における箇所において形成された接線に対して垂直に延びている。しかしながら、フィンガ134は、垂直に延びていなくてもよく、長手方向部材130に対して角度を成して延びていてもよいことを理解すべきである。
【0033】
図3Bに示したように、骨切り術案内インプラント110の各々のフィンガ134は、開口若しくは穴180を形成している。穴180は、ドリルビットを収容するよう構成されており、これにより、案内穴が上顎骨14に穿孔され、案内経路を形成し、この案内経路に沿って骨切り術が行われる。図示したように、骨固定インプラント10が上顎骨14の第1の部分18を第2の部分22に対して確実に保持するように、案内経路であって、この案内経路に沿って骨切り術が行われる案内経路が適切に配置されるように、フィンガ134の穴180は位置決めされる。つまり、上顎骨の第1の部分18を第2の部分22に対して確実に保持するために、骨インプラント10のフィンガ80が骨切り術部を横切って延びるように十分に長くなるように、骨切り術部は配置される。
【0034】
骨切り術案内インプラント110、特に長手方向部材130及びフィンガ134は、上顎骨14の第1の部分18及び第2の部分22の術前形状、及び相対位置に対応するよう予め成形されている。
図3Cに最もよく示したように、長手方向部材130及びフィンガ134は、上顎骨14の第1の部分18及び第2の部分22の特定の部分に対応する複数の非線形の波形190を有する。
【0035】
図4を参照すると、骨固定インプラント10及び骨切り術案内インプラント110は、術前に製造及び成形される。顎矯正手術が行われる前に、患者の頭骨、特に患者の上顎骨、例えば上顎骨14の三次元画像が得られる。これは、好適には1mm未満、最適なものとしては0.2mm〜1mmごとのスライス(断層)を有するCTスキャニング装置200によって行われてよい。スライスのための高解像度が好ましい。なぜならば、CTスキャンスライスから上顎骨14の正確な形状が決定されるべきであるからである。上顎骨14の形状に対応する三次元データを提供する限り、CTスキャニング装置以外の他のスキャニング装置200が使用されてもよいことが認識されるであろう。
【0036】
患者の頭骨又は上顎骨の三次元画像が得られると、この画像はコンピュータ204にロードされ、外科医などの使用者による操作のために頭骨の仮想モデルを形成する。コンピュータ204は、ローカル(CTスキャニング装置200と同じ全体エリア)であるか、又は画像がネットワークを通じて送信されねばならないリモートであってよい。同様に、コンピュータ204にロードされた画像は、ローカル又はリモートで作業する使用者によって操作されてよい。しかしながら、通常、画像は、顎矯正手術を行う外科医によってリモートで操作される。
【0037】
頭骨の仮想モデルは、技術分野において一般的な標準的なソフトウェアを使用して外科医によって操作されてよい。例えば、ベルギー国ルーヴァンにビジネスの場所を有するMaterialise社から市販されているソフトウェアであるMimicsは、CTスキャニング装置200から得られた仮想モデルを処理及び操作するために使用されてよい。このソフトウェアにより、外科医は、患者の上顎骨を分析し、患者の顎矯正手術を術前に計画することができる。この計画は、骨固定インプラント及び骨切り術案内インプラントの形状及び設計を含む。
【0038】
患者の頭骨又は上顎骨の仮想モデルを用いて、外科医は、まず、
図3A〜
図3Dに示された骨切り術案内インプラント110のような骨切り術案内インプラントの仮想モデルを形成する。これは、骨切り術が実施される頭骨の仮想モデルにおいて決定し、次いで、仮想モデルにおいて仮想骨切り術を実際に実施することによって行われる。仮想骨切り術が完了すると、外科医は、骨切り術案内インプラント110の仮想モデルを形成し始めることができる。この時点において、頭骨、特に上顎骨の仮想モデルは、まだ術前の形状及び位置を有することを理解すべきである。したがって、作成されている骨切り術案内インプラント110の長手方向プレート部材130及びフィンガ134は、患者の上顎骨の術前形状に対応する。骨切り術案内インプラント110のフィンガ134に形成される穴180は、頭骨の仮想モデルにおいて実施された仮想骨切り術に対応するように、仮想モデルに形成される。したがって、仮想モデルを使用して作成された骨切り術案内インプラント110は、骨切り術を行うときに外科医が追従するための案内経路を形成した穴180を形成する。これにより、患者において実施される実際の骨切り術は、仮想モデルにおいて実施された仮想骨切り術と一致する。
【0039】
骨切り術案内インプラント110の仮想モデルが完成した後、外科医又はその他のオペレータは、上顎骨14の仮想モデルの第1の部分18(カットオフ部分)を第1の望ましくない位置から第2の望ましい位置へ操作する。第1の部分18が位置決めされ、仮想モデルが、外科医によって認められた、患者の上顎骨の術後の形状及び位置を示すと、
図2A〜
図2Dに示された骨固定インプラント10のような骨固定インプラントの仮想モデルを形成することができる。この時点で、頭骨、特に上顎骨の仮想モデルは、術後の形状及び位置を有することを理解すべきである。したがって、作成されている骨固定インプラント10の長手方向プレート部材30及びフィンガ80は、患者の上顎骨の術後形状に対応する。
【0040】
骨切り術案内インプラント110及び骨固定インプラント10の仮想モデルは、コンピュータ204からCAD/CAMフライス盤220等にダウンロード若しくは伝送される。フライス盤220は、あらゆる所望の材料から骨切り術案内インプラント110及び骨固定インプラント10を機械加工する。骨切り術案内インプラント110及び骨固定インプラント10が製造されると、外科医は、患者に対して顎矯正手術を実施する。
【0041】
図5A〜
図5Jは、骨切り術案内インプラント110及び骨固定インプラント10を使用して顎矯正手術を行う方法の例を示している。手術の前には、骨切り術案内インプラント110及び骨固定インプラント10は、個々の患者の上顎骨に実質的に対応するよう予め成形されていることを理解すべきである。
図5Aは、整復する必要のある上顎骨14を有する頭骨12の例を示している。
図5Bは、
図5Aに示された上顎骨14の詳細な図である。図示したように、この時点の上顎骨14は、術前形状を有する。骨切り術を上顎骨14において実施し、これにより、以下で説明するように、第1の部分18を整復することができるように、上顎骨14を第1の部分18と第2の部分22とに分離させる。
【0042】
図5Cに示したように、骨切り術案内インプラント110は上顎骨14に配置される。前述のように、骨切り術案内インプラント110は、上顎骨14の術前形状に対応するよう予め成形されており、したがって、上顎骨14に対して同一平面に位置する。言い換えれば、長手方向プレート部材130及びフィンガ134は、上顎骨14の術前形状に対応するよう予め成形される。適切に位置決めされると、スクリュ300を骨切り術案内インプラント110の基準穴174に挿入し、ドライバ300を用いてスクリュを上顎骨14にねじ込むことによって、骨切り術案内インプラント110は上顎骨14に一時的に固定される。
【0043】
図5Dに示したように、次いで、外科医は、ドリルビット304を用いて上顎骨14に穴を穿孔する。図示したように、ドリルビット304は、骨切り術案内インプラント110のフィンガ134によって形成された穴180に挿入される。前述のように、穴180は、骨切り術を実施する際に外科医が追従するための切断経路を外科医が形成することができるように、予め計画及び位置決めされる。例えば、
図5Eに示したように、骨切り術案内インプラント110を用いて上顎骨14に4つの穴320が穿孔される。4つの穴320が示されているが、骨切り術案内インプラント110を用いてあらゆる数の穴320が形成されるように骨切り術案内インプラント110が構成されてよいことを理解すべきである。例えば、骨切り術案内インプラント110は、6つの穴320が上顎骨に形成されるように、6つのフィンガ134を有するように形成されてよい。
【0044】
図5Dに示したように、骨切り術案内インプラント110の長手方向部材130によって形成された穴176に、ドリルビット304又は別のドリルビットが挿入される。
図5Eに示したように、骨切り術案内インプラント110を使用して上顎骨14に6つの穴324が穿孔される。6つの穴324が示されているが、骨切り術案内インプラント110を使用してあらゆる数の穴324が形成されるように、骨切り術案内インプラント110が構成されていてよいことを理解すべきである。穴324は、外科医が骨インプラント10を上顎骨に適切に配置するためのガイドとして働く。骨インプラント10が上顎骨14に確実に固定されることを保証するために、穴324は、骨インプラント10によって形成された穴58よりも小さい。つまり、スクリュが固定されたときに、スクリュのねじ山が骨の一部を捕捉する。
【0045】
図5Fに示したように、骨切り術案内インプラント110が取り外され、外科医は、穴320によって形成された切断経路に沿って上顎骨14に対して骨切り術330を行う。例示した実施の形態において、切断経路は、1つの穴320から隣接する穴320まで、骨切り術が完了するまで延びている。
図5Gに示したように、骨切り術330が上顎骨を第1の部分18と第2の部分22とに分離させる。例えば
図5Gに示したように、第2の部分22は頭骨と一体のままであるが、第1の部分18は、外科医によって整復されるために自由となる。
【0046】
上顎骨14の第1の部分18が整復されると、骨固定インプラント10が上顎骨14に配置される。前述のように、骨固定インプラント10は上顎骨14の術後形状に対応するよう予め成形されているので、上顎骨14の第1の部分18が整復された後でさえも上顎骨14に対して同一平面に位置する。言い換えれば、骨プレート10の長手方向プレート部材30及びフィンガ80は、上顎骨14の術後形状に対応するよう予め成形されている。適切に位置決めされると、骨固定インプラント10は、スクリュを骨固定インプラント10の基準穴74に挿入しかつスクリュをドライバ300によって上顎骨14にねじ込むことによって、上顎骨14に一時的に固定される。ほとんどの場合、骨固定インプラント10の基準穴74は、骨切り術案内インプラント110を上顎骨14に一時的に固定するために使用されたスクリュによって上顎骨14に形成された穴と一列に並ぶ。
【0047】
図5H及び
図5Iに示したように、骨固定インプラント10の穴58及び穴84に複数のスクリュ340が挿入される。図示したように、骨固定インプラント10のフィンガ80は、スクリュ340によって上顎骨14の第2の部分22に固定され、骨固定インプラント10の長手方向部材30は、スクリュ340によって上顎骨14の第1の部分18に固定される。したがって、骨固定インプラント10は、骨切り術部330のそれぞれの側において上顎骨14に固定される。
【0048】
図5Jに示したように、次いで、ブリッジ部材42が骨固定インプラント10から除去され、これにより、骨固定インプラント10を2つの別個の部分350に分離する。これにより、骨固定インプラント10は、骨固定インプラント10が骨に固定された後に2つの別個のインプラントセグメント若しくはセクションに分離されるよう構成された1つの骨固定インプラント10であると考えられる。前述のように、ブリッジ部材42は、つまみ取ることによって、又はブリッジ部材を接合部54において切り取るためにプライヤ又はスニップを使用することによって除去される。しかしながら、ブリッジ部材42は、当該技術分野において公知のあらゆる方法を使用して除去されてよい。
【0049】
ブリッジ部材42が除去されると、骨固定インプラント10は完全に装着される。したがって、手術が完了し、インプラント10は患者内に残るか又は後で除去される。
【0050】
骨固定インプラント10と骨切り術案内インプラント110とは別々に又はキットとして販売されてよいことを理解すべきである。しかしながら、骨切り術案内インプラント110と骨固定インプラント10とは、これらが同じキットの一部であるとしても、異なる時に製造及び配達されてよいことを理解すべきである。キットは、骨固定インプラント10を上顎骨14に固定するために必要な固定エレメントの全て及び手技を完了するために必要なあらゆる工具を含んでいてもよい。
【0051】
広い発明の概念から逸脱することなく、上述の実施の形態に対して変更を加えることができることは当業者によって認識されるであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施の形態に限定されるのではなく、この記載によって定義された本発明の思想及び範囲内の変更を網羅することが意図されている。例えば、骨固定インプラント10は除去可能なブリッジ部材42を有するものとして示されているが、骨固定インプラントは、装着された後にそのままにされてもよいことを理解すべきである。言い換えれば、骨固定インプラント10の長手方向部材30は、骨プレート10の装着後に1つの部品のままであるよう構成された1つの連続的なプレートであってよい。さらに、骨切り術案内インプラント110の穴180が、骨切り術が穴に沿って実施されるために案内経路が形成されるように、インプラント110のフィンガ134に位置決めされているが、穴180は、択一的なガイドを形成するよう位置決めされてもよい。例えば、穴180は、骨固定インプラント10の長手方向部材30によって形成された穴58と一列に並ぶ穴を上顎骨に形成するよう位置決めされていてよい。このような場合、骨切り術は穴180の上方で実施される。さらに、骨固定インプラント10及び骨切り術案内インプラント110は、上顎骨を伴う顎矯正手術において使用するために説明されているが、骨固定インプラント10及び骨切り術案内インプラント110は、下顎骨を伴う顎矯正手術において使用されてもよいことを理解すべきである。さらに加えて、骨固定インプラント10及び骨切り術案内インプラント110、及び記載された概念は、顎矯正手術に限定されず、骨の第1の分割された部分を骨の第2の一体の部分に固定する必要がある身体の他の部分のための手術において使用されてもよい。