(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669942
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】復元圧力装置
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20150129BHJP
B66C 23/82 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
F16F9/32 R
B66C23/82 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-522102(P2013-522102)
(86)(22)【出願日】2011年10月26日
(65)【公表番号】特表2013-539525(P2013-539525A)
(43)【公表日】2013年10月24日
(86)【国際出願番号】DE2011001897
(87)【国際公開番号】WO2012055396
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2013年1月30日
(31)【優先権主張番号】102010049750.9
(32)【優先日】2010年10月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513024085
【氏名又は名称】モンタンヒドラウリク・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100157440
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】シュタメン・クリスティアン
【審査官】
関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−54346(JP,A)
【文献】
特開2002−96229(JP,A)
【文献】
特開2009−97681(JP,A)
【文献】
特開2002−286070(JP,A)
【文献】
特開2010−32046(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/007427(WO,A1)
【文献】
特開2009−103267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9
B66C 23/82
F15B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス圧シリンダの形式のクレーンの復元圧力装置であって、
以下の特徴、すなわち
a)ガス圧シリンダのシリンダ室(2)内に係合するピストンロッド(5)が、ピストン貯蔵室として形成されており、ガス圧シリンダの基底室(3)内のガスが、ピストンロッド(5)内のガスと交換状態にあること、
b)ピストンロッド(5)を取囲む、ガス圧シリンダの環状室(4)が、基底室(3)とガス交換状態にあること、
c)ガス圧シリンダのロッド案内部(12)内の封止機構(13)が、ピストンロッド(5)をシリンダ(23)に対して封止すること、
d)封止機構(13)が、ロッド案内部(12)内で取囲んでいる潤滑剤溝(11,21)を備えており、この潤滑剤溝を介してピストンロッド(5)を外側で潤滑しており、シリンダ室(2)と潤滑剤溝(11、21)の間の圧力交換器(14、17、22)の中間接続により潤滑剤に、シリンダ内で制御しているガス圧がかかっている復元圧力装置において、
圧力交換器(14、17)が分離ピストンとして構成されていること、
分離ピストンとして構成されている圧力交換器(14)が、ピストンロッド(5)により通過される環状体として構成されているか、あるいは分離ピストンとして構成されている圧力交換器(17)が、分離シリンダ(18)に配置されている円板状体としてあるいはピストンとして形成されており、潤滑剤が充填されているその一方の室が潤滑剤溝(21)に接続しており、その他方の室がガス圧シリンダのシリンダ室(2)に接続しているか、あるいは圧力交換器(22)が可撓な薄膜として構成されていることを特徴とする復元圧力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の特徴によるクレーンの復元圧力装置に関する。クレーンのジブの固定は、負荷を高めることに役立つ。固定はザイルあるいは腕を介して行われ、ジブを動かす際に、あるいはジブ角を変える際に、確実な作用を与えるために行われ、常に張力を保持される。その際に、重要な要素がいわゆる復元支持装置である。
【背景技術】
【0002】
従来技術によれば、ジブの急勾配の姿勢において定義される、固定における力の割合を確定するために、復元支持具には、圧縮力をジブから復元支持具へと作用させる液圧シリンダが取付けられている。この液圧シリンダは、復元圧力装置と呼ばれ、かつプランジャーシリンダーあるいは差動シリンダとして構成することができる。統一された場合、この液圧シリンダは、中央の液圧設備には接続されていない。油の交換が、シリンダを動かす際の極端な圧力貯蔵により可能にされる。
【0003】
復元圧力装置の重要な特徴は、圧縮力とピストンの往復行程の特性曲線である。これは貯蔵部の構造の選択により決定される。この極端な貯蔵部は空間を占有し、さらなる大きな重量を意味する。復元圧力装置の機構は、安全面で重要であるので、貯蔵部とシリンダの間の交差点と接続導管の増大した数は、結果として偶発リスクを伴う。
【0004】
これらの付加的な交差点を防止するための公知の特別な構造は、そのピストンロッド内にピストン型タンクがガス体積と一体化された液圧シリンダである。その際に、ガス体積はシリンダの往復運動の際に押しのけられる油の体積よりもいくらか大きい。このように強制的に液圧シリンダに対して貯蔵部無しで増大される全長が生じ、それにより重量も増す。しかし超過重量は、構造が適正であると、極端な貯蔵部による解決手段の場合に比べてわずかである。設置空間の限定された長さを伴う使用状況に関して、ピストンロッド内で一体化された貯蔵部に加えて部分的に、シリンダと並んで配置された別の極端なガス容器が必要である。
【0005】
特許文献1から、ガスストラットの様式のガス圧シリンダが知られている。ガスストラットの環状室と基底室は、互いにガス交換状態にある。ガス圧シリンダのロッド案内部における封止機構は、シリンダに対してピストンロッドを封止する。ガスストラットのこの構造形状において、特別な直径制限部がピストンロッドに設けられており、この直径制限部によりガスストラットを、ピストンロッドの繰出される位置でガスを充填することが可能である。これにより、シリンダに充填されたガスの圧力を減らすことができる。その理由は、シリンダ内部のロッドの繰出される位置に基づいた充填中に、すでに最大の可能な体積が設定されている、すなわち収納されるロッドにより減少されておらず、従ってあげ過ぎられるガス圧によりバランスをとる必要があることにある。
【0006】
特許文献2により、煙と熱の抽出フラップを開放するための空気圧システムは。ピストンロッドが貯蔵部として形成されている従来技術に属している。ピストンロッドは、シリンダ管内に突出している全面側の端部領域に、穿刺可能なフィルムによる閉鎖部を有する。穿刺可能なフィルムは、開放ピンにより開けられ、従ってピストンロッドの内部に貯蔵される圧縮ガスはピストンロッドの空洞部から漏出し、ピストンロッドと接続したピストンを介して上記ピストンロッドを越えてシリンダ管から出て行くことができる。長所はピストンロッドが同時に、ピストンロッドの繰出しのために必要とされる圧縮ガスのための貯蔵部あるということにある。外部から空気圧シリンダに接続する必要がある付加的圧縮ガス貯蔵部は必要でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許第2733528号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102004017405号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の根底をなす課題は、できる限り小型でかつ軽量である、クレーン用の復元圧力装置を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1の特徴を備えた復元圧力装置において解決される。
【0010】
本発明による復元圧力装置は、このような復元プレスを考慮した、全く新しい、設計上の構想に基づいている。大きな油量とこれに接続および/または一体化された圧力油貯蔵室とを備えた液圧シリンダの代わりに、予圧がかけられ、かつガスが充填されたシリンダを採用する。これは、運動の際に油量をもはや変える必要がないという長所を有する。従って、ピストン貯蔵室を備えた構造であると、油の重量とさらに分離ピストンの重量も考慮されない。
【0011】
全体的に、圧縮力とピストン往復行程の特性曲線が同じ場合に、取付けスペースはより短くなるか、あるいは取付け長さが同じ場合に、異なる使用の場合のために所望される平坦な圧縮力とピストン往復行程の特性曲線が得られる。圧縮力とピストン往復行程の特性曲線の平坦部は、ガス体積の増大から生じることがわかる。
【0012】
本発明による復元圧力装置は、以下の特徴、すなわち
a)ガス圧シリンダのシリンダ室内に係合するピストンロッドが、ピストン貯蔵室として形成されており、ガス圧シリンダの基底室内のガスが、ピストンロッド内のガスと交換状態にあること、
b)ピストンロッドを取囲む、ガス圧シリンダの環状室が、基底室とガス交換状態にあること、
c)ガス圧シリンダのロッド案内部内の封止機構が、ピストンロッドをシリンダに対して封止すること、
d)封止機構が、ロッド案内部内で取り囲んでいる潤滑剤溝を備えており、この潤滑剤溝にわたってピストンロッドを外側で潤滑しており、圧力交換器の中間接続の下で潤滑剤に、シリンダ内で制御しているガス圧がかかっていることを特徴とする。
【0013】
ピストンロッドとロッド側の案内および封止要素の潤滑は、摩耗と腐食防止加工にとって重要である。その理由は、このようなクレーンの一部は一箇所でかなり長期間使用されていることが排除できず、また伸びるピストンロッドが腐食に曝されていることにある。従って、具体的使用ケースにおいて、潤滑剤を完全にやめることは十分でない。その理由は、潤滑を行わねばならないことにある。本発明の場合、潤滑剤が圧力交換器の中間接続の下でシリンダ内で制御しているガス圧の作用を受けることを提案する。これは、潤滑剤、特に油が潤滑および腐食防止加工にとって必要とされ、従って、組合されたガスと油のシリンダに比べて実質的によりわずかな油量が必要とされるという長所を有する。従って、改善された腐食防止加工特性あるいは低温特性を備えた、価値の高い、もしくは高価な油を使用することは経済的になり得る。
【0014】
実証された封止システムおよび案内システム、ならびにピストンロッド被膜コートをさらに使用することもさらに可能である。
【0015】
油量を変えない構造方式により、約10%の範囲の重量削減が可能になる。ピストンロッドは内側にある分離ピストンをなくすことによりもはや内部での加工をする必要がないので、製造技術的な長所も生じる。その上、ピストンロッドを短くすることができる。
【0016】
復元圧力装置の重量が結果においてより小さくなったことにより、組立は簡素化され、組立コストは削減される。本発明による復元圧力装置は、曲線を備えた重量が削減した場合、同じ特性従来の支持形態と互換性をもって構成でき、それにより簡素化された交換が可能になる。新しい構造において、より短い組立寸法が、圧縮力とピストンの往復行程の特性曲線が同じ場合に実現できる。組立寸法がより短い場合に支承位置間隔がより小さくなったことにより、構造的な自由度が高くなり、それによりジブの領域でのさらなる重量削減が可能になる。同時に、ピストロッドの安定性が、支承位置間隔がより小さくなったことにより増す。
【0017】
本発明の有利な態様では、圧力交換器は、好ましくは窒素であるガスと分離ピストンの間にある。分離ピストンにより、ガス物質と潤滑剤の確実でかつ信頼できる分離が可能になる。
【0018】
分離ピストンは、第一の実施形態では、ピストロッドが通過する環状体であってもよい。この場合、分離ピストンはガス圧シリンダの環状室内にあり、分離ピストンはピストロッドに対して直接封止可能である。この構造は、分離ピストンが外側に設けられている潤滑剤貯蔵室への極端な接続を生じさせないという長所を備えている。その理由は、潤滑油の注湯に関与した部材が全て、ガス圧シリンダの内部に配置されていることにある。しかし、ピストンロッドとして通過した環状体から形成されているこのような分離ピストンには、その環状体固有の環状の構造に基づいて、外周および内周での封止が必要である。
【0019】
加えて、分離ピストンにストッパの位置をずらす必要があり、このストッパを介して、コンパクトに繰り出されるピストンロッドがピストンロッドに支持されることを考慮しなければならない。
【0020】
代替えとして、分離ピストンは環状体としてではなく、分離シリンダとして配置されている円盤状体として形成されており、分離シリンダの潤滑剤で充填された一方の室は、潤滑剤溝に接続されており、分離シリンダの他方の室はガス圧シリンダのシリンダ室に接続されている。復元圧力装置を形成するのは、ガス圧シリンダに対して独立したシリンダである。
【0021】
分離ピストンに対する代替えとして、ガス状潤滑剤と液状潤滑剤の間の圧力交換器として可撓な薄膜を使用することも考えられる。薄膜には、周囲の側の別の封止が全く必要ではないという長所がある。
【0022】
本発明を、以下に図で示した実施例に基づいて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】従来技術を形成する復元圧力装置を概略図である。
【
図2】本発明による復元圧力装置の第一の実施形態の概略図である。
【
図3】本発明による復元圧力装置の第二の実施形態を示す図である。
【
図4】本発明による復元圧力装置の第三の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0024】
図1は従来技術、すなわちかなり簡略化した描写の復元圧力装置1を示す。復元圧力装置1は油が充填されたシリンダ室2を有する。油は基底室3内にも、ピストンロッド5が通過する環状室4にもある。
【0025】
ピストンロッド5はガス貯蔵室として形成されている。分離ピストン6は、ピストンロッド5の内部で、ピストンロッド5内にあるガス、特にN2を、復元圧力装置1の残りの領域内の油から分離する。
【0026】
基底室3の接続部7を介して、シリンダ室2を油で充填することができる。ピストンロッド5には接続部8があり、この接続部を介して、ピストンロッド5の内部室は油で充填可能である。
【0027】
この機構は、使用される油と油とガスを分離するために必要な分離ピストンに基づき、比較的大きな重量を有する。この変形は、往復工程運動の際に排除される油量に比べて、ガス体積が多少大きくなければならないという短所を有する。これにより、必然的に全長が長くなり、更に重量もさらに大きくなる。
【0028】
図2は本発明の第一の実施形態を示す。
図1で使用した符号は、実質的に同じ部材のためにこの後も使用する。ここでもシリンダ室2内に係合するピストンロッド5は、ピストン貯蔵室として形成されていることが認められる。しかし、シリンダ室2の基底室3内にも、ピストンロッド5が通過する環状室4内にも、油ではなく、ガス、特に窒素が存在する。さらにピストンロッド5は、内部にある分離ピストンも有しておらず、基底室3内でガスとの直接のガス交換状態にある。ピストンロッド5のピストン10の貫通開口部9を介して、基底室3は環状室4とガス交換状態にある。
【0029】
特にピストンロッド5の潤滑油の注油は、極めてわずかな量の潤滑剤を介して潤滑油溝11がロッド案内部12の領域内にある油の様式で行われる。潤滑油溝11は、周囲の領域に向かって、封止機構13を介して気密箇所の形式で封止される。内側に向かって、すなわち環状室4の方向へ、環状室4のガスに対する封止あるいは境界付けが分離ピストン14を介して行われる。分離ピストン14は、環状体として形成されており、詳しくは示していない封止手段を介してではなく、むしろピストンロッド5に対しても、シリンダ23に対しても周辺側に封止されている。分離ピストン14は、復元圧力装置1a内で制御するガス圧を介して負荷をかけられ、それによりこの実施形態の場合、イメージ平面では左に向かって押付られる。このために、別の貫通開口部15が、ピストンロッド5が完全に本来の場所からずれた場合にピストン10が当接するストッパにある。接続部7と8を介して、潤滑剤溝11は潤滑剤であるいはシリンダ室2はガスで充填可能である。
【0030】
図3の実施形態は、
図2のものと、分離弁17がピストンロッド5を取囲む環状体として形成されておらず、円盤状体あるいはシリンダとして、かつ独立した分離シリンダ18内で封止された状態で支承されている点が異なる。導管19を介して、分離シリンダ18は、一方ではガスが充填された、復元圧力装置1bのシリンダ室2と接続している。他方において、分離シリンダ18は、別の導管20を介してロッド案内部12内の潤滑剤溝21と接続している。詳しくは示していないやり方で、潤滑剤溝21の側方には各々、封止機構13があり、この封止機構は、一方では周囲への潤滑剤の漏洩を、他方では環状室4内への潤滑剤の漏洩を阻止する。
【0031】
接続部7,8を介して、潤滑剤あるいはガスはこのために設けられた復元圧力装置1bの領域内へ収納可能である。
【0032】
図4の実施形態において示したように、独立した分離シリンダ4の位置で、圧力交換器22を、潤滑剤の圧力ガスを分離するための薄膜の形式で使用することも可能である。分離シリンダ18の周囲側に設けられた封止手段が、ガスを潤滑剤から分離するために保持しなければならないという長所を復元圧力装置1cの実施形態は有している。
【0033】
この配設の別の構成要素はすべて、
図3を基にしてすでに説明した。前記明細書に関連付けられる。
【符号の説明】
【0034】
1 復元圧力装置
1a 復元圧力装置
1b 復元圧力装置
1c 復元圧力装置
2 シリンダ室
3 基底室
4 環状室
5 ピストンロッド
6 分離ピストン
7 接続部
8 接続部
9 貫通開口部
10 ピストン
11 潤滑剤溝
12 ロッド案内部
13 封止機構
14 分離ピストン
15 貫通開口部
16 ストッパ
17 分離ピストン
18 分離シリンダ
19 導管
20 導管
21 潤滑剤溝
22 薄膜
23 シリンダ