(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669931
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】電磁誘導タッチセンサーと検出方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/047 20060101AFI20150129BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20150129BHJP
G06F 3/046 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
G06F3/047 Z
G06F3/041 400
G06F3/046 Z
【請求項の数】29
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-510475(P2013-510475)
(86)(22)【出願日】2010年6月21日
(65)【公表番号】特表2013-526740(P2013-526740A)
(43)【公表日】2013年6月24日
(86)【国際出願番号】CN2010074152
(87)【国際公開番号】WO2011147109
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2012年11月19日
(31)【優先権主張番号】201010187689.5
(32)【優先日】2010年5月23日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512299015
【氏名又は名称】ティーピーケイ タッチ ソリューションズ(シアメン)インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ゴカルプ ベイラモグル
【審査官】
若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−218892(JP,A)
【文献】
特開2005−156474(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/030710(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/007458(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/106714(WO,A1)
【文献】
特表2012−502397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01−3/048
G06F 3/14−3/153
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導タッチセンサーであって、
磁場を生成するための駆動層と、
前記駆動層に面して設けられており、前記電磁誘導タッチセンサー上に少なくとも1つのタッチ場所が生じて、前記駆動層との間の距離が変化して前記磁場を変化させたときに、インダクタンスの変化を表す少なくとも1つの誘発電気信号を生成するための誘導層と、
前記駆動層と前記誘導層に接続され、前記電磁誘導タッチセンサー上の前記少なくとも1つのタッチ場所を特定する少なくとも1つの電磁誘導回路とを備える、
電磁誘導タッチセンサー。
【請求項2】
前記誘導層は、前記少なくとも1つの電磁誘導回路に接続される複数の被誘導電極を備える、
請求項1に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項3】
前記誘導層は、被誘導基板をさらに備え、
前記被誘導電極は、前記被誘導基板の内表面に設けられている、
請求項2に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項4】
前記誘導層は、被誘導基板をさらに備え、
前記被誘導電極は、前記被誘導基板の外表面に設けられている、
請求項2に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項5】
前記駆動層は、前記少なくとも1つの電磁誘導回路に接続される少なくとも1つの駆動電極を有する、
請求項2に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項6】
前記駆動層は、駆動基板をさらに備え、
前記少なくとも1つの駆動電極は、前記駆動基板の内表面に設けられている、
請求項5に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項7】
前記駆動層は、駆動基板をさらに備え、
前記少なくとも1つの駆動電極は、前記駆動基板の外表面に設けられている、
請求項5に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項8】
前記電磁誘導回路は、
コントローラと、
前記少なくとも1つの駆動電極を前記コントローラに接続する少なくとも1つの駆動導電線と、
前記複数の被誘導電極を前記コントローラに接続する複数の被誘導導電線とを有する、請求項5に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項9】
前記少なくとも1つの駆動導電線は、第1の方向に配線され、
前記被誘導導電線は、前記第1の方向と異なる第2の方向に配線される、
請求項8に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項10】
前記少なくとも1つの駆動導電線は、1つの点から少なくとも1つの方向に沿って伸び、
前記複数の被誘導導電線は、中心が前記点である複数の同心円に分布している、
請求項8に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項11】
前記少なくとも1つの駆動導電線は、さらに、前記点から異なる方向に沿って伸びる少なくとも2つの駆動導電線を含む、
請求項10に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項12】
前記同心円は、さらに、同心円弧を含む、
請求項10に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項13】
前記駆動層は、さらに、
前記少なくとも2つの駆動導電線の交点に設けられ、前記駆動導電線を互いに絶縁させる複数の絶縁片を備える、
請求項11に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項14】
前記少なくとも1つの駆動導電線は、さらに、
中心が1つの点である少なくとも2つの同心円に分布する少なくとも2つの駆動導電線を有し、
前記複数の被誘導導電線は、前記点から異なる方向に沿って伸びる、
請求項8に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項15】
前記同心円は、さらに、同心円弧を含む、
請求項14に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項16】
前記誘導層は、さらに、
前記複数の被誘導導電線の交点に設けられた、前記被誘導導電線を互いに絶縁させる複数の絶縁片を備える、
請求項14に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項17】
前記複数の被誘導導電線は、夫々の前記被誘導電極を前記コントローラに夫々接続する、
請求項8に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項18】
前記被誘導電極は、複数の第1の被誘導電極と、複数の第2の被誘導電極とを含む、請求項8に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項19】
前記被誘導導電線は、
第1の方向にて前記複数の第1の被誘導電極を前記コントローラに接続する複数の第1の被誘導導電線と、
前記第1の方向と異なる第2の方向にて前記複数の第2の被誘導電極を前記コントローラに接続する複数の第2の被誘導導電線を含む、
請求項18に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項20】
前記誘導層は、被誘導基板をさらに備え、
前記第1の被誘導電極は、前記被誘導基板の内表面上に設けられており、
前記第2の被誘導電極は、前記被誘導基板の外表面上に設けられている、
請求項19に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項21】
前記誘導層は、さらに、前記第1の被誘導導電線と前記第2の被誘導導電線の交点において、該第1の被誘導導電線と第2の被誘導導電線の間に設けられた複数の絶縁片を備える、
請求項19に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項22】
前記駆動層と前記誘導層は、絶縁物質により隔てられている、
請求項1に記載の電磁誘導タッチセンサー。
【請求項23】
電磁誘導タッチセンサー上の少なくとも1つのタッチ場所を検出する検出方法であって、
a)駆動層に駆動電流を与え、誘導層を囲む磁場を生成するステップと、
b)前記電磁誘導タッチセンサー上に少なくとも1つのタッチ場所が生じて、前記駆動層と前記誘導層との距離が変化して前記磁場を変化させたときに、前記誘導層におけるインダクタンスの少なくとも1つの変化を表す少なくとも1つの誘発電気信号を生成するステップと、
c)前記少なくとも1つの誘発電気信号をコントローラに伝送するステップと、
d)前記少なくとも1つの誘発電気信号を処理することにより前記少なくとも1つのタッチ場所を特定するステップとを有する、
検出方法。
【請求項24】
前記電磁誘導タッチセンサーは、さらに、
前記駆動層を前記コントローラに接続する少なくとも1つの駆動導電線と、
前記誘導層を前記コントローラに接続する複数の被誘導導電線とを備える、
請求項23に記載の検出方法。
【請求項25】
前記駆動電流は、前記コントローラにより、前記少なくとも1つの駆動導電線に順次与えられる、
請求項24に記載の検出方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つのタッチ場所の特定は、前記少なくとも1つの駆動導電線と前記複数の被誘導導電線とに基づく、
請求項25に記載の検出方法。
【請求項27】
前記電磁誘導タッチセンサーは、さらに、
前記誘導層を前記コントローラに接続する複数の第1の被誘導導電線と複数の第2の被誘導導電線を有する、
請求項23に記載の検出方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つのタッチ場所の特定は、前記第1の被誘導導電線と前記第2の被誘導導電線とに基づく、
請求項27に記載の検出方法。
【請求項29】
前記タッチ場所は、前記誘導層の外表面上にある、
請求項23に記載の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサー、より具体的には、電磁誘導感知技術を用いるタッチセンサー及びその検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この二十年の間、ATM(現金自動預け払い機)のタッチスクリーン、ラップトップコンピュータのモニター、メディアプレイヤーのスクロール・ホイールのような様々な民生用アプリケーションにおいてタッチ技術が使用されるようになってきた。タッチセンサーは、タッチセンサーの表面に沿った指やタッチペンなどの物体の動きを検出して、後続のプロセスのための電気信号を生成する。
【0003】
抵抗型、容量型、音波型、光学型など、数多くのタッチ検出方法がこの技術分野で用いられている。抵抗型のタッチセンサーにおいて、2枚の連続抵抗膜は、スペーサを介して所定の間隔をおいてスタックされており、該スペーサは、上記2枚の連続抵抗膜に挟まれている。動作時に、物体がタッチしたタッチセンサーの外表面の位置に対応するタッチ場所において、上記2枚の膜が互いに接触する。タッチ場所における電流の変化を読み出すことによりタッチ場所の中心が検出される。しかし、該方式のタッチセンサーは、複数のタッチが生じた場合に、該複数のタッチの場所を別々に検出することができない。
【0004】
容量型は、投影型と表面型の2つのサブタイプを有する。投影型の容量タッチセンサーは、格子状の電極パターンを有し、表面型の容量タッチセンサーは、連続導電膜の隅に電極が設けられている。容量側のタッチセンサーは、金属物体や指のような導電物体がタッチ場所となる位置に近付いてタッチした後に生じる容量の変化を検出することによりタッチ場所を特定する。しかし、容量型のタッチセンサーは、誘電性物質には、反応できない。
【0005】
音波型のタッチセンサーは、音波を発生するためのエレメントと、音波を受信するためのエレメントを有し、音波を、タッチセンサーの表面を横切って伝送する。表面への物体のタッチは、音波のエネルギーの一部を吸収するため、タッチ場所が検出される。光学型のタッチセンサーは、音波の代わりに赤外線波などの光波が表面を伝送される点を除き、音波型のタッチセンサーと似た動作をする。しかし、この2種類のタッチセンサーは、発生エレメントと受信エレメントを設けるためのフレームが必要である。さらに、ホコリや油などの汚れは、スクリーンの誤活性化を引き起こし、タッチセンサーの感度を低下させる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の1つの目的は、導電体及び誘電体を検出可能な電磁誘導タッチセンサーを提供することにある。
【0007】
該電磁誘導タッチセンサーは、磁場を生成するための駆動層と、該駆動層に面し、該電磁誘導タッチセンサー上の少なくとも1つのタッチ場所に対応するインダクタンスの変化を表す少なくとも1つの誘発電気信号を生成するための誘導層と、駆動層と誘導層に接続され、少なくとも1つの誘発電気信号を検出して該電磁誘導タッチセンサー上の少なくとも1つのタッチ場所を特定するための電磁誘導回路とを備える。
【0008】
本発明の別の目的は、電磁誘導タッチセンサー上の少なくとも1つのタッチ場所の検出方法を提供することにある。
【0009】
電磁誘導タッチセンサー上の少なくとも1つのタッチ場所の検出方法は、下記のステップを含む。
a)駆動層に駆動電流を与え、誘導層上にインダクタンスを誘発する磁場を生成し、
b)電磁誘導タッチセンサー上に少なくとも1つのタッチが生じたときに、誘導層のインダクタンスの少なくとも1つの変化を表す少なくとも1つの誘発電気信号を生成し、
c)少なくとも1つの誘発電気信号をコントローラに伝送し、
d)少なくとも1つの誘発電気信号を処理することにより、少なくとも1つのタッチ場所を特定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる技術によれば、電磁誘導タッチセンサーは、導電体及び誘電体の存在を検出可能であり、上述した他のセンシング技術を用いたタッチセンサーの欠点を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】2つのワイヤ間でインダクタンスを生成することを示す概略図である。
【0012】
【
図2a】本発明の第1の実施の形態にかかる電磁誘導タッチセンサーの一部を示す概略図である。
【0013】
【
図2b】
図2aに示す電磁誘導タッチセンサーの分解平面図である。
【0014】
【
図3】
図2aと
図2bに示す電磁誘導タッチセンサーの動作原理を説明するための図である。
【0015】
【
図4】第1の実施の形態とは別の実施の形態にかかる電磁誘導タッチセンサーの一部を示す図である。
【0016】
【
図5】本発明の第2の実施の形態にかかる電磁誘導タッチセンサーの分解平面図である。
【0017】
【
図6】本発明の第3の実施の形態にかかる電磁誘導タッチセンサーの分解平面図である。
【0018】
【
図7a】本発明の第4の実施の形態にかかる電磁誘導タッチセンサーの一部を示す概略図である。
【0019】
【0020】
【
図8】本発明の第5の実施の形態にかかる電磁誘導タッチセンサーの分解平面図である。
【0021】
【
図9a】本発明の第6の実施の形態にかかる電磁誘導タッチセンサーの一部を示す概略図である。
【0022】
【発明を実施するための形態】
【0023】
導電線上を電流が流れるときに磁束線が生成されることは、知られている。導電線により生成された磁束線と磁場の強度は、該導電線の物理的形状と流れる電流の量によって決まる。第1の導電線の近傍に別の導電線がある場合に、第1の導電線により生成される磁束は、第2の導電線上のインダクタンスを誘発する。
図1は、2つの電流運搬ワイヤの物理特性を説明するための図である。電流4は、ワイヤ2に与えられている。この電流4は、ワイヤ1を囲む磁場3をワイヤ2に生じさせる。磁場3は、ワイヤ1上のインダクタンスを誘発する。インダクタンスの量は、これらの2つの導電線間の距離と他のパラメータに依存する。該2つの導電線間の距離が変えられると、インダクタンスは変化する。インダクタンスの変化を示す電気信号5は、出力される。電気信号5は、電圧や電流などである。従って、インダクタンスの変化を検出することは、インダクタンスの変化を引き起こすタッチ場所の特定に用いることができる。本発明にかかる電磁誘導タッチセンサーは、上述した電磁誘導検出技術に基づく。
【0024】
図2aと
図2bは、本発明の第1の実施の形態にかかる電磁誘導タッチセンサー100を示す。電磁誘導タッチセンサー100は、駆動層110、誘導層120、電磁誘導回路130を備える。駆動層110は複数の駆動電極111を有し、誘導層120は複数の被誘導電極121を有する。各駆動電極111は、相対応する被誘導電極121に面して設けられている。駆動電極111と被誘導電極121間に距離を置き、それらの互いの接触を防ぐために、駆動電極111と被誘導電極121は、絶縁媒体(図示せず)により隔てされている。該絶縁媒体は、連続絶縁層や、複数の隔離点などとすることができる。また、該絶縁媒体は、プラスチックや液体ジェルなどの変形可能な物質であってもよい。駆動基板112と被誘導基板122は、駆動電極111と被誘導電極121を夫々支持するために設けられている。電磁誘導回路130は、複数の駆動導電線131、複数の被誘導導電線132、コントローラ133を備える。駆動導電線131は、駆動基板112上に第1の方向に沿って駆動電極111をコントローラ133に接続し、被誘導導電線132は、被誘導基板122上に第2の方向に沿って被誘導電極121をコントローラ133に接続する。
【0025】
動作時において、コントローラ133は、駆動導電線131を介して駆動電極111に駆動電流を与えることにより、駆動電極111の回りに磁場を生成させる。この磁場は、被誘導電極121に作用し、被誘導電極121のインダクタンスは、発生する。このインダクタンスは、被誘導電極121と駆動電極111間の距離の関数である。駆動電極111が設けられた駆動基板112の外表面にあるタッチ場所がタッチされたとき、駆動基板121は、押下され、被誘導電極121が設けられた被誘導基板122に近付く。タッチ場所における駆動電極111と被誘導電極121の距離が短くなる。この距離の変化は、被誘導電極121にて生じたインダクタンスの変化を引き起こし、被誘導導電線132を介してコントローラ133に出力される、タッチ場所の検出に供される電気信号として現れる。
【0026】
図3を参照する。駆動電極111a、111bと111cは、駆動導電線131a上に位置し、駆動電極111d、111eと111fは、駆動導電線131b上に位置し、駆動電極111g、111hと111iは、駆動導電線131c上に位置する。また、被誘導電極121a、121dと121gは、被誘導導電線132a上に位置し、被誘導電極121b、121eと121hは、被誘導導電線132b上に位置し、被誘導電極121c、121fと121iは、被誘導導電線132c上に位置する。駆動導電線131a、131bと131cは、順次駆動される。駆動導電線131a、131b、または131cの夫々が駆動された後に、被誘導導電線132a、132bと132cは、検査される。例えば、駆動電流が駆動導電線131aを流れるときに、駆動電極111a、111bと111cは、被誘導電極121a、121bと121cにおけるインダクタンスを発生させる磁場を生成する。もし、外表面の、駆動電極111aの真上の場所がタッチされると、駆動電極111aは、被誘導電極121aに近付く。該タッチ場所において、駆動電極111aと被誘導電極121a間の距離が短くなるため、被誘導電極121aにおけるインダクタンスが増大し、対応する電気信号が生成される。該誘発電気信号は、被誘導導電線132aの検査時に検出される。そのため、タッチ場所は、コントローラ133により、被誘導導電線132aと駆動導電線131aに基づいて特定される。
【0027】
図4a―4cに示すように、駆動電極111は、駆動基板112の外表面と内表面のいずれ一方に設ければよく、被誘導電極121も、被誘導基板122のの外表面と内表面のいずれ一方に設ければよい。駆動電極111を駆動基板112の外表面に設ける場合、または、被誘導電極121を被誘導基板122の外表面に設ける場合、駆動電極111または被誘導電極121が傷付くことを防ぐために、駆動電極111または被誘導電極121の上に、1つ以上のカバーシート(図示せず)を設けてもよい。
【0028】
駆動導電線と被誘導導電線は、直線に限られることがない。
図5は、本発明の第2の実施の形態にかかる電磁誘導タッチセンサー200を示す。電磁誘導タッチセンサー200は、駆動層210、誘導層220、電磁誘導回路230を備える。駆動層210は、複数の駆動電極211と、駆動電極211を支持する駆動基板212を有し、誘導層220は、複数の被誘導電極221と、被誘導電極221を支持する被誘導基板222を有する。電磁誘導回路230は、複数の駆動導電線231、複数の被誘導導電線232、コントローラ233を有する。駆動電極211とコントローラ233を接続する駆動導電線231は、駆動基板212の1つのコーナーから、駆動基板212の内表面を覆うように互いに異なる方向に沿って伸びるように配線されている。また、被誘導電極221とコントローラ233を接続する被誘導導電線232は、被誘導基板222の内表面上に分布する複数の同心円弧を成す。タッチ場所の検出手法は、第1の実施の形態における検出手法と同様である。タッチ場所は、駆動導電線231と被誘導導電線232の分布に従って、コントローラ233により、駆動導電線231の角度と被誘導導電線232の円弧半径により定義される極座標に基づいて特定される。
【0029】
駆動導電線の交点は、第2の実施の形態のときのようなコーナーに限らず、駆動基板上の任意の点であってもよい。例えば、第2の実施の形態とほぼ同様の手法で極座標に基づいてタッチ場所を特定する本発明の第3の実施の形態によれば、駆動導電線331の交点が駆動基板312の内表面の中心である場合、
図6に示すように、電磁誘導タッチセンサー300は、他の態様で構成されることができる。該電磁誘導タッチセンサー300は、駆動基板312と複数の駆動電極311を有する駆動層310、被誘導基板322と複数の被誘導電極321を有する誘導層320、電磁誘導回路330を備える。第2の実施の形態と異なるのは、電磁誘導回路330の駆動導電線331が、互いに異なる方向に沿って伸び、駆動基板312の中心で交差することである。駆動導電線331の交点において、駆動導電線331を互いに絶縁させるための複数の絶縁片340が設けられている。また、交点が中心にあるため、電磁誘導回路330の被誘導導電線332は、第2の実施の形態のときの同心円弧ではなく、中心が被誘導基板322の中心となる複数の同心円となっている。他の接続に関しては、第2の実施の形態のときと同様である。
【0030】
なお、駆動導電線が同心円弧または同心円状に分布し、被誘導導電線が異なる方向に沿って伸び、被誘導基板の内表面上の任意の点で交差するようにしてもよい。
【0031】
上述した第1の実施の形態において、第1の方向に接続された駆動電極と第2の方向に接続された被誘導電極は、共に、タッチ場所の特定に用いられている。本発明においては、別の駆動−検出原理を適用することもできる。例えば、磁場を生成する駆動電極として動作する平板電極を設け、被誘導電極を2つのグループに分けて、2つの方向においてタッチ場所を特定する。
【0032】
図7aと
図7bは、上記別の駆動−検出原理を適用した本発明の第4の実施の形態にかかる電磁誘導タッチセンサー400を示す。電磁誘導タッチセンサー400は、1つの駆動電極411を有する駆動層410、複数の被誘導電極を有する誘導層420、電磁誘導回路430を備える。駆動電極411は、導電性平板であり、駆動基板412の内表面に設けられ、駆動基板412により支持される。被誘導電極は、被誘導基板422の内表面に設けられた複数の第1の被誘導電極421と、被誘導基板422の外表面に設けられた複数の第2の被誘導電極423に分けられている。電磁誘導回路430は、コントローラ433、1本の駆動導電線431、複数の第1の被誘導導電線432、複数の第2の被誘導導電線434を備える。駆動導電線431は、駆動電極411を、駆動電流を供給するためのコントローラ433に接続する。第1の被誘導導電線432は、被誘導基板422の内表面上の第1の方向において第1の被誘導電極421をコントローラ433に接続し、第2の被誘導導電線434は、被誘導基板422の外表面上の第2の方向において第2の被誘導電極423をコントローラ433に接続する。
【0033】
駆動電流が駆動導電線431を介して駆動電極411に供給されると、第1の被誘導電極421と駆動電極411間の空間は、駆動電流により生成された磁場により満たされる。第1の被誘導電極421と第2の被誘導電極423では、インダクタンスが誘発される。もし、駆動基板412の外表面のある位置にタッチが生じると、該タッチ場所において、駆動電極411と第1の被誘導電極421間の距離が短くなる。これは、第1の被誘導電極421におけるインダクタンスの増加を引き起こし、インダクタンスの増加を示す電気信号が誘発され、第1の被誘導導電線431を介してコントローラ433に送信される。コントローラ433は、第1の被誘導電極421における該誘発電気信号に基づいて、第1の方向におけるタッチ場所を演算する。駆動電極411が第1の被誘導電極421に近付くように動くと同時に、駆動電極411と、被誘導基板422の外表面に設けられた第2の被誘導電極423間の距離も短くなる。そのため、同様に、第2の方向におけるタッチ場所が特定できる。第1の実施の形態と似た手法で、タッチ場所は、コントローラ433により、第1の方向における第1の被誘導導電線432と第2の方向における第2の被誘導導電線434に基づいて特定可能である。
【0034】
第5の実施の形態にかかる電磁誘導タッチセンサー500の提供は、さらなる別の目的を実現するためにある。
図8に示すように、電磁誘導タッチセンサー500において、複数の被誘導電極は、被誘導基板の同一の表面に設けられている。電磁誘導タッチセンサー500は、第4の実施の形態に似ており、1つの駆動電極511を有する駆動層510、複数の第1の被誘導電極521と複数の第2の被誘導電極523を有する誘導層520、電磁誘導回路530を備える。駆動層510は、誘導層520に面するように設けられている。駆動電極511は、導電性平板であり、駆動基板512の内表面に設けられ、駆動基板512により支持される。第1の被誘導電極521と第2の被誘導電極523のいずれも、被誘導基板522の内表面に設けられている。電磁誘導回路530は、コントローラ533、1本の駆動導電線531、複数の第1の被誘導導電線532、複数の第2の被誘導導電線534を備える。第1の被誘導導電線532は、被誘導基板522上の第1の方向において第1の被誘導電極521をコントローラ533に接続し、第2の被誘導導電を線534は、被誘導基板522上の第2の方向において第2の被誘導電極523をコントローラ533を接続する。コントローラ533は、駆動電極511と接続され、駆動導電線531を介して駆動電流を供給する。
【0035】
第1の被誘導導電線532と第2の被誘導導電線534は、互いに交差する。交点において、第1の被誘導導電線532と第2の被誘導導電線534を絶縁させるための複数の絶縁片540が、第1の被誘導導電線532と第2の被誘導導電線534の間に設けられている。該実施の形態におけるタッチ場所の検出方法は、第4の実施の形態のときと同様である。インダクタンスの変化を表す誘発電気信号が、第1の方向における第1の被誘導導電線532と第2の方向における第2の被誘導導電線534の両方を介して、コントローラ533に出力される。結果として、タッチ場所は、第1の方向と第2の方向の両方において、コントローラ533により特定される。また、タッチは、駆動基板512の外表面と被誘導基板522の外表面のいずれであってもよい。
【0036】
上述した各実施の形態において、コントローラは、2つの異なる方向に沿って配置された電極でタッチ場所を特定する。もし、夫々の被誘導電極が、互いにユニークな場所を示すことができれば、夫々の被誘導電極でタッチ場所を特定するようにしてもよい。
図9aと
図9bは、本発明の第6の実施の形態にかかる電磁誘導タッチセンサー600を示す。電磁誘導タッチセンサー600は、1つの駆動電極611を有する駆動層610、複数の被誘導電極621を有する誘導層620、電磁誘導回路630を備える。駆動層610は、誘導層620に面して設けられている。駆動電極611は、駆動基板612の内表面上に設けられており、被誘導電極621は、被誘導基板622の内表面上に設けられている。電磁誘導回路630は、コントローラ633、1本の駆動導電線631、複数の被誘導導電線632を有する。各被誘導電極621は、夫々の被誘導導電線632を介してコントローラ633と夫々接続され、駆動電極611は、駆動導電線631を介してコントローラ633と接続される。
【0037】
上述した各実施の形態と同様に、駆動電極611で生じた磁場は、被誘導電極621においてインダクタンスを誘発する。駆動基板612の外表面に生じたタッチに対応する一部の被誘導電極621におけるインダクタンスの変化を表す誘発電気信号は、タッチ場所の特定のためにコントローラ633に出力される。各被誘導電極621が夫々コントローラ633に接続されているため、個々の被誘導電極621の位置は、タッチ場所を直接に示す。結果として、インダクタンスの変化が生じた個々の被誘導電極621に基づいてタッチ場所が特定される。使用時において、タッチは、駆動基板612の外表面と被誘導基板622の外表面のいずれであってもよい。
【0038】
本発明において、駆動層と誘導層は、絶縁媒体(図示せず)により隔てられるようにすることが好ましい。さらに、駆動電極は、駆動基板の外表面と内表面のいずれか一方に設けるようにしてもよく、駆動基板の両方に設けるようにしてもよい。同様に、被誘導電極は、被誘導基板の外表面と内表面のいずれか一方に設けるようにしてもよく、被誘導基板の両方に設けるようにしてもよい。駆動基板の外表面に駆動電極を設ける場合、または、被誘導基板の外表面に被誘導電極を設ける場合に、駆動電極または被誘導電極が傷付かないように、駆動電極または被誘導電極を覆う1つ以上のカバーシート(図示せず)を設けることが好ましい。
【0039】
様々な使用環境に応じて、上述した本発明の実施の形態における誘導層の外表面を、被誘導電極が駆動電極に近付くように移動させるタッチのために供するようにしてもよい。
【0040】
本発明の電磁誘導タッチセンサーは、例えば、ラップトップコンピュータのタッチパッドや携帯電話のタッチスクリーンなど、不透明または透明な様々なタッチデバイスへ適用できる。本発明の電磁誘導方式のタッチ検出手法により、様々な環境において、導電性物体及び誘電性物体によるタッチを高感度に検出することができる。
【0041】
本発明では、少なくとも1つの駆動電極と、少なくとも1つの被誘導電極が必要である。電磁誘導タッチセンサーの解像度とサイズは、電極の数を決定する主な要素である。通常、所望される解像度が高いほど、所望されるサイズが大きいほど、必要な電極の数が多くなる。駆動導電線と被誘導導電線の本数は、駆動電極と被誘導電極の数により決まる。なお、電磁誘導回路の数は、工業設計上のニーズにより影響される。
【0042】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明したが、実施の形態は例示であり、本発明の主旨から逸脱しない限り、上述実施の形態に対して、さまざまな変更、増減を加えてもよい。これらの変更、増減が加えられた変形例も、添付の請求項により規定される本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。