特許第5670088号(P5670088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和製罐株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5670088-ヒンジキャップ 図000002
  • 特許5670088-ヒンジキャップ 図000003
  • 特許5670088-ヒンジキャップ 図000004
  • 特許5670088-ヒンジキャップ 図000005
  • 特許5670088-ヒンジキャップ 図000006
  • 特許5670088-ヒンジキャップ 図000007
  • 特許5670088-ヒンジキャップ 図000008
  • 特許5670088-ヒンジキャップ 図000009
  • 特許5670088-ヒンジキャップ 図000010
  • 特許5670088-ヒンジキャップ 図000011
  • 特許5670088-ヒンジキャップ 図000012
  • 特許5670088-ヒンジキャップ 図000013
  • 特許5670088-ヒンジキャップ 図000014
  • 特許5670088-ヒンジキャップ 図000015
  • 特許5670088-ヒンジキャップ 図000016
  • 特許5670088-ヒンジキャップ 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5670088
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】ヒンジキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/48 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
   B65D41/48
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-88177(P2010-88177)
(22)【出願日】2010年4月6日
(65)【公開番号】特開2011-219110(P2011-219110A)
(43)【公開日】2011年11月4日
【審査請求日】2013年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】粟根 寿
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 明人
(72)【発明者】
【氏名】小▲柳▼ 朋彦
【審査官】 八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−110054(JP,U)
【文献】 実開昭58−3464(JP,U)
【文献】 実公昭58−45241(JP,Y2)
【文献】 特開2005−193941(JP,A)
【文献】 実開平5−34149(JP,U)
【文献】 特開2006−168765(JP,A)
【文献】 実開昭61−188942(JP,U)
【文献】 実開昭61−169049(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に形成されている首部に嵌合させられる円筒部と、
その円筒部の上端側の周縁部の一部に第1ヒンジ部を介して連結されて前記首部の先端に形成されている口部を封止する開閉部と、
その開閉部のうち前記円筒部の中心を挟んで前記第1ヒンジ部とは反対側の部分に形成された第1突片部を備えたヒンジキャップにおいて、
前記第1突片部に第2ヒンジ部を介して連結されかつ押し上げられることにより前記第2ヒンジ部で所定角度折り曲がって、前記第1突片部に開蓋力を作用させる折り返し指掛かり部と、
前記円筒部の円周方向における前記第1突片部の両側に、前記円筒部の軸線方向に形成されたスリット部と、
前記開閉部が前記口部を封止しているときに、前記首部の外周面から外側に突出して形成された環状の第1突起部に軸線方向で係合するように、前記開閉部の内周面のうち前記スリット部の間の部分に内側に突出して形成された第2突起部と
を備えていることを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項2】
前記開閉部は、第1易破断部によって前記円筒部に連結され、かつ前記折り返し指掛かり部は、前記第1易破断部よりも破断しやすい第2易破断部により前記円筒部に連結されていることを特徴とする請求項1に記載されたヒンジキャップ。
【請求項3】
前記折り返し指掛かり部の前記第2ヒンジ部より円筒部のリング部側でかつ前記第2ヒンジ部とヒンジキャップの下端部との間に指挿入用の開口部を備えていることを特徴とする請求項2に記載されたヒンジキャップ。
【請求項4】
前記第2易破断部は、前記折り返し指掛かり部を部分的に前記円筒部に連結する複数のブリッジ部からなり、いずれかの一つのブリッジ部が他のブリッジ部より長く形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載されたヒンジキャップ。
【請求項5】
前記折り返し指掛かり部は、前記円筒部に対しその上下方向に対し係止する係止部を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載されたヒンジキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、飲料、化粧品、トイレタリー、日用品、文具などの包装容器として、ボトル型缶、瓶、カップ、袋などの容器の口部に取り付けられ、特にヒンジを有し、そのヒンジとは反対側の部分を押し上げることにより開蓋させるキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料用ボトル型缶や瓶などの容器の首部に形成された雄ネジと、キャップの内周面に形成された雌ネジとによって、容器に嵌合させるネジ式キャップや、容器の首部に環状突起を形成し、キャップの内周面に突起を形成して、キャップを容器に押し込むことにより、キャップを容器に嵌合させる打栓式キャップが知られている。また、これらのキャップにヒンジを設け、そのヒンジとは反対側の部分に設けられた突片部を押し上げることにより、キャップを容器から取り外すことなく容器の口部を開閉できるヒンジキャップが知られている。
【0003】
これらのヒンジキャップには、開閉部と容器に固定された固定部との間にブリッジや係合片を設けることにより、既に開蓋操作をされたことを明示するいわゆるタンパーエビデント性を付与することも行われている。この種のヒンジキャップが特許文献1ないし3に記載されている。また、再封止する場合に開閉部をロックするために開閉部もしくは固定部に係止部と他方の部材に係止部の引っかかり部とを設けたキャップが知られている。この種のヒンジキャップが特許文献4ないし6に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−33965号公報
【特許文献2】特開2003−146354号公報
【特許文献3】特開平7−41028号公報
【特許文献4】実開昭63−147461号公報
【特許文献5】実開平4−1159号公報
【特許文献6】実開平5−35732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、ヒンジキャップは、上述したようにヒンジとは反対側に突片部を設け、その突片部を押し上げる構成とすることにより、キャップの開蓋性を向上させている。しかしながら、突片部を大きくするとキャップを容器に嵌合させる場合や商品の搬送の場合などに突片部を引っかけてしまう可能性がある。そのため、突片部を大きくすることができないので、この点で改良の余地がある。
【0006】
本発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、指の掛かりが良好なヒンジキャップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、容器に形成されている首部に嵌合させられる円筒部と、その円筒部の上端側の周縁部の一部に第1ヒンジ部を介して連結されて前記首部の先端に形成されている口部を封止する開閉部と、その開閉部のうち前記円筒部の中心を挟んで前記第1ヒンジ部とは反対側の部分に形成された第1突片部を備えたヒンジキャップにおいて、前記第1突片部に第2ヒンジ部を介して連結されかつ押し上げられることにより前記第2ヒンジ部で所定角度折り曲がって、前記第1突片部に開蓋力を作用させる折り返し指掛かり部と、前記円筒部の円周方向における前記第1突片部の両側に、前記円筒部の軸線方向に形成されたスリット部と、前記開閉部が前記口部を封止しているときに、前記首部の外周面から外側に突出して形成された環状の第1突起部に軸線方向で係合するように、前記開閉部の内周面のうち前記スリット部の間の部分に内側に突出して形成された第2突起部とを備えていることを特徴とするヒンジキャップである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明の構成に加えて、前記開閉部は、第1易破断部によって前記円筒部に連結され、かつ前記折り返し指掛かり部は、前記第1易破断部よりも破断しやすい第2易破断部により前記円筒部に連結されていることを特徴とするヒンジキャップである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明の構成に加えて、前記折り返し指掛かり部の前記第2ヒンジ部より円筒部のリング部側でかつ前記第2ヒンジ部とヒンジキャップの下端部との間に指挿入用の開口部を備えていることを特徴とするヒンジキャップである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2または請求項3の発明の構成に加えて、前記第2易破断部は、前記折り返し指掛かり部を部分的に前記円筒部に連結する複数のブリッジ部からなり、いずれかの一つのブリッジ部が他のブリッジ部より長く形成されていることを特徴とするヒンジキャップである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4の発明の構成に加えて、前記折り返し指掛かり部は、前記円筒部に対しその上下方向に対し係止する係止部を備えていることを特徴とするヒンジキャップである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のキャップは、容器の首部と嵌合させられる円筒部と、その円筒部の上端側に設けられた第1ヒンジ部を介して連結された開閉部と、円筒部の中心を挟んで反対側に設けられた第1突片部と設けており、さらにその第1突片部に第2ヒンジ部を介して折り返し指掛かり部が設けられている。したがって、その折り返し指掛かり部を押し上げることにより、折り返し指掛かり部が第2ヒンジ部を中心として所定角度回動する。したがって、折り返し指掛かり部が回動して、折り返し指掛かり部がキャップの外周側に突出するので、その突出した折り返し指掛かり部の内面を指で押すことができ、開蓋する際に指を掛けやすくなる。そして、さらに折り返し指掛かり部が押し上げられる方向へ力を作用させることにより、その力が第1突片部に開蓋力として作用する。また、折り返し指掛かり部を大きく形成することにより、開蓋させる場合に梃子の作用が大きくなる。要するに、開蓋するための力を小さくすることができる。また、キャップが閉じられている状態では、従来と比較して、キャップの外周方向に大きく突出した部材がなく、外観としても良い。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、開閉部と円筒部とを連結する第1易破断部と、折り返し指掛かり部と円筒部とを連結する第2易破断部とを備えている。また、第2易破断部は、第1易破断部より破断しやすい。したがって、折り返し指掛かり部を円筒部から破断させる力は、開蓋力より小さくできる。
【0014】
また、請求項3に記載された発明によれば、円筒部と折り返し指掛かり部との間に指挿入用の開口部を備えているので、折り返し指掛かり部に指をかけやすくなる。
【0015】
さらに、請求項4に記載された発明によれば、第2易破断部は、ブリッジ部で形成されていて、そのブリッジ部の少なくとも一つのブリッジ部が他のブリッジ部より長く形成されているので、一旦、キャップが開蓋されると長く形成された第2ブリッジ部が変形し、視覚的に開蓋されたことがわかる。
【0016】
そして、請求項5に記載された発明によれば、折り返し指掛かり部が上下方向に対し係止する係止部を備えているので、開閉部に上方向の力が不可避的に作用した場合でも、折り返し指掛かり部の係止部が円筒部と干渉し、容易に開蓋することはない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るキャップの一例を示す正面図である。
図2】そのキャップの側面図である。
図3】そのキャップの背面図である。
図4】本発明で対象とすることのできる容器の首部の一例を示す正面図である。
図5図2のV−V線に沿う矢視断面図である。
図6図2におけるVI−VI線に沿う矢視断面図である。
図7図1のVII-VII線に沿う矢視断面図である。
図8】折り返し指掛かり部が完全に回動した状態の図1のVII-VII線に沿う矢視断面図である。
図9】折り返し指掛かり部が完全に回動した状態を示す斜視図である。
図10】キャップを開く過程を示す斜視図である。
図11】キャップを完全に開いた状態を示す斜視図である。
図12】キャップを容器の首部に取り付けた状態の断面図である。
図13】本発明に係るキャップの他の例を示す正面図である。
図14】本発明に係るキャップの更に他の例を示す正面図である。
図15】そのキャップの側面図である。
図16】そのキャップを開く過程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに本発明を具体的に図を参照しつつ説明する。図1ないし図3は、この発明に係るヒンジキャップの一例を示したものであり、ヒンジキャップ1が容器2に嵌合された状態を示したものである。なお、図1は、ヒンジキャップ1の正面図、図2は右側面図、図3は背面図である。このヒンジキャップ1は、樹脂キャップであり、例えば、ポリエチレン、アイソタクティクポリプロピレン、エチレン−ポリプロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂や、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ABS樹脂あるいはポリカーボネート等の合成樹脂で成形されている。
【0019】
なお、本発明に係るヒンジキャップ1は、ヒンジキャップ1の内周面に成形された雌ネジと容器2の首部に成形された雄ネジとで嵌合するネジ式ヒンジキャップやヒンジキャップ1の上方から容器2に押し込んでヒンジキャップ1と容器2とを嵌合する打栓式ヒンジキャップのいずれでもよい。そして、この説明で挙げているヒンジキャップ1は、上述した打栓式のヒンジキャップ1であり、一度、容器2に嵌合されると、容器2が廃棄され再利用される場合以外では、取り外す必要がないので、いわゆる抜け止めされた状態で容器2の首部に嵌合されている。
【0020】
ここで首部の構造について説明すると、図4はその一例を示し、首部3は、容器の本体部4における上部に突出して形成された円筒状の部分であり、その上端部が開口して口部5となっている。また、その首部3の下端部すなわち本体部4に近い箇所に、フランジ部6が形成されている。このフランジ部6は、ヒンジキャップ1の下端部を突き当ててヒンジキャップ1の上下方向での位置を決める部分である。このフランジ部6よりも上側に第1突条部7と第2突条部8とが所定の間隔をあけて設けられている。これらの突条部7,8は、首部3を取り巻いた状態の環状突起であり、第1突条部7は、第2突条部8よりも大きく首部3から突出している。すなわち、第1突条部7の外径が、第2突条部8の外径より大きい。さらに、各突条部7,8の上面が、外周端側で下がっている傾斜面(あるいはテーパー面)となっているのに対して、各突条部7,8の下面は、首部3の中心軸線に垂直な平面にほぼ一致する水平面となっている。すなわち、各突条部7,8は抜け止め部として作用するように構成されている。
【0021】
そして、首部3の上端面すなわち口部5の輪郭部は、首部3の板厚より広い幅になっており、また角部は滑らかな曲面に形成されている。これは、ヒンジキャップ1によるシール性を確保するためであり、また唇が接触した場合の感触を良好にするためである。
【0022】
つぎにこの発明に係るヒンジキャップ1について説明する。ここで説明するヒンジキャップ1は、容器2にヒンジキャップ1を固定するための円筒部9と、容器2の口部5を開閉するための開閉部10とで構成されている。円筒部9は、図1ないし図3のように、前述した容器2のフランジ部6に載った状態に突き当てられたリング状のリング部9aと、容器2の首部3の壁面を覆うように形成された立ち上がり部9bとで構成されている。その立ち上がり部9bは、ヒンジキャップ1の中心線方向に沿ってリング部9aの上方に設けられていて、背面の高さは、容器2の口部5近傍まであり、その背面の上端には、図3に示すようにヒンジキャップ1の中心線を中心として左右両側に第1ヒンジ部11が設けられている。その円筒部9の上端縁9cは、図3における第1ヒンジ部11の左右から下方へ向けて螺旋状に形成されていて、その範囲は、ヒンジキャップ1の約1/4周に満たない狭い範囲である。そして、螺旋状の上端縁9cの下方部すなわち正面側からヒンジキャップ1の座面に対して平行に上端縁9dが形成され、さらに、後述する折り返し指掛かり部21の範囲を避けて、容器2の首部3を覆うように形成されている。また、前述した第1ヒンジ部11は、円筒部9や開閉部10と同じ材質であり、円筒部9および開閉部10と一体に形成されている。その第1ヒンジ部11は、開閉部10を回動させる場合に、折り返されるので、板厚は薄く形成されている。
【0023】
そして、その第1ヒンジ部11の他端には、開閉部10が連結されている。その開閉部10は、円盤状の上板部12とその上板部12の外周縁から垂下しているカバー部13とで構成されている。また、上板部12の内面すなわち容器2側には、容器2の口部5に密着して嵌合する円筒状のプラグ部12aと、容器2の首部3の上端部に密着する凸ビード12bとが備えられている。したがって、上板部12は、容器2の口部5を密封状態を維持することができる。なお、容器2とヒンジキャップ1とが嵌合している状態の断面図を図12に示す。
【0024】
また、カバー部13の左右の下端縁13aは、上述した立ち上がり部9bと連結されている。したがって、カバー部13の左右の下端縁13aは、立ち上がり部9bの螺旋状の上端縁9cと一致するように螺旋形状となっている。この螺旋状の連結部9c,13aには、V字溝にカットされたスコア線が設けられていて、開閉部10を開蓋する場合に、容易に破断するように構成されている。このスコア線の形状を図5に示してあり、この図は、図2のV−Vの断面を示している。なお、このヒンジキャップ1は金型で成形されるものであり、このスコア線を成形している成形型が図2における右方向に分割されるので、金型を分割する際に立ち上がり部9bと干渉し破損させないように、V字溝の立ち上がり部9b側に傾斜面Pが設けられている。また、螺旋状の下端縁13a以外の箇所すなわちヒンジキャップ1の座面に対して平行に形成された下端縁13bには、ヒンジキャップ1を貫通した複数の溝すなわちスリット14が設けられている。つまり、スリット14同士間には、細い第1ブリッジ部15(第1易破断部)が形成される。また、この第1ブリッジ部15は、図にあげる例では、円筒部9側がより細い形状となっていて、開閉部10を開蓋する場合に、円筒部9側が容易に破断するように構成されている。したがって、カバー部13と立ち上がり部9bとの連結部すなわち螺旋状の連結部13a,9cとヒンジキャップ1の座面に対して平行な連結部13b,9dとは、容易に破断するように連結されているので、ヒンジキャップ1を開蓋する場合に、円筒部9と開閉部10とが容易に分割される。なお、螺旋状の連結部9c,13bの下方端には、薄肉弱化部16が設けられ、さらに、薄肉弱化部16の近傍のスリット部14には、スリット幅が減る方向に段差部17が設けられている。これは、このヒンジキャップ1が打栓式キャップであるので、ヒンジキャップ1の上方から受ける打栓力により第1ブリッジ部15およびスコア線が破断しないように、薄肉弱化部16および段差部17を設けらることにより、応力集中や開閉部の撓み量を低減させるためのものである。図6は、この薄肉弱化部16を示したものであり、図2におけるVI−VIの断面を示している。
【0025】
さらにカバー部13の正面の中央部には、第1突片部18とその第1突片部18の左右には、図における上方へ向けて縦スリット19が設けられている。この第1突片部18は、後述する折り返し指掛かり部21の回動の上限位置を決める機能を有し、また、縦スリット19は、折り返し指掛かり部21による、押し上げ方向の力を受けた場合に、この縦スリット19同士の間の部分を撓ませ、容易に開蓋させる機能を有している。
【0026】
そして、この縦スリット19間の幅と同一幅に、かつ第1突片部の下端縁に第2ヒンジ部20を介して折り返し指掛かり部21が設けられ、その折り返し指掛かり部21の下方には第2突片部22が設けられている。また、折り返し指掛かり部21のそれぞれの縁すなわち下端縁21aと左右端縁21b,21cとは、前述した円筒部9の立ち上がり部9bと連結されている。この折り返し指掛かり部21は、要するに第2突片部22を押し上げて、第2ヒンジ部20を中心として折り返し指掛かり部21を回動させて、その回動された折り返し指掛かり部21を押し上げることにより開閉部10を開蓋する。つまり、折り返し指掛かり部21は、開蓋する場合に指を掛けやすくするために設けられている。また、折り返し指掛かり部21が回動して、その回動した折り返し指掛かり部21を押し上げて開蓋するので、モーメント力が作用し易くなる。要するに小さな力で開蓋することができる。なお、図7および図8図1におけるVII-VII断面を示す。図7は、折り返し指掛かり部21を回動させていない状態、図8は、折り返し指掛かり部21を完全に回動させた状態を示している。この図における薄肉弱化部が図2における第2ヒンジ部20に相当している。その薄肉弱化部の板厚を折り返し指掛かり部21およびカバー部13の板厚の30〜95%に設定し、薄肉弱化部の長さを折り返し指掛かり部21およびカバー部13の板厚の0.3〜2.0倍に設定すると、折り返し指掛かり部21の回動角度が90度となり、折り返し指掛かり部21を回動させた状態で指が掛けやすくなる。また、薄肉弱化部の厚さあるいは長さが折り返し指掛かり部21の板厚の30%未満および/又は2.0倍を越えると折り返し指掛かり部21から伝わる回動力に対して薄肉弱化部の曲げ弾性力が相対的に小さくなりすぎて薄肉弱化部に伝達する回動力が弱くなるとともに、折り返し指掛かり部21の回動角度が90度を超えるため指が掛けにくくなる。さらに、95%を越える及び/又は0.3倍未満であると折り返し指掛かり部21から伝わる回動力に対して薄肉弱化部の曲げ弾性力が相対的に大きくなり、折り返し指掛かり部21の回動角度が90度未満となるため指が掛けにくくなる。
【0027】
したがって、折り返し指掛かり部21は、指で押し上げられて立ち上がり部9bと容易に破断もしくは剥離できなければならないので、折り返し指掛かり部21と立ち上がり部9bとの連結部には、複数のスリットを設けている。図1にあげる例では、スリット14により区分された第2ブリッジ部23(第2易破断部)が折り返し指掛かり部21の左右縁21b,21cに一つずつ、下端縁21aの左右に一つずつ設けられている。さらに、第2ブリッジ部23を設けることにより、打栓時の開閉部10にかかる打栓力を第1ブリッジ15のみが受けるのではなく、第2ブリッジ23も受けることができるので、それぞれのブリッジ部15,23の剛性を下げることができる。そのため、第1ブリッジ15の剛性を下げることができるので、開蓋をする場合に要する力を低減することができる。なお、折り返し指掛かり部21の下端縁21aと立ち上がり部9bとの間に指差し込み部24が形成されている。この指差し込み部24は、折り返し指掛かり部21を押し上げる際に、指が折り返し指掛かり部21に掛けやすくするためである。
【0028】
なお、図9ないし図11は、ヒンジキャップ1が開蓋されるそれぞれの過程の状態を示したものであり、図9は折り返し指掛かり部21が立ち上がり部9bから引き剥がされ、折り返し指掛かり部21が完全に回動した状態、図10は開閉部10が円筒部9から引き剥がされ、開閉部10が回動している過程の状態、図11は、開閉部10が完全に回動した状態を示している。
【0029】
つぎに容器2とヒンジキャップ1との嵌合状態について説明する。図12は、容器2とヒンジキャップ1とが嵌合した状態の断面を示している。なお、開閉部10の上板部12と容器2との嵌合については、上述したとおりである。まず、ヒンジキャップ1と容器2とが固定されている箇所すなわち図における下方部について説明すると、リング部9aの内面には、第1環状突起9eが形成されている。この第1環状突起9eは、上述した容器2の第1突状部7と係合するものである。したがって、ヒンジキャップ1の座面が容器2のフランジ部6に載る状態となる際に、第1突状部7と係合するように設定されている。また、立ち上がり部9bの上方には第2環状突起9fが形成されている。この第2環状突起9fは、容器2の第2突状部8と係合するためのものであり、ヒンジキャップ1の座面が容器2のフランジ部6に載る状態となる際に、第2突状部8と係合するように設定されている。したがって、第1環状突起9eおよび第2環状突起9fは、ヒンジキャップ1を容器2の首部3に固定するために設けられたものである。つぎに、カバー部13に設けられた第1突片部18の内面に突起13cが形成されている。この突起13cは、ヒンジキャップ1が容器2に取り付けられた状態で、容器2の第2突状部8と係合する高さに設定されている。したがって、開閉部10を閉じている状態では、開閉部10が不可避的に回動し難い。また、開閉部10が開蓋される場合には、カバー部13に設けられた第1突片部18が押し上げられて、縦スリット19間の部分は撓むので、この内面の突起部13cと首部3の第2突状部8とのラップ量が減り、開閉部10を開蓋することができる。
【0030】
なお、上述した構成例は、一旦ヒンジキャップ1を開蓋したことを明示するいわゆるタンパーエビデント性(以下、TE性と記す)は、各ブリッジ部15,23により示されている。このTE性をより効果的に明示する構成例を説明する。図13は、その構成例を示したものである。この構成例では、上述した構成例の折り返し指掛かり部21と折り返し指掛かり部21に連結された第2ブリッジ部23との形状を変化させたものである。まず、折り返し指掛かり部21は、下端部の幅を狭く形成されているので、立ち上がり部9bと折り返し指掛かり部21とのスリット14幅が上述した構成例のスリット14幅より広がる。そして、その広がったスリット14の部分に第3ブリッジ部25(第3易破断部)が形成される。なお、この第3ブリッジ部25の折り返し指掛かり部21側には、薄肉弱化部25aが形成され、第3ブリッジ部25と折り返し指掛かり部21とが破断する場合には、この薄肉弱化部25aで破断するように構成されている。したがって、一旦ヒンジキャップ1を開蓋させる操作を行うと、第3ブリッジ部25と折り返し指掛かり部21とが破断する過程で、折り返し指掛かり部21の回動方向に第3ブリッジ部25が曲がるので、視覚的に一旦開蓋されたことが識別できる。
【0031】
つぎに上述したヒンジキャップ1の他の構成例を説明する。図14および図15は、他の構成例を示したものであり、図14は正面図、図15は右側面図である。この構成例は、再栓する際に、折り返し指掛かり部21が不可避的に回動しないように、折り返し指掛かり部21にロック機構を設けたものである。この構成例の構造について説明すると、上述した構成例の折り返し指掛かり部21の形状を変化させ、それに伴い、円筒部9の立ち上がり部9bの形状を変化させたものである。まず、折り返し指掛かり部21は、下方部の幅を広くし、かつ、折り返し指掛かり部21の高さ方向の略中央部より下方の板厚を厚くさせる。そして、円筒部9の立ち上がり部9bは、折り返し指掛かり部21の幅が広がった箇所を避けるように、前面形状を変化させ、さらに、折り返し指掛かり部21の幅が広がった部分を囲う箇所の板厚を厚くさせる。言い換えれば、円筒部9の立ち上がり部9bの前面の開口部の形状は、逆T字形状となり、その開口部に折り返し指掛かり部21が収まっている状態となっている。このような形状とすることにより、ヒンジキャップ1が搬送時などにより不可避的に上方へ押し上げられた場合には、折り返し指掛かり部21の幅が広がった下方部と円筒部9の立ち上がり部9bとが干渉するので容易には開蓋しない。開蓋する場合とこのロック機構が作用する動作の違いは、開蓋する場合は、指で第2突片部22を押し上げるので、第2ヒンジ部20を回動支点としてキャップ1外周へ向けた方向に力が作用する。これに対し、キャップ1が上方に押し上げられた場合は、要するに図における上方向に力が作用するだけであり、回動する方向には作用しない。したがって、意図的に指で開蓋する場合は、折り返し指掛かり部の係止部21dと立ち上がり部9bとは干渉せずに開蓋することができる。なお、図16に折り返し指掛かり部を完全に回動させた状態を示す。
【0032】
本発明は、上述した構成例に限定されたものではない。例えば、上述した構成例の第2突片部22の内面に突起を設け、その突起と一致する容器2に第1突状部や第2突状部と同様の突起を設けて、第2突片部の不可避的な開閉を抑制することも可能である。要するに、本発明の特徴は、従来のヒンジキャップ1に、押し上げられ折り返されることにより指の掛かりを良好とし、ヒンジキャップを容易に開蓋させられるものである。
【符号の説明】
【0033】
1…キャップ、 2…容器、 3…首部、 4…本体部、 5…口部、 6…フランジ部、 7…第1突状部、 8…第2突状部、 9…円筒部、 9a…リング部、 9b…立ち上がり部、 9c,9d…円筒部の上端縁、 9e…第1環状突起、 9f…第2環状突起、 10…開閉部、 11…第1ヒンジ部、 12…上板部、 12a…プラグ部、 12b…凸ビード、 13…カバー部、 13a,13b…カバー部の下端縁、 13c…突起、 14…スリット、 15…第1ブリッジ部(第1易破断部)、 16…薄肉弱化部、 17…段差部、 18…第1突片部、 19…縦スリット、 20…第2ヒンジ部、 21…折り返し指掛かり部、 21a…折り返し指掛かり部の下端縁、 21b…折り返し指掛かり部の左端縁、 21c…折り返し指掛かり部の右端縁、 21d…折り返し指掛かり部の係止部 22…第2突片部、 23…第2ブリッジ部(第2易破断部)、 24…指差し込み部、25…第3ブリッジ部(第3易破断部)、 25a…第3ブリッジ部の薄肉弱化部、 P…傾斜面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16