(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第一実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る純水製造システムについて説明する。
図1は、第一実施形態に係る純水製造システムの構成を概略的に示す模式図である。同図に示すように、純水製造システム10は、給水ライン2上に順に設置された軟水装置11、第一逆浸透膜装置(以下、「逆浸透膜装置」を「RO装置」とする)15、膜荷電が負である第二RO装置18、陽イオン交換装置19を備えている。
【0014】
軟水装置11は、イオン交換塔内にナトリウム型の陽イオン交換樹脂が収容されている。原水が供給ライン2から軟水装置11に供給されると、原水に含まれる硬度成分であるカルシウムイオン及びマグネシウムイオンが陽イオン交換樹脂のナトリウムイオンとイオン交換されて除去され、原水が軟水化される。つまり、第一RO装置15には、供給水として、軟水装置11で製造された軟水が提供される。
【0015】
第一RO装置15及び第二RO装置18は、RO膜モジュールを内蔵しており、図示しない加圧ポンプで供給水側を加圧することで水分子のみをRO膜を透過させ、RO膜によってイオンが除去される。すなわち、第一RO装置15及び第二RO装置18は、供給水をRO膜で膜分離処理し、供給水中のイオンが除去された透過水と、供給水中のイオンが濃縮された濃縮水を製造する。濃縮水は、適宜系外へ排出される。第二RO装置18には、第一RO装置15で製造された透過水が供給水として提供される。
【0016】
なお、第一RO装置15の膜荷電は、正でも負でも良い。正荷電膜とする場合には、限外ろ過膜(UF膜)の上に界面架橋のような方法で薄いスキン層が形成されたRO複合膜において、例えば、第四アンモニウム基等の陽イオン基を導入して膜表面を正に帯電させたものを用いれば良い。また、RO装置として負荷電膜を用いる場合には、上記RO複合膜において、例えば、カルボキシル基等の陰イオン基を導入して膜表面を負に帯電させたポリアミド系の負荷電膜を用いればよい。
【0017】
第二RO装置18は、例えばポリアミド系の負荷電膜である。なお、本実施形態で用いられるRO膜は、塩除去率が95%以上のものが望ましく、99%以上のものが更に望ましい。このような塩除去率を有するRO膜は、操作圧力により低圧RO膜、超低圧RO膜、極超低圧RO膜等に分類されることもあるが、いずれのタイプのRO膜を用いてもよい。
【0018】
陽イオン交換装置19は、弱酸性型の陽イオン交換樹脂を備えている。すなわち、陽イオン交換樹装置19は、第二RO装置18の負荷電と同符号の負の固定イオン(イオン交換基)を持つイオン交換体のみを有しており、第二RO装置18で製造された透過水中に含まれる陽イオンを除去する。
【0019】
以上、第一実施形態に係る純水製造システム10の構成について説明したが、純水製造システム10に供給された原水は、まず、軟水装置11において硬度成分が取り除かれる。続いて、一段目のRO装置である第一RO装置15では、供給水中のイオンを含む不純物が除去される。このとき、第一RO装置15への供給水(軟水)のイオン濃度は高いため、第一RO装置15の膜荷電による影響はほとんど出ない。
【0020】
一方、第一RO装置15の透過水のイオン濃度は極めて希薄となるため、二段目のRO装置である第二RO装置18では、RO膜の荷電(負)と異符号の陽イオンが透過し易くなり、第二RO装置18の透過水は陽イオンがリッチな水質となる。
【0021】
これに対して、最終段のRO装置である第二RO装置18のRO膜の荷電(負)と同符号の固定イオンを持つイオン交換体のみを有する陽イオン交換装置19を第二RO装置18の下流側に設置することで、第二RO装置18の透過水中に残留した陽イオンを除去し、高純度の純水を得ることができる。
【0022】
このように、本実施形態によれば、第一RO装置15によりいったんイオンを除去した透過水に対し、さらに、負荷電膜を有する第二RO装置18と、この最終段のRO装置のRO膜の荷電と異符号のイオンを吸着する陽イオン交換装置19とで処理することで、高純度の純水を得ることができる。また、このようなシステムは、従来のように混床式イオン交換装置を用いる場合と比較して、再生コストを大きく抑えることができる。
【0023】
なお、第一実施形態では、最終段のRO装置である第二RO装置18の上流側に設置するRO装置を第一RO装置15のみとしているが、さらにRO装置を設置して第二RO装置18の前側に複数のRO装置を多段に設置するようにしても良い。追加されるRO装置についても、第一RO装置15と同様に、その膜荷電は正負どちらでも良い。
【0024】
続いて、第一実施形態の変形例1について説明する。
図2は、変形例1に係る純水製造システムの構成を概略的に示す模式図である。同図に示すように、純水製造システム20は、給水ライン2上に設置された軟水装置11、第一RO装置15、膜荷電が正である第二RO装置28、陰イオン交換装置29を備えている。
【0025】
本変形例1において、上記第一実施形態と同じ構成については、同じ番号を付して説明を省略する。純水製造システム20は、その後段において、正荷電膜の第二RO装置28と、陰イオン交換装置29を備えている点で上記純水製造システム10と構成が異なる。
【0026】
陰イオン交換装置29は、弱アルカリ型の陰イオン交換樹脂を備えている。すなわち、陰イオン交換装置29は、第二RO装置28の正荷電と同符号の正の固定イオンを持つイオン交換体のみを有しており、第二RO装置18で製造された透過水中に含まれる陰イオンを除去する。
【0027】
第一RO装置15の透過水のイオン濃度は希薄であることから、供給水中の陽イオンは、第二RO装置28の正荷電のRO膜によって除去されるのに対して、陰イオンはRO膜を透過し易い。透過した陰イオンは、第二RO装置28のRO膜の荷電と異符号のイオンを吸着する陰イオン交換装置29によって除去される。
【0028】
このように、本変形例1においても、システムの最終段の第二RO装置28に対して、そのRO膜の荷電(正)と異符号のイオンを吸着する陰イオン交換装置29を設置しており、陽イオン及び陰イオン成分を良好に除去して、高純度の純水を低コストで生成することができる。
【0029】
(第二実施形態)
続いて、本発明の第二実施形態について説明する。
図3は、第二実施形態に係る純水製造システムの構成を概略的に示す模式図である。同図に示すように、純水製造システム30は、給水ライン2上に順に設置された軟水装置31、第一RO装置35、膜荷電が負である第二RO装置36、同じく膜荷電が負である第三RO装置38、陽イオン交換装置39を備えている。
【0030】
なお、第一RO装置35の膜荷電は、正でも負でも良く、軟水装置31、RO装置35,36,38、陽イオン交換装置39の構成は、上記第一実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。第二実施形態では、負荷電性のRO膜を有するRO装置36,38を連続で配置すると共に、それらの後段にRO膜の荷電(負)と異符号のイオンを吸着する陽イオン交換装置39を設置することを特徴としている。
【0031】
本実施形態において、第一RO装置35によってイオンが除去されイオン濃度が希薄になった透過水が負荷電性の第二RO装置36で処理されると、その透過水は負の膜荷電の影響によりアルカリ性になる。
【0032】
ここで、水中の炭酸成分の存在比率は、水のpHによって決まり、pHが6以下では溶存炭酸ガス(CO
2)の存在が支配的となり、pH6.5〜10では、炭酸水素イオン(HCO
3−)の存在が支配的となり、pH10.5以上では炭酸イオン(CO
32−)の存在が支配的となる。また、RO装置では、イオンである炭酸水素イオン及び炭酸イオンは除去できるが、溶存炭酸ガスは除去できない。よって、RO装置により炭酸成分を除去するためには、RO装置への供給水のpHを上昇させて炭酸成分をイオン化する必要がある。
【0033】
上述したように、第二RO装置36の処理水がアルカリ性となり、第三RO装置38への供給水に含まれる炭酸成分のイオン化が促進されると、膜荷電が負である第三RO装置38により効率良く炭酸成分を除去し、炭酸成分の除去率を向上させることができる。
【0034】
さらに、第三RO装置38の透過水は、負の膜荷電の影響により陽イオンがリッチな水質となるので、その後段に設置された陽イオン交換装置39により、残留する陽イオンが除去され、高純度の純水を得ることができる。
【0035】
以上、本実施形態によれば、上記第一実施形態と同様に、第一RO装置35によっていったん不純物を除去した透過水に対して、さらに負荷電膜の第二及び第三RO装置36,38と、この最終段のRO装置のRO膜の荷電(負)と異符号のイオンを吸着する陽イオン交換装置39とで処理することで、高純度の純水を得ることができる。
【0036】
さらに、本実施形態においては、第二RO装置36の負膜荷電の影響により透過水をアルカリ性にして、炭酸成分のイオン化を促進することで、脱炭酸効果をも奏しており、さらに高純度の純水を得ることができる。
【0037】
なお、炭酸成分をイオン化してより効果的に除去するためには、第三RO装置38への給水のpHを6.5以上に調整するように構成することが望ましく、より望ましくは溶存炭酸ガスがほぼ存在しなくなるようにpHを9以上に調整するように構成すると良い。
【0038】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
図4は、第三実施形態に係る純水製造システムの構成を概略的に示す模式図である。同図に示すように、純水製造システム40は、給水ライン2上に順に設置された軟水装置41、給水ライン2にアルカリを添加するためのアルカリ添加装置42、第一RO装置45、膜荷電が負である第二RO装置48、陽イオン交換装置49を備えている。
【0039】
第一RO装置45の膜荷電は、正でも負でも良く、軟水装置41、RO装置45,48、陽イオン交換装置49の構成は上記第一実施形態と同様であるため詳細な説明は省略する。第三実施形態では、第一RO装置45への給水にアルカリ添加装置42によりアルカリを添加することを特徴としている。
【0040】
アルカリ添加装置42は、給水ライン2を流れる水をアルカリ性にする装置であり、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を添加する装置や、OH型陰イオン交換樹脂を収容したイオン交換塔等を用いることができる。なお、上述したように、炭酸成分をイオン化してRO膜で効果的に除去するためには、アルカリ添加装置42により、pH6.5以上、さらに望ましくは、pH9以上に調整することが望ましい。
【0041】
本実施形態においては、第一RO装置45への供給水にアルカリを添加することにより、供給水に含まれる炭酸成分のイオン化を促進することができる。イオン化された炭酸成分は、イオン濃度が希薄になり膜荷電の影響が出てくる第二RO装置48によって効率的に除去することができる。
【0042】
さらに、第二RO装置48の透過水は、負の膜荷電の影響により陽イオンがリッチな水質となるので、その後段に設置された陽イオン交換装置49により、残留する陽イオンが除去され、高純度の純水を得ることができる。
【0043】
以上、本実施形態によれば、上記第一実施形態と同様に、第一RO装置45によっていったんイオンを除去した透過水に対して、さらに負荷電膜の第二RO装置48と、この最終段のRO装置のRO膜の荷電(負)と異符号のイオンを吸着する陽イオン交換装置49とで処理することで、高純度の純水を得ることができる。
【0044】
さらに、本実施形態においては、アルカリ添加装置42により、供給水をアルカリ性にして、炭酸成分のイオン化を促進することで、脱炭酸効果をも奏しており、さらに高純度の純水を得ることができる。
【0045】
続いて、第三実施形態の変形例2について説明する。
図5は、変形例2に係る純水製造システムの構成を概略的に示す模式図である。同図に示すように、純水製造システム50は、給水ライン2上に設置された軟水装置41、第一RO装置45、アルカリ添加装置42、第二RO装置48、陽イオン交換装置49を備えている。
【0046】
本変形例2は、
図4に示した第三実施形態と比較して、第一RO装置45とアルカリ添加装置42の設置位置が変更になっただけであるため、同じ構成には同じ番号を付して説明を省略する。
【0047】
本変形例2においても第二RO装置48への供給水にアルカリを添加することにより、供給水に含まれる炭酸成分のイオン化を促進することができ、上記第三実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0048】
(第四実施形態)
次に、本発明の第四実施形について説明する。
図6は、第四実施形態に係る純水製造システムの構成を概略的に示す模式図である。同図に示すように、純水製造システム60は、給水ライン2上に設置された軟水装置61、給水ライン2に酸を添加するための酸添加装置62、脱気装置63、第一RO装置65、膜荷電が負である第二RO装置68、陽イオン交換装置69を備えている。
【0049】
なお、第一RO装置65の膜荷電は正でも負でも良く、軟水装置61、RO装置65,68、陽イオン交換装置69の構成は、上記第一実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。第四実施形態では、第一RO装置65への供給水に酸添加装置62により酸を添加すると共に、脱気装置63で脱炭酸を行うことを特徴としている。
【0050】
酸添加装置62は、給水ライン2を流れる水を酸性にする装置であり、例えば、塩酸や硫酸を添加するための攪拌部材付きのpH調整槽を設置したり、給水ライン2に静止型混合器を設けると共にその上流側に酸注入口を設置したりすることで実現できる。
【0051】
ここで、上述したように、水中の炭酸成分の存在比率は、水が酸性化されてpHが6以下となると、溶存炭酸ガスの存在が支配的となる。したがって、後述するように、脱気装置63により溶存炭酸ガスを効率的に除去するためには、酸添加装置62による酸添加により脱気装置63への供給水のpHが6以下となるように構成することがより望ましい。
【0052】
脱気装置63は、供給水中の溶存気体を除去する装置であり、真空式脱気装置、窒素置換式脱気装置、膜式脱気装置等を用いることができる。
【0053】
本実施形態においては、酸添加装置62により酸を添加して軟水化された供給水を酸化することで、供給水中の炭酸成分の大部分が溶存炭酸ガスとなるので、脱気装置63によって脱気することで、供給水中の炭酸成分を効率的に脱炭酸することができる。
【0054】
また、供給水中に残っている炭酸成分は、第一RO装置65によって透過水のイオン濃度が希薄になると、イオン化が促進される。そして、このイオン化された炭酸成分は、負荷電膜の第二RO装置68によって除去されるため、本実施形態では、システム全体での炭酸成分の除去率を大きく向上させることができる。
【0055】
以上、本実施形態によれば、上記第一実施形態と同様に、第一RO装置65によっていったん不純物を除去した透過水に対して、さらに負荷電膜の第二RO装置68と、この最終段のRO装置のRO膜の荷電(負)と異符号のイオンを吸着する陽イオン交換装置69とで処理することで、高純度の純水を得ることができる。さらに、本実施形態では、第一RO装置65への供給水に酸を添加すると共に脱気処理を施すことで、炭酸成分の除去率を大きく向上させることができる。
【0056】
続いて、第四実施形態の変形例3について説明する。
図7は、変形例3に係る純水製造システムの構成を概略的に示す模式図である。同図に示すように、純水製造システム70は、給水ライン2上に設置された軟水装置61、第一RO装置65、酸添加装置62、脱気装置63、膜荷電が負である第二RO装置68、陽イオン交換装置69を備えている。
【0057】
本変形例3は、
図6に示した第四実施形態と比較して、第一RO装置65の設置位置が酸添加装置62の上流側に変更になっただけであるため、同じ構成には同じ番号を付して説明を省略する。
【0058】
本変形例3においても第二RO装置68への供給水に酸を添加すると共に脱気処理を施すことで、炭酸成分の除去率を大きく向上させることができ、上記第四実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0059】
以上、本発明の第一乃至第四実施形態について詳細に説明したが、本発明の実施形態は上述した形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上述した各装置の構成として、同様の機能を有する他の構成を採用できるのでは言うまでもない。