特許第5670045号(P5670045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5670045画像解析装置及び画像解析方法、画像解析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5670045
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】画像解析装置及び画像解析方法、画像解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
   A61B6/03 360D
   A61B6/03 360P
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2009-277238(P2009-277238)
(22)【出願日】2009年12月7日
(65)【公開番号】特開2011-115481(P2011-115481A)
(43)【公開日】2011年6月16日
【審査請求日】2012年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
(72)【発明者】
【氏名】後藤 良洋
【審査官】 南川 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−110341(JP,A)
【文献】 特開2008−126080(JP,A)
【文献】 特開2009−082407(JP,A)
【文献】 特開2006−034983(JP,A)
【文献】 特開2009−195561(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/057304(WO,A1)
【文献】 特開2004−174218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像診断装置により得られた被検体の画像より血管に付随するプラークを解析する画像解析装置であって、
前記画像から血液領域を抽出する抽出部と、
抽出された血液領域の芯線方向の各位置での断面内で血管の輪郭の一部を特定する特定部と、
特定された輪郭の一部を楕円または円形近似することにより各断面での血管の輪郭を近似する近似部と、
前記輪郭内で計測された画素値分布に基づいて、前記芯線方向の各位置でのプラークの成分分布を求めてグラフ化するグラフ作成部と、
前記グラフ作成部で作成されたグラフと、血管の走行方向に沿った断面の画像とを並列に表示する表示部を備えたことを特徴とする画像解析装置。
【請求項2】
医用画像診断装置により得られた被検体の画像より血管に付随するプラークを解析する画像解析方法であって、
前記画像から血液領域を抽出する抽出ステップと、
抽出された血液領域の芯線方向の各位置での断面内で血管の輪郭の一部を特定する特定ステップと、
特定された輪郭の一部を楕円または円形近似することにより各断面での血管の輪郭を近似する近似ステップと、
前記輪郭内で計測された画素値分布に基づいて前記芯線方向の各位置でのプラークの成分分布を求めて成分毎にグラフ化するグラフ作成ステップと、
前記グラフ作成ステップで作成されたグラフと、血管の走行方向に沿った断面の画像とを並列に表示する表示ステップを備えたことを特徴とする画像解析方法。
【請求項3】
コンピュータに、医用画像診断装置により得られた被検体の画像より血管に付随するプラークを解析させる画像解析プログラムであって、
前記画像から血液領域を抽出する抽出機能と、
抽出された血液領域の芯線方向の各位置での断面内で血管の輪郭の一部を特定する特定機能と、
特定された輪郭の一部を楕円または円形近似することにより各断面での血管の輪郭を近似する近似機能と、
前記輪郭内で計測された画素値分布に基づいて前記芯線方向の各位置でのプラークの成分分布を求めて成分毎にグラフ化するグラフ作成機能と、
前記グラフ作成機能で作成されたグラフと、血管の走行方向に沿った断面の画像とを並列に表示する表示機能を実行させることを特徴とする画像解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解析装置及びその方法及び画像解析プログラムに関し、特に、X線CT装置により生成した画像上で血管内等に見られるプラークの量を適切に見積もることが可能な画像解析装置及び方法、画像解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心筋梗塞は冠動脈壁に存在するプラークが破綻し、抹消の血管を閉塞することで発症するといわれている。また、プラークには、安定なものと不安定なものがあり、ソフトプラークと呼ばれるCT値の低いプラークが多い程、不安定であり破綻しやすいと言われている。
【0003】
ここで、ソフトプラークのCT値は約47Hounsfield単位(HU)以下であり、繊維性プラークのCT値は、約61HU以上であり、石灰化プラークのCT値は約126HU以上であると言われている。
【0004】
従って、X線CT装置により得られた画像に基づいて、所望の部位にどの程度それぞれの種類のプラークが存在するかを定量的に画像上での面積等を用いて示すことができれば、読影者はどの程度対象とする部位が不安定かを知ることができ、心筋梗塞の初期の段階を知ることができる。
【0005】
従来、プラークの成分を検出するための方法及びシステムに、特許文献1記載の技術が知られていた。特許文献1記載の従来技術では、多重エネルギー・コンピュータ断層(MECT)システムを用いて、高CT値分解能良くプラークの成分を検出していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2005-533564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、多重エネルギー断層システムがない施設では、特許文献1に記載された技術を適用できない。
本発明者は、多重エネルギー・コンピュータ断層システムでないシングルエネルギーのX線CT装置でも、プラークの成分を検出することが可能であることに気がつき、その具体的手法を発明した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、医用画像診断装置により得られた被検体の画像より血管に付随するプラークを解析する画像解析装置であって、画像から血液領域を抽出する抽出部と、抽出された血液領域の芯線方向の各位置での断面内で血管の輪郭の一部を特定する特定部と、特定された輪郭の一部を楕円または円形近似することにより各断面での血管の輪郭を近似する近似部と、輪郭内で計測された画素値分布に基づいて、芯線方向の各位置でのプラークの成分分布を求めてグラフ化するグラフ作成部と、グラフ作成部で作成されたグラフと、血管の走行方向に沿った断面の画像とを並列に表示する表示部を備えたことを特徴とする画像解析装置が提供される。
【0009】
また、医用画像診断装置により得られた被検体の画像より血管に付随するプラークを解析する画像解析方法であって、画像から血液領域を抽出する抽出ステップと、抽出された血液領域の芯線方向の各位置での断面内で血管の輪郭の一部を特定する特定ステップと、特定された輪郭の一部を楕円または円形近似することにより各断面での血管の輪郭を近似する近似ステップと、輪郭内で計測された画素値分布に基づいて芯線方向の各位置でのプラークの成分分布を求めて成分毎にグラフ化するグラフ作成ステップと、グラフ作成部で作成されたグラフと、血管の走行方向に沿った断面の画像とを並列に表示する表示ステップを備えたことを特徴とする画像解析方法が提供される。
【0010】
また、コンピュータに、医用画像診断装置により得られた被検体の画像より血管に付随するプラークを解析させる画像解析プログラムであって、画像から血液領域を抽出する抽出機能と、抽出された血液領域の芯線方向の各位置での断面内で血管の輪郭の一部を特定する特定機能と、特定された輪郭の一部を楕円または円形近似することにより各断面での血管の輪郭を近似する近似機能と、輪郭内で計測された画素値分布に基づいて芯線方向の各位置でのプラークの成分分布を求めて成分毎にグラフ化するグラフ作成機能と、グラフ作成部で作成されたグラフと、血管の走行方向に沿った断面の画像とを並列に表示する表示機能を実行させることを特徴とする画像解析プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、シングルエネルギーのX線CT装置でも、プラークの成分を検出し、その不安定度を定量的に把握できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を適用したX線CT装置1の全体構成図
図2】本発明の実施例1における表示画面を表す図
図3】本発明の実施例1におけるフローチャートを示す図
図4】CT値の分割数を変更する例を示す図
図5】本発明の実施例2におけるフローチャートを示す図
図6】本発明の実施例2における表示画面を表す図
図7図6におけるA−A‘断面、図6におけるB−B’断面を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0020】
本発明を適用してなるX線CT装置について図を用いて説明する。
図1は本発明を適用したX線CT装置1の全体構成図である。X線CT装置1はスキャンガントリ部100と操作卓120とを備える。
【0021】
スキャンガントリ部100は、X線管101と、回転円盤102と、コリメータ103と、X線検出器106と、データ収集装置107と、寝台105と、ガントリ制御装置108と、寝台制御装置109と、X線制御装置110と、を備えている。X線管101は寝台105上に載置された被検体にX線を照射する装置である。コリメータ103はX線管101から照射されるX線の放射範囲を制限する装置である。回転円盤102は、寝台105上に載置された被検体が入る開口部104を備えるとともに、X線管101とX線検出器106を搭載し、被検体の周囲を回転するものである。X線検出器106は、X線管101と対向配置され被検体を透過したX線を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測する装置であり、多数のX線検出素子を回転円盤102の回転方向に配列したもの、若しくは回転円盤102の回転方向と回転軸方向との2次元に配列したものである。データ収集装置107は、X線検出器106で検出されたX線量をデジタルデータとして収集する装置である。ガントリ制御装置108は回転円盤102の回転を制御する装置である。寝台制御装置109は、寝台105の上下前後動を制御する装置である。X線制御装置110はX線管101に入力される電力を制御する装置である。
【0022】
操作卓120は、入力装置121と、画像演算装置122と、表示装置125と、記憶装置123と、システム制御装置124とを備えている。入力装置121は、被検体氏名、検査日時、撮影条件などを入力するための装置であり、具体的にはキーボードやポインティングデバイスである。画像演算装置122は、データ収集装置107から送出される計測データを演算処理してCT画像再構成を行う装置である。表示装置125は、画像演算装置122で作成されたCT画像を表示する装置であり、具体的にはCRT(Cathode-Ray Tube)や液晶ディスプレイ等である。記憶装置123は、データ収集装置107で収集したデータ及び画像演算装置122で作成されたCT画像の画像データを記憶する装置であり、具体的にはHDD(Hard Disk Drive)等である。システム制御装置124は、これらの装置及びガントリ制御装置108と寝台制御装置109とX線制御装置110を制御する装置である。
【0023】
入力装置121から入力された撮影条件、特にX線管電圧やX線管電流などに基づきX線制御装置110がX線管101に入力される電力を制御することにより、X線管101は撮影条件に応じたX線を被検体に照射する。X線検出器106は、X線管101から照射され被検体を透過したX線を多数のX線検出素子で検出し、透過X線の分布を計測する。回転円盤102はガントリ制御装置108により制御され、入力装置121から入力された撮影条件、特に回転速度などに基づいて回転する。寝台105は寝台制御装置109によって制御され、入力装置121から入力された撮影条件、特にらせんピッチなどに基づいて動作する。
【0024】
X線管101からのX線照射とX線検出器106による透過X線分布の計測が回転円盤102の回転とともに繰り返されることにより、様々な角度からの投影データが取得される。取得された様々な角度からの投影データは画像演算装置122に送信される。画像演算装置122は送信された様々な角度からの投影データを逆投影処理することによりCT画像を再構成する。再構成して得られたCT画像は表示装置125に表示される。
【実施例1】
【0025】
本発明の実施例1について、図2の表示画面と図3のフローチャートを用い説明する。先ず図2の表示画面を説明する。図2において、21は心臓の一部の断面を表した画像であり、図の矢印の位置に、血管の弱くなった部分があることを示している。22は、血管の弱くなった部分の断面を示している。中央に、血管の弱くなった部分がぼんやりと写し出されていて、そこに、該血管の弱くなった部分の領域を曲線で囲みトレースした様子が示されている。図2の23は、ヒストグラムであり、22で曲線で囲んでトレースした範囲内の画素について、横軸をCT値としてヒストグラムを示したものである。このヒストグラムによれば、ソフトプラークあるいは血栓から繊維性プラーク、石灰化プラークまでどの程度の頻度で前記トレースした範囲内に画素(ピクセル)が存在するか、統計的に見ることができる。24はソフトプラークあるいは血栓、繊維性プラーク、石灰化プラークについて、どの程度の面積で画素が出現し、それらの割合がどれくらいを計測した表である。25はソフトプラークあるいは血栓と繊維性プラークの境界、繊維性プラークと石灰化プラークの境界を表すCT値のしきい値を入力するためのボックスである。26は、該しきい値をヒストグラム上に示したものである。次に、図3のフローチャートを用いて実施例1の手順を説明する。
【0026】
(ステップ1)
操作者は、21に表示中の画像上で、マウスを用いて、矢印を動かし、血管の弱くなった部分(プラークの存在する領域)を指定する。
【0027】
(ステップ2)
画像演算装置122は、21に表示中の画像とは別画面の22に、矢印で示した血管(プラークの存在する領域)の断面を表示する。
【0028】
(ステップ3)
操作者は、別画面の22に、マウスでトレースをして曲線を引き、ソフトプラークあるいは血栓と思われる領域を指定する。別画面22の曲線で囲った部分が、ソフトプラークあるいは血栓と思われる領域である。
【0029】
(ステップ4)
画像演算装置122は、ステップ3でトレースした領域内の範囲について、ヒストグラムを作成する。ヒストグラムを作成した結果は、23のようになる。
【0030】
(ステップ5)
操作者は、ボックス25を用い、血栓あるいはソフトプラークと、繊維性プラークとの境界となるべきCT値、繊維性プラークと石灰化プラークとの境界となるべきしきい値のCT値をボックス25に入力する。
【0031】
(ステップ6)
画像演算装置122は、血栓あるいはソフトプラーク、繊維性プラーク、石灰化プラークそれぞれについて、トレースされた領域内での画素のCT値の出現頻度を算出して表24でそれらの面積や割合を示す。
【0032】
上記実施例では、CT値の分割数が3の場合で例示したが、CT値の分割数が4つあっても良い。その場合は、図4に示す画面を表示して切り替えれば良い。図4は、分割数が4となるように設定する表示例であり、ソフトプラークと血栓を分けて分類することを可能とするよう設定する例である。
【0033】
本実施例によれば、心臓近傍の血管の血栓のありそうな位置の画素値について、CT値の出現頻度をヒストグラム化してCT値の出現頻度を表化したので、該位置に生成されたプラークの不安定度を評価することが可能となる。
【実施例2】
【0034】
次に本発明の実施例2について、図5のフローチャート及び図6の表示画面、図7を用いて説明する。
【0035】
(ステップ11)
操作者は、図2で21のような画像表示中に、マウス等で血管を指定する。
【0036】
(ステップ12)
画像演算装置122は、ステップ11における指定点付近で、CT値の低い領域をしきい値処理等により抽出して、血液領域を抽出して血管の輪郭の一部を特定する。
【0037】
(ステップ13)
画像演算装置122は、ステップ12で特定した血管の各位置でその断面を楕円(又は円形)で近似して、血管の輪郭のその他の部分を近似する。例えば、図6においてA−A‘断面では、ステップ12で抽出した血液領域は図7(a)で斜線で示された領域であるが、それを楕円で近似して太線Cのように血管の輪郭を近似する。また、図6においてB−B’断面のように血管の周囲全体にプラークが付着された位置では、プラークが付着されていない血管の芯線方向前後の血管の輪郭を用いて、補間する。例えばステップ12で抽出した血液領域は図7(b)で斜線で示された領域であるが、それを血管の芯線方向前後で補間して太線Dのように血管の輪郭を近似する。
【0038】
(ステップ14)
画像演算装置122は、血管の各位置で、楕円(又は円形)内の画素分布を計測する。計測した結果を一方の軸を血管の芯線とするグラフで表し、血管の断面とともに表示すると、図6のようになる。図6の右側で示したグラフでは、A−A‘、B−B’で示した位置の対応するプラークの成分分布は、グラフのすぐ右側に対応されるようになっている。図6において、31は血管の走行方向に沿った断面、32はソフトプラーク、33は繊維性プラーク、34は石灰化プラーク、35は断面内の画素分布を計測した結果を表すグラフであり、縦軸は各断面位置であり、プラーク全体36の面積、ソフトプラーク32の面積、繊維性プラーク33の面積、石灰化プラーク34の面積を繋ぎ合わせてグラフ化している。
【0039】
本実施例によれば、実施例1と比較して血管のいろいろな箇所についてソフトプラーク等の量を定量的に可視化して把握することができたので、より広範囲にわたってプラークの不安定な箇所を特定することができる。
【0040】
上記実施例では画像解析装置で説明したが、対応するステップを併せ持つ画像解析方法でも良く、対応する機能を併せ持つ画像解析プログラムに適用しても良いことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、X線CT装置又はその他の医用画像診断装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
21 心臓の一部の断面を表した画像、22 血管の弱くなった部分の断面、23 ヒストグラム、24 各種プラークの出現頻度を表す表、25 CT値のしきい値を入力するためのボックス、26 25で入力したしきい値をヒストグラム上に表したもの
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7