特許第5670095号(P5670095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5670095
(24)【登録日】2014年12月26日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20150129BHJP
   F04D 23/00 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   F04D19/04 D
   F04D23/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-109860(P2010-109860)
(22)【出願日】2010年5月12日
(65)【公開番号】特開2010-265895(P2010-265895A)
(43)【公開日】2010年11月25日
【審査請求日】2013年1月18日
(31)【優先権主張番号】10 2009 021 642.1
(32)【優先日】2009年5月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】391043675
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100157440
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・ザックス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・シリノフ
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−9992(JP,A)
【文献】 特開平6−173880(JP,A)
【文献】 特開平10−196586(JP,A)
【文献】 特開昭61−210294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
F04D 23/00
F04D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス入口(2)、ガス出口(3)およびサイド・チャネル・ポンプ段(4)を備えた真空ポンプ(1)であって、前記サイド・チャネル・ポンプ段は、外周部(403)と半径方向又は軸方向に突出する羽根(402、402′;420;450)とを設けた回転運動させられる羽根車(400、400′)を含む、真空ポンプにおいて、
羽根が、互いに平行な平面として形成された、運動方向(407)に関する前部及び後部を有し、後部(405;425、426;453、454)の外側角部(408)に平面として形成された面取り部(406;416;456)を有すること
真空ポンプが、ガス入口の領域にホルベック・ポンプ段(5)を含み、前記サイド・チャネル・ポンプ段(4)の下流に別のサイド・チャネル・ポンプ段(6)を含むこと
を特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
羽根(420;450)が、半径方向に突出し、互いに連結された第1の羽根部分(421;451)および第2の羽根部分(422;452)を有し、各羽根部分(421、422;451、452)が、羽根の運動方向(407)と、90°より小さい角度(415;415′)を形成することを特徴とする請求項に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
第1および第2の羽根部分(421、422)が周方向にオフセットされることなく配置され、前記羽根(420;412)の間において羽根車(400)の周方向に中間ウェブ(430)が配置され、中間ウェブ高さ(431)は、羽根高さ(432)より小さく、羽根の運動方向(407)に減少することを特徴とする請求項に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
第1および第2の羽根部分(451、452)が、運動方向(407)において相互にオフセット配置され、各羽根部分(451、452)の後部は羽根車の中心線(460)を超えて伸長することを特徴とする請求項に記載の真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の真空ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、サイド・チャネル・ポンプ段を備えた真空ポンプが、例えばドイツ特許公開第19930952号から既知である。ここで提案された真空ポンプは、大気圧の容器を10−4mbarより小さい値まで真空にすることを可能にする。これは、複数のサイド・チャネル・ポンプ段を後方に設置することにより達成される。これらのサイド・チャネル・ポンプ段の各々は羽根車を有し、羽根車は、その外周部に、チャネル内において円運動を行う羽根を有している。
【0003】
従来技術から、さらに、より高い背圧に対して排出可能なように、1つのサイド・チャネル・ポンプ段を追加して設けたターボ分子ポンプが既知である。このような真空ポンプが、例えば欧州特許第1576292号に示されている。
【0004】
十分に良好なポンプ能力を達成させるために、一般に、複数の段と、および費用をかけて形成されたサイド・チャネル・ポンプ段の羽根車とが必要である。少なくとも少量生産においては、費用をかけて中実材料から製造されなければならない多数の羽根に多大な費用がかかることは明らかである。ポンプの排気速度および入口および出口間の圧力比のようなサイド・チャネル・ポンプ段の真空特性値は、羽根、チャネルおよび回転部分と固定部分との間の隙間などの形態の関数である。一般に、良好な真空特性値は製造コストを上昇させることになる。
【0005】
他方で、サイド・チャネル・ポンプのポンプ能動部品の製造コストを低く抑える必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ特許公開第19930952号
【特許文献2】欧州特許第1576292号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、真空ポンプのサイド・チャネル・ポンプ段が、改善された真空特性値と、同時に、ポンプ能動部品の簡単に製造可能な形状とを有する、真空ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を有する真空ポンプにより解決される。従属請求項2−は有利な変更態様を与える。
運動方向に関して後方に位置する後部の外側角部における面取り部は、真空特性値、特に圧力比を改善し、且つ多くの加工方法においてコスト的に有利に製造可能である。改善された圧力比は、真空ポンプ内の他の圧力範囲を包含可能にするために、少ないサイド・チャネル・ポンプ段を用いて作業することを可能にする。さらに、面取り部もまた、少量生産および中量生産において使用される、例えばフライス加工およびのこ引き加工のような加工方法でコスト的に有利に製造可能である。後部および面取り部が平面であるとき、製造はさらに容易となる。
【0009】
従属請求項の手段により、真空特性値のさらなる改善が達成可能である。これらの形態もまた、フライス加工およびのこ引き加工でコスト的に有利に製造可能である。図示の形状は、分子ポンプ段、例えばホルベック(Holweck)ポンプ段との組み合わせにおいて有利であることが観察された。本発明によるサイド・チャネル・ポンプ段および分子ポンプ段の作業範囲は有利な範囲内にあるので、全体として、良好に格付けされた真空ポンプが形成される。
【0010】
これらの変更態様の一実施例により本発明を詳細に説明し、且つそれらの利点を掘り下げることとする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、サイド・チャネル・ポンプ段を備えた真空ポンプの軸方向断面図を示す。
図2図2は、線I−I′による、サイド・チャネル・ポンプ段の軸中心線に直角な断面図を示す。
図3図3は、羽根車の代替形態を備えたサイド・チャネル・ポンプ段の断面図を示す。
図4図4は、線II−II′による、羽根車の代替形態を備えたサイド・チャネル・ポンプの断面図を示す。
図5図5は、面取り部を設けた羽根の斜視図を示す。
図6図6は、第1および第2の羽根を備えた羽根車を見た図を示す。
図7図7は、線III−III′による、第1および第2の羽根を備えた羽根車の断面図を示す。
図8図8は、本発明の一変更態様における、いくつかの羽根を備えた一部分を見た図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この実施例の真空ポンプ1は、ガス入口2およびガス出口3、およびハウジングを有している。ハウジングは4つのハウジング部分20、21、22および23から構成され、これらのハウジング部分は、真空ポンプの構成要素を包囲している。これらの構成要素を以下に説明する。
【0013】
ガス入口を通過して真空ポンプ内に流入したガスは、はじめに、分子ポンプ段5内に到達する。分子ポンプ段は、内部ねじ山溝507が設けられている内部ステータ505、および外部ねじ山溝508が設けられている外部ステータ506を有している。内部ステータと外部ステータとの間に、滑らかな表面を有するシリンダ502が設けられ、シリンダはロータ500と結合されている。したがって、分子ポンプ段はホルベック・ポンプ段として形成されている。図1に示されているホルベック・ポンプ段はステータ構造部分により包囲された第2のシリンダ502′と対称に形成され、したがって、複流で作動する。
【0014】
ロータは軸8と結合され、軸は転がり軸受10および11内において回転可能に支持されている。転がり軸受の代わりに、受動的および能動的磁気軸受が使用されてもよい。軸に少なくとも1つの永久磁石13が配置され、永久磁石は固定コイル12と協働し、且つ固定コイルと共に駆動装置7を形成している。転がり軸受10、駆動装置7および分子ポンプ段5はハウジング部分20および21内に配置されている。
【0015】
軸は、サイド・チャネル・ポンプ段4を含むハウジング部分22を貫通する。サイド・チャネル・ポンプ段はサイド・チャネル401および羽根車400から形成され、この場合、羽根車に少なくとも1つの羽根402が配置され、羽根はサイド・チャネル内において軸の回転により円運動を行い、これによりポンプ作用を発生する。ガスは移送チャネル24を通過して分子ポンプ段5からサイド・チャネル・ポンプ段内に到達し、且つ他の移送チャネル25を通過して排出される。
【0016】
サイド・チャネル・ポンプ段から、ガスは、移送チャネル25を通過して背圧ポンプ段6内に到達する。背圧ポンプ段は同様にサイド・チャネル・ポンプとして形成され、この場合、羽根車600に配置され且つサイド・チャネル601内において円運動を行う羽根602の形状は、羽根402の形状とは異なっている。このポンプ段から、ガスは、ガス出口を通過して真空ポンプから排出される。
【0017】
羽根車400および600と、ハウジング部分21、22および23との間に隙間が存在する。この隙間は、当該羽根車の自由な回転を可能にするが、回転を妨害するガス流れが発生しないように狭く形成されている。
【0018】
図2は、線I−I′によるハウジング部分22の断面図を示す。軸8上に羽根車400が装着されている。羽根車は外周部403を有し、外周部に、周囲に沿って均等に分布された羽根402が配置されている。サイド・チャネル401は羽根車を包囲し、この場合、サイド・チャネルは、ほぼリング状に、羽根車の羽根領域を包囲している。周囲の一部においてのみ、ハウジングは羽根車に密接している。この部分は中断部404を形成し、中断部は吸込側と排出側とを相互に分離し、且つ中断部において、サイド・チャネル内において形成され且つ羽根車の回転に追従するガス流れは、羽根車から切り離され且つ移送チャネル25に移送される。
【0019】
図1および2に示す例において、羽根は羽根車の外周部において半径方向に配置されている。図3および4がこの配置の代替態様を示している。
したがって、図3は代替態様として形成されたハウジング部分22′を示し、ハウジング部分はサイド・チャネル・ポンプ段を受け入れ且つ軸8′により貫通されている。この場合、サイド・チャネル401′は羽根車400′の面内に配置されてなく、軸方向にオフセットされて羽根車の横に配置されている。羽根402′はほぼディスク形状の羽根車から半径方向に突出してなく、羽根車から面に直角な方向に突出している。
【0020】
図4に、図3に示すハウジング部分22′および軸8′を有する配置の線II−II′による断面図が示されている。羽根402′は羽根車上に位置し且つリング状の自由空間409を通過してサイド・チャネル401′内に突出している。サイド・チャネルはリング状自由空間409とは異なり、閉じたリングを形成せず、中断部404′により中断される。移送チャネル24′を通過してサイド・チャネル内に流入し且つ羽根によりサイド・チャネルに沿って移動されたガスは、中断部において、移送チャネルの方向に次のポンプ段に向けて転向される。
【0021】
図1および3においては、図を見やすくするために、サイド・チャネル・ポンプ段に入り且つそれから出る移送チャネルは、羽根車の周囲に関して向かい合って示されている。しかしながら、これらの移送チャネルは、中断部404および404′のみによって分離されるように、小さい角度間隔で相互に配置することが好ましい。
【0022】
図5には、ただ1つの羽根402が示されている。この羽根は、図1および2に示す配置においてのみならず、図3および4に示す配置においてもまた羽根402′として使用可能である。この羽根は、運動方向407に関して後方に位置する、外側角部408を設けた後部405を有している。この外側角部に面取り部406が配置されている。この面取り部により、真空特性値、特に羽根車により達成可能な圧力比が決定的に改善される。
【0023】
一変更態様において、後部405および面取り部406はそれぞれ1つの平面を含む。このような平面は、のこ引き加工によりコスト的に有利に形成可能である。
製造ができるだけ簡単になるように、羽根の全ての表面が平面として形成されていることにより、有利な形態が可能となる。
【0024】
羽根および羽根車の一変更態様が図6に示されている。第1の羽根420および第2の羽根412が運動方向407に相互に間隔をなして配置されている。これらの羽根の間に中間ウェブ430が形成されている。第1および第2の羽根は同じ形状に形成されている。これらの羽根は2つの羽根部分421および422を有し、一方、これらの羽根部分はそれぞれ、部分後部425および426を有している。各部分の部分後部に面取り部416が設けられている。羽根部分は、運動方向407と、運動方向に測定されて、90°より小さい角度415を形成している。この角度により羽根部分のV形状配置が得られ、この場合、Vは運動方向に開いている。羽根部分のこの位置は、面取り部と協働して、羽根車により達成可能な圧力比を改善する。図2および4に示されているように、複数の羽根が、規則的な間隔で、羽根車の周囲に沿って分布されて設けられている。
【0025】
一変更態様において、少なくとも面取り部および部分後部が平面として形成され、且つ羽根が、羽根車内に存在して、羽根車から半径方向に突出するように、羽根が羽根車の外周部に配置されているとき、この形状は、特にコスト的に有利に製造可能である。このとき、中間ウェブは、外周部において羽根車の周りを伸長するように位置決めされている。この変更態様により形成された羽根車は、中実ディスクからのこ引き加工によりコスト的に有利に製造可能である。
【0026】
図7は、図6からの配置を、線III−III′による断面図で示す。この図において、羽根420および412の間に設けられた中間ウェブ430が横断面図で示されている。中間ウェブは、少なくとも部分的に、羽根高さ432より小さい中間ウェブ高さ431を有している。これにより、中間ウェブの両側の羽根の間の空間は相互に結合される。これは、同様に、達成可能な圧力比の改善をもたらす。
【0027】
他の有利な形態特徴が図8により示されている。図8は羽根車の外周部を見た図を示す。羽根450は、それぞれ1つの部分後部453および454を設けた2つの羽根部分451および452を有している。部分後部において、外側角部にそれぞれ、面取り部456が配置されている。羽根部分は運動方向にオフセット量461だけ相互にオフセットされている。羽根部分の部分後部は羽根車外周部の中心線460を超えて伸長している。さらに、少なくとも1つの羽根部分は、運動方向と、90°より小さい角度415′を形成している。この羽根の形態および形態要素の組み合わせは、同様に、改善された真空特性値を有している。
【符号の説明】
【0028】
1 真空ポンプ
2 ガス入口
3 ガス出口
4 サイド・チャネル・ポンプ段
5 分子ポンプ段
6 背圧ポンプ段
7 駆動装置
8、8′ 軸
10、11 転がり軸受
12 固定コイル
13 永久磁石
20、21、22、22′、23 ハウジング部分
24、24′ 移送チャネル
25 他の移送チャネル
400、400′、600 羽根車
401、401′、601 サイド・チャネル
402、402′、412、420、450、602 羽根
403 外周部
404、404′ 中断部
405 後部
406、416、456 面取り部
407 運動方向
408 外側角部
409 自由空間
415、415′ 角度
421、422、451、452 羽根部分
425、426、453、454 部分後部
430 中間ウェブ
431 中間ウェブ高さ
432 羽根高さ
460 中心線
461 オフセット量
500 ロータ
502、502′ シリンダ
505 内部ステータ
506 外部ステータ
507 内部ねじ山溝
508 外部ねじ山溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8