【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2の実施形態は、防振補正のために移動させるレンズ群の有効径が25mm以上と大きく、防振機構の大型化を招き、ズームレンズの小型化が困難であるという問題がある。また、ズームレンズ群が5群以上であるため、ズーム機構が複雑化するという問題がある。
【0007】
特許文献3における実施形態は、正の第3レンズ群を物体側から正の第31レンズ群、負の第32レンズ群、第33レンズ群に分けて、第32レンズ群のみを光軸と直交方向に移動させることにより防振補正を行っているが、第3レンズ群に付随する絞りユニットと防振ユニットの位置が近いため、絞りを駆動させる部品と防振機構の部品が干渉し合い、鏡筒構造が複雑化するという問題がある。
【0008】
(発明の目的)
本発明は、従来の防振機能を有し4倍程度のズーム比を有するズームレンズの上述した問題に鑑みてなされたものであって、防振補正のために移動させるレンズ群の有効径が小さく、防振機構の小型化が可能であり、さらに、ズームレンズ群が4群であり、鏡筒機構を複雑化することを要しない防振ズームレンズ光学系を提供することを目的とする。
【0009】
本発明はまた、絞りユニットと防振ユニットが適切に距離を置いて配置され、絞りユニットの駆動系と、防振機構の駆動系が干渉することなく配置可能な防振ズームレンズ光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の防振ズームレンズ光学系は、
物体側より順に、正の屈折力を持つ第1レンズ群、負の屈折力を持つ第2レンズ群、正の屈折力を持つ第3レンズ群、正の屈折力を持つ第4レンズ群で構成し、
前記第4レンズ群は、物体側から順に、第41レンズ群と、負の屈折力を持つ第42レンズ群と、第43レンズ群からなり、前記第42レンズ群を光軸と直交する方向へ移動させることで像面上の像ぶれ補正を行い、
前記第1レンズ群において、少なくとも1枚の正レンズのアッベ数は80以上であり、
前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間隔が、広角端から望遠端への変倍により広がり、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔が狭まり、前記第3レンズ群と前記第4レンズ群が異なる移動量で物体側へ移動し、
以下の条件を満足することを特徴とする防振ズームレンズ光学系
(1)−0.5 < f42 / f43 < 0.2
但し、f42は前記第42レンズ群の焦点距離
f43は前記第43レンズ群の焦点距離
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防振ズームレンズ光学系は、優れた収差補正が可能なことに加えて、防振補正のために移動させるレンズ群の有効径が小さく、防振機構の小型化が可能であり、さらに、ズームレンズ群が4群であり、鏡筒機構を複雑化することを要しないという効果を有する。
【0012】
本発明の防振ズームレンズ光学系は、また、絞りユニットと防振ユニットが適切に距離を置いて配置され、絞りユニットの駆動系と、防振機構の駆動系が干渉することなく配置可能であるという効果を有する。
【0013】
本発明の防振ズームレンズ光学系は、また、前記第1レンズ群において、少なくとも1枚の正レンズのアッベ数は80以上である。
【0014】
この構成により、上述したように優れた収差補正が可能なこと、防振補正のために移動させるレンズ群の有効径が小さく、防振機構の小型化が可能なこと、ズームレンズ群が4群であり、機構を複雑化することを要しないこと、絞りユニットと防振ユニットが適切に距離を置いて配置され、絞りユニットの駆動系と、防振機構の駆動系が干渉することなく配置可能であること等の効果の実効を高めることができる。
この構成によればさらに、望遠側の色収差を小さくするという効果を得ることができる。すなわち、少なくとも1枚の正レンズのアッベ数が80未満であると、望遠側軸上色収差、倍率色収差が大きくなり、色ずれとなって表れるという問題が発生する。
【0015】
本発明の防振ズームレンズ光学系は、また、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間隔が、広角端から望遠端への変倍により広がり、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔が狭まり、前記第3レンズ群と前記第4レンズ群が異なる移動量で物体側へ移動する。
【0016】
この構成によれば、上述したように優れた収差補正が可能なこと、防振補正のために移動させるレンズ群の有効径が小さく、防振機構の小型化が可能なこと、ズームレンズ群が4群であり、機構を複雑化することを要しないこと、絞りユニットと防振ユニットが適切に距離を置いて配置され、絞りユニットの駆動系と、防振機構の駆動系が干渉することなく配置可能であること等の効果の実効を高めることができる。
【0017】
本発明の条件式(1)は、第42レンズ群の焦点距離の適切な範囲を規定する。条件式(1)の上限値を超えると第42レンズ群の負の屈折力が大きくなり、ぶれ補正の際の第42レンズ群の移動量に対する像面上での像移動量の比が大きくなるため、ぶれ補正の際の第42レンズ群の移動誤差の許容量が小さくなり、第42レンズの移動制御が困難となる。また、ぶれ補正の際のコマ収差補正が困難となる。条件式(1)の下限値を超えると第42レンズ群の負の屈折力が小さくなり、ぶれ補正の際の第42レンズの移動量に対する像面上での像移動量の比が小さくなるため、ぶれ補正に要する第42レンズの移動量が大きくなるため、ぶれ補正機構が大型化する。また、ぶれ補正の際のコマ収差補正が困難となる。
【0018】
[発明の実施態様]
本発明の実施態様は、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(2)1.1< d41 / d42 < 4.5
(3)0 < f4
但し、d41は前記第41レンズ群と前記第42レンズ群との空気間隔
d42は前記第42レンズ群と前記第43レンズ群との空気間隔
f4は第4レンズ群の焦点距離
【0019】
この実施態様によれば、上述したように優れた収差補正が可能なこと、防振補正のために移動させるレンズ群の有効径が小さく、防振機構の小型化が可能なこと、ズームレンズ群が4群であり、機構を複雑化することを要しないこと、絞りユニットと防振ユニットが適切に距離を置いて配置され、絞りユニットの駆動系と、防振機構の駆動系が干渉することなく配置可能であること等の効果の実効を高めることができる。
【0020】
条件式(2)は、第4レンズ群内における第42レンズ群の適切な配置を規定する。条件式(2)の上限値を超えると、ズームレンズ全長が大型化するとともに、絞りと第42レンズ群が大きく離れるため、球面収差とコマ収差の補正が困難となる。条件式(2)に下限値を超えると、第42レンズ群の有効径が大きくなるため、防振機構の大型化を招くと共に、球面収差と軸上色収差の補正が困難となる。
【0021】
条件式(3)は、防振補正を行うレンズ群を含む第4レンズ群の焦点距離が正であることを規定する。第4レンズ群を正の屈折力とし、第41レンズ群を正の屈折力、第42レンズ群を負の屈折力とすることで、第42レンズ群の有効径を第1レンズ群から第41レンズ群の有効径に比べて小型にすることができるため、防振機構の小型化を実現でき、ズームレンズ全体の小型化に有利となる。
さらに、第4レンズ群内に防振補正の第42レンズ群を構成したため、第3レンズ群の前方にある絞りからの距離が長くなるため、絞りを構成するユニット、例えば、絞り駆動用モーターの配置と、防振ユニットの配置に自由度が生まれる。また、このような構成とすることで、第42レンズ群を光軸と直交方向に移動させたときのコマ収差などの結像性能の劣化を小さくすることができる。
【0022】
本発明の他の実施態様は、前記第41レンズ群は正の屈折力を持つことを特徴とする。
【0023】
この実施態様によれば、上述したように優れた収差補正が可能なこと、防振補正のために移動させるレンズ群の有効径が小さく、防振機構の小型化が可能なこと、ズームレンズ群が4群であり、機構を複雑化することを要しないこと、絞りユニットと防振ユニットが適切に距離を置いて配置され、絞りユニットの駆動系と、防振機構の駆動系が干渉することなく配置可能であること等の効果の実効を高めることができる。
この実施態様によればさらに、コマ収差、特に防振時のコマ収差変動を小さく抑えることができるという効果を得ることができる。
【0024】
本発明の他の実施態様は、前記第4レンズ群のうち、第41レンズ群において、負レンズと接合させた正レンズを含む2枚以上の正レンズによる構成とすることを特徴とする。
【0025】
この実施態様によれば、上述したように優れた収差補正が可能なこと、防振補正のために移動させるレンズ群の有効径が小さく、防振機構の小型化が可能なこと、ズームレンズ群が4群であり、機構を複雑化することを要しないこと、絞りユニットと防振ユニットが適切に距離を置いて配置され、絞りユニットの駆動系と、防振機構の駆動系が干渉することなく配置可能であること等の効果の実効を高めることができる。
この実施態様によればさらに、倍率色収差を小さくできるという効果を得ることができる。
【0026】
本発明の他の実施態様は、以下の条件を満足することを特徴とする。
(4)−1.0 < f4 / f43 < 4.0
但し、f4は前記第4レンズ群の焦点距離
f42は前記第42レンズ群の焦点距離
f43は前記第43レンズ群の焦点距離
【0027】
この実施態様によれば、上述したように優れた収差補正が可能なこと、防振補正のために移動させるレンズ群の有効径が小さく、防振機構の小型化が可能なこと、ズームレンズ群が4群であり、機構を複雑化することを要しないこと、絞りユニットと防振ユニットが適切に距離を置いて配置され、絞りユニットの駆動系と、防振機構の駆動系が干渉することなく配置可能であること等の効果の実効を高めることができる。
【0028】
この実施態様によれば、上述したように優れた収差補正が可能なこと、防振補正のために移動させるレンズ群の有効径が小さく、防振機構の小型化が可能なこと、ズームレンズ群が4群であり、機構を複雑化することを要しないこと、絞りユニットと防振ユニットが適切に距離を置いて配置され、絞りユニットの駆動系と、防振機構の駆動系が干渉することなく配置可能であること等の効果の実効を高めることができる。
【0029】
条件式(4)は、第43レンズ群の焦点距離の適切な範囲を規定する。条件式(4)の上限値を超えると第43レンズ群の正の屈折力が大きくなり、ズームレンズ全長が大型化する、また、歪曲収差の補正も困難となる。条件式(4)の下限値を超えると第43レンズ群の屈折力が小さくなり、球面収差が負に過大になり収差の補正が困難となる。