(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱装置における前記配列(22、24)の個々の前記開口部(28)が、少なくとも大部分の空気充てん開口部(28.2)の中心軸(40)が、前記中心軸(14)に一致する前記燃焼室(12)の長手方向の中心(14、42)において、対応する燃料充てん開口部(28.1)の中心軸(38)と交差するように配置可能であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
前記加熱装置における前記媒体充てん開口部配列(22、24)の各々が、同数の開口部(28)を有していることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のシステム。
前記加熱装置における前記配列(22、24)の前記開口部(28)が、行および列において間隔を空けて位置していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシステム。
前記加熱装置において、すべての開口部(28)の中心軸(38、40)が、前記燃焼室(12)の前記長手方向の中心(14、42)に対して同じ角度で当該加熱装置の排出方向に傾けられていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のシステム。
前記加熱装置における前記調節機構(30、44、46、48、58、68、70、76)が、前記少なくとも1つの調節可能な媒体充てん開口部配列(22、24)のためのカバー手段(30、44、58、68、70)を備えており、
前記カバー手段に、前記媒体充てん開口部配列(22、24)に一致するカバー手段開口部配列(32、72、74)が形成され、
前記カバー手段開口部配列が、互いにぴったりと位置する前記カバー手段と前記燃焼室(12)の前記媒体充てん配列を呈する壁(26、64、66)との相対の平行移動に応じて、少なくとも開口部が大きくなる位置合わせの状態と開口部が絞られる位置合わせの状態との間で調節可能に協働することで、当該加熱装置の使用時に前記燃焼室への媒体の流れが調節されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
前記加熱装置における前記燃焼室(12)が、前記媒体充てん開口部配列(22、24)を互いに直面させるように構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
前記加熱装置における前記燃焼室(12)が、中心軸(14)に沿って中央を延びる媒体充てんチャンバ(α)の周囲に環状に形成されることで、燃焼室(12)の長手方向の中心(42)が燃焼室(12)内の中央を環状に延び、結果として前記媒体充てん開口部配列(22、24)が燃焼室の長手方向の内側および外側側壁を定める向かい合う周状の壁(26.1、26.2)に沿って延び、前記媒体充てんチャンバ(α)の内側端が適切に塞がれていることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
前記加熱装置において、少なくとも1つの媒体充てん配列(22、24)の開口部サイズを、前記媒体充てんチャンバ(α)の内側または長手方向に延びて燃焼室を囲んでいる外側の壁(26.2)の外側において、燃焼室を定めている壁(26)の燃焼室から遠い方の表面に沿ってスライド変位可能に取り付けられた円筒形のカバー本体(30、44、58)の形態のカバー手段(30)に応じて、調節することができることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
前記加熱装置において、カバー本体(44、58)が、当該加熱装置の中心軸(14)の方向に制御可能に変位させることができるように取り付けられていることを特徴とする請求項10に記載のシステム。
前記加熱装置において、両方の媒体充てん開口部配列(22、24)を、開口部が円筒形のカバー本体(44、58)によって調節することができることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
前記加熱装置における前記燃料供給部(20)および前記空気供給部(18)が、一方が燃焼室の長手方向の壁(26.1)の内側を延びており、他方が燃焼室の外側の壁(26.2)に沿って延びている適切に補充することができる充てんチャンバの形態であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載のシステム。
前記加熱装置における前記燃料充てんチャンバ(20)が、前記燃焼室(12)の内側に位置し、前記空気充てんチャンバ(18)が、前記燃焼室(12)の外側に沿って位置していることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
前記加熱装置における前記燃料供給部(20)および前記空気供給部(18)が、前記燃焼室の側壁(64、66)の傍らを広がる適切に補充することができる充てんチャンバの形態であることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
前記加熱装置における前記燃焼室(12)が、少なくとも一部に媒体充てん開口部(28)が形成された平坦な側壁で形成されていることを特徴とする請求項15または16に記載のシステム。
前記加熱装置における前記カバー手段(30、68、70)が、前記燃焼室の中心軸(14)の方向にストッパ間を変位させられるように取り付けられた開口部付きの少なくとも1枚のカバー板(68、70)の形態であることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
前記加熱装置において、前記燃焼室の向かい合う2つの側壁(68、70)に媒体充てん開口部(28)が形成され、すなわち一方に空気充てん開口部が形成され、他方に燃料充てん開口部が形成されていることを特徴とする請求項18に記載のシステム。
前記加熱装置において、前記空気充てん開口部配列(24)および前記燃料充てん開口部配列(22)の両方を、開口部が適当に設けられたカバー板(68、70)によって調節することができることを特徴とする請求項18〜20のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来の溶融金属めっき炉では、めっき浴槽内の溶融金属が局所的に高温になり金属を溶融させる釜(めっき浴槽)への負担が大きく、釜外側壁の酸化腐食が発生すること、また釜内側壁では溶融金属との接触部で合金化が起こりドロスが発生すること、また、溶融金属の温度にばらつきが生じてしまうので、均一なめっきが施しにくいこと、ガスの消費量が多いこと等の問題があった。同様に、従来の溶融金属めっき炉に基づき、めっきシステムを構成した際には、上記問題に起因し、作業効率の悪化やめっきの品質にばらつきが生じるといった問題があった。本発明では、これらの問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、溶融金属めっき炉では適用されたことのない新技術の加熱方式を溶融金属めっき炉に採用することにより、従来のように噴出ガス自体を高温とすることなく金属を溶融させることができ、しかも、溶融金属の温度分布を均一にすることができ、さらにガスの消費量を抑制可能となることを見出した。更には、当該溶融金属炉を金属めっき製品の製造システムに適宜組み込むことにより、システムの作業効率やめっきの品質を向上可能なことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の金属めっき製品の製造システムは、
被めっき処理物に溶融金属めっきを施すめっき実施部を少なくとも一つ有し、
前記めっき実施部の少なくとも一つは、めっき浴槽と、めっき浴槽を加熱するための加熱装置を有し、
前記加熱装置が、
中心軸(14)を中心にして整然と延びている燃焼室(12)であって、該燃焼室(12)の軸方向に延びている壁(26、64、66)の少なくとも一部に、該燃焼室(12)に沿った共通の燃焼領域へと燃料および空気を排出するように面する燃料充てん開口部(28.1)の配列(22)および空気充てん開口部(28.2)の配列(24)が形成されており、前記燃料充てん開口部(28.1)のサイズが、前記空気充てん開口部(28.2)のサイズに対して効果的な燃焼反応を達成するための適切な関係にある燃焼室(12)と、
燃焼後の媒体の排出速度を加速するための徐々に狭くなる燃焼後媒体排出部(16)と、
前記燃料充てん開口部配列(22)および前記空気充てん開口部配列(24)へとそれぞれ開いており、各々を燃料または空気のいずれかであるそれぞれの媒体の供給源へと接続することができる燃料供給部(20)および空気供給部(18)と
を備えており、
使用時に、前記燃焼室(12)を、可燃混合物に点火するための点火手段(34)へと曝すことができる燃焼装置(10)であって、
少なくとも一方の開口部配列(22、24)の少なくとも大部分の開口部(28)の開口部有効断面サイズを、適切な媒体充てん開口部配列(22、24)の程度を調節するための調節機構(30、44、46、48、58、68、70、76)によって制御可能に調節することができ、両方の開口部配列のサイズが調節可能である場合には、それらの配列の別個独立な調節が可能な加熱装置である
ことを特徴とするシステムである。
【0010】
尚、本発明の金属めっき製品の製造システムは、めっき浴槽、該めっき浴槽の外側に配置された内壁、略矩形状の耐熱性外壁、および、該内壁と該耐熱性外壁とで囲まれてなる加熱室を有し、かつ、前記耐熱性外壁の少なくとも1箇所に加熱装置を備える溶融金属めっき炉を有する金属めっき製品の製造システムであり、
前記加熱装置が、
中心軸(14)を中心にして整然と延びている燃焼室(12)であって、該燃焼室(12)の軸方向に延びている壁(26、64、66)の少なくとも一部に、該燃焼室(12)に沿った共通の燃焼領域へと燃料および空気を排出するように面する燃料充てん開口部(28.1)の配列(22)および空気充てん開口部(28.2)の配列(24)が形成されており、前記燃料充てん開口部(28.1)のサイズが、前記空気充てん開口部(28.2)のサイズに対して効果的な燃焼反応を達成するための適切な関係にある燃焼室(12)と、
燃焼後の媒体の排出速度を加速するための徐々に狭くなる燃焼後媒体排出部(16)と、
前記燃料充てん開口部配列(22)および前記空気充てん開口部配列(24)へとそれぞれ開いており、各々を燃料または空気のいずれかであるそれぞれの媒体の供給源へと接続することができる燃料供給部(20)および空気供給部(18)と
を備えており、
使用時に、前記燃焼室(12)を、可燃混合物に点火するための点火手段(34)へと曝すことができる燃焼装置(10)であって、
少なくとも一方の開口部配列(22、24)の少なくとも大部分の開口部(28)の開口部有効断面サイズを、適切な媒体充てん開口部配列(22、24)の程度を調節するための調節機構(30、44、46、48、58、68、70、76)によって制御可能に調節することができ、両方の開口部配列のサイズが調節可能である場合には、それらの配列の別個独立な調節が可能な加熱装置である
ことを特徴とするシステムであってもよい。
【0011】
ここで、前記加熱装置における前記配列(22、24)の個々の前記開口部(28)が、少なくとも大部分の空気充てん開口部(28.2)の中心軸(40)が、前記中心軸(14)に一致する前記燃焼室(12)の長手方向の中心(14、42)において、対応する燃料充てん開口部(28.1)の中心軸(38)と交差するように配置可能であってもよい。
前記加熱装置における前記媒体充てん開口部配列(22、24)の各々が、同数の開口部(28)を有していてもよい。
前記加熱装置における前記配列(22、24)の前記開口部(28)が、一定の間隔で位置していてもよい。
前記加熱装置における前記配列(22、24)の前記開口部(28)が、行および列において間隔を空けて位置していてもよい。
前記加熱装置において、すべての開口部(28)の中心軸(38、40)が、前記燃焼室(12)の前記長手方向の中心(14、42)に対して同じ角度で当該加熱装置の排出方向に傾けられていてもよい。
前記加熱装置における前記調節機構(30、44、46、48、58、68、70、76)が、前記少なくとも1つの調節可能な媒体充てん開口部配列(22、24)のためのカバー手段(30、44、58、68、70)を備えており、
前記カバー手段に、前記媒体充てん開口部配列(22、24)に一致するカバー手段開口部配列(32、72、74)が形成され、
前記カバー手段開口部配列が、互いにぴったりと位置する前記カバー手段と前記燃焼室(12)の前記媒体充てん配列を呈する壁(26、64、66)との相対の平行移動に応じて、少なくとも開口部が大きくなる位置合わせの状態と開口部が絞られる位置合わせの状態との間で調節可能に協働することで、当該加熱装置の使用時に前記燃焼室への媒体の流れが調節されていてもよい。
前記加熱装置における前記燃焼室(12)が、前記媒体充てん開口部配列(22、24)を互いに直面させるように構成されていてもよい。
前記加熱装置における前記燃焼室(12)が、中心軸(14)に沿って中央を延びる媒体充てんチャンバ(α)の周囲に環状に形成されることで、燃焼室(12)の長手方向の中心(42)が燃焼室(12)内の中央を環状に延び、結果として前記媒体充てん開口部配列(22、24)が燃焼室の長手方向の内側および外側側壁を定める向かい合う周状の壁(26.1、26.2)に沿って延び、前記媒体充てんチャンバ(α)の内側端が適切に塞がれていてもよい。
前記加熱装置において、少なくとも1つの媒体充てん配列(22、24)の開口部サイズを、前記媒体充てんチャンバ(α)の内側または長手方向に延びて燃焼室を囲んでいる外側の壁(26.2)の外側において、燃焼室を定めている壁(26)の燃焼室から遠い方の表面に沿ってスライド変位可能に取り付けられた円筒形のカバー本体(30、44、58)の形態のカバー手段(30)に応じて、調節することができてもよい。
前記加熱装置において、カバー本体(44、58)が、当該加熱装置の中心軸(14)の方向に制御可能に変位させることができるように取り付けられていてもよい。
前記加熱装置において、両方の媒体充てん開口部配列(22、24)を、開口部が円筒形のカバー本体(44、58)によって調節することができてもよい。
前記加熱装置における前記燃料供給部(20)および前記空気供給部(18)が、一方が燃焼室の長手方向の壁(26.1)の内側を延びており、他方が燃焼室の外側の壁(26.2)に沿って延びている適切に補充することができる充てんチャンバの形態であってもよい。
前記加熱装置における前記燃料充てんチャンバ(20)が、前記燃焼室(12)の内側に位置し、前記空気充てんチャンバ(18)が、前記燃焼室(12)の外側に沿って位置していてもよい。
前記加熱装置において、内側端が適切に塞がれている前記燃焼室(12)が、前記中心軸(14)に沿って延び、長手方向の中心(42)を定めており、
前記調節機構(30、44、68、70、76)が、少なくとも1つの媒体充てん開口部配列(22、24)と調節可能に協働して該少なくとも1つの媒体充てん開口部配列の開口部サイズを調節するカバー手段の形態である場合に、前記燃焼室(12)の適切な長手方向の壁(26、64、66)の外面にスライド可能に取り付けられていてもよい。
前記加熱装置における前記燃料供給部(20)および前記空気供給部(18)が、前記燃焼室の側壁(64、66)の傍らを広がる適切に補充することができる充てんチャンバの形態であってもよい。
前記加熱装置における前記燃焼室(12)が、少なくとも一部に媒体充てん開口部(28)が形成された平坦な側壁で形成されていてもよい。
前記加熱装置における前記カバー手段(30、68、70)が、前記燃焼室の中心軸(14)の方向にストッパ間を変位させられるように取り付けられた開口部付きの少なくとも1枚のカバー板(68、70)の形態であってもよい。
前記加熱装置における前記燃焼室(12)が、矩形の形状であってもよい。
前記加熱装置において、前記燃焼室の向かい合う2つの側壁(68、70)に媒体充てん開口部(28)が形成され、すなわち一方に空気充てん開口部が形成され、他方に燃料充てん開口部が形成されていてもよい。
前記加熱装置において、前記空気充てん開口部配列(24)および前記燃料充てん開口部配列(22)の両方を、開口部が適当に設けられたカバー板(68、70)によって調節することができてもよい。
また、前記金属めっき製品が、金属めっき鋼管であってもよい。
更に、前記製造システムは、
帯鋼から連続製造ラインにて内外面又はいずれか一方の面に溶融金属めっきを施した鋼管を製造する鋼管製造システムであって、
鋼管の内面に相当する側の帯鋼上側に溶融金属を注ぎかけて溶融金属めっきを施す、内面めっき実施部と、
内面めっきの施された帯鋼を連続的に管状に冷間成形し、該鋼管に成形された帯鋼の長手方向端面接合部をシーム溶接して連続鋼管を得るための鋼管形成部と、
前記鋼管外面を溶融金属に浸漬して溶融金属めっきを施す、外面めっき実施部と
を備え、
前記内面めっき実施部及び/又は外面めっき実施部が、前記めっき浴槽と、前記めっき浴槽を加熱するための前記加熱装置を有することを特徴とする鋼管めっきシステムであってもよい。
ここで、前記システムは、
帯鋼から連続製造ラインにて少なくとも内面に溶融金属めっきを施した鋼管を製造する鋼管製造システムであって、
鋼管の内面に相当する側の帯鋼上側に溶融金属を注ぎかけて溶融金属めっきを施す、内面めっき実施部と、
内面めっきの施された帯鋼を連続的に管状に冷間成形し、該鋼管に成形された帯鋼の長手方向端面接合部をシーム溶接して連続鋼管を得るための鋼管形成部と、を有し、
前記内面めっき実施部が、
帯鋼上側に溶融金属が注ぎかけられる、注ぎかけ部と、
前記注ぎかけ部に溶融金属が供給可能である、溶融金属供給部と、
前記注ぎかけ部により注ぎかけられた溶融金属を除去する内面ワイピング部と、を有し、
前記注ぎかけ部が、帯鋼の進行方向に対して平行に移動可能な移動手段を有し、
溶融金属が注ぎかけられる最初の位置と、内面ワイピング部の位置との相対距離を調節可能であり、
前記内面めっき実施部が、前記めっき浴槽と、前記めっき浴槽を加熱するための前記加熱装置を有することを特徴とする鋼管めっきシステムであってもよい。
また、前記システムは、
帯鋼から連続製造ラインにて少なくとも外面に溶融金属めっきを施した鋼管を製造する鋼管製造システムであって、
帯鋼を連続的に管状に冷間成形し、該鋼管に成形された帯鋼の長手方向端面接合部をシーム溶接して連続鋼管を得るための鋼管形成部と、
前記鋼管外面を溶融金属に浸漬して溶融金属めっきを施す、外面めっき実施部と、を有する鋼管製造システムにおいて、
前記外面めっき実施部が、
鋼管を通過させて溶融めっき処理を行なう浸漬部と、
前記浸漬部に溶融金属が供給可能である、溶融金属供給部と、
前記浸漬部により溶融金属に浸漬された連続鋼管から余剰の金属を除去する、外面ワイピング部と、を有し、
前記浸漬部が、帯鋼の進行方向に対して平行に移動可能な移動手段を有し、
溶融金属に浸漬される最初の位置と、外面ワイピング部の位置との相対距離を調節可能であり、
前記外面めっき実施部が、前記めっき浴槽と、前記めっき浴槽を加熱するための前記加熱装置を有することを特徴とする鋼管めっきシステムであってもよい。
更に、前記システムは、
帯鋼から連続製造ラインにて内外面に溶融金属めっきを施した鋼管を製造する鋼管製造システムであって、
鋼管の内面に相当する側の帯鋼上側に溶融金属を注ぎかけて溶融金属めっきを施す、内面めっき実施部と、
内面めっきの施された帯鋼を連続的に管状に冷間成形し、該鋼管に成形された帯鋼の長手方向端面接合部をシーム溶接して連続鋼管を得るための鋼管形成部と、
前記鋼管外面を溶融金属に浸漬して溶融金属めっきを施す、外面めっき実施部と、を有する鋼管製造システムにおいて、
前記内面めっき実施部が、
帯鋼上側に溶融金属が注ぎかけられる、注ぎかけ部と、
前記注ぎかけ部に溶融金属が供給可能である、溶融金属供給部と、
前記注ぎかけ部により注ぎかけられた溶融金属を除去する内面ワイピング部と、を有し、
前記注ぎかけ部が、帯鋼の進行方向に対して平行に移動可能な移動手段を有し、
溶融金属が注ぎかけられる最初の位置と、内面ワイピング部の位置との相対距離を調節可能であり、
前記外面めっき実施部が、
前記連続鋼管が通過する空間を有し、当該空間に溶融金属が導入されている場合には連続鋼管の外面を溶融金属に浸漬可能な浸漬部と、
前記浸漬部に溶融金属が供給可能である、溶融金属供給部と、
前記浸漬部により溶融金属に浸漬された連続鋼管から余剰の金属を除去する、外面ワイピング部と、を有し、
前記浸漬部が、帯鋼の進行方向に対して平行に移動可能な移動手段を有し、
溶融金属に浸漬される最初の位置と、外面ワイピング部の位置との相対距離を調節可能であり、
前記内面めっき実施部及び/又は外面めっき実施部が、前記めっき浴槽と、前記めっき浴槽を加熱するための前記加熱装置を有することを特徴とする鋼管めっきシステムであってもよい。
前記内面ワイピング部及び/又は前記外面ワイピング部の位置が移動可能であってもよい。
前記内面ワイピング部及び/又は前記外面ワイピング部の位置が固定されていてもよい。
前記外面めっき実施部において、
前記連続鋼管の進行方向に連続的に並べられた複数の前記浸漬部を有し、
前記溶融金属供給部が、溶融金属を供給する前記浸漬部の個数を変化させて供給することが可能であってもよい。
前記外面ワイピング部が、前記複数の浸漬部の各々の直後に設置されており、
当該複数のうち何れのワイピング部を稼動させるのかを決定することが可能であってもよい。
前記浸漬部間に設置されている前記外面ワイピング部が、
前記連続鋼管を囲む環状部と、
前記環状部の内側に形成された複数の気体噴出孔と、を有し、
前記環状部が開環して、前記連続鋼管から離れた位置に移動可能な開環可動式ワイピング部であってもよい。
【0012】
また、本発明は、前記いずれかのシステムを用いて、鋼管めっきを形成することを特徴とする金属めっき鋼管の製造方法であってもよい。
ここで、前記溶融金属めっき炉におけるめっき浴槽内の温度のばらつきが20℃以内であってもよい。
【0013】
更に、本発明は、前記いずれかの金属めっき鋼管の製造方法によって得られた鋼管であり、金属めっき層厚が4μm以下であることを特徴とする金属めっき鋼管であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の溶融金属めっき炉によれば、従来のバーナーのように炎が鉄釜と溶融金属浴槽との間の空間に放出されて熱伝導により加熱するという加熱方式ではないので、すなわち、燃料などの燃焼により生成された分子を射出して運動エネルギーを付与し、この運動エネルギーを保有する分子が衝突、振動することで熱エネルギーに転化されて加熱するという加熱方式を採用するので、熱伝導よりも伝達速度が速く、広い範囲で、制御温度がコントロールしやすくなる。また、溶融金属を均一に加熱することができるので、めっき品質の均一化を実現することができる。さらにまた、バーナーの直火により加熱されることがないので、金属めっき浴槽内部にドロスが形成されにくく、さびが発生しにくい。更には、当該溶融金属めっき炉(例えば、溶融金属貯留部としてのめっき浴槽と、めっき浴槽を加熱するための加熱装置)を組み込んだ金属めっきシステムにおいても、上記効果に起因して、生産能力の向上や、金属めっき製品の高品質化を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。尚、本発明の溶融金属めっき炉を詳述した後に、当該溶融金属めっき炉を組み込んだ金属めっきシステム(金属めっき製品の製造システム)に関して詳述する。
【0017】
本発明の溶融金属めっき炉は、少なくとも、内壁で囲まれた溶融金属めっき槽、耐熱性外壁、内壁と耐熱性外壁とで囲まれた加熱室、および、熱源(加熱装置)を有する。
【0018】
図1の(a)は、本発明の溶融金属めっき炉の一実施形態の概略を示す平面図であり、溶融金属めっき炉100の内部には、溶融金属を貯留させるめっき浴槽101が設置されており、その外側には短壁部と長壁部とからなる略矩形状の耐熱性外壁103が設けられている。ここで、めっき浴槽101の壁面の内、めっき浴槽の外側周囲の壁面を内壁102とする。この耐熱性外壁103と内壁102との間の空間は、めっき浴槽101を加熱するための加熱室104となっており、また、耐熱性外壁103の短壁部の一端付近に1基の加熱装置10が配置されていて、加熱室104に熱エネルギーを供給する。なお、ここでは、該短壁部の中央付近に、加熱室104を循環したガスの一部が排気される排気口105が設けられている。また、図示はしないが、当該溶融金属めっき炉100の上部には蓋部材が取り付け可能に構成されている。この蓋部材は、炉を加熱する際には、金属めっき炉100内部の系と、金属めっき炉100外部の系と、の遮断を行い、金属めっき炉100内部から外部への流体導通不可能なものとする部材である。また、加熱室104とめっき浴槽101内部とが流体導通不可能となるように、溶融金属めっき炉100(耐熱性外壁103及びめっき浴槽101)を覆うように構成されている(即ち、加熱装置10より取り出されたガス等が、めっき浴槽101内には侵入せず、加熱室104内部を循環可能となるよう構成されている)。
【0019】
めっき浴槽としては鉄釜などが用いられるが、その材料等については特に限定される必要はない。めっき浴槽の材料は、金属めっきに供される溶融金属の種類等との関係で適宜選択されることが好ましい。また、めっきに供される金属の種類についても、適宜選択することができる。
【0020】
本発明に用いられる加熱装置(燃焼装置)10について以下に説明する。
加熱装置10は、燃焼器ユニットの形態の可変開口部燃焼装置であることが好ましい。
【0021】
加熱装置10が、中心軸14を中心にして整然と延び、排出ノズル16の形態の徐々に狭くなる燃焼後媒体排出部において終わる燃焼室12を備える一方で、燃焼室12の充てんは、空気充てんチャンバ18および燃料充てんチャンバ20の形態の燃料供給部および空気供給部から、燃焼室の向かい合う長手方向の壁26に形成された燃料充てん開口部配列22および空気充てん開口部配列24の形態の燃焼媒体開口部配列を介して行われ、配列22、24の開口部28の断面のサイズを調節機構によって調節することが可能であり、調節機構は、媒体開口部配列22、24と協働して調節を果たすカバー手段開口部配列32がそれぞれの媒体開口部配列22、24の数およびサイズに一致する数およびサイズにて形成されている開口部付きカバー手段30を変位可能に取り付けて備えている。媒体充てん開口部28のサイズをカバー手段30によって機械的に調節することができるため、上流の媒体の供給が重要でなくなり、ユニット10を或る程度の範囲の媒体供給圧力について使用することができる。燃焼室12は、実壁(real wall)36を貫いて取り付けられた点火プラグ34の形態の点火手段に曝される。ノズル16は、典型的には、21度の角度で収束することができる。
【0022】
燃料充てん開口部配列22の個々の開口部28.1および空気充てん開口部配列24の開口部28.2は、燃料充てん開口部28.1の中心軸38が燃焼室12の長手方向の中心42において対応する空気充てん開口部28.2の中心軸40と交わるように、ノズル16の方向の同じ前進角度にて傾けられて配置されている。ユニット10の使用時には、開口部配列32の開口部も、開口部28.1および28.2の方向に従い、それぞれの軸38および40に沿い、さらに開口部配列32の開口部に沿って通過する充てんの発生をもたらしている。開口部28は、平面的に広がる配列について
図7に示されているように、適切には行および列にて規則的に配置され、使用時に燃焼室12内の一様な圧力を促進して、燃焼室12の全体にわたって安定な等エントロピの変換を保証するような間隔を有している。この開口部の配置は、燃焼室12の長手方向の中心14を中心にして広がる燃焼の重なり合いの領域をもたらすように選択される長手方向の開口部の間隔ゆえに、より効率的な燃焼反応も促進する。
【0023】
燃焼反応に必要な空気の量は、気体、蒸気、または液体のいずれであっても燃料の量よりも多いため、燃料充てん開口部配列22および燃料充てん開口部配列22に調節可能に位置合わせされるカバー手段の開口部配列32の開口部28.1は、従来どおり、空気充てん開口部配列24および空気充てん開口部配列24に調節可能に位置合わせされるカバー手段の開口部配列32の開口部28.2よりも小さい。
【0024】
図2〜4を参照すると、一実施形態においては、燃焼室12が環状に形成される一方で、燃料充てんチャンバ20が、燃焼室12の内部を延びている。空気充てんチャンバ18が、燃焼室12を環状に囲んでいる。
【0025】
開口部付きカバー手段30は、燃料充てん側の場合には、燃焼室12の内壁26.1に隣接して形成される内側領域に沿ってはめ込まれた開口部付きの円筒形のカバー本体44の形態である。本体44は、手動で回転させることができる調節ホイール48に沿ってスクリュの様相で通過する取り付けられたねじシャフトによってねじシャフト46を介して中心軸14の方向にスライド変位可能である。本体44の直線的な変位が、燃料側の調節円筒に形成された開口部50の燃料充てん開口部28.1との位置合わせの程度を大きくまたは小さくし、燃料充てん開口部28.1のサイズを調節する効果を有する。ホイール48にロックねじ52が取り付けられ、ロックねじ52によってホイール48を回転せぬように固定し、開口部28.1および50を固定された関係にロックすることができる。燃料が、供給導管54ならびにチャンバ20に開いた周状に分布した入り口開口56を介して、燃料充てんチャンバ20へと充てんされる。
【0026】
空気充てん側においては、開口部付きのカバー手段30が、燃焼室の外壁26.2に隣接して位置するように形成された燃焼室の外側の円筒形の本体58の形態であり、この空気側調節用円筒に開口部60が形成されている。本体58を、独立した工具による押し引きによって、軸14の方向に直線的に変位させることができる。空気充てんチャンバ18に、空気供給部59を介して供給が行われる。
【0027】
適切に調節することができるホイール48に沿って延びるシャフト46が取り付けられた円筒形の本体44および円筒形の本体58が、本発明の開口部調節機構のこの実施形態を形成する。
【0028】
ユニット10に、好都合には、充てん媒体の環境への喪失を抑える適切なシールが取り付けられる。この実施形態のユニット10は、当然ながら、ハウジング62に囲まれる。
【0029】
別の実施形態においては、
図5および6を参照し、燃焼室12が、燃焼室12の中心も形成するユニット10の中心軸14の周囲を広がるように配置された矩形の領域の形態である。背中合わせの側壁64および66に、燃料充てん開口部配列22および空気充てん開口部配列24がそれぞれ形成されている。
【0030】
開口部付きのカバー手段30が、カバー手段の開口部配列32を形成する空気充てん側調節用開口部配列72および燃料充てん側調節用開口部配列74がそれぞれ形成されたスライド可能に取り付けられた開口部付き板68および70の形態である。板68、70は、ハンドル76によって軸14の方向に直線的に変位させられるように取り付けられている。板68および70が、ハンドル76とともに、この実施形態の調節機構を形成している。
【0031】
図示はされていないが、
図5および6の実施形態のユニット10も、当然ながらハウジングに囲まれる。
【0032】
ユニット10は高温で動作するため、従来、ステンレス耐熱合金鋼などの耐熱材料から製造される。
【0033】
ユニット10の形態の燃焼装置は、従来のユニットを後付けによって直接置き換えるように容易に製造される。したがって、
図2に示されるように、溶融金属めっき炉100に前部フランジ80の穴78によって単純にボルトで取り付けることが可能である。
【0034】
ひとたび動作可能に設置され、点火プラグ34による初期の充てん分の点火に応じて燃焼が生じると、ユニット10の加熱効果を、燃料側の充てんのためのホイール48または適切な板70あるいは空気側の充てんのための円筒形の本体58または板68により、適切なカバー手段の開口部配列32を単純に調節することによって、調節することができる。
【0035】
ノズル16による燃焼後の燃焼ガス分子の流れの加速により、燃焼反応から熱の応用の位置までの熱損失が抑えられ、より低い燃焼温度で所望の温度を得ることが可能になる。側壁に形成された開口部およびそれらの配置のやり方が、燃焼反応を燃焼室の中心へと集中させて反応の効率を改善する効果を有する一方で、適切な媒体の充てんが、媒体充てん開口部の断面積を変更し、燃焼媒体の供給圧力の変化にも容易に対応することによって、容易に制御される。
【0036】
具体的に説明したとおりの加熱装置ユニット10の利点は、燃焼室への媒体の充てんを容易に制御することができる一方で、充てんおよび調節の開口部の構成が、充てんされた媒体の燃焼効率を向上させる点にある。他の利点は、ノズルによる燃焼後のガス分子の加速により、燃焼装置と加熱の対象との間の熱の損失が抑えられる点に見られる。
【0037】
本加熱装置ユニット10内へ取り込んだ燃料ガスと空気が、段階的な制御方式で燃焼し、また、それらの各段階では、加熱装置ユニット10内の理論混合比が正確に維持されることにより、燃料ガスが完全燃焼することを可能とし、更に、低温燃焼を達成する。そのため、加熱装置ユニット10から取り出される燃焼ガス分子は、高い運動エネルギーを持った高速のガス分子流となりつつも、熱エネルギーを低く抑えることが可能となるのである。
【0038】
図1では、熱源(加熱装置)が1基の場合を示したが、必要に応じて2基以上を設置することもできる。なお、本発明では、新技術の加熱方式を採用しており、加熱装置から噴出される燃焼ガス分子は低温であるが、高速のため高い運動エネルギーを保有する分子であるので、加熱装置が1基であったとしても加熱室内を一方向に対流させることができるし、また、運動エネルギーを保有する分子が加熱対象物である加熱室の内壁等に衝突、振動することによって転化された熱エネルギーで溶融金属めっき浴槽を加熱することになるので、めっき浴槽のみならず、ひいては、溶融金属めっき炉内の温度を均一温度にすることができる。
【0039】
かかる加熱方式を採用した加熱装置、すなわち、物質の燃焼を利用して分子を射出し、運動エネルギーを保有する分子が衝突、振動することで熱エネルギーに転化されて加熱するという加熱方式を採用した加熱装置としては、例えば、Tkenergizer Global Limited社製のTKEnergizer(商標登録)が挙げられる。
【0040】
本発明の溶融金属めっき炉では、熱源(加熱装置)として上記したような加熱方式の加熱装置を使用する。すなわち、加熱装置内部で燃料(ex.炭化水素ガス)が燃焼されて生成された分子(ex.CO
2分子、H
2O分子)を、内壁と耐熱性外壁との間の加熱室に射出し、運動エネルギーを持った分子が衝突、振動することで熱エネルギーに転化するような加熱装置を使用する。かかる加熱装置は、分子振動を利用した加熱であるため、熱伝導よりも伝達速度が速くなる。例えば、分子を高速で連続的に吐出し加熱対象物に衝突させ、分子運動エネルギーを振動に変えて内部まで伝えて熱エネルギーへと転化した本発明の場合の伝達速度は、加熱対象物をその表面から熱伝導でその内部に熱を浸透させる通常のガスバーナー等の伝達速度と比べると、約3倍速くなる。
【0041】
また、本発明の場合では熱エネルギーに転化されるため、要求される制御温度にほぼ忠実に従った温度コントロールが可能になる。密閉された空間(炉)に運動エネルギーを保有する分子が充填されると、初期衝突振動エネルギーが熱エネルギーに転化され、炉内は加熱対象物(ex.浴槽)も含めて迅速に均一な温度になり、更に次々に衝突振動エネルギーが追加されるので炉内は迅速に設定温度まで上昇していき、炉内の均一的な加熱を実現することができる。そのため、このような加熱装置を備えた金属めっき炉では、ドロスの発生を抑制することができ、釜(めっき浴槽)の寿命の長寿化を達成することができ、かつ、めっき浴槽内の溶融金属の温度のばらつきを抑制することができるので均一なめっきを施すことができてめっき品質の向上を図ることができる。
【0042】
本発明の加熱方式による加熱装置では、燃料は加熱装置内部で完全燃焼されて分子運動エネルギーとして射出されるので、装置の吐出口の温度は通常のガスバーナー等よりもかなり低い温度でよく、例えば炉内温度程度以下でよい。なお、従来の金属めっき炉の加熱手段として使用されている高速バーナーは、バーナーの内部ではなく外部で燃料が燃焼され、炎としてバーナー吐出口から放出される等、装置内部で完全燃焼される本願の加熱方式とは全く異なるものであり、しかも、従来の高速バーナーでは炎としての温度になるので、本発明の加熱装置の温度とくらべて、非常に高い温度になる。この吐出口での温度差が燃焼ガスのロスに大きく影響し、本発明の加熱方式によれば、飛躍的な熱効率の向上を図ることができる。より具体的には、本発明の加熱方式によれば、加熱室に充填される分子自体は低温であると共に加熱対象(ex.めっき浴槽)に衝突した際にはじめて熱に転化されるため、加熱室の雰囲気温度を必要以上に上昇させることがない。即ち、通常のバーナーを使用した場合と比較し、排気口における燃焼ガスのロス(高温ガスとして排気される熱エネルギー)を抑制することも可能となり、ガスの使用量を減少させることが可能となる。
【0043】
また、本発明によれば、加熱対象物(めっき浴槽)の全体に、均一で迅速な加熱と熱浸透を実現することができるので、熱処理時間の大幅な短縮が可能であり、また、1回あたりの加熱作業工程時間を短くすることができる。したがって、飛躍的な熱効率の向上とあいまって、本発明の溶融金属めっき炉は、従来のガスバーナー等の加熱装置を備えた金属溶融めっき炉と比較して、ガス消費量を約40〜80%削減することができるので、大幅な生産能力の拡大を図ることができる。
【0044】
しかも、本発明によれば、炉内の温度以上の温度に加熱する必要はなく、炉内温度と同じ程度の温度で常に作動させることが可能であり、めっき浴槽(釜)全体に均一な加熱が行われ、深部にまで均一な熱浸透が行われ、溶融金属の温度のばらつきを抑制することができる(本発明においては、めっき浴槽内の温度のばらつきを、20℃以下とすることも可能である)。したがって、加工品の歪みや表面亀裂が生じず、加工品質の向上も図ることができる。尚、本発明における、めっき浴槽内の温度のばらつきとは、下記実施例に示す通りである。具体的には、浴槽の略中心部に溶融金属温度の温度基準点を設け、当該温度基準点における温度(制御温度)が略一定となるように制御した際に、浴槽内の各所(温度ばらつき測定箇所)で測定される溶融金属温度での、最高温度と、最低温度と、の差を示す。尚、制御温度は、少なくともめっき材料となる金属の溶融温度以上であり、好ましくは、溶融金属めっきにおいて通例用いられる温度、例えば、めっき材料となる金属の溶融温度+20℃以上であり且つ高温過ぎない温度である(例えば、溶融亜鉛めっきの場合は440〜460℃の範囲内の程度である)。更に、浴槽内の各所(温度ばらつき測定箇所)とは、例えば、浴槽を長手方向に等分(少なくとも5等分以上に等分)した際の各々の箇所(好ましくは、各等分された区画の各中心部)を示す。また、溶融金属温度の測定においては、一定時間(例えば10〜30分)金属を溶融させた際に測定される、連続的な温度変化の測定値を参照するものとする。さらにまた、本発明によれば、例えば炭化水素ガスをエネルギー燃料とし、空気とガスの安定性を保ち完全燃焼させ、高温にならないように制御できるので、COやNOx等の発生を抑制することができ、環境負荷の軽減も図ることができる。
【0045】
本発明に係る溶融金属めっき炉は、被めっき処理物に溶融金属めっきを施すめっき実施部を有する公知の金属めっき製品の製造システムに適宜組み込み可能である。尚、本発明に係る溶融金属めっき炉を公知の金属めっき製品の製造システムに組み込む際に、必要に応じて、溶融金属貯留部としてのめっき浴槽及び当該めっき浴槽の加熱源としての加熱装置のみを組み込むものであってもよい。
【0046】
次に、本発明に係る溶融金属めっき炉を組み込んだ金属めっき製品の製造システムの好適例として、金属めっき鋼管の製造システムに関して説明する。
【0047】
本発明に係る溶融金属めっき炉を組み込む金属めっき鋼管のシステムとしては何ら限定されず、鋼管(鋼板)にめっきを行う設備(めっき実施部)に任意の形で適宜組み込めばよい。より具体的には、本発明に係る溶融金属めっき炉(例えば、めっき浴槽と、めっき浴槽を加熱するための加熱装置)を、めっき用の金属を溶融させる設備(金属溶融部)や溶融された金属を貯留する設備(溶融金属貯留部)として、公知の金属めっき鋼管システムのめっき実施部に組み込めばよい。例えば、鋼管を溶融金属中にドブ漬けすることで金属めっきを行う金属めっき鋼管システムにおいては、当該ドブ漬け設備の代替として本発明に係る溶融金属めっき炉(例えば、めっき浴槽と、めっき浴槽を加熱するための加熱装置)を用いればよい。また、溶融金属めっきを鋼管に注ぎかけることで金属めっきを行う金属めっき鋼管システム(例えば、特開平5−148607号公報等に示された金属めっき鋼管システム)においても、溶融金属めっき槽(溶融金属貯留部)の代替として、本発明に係る溶融金属めっき炉(例えば、めっき浴槽と、めっき浴槽を加熱するための加熱装置)を用いればよい。
【0048】
金属めっき鋼管の製造システムにおいて、本発明に係る溶融金属めっき炉(溶融金属炉)を組み込むことにより、上述した溶融金属めっき炉における効果に関連して、以下の効果を得ることが出来る。
【0049】
本形態に係る加熱装置10は、従来とは異なる加熱方式(燃焼により生じた燃焼ガス分子が保有する運動エネルギーを衝突、振動させて熱エネルギーへ転化することができる特定の加熱方式)によって効率よく金属を溶融させることが可能であると共に、既存の加熱装置と容易に代替可能であるため、溶融金属めっき炉の構成が類似する既存設備に大きな改造と投資を必要とせずに、金属めっき鋼管の生産性を向上することが出来る。
【0050】
更に、上述の通り、金属溶融めっき炉において釜(浴槽)の長寿命化が可能であるので、各種のコスト(設備費等)を削減することが出来る。
【0051】
また、金属溶融めっき炉に係る設備の省スペース化を行うことが出来る。より詳細には、溶融金属めっき炉(溶融金属浴槽内)の溶融金属に鋼管(鋼板)を浸漬することでめっき層を形成する場合、浴槽内を通過する鋼管(鋼板)によって溶融金属の温度が極端に下がることを防ぐ為、炉(浴槽)はある程度の大きさが必要となる。溶融金属めっき炉(溶融金属貯留部)から、溶融金属を汲み上げ、注ぎかけることでめっき層を形成する場合等にも、十分量の溶融金属を貯留するために、炉(浴槽)をある程度の大きさとする必要がある。しかしながら、上記特定の加熱方式を用いることによって、素早い加熱が可能である結果、溶融金属の極端な温度低下を防ぐことにより、炉の設備自体を縮小することが可能となるため、金属めっき鋼管の製造システム(設備)全体の小型化が可能である。
【0052】
また、上述のように、本発明に係る溶融金属炉によれば、溶融金属の温度範囲を細かく制御可能であるため、めっきを行う金属が異種金属である場合(例えば、特願2011−528569のような二種の金属でのめっきである場合)においても、温度制御が容易である。より詳細には、例えば当該二種の金属の最適な範囲がある程度重複する場合(当該二種の金属の融点の差が大きすぎない場合)、溶融金属の温度が、当該重複する範囲内となるように加熱することが容易であるため、当該二種の金属を用いためっきを行うことが可能である。他方、従来の加熱方式によれば、同一の炉内にて二種の金属の加熱・溶融を行った際には、炉内の温度範囲にバラつきが生じてしまうため、炉内温度を一種の金属の望ましい温度範囲に設定したとき、他種の金属は望ましい温度範囲から外れてしまうこととなる。
【0053】
尚、上述のように、本発明に係る金属溶融めっき炉は、連続的なラインによって、鋼管の成形(帯鋼から管状への冷間成形)、溶接及び溶融金属めっきを行うシステム(例えば、特開平5−148607号公報等に示されるような金属めっき鋼管の製造ライン)に組み込むことも出来る。このようなシステムに本発明に係る金属溶融めっき炉を組み込んだ場合、効率よく金属を溶融させることが可能であることから、多量の鋼管を処理した場合にも、炉(浴槽)における溶融金属の極端な温度低下等を防止可能となる(そのため、当該溶融金属の温度を適温まで上昇させるためにラインを遅くする、といった事態が生じ難くなる)。より詳細には、複数の設備を有する連続的な製造プロセスにおいて、最も生産能力が遅い設備が生産能力の限界を決定し得る(例として、切断機のスピード、設備の電気容量、めっき炉の加熱性能等が律速となり得る)。この中でも、めっき炉においては、炉を通過する鋼管(鋼板)が多ければ多いほど、炉内にある溶融金属の温度は下がり、ラインのスピードを上昇させることができない。しかしながら、本発明に係る金属溶融めっき炉を導入することにより、溶融金属の加熱効率(昇温速度)が上昇し、多量の鋼管(鋼板)が炉(浴槽)を通過しても温度低下が起き難く、システム全体のめっき鋼管の生産量(生産能力)を向上させることが可能となる。
【0054】
次に、本発明に係る溶融金属炉を組み込み可能な金属めっき鋼管の製造システムとして、連続ラインにて鋼管を製造する特定のシステム及び方法に関して詳述するが、本例はあくまで一例であり、本発明はこれには何ら限定されない。尚、本製造システムにて具体的に用いられる金属溶融炉(特には、めっき浴槽と、めっき浴槽を加熱するため加熱装置)は、上述した通りであるため、説明は省略する。
【0055】
従来、鋼管の溶融金属めっき方法については、その代表的な方法の一つとしてドブ漬け溶融めっき方法がある。また近年は、コスト低下の観点から、連続鋼管製造ラインにおける溶融金属めっき鋼管の製造方法が提案されている。この一手法として、例えば特公昭52−43454号公報には、連続的に帯鋼から管状に冷間成形した後に溶接し、溶融金属めっきを施して外面めっき鋼管を製造する技術が提案されている。更には、最近における内面金属めっきの必要性の高まりを受けて、例えば特開平05−148607号公報には、鋼管製造ライン中の帯鋼に対して鋼管の内面にあたる側の片面にめっきを施した後、管状に冷間成形し、引続き帯鋼の長手方向端面を溶接後、鋼管の外面を溶融金属めっきすることで、鋼管の内外面共に連続的ラインでの内外面溶融金属めっきを容易に製造することが可能な方法も提案されている。
【0056】
これらの連続ラインにおいて製造される鋼管のスペックは様々である。即ち、需要者の要望に応じて、鋼管の直径、耐食性等の特性を変化させなければならない。そこで、当該連続ラインにおいて、一つのスペックの鋼管が製造された後に、更に、別のスペックの鋼管を製造するが、この際に、めっき工程における溶融金属浸漬時間を調整する必要がある。通常のドブ漬けめっきであれば、溶融金属に浸漬する時間を単に調整するだけでよいが、連続ラインでのめっき工程においては、浸漬時間を調整しようとすると、ライン速度を変化させることしかできず、製造効率に影響が及ぶ等の問題があった。
【0057】
また、これらの連続ラインにおいて、何らかのトラブルが発生した場合、ラインを止める若しくはラインの速度を遅くしなければならない。連続ライン内でめっきをするため、一旦ライン停止後、再スタートすると、前処理工程を通過後にめっき工程に入るため、それまでにかかる必要長さ分に不めっき部分が発生しコストアップにつながる。そこで、これらの連続ラインを止めないようにするため、ライン速度を遅らせる場合がある。しかし、このようにライン速度を遅くすると、製造されためっき鋼管を加工する際に、溶融金属浸漬時間が長くなることに伴って、めっきの割れや剥がれが問題となる場合があった。
【0058】
本発明者らは、上記問題点を解決可能な連続鋼管製造ラインとして、浸漬時間を容易に調整可能であり、連続ラインにて鋼管を製造する方法に関し、ラインを停止することなく、且つライン速度の変化にも対応できるめっき浸漬時間を一定化させることが可能である金属めっき鋼管の製造方法及び製造システムにおいて、本発明に係る溶融金属めっき炉を組み込むことで、更に、作業の効率化及びめっき品質の向上が可能であることを見出した。
【0059】
本形態における鋼管めっきシステムは、具体的には下記の通りである。
【0060】
本形態(1)は、帯鋼から連続製造ラインにて内外面又はいずれか一方の面に溶融金属めっきを施した鋼管を製造する鋼管製造システムであって、
鋼管の内面に相当する側の帯鋼上側に溶融金属を注ぎかけて溶融金属めっきを施す、内面めっき実施部(例えば、内面用溶融金属めっき装置A5)と、
内面めっきの施された帯鋼を連続的に管状に冷間成形し、該鋼管に成形された帯鋼の長手方向端面接合部をシーム溶接して連続鋼管を得るための鋼管形成部(例えば、フォーミング装置
A7及び溶接装置A8)と、
前記鋼管外面を溶融金属に浸漬して溶融金属めっきを施す、外面めっき実施部(例えば、外面用溶融金属めっき装置A13)と、を有する鋼管製造システムにおいて、
前記内面めっき実施部及び/又は外面めっき実施部における、溶融金属浸漬長さを調整可能であることを特徴とするシステムである。
本形態(2)は、前記内面めっき実施部(例えば、内面用溶融金属めっき装置A5)が、
帯鋼上側に溶融金属が注ぎかけられる、注ぎかけ部(例えば、注ぎかけ部501)と、
前記注ぎかけ部に溶融金属が供給可能である、溶融金属供給部(例えば、溶融金属ポンプ550)と、
前記注ぎかけ部により注ぎかけられた溶融金属を除去する内面ワイピング部(例えば、内面ワイピング部503)と、を有し、
更に、溶融金属が注ぎかけられる最初の位置と、内面ワイピング部の位置との相対距離を調節可能である、前記形態(1)のシステムである。
本形態(3)は、前記注ぎかけ部が、帯鋼の進行方向に対して平行に移動可能な移動手段(例えば、可動部504)を有する、前記形態(2)のシステムである。
本形態(4)は、前記内面ワイピング部の位置が固定されている、前記形態(1)〜(3)のいずれか一つのシステムである。
本形態(5)は、前記外面めっき実施部が、
前記連続鋼管が通過する空間を有し、当該空間に溶融金属が導入されている場合には連続鋼管の外面を溶融金属に浸漬可能な、前記連続鋼管の進行方向に連続的に並べられた複数の浸漬部(例えば、浸漬部601)と、
前記浸漬部により溶融金属に浸漬された連続鋼管から余剰の金属を除去する、外面ワイピング部(例えば、ワイピング部602)と、
前記浸漬部内に溶融金属を供給可能な溶融金属供給部(例えば、溶融金属ポンプ550)と、を有し、
前記溶融金属供給部が、溶融金属を供給する浸漬部の個数を変化させて供給することが可能である、前記形態(1)〜(4)のいずれか一つのシステムである。
本形態(6)は、前記外面ワイピング部が、前記複数の浸漬部の各々の直後に設置されており、
当該複数のうち何れのワイピング部を稼動させるのかを決定することが可能である、前記形態(5)のシステムである。
本形態(7)は、前記浸漬部間に設置されている前記外面ワイピング部が、
前記連続鋼管を囲む環状部(例えば、環状部60201)と、
前記環状部の内側に形成された複数の気体噴出孔(例えば、気体噴出孔60202)と、を有し、
前記環状部が開環して、前記連続鋼管から離れた位置に移動可能な開環可動式ワイピング部(例えば、開環可動式ワイピング部602−1)である、本形態(6)のシステムである。
【0061】
本形態に係る溶融めっき鋼管の製造システムは、上記めっき実施部を、上記金属溶融めっき炉を組み込んだ特定のめっき実施部(特定めっき実施部)としたものである。より詳細には、本形態に係る溶融めっき鋼管の製造システムにおいて、内面用溶融金属めっき装置A5における溶融金属源(溶融金属ポンプ550へ供給される溶融金属の溶融金属供給源)として上記溶融金属めっき炉が組み込まれており、更に、外面用溶融金属めっき装置A13における溶融金属源(溶融金属ポンプ550へ供給される溶融金属の溶融金属供給源)として上記溶融金属めっき炉が組み込まれている(内面用溶融金属めっき装置A5、外面用溶融金属めっき装置A13溶融金属ポンプ550については後述する)。このように、本形態においては、内面めっき実施部及び外面めっき実施部を共に特定めっき実施部としているが、これには限定されず、内面めっき実施部及び外面めっき実施部のいずれか一方を特定めっき実施部とする等、金属めっき鋼管の製造システムに合わせて、適宜変更すればよい。以下、本形態に係る溶融めっき鋼管の製造システムに関して、図面を参照しながら詳述する。
【0062】
図13は、本実施形態の溶融めっき鋼管の製造システムの概略構成図である。この製造システムは、コイルA1に巻き取られた長尺の鋼板(帯鋼)を連続的に供給するアンコイラーA2と、アンコイラーA2から供給された鋼板を連続的に管状に成形するフォーミング装置A7と、鋼板を連続的に管状成形する直前に鋼板に所望の金属を溶融めっきする内面用溶融金属めっき装置A5と、管状に成形されためっき鋼板の長手方向端面接合部を連続的に溶接して管状体を形成する溶接装置A8と、管状体の外面に成形された溶接ビード部を連続的に切削する切削装置A10と、複数(例えば4個)の浸漬部を有し管状体の外面に連続的に溶融金属めっきして溶融金属めっき鋼管を形成する外面用溶融金属めっき装置A13と、溶融亜鉛めっき鋼管を規格の寸法に成形するサイジング装置A15と、溶融亜鉛めっき鋼管を所定の長さに切断する切断装置A16と、を含む。
【0063】
必要に応じて、ショットブラスト装置A3や、酸化防止用のフラックス液を塗布し乾燥・予備加熱するための前処理装置A4や、管状体の外面の洗浄及び酸化防止用のフラックス液を連続的に塗布するフラックス塗布装置A11や、管状体の外面を乾燥させるとともに管状体を予備加熱する予備加熱装置A12を設けてもよい。めっき金属の性質により必要に応じて、溶融めっき後の鋼板を冷やすための第一冷却槽A6や、溶融めっき後の管状体を冷やすための第二冷却槽A14を設ける。当該冷却槽は、金属めっきが亜鉛めっきである場合には必須的に設けられる。
【0064】
尚、本例においては、めっき対象となる鋼板の前処理(鋼板表面のクリーニング)として、鋼板の表面にフラックスを塗布し、乾燥・予備加熱する方式を採用しているが、これ以外の公知の方式によってクリーニングを行ってもよい。例えば、ゼンジマ方式(直火式の酸化炉中にて鋼板を加熱し、鋼板表面に付着した圧延油を焼却した後に、還元帯にて水素雰囲気化の加熱焼なましを行い、わずかに酸化された鋼板表面を還元し、冷却する方式)、無酸化炉方式(前記センジマ方式の酸化炉を無酸化炉に置き換えた方式)、U.S.スチール方式(アルカリ電解クリーニング装置によって鋼板表面に付着した圧延油を除去した後、更に酸洗を行う方式)等、公知の方式を適用してもよい。また、適当なタイミングで、鋼板の酸洗いや水洗いを行ってもよい。
【0065】
続いて、本発明の特徴的部分である、内面用溶融金属めっき装置A5の構成について説明する。
図14(a)は、本最良形態に係る内面用溶融金属めっき装置A5のX−X’断面概略図であり、
図14(b)は、内面用溶融金属めっき装置A5の概念側面図である。本最良形態に係る内面用溶融金属めっき装置A5は、溶融金属を注ぎかけ部内に供給するための溶融金属ポンプ550と、前記溶融金属ポンプから送られてきた溶融金属を帯鋼に注ぎかけてめっき処理するための注ぎかけ部501と、前記帯鋼の背面をサポートして帯鋼の撓みを防止するためのサポート部502と、前記注ぎかけ部より注ぎかけられた余分な溶融金属を除去するための内面ワイピング部503(例えば、不活性ガス又はエアーワイパー等のブローオフ装置)と、前記注ぎかけ部とワイピング部の相対的な位置関係を調整可能にするための可動部504(スライドベースフレーム)と、を有する。可動部504の構造については、後ほど詳細に説明する。ここで、溶融金属ポンプ550は、溶融金属を汲み上げるためのインペラーを収納しているインペラーケース551と、ポンプモーターの回転駆動力を前記インペラーケース内に収納されているインペラーに伝達するためのインペラーシャフト552と、溶融金属を汲み取るための動力源となるポンプモーター553と、前記インペラーケースより送られた溶融金属を吐き出す溶融金属吐出口554と、を有する。ここで、注ぎかけ部501の詳細な構造を説明する。
図15の概略図に示すように、注ぎかけ部501は、特に限定されないが、例えば、箱体501aと、その底部に形成された複数の溶融金属注ぎかけ孔501bとを有する。尚、ここで、溶融金属浸漬長さは、ラインの最も上流に位置する注ぎかけ孔からワイピング部503までの距離を意味する。ここで、ワイピング部503を可動にしてもよいが、特に亜鉛めっきをする場合など冷却槽を必要とする場合には、ワイピング部503の位置を冷却槽までの距離を一定とするために固定することが好適である。
【0066】
上述のように、本発明に係る溶融金属めっき炉100は、内面用溶融金属めっき装置A5における溶融金属源(溶融金属ポンプ550へ供給される溶融金属の溶融金属源)として組み込めばよい。
【0067】
図16は、本最良形態に係る可動部の概略図を示した図である。可動部504は、ベースフレーム50401と、ポンプ本体ベース50402とを有する。尚、図示しないが、ポンプ本体ベースには、注ぎかけ部501と接続しており、当該部分を動かすことにより、注ぎかけ部が移動し、溶融金属浸漬長さを調整することが可能となる。ベースフレームは、一対のスライドベースフレーム50403と、前記スライドベースフレームの片側の略全面に設置されている後述するピニオンギヤと嵌合可能に形成されたラックギヤ50404と、前記スライドベースフレームの少なくとも一つに略等間隔で設置されている位置決めセンサーA50405とを有する。ポンプ本体ベースは、ポンプ本体50406と、天板50407と、前記天板の両側面に形成された側板50408とを有し、前記二つの側板に形成された、ポンプの重量を受けポンプ本体の移動を容易にするためのガイドローラー50409と、前記ラックギヤと嵌合可能に形成されている、駆動及び位置決めを行なうピニオンギヤ50410と、前記側板の少なくとも一方に形成されている位置決めセンサーB50411とを有する。また、ベースフレームの下部に、ベースフレーム支持体50412を有していてもよい。スライドベースフレーム50403に固定されたラックギヤ50404と、ピニオンギヤ50410の噛み合わせによりスリップなしで強力かつ確実な伝達で、あらかじめ設定された距離に配置された位置決めセンサーA50405まで移動可能に構成されている。ただし、移動方法は、前記方法に限定されず、例えば、電動モーターと変速機、又はサーボモーターなどにより、ピニオンギヤの回転数により、位置決めセンサー無しで移動距離を設定する方法もある。
【0068】
次に、本発明の特徴的部分である外面用溶融金属めっき装置A13の構成について説明する。ここで、外面用溶融金属めっき装置
A13は、
図17に示すユニットを複数有する(例えば4個)。
図17(a)は、本最良形態に係る外面用溶融金属めっき装置A13の一つのユニットに係るX−X’断面概略図であり、
図17(b)は、外面用溶融金属めっき装置A13の一つのユニットに係る概念側面図である。外面用溶融金属めっき装置A13は、溶融金属を浸漬部内に供給するための溶融金属ポンプ550と、前記溶融金属ポンプから送られてきた溶融金属を貯留し鋼管A9を通過させて溶融めっき処理を行なう浸漬部601と、前記浸漬部によりめっき処理される際に付着する余分な溶融金属を除去するためのワイピング部602(例えば、不活性ガス又はエアーワイパー等のブローオフ装置)と、を有する。ワイピング部については後ほど詳述する。更に、前記浸漬部を支えるための浸漬部サポート603を有していてもよい。尚、溶融金属ポンプ550の構成は、内面用溶融金属めっき装置A5のものと同様の構成であるので、同一記号を付して、説明を省略する。ここで、外面用溶融金属めっき装置にかかるユニットを並べた際の鋼管周囲の概略を
図18に示す。ここで、外面用溶融金属めっき装置A13は、各ユニットの浸漬部601が鋼管の進行方向に連続的に配置されている。また、各浸漬部の間の出口から入り口までの距離は、当該浸漬部の出入り口から流出する溶融金属により、鋼管が連続的に浸漬されている状態となる程度の距離であることが好ましい。前記浸漬部各浸漬部の下流にはそれぞれワイピング部602が設けられている。ワイピング部は、溶融金属が供給されている浸漬部の直後のもののみを動作させることができるように構成することが好適である。ワイピングにより溶融金属に浸された鋼管が冷却されてしまって、めっきの品質に影響があると考えられるためである。ここで、浸漬部と浸漬部の間に設けられているワイピング部602a〜cは、開環可動式ワイピング部602−1である。開環可動式ワイピング部602−1の構成を
図19に示す。開環可動式ワイピング部602−1は、鋼管の外周を包囲する環状部60201と、前記環状部の内側に形成された、前記鋼管に気体を吹き付けるための複数の気体噴出孔60202(図示しない)と、前記環状部を支えるための支持体60203とを有する。ここで、環状部60201は、当該環状部が半分に割れるような切込み60204を有し、前記支持体を互いに離隔する方向に動かすことにより前記鋼管から離れた位置に移動可能に形成されている。当該移動機構を有することにより、開環可動式ワイピング部を動作させないときには、浸漬部の出入り口から離れた位置に移動できるため、当該出入り口から流出する溶融亜鉛によって前記気体噴出孔が閉塞されない。このように、本発明に係る外面用溶融金属浸漬部は複数存在するので、溶融金属が供給される当該浸漬部の数を調節することにより、ラインの速度の変化にも対応して、溶融金属浸漬長さを調整することにより鋼管の外面のめっき合金層厚さを一定化させることが可能となる。尚、外面用溶融金属めっき装置A13は、同種の金属(例えば溶融亜鉛)をめっきする際に使用可能である。異種の金属を更にめっき(特殊めっき)する際には、これらの浸漬部に異種の金属を導入すればよい。また、外面用溶融金属めっき装置A13とは別に、当該外面用溶融金属めっき装置
A13の下流に、更に別の外面用溶融金属めっき装置(例えば同一構成)を設置してもよい。
【0069】
上述のように、本発明に係る溶融金属めっき炉100は、外面用溶融金属めっき装置A13における溶融金属源(溶融金属ポンプ550へ供給される溶融金属の溶融金属源)として組み込めばよい。
【0070】
次に、上記の製造ラインを用いた本発明の製造方法について説明する。まず、コイル状に巻回された鋼板がアンコイラーA2からライン下流に向かって連続的に供給される。続いて、ショットブラスト装置A3や、前処理装置A4により、所定の前処理が行なわれた後、供給された鋼板は、その片面について内面用溶融金属めっき装置A5により内面めっき処理を施される。内面めっき処理については、後ほど詳述する。続いて、冷却槽A6により片面めっきされた鋼板を冷却した後、鋼板はフォーミング装置A7に引き込まれるとともに管状に冷間成形されて、溶接装置A8により、鋼板の長手方向端面接合部が連続的に溶接されて、連続する一本の管状体A9が形成される。
【0071】
次に、管状体A9は、管状体A9の外面に沿う形状の刃物を取付けてなる切削装置A10に送られる。そして、管状体A9の外面に形成された溶接ビード部が切削装置A10の刃物によって削り落とされ、管状体A9の外面が滑らかに形成される。
【0072】
その後、管状体はフラックス塗布装置A11に送られて、管状体の外面に洗浄化及び酸化防止用のフラックス液が塗布される。管状体A9は予備加熱装置A12に送られ余熱され、その外面は乾燥される。
【0073】
その後、管状体は外面用溶融金属めっき装置A13に送られる。管状体A9は外面用溶融金属めっき装置A13において、ポンプアップされた溶融金属が満たされた浸漬部内にてドブ漬けされて、外面全体に溶融金属めっきされる。浸漬部内にてドブ漬けされた管状体A9は健全な合金層を有する溶融金属めっき層が形成され、ワイピング装置602において余分の溶融金属めっきが除去された後、溶融金属めっき鋼管となる。その後、冷却槽A14により冷却される。尚、外面溶融金属めっき処理については後ほど詳述する。
【0074】
そして、溶融金属めっき鋼管は、外径を規格寸法とするため、サイジング装置A15において冷間ロール加工される。本実施態様において、冷間ロール加工は溶融金属めっき層を周方向に比較的均一な厚さとするためにも必要な工程である。つまり、外面用溶融金属めっき装置によって形成された直後の溶融金属めっき層は周方向に不均一な厚さを有している場合でも、その後の冷間ロール加工等の工程を経ることにより溶融金属めっき層を比較的均一な厚さにならすことができる。このように、本最良形態においては、外面用溶融金属めっき装置による溶融金属めっき層の形成後に、例えば、冷間ロール加工等のサイジング加工等を行い、溶融金属めっき処理により形成された溶融金属めっき層を比較的均一な厚さにする工程(溶融金属層を形成した直後よりも厚さの分布を均一にする工程)が採用されることが望ましい。
【0075】
溶融金属めっき鋼管は、切断装置A16により、所定の長さに切断され、鋼管製品A17となる。
【0076】
ここで、内面めっき処理について詳述する。内面めっき処理は、内面用溶融金属めっき処理装置A5の注ぎかけ部501から帯鋼Bに注ぎかけられた溶融金属が、ワイピング部503にて除去される工程である。ここで、本発明では、溶融金属めっきをするに際して、溶融金属の浸漬時間が形成される合金層厚と比例関係にあることに着目した。しかし、当該連続ラインにおいて使用する内面めっき方法は、上から帯鋼に対して溶融金属注ぎかける方法によって行なわれる。ここで通常の意味での浸漬は行なわれないが、注ぎかけによって溶融金属が帯鋼上に載っている状態を浸漬しているものとして、注ぎかけ部とワイピング部の距離を溶融金属浸漬長さとして調整する。即ち、ライン速度を変化させなくても、注ぎかけ部501とワイピング部503との距離を変化させることにより、溶融金属の浸漬時間を調整することで、めっき合金層厚を調整することが可能となる。例えば、ライン速度が一時的に遅くなった場合には、注ぎかけ部501とワイピング部503の距離を短く調整することにより、めっき合金層厚を一定に保つことが可能となる。すなわち、めっき合金層厚を概ね一定とすることが出来るため、めっき層の割れ、剥がれといった問題が発生しにくくなる。
【0077】
また、本最良形態に係る方法において、めっき層厚を調整するためには、ワイピング部503から噴出させるエアー又はN
2ガス圧力の調整のみによって容易に行なうことが可能である。ところで、一般にめっき鋼板の製造に関して、いわゆるドブ付けめっきの場合、帯鋼を溶融金属ポットから垂直にかつ高速で立ち上げる。この際、粘性力により帯鋼に付随して持ち上げられる溶融金属をエアー又はN
2ガスワイピングにより付着量を調整する。通常このタイプのプロセスでは、めっき付着量を多くするには帯鋼の立ち上がるスピード、すなわち通板スピードを速くして持ち上げられる溶融金属の量を多くする必要がある。しかしながら、帯鋼にめっきをする為の加熱能力は設備能力として決まっているので、肉厚の厚い帯鋼になると通板スピードは遅くなる。よって持ち上げられる溶融金属も少なくなり、めっき付着量も多くすることは難しくなる。本最良形態に係る方法では、内面めっき工程は、帯鋼を垂直ではなく水平方向に通板させることにより持ち上げられる溶融金属の量に関係なく、また帯鋼の厚みに関係なく、エアー又はN
2ガスワイピング圧力により付着量をコントロールできる。
【0078】
尚、帯鋼を垂直方向に引き抜く従来の方式においては、重力の効果により自然と溶融金属が落下していと共に、更にワイピングを行うことで、容易にめっき層の薄膜化を行える場合があった。他方、水平方向に通板させる本方式の場合、そのような重力効果が得られないため、必要なワイピング量が多くなることから厚いめっき層が形成され易くなる(溶融金属の浸漬部からワイピングにかけて、めっき層が冷却・固化され易くなる)、といった場合があった(即ち、本方式の場合、厚いめっき層厚の範囲においては、めっき層厚の調整が容易であるが、薄いめっき層厚の範囲においては、めっき層厚の調製が困難である場合があった)。
【0079】
本方式のように水平方向に通板させる場合には、溶融金属の温度を予め設定することで、ワイピング部における溶融金属の冷却・固化を防止し(溶融金属を流れ易くし)、ワイピングされる量を多くすることで、めっき厚を薄くすることが可能となる。しかしながら、溶融金属の温度は、めっき層の合金層の反応にも関与し、溶融金属の温度を不必要に高くしてしまうと、金属の合金化がより早く進行するため、均一且つ高品質なめっき層が得難くなる。
【0080】
また、従来の溶融金属炉を本方式に組み込んだ場合には、溶融金属浴槽中の溶融金属の温度範囲が非常にバラつくために、適切にめっき反応を起こすための溶融金属の温度を保持しようとした場合には、溶融金属の温度が高くなり過ぎることがないよう、制御温度をある程度下げておく必要があった。そのため、従来の溶融金属炉を本方式に組み込んだ場合には、温度の設定によってめっき厚の薄膜化を行う、といった方法は採用し難い場合があった。
【0081】
しかしながら、本発明に係る溶融金属めっき炉を本方式に組み込んだ場合には、溶融金属の温度範囲がより高い範囲の望ましい範囲(過剰とならない程度の範囲)にて、溶融金属の温度を精密に制御することが出来る(例えば、めっき浴槽内の温度のばらつきを20℃以内に抑制出来る)。従って、本発明に係る溶融金属めっき炉を組み込むことで、本方式においても、ワイピング時に溶融金属が冷却・固化され難くし(溶融金属を流れ易くし)、ワイピング量を多くすることが可能となり、均一且つ薄膜化しためっき層の形成が容易となる。
【0082】
具体的には、本発明に係る溶融金属めっき炉を組み込んだ特定めっき実施部においては、水平方向に通板させる本方式においても、めっき層厚を、4μm以下とすることが容易となる。
【0083】
尚、このようなめっき層の薄膜化(制御温度の精密化による薄膜化)の効果は、本方式(水平方向に通板させる本方式)以外の方式(例えば、垂直方向に引き抜く従来の方式)においても得られるものである(即ち、より薄膜化しためっきを得ることが出来る)。
【0084】
続いて、外面めっき処理について詳述する。外面めっき処理においても、溶融金属浸漬長さが重要となる。外面めっき合金層厚の調整は、複数の外面用溶融金属めっき装置の内、得ようとするめっき合金層厚に対して必要な数だけ、浸漬部に溶融金属を満たすことで可能となる。また、このようにめっき合金層厚を調整することにより、ライン速度が変化した場合にも、外面のめっき合金層厚を一定に保つことが可能となる。
【0085】
尚、曲げ加工性の観点から合金層の厚さは、4μm以下が好適であり、3μm以下がより好適であり、2μm以下が更に好適である。この範囲の合金層の厚さとすることにより曲げ加工によってめっきの割れや剥がれが発生しにくくなる。尚、前記合金層の厚さに調整するためには、めっき工程における浸漬時間を1秒以下とすることが好適であり、0.3秒以下とすることがより好適であり、0.25秒以下が更に好適である。
【0086】
めっき実施部を特定めっき実施部としない場合において、合金層が1μmとなるように設定した場合の溶融金属浸漬長さとめっき速度との関係を
図20に示す。尚、ここでのめっき速度とは、単位分あたりの連続ラインにおいてめっきをする鋼管の長さであり、造管速度(ライン速度)と同じである。即ち、合金層の厚さを1μmに保ちたい場合には、ライン速度の変化に合わせて、
図20の関係を満足するように溶融金属浸漬長さを設定すればよい。
【0087】
このように、本形態に係る鋼管の製造システムにおいては、ライン速度を変化させた場合でも、溶融金属浸漬長さに着目することで、合金層の厚さを一定なものとしている。ここで、更に、めっき実施部を特定めっき実施部とすることにより、前述の通り、溶融金属の温度をより精密に制御することが出来るため、特定めっき実施部においては溶融金属の温度のバラつきの影響を受け難くなる。そのため、
図20に示されるような、溶融金属浸漬長さとめっき速度との関係を求める予備試験段階にて、合金層を特定の厚さとするための条件をより正確に求めることが可能となる(他方、溶融金属の温度がバラつく場合、正確なデータが取得し難い)。また、溶融金属の温度をより精密に制御することにより、予備試験にて得られた予備条件(特定の合金層厚さを得るための溶融金属浸漬長さとめっき速度との関係)に対する再現性が優れたものとなる(合金層の厚さに影響を与える溶融金属の温度バラつきの影響を抑え、予備条件に基づく目標厚さを達成し易くなる)。
【0088】
尚、本発明は上記の最良形態には限定されない。例えば、本最良形態では、内外面両面に溶融装置による溶融金属めっき層を形成したが、内面もしくは外面のみに溶融金属めっき装置による溶融金属めっき層を設けても構わない。
【0089】
また、外面めっき層の上面を合成樹脂等による保護被膜で被覆してもよい。このようにすれば、溶融金属めっき鋼管の防錆効果をより向上させることができる。
【0090】
更に、本最良形態において鋼管に施されるめっきとしては、特に限定されず、例えば、亜鉛が挙げられるが、必要に応じて他の金属を適用してもよい。また、本最良態様では、鋼板を使用することを前提に説明したが、本発明は他の金属板を使用することを前提にしても良い。このような金属板としては、例えば、銅テープ、アルミテープなどが考えられるがこれに限定されない。
【実施例】
【0091】
溶融金属めっき炉の温度のばらつきを調べるために以下に示す実験を行った。
(実施例1)
図8に示す、加熱装置10を備えた溶融金属めっき炉100を使用して、鉄釜101の内部の亜鉛浴槽内で亜鉛を溶融し、浴槽内中央部での制御温度を450℃とし、均熱時の亜鉛浴槽内(めっき浴槽)内の5箇所(a,b,c,d,e)で溶融亜鉛の温度を測定した(当該制御温度は、cを温度基準点として温度制御を行った)。この各箇所の測定温度における最小温度と最大温度をグラフにプロットした(
図10(a)に図示)。なお、この金属めっき炉の加熱装置10は、燃焼により生じた燃焼ガス分子が保有する運動エネルギーを衝突、振動させて熱エネルギーへ転化することができる特定の加熱方式を採用した加熱装置である。
【0092】
(比較例)
図9に示す金属めっき炉200を使用した以外は実施例と同様にして溶融亜鉛の温度を測定した。すなわち、鉄釜201の内部の亜鉛浴槽内で亜鉛を溶融し、制御温度450℃とし、均熱時の亜鉛浴槽内(めっき浴槽)内の5箇所(a,b,c,d,e)で溶融亜鉛の温度を測定した。この各箇所の測定温度における最小温度と最大温度をグラフにプロットした(
図10(b)に図示)。なお、この金属めっき炉の加熱装置210は従来のバーナーである。
【0093】
図10(a)および
図10(b)のグラフから明らかなように、制御温度450℃に対して、本発明の実施例では、最低温度と最高温度との差が16℃であり、5箇所の温度ばらつきが小さかった。一方、比較例では、最低温度と最高温度との差が30℃であり、また、5箇所の温度ばらつきが大きいことが分かった。すなわち、従来の加熱方式である従来バーナーを備えためっき炉と比較して、本発明の新規な加熱方式を採用した実施例のめっき炉では、温度制御性に優れており、浴槽内の溶融金属の温度均一性が高いことが分かった。
【0094】
また、実施例および比較例で示しためっき炉を使用して、亜鉛めっき製品を作製した。尚、めっき時の浴温は、450〜453℃の制御(浴槽中心部を温度基準点とする温度制御)とした。また、引き上げ速度は200mm/s、めっき時間は120sとした。その結果は、表1、表2及び
図11(写真1〜4)として示されるが、実施例のめっき製品は、浴槽内の位置によるめっき付着量の変動が少なく、また、合金層の厚さのばらつきが少ない傾向にあることが分かった。例えば、浴槽の中心部及び浴槽の壁面部でめっきを行っためっきサンプルのめっき厚さの平均差において、実施例のめっき製品においては0.47μmとなったのに対して、比較例のめっき製品においては50.95μmとなった(表1及び表2参照)。なお、写真1および写真2は本発明に係る特定の加熱方式を採用した加熱装置を具備するめっき炉を用いてめっき製品を作製した場合であり、写真1は浴槽の中央部近傍で、また、写真2は浴槽の壁面近傍でめっき処理を行っためっき製品の写真である。写真3及び写真4は従来バーナーを具備するめっき炉を用いてめっきを行った場合であり、写真3は浴槽の中央部近傍で、また、写真4は浴槽の壁面近傍でめっきを行って得られためっき製品の写真である。ここで、中心部、壁面部における実験条件の差を無くす為、めっき時に使用した治具としては、二つのサンプルを異なる箇所で同時にめっき可能なものを使用している。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
以上の結果から、以下のことが立証された。
すなわち、本発明に係る特定の加熱方式を採用した加熱装置を具備する溶融金属めっき炉は、めっき炉内の温度ばらつきが少なく、温度制御性に優れている。また、鉄釜内側の亜鉛との接触部の合金化が抑えられ、ドロスの発生を抑制することができる。これは、ドロス不純物低減によるめっき品質の向上に繋がり、また、定期的なドロス汲み上げ作業の削減にも繋がって作業効率の向上を実現できる。
【0098】
また、本発明の溶融金属めっき炉は、めっき炉内の温度差が小さいこと、また、釜への負担が少なく、釜外壁の酸化腐食の防止、釜内壁の合金化抑制に繋がるため、釜の長寿命化によるコストダウンが可能となる。
【0099】
さらにまた、本発明の溶融金属めっき炉は、めっき炉内の温度均一性が高いので、めっき反応の均一化につながり、めっき品質のばらつきを抑制することができる。これは、亜鉛めっき製品の作製によるめっき付着量の測定結果からも裏づけされる。
【解決手段】被めっき処理物に溶融金属めっきを施すめっき実施部を少なくとも一つ有し、めっき実施部A5,A13の少なくとも一つは、めっき浴槽と、めっき浴槽を加熱するための加熱装置を有する製造システムであり、前記加熱装置10は、燃焼室に沿った共通の燃焼領域へと燃料および空気を排出するように面する燃料充てん開口部の配列22および空気充てん開口部の配列24が形成されており、少なくとも一方の開口部配列の少なくとも大部分の開口部の開口部有効断面サイズを、媒体充てん開口部配列の程度を調節するための調節機構によって調節することができ、両方の開口部配列のサイズが調節可能である場合には、それらの配列の別個独立な調節が可能な加熱装置である。