特許第5670046号(P5670046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5670046-交通信号システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5670046
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】交通信号システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/07 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
   G08G1/07 P
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2009-279468(P2009-279468)
(22)【出願日】2009年12月9日
(65)【公開番号】特開2011-123594(P2011-123594A)
(43)【公開日】2011年6月23日
【審査請求日】2012年12月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】松本 睦幸
【審査官】 島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−047894(JP,A)
【文献】 特開2008−071176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に設置される信号灯器の点灯制御を行う信号制御部と、前記信号制御部を含む各部材への電源の供給を行う電源部とを備えてなる信号制御装置と、
前記信号制御装置とは別に設けられ、充電装置により充電されるバッテリと、電源装置から供給される電力と前記バッテリから供給される電力とを切り換える切り換えユニットとを備えてなるバックアップ装置と、を備え、
前記切り換えユニットは、前記バッテリから電力が供給されている場合において前記信号灯器を閃光動作または調光動作させるための点灯制御用の信号としてバックアップ制御信号を前記信号制御装置の前記信号制御部に出力し、前記バックアップ制御信号の前記信号制御部への出力とは別に前記信号制御装置の前記電源部に電力を送り、
前記信号制御装置は、前記切り換えユニットから前記バックアップ制御信号が入力された場合に、前記信号灯器の通常の制御にえて前記バックアップ制御信号に基づく制御を行うことを特徴とする交通信号システム。
【請求項2】
前記バックアップ装置は、前記バッテリの残量を検出するバッテリ残量計測部を備えており、前記信号制御装置は、前記バッテリ残量計測部により計測されたバッテリ残量に応じたバックアップ制御信号に基づく制御を行うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の交通信号システム。
【請求項3】
前記バックアップ装置において、前記切り換えユニットは、前記バッテリから電力が供給されている間に、前記信号制御装置に前記バックアップ制御信号を出力するバックアップ制御部を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の交通信号システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は交通信号システムに係り、特に、停電などにより電源装置からの電力供給が停止された場合に、バックアップすることを可能とした交通信号システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、道路の交差点に設置された信号灯器の点灯制御を行う交通信号システムが用いられている。そして、このような交通信号システムは、信号制御装置を備えており、この信号制御装置から、各信号灯器に対して各色の点灯信号線を個別に接続することにより、点灯制御を行うようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、従来から、例えば、停電などにより、信号制御装置への電力供給が停止した場合に、交通信号システムが停止してしまうと、交通の混乱を招いてしまうことから、発動発電機を設置し、この発動発電機を用いて発電された電力供給に切り換えて信号灯器の点灯制御を行うようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−273096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の技術では、発動発電機を用いた場合、発動発電機による電力供給に切り換える際に、時間がかかるため、一時的に信号灯器が何も点灯していない滅灯状態が生じてしまい、安全な通行が妨げられてしまうという問題を有している。しかも、発動発電機による電力供給に切り換えられた際に、信号制御装置による制御も、例えば、全方向赤色点灯という初期動作になってしまい、円滑な信号制御を行うことができなくなってしまうという問題を有している。
【0006】
また、発動発電機は、かなり大型であるため、信号制御装置とは別個に発動発電機の設置スペースを確保する必要があり、また、燃料としてガソリンを用いるものであることから、一定期間ごとに所定の資格を有した人間による点検を行う必要があり、維持コストが極めて高くなってしまうという問題を有している。さらに、発動発電機は、ガソリンにより駆動されるエンジンを備えているため、動作音が大きく、周囲の環境にも好ましくないという問題を有している。
【0007】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、停電などが発生して電力供給を切り換える場合でも、安全に信号灯器の制御を行うことのできる交通信号システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係る交通信号システムは、交差点に設置される信号灯器の点灯制御を行う信号制御部と、前記信号制御部を含む各部材への電源の供給を行う電源部とを備えてなる信号制御装置と、
前記信号制御装置とは別に設けられ、充電装置により充電されるバッテリと、電源装置から供給される電力と前記バッテリから供給される電力とを切り換える切り換えユニットとを備えてなるバックアップ装置と、を備え、
前記切り換えユニットは、前記バッテリから電力が供給されている場合において前記信号灯器を閃光動作または調光動作させるための点灯制御用の信号としてバックアップ制御信号を前記信号制御装置の前記信号制御部に出力し、前記バックアップ制御信号の前記信号制御部への出力とは別に前記信号制御装置の前記電源部に電力を送り、
前記信号制御装置は、前記切り換えユニットから前記バックアップ制御信号が入力された場合に、前記信号灯器の通常の制御にえて前記バックアップ制御信号に基づく制御を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記バックアップ装置は、前記バッテリの残量を検出するバッテリ残量計測部を備えており、前記信号制御装置は、前記バッテリ残量計測部により計測されたバッテリ残量に応じたバックアップ制御信号に基づく制御を行うように構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2において、 前記バックアップ装置において、前記切り換えユニットは、前記バッテリから電力が供給されている間に、前記信号制御装置に前記バックアップ制御信号を出力するバックアップ制御部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、電源装置からの電力供給が停止したことを検出したら、切り換えユニットによりバッテリからの電力供給に切り換えるようにしているので、電力供給が途絶えてしまうことがなく、信号灯器が何も点灯していない滅灯状態が発生してしまうことを確実に防止することができ、安全な通行を確保することができる。また、バッテリによる電力供給に切り換えた場合に、切り換えユニットから出力されたバックアップ制御信号に基づいて信号灯器を制御するようにしているので、信号制御装置による制御が初期動作に切り替わってしまうことがなく、適正な信号制御を行うことができる。さらに、バックアップ用の電源としてバッテリを用いるようにしているので、従来の発動発電機と比較して、極めて小型となり、設置スペースも信号制御装置を設置している電柱などの空きスペースに設置することができる。しかも、発動発電機のように点検などが不要であり、騒音もなく、維持コストの低減を図ることができ、環境にも極めて好ましいものである。また、バックアップ制御信号を、信号灯器を閃光動作または調光動作させる制御信号としているので、バッテリの消費量を低減させることができ、長時間にわたってバッテリによる信号制御を行うことができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、信号制御装置により、バッテリ残量計に応じたバックアップ制御信号に基づく制御を行うようにしているので、信号制御装置による制御が初期動作に切り替わってしまうことがなく、バッテリの残量に応じた適正な信号制御を行うことができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、バックアップ装置の切り換えユニットに、バッテリから電力が供給されている間に、信号制御装置にバックアップ制御信号を出力するバックアップ制御部を設けるようにしているので、バックアップ制御部から出力されるバックアップ制御信号に基づいて適正な信号制御を行うことができる。



【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る交通信号システムの第1実施形態を示すブロック図である。
図2】本発明に係る交通信号システムの第2実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は本発明に係る交通信号システムの第1実施形態を示す概略図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態においては、交通信号システムは、信号制御装置1を備えており、信号制御装置1には、信号制御部2が設けられている。また、信号制御装置1には、信号制御部2からの制御信号に基づいて道路の交差点に設置され赤、青、黄などの点灯表示を行う信号灯器3の点灯制御を行う灯器開閉部4が設けられており、信号制御装置1には、各種配線の接続を行う接続部5および各部材への電源の供給を行う電源部6がそれぞれ設けられている。
【0020】
また、本実施形態においては、交通信号システムは、バックアップ装置7を備えており、バックアップ装置7には、商用ACの電源装置8が接続されている。バックアップ装置7には、電源装置8からの電力が供給される切り換えユニット9および充電器10がそれぞれ設けられており、充電器10には、この充電器10により充電が行われるバッテリ11が設けられている。なお、充電器10としては、例えば、リチウムイオンバッテリ11などが用いられる。さらに、バックアップ装置7には、バッテリ11から送られる直流の電力を交流の電力に変換して切り換えユニット9に出力するインバータユニット12が設けられている。
【0021】
そして、切り換えユニット9は、電源装置8から供給される電力を信号制御装置1の電源部6に送るように構成されている。そして、切り換えユニット9は、電源装置8から供給される電力の電圧値などを測定し、例えば、停電などにより電源装置8からの電力供給が停止されたことを検出した場合に、バッテリ11から供給される電力に切り換えて電源部6に供給するように構成されている。また、切り換えユニット9には、バックアップ制御部13が設けられており、本実施形態においては、インバータユニット12のバックアップ制御部13により、バッテリ11から電力が供給されている間は、電力消費を押さえるために、例えば、信号灯器3を黄色または赤色で点滅動作させる閃光動作や、信号灯器3の光量を低減させる調光動作をさせるためのバックアップ制御信号を出力するように構成されている。このバックアップ制御信号は、切り換えユニット9を介して信号制御装置1の信号制御部2に出力されるように構成されている。そして、信号制御装置1の信号制御部2は、バックアップ制御信号が入力されたら、信号灯器3の通常の制御に変えてバックアップ制御信号に基づく制御を行うように構成されている。
【0022】
なお、バックアップ制御信号は、バッテリ11による電力供給に切り換えられた直後に出力するようにしてもよいし、一定時間経過後に出力するようにしてもよい。また、閃光動作と調光動作とを同時に行うバックアップ制御信号を出力するようにしてもよいし、一定時間閃光動作のみあるいは調光動作のみを行うバックアップ制御信号を出力するようにしてもよい。このようにバッテリ11による電力供給に切り換えられた際に、どのようなバックアップ制御信号を出力させるか否かは、プログラムによりあらかじめ設定しておく。
【0023】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0024】
本実施形態においては、電源装置8からの電力供給がある場合には、電源装置8からの電力が信号制御装置1の電源部6を介して信号制御部2に供給される。そして、信号制御部2により所定のプログラムに基づいて灯器開閉部4に制御信号を出力し、信号灯器3の点灯制御を行うものである。
【0025】
また、停電などにより電源装置8からの電力供給が停止したことを検出したら、切り換えユニット9によりバッテリ11からの電力供給に切り換え、バッテリ11の電力を信号制御装置1の電源部6に送る。そして、バッテリ11による電力供給が行われている間、バックアップ制御部13から切り換えユニット9を介して信号制御部2にバックアップ制御信号を出力し、信号制御部2は、バックアップ制御信号に基づいて信号灯器3の点灯制御を行うようになっている。
【0026】
以上述べたように、本実施形態においては、電源装置8からの電力供給が停止したことを検出したら、切り換えユニット9によりバッテリ11からの電力供給に切り換えるようにしているので、電力供給が途絶えてしまうことがなく、信号灯器3が何も点灯していない滅灯状態が発生してしまうことを確実に防止することができ、安全な通行を確保することができる。また、バッテリ11による電力供給に切り換えた場合に、バックアップ制御部13によりバックアップ制御信号を出力し、バックアップ制御信号に基づいて信号灯器3を制御するようにしているので、信号制御装置1による制御が初期動作に切り替わってしまうことがなく、適正な信号制御を行うことができる。
【0027】
また、バックアップ用の電源としてバッテリ11を用いるようにしているので、従来の発動発電機と比較して、極めて小型となり、設置スペースも信号制御装置1を設置している電柱などの空きスペースに設置することができる。しかも、発動発電機のように点検などが不要であり、騒音もなく、維持コストの低減を図ることができ、環境にも極めて好ましいものである。
【0028】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0029】
本実施形態においては、図2に示すように、バックアップ装置7に、バッテリ11の残量を計測するバッテリ残量計測部14を設け、バックアップ制御部13は、バッテリ残量計測部14により計測されたバッテリ11の残量に応じて、バックアップ制御信号を出力するようにしたものである。すなわち、例えば、バッテリ11の残量が比較的多い場合には、バックアップ制御部13からバックアップ制御信号を出力せずに、信号制御部2による通常の信号制御を行い、バッテリ11の残量が少なくなってきたら、バックアップ制御信号による信号制御を行うなど、バッテリ11の残量に応じた信号制御を行うように構成されている。なお、バッテリ11の残量に応じてどのような制御を行うかは、プログラムによりあらかじめ設定しておく。
【0030】
本実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、電源装置8からの電力供給がある場合には、電源装置8からの電力が信号制御装置1の電源部6を介して信号制御部2に供給され、信号制御部2により所定のプログラムに基づいて灯器開閉部4に制御信号を出力し、信号灯器3の点灯制御を行うものである。
【0031】
また、停電などにより電源装置8からの電力供給が停止したことを検出したら、切り換えユニット9によりバッテリ11からの電力供給に切り換え、バッテリ11の電力を信号制御装置1の電源部6に送る。そして、バッテリ11による電力供給が行われている間、バッテリ11の残量に応じて信号制御部2による信号制御またはバックアップ制御信号による信号制御を行うようになっている。
【0032】
以上述べたように、本実施形態においても前記第1実施形態と同様に、電源装置8からの電力供給が停止したら、バッテリ11からの電力供給に切り換えるようにしているので、電力供給が途絶えてしまうことがなく、滅灯状態が発生してしまうことを確実に防止することができ、安全な通行を確保することができる。また、信号制御装置1による制御が初期動作に切り替わってしまうことがなく、バッテリ11の残量に応じた適正な信号制御を行うことができる。
【0033】
なお、前記各実施形態においては、バックアップ制御部13によりバックアップ制御信号を出力するようにしたが、バックアップ制御部13からは、バッテリ11による電力に切り換えられた旨の信号を信号制御部2に出力し、信号制御部2により灯器開閉部4にバックアップ制御信号を送るようにしてもよい。
【0034】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 信号制御装置
2 信号制御部
3 信号灯器
4 灯器開閉部
6 電源部
7 バックアップ装置
8 電源装置
9 切り換えユニット
10 充電器
11 バッテリ
12 インバータユニット
13 バックアップ制御部
14 バッテリ残量計
図1
図2