特許第5669933号(P5669933)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5669933-機械振動の監視 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669933
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】機械振動の監視
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20150129BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20150129BHJP
【FI】
   G01H17/00 A
   G01M99/00 A
【請求項の数】19
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-512137(P2013-512137)
(86)(22)【出願日】2011年5月24日
(65)【公表番号】特表2013-526724(P2013-526724A)
(43)【公表日】2013年6月24日
(86)【国際出願番号】US2011037641
(87)【国際公開番号】WO2011149869
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2013年4月8日
(31)【優先権主張番号】13/020,413
(32)【優先日】2011年2月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/347,990
(32)【優先日】2010年5月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】スゥン、イエンシア
(72)【発明者】
【氏名】クレイトン、ピーター ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シスムーア ジュニア、 アルバート シー
【審査官】 ▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−222229(JP,A)
【文献】 特開平01−245122(JP,A)
【文献】 特開2009−257806(JP,A)
【文献】 特開2006−341659(JP,A)
【文献】 特開平07−128134(JP,A)
【文献】 特開平07−286892(JP,A)
【文献】 特開昭62−151725(JP,A)
【文献】 特開平01−140026(JP,A)
【文献】 特開平10−020925(JP,A)
【文献】 特開平05−079903(JP,A)
【文献】 特開2002−041407(JP,A)
【文献】 特開2002−358219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00−17/00
G01M 13/00−13/04;99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する要素を有する機械において振動を監視するシステムであって、
前記機械における合成振動を測定して該測定した合成振動に応じる合成デジタル振動信号を出力するように構成された振動測定デバイスと、
前記機械の動作状況を測定する動作状況センサと、
前記合成デジタル振動信号を受信して第1振動ベクトル信号及び第2振動ベクトル信号へ濾波するように構成され、また、前記測定された動作状況を受信するように構成されたプロセッサと、
前記第1振動信号、前記第2振動信号、及び前記動作状況を記憶する記憶ユニットと、
前記動作状況と関連させて前記第1振動信号を表示するディスプレイデバイスと、を備え、
前記動作状況センサによって測定された前記機械の動作状況が、前記機械の第1及び第2の動作状況を含み、
前記ディスプレイデバイスによる表示は、フォルダと、前記フォルダ内の第1及び第2のサブフォルダとを含み、
前記フォルダが、前記第1の動作状況の第1の状態において前記機械が動作しているときに収集された前記第1振動信号を含み、
前記第1のサブフォルダが、前記第1の動作状況の前記第1の状態と前記第2の動作状況の第1の状態とにおいて前記機械が動作するときに収集された前記第1振動信号を含み、
前記第2のサブフォルダが、前記第1の動作状況の前記第1の状態と前記第2の動作状況の第2の状態とにおいて前記機械が動作するときに収集された前記第1振動信号を含む、
システム。
【請求項2】
前記ディスプレイデバイスは、前記動作状況に関連させて前記第2振動信号を表示する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記振動測定デバイスによって、Nに等しい複数の合成振動測定結果が経時的に測定され、このN個の測定結果が、N個の前記合成デジタル振動信号として出力され、
前記プロセッサは、前記N個の測定結果を受信してN個の前記第1振動ベクトル信号及
びN個の前記第2振動ベクトル信号へ濾波し、該N個の第1振動ベクトル信号の平均値及び標準偏差を求める、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、後に測定されるN+1番目の前記合成振動測定結果を受信してN+1番目の前記第1振動ベクトル信号及びN+1番目の前記第2振動ベクトル信号へ濾波する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記N+1番目の第1振動ベクトルが前記N個の第1振動ベクトル信号の平均値及び標準偏差に関連した第1しきい値を越える場合、前記プロセッサは、第1アクションを活性化させる、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1アクションが可聴アラームである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記N+1番目の第1振動ベクトルが前記N個の第1振動ベクトル信号の平均値及び標準偏差に関連した第2しきい値を超える場合、前記プロセッサは、第2アクションを活性化させ、
該第2しきい値は、前記第1しきい値よりも大きな、前記平均値からの偏差を表す、
請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記第2アクションが機械動作変更又は機械停止手続である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1しきい値は、前記動作状況に関連させてある、請求項5に記載のシステム。
【請求項10】
前記動作状況が、速度入力、メガワット入力、界磁電流入力、又はクラッチポジション入力である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1振動ベクトル信号及び前記第2振動ベクトル信号は、それぞれ、1×及び2×信号である、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記N個の測定結果が等時間間隔で測定される、請求項3に記載のシステム。
【請求項13】
回転する要素を有する機械において振動を監視する方法であって、
前記機械において経時的にN個の合成振動を測定し、
該測定したN個の合成振動に対応するN個の合成デジタル振動信号をプロセッサへ出力し、
前記測定したN個の合成振動に対応する前記N個の合成デジタル振動信号を受信し、
前記N個の合成デジタル振動信号のそれぞれを濾波してN個の第1振動ベクトル信号及びN個の第2振動ベクトル信号とし、
該N個の第1振動ベクトル信号の平均値及び標準偏差を求め、
前記機械の動作状況を測定し、
前記N個の第1振動ベクトル信号の少なくとも1つを少なくとも1つの前記動作状況と関連させて表示する、ことを含み
前記動作状況を測定する過程が、前記機械の第1及び第2の動作状況を測定することを含み、
前記表示する過程が、フォルダと、前記フォルダ内に第1及び第2のサブフォルダとを表示することを含み、
前記フォルダが、前記第1の動作状況の第1の状態において前記機械が動作しているときに、収集された前記N個の第1振動ベクトル信号を含み、
前記第1のサブフォルダが、前記第1の動作状況の前記第1の状態と前記第2の動作状況の第1の状態とにおいて前記機械が動作するときに収集された前記N個の第1振動ベクトル信号を含み、
前記第2のサブフォルダが、前記第1の動作状況の前記第1の状態と前記第2の動作状況の第2の状態とにおいて前記機械が動作するときに収集された前記N個の第1振動ベクトル信号を含む、
方法。
【請求項14】
前記機械におけるN+1番目の合成振動を測定し、
該測定したN+1番目の合成振動に対応するN+1番目の合成デジタル振動信号をプロセッサへ出力し、
前記測定したN+1番目の合成振動に対応する前記N+1番目の合成デジタル振動信号を受信し、
前記N+1番目の合成デジタル振動信号をN+1番目の第1振動ベクトル信号及びN+1番目の第2振動ベクトル信号へ濾波し、
該N+1番目の第1振動ベクトル信号を前記N個の第1振動ベクトル信号の平均値及び標準偏差に関連した第1しきい値と比較する、
ことを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記N+1番目の第1振動ベクトル信号を第1しきい値と比較するステップが前記第1しきい値を超える場合、第1アクションを開始する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記N+1番目の第1振動ベクトル信号を前記N個の第1振動ベクトル信号の平均値及び標準偏差に関連した第2しきい値と比較する、ことをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記N+1番目の第1振動ベクトル信号を第2しきい値と比較するステップが前記第2しきい値を超える場合、第2アクションを開始する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1アクションが可聴アラームで、前記第2アクションが機械動作変更又は機械停止である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記N個の第1振動ベクトル信号及び前記N個の第2振動ベクトル信号は、それぞれ、1×及び2×振動信号である、請求項13に記載の方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2010年5月25日出願の米国仮特許出願61/347,990の優先権を主張する。その開示内容はここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、回転する要素を備えた機械からの振動信号の監視に関する。
【背景技術】
【0003】
機械内の回転する要素が、動作周波数に関連して異なるベクトルの振動を当該機械に発生させることがあり、さらには大半の振動モニタが、全ベクトルに関する合成としてデータを収集する、ことが周知である。このように、例えば、1×動作周波数、2×動作周波数、及び3×動作周波数の振動ベクトルの合成の結果生じるにもかかわらず、単一合成振動ベクトルが測定される。従来では、この合成周波数ベクトルが、手作業等により、綿密に時間をかけた分析方法で分析されている。この技術は便利であるけれども、例えば1×、2×、及び3×のベクトルを分けるような、より精巧な方法で振動信号の本当の作用を分析し予測する機械ユーザーの能力を制限し、したがって機械振動分析に対する限られたアプローチの典型である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザが迅速且つ能率的に、個々のベクトルに濾波された振動データを分析できるようにすることが、有益と考えられる。そして、その濾波データを、機械の各種動作状況とリアルタイムに又はこれに近い状態で比較することも、有益と考えられる。それにより、今までは想定外の速度及び精度に関し、予定の基準からの偏差を特定し明確にし得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの目的を達成するため、本発明は、一つの態様において、回転する要素を有する機械において振動を監視するシステムに関し提案する。この態様において、システムは、機械における合成振動を測定して該測定した合成振動に応じる合成デジタル振動信号を出力するように構成された振動測定デバイスと、機械の動作状況を測定する動作状況センサと、合成デジタル振動信号を受信して第1振動ベクトル信号及び第2振動ベクトル信号へ濾波すると共に測定された動作状況を受信するように構成されたプロセッサと、第1振動信号、第2振動信号、及び動作状況を記憶する記憶ユニットと、動作状況に関連させて第1振動信号を表示するディスプレイデバイスと、を備える。
【0006】
ディスプレイデバイスは、動作状況に関連させて第2振動信号を表示してもよい。
【0007】
振動測定デバイスによって、Nに等しい複数の合成振動測定結果が経時的に測定され、このN個の測定結果が、N個の合成デジタル振動信号として出力され得る。その結果、プロセッサは、N個の測定結果を受信してN個の第1振動ベクトル信号及びN個の第2振動ベクトル信号へ濾波し、N個の第1振動ベクトル信号の平均値及び標準偏差を求め得る。当該システムにおいて、プロセッサは、その後に測定されるN+1番目の合成振動測定結果を受信してN+1番目の第1振動ベクトル信号及びN+1番目の第2振動ベクトル信号へ濾波し得る。N+1番目の第1振動ベクトルがN個の第1振動ベクトル信号の平均値及び標準偏差に関連した第1しきい値を越える場合、プロセッサは、第1アクションを活性化させ得る。この第1アクションは、可聴アラームとすることができる。N+1番目の第1振動ベクトルがN個の第1振動ベクトル信号の平均値及び標準偏差に関連した第2しきい値を超える場合、プロセッサは、第2アクションを活性化させ得る。第2しきい値は、第1しきい値よりも大きな、平均値からの偏差を表す。第2アクションは、機械の動作変更又は機械の停止手続とすることができる。N個の測定結果は、等時間間隔で測定され得る。
【0008】
第1しきい値は、動作状況に関連させてあってもよく、その動作状況とは、速度入力、メガワット入力、界磁電流入力、又はクラッチポジション入力とすることができる。
【0009】
第1振動ベクトル信号及び第2振動ベクトル信号は、それぞれ、1×及び2×信号とすることができる。
【0010】
本発明の別の態様において、回転する要素を有する機械において振動を監視する方法が提案される。当該方法は、当機械において経時的にN個の合成振動を測定し、測定したN個の合成振動に対応するN個の合成デジタル振動信号をプロセッサへ出力し、測定したN個の合成振動に対応するN個の合成デジタル振動信号を受信し、N個の合成デジタル振動信号のそれぞれを濾波してN個の第1振動ベクトル信号及びN個の第2振動ベクトル信号とし、N個の第1振動ベクトル信号の平均値及び標準偏差を求め、機械の動作状況を測定し、N個の第1振動ベクトル信号の少なくとも1つを少なくとも1つの動作状況と関連させて表示する、ことを含む。
【0011】
N個の第1振動ベクトル信号及びN個の第2振動ベクトル信号は、それぞれ、1×及び2×の振動信号であり得る。
【0012】
N個の第1振動ベクトル信号の少なくとも1つを少なくとも1つの動作状況と関連させて表示するステップでは、コンピュータの第1レベルフォルダ内のN個の第1振動ベクトル信号及びコンピュータの第2レベルフォルダ内の少なくとも1つの動作状況を表示することができる。
【0013】
当該方法は、さらに、当機械におけるN+1番目の合成振動を測定し、測定したN+1番目の合成振動に対応するN+1番目の合成デジタル振動信号をプロセッサへ出力し、測定したN+1番目の合成振動に対応するN+1番目の合成デジタル振動信号を受信し、N+1番目の合成デジタル振動信号をN+1番目の第1振動ベクトル信号及びN+1番目の第2振動ベクトル信号へ濾波し、N+1番目の第1振動ベクトル信号をN個の第1振動ベクトル信号の平均値及び標準偏差に関連した第1しきい値と比較する、ことを含むようにできる。N+1番目の第1振動ベクトル信号を第1しきい値と比較するステップで第1しきい値を超える場合、第1アクションを開始することができる。当該方法は、さらに、N+1番目の第1振動ベクトル信号をN個の第1振動ベクトル信号の平均値及び標準偏差に関連した第2しきい値と比較することを含み得る。N+1番目の第1振動ベクトル信号を第2しきい値と比較するステップで第2しきい値を超える場合、第2アクションが開始される。第1アクションは可聴アラームで、第2アクションは、機械の動作変更又は機械の停止とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
上記記載事項と、本発明のその他の目的、特徴及び利点については、次の図面を併用した以下の、振動監視システム及び方法の詳細な説明によってより深く理解される。
図1】振動監視システムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図示され及び図面と共に説明される発明の好適な実施形態を説明するにあたり、特定の用語を明確性のために利用する。しかし、本発明において、その選択された特定の用語に制限されることは意図されておらず、各用語は、同様の方法で動作し同様の目的を達成する技術的に同等のものをすべて含むと解釈されるべきである。
【0016】
本発明に係る振動監視システム及び方法の実施形態を説明する。概して、本発明は、回転する複数の要素又は回転する単一の要素をもつ機械から、加速度計や近接計(proximiter)により測定される横方向の振動信号、又は、磁気ピックアップや光学センサにより測定されるねじり振動信号を取得すべく設計される。これら振動信号はベクトル、例えば1×、2×、及び3×動作速度のベクトル、の組み合わせを表す。そして当該信号は、個々の振動ベクトル、例えば1×、2×、及び3×動作速度に関する個々のベクトル、を取得するべく濾波される。この濾波プロセスは、フーリエ変換分析など既知の方法に従いプログラムされたコンピュータにより実行される。そして、このコンピュータプロセッサは、個々の振動ベクトルの平均値及び標準偏差値を求めるが、その背景として、履歴上の機械振動ベクトルの傾向と、場合によっては機械の特定の動作状況、に基づいて、警告及びトリップ(作動)のリミット(第1アクション及び第2アクション項目)が設定される。
【0017】
これら警告とトリップのリミットは、好ましくは、機械に起こりそうな問題をオペレーターに警告することで、又は、場合によっては機械を自動的に停止させることで、最悪な機械の故障を防ぐべく設計される。警告リミット及びトリップリミットは、固定値とはされず、履歴上の傾向に基づいて算出又は決定され、追加の振動数値が経時的に得られると自動的に更新される。
【0018】
したがって、本発明は、回転する要素をもつ機械の状況に応じた保護を提供し、ロータークラック、部品の緩み、部品損壊などから生じ得る構造的故障を防ぐ。
【0019】
当該機械の構造的変更や故障は振動ベクトルを変化させることが知られている。振動ベクトルが変化した場合、振動の振幅は増加するか、変わらないままか、あるいは減少する。従来の振動監視は、濾波していない信号の振幅を使用して、増加する振幅の状況に対してのみ、アラーム又はトリップ条件を設定しており、且つ、そのアラーム又はトリップ条件に関し所定の固定値を使用するのみである。この理由から、従来の方法は、振動振幅の増加に関してのみ明らかにすることができ、変化の無い振幅あるいは減少する振幅でさえダメージ又は故障が生じるというシチュエーションを見逃している。さらに、以前の方法は、唯一の振動数値でアラーム又はトリップ条件を設定するのみであり、複数の数値に従う傾向における変化を評価することができない。
【0020】
図1に示すのは、回転する要素をもつ機械(M)の振動特性を監視するシステム100の概略である。図示のように、機械(M)には、加速度計や近接計(proximiter)といった従来型の横方向振動測定デバイス102が設けられる(本開示事項の残りの箇所で通例として便宜的に横方向振動信号に触れることが認識されるが、横方向(lateral)、ねじり(torsional)、又はその他の振動が本発明の範囲に含まれることを理解すべきである)。このデバイスは、機械(M)の一部とするか又は本発明システムの一部として追加することができる。横方向振動測定デバイス102は、所定の時間間隔で合成振動を測定する。これにより、合計N個の数値が経時的に取得される。単なる例として、数値は24時間中1時間毎に取得され、N=24の表に出ない(discreet)合成振動の数値を生成する。他の例では、合計でN=365の表に出ない合成振動の数値のために、1年を通じて1日毎に1つ数値が取得される。
【0021】
アナログ−デジタルコンバータ104が横方向振動測定デバイス102と連動して、数値をアナログ信号からデジタル信号へ変換する。このユニットも、機械(M)の一部か又は本発明システムの一部とすることができる。次いでこれら信号は、直接配線や無線技術を含むあらゆる方法で、合成デジタル振動信号106としてコンバータ104からコンピュータプロセッサ108へ送信される。当信号は、ローカルに又は同時にインターネットを通じて送信され得る。
【0022】
コンピュータプロセッサ108は、信号106を受け取ってフーリエ変換を適用し、合成デジタル振動信号106を、機械(M)の動作周波数に関連する振幅及び位相の分割振動ベクトルへ変換する。これら分割振動ベクトルは、1×、2×、又は3×動作周波数に関連し、ただし、1.5×など中間の増加率に関連付けられていてもよい。そして、プロセッサ108は、各分割ベクトルに関して平均値及び標準偏差を求める。説明し易いように、仮定の1×ベクトルを考察する。
【0023】
この1×ベクトルに関し、プロセッサ108は、N個の数値に関する振幅を決定している。Nは、得られた数値の数に等しい。これらN個の数値に関し、プロセッサは、次に平均値及び標準偏差を計算する。
【0024】
数値番号N+1である次の数値が、横方向振動測定デバイス102及び続くアナログ−デジタルコンバータ104によりプロセッサへ送信される。プロセッサがこの信号を受信して個々の1×ベクトルへ濾波すると、その数値(reading)が前の数値(readings)と比較される。該値が、標準偏差に基づく第1プリセット値を越えていれば、第1アクションがプロセッサ108により実行される。第1アクションの例は、可聴アラームや可視表示であり、可視表示は、プロセッサ108と連動するディスプレイデバイス110に表示される。同様に、前記値が、標準偏差に基づく第2プリセット値を越えていれば、第2アクションがプロセッサ108により実行される。第2アクションの例は、機械の全停止に至る機械動作変更を含む。プリセット値は、数値の傾向分析を行ってオペレーターにより経時的に調節される。
【0025】
現状の振動監視システムは一般的に作動(トリップ)させられるのみと認識され、1つのプリセット振動リミットが測定されたときにプロセッサが1つのアクションを起こす。このリミットは一般に工業基準及び機械設計ガイドラインに関連付けられており、最悪の機械故障に達するリミットと関連させられることがほとんどである。本発明システムでは、オペレーターが例えば上限値へ近づくといった傾向を観測することができる。傾向が経時的に一定であれば、オペレーターは、そのような傾向の理由を評価することができ、プロセッサにより実行され得るアクションから独立したいかなるアクションも行う必要がない。逆に、オペレーターがさらなるアクションを行うこともできる。この分析のレベルは、従来では可能でなかった。
【0026】
さらに、傾向が考慮されていても、従来技術のシステムが作動(トリップ)するレベルに達する前に、傾向から外れる数値の急な変化があり得る。この場合、現システム下で利用可能な増加データが提供されれば、オペレーターは、プロセッサ108が機械(M)に歯止めをかける必要があるレベルに振動が到達する前であっても、機械(M)を評価してアクションが必要か否か決定することができる。
【0027】
経時的に傾向を評価するために、及び、オペレーターが過去の振動値を検討することができるように、プロセッサ108は、ハードドライブやその他のメモリデバイスといった、プロセッサにより得られた振動値を記憶する記憶ユニット112と連動する。
【0028】
プロセッサ108により評価される振動信号に加えて、本システムは、1以上の動作状況センサ(OC)を含み得る。当該センサは、数ある中でも特に、温度状況、機械部品の速度、機械により供給される又は使用されるメガワット数、発電機の界磁電流、機械の各種部品のクラッチポジションなどの、機械(M)の内部及び周囲の状況を検知してプロセッサ108に報告する。このデータ114も記憶ユニット112に記憶され、N振動数値のそれぞれと共に、又は、オペレーターの指示に従って、ディスプレイデバイス110に表示される。これにより、振動傾向を他の動作状況と容易に比較することができ、振動傾向の変化の要因決定を支援する。
【0029】
例えば、周囲温度が上昇して特定の温度数値を越えるときに、対象機械(M)の1×の振動がある標準偏差を少し越える程度に増加することを、経時的に注視することができる。このような場合、特定の機能での1×振動における該当標準偏差増加の発生に応じて、オペレーターは、すぐに温度データを入手して、温度上昇が振動増加の原因か否か決定することができる。もし、原因でなければ、オペレーターは、他の状況パラメータ情報に目を通し、別のあり得る相関を特定したり、機械(M)に逼迫した故障状況があるか否か特定したりすることができる。
【0030】
プロセッサ108及びディスプレイデバイス110に関係するソフトウエアが提供され、ディスプレイデバイスで、視覚的に、異なる入力に関連付けられた異なる「フォルダ」及び動作状況を容易に評価できるように表示する。例えば、機械の最高動作速度における振動数値のフォルダが作成される。これに関連して、一例として温度を用いると、第1温度用の「サブフォルダ」及び第2温度用の「サブフォルダ」が作成される。
【0031】
機械が動作して振動信号が収集されると、データは、後の評価のために、フォルダに入れられる。一例として温度を再度用いると、最高動作速度用に作成されたフォルダが存在する。その「フォルダ」の下に、70°F動作用の「サブフォルダ」及び80°F動作用の第2の「サブフォルダ」が存在する。機械(M)が最高速度で運転され、温度が70°Fの場合、データは、「最高速」フォルダの下の70°F「サブフォルダ」に入れられる。他方、温度が80°Fへ上昇した場合、データは、「最高速」フォルダの下の80°F「サブフォルダ」に入れられる。オペレーターは、その後、特定の動作状況に関連したデータを必要に応じて容易に閲覧し得る。もちろん、メイン「フォルダ」の下に、その他の動作状況用に追加の「サブフォルダ」を作成することができる。同様に、第3レベルの「サブフォルダ」を他の動作状況用に作成することも、そのようにプログラムされていれば可能である。例えば、第3レベルの「サブフォルダ」は、最高速動作(レベル1)、70°F(レベル2)、所定の部品の特定のクラッチポジション(レベル3)用に作成される。当然ながら、この他の例も可能である。
【0032】
振動データを収集し評価するために多くの方法があり得るが、一例として次の方法が使用される。この方法では、機械におけるN個の合成横方向振動レベルが経時的に測定される。上記同様、期間は様々であるが、典型的な例では、1時間に1回又は1日に1回である。測定回数Nを増やせば、結果分析精度も向上することが理解される。
【0033】
測定されたN個の合成横方向振動レベルは、デジタル信号として出力され(又はそれ以外で出力して変換され)、プロセッサで受信される。プロセッサは、N個の合成信号をそれぞれ濾波して少なくともN個の第1振動ベクトル信号及びN個の第2振動ベクトル信号とする。濾波は、フーリエ変換分析を使用して達成され得る。当然、精度向上のために、より多くの振動ベクトル信号を濾波することもできる。例えば、濾波されるベクトルは、1×及び2×の動作速度ベクトルである。
【0034】
濾波が完了すると、N個の濾波後ベクトルの平均及び標準偏差が分析される。これは、N個の濾波後ベクトルの全セット又はその個々のセットを含む。そして、その基準が確立されれば、実行された測定回数Nに基づき動く基準ではあるが、N+1番目の測定が行われて濾波され、平均及び標準偏差と比較される。第1しきい値の、あるいは、平均及び標準偏差に基づく所定値から外れた値の超過で、プロセッサは、第1のアクションを実行する。当該アクションは、数あるアクションの中でも特に、可聴アラーム又は可視アラームを含む。同様に、第2しきい値の超過で、第2アクションが開始される。このアクションは、通常、標準偏差からの大きな逸脱を明示し、したがって、通常、機械の動作変更や停止などのより最終的なアクションを含む。
【0035】
これら全体を通して、N個の振動値は記憶ユニットに記憶され、ディスプレイデバイスで検討される。振動値は、上述したように、N個の数値のそれぞれと同時に取得される、機械の他の動作状況と比較されもする。
【0036】
特定の実施形態を通して本発明を説明したが、上記実施形態は本発明の原理及び応用例を例示するだけであることが、理解されるべきである。したがって、数多くの変更が例示した実施形態に対して行われ得るし、他の変形例が、特許請求の範囲で定義される本発明の要旨及び範囲を逸脱することなく発案され得る、と理解されるべきである。
【符号の説明】
【0037】
100 振動監視システム
102 振動測定デバイス
104 アナログ−デジタルコンバータ
108 プロセッサ
110 ディスプレイデバイス
112 記憶ユニット
M 機械
OC 動作状況センサ
図1