特許第5669992号(P5669992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5669992石膏系建材、および、石膏系建材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5669992
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】石膏系建材、および、石膏系建材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/14 20060101AFI20150129BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20150129BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   C04B28/14
   C04B24/38 Z
   B28B1/30 101
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-535398(P2014-535398)
(86)(22)【出願日】2013年5月21日
(86)【国際出願番号】JP2013064125
(87)【国際公開番号】WO2014041854
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2014年8月21日
(31)【優先権主張番号】特願2012-200953(P2012-200953)
(32)【優先日】2012年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000160359
【氏名又は名称】吉野石膏株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】安宅 勇二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋介
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−271444(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/122599(WO,A1)
【文献】 特開2004−262232(JP,A)
【文献】 特開2009−513843(JP,A)
【文献】 特開2004−90396(JP,A)
【文献】 特開平08−310114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00−28/36
B28B 1/30
B28B 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼石膏と、尿素リン酸エステル化澱粉とを含む石膏組成物と、水とを混錬した後に硬化させた石膏硬化体を芯材とする石膏系建材。
【請求項2】
焼石膏と、尿素リン酸エステル化澱粉とを含む石膏組成物と、泡と、水とを混練した後に硬化させた石膏硬化体を芯材とする石膏系建材。
【請求項3】
前記石膏硬化体中に含まれる泡の直径の平均値は、100μm以上1000μm以下である請求項2に記載の石膏系建材。
【請求項4】
前記石膏組成物が、前記焼石膏100質量部に対して、前記尿素リン酸エステル化澱粉を0.2質量部以上10質量部以下の割合で含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載の石膏系建材。
【請求項5】
前記石膏硬化体の比重が0.4以上0.65以下である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の石膏系建材
【請求項6】
前記石膏系建材が板状である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の石膏系建材。
【請求項7】
前記石膏系建材が石膏ボードである請求項1乃至6のいずれか一項に記載の石膏系建材。
【請求項8】
焼石膏と、尿素リン酸エステル化澱粉とを含む石膏組成物と、水とを混練して石膏スラリーを調製する工程と、
該石膏スラリーに泡を添加する工程と、
表面材間に該石膏スラリーを配置する工程と、
該石膏スラリーを硬化させ石膏硬化体を芯材とする工程と、
を含む、石膏系建材の製造方法。
【請求項9】
前記石膏組成物が、前記焼石膏100質量部に対して、前記尿素リン酸エステル化澱粉を0.2質量部以上10質量部以下の割合で含む請求項8に記載の石膏系建材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏組成物、石膏スラリー、石膏硬化体、石膏系建材、石膏ボード、および、石膏系建材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から石膏ボード、強化石膏ボード、普通硬質石膏ボード、ガラスマット石膏ボード、ガラス繊維不織布入石膏板、スラグ石膏板等の石膏系建材は、防耐火性、遮音性、施工性及び経済性等の優れた性能を有することから広く用いられている。
【0003】
このような石膏系建材は、通常、焼石膏と種々の添加剤とを予め混合した石膏組成物に水等を加え、ミキサーで混練し石膏スラリー(石膏泥漿)とし、該石膏スラリーと、ボード用原紙、ガラスマットや、ガラス繊維不織布等とを、所定の形状に成型後、乾燥、裁断することにより製造される。
【0004】
石膏系建材は、主として芯材に用いている石膏の硬化体中の石膏量と泡空隙量によってその軽量性が左右される。このため、石膏量が減少、つまり、泡空隙量の占める割合が増加することにより、石膏系建材全体としての比重を低下させ、軽量化を図ることができる。
【0005】
しかしながら、石膏系建材を構成する石膏硬化体は、その比重が小さくなると物理的な強度が弱くなる。このため、石膏の硬化体を芯材として表面材にボード用原紙を使用した石膏ボードや、石膏の硬化体を芯材として表面材にガラスマットを使用した石膏板や、石膏の硬化体を芯材として表面にガラス繊維不織布(ガラスティッシュ)を埋没させた石膏板においても、芯材である石膏硬化体の比重をさげると、石膏ボードや石膏板の強度が弱くなる。
【0006】
特許文献1には、石膏組成物と水とを混練した石膏スラリーに泡を添加する際、添加した泡の径を大きく均一にし、形状を良好な球状にすることにより、比重の小さな石膏硬化体とした例が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された方法でも石膏硬化体の強度を十分に高くすることができていなかった。
【0008】
また、石膏硬化体の強度を向上させることを目的として、澱粉を配合することが研究されてきた。特にα化澱粉を用いることで、比重の小さな石膏硬化体の強度を大幅に向上させた例が特許文献2に開示されている。
【0009】
しかしながら、α化澱粉を用いると、比重の小さな石膏硬化体を作製する際に添加した泡は径の大きい泡と小さい泡が混在した状態となり、かつ、径の大きい泡は歪んだ状態となっていた。このように泡が歪んだ状態は、例えば石膏ボードにした際に表面のボード用原紙と石膏硬化体とが部分的に剥離する前兆として知られており、このような場合に石膏ボード表面に膨れが発生するという問題があった。
【0010】
また、α化澱粉を配合することで、石膏組成物を水で練る際に必要となる水量が大幅に増加し、石膏硬化体の乾燥コストが増大するという問題もあった。
【0011】
更に、α化澱粉の添加量を増加しても添加量が一定量以上では強度向上効果が頭打ちとなってしまい、特に軽量化と強度の両立を要する用途には十分に対応できないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平04−505601号公報
【特許文献2】特表2008−543705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、石膏スラリーとする際の水の添加量を大幅に増加させることなく、強度の高い石膏硬化体が得られる石膏組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため本発明は、焼石膏と、尿素リン酸エステル化澱粉とを含む石膏組成物と、水とを混錬した後に硬化させた石膏硬化体を芯材とする石膏系建材を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、石膏スラリーとする際の水の添加量を大幅に増加させることなく、強度の高い石膏硬化体が得られる石膏組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る第3の実施形態における石膏ボードの製造方法の説明図
図2】実験例2における澱粉の添加量と圧縮強度の関係
図3】実験例3における石膏ボード(試料No.3−3)の低比重部の石膏硬化体のSEM写真
図4】実験例3における石膏ボード(試料No.3−9)の低比重部の石膏硬化体のSEM写真
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[第1の実施形態]
本実施形態の石膏組成物および石膏スラリー(石膏泥漿)について説明する。
【0018】
本実施形態の石膏組成物は、焼石膏と、尿素リン酸エステル化澱粉とを含んでいる。
【0019】
また、本実施形態の石膏スラリー(石膏泥漿)は、上記石膏組成物と、水とを混練して得られる。
【0020】
焼石膏は硫酸カルシウム・1/2水和物ともいい、水硬性を有する無機組成物である。焼石膏としては、天然石膏、副産石膏及び排煙脱硫石膏等の単独若しくは混合した石膏を大気中で焼成して得られるβ型半水石膏、水中で焼成して得られるα型半水石膏の単独若しくはその混合品を使用することができる。なお、水中で焼成するとは、蒸気中で焼成する場合を含む。
【0021】
焼石膏と、尿素リン酸エステル化澱粉の混合比率は特に限定されるものではなく、該石膏組成物を用いて石膏硬化体とした場合に要求される強度等に応じて選択することができる。
【0022】
例えば、石膏組成物は、焼石膏100質量部に対して、尿素リン酸エステル化澱粉を0.2質量部以上10質量部以下の割合で含むことが好ましい。これは、尿素リン酸エステル化澱粉の割合が0.2質量部未満であると、十分な強度を発現することができない場合があるためである。また、尿素リン酸エステル化澱粉の割合が10質量部以下の範囲で十分な強度を発現することが可能であるため、尿素リン酸エステル化澱粉の割合が10質量部よりも多く含有させるとコストとの関係上好ましくない場合があるためである。
【0023】
また、石膏組成物は、焼石膏100質量部に対して、尿素リン酸エステル化澱粉を0.2質量部以上5質量部以下の割合で含むことがより好ましい。これは、尿素リン酸エステル化澱粉の割合が5質量部より多くなると、例えば12.5mm厚の石膏ボードとした場合にJIS A 6901に規定される発熱性1級の条件を満たさない場合があるためである。石膏組成物を石膏系建材として用いる場合においては、強度のみならず、不燃性もその性能として要求されることが多く、要求に応じてその添加量を選択することが好ましい。
【0024】
また、石膏組成物には焼石膏と尿素リン酸エステル化澱粉以外にも、接着性向上剤や、補強繊維及び軽量骨材、耐火材、凝結調整剤、減水剤、泡径調整剤等の各種添加剤を添加することもできる。
【0025】
そして、上記のように本実施形態で説明した石膏組成物と、水とを混練することにより石膏スラリー(石膏泥漿)とすることができる。石膏スラリーを製造する際、石膏組成物に添加する水の量は特に限定されるものではなく、要求される流動性等に応じて選択することができる。また、必要に応じて接着性向上剤等の各種添加剤や泡を添加することもできる。
【0026】
石膏組成物を水等と混練して石膏スラリー(石膏泥漿)にする際に必要となる水量は、尿素リン酸エステル化澱粉の含有の有無により大きく変化しない。このため、乾燥に必要な熱量についても尿素リン酸エステル化澱粉の含有の有無により大きな変化はなく、乾燥コストを増加させることなく強度の高い石膏硬化体を得ることができる。
【0027】
上記した石膏組成物に水、泡等を添加して混練、硬化させて石膏硬化体を製造した場合に、石膏組成物中に含まれる尿素リン酸エステル化澱粉は、石膏硬化体の強度を高める働きを有する。このため、該石膏組成物を用いて得られた石膏硬化体の強度を高めることができる。
【0028】
さらに、石膏組成物中に含まれる尿素リン酸エステル化澱粉は、石膏スラリー(石膏泥漿)に泡を添加した石膏硬化体を製造する際に、石膏スラリー中及び石膏硬化体中の泡の形状を保持する働きを有する。
【0029】
このため、直径が略均一な泡を添加することにより、石膏スラリー(石膏泥漿)中の泡は良好な球状であり、また、石膏硬化体中の泡の形状は良好な球状が保持され、その直径を略均一にすることができる。
【0030】
そして、石膏硬化体中の泡の形状が良好な球状であり、直径が略均一の場合、軽量化の効果に加えて、石膏硬化体の強度を高めることができる。
【0031】
また、尿素リン酸エステル化澱粉の添加量の増加に伴い、得られる石膏硬化体の強度も高くなる傾向を示す。このため、尿素リン酸エステル化澱粉の添加量を調整することにより、軽量化を図りつつも、高い強度を有する石膏硬化体とすることが可能になる。
【0032】
以上のように、本実施形態の石膏組成物によれば、尿素リン酸エステル化澱粉を含まない石膏組成物と比較して、水の添加量を大幅に増加させることなく目的の流動性を有する石膏スラリー(石膏泥漿)とすることができる。
【0033】
また、本実施形態の石膏組成物を用いて石膏硬化体を製造する場合に、石膏組成物中の尿素リン酸エステル化澱粉の働きにより、石膏硬化体の強度を高めることができる。
【0034】
さらに、石膏組成物中の尿素リン酸エステル化澱粉は石膏硬化体を製造する際に泡を添加する場合、添加する泡の形状を保持する働きを有している。このため、石膏硬化体中に含まれる泡の形状、サイズを良好に維持し、石膏硬化体の強度を高めることができる。
【0035】
従って、本実施形態の石膏組成物によれば、軽量化と高強度化を両立した石膏硬化体を得ることが可能になる。
[第2の実施形態]
本実施形態では、第1の実施形態で説明した石膏組成物を用いた石膏硬化体について説明する。
【0036】
本実施形態における石膏硬化体とは、第1の実施形態で説明した石膏組成物と、水とを混練した後に硬化させた石膏硬化体である。
【0037】
また、第1の実施形態で説明した石膏組成物と、泡と、水とを混練した後に硬化させた石膏硬化体としても良い。
【0038】
ここで泡とは、石膏系建築用ボードの品質を損なわない程度の微細な泡のことを意味している。
【0039】
泡を添加する際には予め発泡剤を水に添加し、空気を取り込みながら撹拌することで泡を形成する。そして、石膏組成物や水と泡とを混合することができる。または予め石膏組成物と水とを混合して石膏スラリー(石膏泥漿)を製造し、石膏スラリーに泡を添加することができる。泡を形成する際に使用する発泡剤としては特に限定されるものではなく、例えば、アルキル硫酸ソーダ、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩などが挙げられる。
【0040】
ここで、第1の実施形態で説明した石膏組成物と、水と、場合によっては泡とを混練し、石膏スラリー(石膏泥漿)とする際の石膏組成物、水、泡の混合比については特に限定されるものではない。石膏スラリー(石膏泥漿)に含まれる各成分の混合比は、石膏硬化体とした場合に要求される比重や、強度、または、石膏ボード等を製造する上で石膏スラリーに要求される流動性等を考慮して選択することができる。
【0041】
また、石膏スラリー(石膏泥漿)を製造する際に、上記した石膏組成物、水、泡以外にも、第1の実施形態でも述べたように接着性向上剤等の各種添加剤を添加することもできる。これらは、石膏スラリー(石膏泥漿)や石膏硬化体に対して要求される性能に応じて添加することができる。
【0042】
接着性向上剤としては、例えば酸化澱粉、ポバールなどの公知の物質を挙げることができる。
【0043】
その他の添加剤としては、各種減水剤、硬化調整剤、泡径調整剤、補強繊維及び軽量骨材等を挙げることができる。
【0044】
なお、各種添加剤のうち固体のものについては、石膏組成物中に予め添加しておくこともでき、液体のものについては、石膏組成物に添加する水中に予め添加しておくこともできる。
【0045】
このように石膏組成物と、水、場合によってはさらに泡を混練して得られた石膏スラリー(石膏泥漿)は所定の形状に成型された後に硬化させ、石膏硬化体とすることができる。
【0046】
得られる石膏硬化体の比重については、例えば石膏系建材とした場合に要求される重量等に応じて選択することができ、限定されるものではない。ただし、石膏硬化体の比重が小さいほど、石膏硬化体の強度が低くなるので、石膏硬化体の比重は0.4以上0.65以下であることが好ましい。また、石膏硬化体の比重が0.4以上0.55以下の場合、軽量化と高強度化の両立という本発明の効果がより顕著に得られるため特に好ましい。
【0047】
石膏硬化体の比重については、石膏スラリー(石膏泥漿)を製造する際に泡の添加量等を調整することにより、所望の比重とすることができる。
【0048】
石膏硬化体に泡を添加する場合、石膏硬化体中に含まれる泡のサイズは、特に限定されるものではない。ただし、石膏硬化体中に含まれる泡の直径の平均値は100μm以上1000μm以下であることが好ましい。石膏硬化体中に含まれる泡の直径の平均値が上記範囲にあることにより、石膏硬化体の強度は、泡を添加しない同比重の石膏硬化体よりも高くなるからである。
【0049】
また、石膏硬化体中に含まれる泡の直径の平均値は、200μm以上800μm以下であることがより好ましく、更には200μm以上600μm以下であることが特に好ましい。これは、前記泡の直径の平均値が上記範囲にあることにより、石膏硬化体の強度をさらに高くすることができるためである。
【0050】
石膏硬化体中に含まれる泡の直径を所望のサイズとする方法としては、発泡剤を起泡させる発泡機によって泡のサイズを選択する方法や、泡径調整剤により泡のサイズを制御する方法等が挙げられる。
【0051】
また、石膏硬化体中に含まれる泡の形状は、良好な球状であることが好ましい。
【0052】
これは、石膏硬化体中に含まれる泡の形状を良好な球状とすることにより、石膏硬化体の強度を高めることができるためである。
【0053】
さらに、石膏硬化体中に含まれる泡の形状は真球又は真球に近い形状であることがより好ましい。これは、石膏硬化体中に含まれる泡の形状が、真球または真球に近い形状である場合、石膏硬化体の強度をより高めることができるためである。
【0054】
第1の実施形態でも述べたように、石膏組成物に含有される尿素リン酸エステル化澱粉は、石膏硬化体の強度を高める働きと、添加した泡の形状を保持する働きを有する。
【0055】
このため、本実施形態で説明した石膏硬化体は尿素リン酸エステル化澱粉自身の働きにより、強度の高い石膏硬化体とすることができ、かつ、石膏スラリー(石膏泥漿)を製造する際に、少なくとも良好な球状の泡、より好ましくは真球又は真球に近い形状(略真球)の泡を添加した場合に、石膏硬化体中に含まれる泡の形状の働きにより石膏硬化体の強度をさらに高めることが可能である。
【0056】
そして、石膏組成物を水と混練して石膏スラリー(石膏泥漿)にする際に添加する水量は、尿素リン酸エステル化澱粉の含有の有無により大きく変化しない。このため、乾燥に必要な熱量についても尿素リン酸エステル化澱粉の含有の有無により大きな変化はなく、乾燥コストを増加させることなく強度の高い石膏硬化体を得ることができる。
【0057】
さらに、尿素リン酸エステル化澱粉の添加量の増加に伴い、得られる石膏硬化体の強度も高くなる傾向を示す。このため、尿素リン酸エステル化澱粉の添加量を調整することにより、軽量化を図りつつも、高い強度を有する石膏硬化体とすることが可能になる。
[第3の実施形態]
本実施形態では、第2の実施形態で説明した石膏硬化体を芯材とする石膏系建材について説明する。
【0058】
ここで、石膏系建材としては第2の実施形態で説明した石膏硬化体を芯材とするものであれば特に限定されるものではない。石膏系建材としては例えば、石膏ボード、ガラスマット石膏ボード、ガラス繊維不織布入石膏板、スラグ石膏板等の板状の石膏系建材やブロック状の石膏系建材等が挙げられる。
【0059】
石膏系建材は、例えば以下の各工程を含む製造方法により製造することができる。
【0060】
第1の実施形態で説明した石膏組成物と水とを混練して石膏スラリー(石膏泥漿)を調製する工程。この際、必要に応じて第2の実施形態で説明した各種添加剤を添加することもできる。
【0061】
そして、該石膏スラリーに泡を添加する工程。なお、石膏スラリーに泡を添加しない場合には本工程を行わないこともできる。また、泡を添加する場合であっても本工程を行わず、上述した石膏組成物と水とを混練する工程において泡もあわせて混練することもできる。
【0062】
さらに、それぞれの石膏系建材の態様に応じて成型、硬化させる工程。係る工程は、表面材間に上記石膏スラリー(石膏泥漿)を配置する工程と、該石膏スラリーを硬化させ石膏硬化体を芯材とする工程と、を含むことができる。例えば目的とする石膏系建材が石膏ボードの場合、ボード用原紙間に上記石膏スラリー(石膏泥漿)を配置する工程と、ボード用原紙間に配置した石膏スラリーを硬化する工程とすることができる。これにより、第2の実施形態で説明した石膏硬化体を芯材とする石膏ボードとすることができる。
【0063】
以下に、石膏系建材が石膏ボードの場合を例にその製造方法例をより具体的に説明する。
【0064】
図1は、石膏ボードを成型する装置を部分的且つ概略的に示す側面図である。
【0065】
図中右側から左側へと表面材であるボード用原紙(表面カバー原紙)11が、生産ラインに沿って搬送される。
【0066】
ミキサー12は、搬送ラインと関連する所定の位置、例えば、搬送ラインの上方または横に配置することができる。そして、単一のミキサー12において、第1の実施形態で説明した石膏組成物を水等と、場合によってはさらに、接着性向上剤、硬化調整剤、減水剤等の添加剤とを混練し、石膏スラリー(石膏泥漿)を製造する。また、泡を石膏スラリー(石膏泥漿)の分取口121、122、125より必要に応じて添加する。
【0067】
なお、図1では後述するように1台のミキサー12により低密度、高密度の石膏スラリーを製造しているが、2台のミキサーを、それぞれ、高密度及び低密度の石膏スラリーを供給するために設けてもよい。
【0068】
また、ここではミキサー12は高密度及び低密度の石膏スラリーを供給することができるように構成した例を示しているが、係る形態に限定されるものではない。例えば一種類の石膏スラリーを製造し、これをボード用原紙11上に供給する形態であっても良い。
【0069】
そして、得られた高密度の石膏スラリー13を、送出管123、124を通じて、ロールコーター15の搬送方向における上流側で表面カバー原紙11及び裏面カバー原紙16上に供給する。
【0070】
ここで、171、172及び173は、それぞれ、塗布ロール、受けロール、及び粕取りロールを示す。表面カバー原紙11及び裏面カバー原紙16上の石膏スラリーは、それぞれ、ロールコーター15の延展部に至り、延展部で延展される。高密度の石膏スラリー13の薄層と縁部領域との両方が、表面カバー原紙11上に形成される。また、同様に高密度の石膏スラリー13の薄層が、裏面カバー原紙16上に形成される。
【0071】
表面カバー原紙11は、そのまま搬送され、裏面カバー原紙16は、転向ローラ18によって表面カバー原紙11の搬送ライン方向に転向される。そして、表面カバー原紙11及び裏面カバー原紙16の両方は、成型機19に達する。ここで、各原紙11、16の上に形成された薄層の間に、ミキサー12から管路126を通じて低密度の石膏スラリー14が供給される。表面カバー原紙11、低密度の石膏スラリー14、裏面カバー原紙16からなる三層構造を有する連続的な積層体が形成され、その積層体は、硬化すると共に粗切断カッター(図示せず)に至る。粗切断カッターは、連続的な積層体を所定の長さの板状体に切断し、原紙で被覆された石膏を主体とする芯材からなる板状体、即ち、石膏ボードの半製品が形成される。粗切断された積層体は、更に、乾燥機(図示せず)を通過し、強制乾燥され、その後、所定の長さの製品に裁断される。このようにして石膏ボードの製品を製造することができる。
【0072】
以上に説明した石膏ボードの製造方法に限定されるものではなく、上記の様に例えば高密度石膏スラリーの薄層を形成する工程を省略し、1種類の石膏スラリーにより石膏ボードを製造する方法であってもよい。
【0073】
具体的には、連続して搬送される表面カバー原紙(ボード用原紙)上に石膏スラリー(石膏泥漿)を供給、堆積する。当該石膏スラリーを巻き込むように下紙をその両端縁部にそれぞれつけられた刻線に沿って織り込む。この際、石膏スラリーの層の上に同速で搬送される裏面カバー原紙(ボード用原紙)を重ねる。
【0074】
そして、石膏ボードの厚みと幅とを決定する成型機を通過させて成型する。
【0075】
以上の工程により所定の形状の石膏ボードに成型後、上述した石膏ボードの製造方法と同様に、粗切断工程、乾燥工程、裁断工程等を経ることにより目的とする石膏ボードを製造する方法とすることもできる。
【0076】
ここでは、石膏ボードを例に説明したが、表面材であるボード用原紙をガラス繊維不織布(ガラスティッシュ)や、ガラスマット等に変更し、これを表面に、若しくは表面近くに埋没させるように配置するなどして、各種石膏系建材を製造することができる。
【0077】
ここまで、第2の実施形態で説明した石膏硬化体を芯材とする石膏系建材、特に石膏ボード、及びその製造方法について説明した。
【0078】
係る石膏系建材及び石膏系建材の製造方法、特に石膏ボード及び石膏ボードの製造方法によれば、第2の実施形態で説明したように、原料である石膏組成物中に含まれる尿素リン酸エステル化澱粉の働きにより、その強度を高めることができる。
【0079】
また、芯材である石膏硬化体を製造する際、石膏スラリーに添加する泡の形状を良好な球状とすることにより、または、より好ましくは真球形状または真球に近い形状とすることにより、芯材である石膏硬化体の強度を高くできる。
【0080】
さらに、石膏系建材を製造する際に、石膏組成物を水と混練して石膏スラリー(石膏泥漿)にする場合に必要となる水量は、尿素リン酸エステル化澱粉の含有の有無により大きく変化しない。このため、石膏系建材を製造する際の乾燥工程で要する熱量も、尿素リン酸エステル化澱粉を含有することによる変化はない。従って、乾燥コストを増加させることなく、芯材となる強度の高い石膏硬化体を得ることができる。すなわち、乾燥コストを増加させることなく強度の高い石膏系建材を得ることができる。
【0081】
後述の様に尿素リン酸エステル化澱粉の添加量の増加に伴い、得られる石膏系建材の強度も高くなる傾向を示す。このため、尿素リン酸エステル化澱粉の添加量を調整することにより、軽量化を図りつつも、高強度の石膏硬化体が得られる。そして、該石膏硬化体を芯材として有しているため、石膏系建材についても軽量化と高強度を両立したものとすることが可能になる。
【実施例】
【0082】
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)評価方法
以下の実験例において製造した、石膏組成物、石膏スラリー(石膏泥漿)、石膏硬化体、石膏ボードの試験方法について説明する。
(1−1)フロー試験
石膏組成物と水との混練物である石膏スラリー(石膏泥漿)についてフロー試験を行った。
【0083】
フロー試験は直径8.5cm、高さ4cmの円筒を満たすまで石膏スラリー(石膏泥漿)を流し込み、前記円筒を垂直上向きに素早く持ち上げ、前記石膏スラリーの広がった直径を測定した。
(1−2)石膏硬化体の圧縮強度試験
オートグラフ(株式会社島津製作所製 型番:AG−10KNI)を用いて、作製した石膏硬化体の圧縮強度を測定した。測定の際、オートグラフの荷重速度は3mm/minとした。
(1−3)石膏ボードの圧縮強度試験
以下に示す条件で製造した石膏ボードの中央部を4cm×4cmにカットし、カットしたボードのピースを3枚重ねたものを試験体とした。
【0084】
測定の際の条件としては、(1−2)の試験と同様にして行った。具体的にはオートグラフ(株式会社島津製作所製 型番:AG−10KNI)を用いて、オートグラフの荷重速度を3mm/minとして測定を行った。
(1−4)石膏ボード中の泡形状の確認
石膏ボードの断面が平面となるよう断ち割り、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。
(1−5)発熱性試験
JIS A 6901:2009発熱性試験に準拠して行い、加熱時間20分における総発熱量と最高発熱速度について測定した。
【0085】
試験体は1辺の大きさが99mm±1mmの正方形とし、石膏ボード中央部より切り出した。試験体は、試験前に温度23℃±2℃、相対湿度50±5%で恒量となるように養生して行った。
(2)実験内容
以下に示す実験例1〜3を行い上述した評価方法により得られた試料について評価を行った。
(実験例1)
本実験例では、石膏組成物を用いた石膏スラリーのフロー値について検討を行った。
【0086】
各試料について表1及び表2に示した石膏組成物の組成になるように、焼石膏、尿素リン酸エステル化澱粉またはα化澱粉を混合し、石膏組成物を製造した。表中試料No.1−1〜1−5が実施例であり、試料No.1−6〜1−11が比較例である。
【0087】
焼石膏としては、石膏ボード用焼石膏を用いた。
【0088】
製造した各石膏組成物についてさらに、表1、2に示す組成になるように、水と混練することにより石膏スラリーを製造した。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
混練は、市販のブレンダー(SANYO製 型番:SM−R50)を用いて、石膏組成物投入後15秒間混練することにより行った。
【0091】
石膏スラリー製造後、上記した(1−1)フロー試験を行った。結果を表1にあわせて示す。尿素リン酸エステル化澱粉を使用した実施例である試料No.1−1〜1−5では、澱粉を添加していない試料No.1−6と比較して、フロー値の減少がない、若しくは少なく、良好なフロー値を示した。一方、α化澱粉を配合した比較例である試料No.1−7〜1−11は澱粉を添加していない試料No.1−6と比較してフロー値が大幅に減少し、特に比較例である試料No.1−10及び1−11では石膏スラリー(石膏泥漿)に流動性がなくなり、ブレンダーで混練することができなかった。
(実験例2)
本実験例では、各種組成の石膏硬化体を製造し、その評価を行った。
【0092】
表3及び表4に示す組成となるよう、焼石膏と尿素リン酸エステル化澱粉またはα化澱粉を所定の組成で含む石膏組成物に、水、硬化調整剤を混練して製造した石膏スラリーを、2cm角の型枠に入れて硬化させた。石膏スラリーが硬化したことを確認した後、脱型し、200℃に設定した乾燥機内で20分間乾燥後、40℃に設定した乾燥機内で恒量となるまで乾燥した。乾燥した石膏硬化体の比重は約0.5であった。
【0093】
表3、4中試料No.2−1〜2−5が実施例であり、試料No.2−6〜2−11が比較例である。
【0094】
そして、得られた各試料について上記(1−2)に示した圧縮強度試験を実施した。結果を表3、4に示す。
【0095】
尿素リン酸エステル化澱粉を使用した試料No.2−1〜2−5は、添加量に比例して圧縮強度も向上することが確認できた。一方、α化澱粉を使用した試料No.2−7〜2−11では、尿素リン酸エステル化澱粉を配合した時よりも強度向上が見られず、配合量が増えるほどその差が顕著となった。
【0096】
ここで、図2に上記試料No.2−1〜2−5、試料No.2−7〜2−11における澱粉の添加量と圧縮強度の関係を示す。これによると、高配合量(焼石膏に対して5%以上)の範囲においては、α化澱粉を用いた試験体では圧縮強度向上が頭打ち傾向にあるが、尿素リン酸エステル化澱粉を用いた試験体では本実験の範囲では圧縮強度は頭打ちになることなく、添加量に応じて圧縮強度が高くなることがわかる。即ち、必要とする圧縮強度に応じて尿素リン酸エステル化澱粉を添加することができることを意味する。
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
(実験例3)
本実験例では、各種組成の石膏硬化体を芯材として用いた石膏ボードを製造し、その評価を行った。
【0099】
表5及び表6に示した焼石膏と尿素リン酸エステル化澱粉またはα化澱粉を所定の組成で含む石膏組成物に、水、硬化調整剤、減水剤、接着性向上剤を混練して製造した石膏スラリーを用いて以下の手順により石膏ボードを製造した。表5、6中、試料No.3−1〜3−5が実施例であり、試料No.3−6〜3−11が比較例である。
【0100】
石膏ボードの製造工程について図1を用いて説明する。
【0101】
図1中右側から左側へとボード用原紙(表面カバー原紙)11が、生産ラインに沿って連続的に搬送する。
【0102】
ミキサー12は、図1に示すように搬送ラインの上方または横に配置され、単一のミキサー12において、上記した石膏組成物を表5、6に示す組成になる様に、水、接着性向上剤、硬化調整剤等の添加剤と混練し、石膏スラリー(石膏泥漿)を製造する。この際、低密度の石膏スラリーについては所望の比重になる様に泡を石膏スラリー(石膏泥漿)の分取口125より添加した。
【0103】
ミキサー12において、得られた高密度の石膏スラリー13を、分取口121、122を経由し、送出管123、124を通じて、ロールコーター15の搬送方向における上流側で表面カバー原紙11及び裏面カバー原紙16上に供給する。
【0104】
表面カバー原紙11及び裏面カバー原紙16上の石膏スラリーは、それぞれ、ロールコーター15の延展部に至り、延展部で延展される。高密度の石膏スラリー13の薄層と縁部領域との両方が、表面カバー原紙11上に形成される。また、同様に高密度の石膏スラリー13の薄層が、裏面カバー原紙16上に形成される。
【0105】
表面カバー原紙11は、そのまま搬送され、裏面カバー原紙16は、転向ローラ18によって表面カバー原紙11の搬送ライン方向に転向される。
【0106】
そして、表面カバー原紙11及び裏面カバー原紙16の両方は、成型機19に達する。ここで、各原紙11、16の上に形成された薄層の間に、ミキサー12から分取口125にて泡を添加し、管路126を通じて低密度の石膏スラリー14が供給される。表面カバー原紙11、低密度の石膏スラリー14、裏面カバー原紙16からなる三層構造を有する連続的な積層体が形成され、その積層体は、硬化すると共に粗切断カッター(図示せず)に至る。粗切断カッターは、連続的な積層体を所定の長さの板状体に切断し、原紙で被覆された石膏を主体とする芯材からなる板状体、即ち、石膏ボードの半製品が形成される。
【0107】
粗切断された積層体は、更に、乾燥機(図示せず)を通過し、強制乾燥され、その後、所定の長さの製品に裁断される。このようにして石膏ボードを製造した。
【0108】
上記製造工程において製造する石膏ボードの厚みは12.5mmになるように成型した。
【0109】
また、用いたボード用原紙は、表面カバー用紙、裏面カバー用紙いずれについても200g/mのものを用いた。石膏ボードの原料となる石膏スラリーは、表5、6に示すように、焼石膏100質量部に対して、練水70%、接着性向上剤0.5%、硬化調整剤1%、減水剤0.3%と尿素リン酸エステル化澱粉またはα化澱粉を所定量配合し、混練した。低密度の石膏スラリーについては比重が0.5となるようにさらに泡を添加した。
【0110】
そして、製造した石膏ボードの中央部から所定のサイズに切り出した石膏ボードのピースを用いて試験体を作製し、(1−3)〜(1−5)に記載した各試験を行った。尚、(1−4)石膏ボード中の泡形状の確認は尿素リン酸エステル化澱粉またはα化澱粉を3%添加した試料No.3−3、No.3−9の試験体について確認を行った。また、(1−5)発熱性試験は尿素リン酸エステル化澱粉を添加した試料No.3−1〜3−5の試験体について試験を行った。
【0111】
結果を表5、6に示す。尿素リン酸エステル化澱粉を用いて製造した石膏ボードのピースを用いた試料No.3−1〜3−5の試験体の圧縮強度は、同量のα化澱粉を用い製造した石膏ボードのピースを用いた試料No.3−6〜3−11の試験体の圧縮強度と比較して、高い強度となった。
【0112】
また、本実験例においても、高配合量(焼石膏に対して5%以上)の範囲においては、α化澱粉を用いた試験体では強度向上が頭打ち傾向にあるが、尿素リン酸エステル化澱粉を用いた試験体ではそのような傾向にはなかった。即ち、必要とする強度に応じて尿素リン酸エステル化澱粉を添加することができることを意味する。
【0113】
発熱性試験において、尿素リン酸エステル化澱粉を使用した試料No.3−1〜3−5の石膏ボードのうち、尿素リン酸エステル化澱粉の配合量が焼石膏100質量部に対して5.0質量部以下のときに、総発熱量が8.0MJ/m、最高発熱速度100kW/mとなり、比較的坪量の大きなボード用原紙を用いた場合においても、JIS A 6901に規定する発熱性1級の条件を満たした。
【0114】
試料No.3−3及びNo.3−9の石膏ボードの低比重部(低密度部)の石膏硬化体のSEM写真を図3図4に示す。図3が試料No.3−3についてのSEM写真、図4が試料No.3−9についてのSEM写真である。
【0115】
これによれば、尿素リン酸エステル化澱粉を配合した試料No.3−3は、略真球で略均一径の泡が保持されているのに対し、α化澱粉を配合した試料No.3−9は、歪んだ泡が存在し、径の大きな泡と小さな泡が混在している状態であり、石膏ボード表面に膨れが発生する可能性が高い危険な状態であった。
【0116】
【表5】
【0117】
【表6】
本国際出願は、2012年9月12日に出願した日本国特許出願2012−200953号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2012−200953号の全内容をここに本国際出願に援用する。
図1
図2
図3
図4