(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粒子の体積を(A)とし、前記空隙の体積を(B)とし、前記結合樹脂の体積を(C)とした場合の比率(A):(B):(C)は、50〜75:10〜49:1〜40である
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の光学複合シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の導光シートにおいては、低屈折率層としての粘着剤の屈折率が然程低くなく、低屈折率層の界面で光が反射しにくいため、出射面と反対側の面まで伝播した光の一部が、出射面と反対側の面から出射し易い傾向がある。従って、このような導光シートにおいては、光が適切に導光シートを伝播せず、光の入射面と遠い場所での輝度が低くなるという問題がある。
【0007】
本発明者らは、特許文献1に記載の導光シートにおいて、粘着剤を構成する樹脂にフッ素を含有させれば、粘着剤の屈折率を低くできると考えた。しかし、樹脂にフッ素を含有させると、樹脂の粘着性が低くなることが知られているため、フッ素含有の樹脂を粘着剤として採用すると、曲げ等の外力に対する耐性が大幅に悪くなる。
【0008】
本発明は、低屈折率層の屈折率を適切に低くしつつも外力に対する耐性を向上し得る光学複合シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光学複合シートは、第1光学層及び第2光学層と、少なくとも前記第1光学層と前記第2光学層との間に積層され、前記第1光学層及び前記第2光学層よりも屈折率が低い低屈折率層とを備え、前記低屈折率層は、平均粒子径が5nm〜300nmとなる多数の粒子と、前記粒子の表面部位同士を結合する結合樹脂と、前記粒子同士の間に形成される空隙とを含むことを特徴とするものである。
【0010】
このような光学複合シートによれば、低屈折率層は、多数の粒子間に空隙を含むため、全体として、屈折率を下げることができる。この粒子は、粒子径が5nm以上である場合には粒子自体の強度を保つことができ、粒子径が300nm以下である場合には光を十分に透過し、かつ有機溶媒に分散させることができるため、低屈折率層に含まれる平均粒子径が5nm〜300nmとなっていることで、低屈折率層での強度及び光透過性を良好なものとすることができる。また、粒子の表面部位同士が結合樹脂により結合されているため、粒子同士の間に空隙を形成させながらも、その空隙を介して低屈折率層に対してクラック等を生じさせることが結合樹脂によって抑止される。したがって、結合樹脂が省略される場合に比べて、外力に対する耐性が大幅に向上される。このような光学複合シートの面方向に沿って第1光学層に光が入射すると、光は、主に第1光学層を伝播する。従って、第1光学層を伝播する光は、第1光学層と低屈折率層との境界において反射して、光が低屈折率層に入射することを低減することができる。従って、このような光学複合シートによれば、適切に光を伝播することができる。また、複合シートの面方向に垂直に光が入射する場合、この光を低屈折率層で適切に屈折することができる。
【0011】
また、前記粒子は、中空粒子であることが好ましい。このような中空粒子を含む低屈折率層では、粒子間に空隙が形成されることに加えて、粒子自体に空間が存在しているため、低屈折率層全体としての屈折率をより一段と下げることができる。
【0012】
また、前記粒子の粒度分布範囲は、前記平均粒子径の90〜110%の範囲であることが好ましい。このような範囲であれば、低屈折率層の強度をより一段と向上させることができる。
【0013】
また、前記第1光学層と前記低屈折率層との間、及び、前記第2光学層と前記低屈折率層との間の少なくとも一方に中間層を備え、前記中間層は、前記第1光学層及び前記第2光学層よりも軟質であることが好ましい。
【0014】
このような中間層を備える光学複合シートによれば、その中間層が、外部から加わる力を低屈折率層に伝導することを抑制する。従って、低屈折率層に対してクラック等を生じさせることを抑制することができ、外力に対する耐性がより一段と向上される。
【0015】
また、前記中間層は、前記結合樹脂よりも軟質であることが好ましい。
【0016】
このような中間層と、結合樹脂との関係を有していれば、中間層が外力を緩和するとともに、結合樹脂が外力に対抗して低屈折率層が潰れないよう支持することができるため、外力の耐性をより一段と向上することができる。なお、このような関係を有していれば、光学複合シートの製造過程においてプレス工程が用いられる場合に、その工程で加えられる圧力によって低屈折率層が潰れることを抑止することが可能となる。したがって、このような関係を有していることは、製造工程上も有利となる。
【0017】
さらに前記粒子の前記平均粒子径が30nm〜120nmであることが好ましい。このような粒子の平均粒子径によれば、より一段と粒子自体の強度も保つことができるとともに、光を十分透過し有機溶媒に分散することができる。
【0018】
また、前記低屈折率層の屈折率が1.17〜1.37であることが好ましい。また、前記第1光学層及び前記第2光学層と、前記低屈折率層の比屈折率が0.69〜0.92であることが好ましい。
【0019】
このような低屈折率層であれば、その界面において良好に光を反射させることが可能となる。
【0020】
また、前記粒子の体積を(A)とし、前記空隙の体積を(B)とし、前記結合樹脂の体積を(C)とした場合の比率(A):(B):(C)は、50〜75:10〜49:1〜40であることが好ましい。
【0021】
このような比率の低屈折率層であれば、低屈折率層が外力に対する耐性を確保でき、かつ低屈折率層の屈折率を低くすることができるため好ましい。
【0022】
また、本発明の光学複合シートの表面および/または裏面にプリズムまたはレンズが形成されていることが好ましい。
【0023】
このような光学複合シートによれば、光学複合シートの面方向に沿って、光が伝播する場合、第1光学層の表面が平面である場合に第1光学層の表面で全反射されるべき光の少なくとも一部は、第1光学層にプリズムまたはレンズが形成されることにより、第1光学層から出射することができる。そして、プリズムまたはレンズの設計をコントロールすることにより、第1光学層から出射する光の量をコントロールすることができる。従って、このような光学複合シートを光拡散シートとして用いることにより、出射する光の量が適切にコントロールされた光拡散シートとすることができる。また、光学複合シートの面方向に垂直に光が入射する場合、プリズムまたはレンズの設計をコントロールすることにより、入射する光の屈折方向をコントロールすることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、低屈折率層の屈折率を適切に低くすることができる光学複合シートが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る光学複合シートの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る光学複合シートの断面における構造の様子を示す図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の光学複合シート1は、第1光学層10及び第2光学層20と、第1光学層10と第2光学層20との間に積層される低屈折率層30と、を主な構成として備える。そして、本実施形態における光学複合シート1においては、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側の面11が光の出射面とされ、光学複合シート1の一側面7が光の入射面とされる。なお、光学複合シート1の一側面7とは、第1光学層10の一側面17と、低屈折率層30の一側面(図示しない)と、第2光学層10の一側面27とからなる面のことである。つまり、本実施形態の光学複合シート1は、入射面から入射する光を面方向に沿って伝播し、更に面方向に沿って伝播する光の少なくとも一部を出射面から出射する光拡散シートとしての機能を備える。
【0029】
第1光学層10は、光学複合シート1の面方向全体をカバーするように設けられており、第1光学層10の一側面17は、入射面の一部とされる。また、第1光学層10においては、光の出射面とされる一方の面11側に多数のプリズム15が形成されており、出射面が凹凸形状のプリズム面とされている。このプリズム15の形状は、特に限定されるものではないが、それぞれのプリズム15により、少なくとも一側面17の長手方向と平行に溝が形成されていることが好ましい。上述のように一側面17は入射面の一部であるため、入射面から入射する光は、一側面17の長手方向に垂直に伝播する傾向がある。従って、このように溝が形成されることにより、それぞれのプリズム15により形成される溝の方向と、光の伝播方向とが略垂直になり、入射面から入射する光を出射面から出射し易くすることができる。
【0030】
また、第1光学層10は、光透過性の材料から構成されており、好ましくは、全光線透過率が30%以上である材料が好ましく、更に、全光線透過率が50%以上であることが好ましく、更に、全光線透過率が70%以上であることが好ましい。このように全光線透過率が高いことにより、入射する光の損失をより抑制して出射することができる。このような材料としては、光透過性の材料であれば、特に限定されるわけではないが、シリカ等の無機物、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロースアセテート樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、およびポリウレタン樹脂等の樹脂を挙げることができる。なお、全光線透過率は、JIS K7105に基づき、A光源を用いて測定する。A光源とは、CIE(国際照明委員会)が規定する標準光源の規格の一つであって、タングステン電球が発する光であり、色温度が2856ケルビンとされる。
【0031】
また、第1光学層10の屈折率は、特に限定されないが、例えば、1.5〜1.7とされる。なお、屈折率はエリプソメーターを用いて波長589nmで測定できる。
【0032】
第2光学層20は、光学複合シート1における第1光学層10と反対側において、面方向全体をカバーするように設けられており、第2光学層10の一側面27は、入射面の一部とされる。さらに、第2光学層20の低屈折率層30側と反対側の面21は、光の反射面とされている。第2光学層20における反射面側には、多数のプリズム25が形成されており、反射面は凹凸形状のプリズム面とされている。このプリズム25の形状は、特に限定されるものではないが、それぞれのプリズム25により、少なくとも一側面17の長手方向と平行に溝が形成されていることが好ましい。そして、このプリズム25は、光学複合シート1の反対面側のプリズム15と面対称の形状でもよく、異なる形状でもよい。
【0033】
前記プリズム25は、光を分散・屈折・全反射させることができる形状で、V字状リニアプリズム、U字状リニアプリズム、三角錐プリズム、四角錐プリズムが例示できる。
【0034】
また、第2光学層20は、第1光学層10と同様にして、光透過性の材料から構成されており、好ましくは、全光線透過率が30%以上である材料が好ましく、更に、全光線透過率が50%以上であることが好ましく、更に、全光線透率が70%以上であることが好ましい。このように全光線透過率が高いことにより、入射する光の損失をより抑制して出射することができる。このような第2光学層20の材料としては、第1光学層10と同様の材料を挙げることができる。
【0035】
また、第2光学層20の屈折率は、特に限定されないが、例えば、第1光学層10と同様とされる。
【0036】
図2は、
図1の低屈折率層の第1光学層側を拡大して示す図である。
図3は、
図1の低屈折率層の第2光学層側を拡大して示す図である。
図2,
図3に示すように、低屈折率層30は、多数の粒子50及び結合樹脂35から構成されている。
【0037】
図4は、粒子50を拡大した図である。
図4に示すように、粒子50は、光透過性を有する中実又は中空のシェル51からなり、粒子50が中空粒子である場合には、シェル51により囲まれた空間52が形成される。
【0038】
シェル51の材料としては、第1光学層10と同様の樹脂や、シリカやガラス等の無機材料等を挙げることができる。このような粒子50は、たとえば日本触媒株式会社製 商品名エポスター、シーホスターおよびソリオスター、日産化学工業株式会社製 商品名オプトビーズ、根上工業株式会社製 商品名アートパール、大日精化株式会社製 商品名ダイミックビーズ、ガンツ化成株式会社製 商品名ガンツパール、積水化成品工業株式会社製 商品名テクポリマー、ならびに綜研化学株式会社製 商品名ケミスノーを挙げることができる。また、粒子50が中空粒子の場合、シェル51の材料はシリカが好ましい。そして、中空粒子の粒子50としては、内部が中空になるようにシリカ微粒子が集合した微粒子集合体をシリカ層で被覆した中空粒子が、より好ましい。このような中空粒子としては、日鉄鉱業株式会社製のシリナックス(登録商標)、および日揮触媒化成株式会社製のスルーリア(登録商標)を挙げることができる。なお、粒子50の形状は、低い屈折率を示す限り特に限定されないが、球状であっても不定形状であってもかまわない。
【0039】
また、粒子50の平均粒子径としては、光学複合シート1に入射する光、すなわち、第1光学層10を伝播する光の波長よりも小さいことが好ましい。粒子50の平均粒子径が、第1光学層10を伝播する光の波長よりも小さいことにより、低屈折率層30における光の乱反射を抑制することができ、出射面からの意図しない光の出射を抑制することができる。さらに、粒子50の平均粒子径は、光学複合シート1に入射する光の1/2波長よりも小さいことがより好ましく、1/4よりも小さいことが更に好ましい。例えば、光学複合シート1に400nm〜800nmの光が入射する場合、粒子50の平均粒子径としては、より好ましくは30〜120nmであればよい。なお、粒子の粒度分布範囲が平均粒子径の90〜110%の範囲である場合には粒子の粒度がほぼ均一になるため、当該範囲であれば屈折率層30の強度を向上させる観点では好ましい。
【0040】
この粒子50の平均粒子径および粒度分布範囲を測定するには、動的光散乱法で測定すればよい。
【0041】
また、粒子50が中空粒子の場合、低屈折率層30の屈折率を低くする観点から、粒子50の平均空間52率は、より高いことが好ましいが、粒子50の強度を確保する観点から10%〜60%であることが好ましい。
【0042】
一方、
図2,
図3に示すように、結合樹脂35は、粒子50の表面部位同士を結合する結合樹脂35Aと、第1光学層10と粒子50の表面部位同士を結合する結合樹脂35Bと、第2光学層20と粒子50の表面部位同士を結合する結合樹脂35Cとから成る。
【0043】
これら結合樹脂35A〜35Cによって粒子50同士の間に空隙36が形成されることになる。この空隙36の体積を大きくする観点では、粒子50の表面部位同士、第1光学層10と粒子50の表面部位同士、第2光学層20と粒子50の表面部位同士がそれぞれ互いに近接している位置関係にあることが好ましい。また、互いの粒子50それぞれが非接触となる状態、第1光学層10と複数の粒子50それぞれとが非接触となる状態、第2光学層20と複数の粒子50それぞれとが非接触となる状態にあることが好ましい。
【0044】
このような結合樹脂35A〜35Cの材料は、光透過性を有するものとされ、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエーテル樹脂、スチレン樹脂、シリコン樹脂およびシランカップリング剤等が挙げられ、特に、アクリル樹脂、ビニルエーテル樹脂、およびシランカップリング剤が、屈折率が低いため好ましい。また、屈折率を低くする観点では、結合樹脂35A〜35Cの材料にフッ素を含んでいることが好ましい。たとえば、フッ素化アクリル樹脂、フッ素化ビニルエーテル樹脂が例示できる。
【0045】
結合樹脂35に用いられるシランカップリング剤は、特に限定されない。例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤、メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤、アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤等があげられる。このようなシランカップリング剤は、信越シリコーン株式会社製 製品名KBEシリーズ、KBMシリーズが例示できる。
【0046】
さらに、粒子50の体積を(A)とし、粒子50同士の間に形成される空隙36の体積を(B)とし、結合樹脂35の体積を(C)とした場合の比率(A):(B):(C)が、50〜75:10〜49:1〜40であることが、低屈折率層が外力に対する耐性を確保でき、かつ低屈折率層30の屈折率を低くすることができる観点から好ましい。
【0047】
粒子50同士の間に占める結合樹脂35A〜35Cの合計体積は、その粒子50同士の間の空隙36の体積を大きくする観点では、より小さいことが好ましい。低屈折率層30が外力に対する耐性を確保し、かつ低屈折率層30の屈折率を低くする観点では、比率(A):(B):(C)が55〜75:15〜44:1〜30であれば好ましく、60〜75:20〜39:1〜20であれば特に好ましい。
【0048】
このような多数の粒子50及び結合樹脂35から構成される低屈折率層30は、第1光学層10及び第2光学層20よりも低い屈折率とされる。例えば、低屈折率層30の屈折率が、1.17〜1.37とされ、第1光学層10及び第2光学層20との比屈折率が、0.69〜0.92とされる。第1光学層10及び第2光学層20と、低屈折率層30との比屈折率が、このような比屈折率であることにより、適切に第1光学層10と低屈折率層30との境界において光を反射することができる。たとえば、第1光学層10及び第2光学層20が屈折率1.58のポリカーボネートで、低屈折率層30の屈折率が1.17〜1.37である場合、第1光学層10及び第2光学層20と低屈折率層30との比屈折率は0.741〜0.867となる。
【0049】
このような第1光学層10、第2光学層20、低屈折率層30からなる光学複合シート1は、上述のように光拡散シートとしての機能を有する。具体的には、入射面と対向するように、LED等から成る図示しない光源が配置される。光源から出射する光は、入射面から入射する。そのうち、第1光学層10に入射する光は、主に第1光学層10を伝播する。具体的には、第1光学層10と低屈折率層30との境界と、出射面とを反射しながら、第1光学層10を伝播し、出射面に対して、NAの大きな光が、出射面から出射する。
【0050】
また、第1光学層10と低屈折率層30との境界に対して、NAの大きな光は、第1光学層10から低屈折率層30に入射して、更に、低屈折率層30から第2光学層20に入射する。第2光学層20に入射した光の少なくとも一部は、反射面において反射する。つまり、第2光学層20の反射面に対してNAの小さな光は、反射面で反射し、再び、低屈折率層30から第1光学層10に入射する。一方、反射面に対して、NAの大きな光は、反射面を透過して、光学複合シート1から出射する。第1光学層10に入射した光は、再び、第1光学層10を伝播する。
【0051】
上記のような光学複合シート1は、次のように製造することができる。
【0052】
まず、粒子50と、結合樹脂35の調製溶液とを得る。具体的にこの調整溶液は、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸、シランカップリング剤及びUV重合開始剤とされる。なお、調製溶液は、粒子50を100重量%とした場合、アクリル酸2−ヒドロキシエチルを1.5重量%、アクリル酸を0.5重量%、シランカップリング剤を0.5重量%、UV重合開始剤を0.025重量%などとして調製される。また、第1光学層10、及び、第2光学層20をそれぞれ準備する。
【0053】
次に、例えばスピンコーターを用いて、調製溶液を例えば厚さ1μmで第1光学層10上に塗工する。そして、第2光学層20を重ねた後、例えば、250mJ/cm2×10秒の条件で紫外線を照射する。この照射によって、結合樹脂35(35A〜35C)が形成されて、低屈折率層30が得られるとともに、その低屈折率層30と、第1光学層10及び第2光学層20との密着強度が高められる。こうして、
図1に示す光学複合シート1を得る。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の光学複合シート1によれば、低屈折率層30は、粒子50の表面部位同士が結合樹脂35Aにより結合されているため、その結合樹脂35Aによって粒子50同士の間にも空隙36が形成され、この空隙36によって低屈折率層30全体としての屈折率を下げることができる。また、粒子50が中空粒子の場合、低屈折率層30は、多数の粒子50を含むため、粒子50内の空間により、全体として、屈折率を下げることができる。また、これに加えて、粒子50同士の間に空隙36を形成しながらも、その空隙36を介して低屈折率層に対してクラック等を生じさせることが結合樹脂によって抑止されるため、その結合樹脂が省略される場合に比べて、外力に対する耐性が大幅に向上される。
【0055】
また、光学複合シート1を上述の様な一側面7から光が入射して、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側の面11から光が出射する光拡散シートとして用いる場合、第1光学層10に光が入射すると、光は、主に第1光学層10を伝播する。そして、低屈折率層30は、多数の粒子50を含むため、粒子50間の空隙36により、全体として、屈折率を下げることができる。従って、第1光学層10を伝播する光は、第1光学層10と低屈折率層30との境界において反射して、光が低屈折率層30に入射することを低減することができる。従って、このような光学複合シート1によれば、適切に光を伝播することができる。
【0056】
また、上記実施形態の光学複合シート1を光拡散シートとして用いる場合、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側にプリズム15が形成されているため、第1光学層10の表面が平面である場合に第1光学層10の表面で全反射されるべき光の少なくとも一部は、第1光学層10から出射することができる。そして、プリズム15の設計をコントロールすることにより、第1光学層10から出射する光の量をコントロールすることができる。従って、このような光学複合シート1を光拡散シートとして用いることにより、出射する光の量が適切にコントロールされた光拡散シートとすることができる。
【0057】
なお、上記実施形態の光学複合シート1を光拡散シートとして用いる場合、第1光学層10と低屈折率層30を如何に最適に設計しても、低屈折率層30に対してNAの大きな光は、第1光学層10から低屈折率層30を介して第2光学層20に伝播する。しかし、上記実施形態においては、第2光学層20の低屈折率層30側と反対側にプリズム25が形成されているため、第2光学層20に形成されるプリズム25をコントロールすることにより、第2光学層20に伝播する光が第2光学層20の反射面で反射する量や第2光学層20の反射面から出射する量を適切にコントロールすることができる。
【0058】
更に上記実施形態においては、光複合シート1を光拡散シートとして用いる場合について説明したが、光複合シート1は、光拡散シートに限定されるわけではなく、その用途は特に限定されない。例えば、光学複合シート1は、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側の面11から光が入射して、第2光学層20の低屈折率層30側と反対側の面21から光が出射する光学シートとされても良い。この場合、プリズム15、25により、入射光の光学複合シート1内における方向をコントロールでき、更にプリズム25により、出射光の方向をコントロールすることができる。あるいは、光学複合シート1は、プリズム15及びプリズム25の設計をコントロールすることにより、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側の面11から光が入射して、第2光学層20の低屈折率層30側と反対側の面21で光を全反射する全反射シートとされても良い。また、プリズム15、25の設計を最適化することにより、一側面7から入射した光を、一側面7と反対側の側面まで伝播する導光シートとすることもできる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図5を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る光学複合シートの断面における構造の様子を示す図である。
【0060】
図5に示すように、本実施形態の光学複合シート2は、第2光学層20と低屈折率層30との間に中間層40を備える点において、第1実施形態の光学複合シート1と異なる。なお、本実施形態における光学複合シート2の一側面7とは、第1光学層10の一側面17と、低屈折率層30の一側面(図示しない)と、中間層40の一側面(図示しない)と、第2光学層10の一側面27とで形成される面のことである。
【0061】
中間層40は、光透過性の材料から成り、第2光学層20と低屈折率層30との間全体に設けられており軟質な材料から成る。具体的に軟質な材料である中間層40の貯蔵弾性率は、5×10^6Pa〜5×10^7Paの範囲が好ましく、1×10^7Pa〜3×10^7Paがさらに好ましく、1.6×10^7Pa〜1.8×10^7Paがより好ましい。例えば、中間層40は第2光学層20よりも軟質である(貯蔵弾性率が低い)ことが好ましい。
【0062】
中間層40の貯蔵弾性率が5×10^6Pa以上であるため、屈折率を小さくすることができるため好ましく、5×10^7Pa以下であるため、第2光学層20と中間層40との密着強度を得られやすいため好ましい。また、外力の耐性を向上させる観点から、中間層40が結合樹脂35より軟質である(貯蔵弾性率が低い)ことが好ましい。また、中間層40と、結合樹脂35との関係として、外力の耐性を向上させる観点から、中間層40が結合樹脂35に比べて軟質であるほうが好ましい。さらに、中間層40が粘着性を有していたほうが望ましい。これは、粘性によって外力を緩和するとともに、第2光学層20又は低屈折率層30との層間の剥離(デラミネーション)を抑止することができるからである。
【0063】
このような中間層40の材料としては、軟質な材料である限りにおいて、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ビニルエーテル樹脂等を挙げることができる。例えば、第2光学層20が、ポリカーボネートである場合に、中間層としては、アクリル樹脂であれば良い。
【0064】
また、中間層40の屈折率としては、低屈折率層30の屈折率以上とされ、更に、中間層40の屈折率が、第2光学層20の屈折率と低屈折率層30の屈折率との間とされることが好ましい。中間層40の屈折率が、第2光学層20の屈折率と低屈折率層30の屈折率との間にされることで、第2光学層20から低屈折率層30にかけて、段階的に屈折率が高くなる。従って、光が第2光学層20から低屈折率層30に伝播するときに、光が第2光学層20から中間層40に伝播し易く、更に、中間層40から低屈折率層30に伝播し易い。このため、第1光学層10から低屈折率層30を介して、第2光学層20に伝播した光を第1光学層10に戻し易くすることができる。
【0065】
このような光学複合シート2を製造するには、第1実施形態において、光学複合シート1を製造する際、第1光学層10と第2光学層20とを低屈折率層30を介して積層する前において、第2光学層20となる樹脂シート上に、中間層40となる樹脂を塗布する。そして、中間層40が低屈折率層30側となるようにして、第1光学層10と第2光学層20とを積層し、第1実施形態と同様にして、それぞれの樹脂シートを一体化すれば良い。
【0066】
本実施形態による光学複合シート2によれば、低屈折率層30の屈折率を適切に低くすることができ、更に、軟質である中間層40を有することにより、外部から応力が加わるときに、この中間層40が、応力が低屈折率層30に伝導することを抑制する。従って、低屈折率層30にクラック等が入ることを抑制することができる。
【0067】
なお、上記第2実施形態においては、中間層40は、第2光学層20と低屈折率層30との間に設けられたが、本発明はこれに限らず、第1光学層10と低屈折率層30との間のみに設けられても良い。この場合においては、中間層は、第1光学層10よりも軟質であれば良い。さらに、低屈折率層30を挟むように第1光学層10及び第2光学層20と低屈折率層30との間に設けられても良い。この場合においては、中間層は、例えば、第1光学層10、第2光学層20よりも軟質であることが好ましい。また、外力の耐性を向上させる観点から、中間層40が結合樹脂35より軟質であることが好ましい。
【0068】
本実施形態による光学複合シート2は、第1実施形態と同様に、一側面7から光が入射し、第1光学層10の低屈折率層と反対側の面11から光が出射する光拡散シートとすることができる。また、プリズム15、25の設計を最適化することにより、一側面7から入射した光を、一側面7と反対側の側面まで伝播する導光シートとすることもできる。さらに、第1実施形態と同様に、光学複合シート1は、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側の面11から光が入射して、第2光学層20の低屈折率層30側と反対側の面21から光が出射する光学シートとされても良い。この場合、プリズム15、25により、入射光の光学複合シート1内における方向をコントロールでき、更にプリズム25により、出射光の方向をコントロールすることができる。あるいは、光学複合シート1は、プリズム15及びプリズム25の設計をコントロールすることにより、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側の面11から光が入射して、第2光学層20の低屈折率層30側と反対側の面21で光を全反射する全反射シートとされても良い。
【0069】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について
図6を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図6は、本発明の第3実施形態に係る光学複合シートの断面における構造の様子を示す図である。
【0070】
図6に示すように、光学複合シート3は、第1光学層10の低屈折率層30と反対側の面11が平面状に形成され、更に、第2光学層20の低屈折率層30と反対側の面21が平面状に形成されている点において、第1実施形態の光学複合シート1と異なる。
【0071】
このような光学複合シート3によれば、第1実施形態の光学複合シート1と同様に、低屈折率層30の屈折率を適切に低くすることができる。更に、光学複合シート3においては、一側面7から光を入射することにより、一側面7から入射した光を、一側面7と反対側の側面まで伝播する導光シートとすることができる。この場合、低屈折率層30の屈折率を適切に低くできるため、第1光学層10と低屈折率層30との境界において、光を適切に反射することができ、適切に光を伝播することができる。また、光学複合シート3は、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側の面11から光が入射して、第2光学層20の低屈折率層30側と反対側の面21から光が出射する光学シートとされても良い。
【0072】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について
図7を参照して詳細に説明する。なお、第2実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図7は、本発明の第4実施形態に係る光学複合シートの断面における構造の様子を示す図である。
【0073】
図7に示すように、光学複合シート4は、第1光学層10の低屈折率層30と反対側の面11が平面状に形成され、更に、第2光学層20の低屈折率層30と反対側の面21が平面状に形成されている点において、第2実施形態の光学複合シート1と異なる。
【0074】
このような光学複合シート3によれば、第2実施形態の光学複合シート2と同様に、低屈折率層30の屈折率を適切に低くすることができ、さらに、第2実施形態と同様にして、中間層40により、応力が低屈折率層30に係ることを抑制することができる。また、光学複合シート4においては、一側面7から光を入射することにより、一側面7から入射した光を、一側面7と反対側の側面まで伝播する導光シートとすることができる。この場合、低屈折率層30の屈折率を適切に低くできるため、第1光学層10と低屈折率層30との境界において、光を適切に反射することができ、適切に光を伝播することができる。また、光学複合シート3は、第1光学層10の低屈折率層30側と反対側の面11から光が入射して、第2光学層20の低屈折率層30側と反対側の面21から光が出射する光学シートとされても良い。
【0075】
以上、本発明について、第1〜第4実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、上記実施形態における光学複合シート1〜4は、上述の製造方法以外で製造されても良い。
【0076】
また、第1、第2実施形態においては、光学複合シート1、2として、第1光学層10及び第2光学層20の面に、多数のプリズム15、25が形成されている例を用いて説明した。しかし、本発明の光学複合シートは、これに限らず、マイクロレンズやレンチキュラーレンズ等のレンズが多数形成される光学複合シートであっても良い。